説明

搭載型無人飛行機回収装置及び搭載型無人飛行機回収装置を備えた無人飛行機

【課題】十分な滑走着陸場所の得られない場合の無人機の回収において、無人機の損傷を回避、低減化し、また同時に周囲の器物を損傷させない衝撃吸収用バルーンを用いた無人機回収装置を提供する。
【解決手段】無人機1に搭載される無人機回収装置15は、気体を流入されて膨らむバルーン7と、バルーン7を膨らませる気体を流出するガスボンベ10と、ガスボンベ10からバルーン7へ気体が流入する流路となるエアーチューブ9と、流路の途中に設けられ、閉状態を維持することによりガスボンベ10らバルーン7への気体の流入を阻止するとともに、開状態を指示する電磁弁開放信号を入力すると、閉状態から開状態となってガスボンベ10からバルーン7へ気体を流入させる電磁弁8と、電磁弁開放信号を生成して電磁弁8に出力することにより閉状態の電磁弁8を開状態にさせるコントローラ11とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無人飛行機(以下、無人機ともいう)を着陸させる、もしくは回収するために衝撃吸収用のバルーンを膨張させる無人飛行機回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
模型飛行機を飛行させる際、電波障害による操縦不能時や、操縦ミスによる制御不能時などの緊急時に、機体を墜落させることなく、かつ衝撃などによって周囲に害をおよぼすことのないように、パラシュート等の安全装置を用いて、模型飛行機を確実に回収する手段が利用されている。
【0003】
従来の無人飛行機の回収方法では、安全保護スイッチを押すことで、機体内部に搭載されたパラシュートを射出させ、その後開傘されたパラシュートで無人飛行機を安全に着陸させるパラシュート射出型回収装置が知られている(例えば特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2006−306264号公報
【特許文献2】特開2002−200369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のパラシュートを用いた回収装置では、射出されたパラシュートが風圧を受けて機体後方に流され、垂直尾翼等の後方構造物と干渉して、パラシュートが完全に開傘できなくなるという課題があった。
【0005】
また、パラシュートの畳み方に不備があった場合、パラシュートに十分な空気をはらませることができず、パラシュート自体が絡まり、パラシュートが完全に開傘しない場合があるという課題があった。
【0006】
また、同一パラシュートを繰り返し使用している場合、経年劣化によりパラシュートやパラシュート支持用の紐が切れる場合があり、安全に回収できないという課題があった。
【0007】
また、パラシュートが完全に開傘した場合においても、地上風速が比較的強い場合、機体がパラシュート支持点を中心に遥動し、機体下部から着陸できず、翼等の比較的強度の弱い構造物から着陸することがあり、機体を一部破損してしまうという課題があった。
【0008】
また、パラシュートが完全に開傘した場合においても、着陸点に岩石等の鋭利な構造物がある場合機体を損傷してしまうという課題があった。
【0009】
パラシュートを用いずに滑走着陸を行う場合、仮に着陸点に草木や岩石等があると着陸時にそれら草木や岩石等に無人機1の主翼2等が絡まり、水平に着陸することができず損傷することがあるという課題があった。
【0010】
この発明は、係る課題を解決するためになされた物であり、パラシュートを用いた無人機の回収装置を併用し、パラシュートによる回収が正常に動作しない場合でも、着陸時の機体や着陸点周囲の構造物の損傷を回避、低減し、より確実に無人機を回収することを目的としている。
【0011】
また、パラシュートを用いた無人機の回収装置を併用せずに滑走着陸する場合でも、衝撃吸収装置として使用することができ、機体や機体内部のペイロードの破損や、周囲の構造物への損傷を最小限に抑えることも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の搭載型無人飛行機回収装置は、
無人で飛行する無人飛行機に搭載され、前記無人飛行機の回収に使用される搭載型無人飛行機回収装置において、
気体を流入されて膨らむバルーンと、
前記バルーンを膨らませる前記気体を流出する気体流出部と、
前記気体流出部から前記バルーンへ前記気体が流入する流路となる流路部と、
前記流路の途中に設けられ、閉じた閉状態を維持することにより前記気体流出部から前記バルーンへの前記気体の流入を阻止するとともに、開いた開状態を指示する開指示信号を入力すると、前記閉状態から前記開状態となって前記気体流出部から前記バルーンへ前記気体を流入させる電磁弁と、
前記開指示信号を生成し、生成した前記開指示信号を前記電磁弁に出力することにより前記閉状態の前記電磁弁を前記開状態にさせる制御部と
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明により、パラシュートを用いた無人飛行機の回収装置を搭載することなく、無人飛行機を回収することができる無人飛行機回収装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
実施の形態1.
