説明

搬送陳列用果実容器

【課題】収納された果実が搬送中の振動や衝撃によって損傷されることなく、しかも果実を収納した状態のまま店頭に並べて陳列販売することが可能な、個別包装的機能を備えた搬送陳列用果実容器を提供する。
【解決手段】果実を1つずつ収納する果実収納凹部と果実収納凹部の開口周縁に延設された鍔部とを備えた果実収納体と、果実収納体の果実収納凹部の底面および側面を覆う凹部収容部と、凹部収容部の開口周縁に延設された鍔受け部とを備えた外枠体と、を有し、外枠体の鍔受け部が果実収納体の鍔部に当接して果実収納体を支える構造の非発泡性の樹脂からなる搬送陳列用果実容器であって、果実収納凹部が外枠体に直接接触せず、鍔部が鍔受け部と面接触する平面接触領域と、鍔受け部と接触しない非接触領域と、鍔受け部と線接触するアーチ状接触領域とを有し、果実収納凹部の壁肉厚が果実収納体の上面から果実収納凹部の底面に向かって薄くなっている構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は果実を収納し保護する容器に関し、詳しくは衝撃や振動から果実を保護し、かつ果実を収納した状態で搬送しそのまま陳列販売可能な搬送陳列用果実容器に関する。
【背景技術】
【0002】
桃、林檎、梨、洋梨、無花果等の果実は、輸送時や荷役時の衝撃や振動によって傷が付き易い。果実に傷が付くと、見栄えが悪くなり商品価値が低下するとともに、腐り易くなるなどの問題が生じる。
【0003】
このため、傷つき易い果実については、従来、摘果時に果実個々に発泡樹脂製ネットを被せ表面を保護した状態で箱詰めして出荷し、店頭陳列時には、箱詰めされた果実を箱から取り出し、発泡樹脂製ネットを被せた状態で店頭陳列用プラスチック容器等に小分けして、店頭に陳列して販売する方式が採られている。
【0004】
しかし、個々の果実に発泡樹脂製ネットを被せるのは手間がかかると共に、店頭陳列時に再度店頭陳列用容器に詰めなおす作業も手間がかかるため、上記方式は作業効率が悪いという問題がある。また、発泡樹脂製ネットは衝撃吸収力に優れるものの、発泡樹脂製ネット単体の体積が嵩高になるため、大きな在庫スペースを必要とするという問題がある。
【0005】
特許文献1〜3では、このような問題点を解消するため、果実を1個ずつ個装できる果実収納凹部が設けられた発泡樹脂製の緩衝用容器とこれを受ける発泡樹脂製の支持容器とを組み合わせた果実包装用容器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-64760号公報
【特許文献2】特開2010-64761号公報
【特許文献3】特開平11-43186号公報
【0007】
特許文献1は、弾力性を有する柔軟な発泡樹脂シートから成形され、果実を一つずつ収納できる果実収納凹部が複数列に形成されてなる緩衝用容器と、前記緩衝用容器に比して保形性のある発泡樹脂シートから成形され、緩衝用容器を受支するトレー形状の支持容器とからなる果実包装用容器であって、支持容器は、緩衝用容器の鍔部を受ける側壁部を有するとともに、内方部の複数個所に緩衝用容器の果実収納凹部列間における非凹設部分の一部個所を受ける錐体状の突出支持部が形成され、緩衝用容器を受支した状態において、果実収納凹部の弾性変形を許容できるように設けられたことを特徴とする果実包装用容器に関する。
【0008】
特許文献2は、弾力性を有する柔軟な発泡樹脂シートから成形され、果実を1つずつ収納できる果実収納凹部が複数列に形成されてなる緩衝用容器と、緩衝用容器に比して保形性のある合成樹脂シートから成形され、緩衝用容器を受支するトレー形状の支持容器とからなる果実包装用容器であって、支持容器は、緩衝用容器の鍔部を受ける側壁部を有するとともに、緩衝用容器の果実収納凹部列間に対応する内方部の個所に該果実収納凹部列間の部分を支持する突出支持部が形成されてなり、該突出支持部は、果実収納凹部列に沿う方向に間隔をおいて複数個所に、果実収納凹部列間における非凹設部分もしくはその近傍の一部個所を受ける頂部が形成されるとともに、該複数の頂部のうちの少なくとも一つの頂部が横長に形成されており、該頂部による支持状態において緩衝用容器の前記果実収納凹部列に沿う方向の動きを規制できるように設けられたことを特徴とする果実包装用容器に関する。
