説明

携帯型電子機器筐体

【課題】薄肉で、耐落下衝撃性、流動性及び耐熱性に優れる携帯型電子機器筐体を提供する。
【解決手段】ポリカーボネートブロック及びポリオルガノシロキサンブロックを有するブロック共重合体であって、ポリオルガノシロキサンブロック部分の含有量が1〜30質量%であり、かつ、シロキサン単位の平均繰り返し単位数が70〜1000で、粘度平均分子量が13000〜26000であるポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体(A−1)10〜100質量部及び(A−1)以外の芳香族ポリカーボネート(A−2)0〜90質量部を、合計量が100質量部になるように含むポリカーボネート樹脂組成物を成形して得られる携帯型電子機器筐体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器等を収納する筐体に関するものであり、更に詳しくは、特定の構造を有するポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体を含むポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる、薄肉で、耐落下衝撃性、流動性及び耐熱性に優れた携帯型電子機器筐体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯型パソコン、携帯情報端末(PDA)、携帯電話機、携帯プレーヤー、電池ケースといった携帯型電子機器の筐体には、樹脂材料が多く用いられている。
携帯中に電子機器を誤って落下させた場合を想定すると、内部の電子機器を保護するために、筐体にクラックや破壊を生じさせないように筐体の耐衝撃性を保証する必要がある。
しかしながら、樹脂材料の衝撃強度及び熱変形温度などの熱的特性は、金属材料に比べて劣るため、筐体等の成形品の肉厚を厚くしたり、又樹脂材料同士をブレンドしたアロイ材料を用いたり、或いはプラスチック材料中に無機フィラーや有機フィラーを充填して繊維強化プラスチック化したりして機械的特性及び熱的特性等を向上する試みがなされている。
一般に、筐体の高強度化はプラスチック材料の成形加工にとって非常に難しい技術であり、特に量産性に優れた射出成形の分野においては、樹脂材料の改良が常に要望されている。
従って、樹脂材料の選定にあたっては耐衝撃性が考慮され、特に衝撃強度の大きな材料が望まれる。
更に、射出成形においては、成形品内に分子配向歪みや冷却歪みによる残留応力が生じ易いため、熱変形温度の低い材料を使用した場合には、温度の高い使用環境下で残留応力が開放されて筐体が変形する危険性があるため、熱変形温度の高い材料が望まれる。
【0003】
携帯電話筐体用の樹脂組成物として、ポリカーボネートに衝撃強度向上を目的にゴム成分を添加したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
ジメチルシロキサンユニットの繰返し数nが100〜400、具体的にはnが150〜350のポリジメチルシロキサン(PDMS)部分を有するポリカーボネート−ポリジメチルシロキサン共重合体がガラス繊維と混合した時に耐衝撃性の低下が小さいこと、及び繰返し数nが100以下の場合その効果が得られ難いことが公知であるが、ガラス繊維の影響を除いた場合の耐衝撃性に影響するPDMS構造や繰返し数に関する記載はなく、又実施例を見てもその繰返し数が衝撃強度に与える影響は見られない(例えば、特許文献2参照)。
また、ジメチルシロキサンユニットの繰返し数nが40〜60、具体的にはnが49のポリカーボネート−ポリジメチルシロキサン共重合体が良好な低温衝撃特性を示すことが公知である(例えば、特許文献3参照)。
更に、ジメチルシロキサンユニットの繰返し数nが50のPDMS部分を有する透明なポリカーボネート−ポリジメチルシロキサン共重合体を得る方法(例えば、特許文献4参照)、ジメチルシロキサンユニットの繰返し数nが0〜20のPDMS部分を有する透明で難燃性のあるポリカーボネート−ポリジメチルシロキサン共重合体(例えば、特許文献5参照)、シロキサンユニットの繰返し数nが2〜500、具体的にはnが30又は150のPDMS部分を有するポリカーボネート−ポリジメチルシロキサン共重合体からなる難燃性樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献6参照)
しかしながら、薄肉化が可能で、耐落下衝撃性、流動性及び耐熱性に優れる携帯型電子機器筐体用のポリカーボネート樹脂組成物は知られていない。
【0004】
【特許文献1】特開2006−176612号公報
【特許文献2】特許第2662310号
【特許文献3】特表2006−523243号公報
【特許文献4】特表2005−535761号公報
【特許文献5】特表2005−519177号公報
【特許文献6】特開平8−81620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、特定の構造を有するポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体を含むポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる、薄肉で、耐落下衝撃性、流動性及び耐熱性に優れる携帯型電子機器筐体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有するポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体を含むポリカーボネート樹脂組成物を成形することによって、その目的を達成し得ることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明は、