以下、図を用いて、実施の形態1に係る「バルーンを用いた無人機回収装置15」(以下、無人機回収装置15という場合もある。)について説明する。図に記載する無人機1には、各種の機器が搭載されているが、ここではこの無人機回収装置15に関する部分を説明する。
【0015】
図1および図2は、この発明の実施の形態1における、無人機1装置の構成を示すものである。図1において、無人機1は、主翼2と、垂直尾翼3と、水平尾翼4、パラシュート射出装置5、及び無人機回収装置15から構成される。
【0016】
図2において、無人機回収装置15は、衝撃吸収用のバルーン7、電磁弁8、エアーチューブ9(流路部)、ガスボンベ10(気体流出部)、コントローラ11(制御部)、無線機12(通信部)を備える。
【0017】
(1)バルーン7は収縮し畳まれた状態で機体下部のバルーン収納部19に格納されており、薄いフィルムによって蓋がされている。
(2)ガスボンベ10はバルーン7を膨張させるための圧縮ガスを内蔵しており、その内蔵量は標準状態で無人機1の主翼スパンの長さを直径とした球体の体積より大きいものとする。
(3)電磁弁8はガスボンベ10からのガスをバルーン7に流入させるためのスイッチとして動作し、後述するコントローラ11と電気的に接続されている。
(4)エアーチューブ9によって、バルーン7と電磁弁8とガスボンベ10とは流体路で接続されている。
(5)コントローラ11は電磁弁8と電気的に接続されており、電磁弁8の開閉を制御することができ、またコントローラ11は地上系スイッチ13と無線機12を介して電気的に接続されている。
【0018】
図4において、無人機回収装置15による無人機1の回収のフローを説明する。以下、図2、図3、図4を用いてバルーン回収装置の動作を説明する。図3は、無人機回収装置15により、無人機1が回収された様子を示す図である。図4は、無人機回収装置15の動作を示すフローチャートである。
【0019】
図2に示すように、無人機回収装置15の作動前のバルーン7は、無人機1の下部に設けられたバルーン収納部19に収納されており、薄いフィルムによって蓋がされ外界から隔絶されている。このフィルムはバルーンが飛行途中に落下するのを防ぐだけでなく、無人機1が受ける空気抵抗を低減化する効果も有する。また、バルーン7内は真空となっており、バルーン7は小さく折りたたまれている状態にある。バルーン7はエアーチューブ9を通じてガスボンベ10と接続されており、その間の流体路は電磁弁8によって閉じられた状態になっている。
【0020】
本実施の形態1の無人機回収装置15は、無人機1が操作不能もしくは制御不能になったときや、飛行プログラムあるいは地上からの遠隔操作により無人機1を着陸させる場合など、無人機1の飛行中に機体の回収を行う際、パラシュート射出装置5と無人機回収装置15とを同時に動作させる。
【0021】
図4のフローチャートを参照して説明する。動作を開始するには、無人機1に搭載されているコントローラ11から着陸指令信号を送出する(ステップS1)。この着陸指令信号は、例えば、飛行プログラムの実行結果として、コントローラ11が送出する。または、図2に示すように、地上局の地上側無線機に接続している地上系スイッチ13をONにし、地上側無線機から無人機1の無線機12を介して「着陸指令信号」(開状態要求信号)を送出する(ステップS2)。上記いずれかの着陸指令信号を受けたコントローラ11は、パラシュート射出信号(射出指示信号)および電磁弁開放信号(開指示信号)を送出する(ステップS3)。コントローラ11からのパラシュート射出信号を受けたパラシュート射出装置5は、パラシュートを射出し、開傘させる(ステップS4)。また、同時に、コントローラ11からの電磁弁開放信号を受けた電磁弁8は弁を開放状態にし、ガスボンベ10内のガスをバルーン7へ流入させ、バルーン7を膨張させる(ステップS5、S6、S7)。バルーン7は、その膨張する力によりバルーン7を覆っていた機体下部のフィルムを突き破り、無人機1を機体下部から覆いこむ(ステップS8)。その後、無人機1は緩やかに落下し、着陸する。図3は、パラシュート開傘及びバルーン展開後の着陸の様子を示す。
