説明

搬送用ベルト

【課題】 搬送用ベルトの放熱性及び放湿性並びに耐久性を向上させる。
【解決手段】 多重織り組織からなる搬送用ベルトにおいて、表面層10及び/または裏面層30の織り組織の経糸12a〜12d,22a,22b,32a,32bを部分的に抜く、或いは、経糸の太さを部分的に変えることにより、ベルトの幅方向に凹凸を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造ラインや物流機構における物品の搬送工程に用いる搬送用ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
各種物品の製造ラインにおける、製造途中の中間体や完成した物品の搬送、及び宅配便の搬送センター等物流機構における物品の搬送には、一般にベルトコンベヤが広く用いられている。このベルトコンベヤは、通常、織物や不織布といった布帛、ゴムシート、合成樹脂シート、或いはこれらの複合体からなる帯体の両端を相互に連結することでループ形状とした搬送用ベルトを複数のロールに掛け渡して回転させ、該搬送用ベルトに搬送すべき物品を載せ、或いは、該搬送用ベルトと該ベルトの掛け渡し経路に配置した対向部材との隙間に物品を挟持して該物品を搬送する。
【0003】
このような搬送用ベルトとしては、要求される特性に応じて、多様な素材、構成が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、段ボールシートの製造に用いられる、いわゆるコルゲーターベルトとして、綿繊維を中心にその周囲にポリエステル繊維を配置した構成糸を用いて多重織り組織を形成し、耐熱性と吸湿性を付与した構成が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、多重織り組織を有する織物ベルトにおいて、表面層の経糸を、幅方向両端部(縁部)は芳香族系ポリアミド繊維で、中央部はポリエステルとビスコースとの混合物からなる繊維で形成することで、該両端部に耐熱性及び耐摩耗性を付与した構成が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開昭58−70733号公報
【特許文献2】特許第3188469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
コルゲーターベルトは、接着剤を塗布した片面段ボール紙とライナー紙とが良好に貼り合わされるように、ベルトの裏面側より加圧部材で加圧して、貼り合わせ後の段ボールシートを適度に加圧している。一方で、段ボールシートの製造効率を高めるため、コルゲーターにおいて段ボールシートを搬送するコルゲーターベルトの回転速度はより高速化している。そのため、移動方向に所定の長さを有する板状の加圧部材を強くベルトに接触させる必要があり、加圧部材との摩擦によって、ベルトの裏面が従来にない高温に達し、摩耗してベルトが短寿命化するという問題が発生している。
【0008】
本発明の課題は、上記のようなベルトの過熱による劣化問題に鑑み、放熱性及び放湿性に優れ、耐久性の高い搬送用ベルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、少なくとも織り組織を2層以上有する多重織り組織からなる搬送用ベルトであって、少なくとも一方の表面が、ベルトの幅方向において凹凸を有することを特徴とする。
【0010】
本発明において上記凹凸は、最外層の織り組織を構成する経糸を部分的に抜く、或いは、経糸の太さを部分的に変えることで形成することが好ましい。
【0011】
また本発明において上記凹凸がベルトの表側に形成されており、凸部の頂部或いは凹部がポリ酢酸ビニル発泡体もしくはシリコーンゴムで被覆されていることが好ましい。
【0012】
さらにまた、本発明において上記凹凸がベルトの表側に形成されており、凸部を構成する経糸がポリ酢酸ビニル発泡体もしくはシリコーンゴムで被覆されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、表面に凹凸を設けることによって実質的に表面積が高くなることから、放熱性及び放湿性に優れ、ベルトの過熱が抑制されて該過熱による劣化が防止され、また、被搬送物品に由来する湿気も良好に放湿される。また、該凹凸を利用して樹脂等を部分的に被覆して、放熱性や放湿性を損ねることなく滑り止め作用を付すことができ、ベルトの空回りや被搬送物品の空送りを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の搬送用ベルトは、基本構成として多重織り組織を有している。本発明にかかる多重織り組織は、表面層と裏面層との少なくとも2層を必須とし、必要に応じてこれらの間に1層以上の中間層を有し、各層がそれぞれ経糸と緯糸とで織られ、さらに、各層同士は長さ方向に織り込まれた連結糸によって一体化されている。
【0015】
図1、図2に本発明に好ましく適用される多重織り組織の構成を示す。これらの図は、ベルトの長さ方向の断面において、必要最小限の構成を示している。図中、10は表面層、20は中間層、30は裏面層、11、21、31は緯糸、12a〜12d、22a、22b、32a〜32dは経糸、41a、41b、42a、42bは連結糸である。
【0016】
本発明の搬送用ベルトの特徴は、表面及び/または裏面が、ベルトの幅方向断面において凹凸を有することにある。具体的には、表面層及び/または裏面層において経糸の太さを部分的に変える、或いは経糸を部分的に抜くことで幅方向に厚みの異なる部位を形成する。このように表面に凹凸を付すことにより、ベルトの表面積が大きくなり、放熱性が向上し、加圧部材や被搬送物品等との摩擦熱を効率よく放熱し、ベルト自身の過熱を防止することができる。また、表面積が広がったことで、被搬送物品に由来する湿気も良好に放湿することができる。
【0017】
本発明にかかる凹凸は、特に周期的に形成する必要はなく、放熱効率とベルトの強度とのバランスを見て適宜設定すればよい。即ち、凹部においては凸部よりも細い経糸が用いられているか、或いは、経糸が抜かれているため、そのままでは凸部よりも弱く、層全体の強度も凹凸を形成したことで低下する。従って、凹凸は強度を損ねないように形成することが望ましく、特に、ベルトの幅方向端部(いわゆる耳部)においては、中央部よりも強度が低いため、中央部よりも凹部の数を減らす(或いは形成しない)、凹部の深さを小さくする、凹部の幅を狭くする、或いは、凹部を構成する経糸に強度の高い素材を用いる、などの配慮を施すことが望ましい。
【0018】
また、本発明にかかる凹凸を利用して、ベルトの放熱性や放湿性を損なうことなく被搬送物品の滑り止め作用を付与することができる。具体的には、かかる凹凸をベルトの表側に形成し、凸部或いは凹部のいずれかに摩擦係数の高い樹脂被覆を施す。被覆樹脂としてはポリ酢酸ビニル発泡体もしくはシリコーンゴムが好ましく用いられる。また、当該樹脂被覆を施した経糸で凸部を構成することにより同様の効果が得られる。尚、当該樹脂被服は凸部或いは凹部全面に形成してもよいが、高い放熱性や放湿性を得る上で、凸部或いは凹部に所定の間隔をおいてドット状に形成することが好ましい。
【0019】
本発明において多重織り組織を構成する経糸、緯糸、及び連結糸としては、通常の搬送用ベルトに用いられているポリエステル糸、綿糸、レーヨン糸、或いは、ポリエステル、綿、レーヨンの少なくとも一種を含む混紡糸が好ましく用いられる。また、耐熱性ポリエステル、特にポリアニリレートやポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)、芳香族ポリアミドからなる糸、或いは、これらのうちの少なくとも一種を含む混紡糸が耐熱性や耐摩耗性の点から好ましく用いられる。また、これらは、モノフィラメント、マルチフィラメントのいずれであってもかまわない。
【0020】
本発明は、ベルトの過熱や水性接着剤に起因する湿気が問題となっているコルゲーターベルトに好ましく適用されるが、特にこれに限定されるものではなく、段ボール製造以外の分野のいずれにおいても好ましく用いられるものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のベルトの基本構成である多重織り組織の一例を示す図である。
【図2】本発明のベルトの基本構成である多重織り組織の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
10 表面層
20 中間層
30 裏面層
11、21、31 緯糸
12a〜12d、22a、22b、32a〜32d 経糸
41a、41b、42a、42b 連結糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも織り組織を2層以上有する多重織り組織からなる搬送用ベルトであって、少なくとも一方の表面が、ベルトの幅方向において凹凸を有することを特徴とする搬送用ベルト。
【請求項2】
上記凹凸が、最外層の織り組織を構成する経糸を部分的に抜くことで凹部を形成してなる請求項1に記載の搬送用ベルト。
【請求項3】
上記凹凸が、最外層の織り組織を構成する経糸の太さを部分的に変えることで形成してなる請求項1に記載の搬送用ベルト。
【請求項4】
上記凹凸がベルトの表側に形成されており、凸部の頂部がポリ酢酸ビニル発泡体もしくはシリコーンゴムで被覆されている請求項1〜3のいずれかに記載の搬送用ベルト。
【請求項5】
上記凹凸がベルトの表側に形成されており、凹部がポリ酢酸ビニル発泡体もしくはシリコーンゴムで被覆されている請求項1〜3のいずれかに記載の搬送用ベルト。
【請求項6】
上記凹凸がベルトの表側に形成されており、凸部を構成する経糸がポリ酢酸ビニル発泡体もしくはシリコーンゴムで被覆されている請求項1〜3のいずれかに記載の搬送用ベルト。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−70048(P2007−70048A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−258881(P2005−258881)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(500238686)日本特絹工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】