【0009】
特許文献3は、果物類を保持できるように形成された果実収納凹部を有する、ポリオレフィン系樹脂発泡シートを成形してなる複数の収納容器単位を、該収納容器単位の開口周縁に 設けた連結部によって同一平面上に連結してなり、且つ上記連結部の破断強度が600〜2000gであることを特徴とする搬送陳列用果物容器に関する。
【0010】
上記特許文献1〜3に係る発泡樹脂製の容器は、果実を衝撃から保護することができるので、個々の果実に発泡樹脂性ネット(保護ネット)を被せなくともよいという長所を備える。しかし、発泡樹脂製容器は発泡樹脂製ネットと同様またはそれ以上に嵩張るので、これらの技術では、在庫スペースが大きくなるという問題点を解消し難い。
【0011】
更に、気泡を含ませた発泡樹脂は、気泡が光を散乱し透明性を阻害するため、容器内部に収容された果実の全体状態を外部から目視することができない。このため、果実の状態を確認するために、販売員や客が収納容器から果実を取り出し手に取って見ようとするが、この際、果実に傷が付く等して商品価値が損なわれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、これらの問題点に鑑みなされたものである。本発明の目的は、作業性よく果実を個別包装することができ、嵩張らず確実に果実を保護でき、かつ果実を収容した状態のままで店頭陳列して販売することができる搬送陳列用果実容器を提供することにある。また、本発明のさらなる目的は、容器内に収納された果実の状態を外部から確実に視認することができる搬送陳列用果実容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明は、次のように構成されている。果実を1つずつ収納する果実収納凹部と前記果実収納凹部の開口周縁に延設された鍔部とを備えた果実収納体と、前記果実収納体の果実収納凹部の底面および側面を覆う凹部収容部と、前記凹部収容部の開口周縁に延設された鍔受け部とを備えた外枠体と、を有し、前記外枠体の鍔受け部が前記果実収納体の鍔部に当接して前記果実収納体を支える構造の搬送陳列用果実容器であって、前記果実収納体及び前記外枠体は、非発泡性の樹脂からなり、前記果実収納凹部は、前記外枠体に直接接触せず、前記鍔部は、前記鍔受け部と面接触する平面接触領域と、前記鍔受け部と接触しない非接触領域と、前記鍔受け部と線接触するアーチ状接触領域と、を有し、前記果実収納凹部は、壁の肉厚が前記果実収納体の上面から前記果実収納凹部の底面に向かって薄くなっている。
【0014】
上記構成では、外枠体、果実収納体ともに非発泡性の樹脂からなるが、非発泡性樹脂は、同一体積あたりの強度が発泡性樹脂よりも高い。よって、搬送陳列用果実容器の体積を小さくしても十分な強度を確保できるが、その一方、同一質量当たりでは、発泡性樹脂に比べて衝撃緩和作用(内容物保護機能)が小さいという問題がある。
【0015】
上記構成においては、果実収納体の果実収納凹部と、外枠体の凹部収容部とが接触しない構造が採用されているので、外枠体が横方向や下方向からの衝撃力を受け止めるので、外部からの衝撃や振動が果実収納体に直接作用することが無い。
【0016】
また、上記構成では、果実を収納する果実収納凹部が、上面から底面に向かって肉厚が薄くなる構造が採用されている。この構造であると、荷役作業などにおいて上下方向に過大な衝撃力が加わったときには、果実の重力加速度に応じて果実収納凹部が底面側に伸びるので、果実に作用する衝撃力が緩和される。これにより、果実の傷付きが防止される。
【0017】
