説明

携帯型無線機

【課題】人識別システム用の携帯型無線機において、消費電力の低減を図ること。
【解決手段】制御部70は、タイマ73によって定まる起動周期毎にスリープ状態から起動するようになっており、スリープ状態では振動センサ60による振動検出結果を保持する。タイマ73によって起動した時は、スリープ状態における振動センサ60の振動検出結果である振動センサフラグに基づいて振動履歴を更新する。また、振動履歴とメモリ72に記憶されている判定用の振動パターンとを比較し、振動履歴が歩行時の振動パターンと一致すればIDを送信するが、一致しなければIDを送信しない。そのため、振動履歴の振動パターンがどのようなパターンかを判断することなく、振動が検知された場合に即座にIDを送信するよりも、消費電力を低減することができる。また、乗車中など、歩行中ではない移動中にIDを送信してしまうことも抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人識別システムに用いられ、識別信号読み取り装置に識別信号を送信する携帯型無線機に関し、特に、その携帯型無線機において消費電力を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯型無線機から無線送信される識別信号を識別信号読み取り装置により読み取ることによって、携帯型無線機を携帯している人を識別する人識別システムが知られている。たとえば、特許文献1に記載のシステムがそれであり、特許文献1のシステムでは、携帯型無線機としてアクティブRFIDタグを用いている。
【0003】
アクティブRFIDタグなどの携帯型無線機は内蔵電池により動作する。そのため、電池寿命を長くすることが望まれる。そこで、上記特許文献1では、振動センサを備え、振動センサにより振動を検知している場合にのみ情報を送信し、振動を検出していない場合には電力消費を抑制するモードに遷移するようにしている。
【0004】
また、間欠周期毎に動作することで省電力化を図るものも知られている(たとえば特許文献2)。特に、特許文献2では、振動センサを備えており、電源制御部は振動センサによって検出された振動の振動周波数に基づいて車両が走行中であるか停車中であるかを判定し、停車中であると判定された場合には、受信回路の間欠動作周期を、走行中である場合の間欠周期(第1の間欠周期)よりも長い第2の間欠周期としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−199967号公報
【特許文献2】特開2005−309813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の特許文献1では、振動の有無のみにより情報を送信するか否かを切り替えている。携帯型無線機が人に携帯されている場合、振動センサにより振動が検知されるのは、歩行中のみではなく、車両や電車などに乗車しているときにも振動が検知される。しかし、車両や電車などに乗車しているときには携帯型無線機は情報を送信する必要はない。すなわち、特許文献1のシステムは、情報を送信する必要がないにも係らず情報を送信してしまうことがあり、消費電力を十分に低減できていない。
【0007】
また、特許文献2では、間欠動作周期で動作しているのは受信回路のみであり、この受信回路の間欠動作周期を制御する電源制御部は、振動センサの信号を逐次取得して車両が走行中か否かを判断する必要があるので、間欠動作を行っていない。そのため、特許文献2のものも消費電力を十分に低減できない。
【0008】
本発明は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、人識別システム用の携帯型無線機において、消費電力の低減を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
その目的を達成するための請求項1記載の発明は、内蔵電池の電力によって識別信号を無線送信する携帯型無線機と、その携帯型無線機から無線送信される識別信号に基づいて人の識別を行う識別信号読み取り装置とを含む人識別システムに用いられる前記携帯型無線機であって、この携帯型無線機に加わる振動を検出する振動センサと、タイマと、振動履歴と比較するための振動パターンを記憶する記憶部と、無線による信号の送受信を行う無線通信部と、その無線通信部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記タイマによって定まる起動周期毎にスリープ状態から起動するようになっており、スリープ状態では前記振動センサによる振動検出結果を保持し、前記タイマによって起動した時に、スリープ状態にて保持した振動検出結果に基づいて、前記振動センサによって検出された振動の振動履歴を更新する振動履歴更新手段と、前記タイマによって起動した時に、前記振動履歴更新手段によって更新された振動履歴と前記記憶部に記憶されている振動パターンとの比較結果に基づいて前記無線通信部から前記識別信号を送信させる送信処理手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
この請求項1に係る発明によれば、振動履歴と記憶部に記憶されている振動パターンとの比較結果に基づいて無線通信部から識別信号を送信させるので、振動が検知された場合に即座に識別信号を送信するよりも、消費電力を低減することができる。また、制御部は、振動履歴を更新するために常時起動しているのではなく、タイマによって定まる起動周期毎に起動して、スリープ状態にて保持した振動検出結果に基づいて振動履歴を更新している。これによっても消費電力を低減できる。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記記憶部に、前記振動パターンとして、歩行時の振動パターンが記憶されており、前記制御部は、前記振動履歴更新手段によって更新された振動履歴と、前記記憶部に記憶されている歩行時の振動パターンとが一致するか否かを判定する判定手段をさらに備え、前記送信処理手段は、前記判定手段が振動履歴と歩行時の振動パターンとが一致したと判定したことに基づいて、前記無線通信部から前記識別信号を送信させることを特徴とする。