1.一般式(I)で表される構成単位及び一般式(II)で表される構成単位を有し、一般式(II)で表される構成単位を含む、ポリオルガノシロキサンブロック部分の含有量が1〜30質量%であり、かつ、該一般式(II)の構成単位の平均繰り返し単位数が70〜1000で、粘度平均分子量が13000〜26000であるポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体(A−1)10〜100質量部及び(A−1)以外の芳香族ポリカーボネート(A−2)0〜90質量部を、合計量が100質量部になるように含むポリカーボネート樹脂組成物を成形することを特徴とする携帯型電子機器筐体、
【化1】

[式中、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基又はアルコキシ基、Xは単結合、炭素数1〜8のアルキレン基、炭素数2〜8のアルキリデン基、炭素数5〜15のシクロアルキレン基、炭素数5〜15のシクロアルキリデン基、−S−、−SO−、−SO2−、−O−又は−CO−、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は置換基を有していてもよいアルキル基もしくはアリール基を示し、a及びbは、それぞれが独立に0〜4の整数を示す。]、
2.射出成形により成形する上記1に記載の携帯型電子機器筐体、
3.携帯型電子機器筐体の肉厚が0.5〜1.5mmである上記2に記載の携帯型電子機器筐体、
4.携帯型電子機器筐体の携帯型電子機器が携帯電話機である上記2又は3に記載の携帯型電子機器筐体
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、特定の構造を有するポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体を含むポリカーボネート樹脂組成物を成形することにより、ポリカーボネートの持つ流動性を犠牲にすることなく、衝撃強度を大きく向上でき、薄肉で、耐落下衝撃性、流動性及び耐熱性に優れる携帯型電子機器筐体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、実施例1〜7、比較例1及び2の樹脂組成物を用いた携帯電話モデル型の成型品(50mm×88mm、深さ4.5mm、厚さ1.2mm)の寸法説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の携帯型電子機器筐体は、一般式(I)で表される構成単位及び一般式(II)で表される構成単位を有し、一般式(II)で表される構成単位を含む、ポリオルガノシロキサンブロック部分の含有量が1〜30質量%であり、かつ、該一般式(II)の構成単位の平均繰り返し単位数が70〜1000で、粘度平均分子量が13000〜26000であるポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体(A−1)10〜100質量部及び(A−1)以外の芳香族ポリカーボネート(A−2)0〜90質量部を、合計量が100質量部になるように含むポリカーボネート樹脂組成物を成形することを特徴とするものである。
【0011】
【化2】

【0012】
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基又はアルコキシ基、Xは単結合、炭素数1〜8のアルキレン基、炭素数2〜8のアルキリデン基、炭素数5〜15のシクロアルキレン基、炭素数5〜15のシクロアルキリデン基、−S−、−SO−、−SO2−、−O−又は−CO−、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は置換基を有していてもよいアルキル基もしくはアリール基を示し、a及びbは、それぞれが独立に0〜4の整数を示す。]、
【0013】
一般式(II)で表される構成単位を含むポリオルガノシロキサンブロック部分の含有量は、好ましくは1〜20質量%であり、1.0質量%未満であると耐落下衝撃強度向上の効果が十分ではなく、30質量%を超えると耐熱性の低下が大きくなる。
また、一般式(II)の構成単位の平均繰り返し単位数は、好ましくは80〜700、より好ましくは80〜500であり、70未満であると耐落下衝撃強度向上の効果が十分ではなく、1000を超えるとポリジメチルシロキサン−ポリカーボネート共重合体(A−1)を製造する際の取扱い性が困難になり経済性に劣る。
【0014】
一般に、耐落下衝撃性を発現させるためには、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体(A−1)の粘度平均分子量は大きい方が有効であるが、粘度平均分子量が大きくなると携帯型電子機器筐体のような薄肉部材の成形が困難になる。
成形温度を上げることにより、樹脂組成物の粘度を下げることも可能であるが、その場合、成形サイクルが長くなり経済性に劣るほか、温度を上げすぎると樹脂組成物の熱劣化により生産安定性が低下する。