さらに、上記構成では、前記果実収納体の鍔部と前記外枠体の鍔受け部とが、線接触するアーチ状接触領域を有している。アーチ状接触領域は、果実収納凹部に伝播する衝撃、振動を和らげる作用がある。また、前記果実収納体の鍔部には、外枠体の鍔受け部と接触しない非接触領域が形成されており、この非接触領域においては鍔部と鍔受け部との間に隙間が形成され、この隙間が果実収納凹部に伝わる衝撃・振動を緩和するように作用する。その一方、鍔部と鍔受け部とが平面的に接触している平面接触領域が、果実収納体を安定的に支持するので、果実の重さによって果実収納凹部が過剰に沈み込むことはない。
【0018】
以上の説明のごとく、果実収納凹部が耐衝撃性を備えた個別包装材的に機能を有するので、上記構成にかかる搬送陳列用果実容器であると、保護ネットを被せることのない果実をそのまま果実収納凹部に収納するだけで、輸送時や荷役時の振動・衝撃から果実を保護することができる。また、上記構成にかかる搬送陳列用果実容器は、非発泡性の樹脂からなるので、発泡性樹脂を用いた容器または発泡樹脂製ネットで包んだ後に箱に収容する包装形態に比較し、体積当たりの収納力に優れる。よって、店舗や倉庫における在庫スペースが小さくて済む。
【0019】
また、非発泡性樹脂を用いてなる上記搬送陳列用果実容器は、外部からの視認性を確保することができるので、果実を収納した状態のままで店頭陳列することが可能であり、店頭陳列のための詰め替え作業を必要としない。この分、果実販売における労力を軽減することができる。さらに、非発泡性樹脂は発泡性樹脂に比較して安価であり、容器成型も容易であるので、より低コストでもって搬送陳列用果実容器を提供することができる。
【0020】
上記構成において、前記鍔部の肉厚が、0.1mm以上0.3mm以下であり、前記果実収納凹部の肉厚が、0.01mm以上で且つ前記鍔部の肉厚以下である構成とすることができる。
【0021】
鍔部の肉厚が薄すぎると強度が不十分となるおそれがあり、厚すぎると体積増加や材料コスト高を招く。このため、鍔部の肉厚は、0.1mm以上0.3mm以下とすることが好ましい。また、果実収納凹部の肉厚が薄すぎると果実を収納したときに果実収納凹部が破れるおそれがあり、厚すぎると果実収納凹部壁面の剛性が強くなり果実を傷つけるおそれがある。よって、果実収納凹部の厚みは、0.01mm以上且つ鍔部の肉厚以下とすることが好ましい。
【0022】
上記構成において、前記果実収納凹部の底面と、前記凹部収容部の底面との距離が、0.5cm以上1cm以下である構成とすることができる。
【0023】
また、上記構成において、前記縁部の上面と、前記鍔部の最も高い面との距離が、0.3cm以上1cm以下である構成とすることができる。
【0024】
この構成では、果実収納凹部の底面と、凹部収容部の底面との距離を、0.5cm以上1cm以下とし、鍔受け部の上面と、鍔部の最も高い面との距離を、0.3cm以上1cm以下とするが、このような構成であると、衝撃や振動を吸収する十分な緩衝性が得られる。
【0025】
上記構成において、前記収納容器の内側底面には、環状の底溝が形成され、前記果実収納凹部の内側面には、前記果実収納凹部上端から前記底面に至る複数の側面溝が形成され、前記複数の側面溝と前記底溝とが連通している構成とすることができる。
【0026】
この構成では、冷蔵保管時等に果実表面に露つきが発生した場合、当該露が複数本の側面溝に導かれて底側に流れ、環状の溝に貯まる。つまり、この構成であると、露が果実表面に留まらないので、露に起因するカビの発生や果実の腐敗を抑制することができる。
【0027】
上記構成において、前記果実収納体及び前記外枠体は、透明である構成とすることができる。
【0028】
この構成であると、容器内に収納された果実の状態を外部から確実に視認することができる。よって、店員や客が果実の状態を確認するためにいちいち果実を手に取って見る必要がないので、たびたびの確認行為によって果実が傷付き、商品価値が短期に低下してしまうという問題を防止することができる。
【0029】