【0012】
このように、振動履歴と歩行時の振動パターンとが一致したと判定したことに基づいて無線通信部から識別信号を送信するようにすれば、乗車中など、歩行ではない移動中に識別信号を送信してしまうことを抑制できる。よって、消費電力をより低減することができる。
【0013】
請求項3に係る発明は、前記記憶部に、前記振動パターンとして、停止時の振動パターンが記憶されており、前記判定手段は、前記振動履歴更新手段によって更新された振動履歴と、前記記憶部に記憶されている停止時の振動パターンとが一致するか否かも判定し、
前記制御部は、前記タイマによって定まる起動周期毎に起動するタイマ起動モードと、前記タイマによる起動周期毎の起動は行わず、前記振動センサによって振動が検知されたことに基づいて起動して前記タイマ起動モードへ移行する振動起動モードとを備え、前記タイマ起動モードにおいて、前記判定手段によって前記振動履歴が前記停止時の振動パターンと一致したと判定されたことに基づいて、前記振動起動モードへ移行することを特徴とする。
【0014】
このようにすれば、振動センサによって振動が検知されてタイマ起動モードとなっても、タイマ起動モードにおいて振動履歴が停止時の振動パターンと一致したと判定されれば、タイマによる起動周期毎の起動も行わない振動起動モードとなる。よって、消費電力を一層低減することができる。
【0015】
請求項4に係る発明は、前記制御部は、前記無線通信部が前記識別信号読み取り装置から信号を受信した際の前記振動履歴に基づいて、前記記憶部に記憶されている歩行時の振動パターンの学習を行う振動パターン学習手段を備えていることを特徴とする。
【0016】
識別信号読み取り装置から信号を受信した場合、携帯型無線機は信号読み取り装置の近くに位置していることになり、且つ、このとき、携帯型無線機を携帯している者は歩行中であるはずである。そのため、このように、歩行時の振動パターンを、識別信号読み取り装置から信号を受信した際の振動履歴に基づいて学習すれば、歩行したときの振動履歴と歩行時の振動パターンとの一致判定の精度が向上することから、歩行中であるか否かの判定精度が向上する。よって、より消費電力を低減することができる。
【0017】
前記判定手段の一致判定は、時間帯によらず同じ基準でおこなってもよいが、請求項5記載のように、時間帯別に定められた判定基準に基づいて一致判定を行ってもよい。
【0018】
また、時間帯別に定められた判定基準を用いる場合、請求項6のようにしてその判定基準を学習するようにしてもよい。その請求項6に係る発明は、前記制御部は、前記無線通信部が前記識別信号読み取り装置から信号を受信した時間帯およびその信号を受信した際の前記振動履歴に基づいて、前記判定基準の学習を行う判定基準学習手段を備えていることを特徴とする。
【0019】
このようにすれば、あまり歩行することがない時間帯では、一致判定がされにくくなるように判定基準を学習することで、実際には歩行中ではないのに、振動履歴と歩行中の振動パターンとが一致したと判定してしまうことが少なくなるので、一致と判定した後に行う処理を無駄に行うことが少なくなる。これによっても、より消費電力を低減することができる。
【0020】
請求項7に係る発明は、前記判定手段は判定周期毎に前記判定を行い、前記送信処理手段は、前記判定手段が振動履歴と歩行時の振動パターンとが一致したと判定した後、起動中に前記無線通信部が前記識別信号読み取り装置から送信される要求信号を受信したことに基づいて、前記無線通信部から前記識別信号を送信させるようになっており、前記制御部は、前記判定手段は振動履歴と歩行時の振動パターンとが一致したと判定したが、起動中に前記無線通信部が前記識別信号読み取り装置から送信される要求信号を受信しなかった場合には、前記判定周期を、予め設定された判定周期の初期値よりも長い判定周期に設定することを特徴とする。
【0021】
このようにすれば、歩行時であっても、信号読み取り装置からの距離が遠く、その信号読み取り装置からの要求信号が受信できない場合には、判定周期が長くなることから、無駄に判定処理を行うことが少なくなるので、より消費電力を低減することができる。
【0022】
また、このように判定周期を長くする場合、請求項8のように送信電力を高くすることが好ましい。その請求項8に係る発明は、前記制御部は、前記無線通信部からの送信電力を制御可能になっており、前記判定周期を、判定周期の初期値よりも長い判定周期に設定した場合には、送信電力を、遠距離通信用の予め設定された高い送信電力として前記識別信号を送信することを特徴とする。
【0023】
このように、送信電力を高くすれば、送信電力が低い場合よりも遠くから信号読み取り装置との間で通信を行うことができる。そのため、仮に、長い判定周期に設定したが、実際には、信号読み取り装置の付近であり、信号読み取り装置との間で通信を行う必要がある場合だったとしても、次の判定周期までの間に、携帯型通信機を携帯する歩行者が識別信号読み取り装置との通信範囲を外れてしまうことを抑制できる。
【0024】
請求項9に係る発明は、前記判定手段は判定周期毎に前記判定を行い、前記送信処理手段は、前記判定手段が振動履歴と歩行時の振動パターンとが一致したと判定した後、起動中に前記無線通信部が前記識別信号読み取り装置から送信される要求信号を受信したことに基づいて、前記無線通信部から前記識別信号を送信させるようになっており、
前記制御部は、前記判定手段は振動履歴と歩行時の振動パターンとが一致したと判定した後、起動中に前記無線通信部が前記識別信号読み取り装置から送信される要求信号を受信した場合には、前記判定周期を、予め設定された判定周期の初期値よりも短い判定周期に設定することを特徴とする。
【0025】
このように、識別信号読み取り装置から送信される要求信号を受信した場合に、判定周期を短い判定周期に設定すれば、識別信号読み取り装置との間の通信を確実に行うことができる。
【0026】
請求項10に係る発明は、前記振動センサは、導通状態の機械的な変化により振動を検知する機械式の振動センサであることを特徴とする。この形式の振動センサは、加速度、速度、変位等の物理量の連続的な変化を検出するセンサを振動センサに用いる場合に比較して少ない消費電力で動作することから、より消費電力を低減することができる。また、携帯型無線機の形状は、たとえば、請求項11のように、タグ形状とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】無線タグ10および無線タグリーダ100とを含んでいる人識別システム1の構成を示すブロック図である。
【図2】振動センサ60の構成図である。
【図3】振動センサ60と制御部70との接続構成を示す図である。
【図4】CPU71が実行するメインルーチンを示すフローチャートである。
【図5】停止状態処理を示すフローチャートである。
【図6】移動状態開始処理を示すフローチャートである。
【図7】歩行時の振動履歴と乗車時の振動履歴の一例を示す図である。
【図8】静止時、歩行時、乗車時(車)の振動を検出した結果の一例を示す図である。
【図9】メモリ72に記憶された判定用の振動パターンを示す図である。
【図10】移動状態処理を示すフローチャートである。
【図11】無線タグリーダ100と無線タグ10との通信状態を説明する図である。
【図12】歩行時の振動パターン別に、初期状態と学習の結果とを示す図である。
【図13】時間帯別の重み係数の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、無線タグ10および無線タグリーダ100を含んでいる人識別システム1の構成を示すブロック図である。
【0029】
無線タグ10は人に携帯されるものであり、識別信号であるIDを無線タグリーダ100に無線送信し、無線タグリーダ100は、このIDを受信して、受信したIDが予め記憶されているIDと一致するか否かにより、無線タグ10を携帯している人の識別を行う。なお、無線タグ10が特許請求の範囲の携帯型無線機に相当し、無線タグリーダ100が特許請求の範囲の識別信号読み取り装置に相当する。
【0030】
本実施携帯の無線タグ10は、アクティブ方式の無線タグであり、図1に示すように、内蔵電源20を備えている。この内蔵電源20の他に、無線タグ10は、送信部30、受信部40、アンテナ50、振動センサ60、制御部70を備えており、内蔵電源20は、これらに電源を供給する。
【0031】
送信部30は、符号部31、変調部32、増幅部33を備えている。符号部31は制御部70から送信される情報を符号化して変調部32に送る。変調部32は、符号部31からの符号を、たとえば、振幅変位変調などの変調方式により変調する。増幅部33は、変調部32が変調した信号を増幅して、アンテナ50から送信させる。
【0032】
受信部40は、アンテナ50が受信した電波を復調する復調部41と、復調部41が復調した信号を復号する復号部42とを備えている。復号部42は、復号した信号を制御部70へ供給する。なお、送信部30および受信部40によって、特許請求の範囲の無線通信部が構成される。
【0033】
振動センサ60は、詳細構成は図2を用いて後述するが、導通状態が機械的に変化するセンサであり、振動のない状態ではオンとなり、振動がある状態ではオフとなる。この振動センサ60のオンオフの状態はCPU71の割り込みポート、および、レジスタ74に入力される。
【0034】
制御部70は、CPU71、メモリ72、タイマ73、レジスタ74、現在時刻を計時するリアルタイムクロック(RTC)75を備えている。メモリ72は特許請求の範囲の記憶部に相当するものであり、書き込み可能となっており、後述する振動パターン、振動履歴を記憶する。また、IDもメモリ72に記憶されている。このメモリ72としては、EEPROMなどの書き込み可能な不揮発性メモリやRAMを用いる。また、メモリ72には、CPU71が実行するプログラムが記憶されている。このプログラムを記憶するために、書き込み可能な不揮発性メモリやRAMに加えてROMを備えていてもよい。
【0035】
タイマ73は、クロック発振器(図示せず)のクロックを計数することで計時を行う。レジスタ74は、本実施形態では1ビットであり、振動センサ60と接続されている。このレジスタ74は、CPU71によってクリアされた後、振動センサ60からオフ信号(すなわち振動が検知されたことを示す信号)が入力されると1になり、その後は、振動センサ60からの信号がオン信号になっても1を保持する。
【0036】
CPU71は、メモリ72に記憶されているプログラムを実行することで、送信部30、受信部40、メモリ72を制御する。このCPU71の処理内容は、図4―6、10に示すフローチャートを用いて後述する。
【0037】
無線タグリーダ100は、いずれも図示していないが、送信部、受信部、それら送信部、受信部を制御する制御部、記憶部などを備えている。この無線タグリーダ100は、周期的に受信信号を外部に送信する。この受信信号には、特許請求の範囲の要求信号に相当するビーコン信号や無線タグ10に対する指示を示したコマンド信号などが含まれる。また、無線タグリーダ100は、無線タグ10からの応答信号を受信する。この応答信号には無線タグ10のIDが含まれており、無線タグリーダ100は、受信したIDと記憶部に記憶しているIDとを比較することで、無線タグ10を携帯する者の識別を行う。
【0038】
次に、振動センサ60の構成および作動を説明する。図2は振動センサ60の構成図である。図2(A)に示すように、振動センサ60は、いずれも導体材料製の2つの電極61、62と、2つの導通球63、64と、電極61、62に接続される導線65、66とを備えている。2つの電極61、62は、互いに同一形状であり、全体として中空の紡錘形状となっている。それぞれの電極61、62は半紡錘形であり、底部(紡錘形となったときの中央部)が開口する中空体である。また、2つの電極61、62は、導通球63、64の径よりも十分に小さい距離だけ互いに離隔して配置されている。
【0039】
導通球63、64は、2つの電極61、62によって形成された紡錘形状の空間に収容されている。そのため、図2(A)、(B)、(C)に示すように、振動が加えられていない状態では、振動センサ60がどのような姿勢であっても、2つの導通球63、64は互いに接触する。また、導通球63、64は互いに同一形状であり、その直径は電極61、62の高さ(前述の底面の中心から最尖部までの距離)の1/2よりも大きくなっている。したがって、外部からの振動がなく、2つの導通球63、64が互いに接触している状態では、それら2つの導通球63、64を介して、2つの電極61、62が導通する。すなわち、振動センサ60はオン状態となる。一方、外部から振動が加えられ、2つの導通球63、64が離れた状態では、電極61、62の間は電気的に切断される。すなわち、振動センサ60はオフ状態となる。
【0040】
図3は、振動センサ60とCPU71との接続構成を示している。この図に示すように、振動センサ60と抵抗Rとの間の電位は、CPU71の割り込みポートに供給される。また、振動センサ60は、一端がグランドに接続され、他端は抵抗Rを介して内蔵電源20に接続されている。また、CPU71の出力ポートは、抵抗Rと内蔵電源20との間のラインにおいて、抵抗Rよりも内蔵電源側に接続されている。
【0041】
CPU71は出力ポートをHiおよびLo(0V)に設定可能となっており、後述する振動センサ割り込みONの処理ではこの出力ポートをHiに設定する。一方、振動センサ割り込みOFFの処理ではこの出力ポートをLoに設定する。
【0042】
このような構成により、振動センサ60がON状態では、出力ポートの状態によらず、割り込みポートはLoになる。また、振動センサ60がオフ状態でも、出力ポートがLoであれば、割り込みポートはLoになる。これに対して、出力ポートがHiであって、振動センサ60がオフ状態となると、割り込みポートはHiになる。
【0043】
次に、CPU71の処理内容を説明する。図4は、CPU71が実行するメインルーチンを示している。CPU71は最初の電源投入時にこの図4に示す処理を実行する。この図4の実行開始により、その後は、図4−6、10のうち、タグ状態により定まる処理を実行する。
【0044】
図4において、まず、ステップS2ではタグ状態を停止状態に設定する。続くステップS4では、タグ状態を判断する。タグ状態は、当初は停止状態であるが、停止状態処理(S6)、移動開始状態処理(S8)、移動状態処理(S10)により、タグ状態は、停止状態、移動開始状態、移動状態の3つのうちのいずれかの状態となる。タグ状態が停止状態の場合にはステップS6へ進み、タグ状態が移動開始状態の場合にはステップS8へ進み、タグ状態が移動状態の場合にはステップS10へ進む。
【0045】
これら各処理は、それぞれ、図5、6、10に示す。これら各処理が終了すると、また、ステップS4に戻り、タグ状態を判断する。
【0046】
次に、停止状態処理を図5を用いて説明する。停止状態処理では、まず、ステップS61にて、振動センサ割り込み設定をONに設定する。この処理は、前述のように、出力ポートをHiに設定するものである。この設定により、CPU71はスリープ状態において割り込みポートがHiになると起動することになる。続くステップS62では、タイマ割り込み設定をOFFに設定する。これらステップS61、S62の処理により、CPU71は振動センサ60によって振動が検知された場合に起動する振動起動モードとなる。
【0047】
続くステップS63ではスリープ状態に入る。このスリープ状態では、CPU自身がスリープ状態に入ることに加えて、送信部30および受信部40もスリープ状態とする。ただし、スリープ状態でも、CPU71の周辺モジュール、具体的には、タイマ73、レジスタ74、リアルタイムクロック75には電源が供給されて起動状態が継続される。また、振動履歴を記憶するメモリ72がRAMである場合にはこのRAMにも電源が供給されて起動状態が維持される設定となっている。
【0048】
ステップS64は、振動が検知されたか否かを判断するステップとなっている。図5では説明の都合上このように記載しているが、実際には、振動が検知されない場合にステップS64の判断を繰り返し実行しているのではなく、振動が検知されない状態ではスリープ状態を継続している。
【0049】
前述のように、振動センサ割り込み設定はONになっているので、振動センサ60によって振動が検知されて割り込みポートがHiになるとCPU71が起動する。ステップS64の肯定判断およびステップS65はこのことを意味している。
【0050】
続くステップS66では、タグ状態を移動開始状態に設定する。その後、この停止状態処理を終了する。停止状態処理を終了すると図4に戻りステップS4を実行する。このとき、タグ状態は移動開始状態となっているのでステップS8の移動開始状態処理を実行する。
【0051】
次に、移動開始状態処理を図6を用いて説明する。移動開始状態処理では、まず、ステップS81にて、振動センサ割り込み設定をOFFに設定する。この処理は、出力ポートをLo(グランド)に設定するものである。この設定により、割り込みポートはHiにならないことから、振動が検知されてもCPU71は起動しないことになる。続くステップS82では、タイマ割り込み設定をONに設定する。これらステップS81、S82の処理により、CPU71はタイマ割り込み周期毎に起動するタイマ起動モードとなる。
【0052】
続くステップS83ではスリープ状態に入る。ステップS84は、タイマ割り込みがあったか否かを判断するステップとなっている。図6では説明の都合上このように記載しているが、実際には、タイマ割り込みがあるまでステップS84の判断を繰り返し実行しているのではなく、タイマ割り込みがあるまでスリープ状態を継続している。なお、タイマ割り込み周期は、本実施形態では100msとなっている。
【0053】
CPU71はタイマ割り込みがあると起動する(ステップS85)。前述のように、スリープ状態でもレジスタ74は動作しており、レジスタ74には振動が検知されると1が入る。したがって、レジスタ74の数値は、CPU71がスリープ状態である間に振動センサ60によって振動が検出されたか否かを示している。
【0054】
起動後の最初の処理であるステップS86は特許請求の範囲の振動履歴更新手段に相当する処理であり、このレジスタ74の状態(以下、このレジスタ74の状態を振動センサフラグという)に基づいて振動履歴を更新する。振動履歴とは、振動センサフラグの時系列的な取得結果であり、本実施形態では、振動センサフラグを時系列順に20個並べたものである。この振動履歴を更新するとは、振動履歴を構成する振動センサフラグのうち、最も古いものを消去して、代わりに、最新の振動センサフラグを追加することを意味する。ただし、振動履歴を構成する振動センサフラグが20個に満たない場合には、最も古い振動センサフラグの消去は行わずに、最新の振動センサフラグの追加のみ行う。
【0055】
図7に、このようにして作成された振動履歴として、歩行時の振動履歴と乗車時の振動履歴を例示する。また、比較として、図8に、振動を連続的に検出するセンサ(加速度センサなど)を用いて、静止時、歩行時、乗車時(車)の振動を検出した結果の一例を示す。この図8から分かるように、歩行時は500msの周期で大きな振動と小さな振動を繰り返す。一方、車に乗車しているときは、小さな振動が断続的に続いている。また、図示していないが、電車に乗車している場合にも、車の場合と同様、小さな振動が断続的に続く。なお、静止時は、当然、振動が検出されない。
【0056】
上述の振動履歴は、図8においてピークがある時点が「1」になるので、図7の例では、歩行時は、「1」が複数連続した後に「0」が複数連続しているが、乗車時は、「0」は連続していない。
【0057】
図6の説明に戻る。ステップS86で振動履歴を更新したら、ステップS87に進み、振動センサフラグをクリアする。続くステップS88では、前回、振動履歴と振動パターンとの一致判定を行ったとき、或いは、振動履歴の蓄積を新たに開始した時を基準時点として、その基準時点からの経過時間が判定周期を経過したか否かを判断する。なお、判定周期は、CPU71の起動周期(タイマ割り込み周期)の倍数であり、本実施形態では、その初期値は2秒、すなわち、タイマ割り込み周期の20倍に設定されている。
【0058】
この判断が否定判断である場合には、ステップS83に戻り、タイマ割り込み周期毎に起動して振動履歴を更新する処理を繰り返す。一方、肯定判断の場合にはステップS89へ進む。
【0059】
ステップS89では、振動履歴と、メモリ72に記憶された判定用の停止パターンとが一致するか不一致かを判断する。ここで、メモリ72に記憶された判定用の振動パターンについて説明する。
【0060】
図9は、メモリ72に記憶された判定用の振動パターンを示している。この図9に示すように、判定用の振動パターンとして、4種類の歩行時の振動パターン(歩行時a、歩行時b、歩行時c、歩行時d)と、1種類の停止時の振動パターンの合計5種類の振動パターンが記憶されている。なお、図9において、「*」は指定無し、すなわち、「1」とも「0」とも指定しないことを意味している。
【0061】
図6のステップS89では、振動履歴と、図9に示す停止時の振動パターンとを比較する。比較の結果、一致と判断すればステップS90へ進み、不一致と判断すればステップS92へ進む。なお、本実施形態における一致とは完全一致であり、振動履歴を構成する20個のフラグのうち1つでも振動パターンの対応するフラグと異なっていれば不一致と判断する。
【0062】
ステップS90では、前述のステップS89で振動履歴が停止パターンと一致したと判断したことから、タグ状態を停止状態に設定する。続くステップS91では振動履歴をクリアする。そして移動開始状態処理を終了する。
【0063】
ステップS92では、振動履歴と、図9に示す4つの歩行時の振動パターン(a、b、c、d)とをそれぞれ比較する。なお、このステップS92と、前述のステップS88、S89は特許請求の範囲の判定手段に相当する処理である。ステップS92における比較の結果、不一致と判断すればステップS83へ戻る。一方、比較の結果、一致と判断すれば、ステップS93へ進む。ステップS93では、タグ状態を移動状態に設定する。そして、移動開始状態処理を終了する。
【0064】
移動開始状態処理が終了すると図4に戻り、ステップS4を判断することになる。ステップS90を実行してタグ状態が停止状態となっている場合には、前述したステップS6の停止状態処理を実行する。一方、ステップS93を実行してタグ状態が移動状態となっている場合にはステップS10の移動状態処理を実行する。
【0065】
次に移動状態処理を図10を用いて説明する。移動状態処理において、ステップS101〜S108は、図6のステップS81〜S88と同じ処理である。ただし、ステップS108の判断は、図6のステップS93においてタグ状態が移動状態に設定された直後の場合にも肯定判断する。
【0066】
