説明

搬送装置

【課題】簡単な構成で丸棒状や円筒状の物体を軸線方向に搬送することのできる搬送装置を提供する。
【解決手段】丸棒2を軸線方向へ搬送する搬送装置1であって、丸棒2をほぼ水平に且つ軸線方向へ移動可能に保持する保持台3と、軸線方向に沿って且つ丸棒2の周方向に沿って配置されるとともにその丸棒2の周面に当接する複数のワイヤホイールブラシ4,5,6とを備え、このワイヤホイールブラシ4,5,6は、回転することより丸棒2を軸線回りに回転させてその丸棒2を軸線方向へ搬送させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、丸棒状または円筒状の物体を軸線方向へ搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、丸棒状または円筒状の物体を搬送しながら研磨していく搬送装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
かかる搬送装置は、平行に配置された一対の回転ローラの間にチェーンコンベアを配置し、この回転ローラ間に送り込まれた丸棒の端面に当接する金具をチェーンコンベアのチェーンに取り付け、このチェーンコンベアで搬送される丸棒を回転ローラで周方向に回転させ、この回転する丸棒の周面を研磨ブラシで研磨していくものである。
【特許文献1】特開2000−74760号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような搬送装置にあっては、一対の回転ローラ間にチェーンコンベアを配置し、このチェーンコンベアのチェーンに金具を取り付けなければならず、構造が複雑になるという問題があった。
【0005】
この発明の目的は、簡単な構成で丸棒状や円筒状の物体を軸線方向に搬送することのできる搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、丸棒状または円筒状の物体を軸線方向へ搬送する搬送装置であって、
前記物体をほぼ水平に且つ前記軸線方向へ移動可能に保持する保持手段と、
前記軸線方向に沿って且つ前記物体の周方向に沿って配置されるとともにその物体の周面に当接する複数の回転体とを備え、
前記各回転体は、回転することより前記物体を軸線回りに回転させてその物体を軸線方向へ搬送させることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、前記物体の回転方向に対する各回転体間の離間距離をその回転方向に沿って順次大きくしたことを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、前記各回転体の周速は同一であることを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、前記各回転体の回転中心の軸線は前記物体の軸線とほぼ平行となっていることを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の回転体の周面がブラシまたは研磨粒子を有する研磨面となっていることを特徴とする。
【0011】
請求項6の発明は、前記物体の周面に、周方向に対して異なる2つの位置で接触する接触手段を設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項7の発明は、前記接触手段は、ローラ状の一対の回転部材であり、この回転部材の周速は前記回転体の周速より遅いことを特徴とする。
【0013】
請求項8の発明は、前記回転部材の回転軸は前記物体の軸線に対して傾斜可能であることを特徴とする。
【0014】
請求項9の発明は、前記回転部材の摩擦係数は、前記回転体の摩擦係数より大きいことを特徴とする。
【0015】
請求項10の発明は、前記回転部材の回転方向は、前記物体の回転方向と順方向であることを特徴とする。
【0016】
請求項11の発明は、前記回転部材の物体に対する接触面積は、前記回転体の物体に対する接触面積より大きく設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、簡単な構成で丸棒状や円筒状の物体を軸線方向に搬送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明に係る搬送装置の実施の形態である実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0019】
[第1実施例]
図1ないし図3は、丸棒状や円筒状の物体を軸線方向に搬送する搬送装置1の構成を概念的に示したものであり、この搬送装置1は、丸棒(物体)2を保持する保持台(保持手段)3と、3つのワイヤホイールブラシ(回転体)4,5,6とを備えている。ワイヤホイールブラシ4,5,6は回転軸4A,5A,6Aに放射状にワイヤからなるブラシが取り付けられているものであり、各ワイヤホイールブラシ4,5,6の径は同一に設定されている。
【0020】
保持台3の上面には丸棒2を受ける円弧状の凹部3Aが形成され、この凹部3A内で丸棒2が回転可能に且つ軸線方向に移動可能となっている。
【0021】
ワイヤホイールブラシ4,5,6は、丸棒2の軸線方向に沿って等間隔に配置されている。また、ワイヤホイールブラシ4,6は丸棒2の中心位置より上に配置され、ワイヤホイールブラシ5は丸棒2の中心位置より下に配置されている。
【0022】
そして、ワイヤホイールブラシ4,5,6は丸棒2の周方向に沿って配置されるとともに丸棒2の回転方向に対して、ワイヤホイールブラシ4と6との離間距離と、ワイヤホイールブラシ6と5との離間距離と、ワイヤホイールブラシ5と4との離間距離とが順次大きくなるようになっている。
【0023】
すなわち、図3に示す角度α,β,γがα<β<γの関係になっており、また、丸棒2の中心位置からワイヤホイールブラシ4,5,6の中心位置までの距離は等距離となっている。
【0024】
各ワイヤホイールブラシ4,5,6は、図示しない駆動機構によって図1および図3に示す矢印方向に回転していくようになっている。この駆動機構は、モータの駆動軸に設けた複数の駆動プーリと、ワイヤホイールブラシ4,5,6の回転軸4A,5A,6Aに設けた従動プーリと、複数の中間プーリと、駆動プーリと中間プーリとに巻回したベルトと、中間プーリと従動プーリとに巻回したベルトなどとから構成されている。なお、ワイヤホイールブラシ4,5,6は回転軸4A,5A,6Aとともに一体に回転していく。
【0025】
次に、上記のように構成される搬送装置1の動作について説明する。
【0026】
