説明

搬送装置

【課題】低推力のモータの使用により特別の安全対策を不要とし、もって小型化とコスト負担の軽減とに大きく寄与する搬送装置を提供する。
【解決手段】支柱11の一面に、ワークWが載置される治具10を支持するリニアモーションガイド12を配設し、このリニアモーションガイド12の移動体であるガイドブロック14に、支柱11の上・下端部に配設したプーリ16、17に掛け回した搬送用糸18を連繋し、さらに、この搬送用糸18に重り19を連結し、低推力のモータ15により搬送用糸18を回転駆動して、前記治具10と一体にワークWを昇降させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治具に粗材や物品などの被搬送物を載置して搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の搬送装置としては、モータによりエンドレスに回転駆動されるチェーンを駆動伝達手段として用いたものが多く採用されていた(例えば、特許文献1、特許文献2等参照)
【特許文献1】実開平5−180523号公報
【特許文献2】特開平11−180523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記したようにチェーンを駆動伝達部として用いた搬送装置にあっては、チェーンの駆動に高出力(高推力)のモータが必要になるため、チェーンはもちろん、該チェーンが掛け回されるスプロケットをカバーで覆わなければならず、その上、非常時に動力を停止させる非常停止機構などが必要になって、装置の大型化や高コスト化が避けられない、という問題があった。また、大型化することから、加工ラインや組立ラインでは、作業の邪魔にならないように地下(半地下)または高所への設置が不可避となり、その分、設置コストやメンテナンスコストが嵩む、という問題もあった。
【0004】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたもので、その課題とするところは、低推力のモータの使用により特別の安全対策を不要とし、もって小型化とコスト負担の軽減とに大きく寄与する搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため、被搬送物が載置される治具を、ガイドレールに転動体を介して移動可能に装着された移動体に支持させ、該移動体に、低推力モータによりエンドレスに回転駆動される搬送用糸を連繋したことを特徴とする。
【0006】
このように構成した搬送装置においては、ガイドレールに転動体を介して移動可能に装着された移動体に治具を支持させているので、治具の移動に大きな駆動力を必要としない。しかも、搬送用糸を駆動伝達に用いているので、その回転にも大きな駆動力を必要とせず、結果として低推力のモータの使用が可能になる。さらに、糸とプーリとのスリップにより10〜50N程度の張力に調整できるので、高い安全性が確保される。
【0007】
本発明において、上記搬送用糸は、適度の強度を有していれば、特にその種類は問わないが、魚網等に多用されているポリエステル繊維を用いるのが望ましい。
また、該搬送用糸が天地方向に回転駆動される場合は、上昇時の負担を軽減するため、該糸に釣合い用の重りを取付けるのが望ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る搬送装置によれば、低推力のモータの使用が可能になるので、カバーの設置や非常停止機構の設置などの安全対策が不要になり、小型化を達成できるばかりか、装置コストの低減を達成できる。また、小型化することから、フロア上への設置が可能になり、設置コストはもとよりメンテナンスコストの低減を達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基いて説明する。
図9は、本発明に係る搬送装置を含む搬送システムを示したものである。本搬送システムは、加工ステーションSの一端側から他端側へワーク(被搬送物)Wを搬送しようとするもので、ここでは、加工ステーションSの両端部に対応してフロアT上に設置され、ワークWを上下方向へ直線搬送する2台の垂直搬送装置1A,1Bと、フロアTを嵩上げした架台U上に設置され、ワークWを2台の垂直搬送装置1A,1B間で矢印Fのように直線搬送する2台の水平搬送装置2A,2Bと、一端側(搬入側)の垂直搬送装置1Aから一方の水平搬送装置2Aへ、一方の水平搬送装置2Aから他方の水平搬送装置2Bへ、他方の水平搬送装置2Bから他端側(搬出側)の垂直搬送装置1BへそれぞれワークWを受渡しするワーク受渡装置3A,3B,3Cとから概略構成されている。なお、図9中、Vは2台の水平搬送装置2Aと2Bとの継目部分を示している。