従って、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体(A−1)の粘度平均分子量は、好ましくは14000〜23000、より好ましくは15000〜22000である。
粘度平均分子量が13000未満であると成形品の強度が十分ではなく、26000を越えると共重合体の粘度が大きくなるため製造時の生産性が低下するほか、薄肉の成形も困難となる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、成分(A−1)と成分(A−2)とを、合計量が100質量部になるように含む組成物であって、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体(A−1)の含有量は、好ましくは50〜100質量部、より好ましくは60〜95質量部であり、(A−1)以外の芳香族ポリカーボネート(A−2)の含有量は、好ましくは50〜0質量部、より好ましくは40〜5質量部である。
ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体(A−1)の含有量が、10質量部未満であると、成分(A−1)製造時に一般式(II)で表される構成単位を含むポリオルガノシロキサンブロック部分の含有量を30質量%以上にする必要があるが、この場合成分(A−1)製造時の重合工程で反応の均一性が低下したり、重合物の洗浄工程で重合物と洗浄水との分離性が悪化するため、成分(A−1)の生産性が大きく低下する。
(A−1)以外の芳香族ポリカーボネート(A−2)の含有量が90質量部を越えると、成分(A−1)の含有量が10質量部未満となり上記理由から好ましくない。
【0015】
次に、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体(A−1)について説明する。
本発明において用いられるポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体は、一般式(1)で表される二価フェノールと一般式(2)で表されるポリオルガノシロキサン
【0016】
【化3】

【0017】
[一般式(1)中、X、R1〜R2及びa及びbは一般式(I)と同様であり、nはオルガノシロキサン構成単位の平均繰り返し単位数で70〜1000の整数を示す。一般式(2)中、R3、R4、R5及びR6は各々独立に水素原子、又は置換基を有していてもよいアルキル基もしくはアリール基を示し、Yはハロゲン、−R7OH、−R7COOH、−R7NH2、−COOH又は−SHを示し、R7は直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキリデン基、アリール置換アルキリデン基、環上にアルコキシ基を有してもよいアリール置換アルキレン基、アリール基を表し、mは0又は1を表す。]
と、ホスゲン、炭酸エステル、或いはクロロホーメートとを共重合させて得られるものであり、一般式(II)で表される構成単位を含むポリオルガノシロキサンブロック部分の割合が1〜30質量%、粘度平均分子量が13000〜26000であるポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体である。
【0018】
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物において、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体(A−1)の原料に用いる一般式(1)で表される二価フェノールとしては様々なものがあるが、特に、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔通称:ビスフェノールA〕が好適である。
ビスフェノールA以外のビスフェノールとしては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−テトラメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノルボルナン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4’−ジヒドロキシフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルフェニルエーテル等のジヒドロキシアリールエーテル類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスル
ホン類、4,4’−ジヒロキシジフェニルなどのジヒドロキシジフェニル類、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンなどのジヒドロキシジアリールフルオレン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタンなどのジヒドロキシジアリールアダマンタン類、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール、10,10−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロン、1,5−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−2,3−ジオキサペンタエンなどが挙げられる。
