説明

携帯型心電計

【課題】手で把持する使い方も、胸部に全電極を接触させる使い方もとり得る携帯型心電計を提供する。
【解決手段】扁平かつ細長の略直方体形状のカバー20の幅方向の両側面と長手方向の一側面とに電極22、23、24を配した携帯型心電計において、各電極を、カバーの側面から底面にかけての範囲に連続して露出状態で配設し、且つ、各電極の底面側の部分22b、23b、24bを、カバーの底面よりも突出させた。各電極の側面側の部分22a、23a、24aの表面を、カバーの側面の高さ方向および長さ方向に凸に湾曲する湾曲面で構成した。カバーに上面が開放した凹所を設け、該凹所に心電計本体10を着脱自在に嵌め込んだ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、持ち運びが可能で、さまざまな計測姿勢で心電波形を計測し得る携帯型心電計に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、狭心症や心筋梗塞等の虚血性心疾患の診断には、患者の心電図が利用される。心電波形を計測するために用いられる心電計としては、据置き型の心電計と携帯型の心電計とが知られており、携帯型は、ホルター式心電計と、イベント式心電計とに大別される。
【0003】
イベント式心電計は、動悸、息切れ等の測定すべき自覚症状が発生したときに、心電波形を計測・記憶するものであり、例として、測定すべき自覚症状が発生した場合に、被験者自らが電極を身体に接触させる方式のものがある。イベント式心電計は、必要なときだけ電極を身体に接触させればよいので、被験者にとって使い勝手がよいという利点がある。
【0004】
イベント式の携帯型心電計として、筐体の外表面に電極を設けた構成のものが種々提案されており、特許文献1には、筐体の正面側に表示部を配置し、背面側に身体に接触させる3つの電極を配置し、3つの電極を被験者の胸部に接触させて計測する構成の携帯型心電計が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、扁平で細長の略直方体形状の筐体の幅方向の両側面に負電極と不関電極を設けると共に、長手方向の一側面に正電極を設け、被験者自らが、右手で負電極と不関電極の露出した筐体部分を把持しつつ、長手方向の一側面に設けた正電極を胸部の皮膚に直接接触させることにより、心電波形を計測する構成の携帯型心電計が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開昭61−41438号公報
【特許文献2】特開2003−144403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載のものは、筐体の同じ背面に3つの電極を配しているので、胸部に3つの電極を接触させるという計測姿勢しかとれず、また、特許文献2に記載のものは、筐体の幅方向の両側面と長手方向の一側面に電極を配しているので、右手で筐体を把持して、長手方向の一側面に設けた電極を胸部に接触させるという計測姿勢はとれるものの、特許文献1に記載のように、直接胸部の表面に全電極を接触させるという計測姿勢はとれない。従って、いずれの場合も、様々な計測姿勢をとりながら、各種の心電波形をとるという使い方はできないものであった。
【0008】
本発明は、上記事情を考慮し、手で把持する使い方も、胸部に全電極を接触させる使い方もとり得る携帯型心電計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、扁平かつ細長の略直方体形状の筐体の幅方向の両側面と長手方向の一側面とに電極を配した携帯型心電計において、前記各電極を、前記筐体の側面から底面にかけての範囲に連続して露出状態で配設し、且つ、各電極の底面側の部分を、筐体の底面よりも突出させたことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の携帯型心電計であって、前記各電極の側面側の部分の表面を、前記筐体の側面の高さ方向および長さ方向に凸に湾曲する湾曲面で構成したことを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の携帯型心電計であって、前記筐体に上面が開放した凹所を設け、該凹所に心電計本体を着脱自在に嵌め込むと共に、前記凹所の内面と前記心電計本体の外面との間に、前記各電極と心電計本体の内部回路とを電気接続する手段を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、電極を筐体の側面部分に露出させているので、計測時の姿勢として、例えば、右手で筐体を幅方向に把持することにより、筐体の両側面に露出させた電極に手を接触させることができ、その状態で、把持した手以外の肢体または胸等に、筐体の長手方向の一側面に露出させた電極を接触させることにより、測定回路を形成することができ、心電波形を測定することができる。また、各電極を筐体の底面側にかけて連続させて露出させているので、筐体の底面を胸等に直接押し当てることによっても、全部の電極を皮膚に接触させることができ、その状態で心電波形を測定することができる。