なお、本発明では非発泡性樹脂を用いるので、容易に透明な搬送陳列用果実容器を作製することができるが、ここでいう透明とは100%の透明を意味しない。散乱が小さい半透明や、特定波長の光のみを吸収する有色透明もここでいう透明に含まれる。
【発明の効果】
【0030】
以上に説明したように、本発明によると、果実を簡単な作業で、効率よく嵩高くなく収納でき、かつ収納された果実が搬送中の振動や衝撃によって損傷されることのない耐衝撃緩衝性を備え、しかも果実を収納したままの状態で店頭に並べて陳列販売することが可能な、個別包装的機能を備えた搬送陳列用果実容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、実施の形態1にかかる搬送陳列用果実容器の一方部材である果実収納体の外観を示す斜視図である。
【図2】図2は、実施の形態1にかかる搬送陳列用果実容器の他方部材である外枠体の外観を示す斜視図である。
【図3】図3は、実施の形態1にかかる搬送陳列用果実容器を示す正面図である。
【図4】図4は、実施の形態1にかかる果実収納体の正面図である。
【図5】図5は、実施の形態1にかかる果実収納体の平面図である。
【図6】図6は、図4のA−A線断面図である。
【図7】図7は、図4のB−B線断面図である。
【図8】図8は、実施の形態1にかかる外枠体の正面図である。
【図9】図9は、実施の形態1にかかる外枠体の側面図である。
【図10】図10は、実施の形態1にかかる外枠体の平面図である。
【図11】図11は、図10のC−C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(実施の形態1)
本発明を実施するための形態を、図面を用いて詳細に説明する。なお、本発明は下記の形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することができる。
【0033】
図1は、実施の形態1にかかる搬送陳列用果実容器の一方部材である果実収納体の外観を示す斜視図であり、図2は、実施の形態1にかかる搬送陳列用果実容器の他方部材である外枠体の外観を示す斜視図である。実施の形態1にかかる搬送陳列用果実容器は、図1に示す果実収納体10と図2に示す外枠体20とからなり、外枠体20に果実収納体10を収容することにより、搬送陳列用果実容器が構成される。
【0034】
図3は、実施の形態1にかかる搬送陳列用果実容器を示す正面図である。図4は、実施の形態1にかかる果実収納陳列容器の果実収納体の正面図であり、図5は、実施の形態1にかかる搬送陳列用果実容器の果実収納体の平面図である。また、図6は、図5のA−A線断面図であり、図7は、図5のB−B線断面図である。
【0035】
図8は、実施の形態1にかかる搬送陳列用果実容器の外枠体の正面図であり、図9は、実施の形態1にかかる搬送陳列用果実容器の外枠体の側面図であり、図10は、実施の形態1にかかる搬送陳列用果実容器の外枠体の平面図であり、図11は、図10のC−C線断面図である。
【0036】
図3に示すように、本実施の形態にかかる搬送陳列用果実容器は、果実を一つずつ収納する果実収納凹部11が設けられた果実収納体10(図1)と、果実収納体10を外側から支持する外枠体20(図2)と、が重ね合わされてなる。そして、果実収納体10と外枠体20とが重ねあわされた状態において、果実収納凹部11と外枠体20とが接触しておらず、両者間に空隙が設けられている。
【0037】
この空隙は適当に設定することができるが、好ましい空隙とするには、例えば果実収納凹部11の底面と、外枠体20の底面との距離を、0.5cm以上1cm以下とする。
【0038】
果実収納体10及び外枠体20の材料としては、非発泡性の樹脂であれば特に材料は限定されないが、熱可塑性樹脂が成型が容易である点で好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド6・ポリアミド12等のポリアミド樹脂等を用いることができる。
【0039】
果実収納体10及び外枠体20の材料は、果実の状態を外部より観察し易い点で、透明性材料が好ましいが、必ずしも完全な透明である必要はない。例えば顔料等により着色されていてもよく、その他の可塑剤や添加剤等により光の一部が散乱される半透明でもよい。なお、不透明であることを排除するものではないので、果実の種類や容器の使用態様を考慮して透明、半透明、不透明を適当に設定すればよい。
【0040】
説明の都合上、先に本実施の形態にかかる外枠体20の構造を図2、図8〜11を参照しつつ説明する。
【0041】
外枠体20は、図7に示すように、果実収納体10の果実収納凹部11を接触しない状態で収容し果実収納凹部11の側面を覆う凹部収容部21と、凹部収容部21の上面の周縁であって果実収納体10の鍔部12を受ける鍔受け部22と、を備え、鍔受け部22の端部には、鍔受け部22が底側に折り返されたエッジ部24が設けられている。
【0042】
また、図10、11に示すように、外枠体20の凹部収容部21の底面であって、果実収納凹部11の底面と対向する位置には、強度を増すために果実収納凹部11側に突出した凸部21aが設けられており、2つの果実収納凹部11の間となる凹部収容部の中央には、強度を増すために内側に突出した構造の橋状部23が設けられており、凹部収容部21の側面部には、強度を増すために凹凸部25が設けられている(図8、9参照)。なお、凸部21a、橋状部23、凹凸部25は、本発明の必須の構成要素ではない。
【0043】
次に本実施の形態にかかる果実収納体10を、図1、図4〜7を参照しつつ説明する。
【0044】
図6,7に示すように、果実収納体10は、果実を一つずつ収納する断面略半円状の果実収納凹部11と、果実収納凹部11周縁の鍔部12と、を有している。また、図1,6,7に示すように、鍔部12の端部には、鍔部12が底側に折り返されたエッジ部14が形成されている。
【0045】
なお、本実施の形態では、果実収納凹部11が2つである例を示しているが、この数に限定されることは無い。果実収納凹部11は通常、1つ、2つ、4つなどである。果実収納凹部11の平面形状は略円形(図5参照)、断面形状は略半円形(図6,7参照)としているが、この形状に限定されるものではなく、果実の形状に合わせて適宜変更することができる。
【0046】
また、図1,5に示すように、2つの果実収納凹部11の中間には、鍔部12よりも高さの低い境界部15が設けられている。この境界部15を設けることにより、2つの果実収納凹部11の間隔を狭めることができるが、この境界部15は本発明の必須の構成要素ではない。
【0047】
また、図1,4,5に示すように、果実収納凹部11の傾斜面には、上面(鍔部11側)から底面側に向かう、外側に突き出てなる複数本の側面溝11aが形成され、また果実収納凹部11の底面には、環状の底溝11bが設けられており、複数本の側面溝11aのそれぞれと底溝11bとは連通している。上記側面溝11aは、例えば果実収納凹部11の壁面を筋状に外方に押し出すことにより形成した谷状の溝(内側から見た谷溝)である。
【0048】
また、図1,4,5に示すように、果実収納体10の鍔部12の四隅、及び長辺の中央部、及び短辺の中央部、及び四隅から長辺の長さの1/4の地点には、外枠体20と面接触する接触領域12a、12b、12c、12dが設けられており、さらに接触領域12aと接触領域12cとの間及び接触領域12bと接触領域12cとの間には、アーチ状接触領域12eが設けられている。
【0049】
この構造により、果実収納体10が外枠体20に収容されたとき、果実収納体10の鍔部12のうち接触領域12a〜12d及びアーチ状接触領域12e以外の残余の部分は、外枠体20の鍔受け部22と接触せず、果実収納体10が外枠体20から浮いた状態(鍔部の一部が鍔受け部22に接触しない状態)が形成される。
【0050】
なお、果実収納体10の鍔部は、外枠体の鍔受け部側の面(図1背面側の面)が機能面となる。
【0051】
鍔受け部の上面と、この面に対向する鍔部の最上方に位置する面(背面側の非接触領域面)との距離は、衝撃吸収性の点から、0.3cm以上1cm以下であることが好ましい。