【0022】
バルーン7は、その弾力性により着陸後に徐々に収縮し、無人機1の落下の衝撃を緩和する効果がある。無人機1はパラシュート6を中心として遥動し主翼2や水平尾翼3等の比較的強度が弱い部材から着陸することがあるが、無人機1は膨張したバルーン7によって下部から覆い包まれているので、主翼2や水平尾翼3等の比較的強度の弱い部材を損傷することはない。また、仮に着陸点に岩石等の構造物があったとしても膨張したバルーンの弾性力により機体が損傷することはない。
【0023】
上記、無人機1回収過程において、仮にパラシュート射出装置が、パラシュート自体のからまりやパラシュートの経年劣化による動作不良等、何らかの原因により動作しなかった場合や、パラシュートが非開傘に終わった場合でも、バルーン回収装置により、無人機1は機体下部からバルーン7によって覆い包まれているので、機体の損傷を低減下することができ、回収装置の二重化を図ることができる。
【0024】
実施の形態2.
以下、図5、図6を用いて実施の形態2を説明する。実施の形態2は、無人機1が、パラシュート射出装置5を使用せず、バルーンを用いた無人機回収装置15のみを搭載する実施形態である。
【0025】
図5において、無人機1は、主翼2と、垂直尾翼3と、水平尾翼4、無人機回収装置15から構成される。図2の実施の形態1と異なり、パラシュート射出装置5を併用しない構成となっている。図6は、実施の形態2のバルーンを用いた無人機回収装置15による無人機1の回収までのフロー示す図である。
【0026】
無人機1を滑走着陸させる際に、無人機1を低空で進入させ、予定着陸ポイント上空に達したときにバルーン回収装置を動作させる。
【0027】
動作を開始するには、無人機1に搭載されているコントローラ11から着陸指令信号を送出する(ステップS1)。または、地上系スイッチ13をONにし、無線機12を通じて着陸指令信号を送出する(ステップS2)。上記いずれかの着陸指令信号を受けたコントローラ11は、電磁弁開放信号(開指示信号)を送出する(ステップS9)。以後の動作シーケンスについては実施の形態1の図4と同様である。
【0028】
実施の形態2の無人機回収装置15によれば、次の効果がある。パラシュートを用いずに滑走着陸を行う場合、仮に着陸点に草木や岩石等があると着陸時にそれら草木や岩石等に無人機1の主翼2等が絡まり、水平に着陸することができず損傷することがあるが、バルーン7を着陸直前に展開することにより、機体や機体内部のペイロードの破損や、周囲の構造物への損傷を最小限に抑えることができる。
【0029】
また、パラシュートを使用しないことにより、パラシュートを併用する場合と比べ、コストが安く済むという利点がある。また、バルーンのみを使用する場合は、パラシュートを使用する場合に比べて、装置の小型化、軽量化を図ることができる。
【0030】
以上の実施の形態では、バルーンと、バルーンを膨張させるためのガスボンベと、ガス圧を開放してボンベ内のガスをバルーンへ流入させる電磁弁と、電磁弁を制御するコントローラとを備えた衝撃吸収バルーンを用いた無人機回収装置を説明した。
【0031】
以上の施の形態では、次の無人機回収装置を説明した。すなわち、無人機の機体下部にバルーン収納部を設け、その中に収縮状態のバルーンを搭載する。収縮状態のバルーンはエアーチューブにより電磁弁につながれており、さらに電磁弁はエアーチューブによりガスボンベと接続されている。コントローラからの信号に対応して電磁弁がオンになるとガスボンベと収縮状態のバルーンがエアーチューブにより流路が接続され、内圧の高いガスボンベに内蔵されたガスがバルーンへと流入し、バルーンを膨張状態にする。これによって、膨張したバルーンは、無人機下部から、無人機全体を包み込み、着陸時の衝撃から機体を保護することができる。
【0032】
以上の実施の形態では、バルーンにガスを流入させる電磁弁は、上記飛行機に搭載された無線機を通じて遠隔操作が可能な衝撃吸収バルーンを用いた無人機回収装置を説明した。
【0033】
以上の実施の形態では、バルーンとともに無人機の安全な回収手段としてパラシュート射出装置を併せ持ち、回収方法を二重化することにより、より確実に回収することができ、パラシュート開傘と合わせて使用することにより、着陸時の無人機の損傷を回避・低減化し、また同時に周囲の器物を損傷させないことを特徴とした衝撃吸収バルーンを用いた無人機回収装置を説明した。
【0034】
以上の実施の形態では、無人機を滑走着陸させる際に、着陸点近傍の地物への衝突によって生ずる衝撃を緩和することを特徴とした衝撃吸収バルーンを用いた無人機回収装置を説明した。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施の形態1に係る無人機回収装置15の構成を示す図。
【図2】実施の形態1に係る無人機回収装置15の構成を示す側面図。
【図3】実施の形態1に係る無人機回収装置15の作動後を示す図。
【図4】実施の形態1に係る無人機回収装置15の流れを示すフローチャート。
【図5】実施の形態2に係る無人機回収装置15の構成を示す側面図。
【図6】実施の形態2に係る無人機回収装置15の動作を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0036】
1 無人機、2 主翼、3 垂直尾翼、4 水平尾翼、5 パラシュート射出装置、6 パラシュート、7 バルーン、8 電磁弁、9 エアーチューブ、10 ガスボンベ、11 コントローラ、12 無線機、13 地上系スイッチ、14 地面、15 無人機回収装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人で飛行する無人飛行機に搭載され、前記無人飛行機の回収に使用される搭載型無人飛行機回収装置において、
気体を流入されて膨らむバルーンと、
前記バルーンを膨らませる前記気体を流出する気体流出部と、
前記気体流出部から前記バルーンへ前記気体が流入する流路となる流路部と、
前記流路の途中に設けられ、閉じた閉状態を維持することにより前記気体流出部から前記バルーンへの前記気体の流入を阻止するとともに、開いた開状態を指示する開指示信号を入力すると、前記閉状態から前記開状態となって前記気体流出部から前記バルーンへ前記気体を流入させる電磁弁と、
前記開指示信号を生成し、生成した前記開指示信号を前記電磁弁に出力することにより前記閉状態の前記電磁弁を前記開状態にさせる制御部と
を備えたことを特徴とする搭載型無人飛行機回収装置。
【請求項2】
前記搭載型無人飛行機回収装置は、さらに、
前記電磁弁の前記開状態を要求する開状態要求信号を受信し、受信した前記開状態要求信号を前記制御部に出力する通信部を備え、
前記制御部は、
前記通信部から前記開状態要求信号を入力すると、前記開指示信号を生成し、生成した前記開指示信号を前記電磁弁に出力することを特徴とする請求項1記載の搭載型無人飛行機回収装置。
【請求項3】
搭載型無人飛行機回収装置は、さらに、
射出指示信号を入力するとパラシュートを射出するパラシュート射出装置を備え、
前記制御部は、
前記開指示信号を前記電磁弁に出力するときに、前記射出指示信号を生成して前記パラシュート射出装置に出力することを特徴とする請求項1または2のいずれかに搭載型無人飛行機回収装置。
【請求項4】
前記バルーンは、
前記無人飛行機の機体下部に設けられたバルーン収納部に収納されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに搭載型無人飛行機回収装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の搭載型無人飛行機回収装置を備えた無人飛行機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−208674(P2009−208674A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54911(P2008−54911)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】