また、ステップS109〜S111は、図6のS89〜S91と同じ処理である。一方、ステップS109において不一致と判断した後の処理は図6とは異なる。ステップS109において不一致と判断した場合にはステップS112に進み、ビーコン信号を受信したか否かを判断する。このビーコン信号とは、IDを送信することを要求する信号である。 このステップS112が否定判断である場合にはステップS113へ進む。なお、ステップS112では、所定の受信動作に必要な期間、或いは、予め設定された受信確認期間にビーコン信号が受信できなかった場合に否定判断する。ステップS113では、判定周期を初期値(2s)よりも長い判定周期として予め設定されている5sに設定する。ステップS113を実行後はステップS103へ戻る。
【0067】
ステップS112が肯定判断である場合、すなわち、ビーコン信号を受信した場合には、ステップS114へ進み、無線タグリーダ100との通信動作を行う。この通信動作は、無線タグリーダ100に対して応答信号を送信する動作を含む。また、応答信号にはIDが含まれている。また、電池残量が少なくなっている場合にはその情報が応答信号に含まれ、また、無線タグリーダ100からコマンド信号が送信されている場合には、そのコマンド信号に基づいて定まる信号が含まれる。このステップS114および前述のステップS112が特許請求の範囲の送信処理手段に相当する処理である。なお、送信部30、受信部40は、CPU71の起動に連動して起動するようになっていてもよいが、それらを作動させる必要が生じる直前(たとえば、受信部40についてはステップS112の直前、送信部30についてはステップS114の直前)までスリープ状態を継続してもよい。
【0068】
ステップS114を実行後は、ステップS115へ進み、判定周期を初期値(2s)よりも短い判定周期として予め設定されている1sに設定する。その後、ステップS103へ戻る。
【0069】
図11は、無線タグリーダ100と無線タグ10との通信状態を説明する図である。この図11において、受信間隔は、前述の判定周期と一致している。図10で説明したように、ステップS108が肯定判断となったことに基づいてステップS112を実行することから、判定周期毎にビーコン信号を受信したか否かを判断することになるからである。
【0070】
図11(A)において、受信間隔は最初は2秒、すなわち、判定周期の初期値となっている。また、無線タグリーダ100は、一定周期でビーコン信号を送信している。そして、図11(A)の例では、無線タグ10は2度目の受信動作期間にビーコン信号を受信している。これにより、図10のステップS112がYesになることから、図11(A)にも示されているように、無線タグ10は、IDを無線タグリーダ100に送信し(図10のステップS114の処理)、また、受信間隔を1sにしている(図10のステップS115の処理)。
【0071】
図11(B)でも、受信間隔は最初は2秒となっている。ただし、図11(B)の例は、無線タグリーダ100と無線タグ10との距離が遠く、無線タグリーダ100のビーコン信号が無線タグ10まで届かない例である。無線タグリーダ100からの矢印が無線タグ10に届いていないのは、このことを示している。
【0072】
無線タグリーダ100のビーコン信号が無線タグ10まで届かないことから、無線タグ10は起動して受信動作を行ってもビーコン信号を受信することができない。そのため、図10のステップS112がNoになることとから、次の受信間隔が5sに変更になっている。
【0073】
次に、歩行時の振動パターンの学習について説明する。本実施形態の無線タグ10は歩行時の振動パターンを学習する機能を備えている。メモリ72には、図9に示した歩行時の振動パターン以外にも多数の歩行時の振動パターンが記憶されている。図12は、それら歩行時の振動パターン別に、初期状態と学習の結果(有効か無効か)とを示す図である。
そして、学習により有効となった振動パターンが前述の判定用の振動パターンである。
【0074】
この学習は学習モード時に行う。学習モードは、たとえば、学習を一度も行っていない初回の使用時である。また、学習モードへ移行することをユーザが指示するための学習ボタンを無線タグ10に設け、この学習ボタンが押されたことにより学習モードへ移行するようになっていてもよい。
【0075】
学習モードでは、タイマ割り込み周期毎に振動履歴を更新し、且つ、その振動履歴の更新毎に受信動作を行ってビーコン信号を受信できたか否かを判断する。そして、ビーコン信号を受信できた場合、そのときの振動履歴を正解として、この正解の振動履歴と一致する振動パターンは「有効」に決定する。ビーコン信号を受信した場合、無線タグ10は無線タグリーダ100と通信可能な範囲に位置していることになり、且つ、本実施形態では、無線タグリーダ100は、人が歩いて通行するような場所に設置される。よって、このとき、無線タグ10を携帯している者は歩行中であるはずである。そこで、ビーコン信号を受信できたときの振動履歴を正解とするのである。この処理を一定期間(例えば1週間)、或いは、ユーザ操作により学習モード終了が指示されるまで行う。そして、この学習モードの間に「有効」に決定されなかった振動パターンは「無効」に設定する。以上の処理が特許請求の範囲の振動パターン学習手段に相当する処理である。
【0076】
前述の図6のステップS92では、このようにして学習した結果、有効となっている歩行時の振動パターンを判定用の歩行時の振動パターンとして用いる。
【0077】
以上、説明した本実施形態によれば、振動履歴とメモリ72に記憶されている判定用の振動パターンとを比較し、振動履歴が歩行時の振動パターンと一致しなければ、IDを送信しない。そのため、振動履歴の振動パターンがどのようなパターンかを判断することなく、振動が検知された場合に即座にIDを送信するよりも、消費電力を低減することができる。また、乗車中など、歩行中ではない移動中にIDを送信してしまうことも抑制できる。この点でも、消費電力を低減することができる。さらに、制御部70は、振動履歴を更新するために常時起動しているのではなく、タイマ73によって定まる起動周期、すなわち、割り込み周期毎に起動して、スリープ状態における振動センサ60の振動検出結果である振動センサフラグに基づいて振動履歴を更新している。これによっても消費電力を低減できる。
【0078】
また、本実施形態では、振動センサ60によって振動が検知されてタイマ起動モード(タイマ割り込みON)となっても、タイマ起動モードにおいて振動履歴が停止時の振動パターンと一致したと判定した場合には、割り込み周期毎には起動せず、振動センサ60によって振動が検知されるまでスリープ状態を継続する振動起動モードとなる。このことによっても消費電力を低減することができる。
【0079】
また、本実施形態では、歩行時の振動パターンを、無線タグリーダ100からビーコン信号を受信した際の振動履歴に基づいて学習しているので、歩行したときの振動履歴と歩行時の振動パターンとの一致判定の精度が向上する。これにより、歩行中であるか否かの判定精度が向上するので、無駄に受信動作を行うことが少なくなる。これによっても、消費電力を低減することができる。
【0080】
また、本実施形態では、図6のステップS92において振動履歴が歩行時の振動パターンと一致したと判断して、判定周期毎にビーコン受信判断(図10のステップS109)を行う移動状態となったとしても、ビーコン信号を受信できない場合には判定周期が5sになる(図10のステップS113)。よって、無駄にビーコン受信判断を行うことが少なくなる。これによっても消費電力を低減することができる。
【0081】
一方、無線タグリーダ100から送信されるビーコン信号を受信した場合には、判定周期を1sに設定しているので、無線タグリーダ100との間の通信を確実に行うこともできる。
【0082】
また、本実施形態の振動センサ60はオン/オフの2状態のみであり、加速度、速度、変位等の物理量の連続的な変化を検出するセンサに比較して少ない消費電力で動作する。これによっても消費電力を低減することができる。特に無線タグ10を使わずに置いてあるだけのときは、期間が長いために低消費電力化が非常に重要である。このときに、無線タグ10がタイマの動作も停止できる振動起動モードにするのが有効であり、特にその際に機械式の振動センサでは消費電力が極限まで低くできるために非常に有効である。
【0083】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0084】
たとえば、前述の実施形態では、一致判定を時間帯によって異ならせていなかったが、時間帯別に判定基準を定めておき、振動履歴と振動パターンとの一致の程度が判定基準を超えた場合に一致と判定するようにしてもよい。具体的には、7時―9時は、歩行時の振動パターンと振動履歴との一致の程度が70%以上なら一致と判定するが、0時―2時は、完全一致でないと一致と判定しないようにするなどである。なお、時間は、リアルタイムクロック75からの信号により判断する。
【0085】
また、時間帯別の判定基準を用いる場合には、この判定基準を学習する判定基準学習手段を備えていてもよい。図13はこの判定基準学習手段の処理を説明する図である。図13には、振動センサ60が振動を検出した時点、ビーコン信号を受信できた時間帯が示されている。判定基準の学習においてはこれらの情報を所定期間、たとえば1週間取得する。そして、同図に示すように、振動センサが振動を検出した時点とビーコン信号を受信した時間帯とが重複する時間帯を、もっとも一致し易い判定基準にする(すなわち、基準を低くする)。反対に、振動が全然検出されていない時間帯は一致しにくい判定基準にする。これにより、実際には歩行中ではないのに、歩行中と判断して受信動作を行ってしまうことが少なくなる。
【0086】
また、図10のステップS113において判定周期を初期値よりも長い5sに設定した場合、これに合わせて、送信電力を、遠距離通信用の予め設定された高い送信電力としてもよい。判定周期を長くするのは、無線タグリーダ100の付近ではないと判断する場合であるが、この判断が必ず正しいとは限らず、実際には、無線タグリーダ100の付近であり、無線タグリーダ100との間で通信を行う必要があるという状況も考えられる。このような状況においても、送信電力を高くしておけば、次の判定周期までの間に、無線タグ10を携帯する歩行者が無線タグリーダ100との通信範囲を外れてしまうことを抑制できる。
【0087】
また、前述の実施形態では、タイマ割り込み周期毎に振動センサ60によって振動が検知されたか否かは判断していたが、タイマ割り込み周期内における振動検知回数までは判断していなかった。しかし、この態様に限らず、タイマ割り込み周期内における振動検知回数も判断するようにして、タイマ割り込み周期内における振動検知回数も含めて前述の一致判定を行ってもよい。なお、タイマ割り込み周期内における振動検知回数を判断するためには、たとえば、前述のレジスタを複数ビットのものにすればよい。
【0088】
また、前述の振動センサ60に代えて加速度、速度、変位等の物理量の連続的な変化を検出するセンサを振動センサとして用いてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1:人識別システム、 10: 無線タグ(携帯型無線機)、 20:内蔵電源、 30:送信部(無線通信部)、 31:符号部、 32:変調部、 33:増幅部、 40:受信部(無線通信部)、 41:復調部、 42:復号部、 50:アンテナ、 60:振動センサ、 61:電極、 62:電極、 63:導通球、 64:導通球、 65:導線、 66:導線、 70:制御部、 71:CPU、 72:メモリ(記憶部)、 73:タイマ、 74:DATA、 75:リアルタイムクロック、 100:無線タグリーダ(識別信号読み取り装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内蔵電池の電力によって識別信号を無線送信する携帯型無線機と、その携帯型無線機から無線送信される識別信号に基づいて人の識別を行う識別信号読み取り装置とを含む人識別システムに用いられる前記携帯型無線機であって、