【0010】
上記搬送システムにおいて、前加工ステーションで加工を終えたワークWは、前加工の作業者によって搬入側の垂直搬送装置1A内の、上昇位置にある後述の治具10(図1)に載置されるようになっており、該ワークWは、前記治具10の下降並びに片側のワーク受渡装置3Aの作動に応じて一方の水平搬送装置2A内の後述の治具20(図2、3)へ受渡しされる。また、一方の水平搬送装置2Aの治具20に移載されたワークWは、上記継目部分Vまで移動し、中央のワーク受渡装置3Bの作用で他方の水平搬送装置2B内の治具20へ受渡しされ、さらに搬出側の垂直搬送装置1Bの脇へ搬送される。搬出側へ搬送されたワークWは、他側の受渡装置3Cの作動で、下降位置にある垂直搬送装置1B内の治具10上に受渡しされ、その後、治具10と共に上昇位置に移動する。加工ステーションSには、複数の加工機(図示略)が配列されており、当該加工ステーションSの作業者は、前記垂直搬送装置1Bの、上昇位置にある治具10からワークWを取出し、搬送方向Fと反対方向F´へ並ぶ加工機を順に操作してワークWを仕上げていく。
【0011】
上記2台の垂直搬送装置1A,1Bは、実質同じ構造となっており、図1に示されるように、前記フロアT上に一対のL字形脚片11aを介して立設された支柱11に、前記治具10を昇降駆動するために必要な機構を一括して配設している。すなわち、この支柱11の一面には、前記治具10を支持するリニアモーションガイド12が配設されている。リニアモーションガイド12は、前記支柱11の一面に固定されたガイドレール13とこのガイドレール13にボールを介して移動可能に結合されたガイドブロック(移動体)14とからなっており、前記治具10は、このガイドブロック14に取付けられている。一方、支柱11の上端部にはモータ(低推力モータ)15が固設されている。このモータ15の出力軸にはプーリ(Vプーリ)16が取付けられており、このプーリ16と支柱11下の脚片11aに軸着されたプーリ(Vプーリ)17との間には搬送用糸18が掛け回されており、この搬送用糸18は、前記治具10を支持するガイドブロック14に連繋されている。この搬送用糸18はまた、治具10を含むガイドブロック14と釣合う重り19が連繋されている。
【0012】
本実施形態において、被搬送物としてのワークWは、等速ジョイントのアウタレース粗材からなっており、垂直搬送装置1A,1B内の治具10は、該ワークWを載置可能にU字形に形成されている。しかして、この治具10は、搬入側の垂直搬送装置1Aと搬出側の垂直搬送装置1Bとで口向きが逆になるように配置されている。すなわち、搬入側の垂直搬送装置1Aでは搬送方向Fへ開口が向くように治具10が配置され、一方、搬出側の垂直搬送装置1Bでは、搬送方向Fと逆方向F´へ開口が向くように治具10が配置されている。
【0013】
上記のように構成した垂直搬送装置1A,1Bにおいては、モータ15が回転すると、プーリ16およびプーリ17を介して搬送用糸18が天地方向で回転し、その左回転および右回転に応じて治具10がリニアモーションガイド12を介して支柱11に沿って昇降動する。リニアモーションガイド12は、前記したようにローラを介してガイドレール13に結合されたガイドブロック14を移動体としており、したがって、ガイドブロック14の移動には、大きな駆動力を必要としない。また、糸18を駆動伝達に用いているので、その回転にも大きな駆動力を必要としない。しかも、治具10およびガイドブロック14に釣合う重り19を糸18に連繋しているので、上昇時にかかる吊り荷重も著しく軽減される。したがって、ここで使用するモータ15は、低推力を有するもので足り、この結果、プーリ16,17、搬送用糸18等を含む可動部の周りをカバーで覆う必要がなくなる。因みに、この垂直搬送装置1A,1Bに用いられるモータ15としては、10〜50W程度のもので十分である。一方、搬送用糸18については、このような低推力の駆動伝達に耐える強度を有するものであれば、その種類は任意である。一例として、これに適した糸18としては、魚網用のポリエステル繊維、例えば、3mm径のテトロン(登録商標)がある。
【0014】
上記2台の水平搬送装置2A,2Bは、実質同じ構造となっており、図2〜図5に示されるように、コ字形の連結部材21で連結され、該連結部材21を介して前記架台U上に設置された左右一対のガイドフレーム22を備え、該ガイドフレーム22に前記治具20を駆動するために必要な機構を一括して配設している。すなわち、一対のガイドフレーム22の上面には、前記治具20を支持する移動体23が配設されている。この移動体23は、図4によく示されるように、左右一対の平板部24aを断面コ字形の連結部24bにより連結してなる本体24と、本体24の各平板部24aに軸着された複数(ここでは、各2個)のローラ(転動体)25とからなっている。移動体23は、その本体24の連結部24bを前記一対のガイドフレーム22の間に遊嵌させた状態で該一対のガイドフレーム22上に載置されている。一方、各ガイドフレーム22にはガイド溝26(図3)が形成されており、移動体23は、前記ガイドフレーム22上に載置された状態でそのローラ25をこの溝26内に係入させるようになっている。すなわち、移動体23は、そのローラ25をガイドフレーム22のガイド溝26内で転動させることにより、該ガイドフレーム22に沿って移動できるようになっている。
【0015】
本実施形態において、水平搬送装置2A,2B内の治具20は、2本の棒状部材20aからなっており、各棒状部材20aは、前記移動体23の本体24を構成する一対の平板部24aと連結部24bとの接続角部に相互に平行をなすように固定されている。また、この治具20を構成する棒状部材20aの間隔は、前記垂直搬送装置1A,1B内のU字形治具10の幅と同一となっている。一方、垂直搬送装置1A,1B内の治具10は、水平搬送装置2A,2Bの一対のガイドフレーム22の間に下降するようになっている。また、該治具10は、水平搬送装置2A,2B内の治具10と同じ高さレベルで整列する位置が下降位置(下降端)となっており、この時、両治具10と20とが隣接して位置決めされていれば、治具10から治具20へ、あるいは治具20から治具10へのワークWの受渡しが可能になる。
【0016】
上記一対のガイドフレーム22の一端部にはモータ(低推力モータ)27が固設されている。このモータ26は、図3および図5によく示されるように、片側のガイドフレーム22に取付けたブラケット27に、該ガイドフレーム22と直交する水平方向へ延ばして固定されている。また、一対のガイドフレーム22の一端部には、前記ブラケット27と他側のガイドフレーム22に取付けたブラケット28とを用いて前記モータ26の軸と平行に回転軸29が回動自在に装着されている。一方のガイドフレームの外側において、前記モータ26の出力軸にはプーリ(Vプーリ)30が、前記回転軸29の一端部にはプーリ(Vプーリ)31がそれぞれ取付けられており、これらプーリ30とプーリ31との間には、別途ブラケット27に取付けた張力調整用プーリ32を経由して動力伝達用糸28が掛け回されている。また、一対のガイドフレーム22の間において前記回転軸29には、所定の間隔で一対のプーリ(Vプーリ)33が取付けられ、一方、一対のガイドフレーム22の他端部には、図2に示されるように、前記一対のプーリ33と同じ間隔で一対のプーリ(Vプーリ)34が軸着されている。これら一対のガイドフレーム22の両端側に配置された各一対のプーリ33とプーリ34との間には搬送用糸35がそれぞれ掛け回されており、各搬送用糸35には、前記移動体23の本体24を構成する一対の平板部24aが連繋されている。なお、前記動力伝達用糸28および搬送用糸35としては、前記垂直搬送装置1A,1B内の搬送用糸18と同様に魚網用のポリエステル繊維製のものが用いられている。
【0017】
本実施形態において、上記2台の水平搬送装置2A,2Bは、図9に示したように、搬送方向Fに対して前・後の向きが逆となるように架台U上に設置されている。すなわち、一方の水平搬送装置2Aはモータ27を設けた側が搬入側に位置するように、他方の水平搬送装置2Bはモータ27を設けた側が搬出側に位置するようにそれぞれ配置され、両者の継目部分Vでは、ガイドフレーム22の他端部に配したプーリ34、34が相互に隣接して配置される。
【0018】
上記のように構成した水平搬送装置2A,2Bにおいては、モータ27が回転すると、その回転がプーリ30、動力伝達用糸28およびプーリ31を介して回転軸29に伝達される。そして、回転軸29が回転すると、一対のガイドフレーム22の両端側のプーリ33、34を介して搬送用糸35が水平方向でに回転し、その左回転および右回転に応じて治具20が移動体23を介して一対のガイドフレーム22に沿って進退動する。移動体23は、前記したようにローラ25を転動させて移動するようになっており、したがって、この移動体23の移動には、大きな駆動力を必要としない。また、動力伝達用糸28および搬送用糸35を駆動伝達に用いているので、その回転にも大きな駆動力を必要としない。したがって、ここで使用するモータ27は、低推力を有するもので足り、この結果、各プーリ30〜34、糸28,35等を含む可動部の周りをカバーで覆う必要がなくなる。なお、この水平搬送装置2A,2Bに用いられるモータ27としては、垂直搬送装置1A,1B内のモータ15と同様に10〜50W程度のものが用いられる。
【0019】
上記ワーク受渡装置3A,3B,3Cのうち,搬入側のワーク受渡装置3Aは、ここでは、図6及び図7に示すように、架台U上に脚柱40を介して搬送方向Fへ延ばして設置された支持フレーム41にプッシャ機構42を配設してなっている。プッシャ機構42は、支持フレーム41の一側面に固定された断面コ字形のガイドフレーム43と、このガイドフレーム43に移動可能に装着された移動体44と、この移動体44に取付板45を介して支持されたプッシャバー46と、移動体44を駆動する駆動手段47とを備えている。移動体44は、ボール(転動体)48を内蔵しており、このボール48をガイドフレーム43の開口部の内側に形成された凹状軌道49に係合させることにより、該ボール48を介してガイドフレーム43内を自由に移動できるようになっている。一方、駆動手段47は、支持フレーム41の一端側に鉛直方向へ出力軸を向けて固設されたモータ(低推力モータ)50と、このモータ50の出力軸に取付けられたプーリ(Vプーリ)51と支持フレーム41の他端側に軸着されたプーリ(Vプーリ)52と、前記両プーリ51および52の間に掛け回され、かつ前記移動体44に連繋された搬送用糸53とからなっている。なお、前記搬送用糸53としては、前記垂直搬送装置1A,1B内の搬送用糸18および水平搬送装置2A,2B内の搬送用糸35と同様に魚網用のポリエステル繊維製のものが用いられている。
【0020】
上記搬入側のワーク受渡装置3Aは、そのガイドフレーム43が上記一方の水平搬送装置2Aの片側のガイドフレーム22の上に一部重なるように、該ガイドフレーム22と平行に延ばして配置されている(図9)。また、このワーク受渡装置3A内のプッシャ機構42を構成するプッシャバー46は、前記水平搬送装置2A内の治具20上のワークWに干渉する位置に位置決めされている。
【0021】
上記のように構成したワーク受渡装置3Aにおいては、モータ50が回転すると、プーリ51およびプーリ52を介して搬送用糸53が水平方向で回転し、その左回転および右回転に応じて移動体44がガイドフレーム43に沿って進退動する。プッシャバー46は、水平搬送装置2Aから離れた位置が待機位置となっており、いま、搬入側の垂直搬送装置1A内の治具10と水平搬送装置2A内の治具20とが隣接して配置されている状態において、移動体44と共にプッシャバー46が後退位置から前進すれば、治具10上のワークWがこのプッシャバー46に押されて、治具10から治具20上へ載り移るようになる。しかして、移動体44は、前記したようにボール48を介してガイドフレーム43に結合されているので、該移動体44の移動には、大きな駆動力を必要としない。また、糸53を駆動伝達に用いているので、その回転にも大きな駆動力を必要としない。したがって、ここで使用するモータ50は、低推力を有するもので足り、この結果、プーリ51、52、搬送用糸53等を含む可動部の周りをカバーで覆う必要がなくなる。
【0022】
一方、中央のワーク受渡装置3Bと搬出側のワーク受渡装置3Cとは全く同じ構造となっており、図8に示すように、脚柱60を介して水平搬送装置2A,2Bのガイドフレーム22に取付けられた支持フレーム61にプッシャ機構62を配設してなっている。プッシャ機構62は、支持フレーム61の下面に固定された断面コ字形のガイドフレーム63と、このガイドフレーム63に移動可能に装着された移動体64と、この移動体64に取付板65を介して支持されたプッシャバー66と、移動体64を駆動する駆動手段67とを備えている。移動体64は、搬入側のワーク受渡装置3A内の移動体44と同様にボール(図示略)をガイドフレーム63の開口部の内側に形成された凹状軌道(図示略)に係合させることにより、該ボールを介してガイドフレーム63内を自由に移動できるようになっている。一方、駆動手段67は、支持フレーム61の一端側に水平方向へ出力軸を向けて固設されたモータ(低推力モータ)70と、このモータ70の出力軸に取付けられたプーリ(Vプーリ)71と支持フレーム61の他端側に軸着されたプーリ(Vプーリ)72と前記両プーリ71および72の間に掛け回され、かつ前記移動体64に連繋された搬送用糸73とからなっている。なお、前記搬送用糸73としては、前記垂直搬送装置1A,1B内の搬送用糸18、水平搬送装置2A,2B内の搬送用糸35および搬入側のワーク受渡装置3A内の搬送用糸53と同様に魚網用のポリエステル繊維製のものが用いられている。
【0023】
本実施形態において、上記プッシャバー66は、移動体64と一体の取付板65にヒンジ部74を介して回動自在に支持されている。プッシャバー66は、常時は自重により図示のように垂直状に垂れ下がり、その下端部が、水平搬送装置2B,2C内の治具20上のワークWに干渉する位置に位置決めされる。しかして、前記ヒンジ部74は、プッシャバー66の、搬送方向Fの前側への揺動は許容するが、搬送方向Fと逆方向への揺動は規制する構造となっている。一方、支持フレーム61の長手方向の中間位置には、搬送方向Fと直交する方向へ延ばした横バー75がブラケット76を用いて横設されている。この横バー75は、移動体64と一体のヒンジ部74に干渉しない位置に設定されており、これにより、いま移動体64と共にプッシャバー66が搬送方向Fと逆方向へ移動すると、プッシャバー66は、搬送方向Fの前側に揺動しながら該横バー75に乗り上げる。すなわち、プッシャバー66は治具20上のワークWと干渉しない位置に退避する。
【0024】
上記のように構成したワーク受渡装置3b、3Cにおいては、モータ70の回転によりプーリ71およびプーリ72を介して搬送用糸73が水平方向で回転し、その左回転および右回転に応じて移動体64がガイドフレーム63に沿って進退動する。プッシャバー66は、常時は横バー75に載る退避位置に位置決めされており、いま、水平搬送装置2A内の治具20がその下方を通過するタイミングで、移動体64が搬送方向Aへ前進すれば、プッシャバー66は、横バー75から離脱して垂直に垂れ下がる。この時、ワーク受渡装置3C内の治具20が後退位置にあり、垂直搬送装置1B内の治具10が下降位置にあれば、前記移動体64と共にプッシャバー66がさらなる前進を続けることで、該プッシャバー66に押されて、一方の水平搬送装置2Aの治具20上のワークWが他方の水平搬送装置2B内の治具20上へ、他方の水平搬送装置2B内の治具20上のワークWが垂直搬送装置1B内の治具10上へそれぞれ載り移るようになる。しかして、移動体64は、前記したようにボール介してガイドフレーム63に結合されているので、該移動体64の移動には、大きな駆動力を必要としない。また、糸73を駆動伝達に用いているので、その回転にも大きな駆動力を必要としない。したがって、ここで使用するモータ70は、低推力を有するもので足り、この結果、プーリ71、72、搬送用糸73等を含む可動部の周りをカバーで覆う必要がなくなる。
【0025】
上記垂直搬送装置1A,1B、水平搬送装置2A,2B、ワーク受渡装置3A,3B,3Cを備えた搬送システムにおいては、前記したように前加工ステーションで加工を終えたワークWが、前加工の作業者によって搬入側の垂直搬送装置1A(図1)内の、上昇位置にある治具10に載置される。すると、モータ15が作動して搬送用糸18が回転し、リニアモーションガイド12を構成するガイドブロック(移動体)12が下降する。そして、治具10上のワークWが一方の水平搬送装置2A(図2,3)の一対のガイドフレーム22の間の下降位置まで下降すると、前記モータ15が停止される。この時、水平搬送装置2A内の治具20は後退端に位置決めされており、前記垂直搬送装置1A内の移動体12の下降が停止されると同時に、搬入側のワーク受渡装置3A(図6)内のモータ50が回転する。すると、プッシャ機構42を構成する移動体44がガイドフレーム43に沿って前進し、該プッシャ機構42を構成するプッシャバー46によって垂直搬送装置1A内の治具10から水平搬送装置2A内の治具20上へワークWが受渡しされる。
【0026】
次に、一方の水平搬送装置2Aのモータ27が作動して搬送用糸35が回転し、移動体23がガイドフレーム22に沿って搬送方向Fへ前進する。この時、中央のワーク受渡装置3B(図8)内のプッシャバー66は横バー75に乗る退避位置にあり、治具20上のワークWは前記プッシャバー66に干渉することなく、上記継目部分Vの直前位置まで移動し、この段階で水平搬送装置2Aのモータ27が停止される。すると、中央のワーク受渡装置3B内のモータ70が作動して搬送用糸73が回転し、移動体64が搬送方向Fへ前進する。これにより前記プッシャバー66が横バー75から離脱して垂直状態となり、そのまま垂直状態を維持して前進する。この時、他方の水平搬送装置2B内の治具20は後退端に位置決めされており、前記一方の水平搬送装置2A内の治具20上のワークWは、該プッシャバー66に押されて他方の水平搬送装置2Bの治具20上へ受渡しされる。
【0027】
次に、他方の水平搬送装置2Bのモータ27が作動して搬送用糸35が回転し、移動体23がガイドフレーム22に沿って搬送方向Fへ前進する。この時、搬出側のワーク受渡装置3C(図8)内のプッシャバー66は横バー75に乗る退避位置にあり、治具20上のワークWは前記プッシャバー66に干渉することなく、搬出側の垂直搬送装置1B(図1)の設置箇所の直前位置まで移動し、この段階で水平搬送装置2Bのモータ27が停止される。すると、搬出側のワーク受渡装置3C内のモータ70が作動して搬送用糸73が回転し、移動体64が搬送方向Fへ前進する。これにより前記プッシャバー66が横バー75から離脱して垂直状態となり、そのまま垂直状態を維持して前進する。この時、搬出側の垂直搬送装置1B内の治具10は下降位置に位置決めされており、前記他方の水平搬送装置2B内の治具20上のワークWは、該プッシャバー66に押されて垂直搬送装置1B内の治具10へ受渡しされる。すると、垂直搬送装置1B内のモータ15が作動して搬送用糸18が回転し、リニアモーションガイド12を構成するガイドブロック(移動体)12が上昇位置まで上昇し、これにて1つのワークWの搬送が完了する。なお、この搬送されたワークWは、前記したように加工ステーションSの作業者によって治具10から取出され、所定の加工が施される。
【0028】
上記のように構成した搬送システムにおいては、垂直搬送装置1A,1B、水平搬送装置2A,2B、ワーク受渡装置3A,3B,3Cのそれぞれが低推力のモータ15、27、50、70と搬送用糸18、35、53、61との採用によれカバーレスとなっているので、その全体が小型化し、加工ステーションSの前面に配しても、特別作業の邪魔になることはない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る垂直搬送装置の全体構造を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る水平搬送装置の全体構造を示す斜視図である。
【図3】本水平搬送装置の一部を拡大して示す斜視図である。
【図4】本水平搬送装置を構成する治具および移動体の構造を示す斜視図である。
【図5】本水平搬送装置を構成するモータおよびプーリの取付構造を拡大して示す斜視図である。
【図6】本発明に係るシフト装置の全体構造を示す斜視図である。
【図7】本シフト装置を構成する移動体の組付構造を示す断面図である。
【図8】本発明に係る他のシフト装置の全体構造を示す斜視図である。
【図9】本搬送装置を装備した搬送システムの全体構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
1A,1B 垂直搬送装置
2A,2B 水平搬送装置
3A,3B,3C ワーク受渡装置
10 垂直搬送装置内の治具
12 リニアモーションガイド
13 ガイドレール
14 ガイドブロック(移動体)
15、27、50、70 低推力モータ
18、35、53、61 搬送用糸
19 重り
20 水平搬送装置内の治具
22 水平搬送装置内のガイドフレーム
43,63 ワーク受渡装置内のガイドフレーム
46,66 ワーク受渡装置内のプッシャバー
W ワーク(被搬送物)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送物が載置される治具を、ガイドレールに転動体を介して移動可能に装着された移動体に支持させ、該移動体に、モータにより回転駆動される搬送用糸を連繋したことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
搬送用糸が、ポリエステル繊維からなることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
搬送用糸が天地方向に回転駆動される場合に、該糸に釣合い用の重りを取付けたことを特徴とする請求項1または2に記載の搬送装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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