従って、様々な計測姿勢に応じた心電波形を取ることができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、各電極の表面を、筐体の側面の高さ方向および長さ方向に凸に湾曲する湾曲面として形成してあるので、手で筐体を把持するときに、電極を手にフィットさせることができ、安定した接触状態を保つことができる。また、胸等の体表面に電極を押し当てる場合にも、電極の表面が湾曲状となっているので、良好な接触状態を保つことができる。また、電極の表面がやや膨らんでいるので、握っただけで電極の位置を確認することができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、筐体と心電計本体を着脱可能としてあるので、筐体から心電計本体を取り外すことにより、心電計本体を共通に使いながら、筐体だけを交換することができる。また、身体の表面に接触させる筐体だけを、心電計本体から取り外して、洗浄したりすることもでき、衛生管理がしやすい。また、心電計本体に蓄積したデータを取り出して外部に送信するときなども、余計な部分(筐体)を取り外せるので、取り扱いやすい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1は実施形態の携帯型心電計1の外観を示し、(a)は上から見た図、(b)は底面側から見た斜視図、図2は同心電計1の多方向から見た図で、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は側面図、(d)および(e)は別の方向から見た側面図である。また、図3はカバー20から心電計本体10を外した状態を示す斜視図である。
【0016】
この携帯型心電計1(以下、単に心電計とも言う)は、図1、図2に示すように、扁平かつ細長の略直方体形状に形成され、取り扱い性を考慮して、片手で把持できる大きさ・重さに小型軽量化されている。
【0017】
本実施形態の携帯型心電計1は、図3に示すように、身体に接触させる電極部分を切り離した心電計本体10と、電極部分を具備し、心電計本体10を嵌め込むことのできるカバー(筐体)20と、からなり、樹脂成形されたカバー20の主体部21は、心電計本体10を上から嵌め込むことができるように、上面が開放した凹所を有した箱形に形成されている。
【0018】
即ち、カバー20の主体部21は、心電計本体10を収納できるように、扁平かつ細長の直方体形状に形成されており、凹部の底をなす底板21aと、凹部の幅方向の両側を囲う左右の側板21bと、長手方向の片側の側面を囲う側板21cと、を有している。長手方向の他方の側板は省略されており、この開放部分を通して、カバー20に収容した心電計本体10と、外部機器との間でケーブル接続できるようになっている。また、底板21aには、コ字状のスリット26aを形成することにより、嵌め込んだ心電計本体10を押し上げる押し出し片26が設けられている。
【0019】
心電計本体10は、扁平で細長の直方体形状の外装ケース11の中に主要機能部を収容したものであり、外装ケース11の上面に、測定結果(心電波形や数値データ)等を表示する液晶ディスプレイ等の表示部12と、各種の操作部13、14とが設けられている。また、外装ケース11の底部側の表面には、カバー20の凹所に心電計本体10を嵌め込んだ際に、カバー20側の接触端子部と接触導通する端子(図示略)が設けられている。
【0020】
また、カバー20には、幅方向の両側板21bの外面(側面)と、長手方向の側板21cの外面(側面)とに電極22、23、24が配されている。幅方向の両側板21bの外面(側面)の2つの電極22、23のうちの一方は、一対の測定電極のうちの一方(第1)の電極(負電極)であり、他方は、身体の電位変化の基準となる電位を導出するための中性電極(不関電極)である。中性電極は、計測時において、身体に生じる電位変動を検知する電極で、測定結果に含まれる誤差成分を除去するための補正値を得るためのものである。また、長手方向の側板21cの外面(側面)の電極24は、一対の測定電極の他方(第2)の電極(正電極)である。
【0021】
各電極22、23、24は、カバーの側板21b、21cの外面(側面)から底板21aの外面(底面)にかけての範囲に連続して露出状態で配設されており、各電極22、23、24の底面側の部分22b、23b、24bは、カバー20の底板21aの下面よりも突出している。また、各電極22、23、24の側面側の部分22a、23a、24aの表面は、カバーの側板21b、21cの高さ方向および長さ方向に凸に湾曲する湾曲面として形成されている。
【0022】
各電極22、23、24は、銀メッキ等の箔状のものによって形成されており、それぞれ凹所の内部の接触端子部(図示略)に導通されている。そして、この接触端子部と心電計本体10側の端子によって、各電極22、23、24と心電計本体10の内部回路とを電気接続する手段が構成されている。
【0023】
次に、上述の構成の携帯型心電計1を用いて心電波形を計測する際に、被験者がとるべき計測姿勢について説明する。主にとり得る姿勢としては、図4〜図6に示すような3つの姿勢がある。
【0024】
まず、図4に、両手で測定する場合を示す。この場合は、例えば、右手HRで心電計1を幅方向に把持し、長手方向の端部を左手HLに押し当てる。こうすることにより、右手の表面に第1の電極22と中性電極23(22と23は逆でも可)が接触する。また、左手の表面に第2の電極24が接触する。これにより、測定回路が形成されて、心電波形が測定される。