【0052】
ここで、接触領域の配置は上記に限定されるものではないが、鍔部12の少なくとも四隅に接触領域を設けることが好ましく、さらに鍔部12の長辺及び短辺の中央部等に設けることが好ましい。また、アーチ状接触領域12eの配置も上記に限定されるものではないが、好ましくは1つの果実収納凹部11に対して2〜12個設けるのがよい。
【0053】
果実収納凹部11は、図6、7に示すように、壁の肉厚が底側に向かって薄くなるように構成されている。鍔部の肉厚は、好ましくは0.1mm以上0.3mm以下とする。また、果実収納凹部の肉厚は、好ましくは0.01mm以上且つ前記鍔部の肉厚以下とする。
【0054】
上記した外枠体20の凹部収容部21及び果実収納体10の果実収納凹部11には、図1、2に示されるように、底側に突き出た突起13、26がそれぞれ設けられている。これらの突起は、果実収納体相互、外枠体相互を重ねて保管したときに、密着して剥がしにくくなることを防止するためのものである。これらの突起は、本発明の必須の構成要素ではない。
【0055】
果実収納体10及び外枠体20は、シート状の熱可塑性樹脂をプレス成型することにより作製することができる。ただし、この方法に限定されるものではなく、例えば射出成型を用いて作製することもできる。なお、シート状の熱可塑性樹脂をプレス成型する場合、プレスによるシート材の移動が生じるので、容易に果実収納凹部の肉厚を底側に向かって薄く形成することができる。
【0056】
上記構造の搬送陳列用果実容器は、次のような効果を奏する。
【0057】
(1) 外枠体20及び果実収納体10は、非発泡性の樹脂からなり、非発泡性の樹脂は発泡性の樹脂よりも単位体積あたりの強度が高いため、発泡性樹脂の容器を用いる場合に比べ、保管時に容器が嵩張ることがない。また、容器への成型が発泡性樹脂よりも容易となる。
【0058】
(2) 果実を収納する果実収納凹部11が、上面から底面に向かって肉厚が薄くなっており、柔軟性が高いので、果実収納凹部11が果実に傷をつけることが無い。
【0059】
(3) 果実収納体10の果実収納凹部11と、外枠体20の凹部収容部21と、が接触していないので、果実収納体10に直接衝撃・振動が作用することが無く、且つ、果実収納凹部11に伝播する衝撃、振動が、凹部収容部21と果実収納凹部11との間の空隙によって吸収されるので、輸送や荷役時に果実が傷付くことが防止される。
【0060】
(4) 果実収納体10の鍔部12と、外枠体20の鍔受け部21と、が線接触するアーチ状接触領域12eを有しており、アーチ状接触領域12eは、果実収納凹部11に伝播する衝撃、振動を吸収するので、輸送や荷役時に果実が傷付くことがさらに防止される。
【0061】
(5) 果実収納体10の鍔部12には、外枠体20の鍔受け部22と接触しない非接触領域を有しており、非接触領域における鍔部12と鍔受け部22との間の空隙もまた、果実収納凹部11に伝播する衝撃、振動を吸収するので、輸送や荷役時に果実が傷付くことがさらに防止される。
【0062】
(6) 果実を冷蔵保存する場合、露が生じることがあるが、この露は溝部11aを伝って底面側に移動し、溝部11aと連通した環状溝11bにたまることとなるので、露に起因する果実の腐敗等が防止される。
【0063】
(7) 透明な熱可塑性樹脂を用いると、果実を直接手に取ることなく容器内部の果実の状態を確認できるため、果実を手に取ることによる果実の傷付きを防止できる。
【0064】
(8) また、上記搬送陳列用果実容器は、そのまま店頭陳列が可能であるので、陳列の際の詰め替えが不要で有り、作業効率に優れる。
【0065】
(9) 鍔部12には、鍔受け部22と平面同士で接触する領域(接触領域12a〜12d)があるために、外枠体20が果実収納体10を十分に支持でき、果実の重さによって果実収納体が変形して果実収納凹部11と凹部収容部21とが接触することが無い。
【0066】
(10) 果実収納凹部11への果実の収納が、発泡ネットを用いるよりも非常に容易である。
【0067】
これらの効果が相乗的に作用して、嵩張ることが無く、果実を傷つけることが無く、果実を簡便に収納でき、輸送から陳列までを行うことのできる搬送陳列用果実容器が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上に説明したように、本発明によれば、嵩張ることが無く、果実に傷をつけることのない、搬送及び店頭陳列に適した搬送陳列用果実容器を実現することができる。よって本発明の産業上の利用可能性は大きい。
【符号の説明】
【0069】
10 果実収納体
11 果実収納凹部
11a 側面溝
11b 底溝
12 鍔部
12a 接触領域
12b 接触領域
12c 接触領域
12d 接触領域
12e アーチ状接触領域
13 突起
14 エッジ部
15 境界部
20 外枠体
21 凹部収容部
21a 凸部
22 鍔受け部
23 橋状部
24 エッジ部
25 凹凸部
26 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
果実を1つずつ収納する果実収納凹部と前記果実収納凹部の開口周縁に延設された鍔部とを備えた果実収納体と、
前記果実収納体の果実収納凹部の底面および側面を覆う凹部収容部と、前記凹部収容部の開口周縁に延設された鍔受け部とを備えた外枠体と、を有し、
前記外枠体の鍔受け部が前記果実収納体の鍔部に当接して前記果実収納体を支える構造の搬送陳列用果実容器であって、
前記果実収納体及び前記外枠体は、非発泡性の樹脂からなり、
前記果実収納凹部は、前記外枠体に直接接触せず、
前記鍔部は、前記鍔受け部と面接触する平面接触領域と、前記鍔受け部と接触しない非接触領域と、前記鍔受け部と線接触するアーチ状接触領域と、を有し、
前記果実収納凹部は、壁の肉厚が前記果実収納体の上面から前記果実収納凹部の底面に向かって薄くなっている、
ことを特徴とする搬送陳列用果実容器。
【請求項2】
前記鍔部の肉厚が、0.1mm以上0.3mm以下であり、
前記果実収納凹部の肉厚が、0.01mm以上で且つ前記鍔部の肉厚以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載の搬送陳列用果実容器。
【請求項3】
前記果実収納凹部の底面と、前記凹部収容部の底面との距離が、0.5cm以上1cm以下である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の搬送陳列用果実容器。
【請求項4】
前記鍔受け部の上面と、前記鍔部の最も高い面との距離が、0.3cm以上1cm以下である、
ことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の搬送陳列用果実容器。
【請求項5】
前記収納容器の内側底面には、環状の底溝が形成され、
前記果実収納凹部の内側面には、前記果実収納凹部上端から前記底面に至る複数の側面溝が形成され、
前記複数の側面溝と前記底溝とが連通している、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の搬送陳列用果実容器。
【請求項6】
前記果実収納体及び前記外枠体は、透明である、
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の搬送陳列用果実容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−101837(P2012−101837A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253780(P2010−253780)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(510300692)ミネロン化成工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】