保持台3に載置された丸棒2は、ワイヤホイールブラシ4の矢印方向の回転(図1において反時計回りの回転)により時計回りに回転させられるとともに、丸棒2の先端側が下方へ押し下げられる力を受け、丸棒2は右側(図2において)が下がるように斜め下方へ傾き、そしてワイヤホイールブラシ5の回転により丸棒2は時計回りに回転しながら上方へ傾き、さらにワイヤホイールブラシ6の回転により丸棒2は回転しながら下方へ傾く。これらのわずかな変化の連続により、丸棒2は回転しながら右方向(図2において)の推進力が発生し、丸棒2は軸線方向へ搬送されることになる。
【0027】
そして、丸棒2はワイヤホイールブラシ4,5,6の回転により時計回りに回転されながら研磨されていくことになる。
【0028】
このように、3つのワイヤホイールブラシ4,5,6を図示のように配置して、このワイヤホイールブラシ4,5,6を回転させるだけなので、その構成は至って簡単なものとなる。また、簡単な構成により装置費用の低減とメンテナンス性を向上させることができる。
【0029】
この実施例では、ワイヤホイールブラシ4,5,6の周方向の距離を変えているが、ワイヤホイールブラシ4,5,6を周方向に等ピッチ(等角度)で配置してもよい。
[第2実施例]
図4ないし図5は、第2実施例の搬送装置10の構成を概念的に示したものである。
【0030】
この搬送装置10は、第1実施例のワイヤホイールブラシ4,5,6(図4ないし図5では図示せず)の他に一対のゴムローラ10,11を設けたものである。
【0031】
このゴムローラ10,11は、側面視で図4に示すように丸棒2の軸線2Jに対してゴムローラ10,11の軸線10J,11Jが所定の角度θで傾斜し、平面視で図6に示すように丸棒2の軸線2Jとゴムローラ10,11の軸線10J,11Jとが平行となっている。そして、ゴムローラ10,11は丸棒2に圧接している。
【0032】
また、ゴムローラ10,11は、軸線2Jと軸線10J,11Jとのなす角度θが変えられるように傾動可能となっている。また、図示しない駆動機構によりゴムローラ10,11は図5に示すように反時計回りに回転していくようになっている。
【0033】
この第2実施例は、ゴムローラ10,11と保持台3との間の隙間が右方向(図4において)にいくにしたがって小さくなっていることにより、この隙間に丸棒2を入れてゴムローラ10,11を回転すると丸棒2は隙間の狭い方へ移動する原理を利用したものであり、この原理により丸棒2は軸線方向に沿って前方(図4において右方向)へ搬送されることになる。
【0034】
そして、ゴムローラ10,11の傾き、すわち角度θを調整することにより、ゴムローラ10,11と丸棒2との摩擦抵抗が変わり、丸棒2の移動速度を調整することができ、丸棒2の磨き加工を施す際に最適な丸棒2の移動速度を設定することができる。このため、安定した磨き加工の品質が得られることになる。
【0035】
この第2実施例によれば、ゴムローラ10,11の摩擦係数をワイヤホイールブラシ4,5,6の摩擦係数より大きく設定しておくことにより、丸棒2の移動速度の調整が容易なものとなり、また、ゴムローラ10,11の周速をワイヤホイールブラシ4,5,6の周速より遅くしておくことにより、丸棒2の減速調整が容易なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明に係る搬送装置の構成を概念的に示した概略斜視図である。
【図2】図1に示す搬送装置の側面図である。
【図3】丸棒と3つのワイヤホイールブラシとの位置関係を示した説明図である。
【図4】第2実施例の搬送装置の構成を概略的に示した側面図である。
【図5】丸棒と保持台と2つのワイヤホイールブラシとの位置関係を示した説明図である。
【図6】図4に示す搬送装置の平面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 搬送装置
2 丸棒(物体)
3 保持台(保持手段)
4〜6 ワイヤホイールブラシ(回転体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
丸棒状または円筒状の物体を軸線方向へ搬送する搬送装置であって、
前記物体をほぼ水平に且つ前記軸線方向へ移動可能に保持する保持手段と、
前記軸線方向に沿って且つ前記物体の周方向に沿って配置されるとともにその物体の周面に当接する複数の回転体とを備え、
前記各回転体は、回転することより前記物体を軸線回りに回転させてその物体を軸線方向へ搬送させることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記物体の回転方向に対する各回転体間の離間距離をその回転方向に沿って順次大きくしたことを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記各回転体の周速は同一であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記各回転体の回転中心の軸線は前記物体の軸線とほぼ平行となっていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の搬送装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の回転体の周面がブラシまたは研磨粒子を有する研磨面となっていることを特徴とする搬送研磨装置。
【請求項6】
前記物体の周面に、周方向に対して異なる2つの位置で接触する接触手段を設けたことを特徴とする請求項5に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記接触手段は、ローラ状の一対の回転部材であり、この回転部材の周速は前記回転体の周速より遅いことを特徴とする請求項6に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記回転部材の回転軸は前記物体の軸線に対して傾斜可能であることを特徴とする請求項7に記載の搬送装置。
【請求項9】
前記回転部材の摩擦係数は、前記回転体の摩擦係数より大きいことを特徴とする請求項7または請求項8に記載の搬送装置。
【請求項10】
前記回転部材の回転方向は、前記物体の回転方向と順方向であることを特徴とする請求項7ないし請求項9のいずれか1つに記載の搬送装置。
【請求項11】
前記回転部材の物体に対する接触面積は、前記回転体の物体に対する接触面積より大きく設定されていることを特徴とする請求項7ないし請求項10のいずれか1つに記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−308274(P2007−308274A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−140224(P2006−140224)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】