【0025】
次に、図5に、右手で心電計1を把持して、心電計1の端部を胸部に当てる場合を示す。この場合は、右手HRで心電計1を幅方向に把持し、長手方向の端部を胸部に押し当てる。こうすることにより、右手の表面に第1の電極22と中性電極23(22と23は逆でも可)が接触し、胸部の表面に第2の電極24が接触する。これにより、測定回路が形成されて、心電波形が測定される。
【0026】
次に、図6に、右手で心電計1を押さえつつ、心電計1の下面を胸部に当てる場合を示す。この場合は、各電極22、23、24の底面側の部分22b、23b、24b(図1参照)を、胸部の表面に全て押し当てることができる。従って、これにより、心臓の近傍に測定回路が形成されて、心電波形が測定される。
【0027】
以上のように、電極22、23、24を心電計1の側面部分に露出させているので、計測時の姿勢として、例えば、右手で心電計1を幅方向に把持することにより、心電計1の両側面に露出させた電極22、23に手を接触させることができ、その状態で、把持した手以外の肢体または胸等に、心電計1の長手方向の一側面に露出させた電極24を接触させることにより、測定回路を形成することができ、心電波形を測定することができる。
【0028】
また、各電極22、23、24を心電計1の底面側にかけて連続させて露出させているので、心電計1の底面を胸等に直接押し当てることによっても、全部の電極22、23、24を皮膚に接触させることができ、その状態で心電波形を測定することができる。従って、様々な計測姿勢に応じた心電波形を取ることができる。
【0029】
また、各電極22、23、24の表面を、カバー20の側面の高さ方向および長さ方向に凸に湾曲する湾曲面として形成してあるので、手で心電計1を把持するときに、電極22、23を手にフィットさせることができ、安定した接触状態を保つことができる。また、胸等の体表面に電極24を押し当てる場合にも、電極24の表面が湾曲状となっているので、良好な接触状態を保つことができる。また、電極22、23の表面がやや膨らんでいるので、握っただけで電極22、23の位置を確認することができる。
【0030】
また、本実施形態の心電計1では、カバー20と心電計本体10を着脱可能としてあるので、カバー20から心電計本体10を取り外すことにより、心電計本体10を共通に使いながら、カバー20だけを交換することができる。また、身体の表面に接触させるカバー20だけを、心電計本体10から取り外して、洗浄したりすることもでき、衛生管理がしやすい。また、心電計本体10に蓄積したデータを取り出して外部に送信するときなども、余計な部分(カバー20)を取り外せるので、取り扱いやすい。
【0031】
なお、上記実施形態では、カバー20と心電計本体10を別体に形成しているが、一体に形成してもよい、その場合は、外装カバーとカバーが、一体の筐体を構成することになる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態の携帯型心電計の外観を示し、(a)は上から見た図、(b)は底面側から見た斜視図である。
【図2】同心電計の多方向から見た図で、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は側面図、(d)および(e)は別の方向から見た側面図である。
【図3】同心電計において、カバーから心電計本体を外した状態を示す斜視図である。
【図4】同心電計の計測姿勢の第1例を示す図である。
【図5】同心電計の計測姿勢の第2例を示す図である。
【図6】同心電計の計測姿勢の第3例を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1 携帯型心電計
10 心電計本体
20 カバー(筐体)
21a 底板
21b 幅方向の側板
21c 長手方向一方側の側板
22,23,24 電極
22a,23a,24a 側面側の部分
22b,23b,24b 底面側の部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平かつ細長の略直方体形状の筐体の幅方向の両側面と長手方向の一側面とに電極を配した携帯型心電計において、
前記各電極を、前記筐体の側面から底面にかけての範囲に連続して露出状態で配設し、且つ、各電極の底面側の部分を、筐体の底面よりも突出させたことを特徴とする携帯型心電計。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯型心電計であって、
前記各電極の側面側の部分の表面を、前記筐体の側面の高さ方向および長さ方向に凸に湾曲する湾曲面で構成したことを特徴とする携帯型心電計。
【請求項3】
請求項1または2に記載の携帯型心電計であって、
前記筐体に上面が開放した凹所を設け、該凹所に心電計本体を着脱自在に嵌め込むと共に、前記凹所の内面と前記心電計本体の外面との間に、前記各電極と心電計本体の内部回路とを電気接続する手段を設けたことを特徴とする携帯型心電計。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate