携帯型表示装置及び表示制御プログラム
【課題】音源を識別することなく、音の特徴に応じたオブジェクトを表示することができる携帯型表示装置及び表示制御プログラムを提供する。
【解決手段】表示部と、マイクロフォンと、このマイクロフォンに入力された音の周波数成分から最大音圧の周波数fmaxを決定する音処理部と、複数の帯域に分割された音の周波数の各帯域に割り付けられた互いに異なるオブジェクトを記憶するオブジェクト記憶部と、音処理部により決定された最大音圧の周波数fmaxを含む帯域Bmaxに割り付けられたオブジェクトをオブジェクト記憶部から読み出して前記表示部に表示させる表示制御部と、を備える。
【解決手段】表示部と、マイクロフォンと、このマイクロフォンに入力された音の周波数成分から最大音圧の周波数fmaxを決定する音処理部と、複数の帯域に分割された音の周波数の各帯域に割り付けられた互いに異なるオブジェクトを記憶するオブジェクト記憶部と、音処理部により決定された最大音圧の周波数fmaxを含む帯域Bmaxに割り付けられたオブジェクトをオブジェクト記憶部から読み出して前記表示部に表示させる表示制御部と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型表示装置及び表示制御プログラムに関するものであり、特に、マイクロフォンから入力された音に応じたオブジェクトを表示する携帯型表示装置及び表示制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、マイクロフォンに入力された音を、表示部により視覚的に表示する携帯機器が提案されている。かかる携帯機器により、音の認識が困難である聴覚障害者に対して、マイクロフォンに入力された音が視覚情報として提供される。
【0003】
例えば、特許文献1では、各音源からの音を識別して、各音源を示すオブジェクト画像を表示することができる携帯機器が提案されている。この携帯機器では、音源の音の特徴部分をサンプリングして特徴を抽出して得られた特徴データと音源を示すオブジェクトのデータとを関連付けて記憶している。そして、この携帯機器は、マイクロフォンに入力された音の特徴と合致する特徴データがあるときに、この特徴データに対応する音源を示すオブジェクトを表示する。例えば、踏み切り遮断機の音の特徴をサンプリングした特徴データと踏み切り遮断機の画像データとが関連づけて記憶された状態で、マイクロフォンに入力された音に踏み切り遮断機の音の特徴と合致する音が含まれていれば、踏み切り遮断機の画像が表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−99418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の携帯機器では、特徴データを記憶していない未知の音源の音がマイクロフォンに入力された場合には、その音源を識別することができない。また、様々な音源の音に対応しようとする場合には、記憶すべき音源の音の特徴データ量が膨大となり、現実的でない。このように、特許文献1に記載の携帯機器は、実用化が困難である。
【0006】
本発明は、上述したような課題に鑑みてなされたものであり、音源を識別することなく、マイクロフォンに入力された音に応じたオブジェクトを表示することができる携帯型表示装置及び表示制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、表示部と、マイクロフォンと、前記マイクロフォンに入力された音の周波数成分から最大音圧の周波数を決定する音処理部と、複数の帯域に分割された音の周波数の各帯域に割り付けられた互いに異なるオブジェクトを記憶するオブジェクト記憶部と、前記音処理部により決定された前記最大音圧の周波数を含む帯域に割り付けられたオブジェクトを前記オブジェクト記憶部から読み出して前記表示部に表示させる表示制御部と、を備えることを特徴とする携帯型表示装置である。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の携帯型表示装置において、前記最大音圧と前記最大音圧の周波数の周囲の周波数の音圧との比較結果に基づいて、前記周囲の周波数の音圧に対する前記最大音圧の突出度合いを判定する突出度合い判定部を備え、前記表示制御部は、前記突出度合い判定部によって判定された前記突出度合いが、所定値以上であることを条件として、前記オブジェクトを前記表示部に表示させることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の携帯型表示装置において、前記音処理部は、前記周波数成分から基音の周波数成分を抽出し、抽出した基音の周波数成分から前記最大音圧の周波数を決定することを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の携帯型表示装置において、前記音処理部により決定された最大音圧の周波数が周期的に出現しているか否かを判定する周期性判定部を備え、前記表示制御部は、前記周期性判定部によって前記音処理部により決定された最大音圧の周波数が周期的に出現していると判定されたことを条件として、前記オブジェクトを前記表示部に表示させることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の携帯型表示装置において、前記表示制御部は、前記最大音圧が閾値以上であると判定したことを条件として、前記オブジェクトを前記表示部に表示させることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の携帯型表示装置において、前記複数の帯域の幅は、それぞれ対数表において互いに等しいことを特徴とする。
【0013】
また、請求項7に係る発明は、請求項6に記載の携帯型表示装置において、前記複数の帯域のそれぞれは、1オクターブを複数の音階に分割した音律における、それぞれの音階に対応していることを特徴とする。
【0014】
また、請求項8に係る発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の携帯表示装置において、前記表示部は、シースルー型のヘッドマウントディスプレイであることを特徴とする。
【0015】
また、請求項9に係る発明は、表示部と、マイクロフォンとを備えた携帯表示装置を、前記マイクロフォンに入力された音の周波数成分から最大音圧の周波数を決定する音処理手段、複数の帯域に分割された音の周波数の各帯域に割り付けられたオブジェクトを記憶するオブジェクト記憶手段、前記音処理手段により決定された前記最大音圧の周波数を含む帯域に割り付けられたオブジェクトを前記オブジェクト記憶手段から読み出して前記表示部に表示させる表示制御手段、として機能させるための表示制御プログラムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、音の周波数成分から最大音圧の周波数を決定し、最大音圧を含む帯域に割り付けられたオブジェクトを表示しているため、音源を識別することなく、音に応じたオブジェクトを表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る携帯型表示装置の概略構成を示す図である。
【図2】携帯型表示装置1の構成を示すブロック図である。
【図3】割り付けテーブルの一例を示す図である。
【図4】オブジェクトの一例を示す図である。
【図5】周波数スペクトルを模式的に示した図である。
【図6】オブジェクトの表示方法の一例を示す図である。
【図7】オブジェクトの表示方法の他の例を示す図である。
【図8】オブジェクトの表示例を示す図である。
【図9】オブジェクトの他の表示例を示す図である。
【図10】突出度合い判定処理を説明する図である。
【図11】他の突出度合いを判定する処理を説明する図である。
【図12】周期性を判定する処理を説明する図である。
【図13】閾値の判定を行う処理を説明する図である。
【図14】帯域の幅を示す図である。
【図15】帯域の幅を示す他の図である。
【図16】携帯型表示装置で実行される処理の流れを示す図である。
【図17】本発明の第2実施形態に係る携帯型表示装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0019】
[1.第1実施形態]
[1.1.携帯型表示装置1の概要]
まず、本発明の第1実施形態に係る携帯型表示装置の概要について図1を参照して説明する。
【0020】
第1実施形態に係る携帯型表示装置1は、マイクロフォン11と、表示部12とを有し、マイクロフォン11に入力された音(以下、入力音ともいう)を解析して、予め記憶されたオブジェクトOの中から、入力音に応じたオブジェクトOを表示部12に表示するものである。
【0021】
特に、この携帯型表示装置1では、入力音の解析処理、入力音に応じたオブジェクトOの選択処理を次のように行うことで、音源を識別することなく、マイクロフォンに入力された音に応じたオブジェクトを表示するようにしている。
【0022】
まず、携帯型表示装置1は、入力音の解析処理として、入力音の周波数成分を解析し、これらの周波数成分のうち最も音圧が高い周波数を選択して、この周波数を最大音圧の周波数として決定する処理を行う。携帯型表示装置1は、入力音の周波数成分の解析を、例えば、FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)処理によって行う。
【0023】
次に、携帯型表示装置1は、入力音に応じたオブジェクトOの選択処理として、前記解析処理により決定した最大音圧の周波数を含む帯域に割り付けられたオブジェクトを選択する処理を行う。後述する記憶部13には、予め複数の帯域に分割された音の周波数の各帯域の情報とオブジェクトの情報とが互いに関連づけられて記憶されている。携帯型表示装置1は、記憶部13に記憶している情報に基づいて、最大音圧の周波数を含む帯域に割り付けられたオブジェクトを選択する。
【0024】
記憶部13に記憶されたオブジェクトは、帯域毎に異なるように割り当てられている。これにより、携帯型表示装置1の利用者Uは、自身の周囲で発生した音のうち最も音圧が大きい音の周波数に応じたオブジェクトを視覚的に認識することができる。そのため、携帯型表示装置1の利用者Uは、自身の周囲の状況と表示部12の表示内容を関連づける学習をすることで、自身の周囲で発生した音を視覚情報として得ることができる。例えば、救急車のサイレンの音が、770Hzの低音と960Hzの高音とが1秒毎に切り替わるものであるとする。そして、770Hzを含む帯域に割り当てられたオブジェクトが「○」で、960Hzを含む帯域に割り当てられたオブジェクトが「△」であるとする。このとき、携帯型表示装置1は、「○」と「△」とを1秒毎に交互に表示部12に表示することになる。利用者Uは、表示部12において「○」と「△」とが交互に表示されていることを確認した後、周囲を見回して、周囲の状況を把握する。このとき、救急車が近くを通っていれば、利用者Uは、「○」と「△」とが交互に現れるオブジェクト表示が救急車に対応するものではないかと考える。このような状況に繰り返し遭遇することで、利用者Uは、「○」と「△」とが交互に現れるオブジェクト表示があれば、救急車が近くを通っていると学習することができる。
【0025】
携帯型表示装置1では、マイクロフォン11に入力された音の周波数成分のうち最大の音圧の周波数に応じたオブジェクトを表示することで、利用者Uは、その周囲で発生した音を視覚情報として得ることができる。特に、携帯型表示装置1では、最大の音圧の周波数のオブジェクトのみを表示し、それ以外の周波数はオブジェクト表示に使用しないため、表示内容が複雑にならず、利用者Uによる音の識別が容易になる。しかも、携帯型表示装置1では、音源の音の特徴を予め記憶して音源を識別するのではなく、最大音圧の周波数に応じたオブジェクトを表示するだけなので、未知の音源に対しても対応することができる。さらに、携帯型表示装置1では、周波数毎にではなく帯域毎にオブジェクトを割り当ているため、オブジェクトの数を少なくすることができ、音に応じたオブジェクトの把握が容易である。
【0026】
以下、携帯型表示装置1の具体的な構成及び動作の一例について図面を参照して具体的に説明する。
【0027】
[1.2.携帯型表示装置1の構成]
次に、本実施形態に係る携帯型表示装置1の構成について説明する。携帯型表示装置1は、図2に示すように、マイクロフォン11と、表示部12と、記憶部13と、制御部14とを備える。
【0028】
マイクロフォン11は、例えば、携帯型表示装置1の上端部に設けられている。マイクロフォン11は、利用者の周囲で発生した音を入力可能に構成されている(図1参照)。このマイクロフォン11は、入力音を電気信号に変換する機能を有する。マイクロフォン11に入力された音は、変換した電気信号の波形を音データとして記憶部13に一時的に記憶される。予め規定された基準時間T(例えば、数十ms)分の最新の電気信号の波形は、音データとして記憶され、基準時間Tよりも以前の電気信号の波形は記憶部13から消去される。
【0029】
表示部12は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)により構成される。表示部12は、入力音の周波数成分のうち最大音圧の周波数に応じたオブジェクトOを表示する。
【0030】
記憶部13は、例えば、不揮発性メモリやハードディスクにより構成される。記憶部13は、オブジェクトOと音の周波数の帯域とを関連づけた割り付けテーブルを記憶する割り付けテーブル記憶部、及び割り付けテーブルで帯域と割り付けられた複数のオブジェクトOを記憶するオブジェクト記憶部として機能する。
【0031】
記憶部13に記憶される割り付けテーブルは、図3に示すように、各オブジェクトOと、複数の帯域に分割された音の周波数の各帯域Bとを関連づけるテーブルである。
【0032】
記憶部13に記憶される複数のオブジェクトOは、例えば形状、模様、色彩などが異なる、互いに異なるオブジェクトである。一例として、本実施形態では、図4に示すように、周波数が0Hz〜20000Hzまでの範囲7つに分割した各大帯域B1〜B7に、それぞれ形状の異なるオブジェクトO1〜O7が割り付けられる。また、大帯域B1は、7つの小帯域B11〜B17に分割され、各小帯域B11〜B17には、それぞれ色彩の異なるオブジェクトO11〜O17が割り付けられる。なお、図4では、大帯域B1を、7つの小帯域B11〜B17に分割した状態のみを図示しているが、これと同様に、大帯域B2〜B7もそれぞれ7つの小帯域に分割される。すなわち、大帯域B2は小帯域B21〜B27に分割され、大帯域B3は帯域B31〜B37に分割され、大帯域B4は小帯域B41〜B47に分割され、大帯域B5は小帯域B51〜B57に分割され、大帯域B6は小帯域B61〜B67に分割され、大帯域B7は小帯域B71〜B77に分割される。また、本実施形態では、オブジェクトOの形状や色彩により、帯域Bを区別するようにしたが、これには限定されない。例えば、オブジェクトを記号や文字で表現するときには、記号や文字で帯域Bを区別する。
【0033】
制御部14は、CPU15とROM16とRAM17とを有する。ROM16は携帯型表示装置1の表示制御プログラムを記憶している。携帯型表示装置1を起動すると、CPU15は、ROM16から表示制御プログラムをRAM17に読み出し、RAM17を作業領域として表示制御プログラムを実行する。これにより、制御部14は、表示制御プログラムに応じた機能を発揮する。
【0034】
制御部14は、最大音圧の周波数を抽出するために、音データを周波数解析する処理を行う。制御部14は、音データを周波数解析する処理として、例えば、音データに対して、FFT処理を行う。具体的には、制御部14は、記憶部13に記憶した音データを基準時間T毎にFFT処理を行い、基準時間T毎に入力音の周波数スペクトル(即ち、入力音を構成する音の周波数の分布)を解析し、周波数スペクトルの情報を順次記憶部13に記憶する。
【0035】
音データを周波数解析する処理により得られた周波数スペクトルの一例を図5に示す。同図において、横軸は音の周波数fを示し、縦軸は音圧Lを示している。このように入力音の周波数スペクトルを解析することにより、制御部14は、周波数成分が存在する帯域Bと、周波数成分の音圧Lの大きさを特定することができる。ここで、帯域Bは、解析される周波数の範囲が複数の領域に分割されたものであり、隣り合う帯域B間の周波数は連続する。なお、同図では、説明の便宜上、帯域Bの幅を簡略化している。また、帯域Bの音圧Lは、各帯域Bに含まれる周波数成分のうち音圧が最も大きな周波数成分の音圧が帯域Bの代表値として採用されたものである。
【0036】
制御部14は、入力音の周波数スペクトルに基づき、入力音の周波数成分のうち最も音圧が大きい周波数を、基準時間T毎に最大音圧の周波数fmaxとして決定する。なお、制御部14は、最大音圧の周波数fmaxを、基準時間T毎に順次記憶部13に格納する。このように、制御部14は、マイクロフォン11に入力された音の周波数成分から最大音圧の周波数fmaxを決定する音処理部として機能する。
【0037】
また、制御部14は、記憶部13に記憶されたオブジェクトの中から、最大音圧の周波数fmaxに応じたオブジェクトOを読み出して表示部12に表示させる処理を行う。すなわち、制御部14は、最大音圧の周波数fmaxを含む帯域Bmaxに割り付けられたオブジェクトOを読み出して表示させる。例えば、制御部14は、最大音圧の周波数fmaxを含む帯域Bmaxが、周波数100Hz〜120Hzの帯域B16(図4参照)であるとき、制御部14は、オブジェクトO16を表示部12に表示させる。
【0038】
また、制御部14は、記憶部13に記憶されたオブジェクトの中から、最大音圧の周波数fmaxを含む帯域Bmaxに応じたオブジェクトOを読み出して表示部12に表示させる処理を行う際に、オブジェクトOを単体表示させたり、スクロール表示させたりする。具体的には、制御部14は、オブジェクトOを単体表示させるときには、表示部12に、オブジェクトOを、基準時間T毎に切り替えながら表示させる。つまり、制御部14により、表示部12に表示されるオブジェクトOは、基準時間T毎に更新される。例えば、図6に示すように、制御部14は、ある基準時間T1ではオブジェクトOaを表示させ、基準時間T1の次の基準時間T2ではオブジェクトObを表示させ、基準時間T2の次の基準時間T3ではオブジェクトOcを表示させる。このように、制御部14は、オブジェクトOの表示を基準時間T毎に更新することで、利用者は、自身の周囲で発生する音を認識することができる。
【0039】
また、制御部14は、オブジェクトOをスクロール表示させるときには、表示部12に、所定期間(T×n:nはオブジェクトOを一度に表示する数)のオブジェクトOを一見して視認可能に表示させることができる。例えば、図7に示すように、制御部14は、ある基準時間T1ではオブジェクトOaを表示部12の表示画面の右端に表示させる。そして、制御部14は、基準時間T1の次の基準時間T2では、オブジェクトOaを表示画面の右端から左側に所定量移動させるとともに、オブジェクトOaを表示部12の表示画面の右端に表示させる。そして、制御部14は、基準時間T2の次の基準時間T3では、オブジェクトOa,Obを表示画面の左側に所定量移動させるとともに、オブジェクトOcを表示部12の表示画面の右端に表示させる。このように、制御部14がオブジェクトOをスクロール表示させることで、利用者は、自身の周囲で発生する音の特徴の変化を一見して認識することができる。なお、図7に示す例では、4つのオブジェクトOを同時に表示することとしているが、利用者Uは携帯型表示装置1入力部(図示せず)からの入力により、同時に表示するオブジェクトOの数nを設定することができる。
【0040】
また、制御部14は、オブジェクトOを表示部12に表示させる際には、周波数成分の最大音圧Lmaxの大きさに応じた大きさでオブジェクトOを表示させる。例えば、電話の呼出音のように、所定の位置から発せられる音が一定の大きさでマイクロフォン11に入力された場合、制御部14は、図8に示すように、オブジェクトOを一定の大きさで表示する。
【0041】
一方、制御部14は、移動している救急車のサイレンの音のように、マイクロフォン11に入力される音の大きさが変化する場合には、図9に示すように、オブジェクトOを、入力される音の大きさに応じた大きさで表示させる。すなわち、制御部14は、救急車が利用者に近づいて、マイクロフォン11に入力される音が大きくなるときは、オブジェクトOを大きく表示し、救急車が利用者から離れて、マイクロフォン11に入力される音が小さくなるときは、オブジェクトOを小さく表示する。なお、マイクロフォン10に入力される音の大きさの変化は、オブジェクトOの大きさの変化に限られず、オブジェクトOの形状の変化として表示されてもよい。
【0042】
携帯型表示装置1は、振動を出力するバイブレータを設けるようにしてもよい。この場合、制御部14は、表示部12にオブジェクトOを表示するとともに、最大音圧の周波数に応じた周波数でバイブレータを振動させるようにしてもよい。これにより、利用者の周囲で音が発生していることを、オブジェクトOの表示に加え、振動により報知することが可能となる。
【0043】
以上、説明したように、携帯型表示装置1では、マイクロフォン11に入力された音の周波数成分のうち最大音圧の周波数に応じたオブジェクトOを表示部12に表示するようにしたので、利用者Uに、自身の周囲で発生した音を視覚情報として提供することができる。そのため、利用者Uは、表示されたオブジェクトOを視認することで、自身の周囲で発生している音がどのようなものかを認識することができ、より快適に日常生活をおくることができる。特に、携帯型表示装置1によれば、音源を識別することなく、オブジェクトOを表示することができるため、実用化が容易となる。
【0044】
また、本実施形態の携帯型表示装置1においては、制御部14は、最大音圧の周波数fmaxの決定に際して、マイクロフォン11に入力された音の周波数成分から基音の周波数成分を抽出する処理を行う。その後、制御部14は、基音の周波数成分のうち最も音圧が大きな周波数を判定して最大音圧の周波数fmaxを決定する。基音とは、例えば、楽器の弦や管が振動して発する複合音のうち、振動数の最も少ない音である。本実施形態では、オブジェクトOが割り付けられた帯域Bの全ての周波数に対して基音を抽出するようにしており、制御部14は、マイクロフォン11に入力された音の周波数成分から基音の周波数成分の周波数スペクトルを解析する。これにより、制御部14は、マイクロフォン11に入力された音の周波数成分から、ノイズや音の干渉を除去することができる。
【0045】
例えば、基音の周波数毎にコムフィルタ(櫛形フィルタ)を設けており、各コムフィルタにより、マイクロフォン11に入力された音の周波数成分から基音の周波数成分と倍音の周波数成分を抽出する。そして、倍音の周波数成分を除去することで、基音の周波数成分を抽出する。
【0046】
また、本実施形態の携帯型表示装置1においては、制御部14は、オブジェクトOの表示を行うに際して、最大音圧の周波数fmaxの周囲の周波数の音圧に対する最大音圧Lmaxの突出度合いを判定する。具体的には、制御部14は、図10に示すように、最大音圧Lmaxと最大音圧の周波数fmaxの周囲の周波数fcの音圧とを比較し、この比較結果に基づいて突出度合いを判定する。これにより、制御部14は、最大音圧の周波数のピークが鋭い人工音と、人工音以外の自然音とを識別するようにしている。
【0047】
制御部14は、最大音圧Lmaxと周囲の周波数の音圧とを比較するとき、周囲の周波数の音圧を、例えば、最大音圧の周波数fmaxが含まれる帯域Bmaxより周波数が低く、かつ帯域Bmaxに直近の帯域Bに含まれる周波数fLの音圧LLとする。そのとき、制御部14は、最大音圧Lmaxと、音圧LLとの差や比を算出することにより、最大音圧Lmaxの周囲の周波数の音圧に対する突出度合いVaを算出する。最大音圧Lmaxと、音圧LLとの差によって突出度合いVaを算出する場合には、
突出度合いVa=最大音圧Lmax−音圧LL
となる。
また、最大音圧Lmaxと、音圧LLとの比によって突出度合いVaを算出する場合には、
突出度合いVa=最大音圧Lmax/LL
となる。
【0048】
制御部14は、突出度合いVaが、予め記憶部13に記憶された突出度合いの所定値Vb以上であることを条件として、最大音圧Lmaxの周波数fmaxに対応するオブジェクトOを記憶部13から読み出し、表示部12に表示させる。突出度合いの所定値Vbとは、例えば、人工音と自然音とを識別することができる値である。
【0049】
また、上述した例では、周囲の周波数の音圧を音圧LLとしたが、これには限定されず、例えば、最大音圧の周波数fmaxが含まれる帯域Bmaxより周波数が高く、かつ帯域Bmaxに直近の帯域Bに含まれる周波数fHの音圧LHとしてもよい。また、周囲の周波数の音圧を、音圧LLと音圧LHとの平均したものとしてもよい。なお、周波数fLや周波数fHはそれぞれ属する帯域B内で最も音圧が高い周波数である。
【0050】
また、制御部14は、突出度合いの判定を、周波数スペクトルを用いて得たガウス分布の半値幅に基づいて用いて行うこともできる。これにより、突出度合いの判定を、精度よく行うことができる。例えば、制御部14は、図10に示す周波数スペクトルに基づいて、図11に示すガウス分布を得る。そして、制御部14は、最大音圧Lmaxに基づいて半値幅waを算出する。具体的には、最大音圧Lmaxの半分の値Lmidとなる周波数fx,fyを算出することにより、半値幅waを算出する。そして、制御部14は、半値幅waが、予め記憶部13に記憶された半値幅の所定値wb以下であることを条件として、最大音圧Lmaxの周波数fmaxに対応するオブジェクトOを記憶部13から読み出し、表示部12に表示させる。半値幅の所定値wbは、突出度合いの所定値Vbと同様に、人工音と自然音とを識別することができる値である。このように、制御部14は、突出度合い判定部として機能する。
【0051】
また、本実施形態の携帯型表示装置1においては、制御部14は、オブジェクトOの表示を行うに際して、最大音圧の周波数fmaxが同一周波数で周期的に出現しているか否かを判定する。制御部14は、周期性判定を行うとき、基準時間T毎に最大音圧の周波数fmaxを決定すると、決定した基準時間T毎に最大音圧の周波数fmaxを順次記憶部13に記憶する。そして、制御部14は、記憶部13に記憶された最大音圧の周波数fmaxを読み出し、図12に示すように、最大音圧の周波数fmaxが同一周波数で周期的に、すなわち、一定期間Δt毎に出現するか否かを判定する。これにより、制御部14は、周期的に繰り返し発せられる報知音を抽出する。そして、制御部14は、最大音圧の周波数fmaxが同一周波数で周期的に出現していると判定すると、最大音圧Lmaxの周波数fmaxに対応するオブジェクトOを記憶部13から読み出し、表示部12に表示させる。
【0052】
また、本実施形態の携帯型表示装置1においては、制御部14は、オブジェクトOの表示を行うに際して、最大音圧Lmaxが、予め記憶部13に記憶された閾値Lt以上であるか否かを判定する。制御部14は、図13に示すように、最大音圧Lmaxが、閾値Lt以上であることを条件として、オブジェクトOを表示部12に表示させる。これにより、制御部14は、マイクロフォン11に入力された音がノイズであるか否かを識別することができる。なお、閾値Ltは、例えば、マイクロフォン11により入力した音とノイズとを識別可能な値である。なお、制御部14は、マイクロフォン11により入力した音の周波数成分からノイズレベルを判定し、閾値Ltを調整するようにしている。ノイズレベルの判定例は、例えば、マイクロフォン11に入力された全周波数帯における音圧の平均値を閾値Ltとして採用する、最大音圧の周波数fmaxから所定値だけ離間した周波数における音圧の値を閾値Ltとして採用する、などであってよい。なお、利用者Uは携帯型表示装置1入力部(図示せず)からの入力により、閾値Ltを設定することもできる。
【0053】
また、複数の帯域Bの幅は、それぞれ対数表において互いに等しいことが好ましい。例えば、図14(a)に示すように、指数関数的に変化する各帯域B(B1〜B7)の幅は、対数表示することにより、図14(b)に示すように、各帯域B’(B1’〜B7’)の幅は互いに等しくなる。このように、複数の帯域Bの幅を、それぞれ対数表において互いに等しくすることで、人間が認識できる感度に応じてオブジェクトを適切に割り付けることができる。
【0054】
また、図15に示すように、複数の帯域B11’〜B17’のそれぞれは、1オクターブを複数の音階に分割した音律における、それぞれの音階に対応させてもよい。例えば、(例えば、1オクターブを、ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シの7音階に分割する。これにより、各帯域B’の細かさを7音階が識別可能な帯域幅とすることができる。なお、音階が識別可能な帯域幅であればよく、7音階ではなく例えば12音階としてもよい。
【0055】
[1.3.携帯型表示装置1で実行される処理]
以下、携帯型表示装置1で実行される処理について、図16を用いて説明する。図16は携帯型表示装置1の制御部14により実行される処理の流れの一例を示すフロー図である。
【0056】
図16に示すように、制御部14は、ステップS10において、マイクロフォン11に入力された音を変換した電気信号の波形を音データとして記憶部13に記憶する処理を行う。この処理が終了すると、制御部14は、ステップS11に処理を移す。
【0057】
ステップS11において、制御部14は、音データを周波数解析する処理を行う。この処理において、制御部14は、記憶部13に記憶している音データから、マイクロフォン11に入力された音の周波数スペクトル(図5参照)を解析する。制御部14は、この処理が終了すると、ステップS12へ処理を移す。
【0058】
ステップS12において、制御部14は、基音の周波数成分を抽出する処理を行う。この処理では、ステップS11において解析した周波数スペクトルから基音の周波数成分の周波数スペクトルを解析する。この処理が終了すると、制御部14は、ステップS13へ処理を移す。なお、基音の周波数成分の抽出処理は、利用者Uの入力部(図示せず)への入力操作によってスキップすることが可能である。
【0059】
ステップS13において、制御部14は、最大音圧の周波数fmaxを決定する処理を行う。この処理において、制御部14は、ステップS12で解析した周波数スペクトルに基づいて、最大音圧の周波数fmaxを決定する。なお、ステップS12をスキップした場合にはステップS11で解析した周波数スペクトルに基づいて、最大音圧の周波数fmaxを決定する。この処理が終了すると、制御部14は、ステップS14へ処理を移す。
【0060】
ステップS14において、制御部14は、ステップS13において決定した最大音圧Lmaxが閾値Lt以上であるか否かを判定する。この処理において、最大音圧Lmaxは閾値Lt以上であると判定すると(ステップS14:Yes)、制御部14は、処理をステップS15に移す。一方。最大音圧Lmaxは閾値Lt以上でないと判定すると(ステップS14:No)、制御部14は、処理をステップS20に移す。
【0061】
ステップS15において、制御部14は、最大音圧の周波数fmaxの突出度合いを判定する処理を行う。この処理において、制御部14は、図10に示すように最大音圧Lmaxと周囲の周波数の音圧とを比較した突出度合いVaが所定値Vb以上であるか否かを判定する。この処理において、制御部14は、突出度合いVaが所定値Vb以上であると判定すると(ステップS15:Yes)、ステップS16へ処理を移す。一方、制御部14は、突出度合いVaが所定値Vb以上でないと判定すると(ステップS15:No)、ステップS20へ処理を移す。
【0062】
ステップS16において、制御部14は、周期性判定の設定が記憶部13にされているか否かを判定する。周期性判定の設定は、利用者Uによる携帯型表示装置1の入力部(図示せず)への入力操作によって行うことができる。利用者Uが入力部を操作して周期性判定を行う設定をしたとき、制御部14は、記憶部13に周期性判定の設定を行う。このステップS16において、制御部14は、周期性判定の設定が記憶部13にされていると判定すると(ステップS16:Yes)、ステップS17へ処理を移す。一方、制御部14は、周期性判定の設定が記憶部13にされていないと判定すると(ステップS16:No)、ステップS19へ処理を移す。
【0063】
ステップS17において、制御部14は、最大音圧の周波数fmaxの周期性を検出する処理を行う。すなわち、制御部14は、最大音圧の周波数fmaxが同一周波数で一定期間Δt毎に出現することを、周波数fmaxの周期性として検出する。この処理が終了すると、制御部14は、処理をステップS18に移す。なお、一定期間Δtは、所定の時間幅(Δt=ta〜tb)を有しており、taより短い周期の場合やtbを超える周期の場合には、制御部14は、その最大音圧の周波数fmaxの出現を周期性を有するものとしては検出しない。この一定期間Δtは、利用者Uによる携帯型表示装置1の入力部(図示せず)への入力操作によって任意に設定することができる。
【0064】
ステップS18において、制御部14は、最大音圧の周波数fmaxが周期的に出現するか否かを判定する。つまり、制御部14は、ステップS17における最大音圧の周波数fmaxの周期性の検出の有無に基づき、検出があった場合は最大音圧の周波数fmaxが周期的に出現すると判定し、検出がなかった場合は最大音圧の周波数fmaxが周期的に出現しないと判定する。制御部14は、最大音圧の周波数fmaxが周期的に出現すると判定すると(ステップS18:Yes)、ステップS19に処理を移す。一方、制御部14は、最大音圧の周波数fmaxが周期的に出現しないと判定すると(ステップS18:No)、ステップS20に処理を移す。
【0065】
ステップS19において、制御部14は、オブジェクトを表示させる処理を行う。この処理では、制御部14は、記憶部13に記憶されたオブジェクトの中から、最大音圧の周波数fmaxを含む帯域Bmaxに応じたオブジェクトOを読み出し、このオブジェクトOを最大音圧Lmaxの大きさに応じた大きさで表示部12に表示させる。この処理が終了すると、制御部14は、ステップS20へ処理を移す。なお、制御部14は、単体表示設定がされているときには単体表示を行い、スクロール表示設定がされているときにはスクロール表示を行う。単体表示設定とスクロール表示設定とは選択的に設定可能であり、利用者Uによる携帯型表示装置1の入力部(図示せず)への入力操作によって設定することができる。
【0066】
ステップS20において、制御部14は、利用者Uによる携帯型表示装置1の入力部(図示せず)への入力操作などによってアプリ終了トリガがあるか否かを判定し、アプリ終了トリガがあると判定すると(ステップS20:Yes)、制御部14は、携帯型表示装置1で実行される処理のフローを終了する。一方、アプリ終了トリガがないと判定すると(ステップS20:No)、制御部14は、ステップS10へ処理を戻す。
【0067】
上述した携帯型表示装置1で実行される処理は、CPU15が表示制御プログラムを読み込むことで実行される。すなわち、表示制御プログラムは、表示部12と、マイクロフォン11とを備えた携帯型表示装置1を、マイクロフォン11に入力された音の周波数成分から最大音圧の周波数fmaxを決定する音処理手段、複数の帯域Bに分割された音の周波数の各帯域Bに割り付けられたオブジェクトOを記憶するオブジェクト記憶手段、音処理手段により決定された最大音圧の周波数を含む帯域に割り付けられたオブジェクトOをオブジェクト記憶手段から読み出して表示部12に表示させる表示制御手段、として機能させる。
【0068】
[2.第2実施形態]
本発明の第2実施形態について説明する。携帯型表示装置2の構成について、図17を用いて説明する。なお、本実施形態の携帯型表示装置2の処理については、上述した携帯型表示装置1の処理と同様であるため説明を省略する。この携帯型表示装置2は、表示部12をLCDなどの表示装置とするのではなく、シースルー型のヘッドマウントディスプレイ(以下、HMDという)とする点で異なる。表示部をシースルー型のHMDとすることで、利用者Uは、例えば、移動しながら前方にオブジェクトOを視認することが可能となる。
【0069】
図17に示すように、携帯型表示装置2は、コントロールユニット20と、表示部としてのシースルー型のHMD30と、マイクロフォン50とを備える。
【0070】
HMD30は、投影ユニット31、フレーム32を有している。投影ユニット31は、コントロールユニット20から出力される画像信号に基づいて、画像光を生成して利用者の眼に投射する。投影ユニット31は、画像信号に応じて強度変調した光束を2次元走査して利用者の眼に投射し、利用者の眼の網膜上で強度変調した光束を2次元走査することで、利用者に画像信号に応じた画像を視認させる網膜走査型の表示部である。なお、投影ユニット31として網膜走査型の表示部ではなくLCD型の表示部を採用することも可能である。LCD型の表示部は、例えば、反射型LCDに画像信号に応じた画像を表示し、このLCDに光を反射させて画像光を生成し、利用者の眼に投射することで、利用者に画像信号に応じた画像を視認させる。
【0071】
投影ユニット31は、利用者の眼に画像光を入射させるためのハーフミラー33を有する。ハーフミラー33は、利用者の眼の前方に位置するように設けられる。投影ユニット31は、ハーフミラー33により、出射した画像光を反射させて利用者の眼に入射させる。また、ハーフミラー33は、外光を透過させて利用者の眼に入射させる。したがって、利用者は、外光により認識される外景に、画像光による画像を重ねて視認することができる。
【0072】
フレーム32は、投影ユニット31を支持するとともに、利用者の頭部に装着される部分である。フレーム32は、利用者の頭部に装着された状態で、前述したような投影ユニット31による利用者の眼への画像光の投射ができるように、投影ユニット31を支持する。本実施形態の携帯型表示装置2では、投影ユニット31は、フレーム32に対して、フレーム32を頭部に装着した状態の利用者の左側に取り付けられる。
【0073】
マイクロフォン50は、上述したマイクロフォン11と同様に、利用者の周囲で発生した音を入力可能に構成されている。このマイクロフォン50は、入力された音を電気信号に変換する機能を有し、マイクロフォン50に入力された音を電気信号として伝送ケーブル40を介してコントロールユニット20の記憶部21に音データとして一時的に記憶する。このマイクロフォン50は、フレーム32に対して、フレーム32を頭部に装着した状態の利用者の左側に取り付けられ、利用者の耳に近い位置で音を入力できるようになっている。なお、マイクロフォン50は、コントロールユニット20に設けられていてもよい。
【0074】
マイクロフォン50に入力された音は、マイクロフォン50で電気信号に変換される。この電気信号は、記憶部21に音データとして一時的に記憶され、コントロールユニット20の制御部22において周波数解析されて最大音圧の周波数fmaxが決定される。制御部22では、最大音圧の周波数fmaxを含む帯域Bmaxに割り当てられたオブジェクトOを記憶部21から読み出す。このオブジェクトOは、HMD30の投影ユニット31により、利用者の眼に投影される。
【0075】
このように、携帯型表示装置2では、表示部を利用者の頭部に装着したHMD30としたので、利用者は、自身の周囲で発生する音に応じたオブジェクトを外景と重ねて視覚情報として得ることができるため、より快適に日常生活を送ることができる。また、利用者は表示部を手に保持した状態でなくともオブジェクトOを視認することができるため、利便性にも優れる。
【0076】
以上、本発明の実施形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【0077】
本発明を、以上説明した実施形態の携帯型表示装置及び表示制御プログラムによれば、以下の効果が期待できる。
【0078】
(1)本実施形態に係る携帯型表示装置は、表示部12と、マイクロフォン11と、マイクロフォン11に入力された音の周波数成分から最大音圧の周波数fmaxを決定する音処理部(制御部14)と、複数の帯域Bに分割された音の周波数fの各帯域Bに割り付けられた互いに異なるオブジェクトOを記憶する記憶部13(オブジェクト記憶部)と、音処理部(制御部14)により決定された最大音圧の周波数fmaxを含む帯域Bに割り付けられたオブジェクトOを記憶部13(オブジェクト記憶部)から読み出して表示部12に表示させる表示制御部(制御部14)と、を備える。これにより、利用者に、自身の周囲で発生した音を視覚情報として提供することができる。また、携帯型表示装置1によれば、音源を識別することなく、入力される音の周波数成分のうち最大音圧の周波数に応じたオブジェクトOを表示するため、容易に実用化することができる。
【0079】
(2)また、本実施形態に係る携帯型表示装置においては、最大音圧Lmaxと最大音圧の周波数の周囲の周波数の音圧Lcとの比較結果に基づいて、周囲の周波数の音圧Lcに対する最大音圧Lmaxの突出度合いを判定する突出度合い判定部(制御部14)を備える。また、表示制御部(制御部14)は、突出度合い判定部(制御部14)によって判定された突出度合いが、所定値Vb以上であることを条件として、オブジェクトOを表示部12に表示させる。これにより、マイクロフォン11に入力された音の周波数成分から、人工音の周波数成分を抽出することができる。
【0080】
(3)また、本実施形態に係る携帯型表示装置においては、音処理部(制御部14)は、周波数成分から基音の周波数成分を抽出し、抽出した基音の周波数成分から最大音圧の周波数fmaxを決定する。これにより、ノイズや音の干渉の影響を除去することができ、音源本来の音の成分を抽出することができる。
【0081】
(4)また、本実施形態に係る携帯型表示装置においては、音処理部(制御部14)により決定された最大音圧の周波数fmaxが周期的に出現しているか否かを判定する制御部14(周期性判定部)を備える。また、表示制御部(制御部14)は、周期性判定部(制御部14)によって音処理部(制御部14)により決定された最大音圧の周波数fmaxが周期的に出現していると判定されたことを条件として、オブジェクトOを表示部12に表示させる。これにより、マイクロフォン11に入力された音の周波数成分から、報知音等の繰り返し発せられる音の周波数成分を抽出することができる。
【0082】
(5)また、本実施形態に係る携帯型表示装置においては、表示制御部(制御部14)は、最大音圧Lmaxが閾値Lt以上であると判定したことを条件として、オブジェクトOを表示部12に表示させる。これにより、例えば、マイクロフォン11に入力された音がノイズしかない場合にオブジェクト表示することを防止することができ、利用者の混乱を防止することができる。
【0083】
(6)また、本実施形態に係る携帯型表示装置においては、複数の帯域Bの幅は、それぞれ対数表において互いに等しいこととする。これにより、例えば、複数の帯域Bの幅を、それぞれ対数表において互いに等しくすることで、人間が認識できる感度に応じてオブジェクトを適切に割り付けることができる。
【0084】
(7)また、本実施形態に係る携帯型表示装置においては、複数の帯域Bのそれぞれは、1オクターブを複数の音階に分割した音律における、それぞれの音階に対応している。これにより、例えば、各帯域B’の細かさをそれぞれの音階が識別可能な帯域幅とすることができる。
【0085】
(8)また、本実施形態に係る携帯型表示装置においては、表示部は、シースルー型のヘッドマウントディスプレイである。これにより、オブジェクトOをHMD30により表示することができる。これにより、利用者は表示部を手に保持した状態でなくともオブジェクトOを視認することができるため、利便性にも優れる。また、表示部をシースルー型のHMDとしたので、外景とオブジェクトとを重ねて情報を得ることができる。
【0086】
(9)本実施形態に係る表示制御プログラムは、表示部12と、マイクロフォン11とを備えた携帯型表示装置1を、マイクロフォン11に入力された音の周波数成分から最大音圧の周波数fmaxを決定する音処理手段(制御部14)、複数の帯域Bに分割された音の周波数の各帯域Bに割り付けられたオブジェクトOを記憶する記憶部13(オブジェクト記憶手段)、音処理手段(制御部14)により決定された最大音圧の周波数fmaxを含む帯域Bmaxに割り付けられたオブジェクトOを記憶部13(オブジェクト記憶手段)から読み出して表示部12に表示させる表示制御手段(制御部14)、として機能させる。これにより、例えば、この表示制御プログラムをインストールすることで、最大音圧の周波数fmaxを含む帯域Bmaxに割り付けられたオブジェクトOを、表示部12に表示させることができる。
【符号の説明】
【0087】
1,2 携帯型表示装置
11,50 マイクロフォン
12 表示部
13,21 記憶部
14,22 制御部
15 CPU
16 ROM
17 RAM
20 コントロールユニット
23 光源部
30 ヘッドマウントディスプレイ
31 投影ユニット
32 フレーム
33 ハーフミラー
40 伝送ケーブル
B 帯域
O オブジェクト
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型表示装置及び表示制御プログラムに関するものであり、特に、マイクロフォンから入力された音に応じたオブジェクトを表示する携帯型表示装置及び表示制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、マイクロフォンに入力された音を、表示部により視覚的に表示する携帯機器が提案されている。かかる携帯機器により、音の認識が困難である聴覚障害者に対して、マイクロフォンに入力された音が視覚情報として提供される。
【0003】
例えば、特許文献1では、各音源からの音を識別して、各音源を示すオブジェクト画像を表示することができる携帯機器が提案されている。この携帯機器では、音源の音の特徴部分をサンプリングして特徴を抽出して得られた特徴データと音源を示すオブジェクトのデータとを関連付けて記憶している。そして、この携帯機器は、マイクロフォンに入力された音の特徴と合致する特徴データがあるときに、この特徴データに対応する音源を示すオブジェクトを表示する。例えば、踏み切り遮断機の音の特徴をサンプリングした特徴データと踏み切り遮断機の画像データとが関連づけて記憶された状態で、マイクロフォンに入力された音に踏み切り遮断機の音の特徴と合致する音が含まれていれば、踏み切り遮断機の画像が表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−99418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の携帯機器では、特徴データを記憶していない未知の音源の音がマイクロフォンに入力された場合には、その音源を識別することができない。また、様々な音源の音に対応しようとする場合には、記憶すべき音源の音の特徴データ量が膨大となり、現実的でない。このように、特許文献1に記載の携帯機器は、実用化が困難である。
【0006】
本発明は、上述したような課題に鑑みてなされたものであり、音源を識別することなく、マイクロフォンに入力された音に応じたオブジェクトを表示することができる携帯型表示装置及び表示制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、表示部と、マイクロフォンと、前記マイクロフォンに入力された音の周波数成分から最大音圧の周波数を決定する音処理部と、複数の帯域に分割された音の周波数の各帯域に割り付けられた互いに異なるオブジェクトを記憶するオブジェクト記憶部と、前記音処理部により決定された前記最大音圧の周波数を含む帯域に割り付けられたオブジェクトを前記オブジェクト記憶部から読み出して前記表示部に表示させる表示制御部と、を備えることを特徴とする携帯型表示装置である。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の携帯型表示装置において、前記最大音圧と前記最大音圧の周波数の周囲の周波数の音圧との比較結果に基づいて、前記周囲の周波数の音圧に対する前記最大音圧の突出度合いを判定する突出度合い判定部を備え、前記表示制御部は、前記突出度合い判定部によって判定された前記突出度合いが、所定値以上であることを条件として、前記オブジェクトを前記表示部に表示させることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の携帯型表示装置において、前記音処理部は、前記周波数成分から基音の周波数成分を抽出し、抽出した基音の周波数成分から前記最大音圧の周波数を決定することを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の携帯型表示装置において、前記音処理部により決定された最大音圧の周波数が周期的に出現しているか否かを判定する周期性判定部を備え、前記表示制御部は、前記周期性判定部によって前記音処理部により決定された最大音圧の周波数が周期的に出現していると判定されたことを条件として、前記オブジェクトを前記表示部に表示させることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の携帯型表示装置において、前記表示制御部は、前記最大音圧が閾値以上であると判定したことを条件として、前記オブジェクトを前記表示部に表示させることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の携帯型表示装置において、前記複数の帯域の幅は、それぞれ対数表において互いに等しいことを特徴とする。
【0013】
また、請求項7に係る発明は、請求項6に記載の携帯型表示装置において、前記複数の帯域のそれぞれは、1オクターブを複数の音階に分割した音律における、それぞれの音階に対応していることを特徴とする。
【0014】
また、請求項8に係る発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の携帯表示装置において、前記表示部は、シースルー型のヘッドマウントディスプレイであることを特徴とする。
【0015】
また、請求項9に係る発明は、表示部と、マイクロフォンとを備えた携帯表示装置を、前記マイクロフォンに入力された音の周波数成分から最大音圧の周波数を決定する音処理手段、複数の帯域に分割された音の周波数の各帯域に割り付けられたオブジェクトを記憶するオブジェクト記憶手段、前記音処理手段により決定された前記最大音圧の周波数を含む帯域に割り付けられたオブジェクトを前記オブジェクト記憶手段から読み出して前記表示部に表示させる表示制御手段、として機能させるための表示制御プログラムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、音の周波数成分から最大音圧の周波数を決定し、最大音圧を含む帯域に割り付けられたオブジェクトを表示しているため、音源を識別することなく、音に応じたオブジェクトを表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る携帯型表示装置の概略構成を示す図である。
【図2】携帯型表示装置1の構成を示すブロック図である。
【図3】割り付けテーブルの一例を示す図である。
【図4】オブジェクトの一例を示す図である。
【図5】周波数スペクトルを模式的に示した図である。
【図6】オブジェクトの表示方法の一例を示す図である。
【図7】オブジェクトの表示方法の他の例を示す図である。
【図8】オブジェクトの表示例を示す図である。
【図9】オブジェクトの他の表示例を示す図である。
【図10】突出度合い判定処理を説明する図である。
【図11】他の突出度合いを判定する処理を説明する図である。
【図12】周期性を判定する処理を説明する図である。
【図13】閾値の判定を行う処理を説明する図である。
【図14】帯域の幅を示す図である。
【図15】帯域の幅を示す他の図である。
【図16】携帯型表示装置で実行される処理の流れを示す図である。
【図17】本発明の第2実施形態に係る携帯型表示装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0019】
[1.第1実施形態]
[1.1.携帯型表示装置1の概要]
まず、本発明の第1実施形態に係る携帯型表示装置の概要について図1を参照して説明する。
【0020】
第1実施形態に係る携帯型表示装置1は、マイクロフォン11と、表示部12とを有し、マイクロフォン11に入力された音(以下、入力音ともいう)を解析して、予め記憶されたオブジェクトOの中から、入力音に応じたオブジェクトOを表示部12に表示するものである。
【0021】
特に、この携帯型表示装置1では、入力音の解析処理、入力音に応じたオブジェクトOの選択処理を次のように行うことで、音源を識別することなく、マイクロフォンに入力された音に応じたオブジェクトを表示するようにしている。
【0022】
まず、携帯型表示装置1は、入力音の解析処理として、入力音の周波数成分を解析し、これらの周波数成分のうち最も音圧が高い周波数を選択して、この周波数を最大音圧の周波数として決定する処理を行う。携帯型表示装置1は、入力音の周波数成分の解析を、例えば、FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)処理によって行う。
【0023】
次に、携帯型表示装置1は、入力音に応じたオブジェクトOの選択処理として、前記解析処理により決定した最大音圧の周波数を含む帯域に割り付けられたオブジェクトを選択する処理を行う。後述する記憶部13には、予め複数の帯域に分割された音の周波数の各帯域の情報とオブジェクトの情報とが互いに関連づけられて記憶されている。携帯型表示装置1は、記憶部13に記憶している情報に基づいて、最大音圧の周波数を含む帯域に割り付けられたオブジェクトを選択する。
【0024】
記憶部13に記憶されたオブジェクトは、帯域毎に異なるように割り当てられている。これにより、携帯型表示装置1の利用者Uは、自身の周囲で発生した音のうち最も音圧が大きい音の周波数に応じたオブジェクトを視覚的に認識することができる。そのため、携帯型表示装置1の利用者Uは、自身の周囲の状況と表示部12の表示内容を関連づける学習をすることで、自身の周囲で発生した音を視覚情報として得ることができる。例えば、救急車のサイレンの音が、770Hzの低音と960Hzの高音とが1秒毎に切り替わるものであるとする。そして、770Hzを含む帯域に割り当てられたオブジェクトが「○」で、960Hzを含む帯域に割り当てられたオブジェクトが「△」であるとする。このとき、携帯型表示装置1は、「○」と「△」とを1秒毎に交互に表示部12に表示することになる。利用者Uは、表示部12において「○」と「△」とが交互に表示されていることを確認した後、周囲を見回して、周囲の状況を把握する。このとき、救急車が近くを通っていれば、利用者Uは、「○」と「△」とが交互に現れるオブジェクト表示が救急車に対応するものではないかと考える。このような状況に繰り返し遭遇することで、利用者Uは、「○」と「△」とが交互に現れるオブジェクト表示があれば、救急車が近くを通っていると学習することができる。
【0025】
携帯型表示装置1では、マイクロフォン11に入力された音の周波数成分のうち最大の音圧の周波数に応じたオブジェクトを表示することで、利用者Uは、その周囲で発生した音を視覚情報として得ることができる。特に、携帯型表示装置1では、最大の音圧の周波数のオブジェクトのみを表示し、それ以外の周波数はオブジェクト表示に使用しないため、表示内容が複雑にならず、利用者Uによる音の識別が容易になる。しかも、携帯型表示装置1では、音源の音の特徴を予め記憶して音源を識別するのではなく、最大音圧の周波数に応じたオブジェクトを表示するだけなので、未知の音源に対しても対応することができる。さらに、携帯型表示装置1では、周波数毎にではなく帯域毎にオブジェクトを割り当ているため、オブジェクトの数を少なくすることができ、音に応じたオブジェクトの把握が容易である。
【0026】
以下、携帯型表示装置1の具体的な構成及び動作の一例について図面を参照して具体的に説明する。
【0027】
[1.2.携帯型表示装置1の構成]
次に、本実施形態に係る携帯型表示装置1の構成について説明する。携帯型表示装置1は、図2に示すように、マイクロフォン11と、表示部12と、記憶部13と、制御部14とを備える。
【0028】
マイクロフォン11は、例えば、携帯型表示装置1の上端部に設けられている。マイクロフォン11は、利用者の周囲で発生した音を入力可能に構成されている(図1参照)。このマイクロフォン11は、入力音を電気信号に変換する機能を有する。マイクロフォン11に入力された音は、変換した電気信号の波形を音データとして記憶部13に一時的に記憶される。予め規定された基準時間T(例えば、数十ms)分の最新の電気信号の波形は、音データとして記憶され、基準時間Tよりも以前の電気信号の波形は記憶部13から消去される。
【0029】
表示部12は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)により構成される。表示部12は、入力音の周波数成分のうち最大音圧の周波数に応じたオブジェクトOを表示する。
【0030】
記憶部13は、例えば、不揮発性メモリやハードディスクにより構成される。記憶部13は、オブジェクトOと音の周波数の帯域とを関連づけた割り付けテーブルを記憶する割り付けテーブル記憶部、及び割り付けテーブルで帯域と割り付けられた複数のオブジェクトOを記憶するオブジェクト記憶部として機能する。
【0031】
記憶部13に記憶される割り付けテーブルは、図3に示すように、各オブジェクトOと、複数の帯域に分割された音の周波数の各帯域Bとを関連づけるテーブルである。
【0032】
記憶部13に記憶される複数のオブジェクトOは、例えば形状、模様、色彩などが異なる、互いに異なるオブジェクトである。一例として、本実施形態では、図4に示すように、周波数が0Hz〜20000Hzまでの範囲7つに分割した各大帯域B1〜B7に、それぞれ形状の異なるオブジェクトO1〜O7が割り付けられる。また、大帯域B1は、7つの小帯域B11〜B17に分割され、各小帯域B11〜B17には、それぞれ色彩の異なるオブジェクトO11〜O17が割り付けられる。なお、図4では、大帯域B1を、7つの小帯域B11〜B17に分割した状態のみを図示しているが、これと同様に、大帯域B2〜B7もそれぞれ7つの小帯域に分割される。すなわち、大帯域B2は小帯域B21〜B27に分割され、大帯域B3は帯域B31〜B37に分割され、大帯域B4は小帯域B41〜B47に分割され、大帯域B5は小帯域B51〜B57に分割され、大帯域B6は小帯域B61〜B67に分割され、大帯域B7は小帯域B71〜B77に分割される。また、本実施形態では、オブジェクトOの形状や色彩により、帯域Bを区別するようにしたが、これには限定されない。例えば、オブジェクトを記号や文字で表現するときには、記号や文字で帯域Bを区別する。
【0033】
制御部14は、CPU15とROM16とRAM17とを有する。ROM16は携帯型表示装置1の表示制御プログラムを記憶している。携帯型表示装置1を起動すると、CPU15は、ROM16から表示制御プログラムをRAM17に読み出し、RAM17を作業領域として表示制御プログラムを実行する。これにより、制御部14は、表示制御プログラムに応じた機能を発揮する。
【0034】
制御部14は、最大音圧の周波数を抽出するために、音データを周波数解析する処理を行う。制御部14は、音データを周波数解析する処理として、例えば、音データに対して、FFT処理を行う。具体的には、制御部14は、記憶部13に記憶した音データを基準時間T毎にFFT処理を行い、基準時間T毎に入力音の周波数スペクトル(即ち、入力音を構成する音の周波数の分布)を解析し、周波数スペクトルの情報を順次記憶部13に記憶する。
【0035】
音データを周波数解析する処理により得られた周波数スペクトルの一例を図5に示す。同図において、横軸は音の周波数fを示し、縦軸は音圧Lを示している。このように入力音の周波数スペクトルを解析することにより、制御部14は、周波数成分が存在する帯域Bと、周波数成分の音圧Lの大きさを特定することができる。ここで、帯域Bは、解析される周波数の範囲が複数の領域に分割されたものであり、隣り合う帯域B間の周波数は連続する。なお、同図では、説明の便宜上、帯域Bの幅を簡略化している。また、帯域Bの音圧Lは、各帯域Bに含まれる周波数成分のうち音圧が最も大きな周波数成分の音圧が帯域Bの代表値として採用されたものである。
【0036】
制御部14は、入力音の周波数スペクトルに基づき、入力音の周波数成分のうち最も音圧が大きい周波数を、基準時間T毎に最大音圧の周波数fmaxとして決定する。なお、制御部14は、最大音圧の周波数fmaxを、基準時間T毎に順次記憶部13に格納する。このように、制御部14は、マイクロフォン11に入力された音の周波数成分から最大音圧の周波数fmaxを決定する音処理部として機能する。
【0037】
また、制御部14は、記憶部13に記憶されたオブジェクトの中から、最大音圧の周波数fmaxに応じたオブジェクトOを読み出して表示部12に表示させる処理を行う。すなわち、制御部14は、最大音圧の周波数fmaxを含む帯域Bmaxに割り付けられたオブジェクトOを読み出して表示させる。例えば、制御部14は、最大音圧の周波数fmaxを含む帯域Bmaxが、周波数100Hz〜120Hzの帯域B16(図4参照)であるとき、制御部14は、オブジェクトO16を表示部12に表示させる。
【0038】
また、制御部14は、記憶部13に記憶されたオブジェクトの中から、最大音圧の周波数fmaxを含む帯域Bmaxに応じたオブジェクトOを読み出して表示部12に表示させる処理を行う際に、オブジェクトOを単体表示させたり、スクロール表示させたりする。具体的には、制御部14は、オブジェクトOを単体表示させるときには、表示部12に、オブジェクトOを、基準時間T毎に切り替えながら表示させる。つまり、制御部14により、表示部12に表示されるオブジェクトOは、基準時間T毎に更新される。例えば、図6に示すように、制御部14は、ある基準時間T1ではオブジェクトOaを表示させ、基準時間T1の次の基準時間T2ではオブジェクトObを表示させ、基準時間T2の次の基準時間T3ではオブジェクトOcを表示させる。このように、制御部14は、オブジェクトOの表示を基準時間T毎に更新することで、利用者は、自身の周囲で発生する音を認識することができる。
【0039】
また、制御部14は、オブジェクトOをスクロール表示させるときには、表示部12に、所定期間(T×n:nはオブジェクトOを一度に表示する数)のオブジェクトOを一見して視認可能に表示させることができる。例えば、図7に示すように、制御部14は、ある基準時間T1ではオブジェクトOaを表示部12の表示画面の右端に表示させる。そして、制御部14は、基準時間T1の次の基準時間T2では、オブジェクトOaを表示画面の右端から左側に所定量移動させるとともに、オブジェクトOaを表示部12の表示画面の右端に表示させる。そして、制御部14は、基準時間T2の次の基準時間T3では、オブジェクトOa,Obを表示画面の左側に所定量移動させるとともに、オブジェクトOcを表示部12の表示画面の右端に表示させる。このように、制御部14がオブジェクトOをスクロール表示させることで、利用者は、自身の周囲で発生する音の特徴の変化を一見して認識することができる。なお、図7に示す例では、4つのオブジェクトOを同時に表示することとしているが、利用者Uは携帯型表示装置1入力部(図示せず)からの入力により、同時に表示するオブジェクトOの数nを設定することができる。
【0040】
また、制御部14は、オブジェクトOを表示部12に表示させる際には、周波数成分の最大音圧Lmaxの大きさに応じた大きさでオブジェクトOを表示させる。例えば、電話の呼出音のように、所定の位置から発せられる音が一定の大きさでマイクロフォン11に入力された場合、制御部14は、図8に示すように、オブジェクトOを一定の大きさで表示する。
【0041】
一方、制御部14は、移動している救急車のサイレンの音のように、マイクロフォン11に入力される音の大きさが変化する場合には、図9に示すように、オブジェクトOを、入力される音の大きさに応じた大きさで表示させる。すなわち、制御部14は、救急車が利用者に近づいて、マイクロフォン11に入力される音が大きくなるときは、オブジェクトOを大きく表示し、救急車が利用者から離れて、マイクロフォン11に入力される音が小さくなるときは、オブジェクトOを小さく表示する。なお、マイクロフォン10に入力される音の大きさの変化は、オブジェクトOの大きさの変化に限られず、オブジェクトOの形状の変化として表示されてもよい。
【0042】
携帯型表示装置1は、振動を出力するバイブレータを設けるようにしてもよい。この場合、制御部14は、表示部12にオブジェクトOを表示するとともに、最大音圧の周波数に応じた周波数でバイブレータを振動させるようにしてもよい。これにより、利用者の周囲で音が発生していることを、オブジェクトOの表示に加え、振動により報知することが可能となる。
【0043】
以上、説明したように、携帯型表示装置1では、マイクロフォン11に入力された音の周波数成分のうち最大音圧の周波数に応じたオブジェクトOを表示部12に表示するようにしたので、利用者Uに、自身の周囲で発生した音を視覚情報として提供することができる。そのため、利用者Uは、表示されたオブジェクトOを視認することで、自身の周囲で発生している音がどのようなものかを認識することができ、より快適に日常生活をおくることができる。特に、携帯型表示装置1によれば、音源を識別することなく、オブジェクトOを表示することができるため、実用化が容易となる。
【0044】
また、本実施形態の携帯型表示装置1においては、制御部14は、最大音圧の周波数fmaxの決定に際して、マイクロフォン11に入力された音の周波数成分から基音の周波数成分を抽出する処理を行う。その後、制御部14は、基音の周波数成分のうち最も音圧が大きな周波数を判定して最大音圧の周波数fmaxを決定する。基音とは、例えば、楽器の弦や管が振動して発する複合音のうち、振動数の最も少ない音である。本実施形態では、オブジェクトOが割り付けられた帯域Bの全ての周波数に対して基音を抽出するようにしており、制御部14は、マイクロフォン11に入力された音の周波数成分から基音の周波数成分の周波数スペクトルを解析する。これにより、制御部14は、マイクロフォン11に入力された音の周波数成分から、ノイズや音の干渉を除去することができる。
【0045】
例えば、基音の周波数毎にコムフィルタ(櫛形フィルタ)を設けており、各コムフィルタにより、マイクロフォン11に入力された音の周波数成分から基音の周波数成分と倍音の周波数成分を抽出する。そして、倍音の周波数成分を除去することで、基音の周波数成分を抽出する。
【0046】
また、本実施形態の携帯型表示装置1においては、制御部14は、オブジェクトOの表示を行うに際して、最大音圧の周波数fmaxの周囲の周波数の音圧に対する最大音圧Lmaxの突出度合いを判定する。具体的には、制御部14は、図10に示すように、最大音圧Lmaxと最大音圧の周波数fmaxの周囲の周波数fcの音圧とを比較し、この比較結果に基づいて突出度合いを判定する。これにより、制御部14は、最大音圧の周波数のピークが鋭い人工音と、人工音以外の自然音とを識別するようにしている。
【0047】
制御部14は、最大音圧Lmaxと周囲の周波数の音圧とを比較するとき、周囲の周波数の音圧を、例えば、最大音圧の周波数fmaxが含まれる帯域Bmaxより周波数が低く、かつ帯域Bmaxに直近の帯域Bに含まれる周波数fLの音圧LLとする。そのとき、制御部14は、最大音圧Lmaxと、音圧LLとの差や比を算出することにより、最大音圧Lmaxの周囲の周波数の音圧に対する突出度合いVaを算出する。最大音圧Lmaxと、音圧LLとの差によって突出度合いVaを算出する場合には、
突出度合いVa=最大音圧Lmax−音圧LL
となる。
また、最大音圧Lmaxと、音圧LLとの比によって突出度合いVaを算出する場合には、
突出度合いVa=最大音圧Lmax/LL
となる。
【0048】
制御部14は、突出度合いVaが、予め記憶部13に記憶された突出度合いの所定値Vb以上であることを条件として、最大音圧Lmaxの周波数fmaxに対応するオブジェクトOを記憶部13から読み出し、表示部12に表示させる。突出度合いの所定値Vbとは、例えば、人工音と自然音とを識別することができる値である。
【0049】
また、上述した例では、周囲の周波数の音圧を音圧LLとしたが、これには限定されず、例えば、最大音圧の周波数fmaxが含まれる帯域Bmaxより周波数が高く、かつ帯域Bmaxに直近の帯域Bに含まれる周波数fHの音圧LHとしてもよい。また、周囲の周波数の音圧を、音圧LLと音圧LHとの平均したものとしてもよい。なお、周波数fLや周波数fHはそれぞれ属する帯域B内で最も音圧が高い周波数である。
【0050】
また、制御部14は、突出度合いの判定を、周波数スペクトルを用いて得たガウス分布の半値幅に基づいて用いて行うこともできる。これにより、突出度合いの判定を、精度よく行うことができる。例えば、制御部14は、図10に示す周波数スペクトルに基づいて、図11に示すガウス分布を得る。そして、制御部14は、最大音圧Lmaxに基づいて半値幅waを算出する。具体的には、最大音圧Lmaxの半分の値Lmidとなる周波数fx,fyを算出することにより、半値幅waを算出する。そして、制御部14は、半値幅waが、予め記憶部13に記憶された半値幅の所定値wb以下であることを条件として、最大音圧Lmaxの周波数fmaxに対応するオブジェクトOを記憶部13から読み出し、表示部12に表示させる。半値幅の所定値wbは、突出度合いの所定値Vbと同様に、人工音と自然音とを識別することができる値である。このように、制御部14は、突出度合い判定部として機能する。
【0051】
また、本実施形態の携帯型表示装置1においては、制御部14は、オブジェクトOの表示を行うに際して、最大音圧の周波数fmaxが同一周波数で周期的に出現しているか否かを判定する。制御部14は、周期性判定を行うとき、基準時間T毎に最大音圧の周波数fmaxを決定すると、決定した基準時間T毎に最大音圧の周波数fmaxを順次記憶部13に記憶する。そして、制御部14は、記憶部13に記憶された最大音圧の周波数fmaxを読み出し、図12に示すように、最大音圧の周波数fmaxが同一周波数で周期的に、すなわち、一定期間Δt毎に出現するか否かを判定する。これにより、制御部14は、周期的に繰り返し発せられる報知音を抽出する。そして、制御部14は、最大音圧の周波数fmaxが同一周波数で周期的に出現していると判定すると、最大音圧Lmaxの周波数fmaxに対応するオブジェクトOを記憶部13から読み出し、表示部12に表示させる。
【0052】
また、本実施形態の携帯型表示装置1においては、制御部14は、オブジェクトOの表示を行うに際して、最大音圧Lmaxが、予め記憶部13に記憶された閾値Lt以上であるか否かを判定する。制御部14は、図13に示すように、最大音圧Lmaxが、閾値Lt以上であることを条件として、オブジェクトOを表示部12に表示させる。これにより、制御部14は、マイクロフォン11に入力された音がノイズであるか否かを識別することができる。なお、閾値Ltは、例えば、マイクロフォン11により入力した音とノイズとを識別可能な値である。なお、制御部14は、マイクロフォン11により入力した音の周波数成分からノイズレベルを判定し、閾値Ltを調整するようにしている。ノイズレベルの判定例は、例えば、マイクロフォン11に入力された全周波数帯における音圧の平均値を閾値Ltとして採用する、最大音圧の周波数fmaxから所定値だけ離間した周波数における音圧の値を閾値Ltとして採用する、などであってよい。なお、利用者Uは携帯型表示装置1入力部(図示せず)からの入力により、閾値Ltを設定することもできる。
【0053】
また、複数の帯域Bの幅は、それぞれ対数表において互いに等しいことが好ましい。例えば、図14(a)に示すように、指数関数的に変化する各帯域B(B1〜B7)の幅は、対数表示することにより、図14(b)に示すように、各帯域B’(B1’〜B7’)の幅は互いに等しくなる。このように、複数の帯域Bの幅を、それぞれ対数表において互いに等しくすることで、人間が認識できる感度に応じてオブジェクトを適切に割り付けることができる。
【0054】
また、図15に示すように、複数の帯域B11’〜B17’のそれぞれは、1オクターブを複数の音階に分割した音律における、それぞれの音階に対応させてもよい。例えば、(例えば、1オクターブを、ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シの7音階に分割する。これにより、各帯域B’の細かさを7音階が識別可能な帯域幅とすることができる。なお、音階が識別可能な帯域幅であればよく、7音階ではなく例えば12音階としてもよい。
【0055】
[1.3.携帯型表示装置1で実行される処理]
以下、携帯型表示装置1で実行される処理について、図16を用いて説明する。図16は携帯型表示装置1の制御部14により実行される処理の流れの一例を示すフロー図である。
【0056】
図16に示すように、制御部14は、ステップS10において、マイクロフォン11に入力された音を変換した電気信号の波形を音データとして記憶部13に記憶する処理を行う。この処理が終了すると、制御部14は、ステップS11に処理を移す。
【0057】
ステップS11において、制御部14は、音データを周波数解析する処理を行う。この処理において、制御部14は、記憶部13に記憶している音データから、マイクロフォン11に入力された音の周波数スペクトル(図5参照)を解析する。制御部14は、この処理が終了すると、ステップS12へ処理を移す。
【0058】
ステップS12において、制御部14は、基音の周波数成分を抽出する処理を行う。この処理では、ステップS11において解析した周波数スペクトルから基音の周波数成分の周波数スペクトルを解析する。この処理が終了すると、制御部14は、ステップS13へ処理を移す。なお、基音の周波数成分の抽出処理は、利用者Uの入力部(図示せず)への入力操作によってスキップすることが可能である。
【0059】
ステップS13において、制御部14は、最大音圧の周波数fmaxを決定する処理を行う。この処理において、制御部14は、ステップS12で解析した周波数スペクトルに基づいて、最大音圧の周波数fmaxを決定する。なお、ステップS12をスキップした場合にはステップS11で解析した周波数スペクトルに基づいて、最大音圧の周波数fmaxを決定する。この処理が終了すると、制御部14は、ステップS14へ処理を移す。
【0060】
ステップS14において、制御部14は、ステップS13において決定した最大音圧Lmaxが閾値Lt以上であるか否かを判定する。この処理において、最大音圧Lmaxは閾値Lt以上であると判定すると(ステップS14:Yes)、制御部14は、処理をステップS15に移す。一方。最大音圧Lmaxは閾値Lt以上でないと判定すると(ステップS14:No)、制御部14は、処理をステップS20に移す。
【0061】
ステップS15において、制御部14は、最大音圧の周波数fmaxの突出度合いを判定する処理を行う。この処理において、制御部14は、図10に示すように最大音圧Lmaxと周囲の周波数の音圧とを比較した突出度合いVaが所定値Vb以上であるか否かを判定する。この処理において、制御部14は、突出度合いVaが所定値Vb以上であると判定すると(ステップS15:Yes)、ステップS16へ処理を移す。一方、制御部14は、突出度合いVaが所定値Vb以上でないと判定すると(ステップS15:No)、ステップS20へ処理を移す。
【0062】
ステップS16において、制御部14は、周期性判定の設定が記憶部13にされているか否かを判定する。周期性判定の設定は、利用者Uによる携帯型表示装置1の入力部(図示せず)への入力操作によって行うことができる。利用者Uが入力部を操作して周期性判定を行う設定をしたとき、制御部14は、記憶部13に周期性判定の設定を行う。このステップS16において、制御部14は、周期性判定の設定が記憶部13にされていると判定すると(ステップS16:Yes)、ステップS17へ処理を移す。一方、制御部14は、周期性判定の設定が記憶部13にされていないと判定すると(ステップS16:No)、ステップS19へ処理を移す。
【0063】
ステップS17において、制御部14は、最大音圧の周波数fmaxの周期性を検出する処理を行う。すなわち、制御部14は、最大音圧の周波数fmaxが同一周波数で一定期間Δt毎に出現することを、周波数fmaxの周期性として検出する。この処理が終了すると、制御部14は、処理をステップS18に移す。なお、一定期間Δtは、所定の時間幅(Δt=ta〜tb)を有しており、taより短い周期の場合やtbを超える周期の場合には、制御部14は、その最大音圧の周波数fmaxの出現を周期性を有するものとしては検出しない。この一定期間Δtは、利用者Uによる携帯型表示装置1の入力部(図示せず)への入力操作によって任意に設定することができる。
【0064】
ステップS18において、制御部14は、最大音圧の周波数fmaxが周期的に出現するか否かを判定する。つまり、制御部14は、ステップS17における最大音圧の周波数fmaxの周期性の検出の有無に基づき、検出があった場合は最大音圧の周波数fmaxが周期的に出現すると判定し、検出がなかった場合は最大音圧の周波数fmaxが周期的に出現しないと判定する。制御部14は、最大音圧の周波数fmaxが周期的に出現すると判定すると(ステップS18:Yes)、ステップS19に処理を移す。一方、制御部14は、最大音圧の周波数fmaxが周期的に出現しないと判定すると(ステップS18:No)、ステップS20に処理を移す。
【0065】
ステップS19において、制御部14は、オブジェクトを表示させる処理を行う。この処理では、制御部14は、記憶部13に記憶されたオブジェクトの中から、最大音圧の周波数fmaxを含む帯域Bmaxに応じたオブジェクトOを読み出し、このオブジェクトOを最大音圧Lmaxの大きさに応じた大きさで表示部12に表示させる。この処理が終了すると、制御部14は、ステップS20へ処理を移す。なお、制御部14は、単体表示設定がされているときには単体表示を行い、スクロール表示設定がされているときにはスクロール表示を行う。単体表示設定とスクロール表示設定とは選択的に設定可能であり、利用者Uによる携帯型表示装置1の入力部(図示せず)への入力操作によって設定することができる。
【0066】
ステップS20において、制御部14は、利用者Uによる携帯型表示装置1の入力部(図示せず)への入力操作などによってアプリ終了トリガがあるか否かを判定し、アプリ終了トリガがあると判定すると(ステップS20:Yes)、制御部14は、携帯型表示装置1で実行される処理のフローを終了する。一方、アプリ終了トリガがないと判定すると(ステップS20:No)、制御部14は、ステップS10へ処理を戻す。
【0067】
上述した携帯型表示装置1で実行される処理は、CPU15が表示制御プログラムを読み込むことで実行される。すなわち、表示制御プログラムは、表示部12と、マイクロフォン11とを備えた携帯型表示装置1を、マイクロフォン11に入力された音の周波数成分から最大音圧の周波数fmaxを決定する音処理手段、複数の帯域Bに分割された音の周波数の各帯域Bに割り付けられたオブジェクトOを記憶するオブジェクト記憶手段、音処理手段により決定された最大音圧の周波数を含む帯域に割り付けられたオブジェクトOをオブジェクト記憶手段から読み出して表示部12に表示させる表示制御手段、として機能させる。
【0068】
[2.第2実施形態]
本発明の第2実施形態について説明する。携帯型表示装置2の構成について、図17を用いて説明する。なお、本実施形態の携帯型表示装置2の処理については、上述した携帯型表示装置1の処理と同様であるため説明を省略する。この携帯型表示装置2は、表示部12をLCDなどの表示装置とするのではなく、シースルー型のヘッドマウントディスプレイ(以下、HMDという)とする点で異なる。表示部をシースルー型のHMDとすることで、利用者Uは、例えば、移動しながら前方にオブジェクトOを視認することが可能となる。
【0069】
図17に示すように、携帯型表示装置2は、コントロールユニット20と、表示部としてのシースルー型のHMD30と、マイクロフォン50とを備える。
【0070】
HMD30は、投影ユニット31、フレーム32を有している。投影ユニット31は、コントロールユニット20から出力される画像信号に基づいて、画像光を生成して利用者の眼に投射する。投影ユニット31は、画像信号に応じて強度変調した光束を2次元走査して利用者の眼に投射し、利用者の眼の網膜上で強度変調した光束を2次元走査することで、利用者に画像信号に応じた画像を視認させる網膜走査型の表示部である。なお、投影ユニット31として網膜走査型の表示部ではなくLCD型の表示部を採用することも可能である。LCD型の表示部は、例えば、反射型LCDに画像信号に応じた画像を表示し、このLCDに光を反射させて画像光を生成し、利用者の眼に投射することで、利用者に画像信号に応じた画像を視認させる。
【0071】
投影ユニット31は、利用者の眼に画像光を入射させるためのハーフミラー33を有する。ハーフミラー33は、利用者の眼の前方に位置するように設けられる。投影ユニット31は、ハーフミラー33により、出射した画像光を反射させて利用者の眼に入射させる。また、ハーフミラー33は、外光を透過させて利用者の眼に入射させる。したがって、利用者は、外光により認識される外景に、画像光による画像を重ねて視認することができる。
【0072】
フレーム32は、投影ユニット31を支持するとともに、利用者の頭部に装着される部分である。フレーム32は、利用者の頭部に装着された状態で、前述したような投影ユニット31による利用者の眼への画像光の投射ができるように、投影ユニット31を支持する。本実施形態の携帯型表示装置2では、投影ユニット31は、フレーム32に対して、フレーム32を頭部に装着した状態の利用者の左側に取り付けられる。
【0073】
マイクロフォン50は、上述したマイクロフォン11と同様に、利用者の周囲で発生した音を入力可能に構成されている。このマイクロフォン50は、入力された音を電気信号に変換する機能を有し、マイクロフォン50に入力された音を電気信号として伝送ケーブル40を介してコントロールユニット20の記憶部21に音データとして一時的に記憶する。このマイクロフォン50は、フレーム32に対して、フレーム32を頭部に装着した状態の利用者の左側に取り付けられ、利用者の耳に近い位置で音を入力できるようになっている。なお、マイクロフォン50は、コントロールユニット20に設けられていてもよい。
【0074】
マイクロフォン50に入力された音は、マイクロフォン50で電気信号に変換される。この電気信号は、記憶部21に音データとして一時的に記憶され、コントロールユニット20の制御部22において周波数解析されて最大音圧の周波数fmaxが決定される。制御部22では、最大音圧の周波数fmaxを含む帯域Bmaxに割り当てられたオブジェクトOを記憶部21から読み出す。このオブジェクトOは、HMD30の投影ユニット31により、利用者の眼に投影される。
【0075】
このように、携帯型表示装置2では、表示部を利用者の頭部に装着したHMD30としたので、利用者は、自身の周囲で発生する音に応じたオブジェクトを外景と重ねて視覚情報として得ることができるため、より快適に日常生活を送ることができる。また、利用者は表示部を手に保持した状態でなくともオブジェクトOを視認することができるため、利便性にも優れる。
【0076】
以上、本発明の実施形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【0077】
本発明を、以上説明した実施形態の携帯型表示装置及び表示制御プログラムによれば、以下の効果が期待できる。
【0078】
(1)本実施形態に係る携帯型表示装置は、表示部12と、マイクロフォン11と、マイクロフォン11に入力された音の周波数成分から最大音圧の周波数fmaxを決定する音処理部(制御部14)と、複数の帯域Bに分割された音の周波数fの各帯域Bに割り付けられた互いに異なるオブジェクトOを記憶する記憶部13(オブジェクト記憶部)と、音処理部(制御部14)により決定された最大音圧の周波数fmaxを含む帯域Bに割り付けられたオブジェクトOを記憶部13(オブジェクト記憶部)から読み出して表示部12に表示させる表示制御部(制御部14)と、を備える。これにより、利用者に、自身の周囲で発生した音を視覚情報として提供することができる。また、携帯型表示装置1によれば、音源を識別することなく、入力される音の周波数成分のうち最大音圧の周波数に応じたオブジェクトOを表示するため、容易に実用化することができる。
【0079】
(2)また、本実施形態に係る携帯型表示装置においては、最大音圧Lmaxと最大音圧の周波数の周囲の周波数の音圧Lcとの比較結果に基づいて、周囲の周波数の音圧Lcに対する最大音圧Lmaxの突出度合いを判定する突出度合い判定部(制御部14)を備える。また、表示制御部(制御部14)は、突出度合い判定部(制御部14)によって判定された突出度合いが、所定値Vb以上であることを条件として、オブジェクトOを表示部12に表示させる。これにより、マイクロフォン11に入力された音の周波数成分から、人工音の周波数成分を抽出することができる。
【0080】
(3)また、本実施形態に係る携帯型表示装置においては、音処理部(制御部14)は、周波数成分から基音の周波数成分を抽出し、抽出した基音の周波数成分から最大音圧の周波数fmaxを決定する。これにより、ノイズや音の干渉の影響を除去することができ、音源本来の音の成分を抽出することができる。
【0081】
(4)また、本実施形態に係る携帯型表示装置においては、音処理部(制御部14)により決定された最大音圧の周波数fmaxが周期的に出現しているか否かを判定する制御部14(周期性判定部)を備える。また、表示制御部(制御部14)は、周期性判定部(制御部14)によって音処理部(制御部14)により決定された最大音圧の周波数fmaxが周期的に出現していると判定されたことを条件として、オブジェクトOを表示部12に表示させる。これにより、マイクロフォン11に入力された音の周波数成分から、報知音等の繰り返し発せられる音の周波数成分を抽出することができる。
【0082】
(5)また、本実施形態に係る携帯型表示装置においては、表示制御部(制御部14)は、最大音圧Lmaxが閾値Lt以上であると判定したことを条件として、オブジェクトOを表示部12に表示させる。これにより、例えば、マイクロフォン11に入力された音がノイズしかない場合にオブジェクト表示することを防止することができ、利用者の混乱を防止することができる。
【0083】
(6)また、本実施形態に係る携帯型表示装置においては、複数の帯域Bの幅は、それぞれ対数表において互いに等しいこととする。これにより、例えば、複数の帯域Bの幅を、それぞれ対数表において互いに等しくすることで、人間が認識できる感度に応じてオブジェクトを適切に割り付けることができる。
【0084】
(7)また、本実施形態に係る携帯型表示装置においては、複数の帯域Bのそれぞれは、1オクターブを複数の音階に分割した音律における、それぞれの音階に対応している。これにより、例えば、各帯域B’の細かさをそれぞれの音階が識別可能な帯域幅とすることができる。
【0085】
(8)また、本実施形態に係る携帯型表示装置においては、表示部は、シースルー型のヘッドマウントディスプレイである。これにより、オブジェクトOをHMD30により表示することができる。これにより、利用者は表示部を手に保持した状態でなくともオブジェクトOを視認することができるため、利便性にも優れる。また、表示部をシースルー型のHMDとしたので、外景とオブジェクトとを重ねて情報を得ることができる。
【0086】
(9)本実施形態に係る表示制御プログラムは、表示部12と、マイクロフォン11とを備えた携帯型表示装置1を、マイクロフォン11に入力された音の周波数成分から最大音圧の周波数fmaxを決定する音処理手段(制御部14)、複数の帯域Bに分割された音の周波数の各帯域Bに割り付けられたオブジェクトOを記憶する記憶部13(オブジェクト記憶手段)、音処理手段(制御部14)により決定された最大音圧の周波数fmaxを含む帯域Bmaxに割り付けられたオブジェクトOを記憶部13(オブジェクト記憶手段)から読み出して表示部12に表示させる表示制御手段(制御部14)、として機能させる。これにより、例えば、この表示制御プログラムをインストールすることで、最大音圧の周波数fmaxを含む帯域Bmaxに割り付けられたオブジェクトOを、表示部12に表示させることができる。
【符号の説明】
【0087】
1,2 携帯型表示装置
11,50 マイクロフォン
12 表示部
13,21 記憶部
14,22 制御部
15 CPU
16 ROM
17 RAM
20 コントロールユニット
23 光源部
30 ヘッドマウントディスプレイ
31 投影ユニット
32 フレーム
33 ハーフミラー
40 伝送ケーブル
B 帯域
O オブジェクト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部と、
マイクロフォンと、
前記マイクロフォンに入力された音の周波数成分から最大音圧の周波数を決定する音処理部と、
複数の帯域に分割された音の周波数の各帯域に割り付けられた互いに異なるオブジェクトを記憶するオブジェクト記憶部と、
前記音処理部により決定された前記最大音圧の周波数を含む帯域に割り付けられたオブジェクトを前記オブジェクト記憶部から読み出して前記表示部に表示させる表示制御部と、を備える
ことを特徴とする携帯型表示装置。
【請求項2】
前記最大音圧と前記最大音圧の周波数の周囲の周波数の音圧との比較結果に基づいて前記周囲の周波数の音圧に対する前記最大音圧の突出度合いを判定する突出度合い判定部を備え、
前記表示制御部は、前記突出度合い判定部によって判定された前記突出度合いが、所定値以上であることを条件として、前記オブジェクトを前記表示部に表示させる
ことを特徴とする請求項1に記載の携帯型表示装置。
【請求項3】
前記音処理部は、前記周波数成分から基音の周波数成分を抽出し、抽出した基音の周波数成分から前記最大音圧の周波数を決定する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の携帯型表示装置。
【請求項4】
前記音処理部により決定された最大音圧の周波数が周期的に出現しているか否かを判定する周期性判定部を備え、
前記表示制御部は、前記周期性判定部によって前記音処理部により決定された最大音圧の周波数が周期的に出現していると判定されたことを条件として、前記オブジェクトを前記表示部に表示させる
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の携帯型表示装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記最大音圧が閾値以上であると判定したことを条件として、前記オブジェクトを前記表示部に表示させる
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の携帯型表示装置。
【請求項6】
前記複数の帯域の幅は、それぞれ対数表において互いに等しい
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の携帯型表示装置。
【請求項7】
前記複数の帯域のそれぞれは、1オクターブを複数の音階に分割した音律における、それぞれの音階に対応している
ことを特徴とする請求項6に記載の携帯型表示装置。
【請求項8】
前記表示部は、シースルー型のヘッドマウントディスプレイである
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の携帯表示装置。
【請求項9】
表示部と、マイクロフォンとを備えた携帯表示装置を、
前記マイクロフォンに入力された音の周波数成分から最大音圧の周波数を決定する音処理手段、
複数の帯域に分割された音の周波数の各帯域に割り付けられたオブジェクトを記憶するオブジェクト記憶手段、
前記音処理手段により決定された前記最大音圧の周波数を含む帯域に割り付けられたオブジェクトを前記オブジェクト記憶手段から読み出して前記表示部に表示させる表示制御手段、
として機能させるための表示制御プログラム。
【請求項1】
表示部と、
マイクロフォンと、
前記マイクロフォンに入力された音の周波数成分から最大音圧の周波数を決定する音処理部と、
複数の帯域に分割された音の周波数の各帯域に割り付けられた互いに異なるオブジェクトを記憶するオブジェクト記憶部と、
前記音処理部により決定された前記最大音圧の周波数を含む帯域に割り付けられたオブジェクトを前記オブジェクト記憶部から読み出して前記表示部に表示させる表示制御部と、を備える
ことを特徴とする携帯型表示装置。
【請求項2】
前記最大音圧と前記最大音圧の周波数の周囲の周波数の音圧との比較結果に基づいて前記周囲の周波数の音圧に対する前記最大音圧の突出度合いを判定する突出度合い判定部を備え、
前記表示制御部は、前記突出度合い判定部によって判定された前記突出度合いが、所定値以上であることを条件として、前記オブジェクトを前記表示部に表示させる
ことを特徴とする請求項1に記載の携帯型表示装置。
【請求項3】
前記音処理部は、前記周波数成分から基音の周波数成分を抽出し、抽出した基音の周波数成分から前記最大音圧の周波数を決定する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の携帯型表示装置。
【請求項4】
前記音処理部により決定された最大音圧の周波数が周期的に出現しているか否かを判定する周期性判定部を備え、
前記表示制御部は、前記周期性判定部によって前記音処理部により決定された最大音圧の周波数が周期的に出現していると判定されたことを条件として、前記オブジェクトを前記表示部に表示させる
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の携帯型表示装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記最大音圧が閾値以上であると判定したことを条件として、前記オブジェクトを前記表示部に表示させる
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の携帯型表示装置。
【請求項6】
前記複数の帯域の幅は、それぞれ対数表において互いに等しい
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の携帯型表示装置。
【請求項7】
前記複数の帯域のそれぞれは、1オクターブを複数の音階に分割した音律における、それぞれの音階に対応している
ことを特徴とする請求項6に記載の携帯型表示装置。
【請求項8】
前記表示部は、シースルー型のヘッドマウントディスプレイである
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の携帯表示装置。
【請求項9】
表示部と、マイクロフォンとを備えた携帯表示装置を、
前記マイクロフォンに入力された音の周波数成分から最大音圧の周波数を決定する音処理手段、
複数の帯域に分割された音の周波数の各帯域に割り付けられたオブジェクトを記憶するオブジェクト記憶手段、
前記音処理手段により決定された前記最大音圧の周波数を含む帯域に割り付けられたオブジェクトを前記オブジェクト記憶手段から読み出して前記表示部に表示させる表示制御手段、
として機能させるための表示制御プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−8842(P2012−8842A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144822(P2010−144822)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【Fターム(参考)】
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