この携帯型無線機に加わる振動を検出する振動センサと、
タイマと、
振動履歴と比較するための振動パターンを記憶する記憶部と、
無線による信号の送受信を行う無線通信部と、
その無線通信部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記タイマによって定まる起動周期毎にスリープ状態から起動するようになっており、
スリープ状態では前記振動センサによる振動検出結果を保持し、
前記タイマによって起動した時に、スリープ状態にて保持した振動検出結果に基づいて、前記振動センサによって検出された振動の振動履歴を更新する振動履歴更新手段と、
前記タイマによって起動した時に、前記振動履歴更新手段によって更新された振動履歴と前記記憶部に記憶されている振動パターンとの比較結果に基づいて前記無線通信部から前記識別信号を送信させる送信処理手段と
を備えることを特徴とする携帯型無線機。
【請求項2】
請求項1において、
前記記憶部に、前記振動パターンとして、歩行時の振動パターンが記憶されており、
前記制御部は、前記振動履歴更新手段によって更新された振動履歴と、前記記憶部に記憶されている歩行時の振動パターンとが一致するか否かを判定する判定手段をさらに備え、
前記送信処理手段は、前記判定手段が振動履歴と歩行中の振動パターンとが一致したと判定したことに基づいて、前記無線通信部から前記識別信号を送信させることを特徴とする携帯型無線機。
【請求項3】
請求項2において、
前記記憶部に、前記振動パターンとして、停止時の振動パターンが記憶されており、
前記判定手段は、前記振動履歴更新手段によって更新された振動履歴と、前記記憶部に記憶されている停止時の振動パターンとが一致するか否かも判定し、
前記制御部は、
前記タイマによって定まる起動周期毎に起動するタイマ起動モードと、
前記タイマによる起動周期毎の起動は行わず、前記振動センサによって振動が検知されたことに基づいて起動して前記タイマ起動モードへ移行する振動起動モードとを備え、
前記タイマ起動モードにおいて、前記判定手段によって前記振動履歴が前記停止時の振動パターンと一致したと判定されたことに基づいて、前記振動起動モードへ移行することを特徴とする携帯型無線機。
【請求項4】
請求項2または3において、
前記制御部は、前記無線通信部が前記識別信号読み取り装置から信号を受信した際の前記振動履歴に基づいて、前記記憶部に記憶されている歩行中の振動パターンの学習を行う振動パターン学習手段を備えていることを特徴とする携帯型無線機。
【請求項5】
請求項2または3において、
前記判定手段は、時間帯別に定められた判定基準に基づいて一致判定を行うことを特徴とする携帯型無線機。
【請求項6】
請求項5において、
前記制御部は、前記無線通信部が前記識別信号読み取り装置から信号を受信した時間帯およびその信号を受信した際の前記振動履歴に基づいて、前記判定基準の学習を行う判定基準学習手段を備えていることを特徴とする携帯型無線機。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか1項において、
前記判定手段は判定周期毎に前記判定を行い、
前記送信処理手段は、前記判定手段が振動履歴と歩行中の振動パターンとが一致したと判定した後、起動中に前記無線通信部が前記識別信号読み取り装置から送信される要求信号を受信したことに基づいて、前記無線通信部から前記識別信号を送信させるようになっており、
前記制御部は、前記判定手段は振動履歴と歩行中の振動パターンとが一致したと判定したが、起動中に前記無線通信部が前記識別信号読み取り装置から送信される要求信号を受信しなかった場合には、前記判定周期を、予め設定された判定周期の初期値よりも長い判定周期に設定することを特徴とする携帯型無線機。
【請求項8】
請求項7において、
前記制御部は、前記無線通信部からの送信電力を制御可能になっており、前記判定周期を、判定周期の初期値よりも長い判定周期に設定した場合には、送信電力を、遠距離通信用の予め設定された高い送信電力として前記識別信号を送信することを特徴とする携帯型無線機。
【請求項9】
請求項2〜8のいずれか1項において、
前記判定手段は判定周期毎に前記判定を行い、
前記送信処理手段は、前記判定手段が振動履歴と歩行中の振動パターンとが一致したと判定した後、起動中に前記無線通信部が前記識別信号読み取り装置から送信される要求信号を受信したことに基づいて、前記無線通信部から前記識別信号を送信させるようになっており、
前記制御部は、前記判定手段は振動履歴と歩行中の振動パターンとが一致したと判定した後、起動中に前記無線通信部が前記識別信号読み取り装置から送信される要求信号を受信した場合には、前記判定周期を、予め設定された判定周期の初期値よりも短い判定周期に設定することを特徴とする携帯型無線機。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項において、
前記振動センサは、導通状態の機械的な変化により振動を検知する機械式の振動センサであることを特徴とする携帯型無線機。
【請求項11】
タグ形状であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の携帯型無線機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−248755(P2011−248755A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123228(P2010−123228)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】