これらの二価フェノールは、それぞれ単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0019】
一般式(2)で表されるポリオルガノシロキサンを例示すると、例えば、
【0020】
【化4】

【0021】
[前記一般式(3)〜(11)中、R3、R4、R5及びR6は一般式(1)と同様に各々独立に水素原子、ハロゲン原子又は置換基を有していてもよいアルキル基もしくはアリール基を示し、R8はアルキル、アルケニル、アリール又はアラルキル基を表し、nはオルガノシロキサン構成単位の平均繰り返し単位数で70〜1000の整数を示し、cは正の整数を表す。]
等が挙げられる。
これらの中でも、式(3)に示すフェノール変性ポリオルガノシロキサンが重合の容易さから好ましく、更には式(4)に示す化合物中の一種であるα,ω−ビス[3−(o−ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサン、又は式(5)に示す化合物中の一種であるα,ω−ビス[3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサンが入手の容易さから好ましい。
【0022】
一般式(2)で表されるポリオルガノシロキサンは、オレフィン性の不飽和炭素−炭素結合を有するフェノール類、好適にはビニルフェノール、アリルフェノール、オイゲノール、イソプロペニルフェノールなどを所定の重合度nを有するポリオルガノシロキサン鎖の末端に、ハイドロシラネーション反応させることにより容易に製造することができる。
【0023】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物において、(A−1)以外の芳香族ポリカーボネート(A−2)は、反応に不活性な有機溶媒、アルカリ水溶液の存在下、二価フェノール系化合物及びホスゲンと反応させた後、第三級アミンもしくは第四級アンモニウム塩などの重合触媒を添加して重合させる界面重合法や、二価フェノール系化合物をピリジンまたはピリジンと不活性溶媒の混合溶液に溶解し、ホスゲンを導入し直接製造するピリジン法等従来の芳香族ポリカーボネートの製造法により得られるものが使用される。
上記の反応に際し、必要に応じて、末端停止剤、分子量調節剤、分岐化剤などが使用される。
【0024】
芳香族ポリカーボネート(A−2)の製造に使用される二価フェノール系化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔=ビスフェノールA〕、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノルボルナン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4’−ジヒドロキシフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルフェニルエーテル等のジヒドロキシアリールエーテル類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類、4,4’−ジヒロキシジフェニルなどのジヒドロキシジフェニル類、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンなどのジヒドロキシジアリールフルオレン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタンなどのジヒドロキシジアリールアダマンタン類、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール、10,10−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロン、1,5−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−2,3−ジオキサペンタエンなどが挙げられる。
これらの二価フェノールは、それぞれ単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
芳香族ポリカーボネート(A−2)の製造にあたっては、末端停止剤或いは分子量調節剤が通常使用される。
分子量調節剤としては、通常、ポリカーボネート樹脂の重合に用いられるものなら、各種のものを用いることができる。
具体的には、一価フェノールとして、例えば、フェノール,o−n−ブチルフェノール,m−n−ブチルフェノール,p−n−ブチルフェノール,o−イソブチルフェノール,m−イソブチルフェノール,p−イソブチルフェノール,o−t−ブチルフェノール,m−t−ブチルフェノール,p−t−ブチルフェノール,o−n−ペンチルフェノール,m−n−ペンチルフェノール,p−n−ペンチルフェノール,o−n−ヘキシルフェノール,m−n−ヘキシルフェノール,p−n−ヘキシルフェノール,p−t−オクチルフェノール,o−シクロヘキシルフェノール,m−シクロヘキシルフェノール,p−シクロヘキシルフェノール,o−フェニルフェノール,m−フェニルフェノール,p−フェニルフェノール,o−n−ノニルフェノール,m−ノニルフェノール,p−n−ノニルフェノール,o−クミルフェノール,m−クミルフェノール,p−クミルフェノール,o−ナフチルフェノール,m−ナフチルフェノール,p−ナフチルフェノール、2,5−ジ−t−ブチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、3,5−ジ−t−ブチルフェノール、2,5−ジクミルフェノール、3,5−ジクミルフェノール、p−クレゾール,ブロモフェノール,トリブロモフェノール、平均炭素数12〜35の直鎖状又は分岐状のアルキル基をオルト位、メタ位又はパラ位に有するモノアルキルフェノール、9−(4−ヒドロキシフェニル)−9−(4−メトキシフェニル)フルオレン、9−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−9−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、4−(1−アダマンチル)フェノールなどが挙げられる。
これらの一価フェノールのなかでは、p−t−ブチルフェノール,p−クミルフェノール,p−フェニルフェノールなどが好ましく用いられる。
二種以上の化合物を併用することも当然に可能である。
更に、分岐化剤を上記の二価フェノール系化合物に対して、0.01〜3モル%、特に0.1〜1.0モル%の範囲で併用して分岐化ポリカーボネートとすることができ、分岐化剤としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、α,α’,α”−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1−[α−メチル−α−(4’−ヒドロキシフェニル)エチル]−4−[α’,α’−ビス(4”−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、フロログリシン,トリメリト酸,イサチンビス(o−クレゾール)等の官能基を3つ以上有する化合物を用いることができる。
【0026】
本発明で用いるポリカーボネート樹脂組成物には所望に応じて、従来、ポリカーボネート樹脂組成物に公知の種々の添加剤類が配合可能であり、これらとしては補強材、充填剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、離型剤、染料、顔料、その他の難燃剤や耐衝撃性改良用のエラストマーなどが挙げられる。
【0027】
本発明で用いるポリカーボネート樹脂組成物は、前記の各成分(A−1)、(A−2)、必要に応じて公知の添加剤類を配合し、混練することによって得ることができる。
該配合、混練は、通常、用いられている方法、例えば、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ドラムタンブラー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等を用いる方法により行うことができる。
なお、混練に際しての加熱温度は、通常、250〜320℃の範囲で選ばれる。
【0028】
得られたポリカーボネート樹脂組成物の成形には、従来公知の各種成形方法、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、ブロー成形法、プレス成形法、真空成形法及び発泡成形法などを用いることができるが、金型温度60℃以上、好ましくは80〜120℃で射出成形することが好ましい。
この際、射出成形における樹脂温度は、通常、280〜360℃程度、好ましくは
280〜330℃である。
なお、射出成形方法としては、外観のヒケ防止又は軽量化のため、ガス注入成形を採用することができる。
【0029】
本発明の特定の構造を有するポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体を含むポリカーボネート樹脂組成物を成形して得られる携帯型電子機器筐体の肉厚は、0.5〜1.5mm、好ましくは0.6〜1.4mm、より好ましくは0.6〜1.3mmである。
また、本発明の携帯型電子機器筐体は、携帯型パソコン、携帯情報端末(PDA)、携帯電話機、携帯プレーヤー、電池ケース等の携帯型電子機器に使用することができるが、特に携帯電話機が好ましい。
【実施例】
【0030】
次に、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0031】
〔ポリカーボネート−ポリジメチルシロキサン共重合体(PC/PDMS共重合体)の製造例1〕
ポリカーボネートオリゴマー製造
5.6質量%水酸化ナトリウム水溶液に後から溶解するビスフェノールA(BPA)に対して2000ppmの亜二チオン酸ナトリウムを加え、これにBPA濃度が13.5質量%になるようにBPAを溶解し、BPAの水酸化ナトリウム水溶液を調製した。
このBPAの水酸化ナトリウム水溶液40リットル/hr、塩化メチレン15リットル/hrの流量で、ホスゲンを4.0kg/hrの流量で内径6mm、管長30mの管型反応器に連続的に通した。
管型反応器はジャケット部分を有しており、ジャケットに冷却水を通して反応液の温度を40℃以下に保った。
管型反応器を出た反応液は後退翼を備えた内容積40リットルのバッフル付き槽型反応器へ連続的に導入され、ここにさらにBPAの水酸化ナトリウム水溶液2.8リットル/hr、25質量%水酸化ナトリウム水溶液0.07リットル/hr、水17リットル/hr、1質量%トリエチルアミン水溶液を0.64リットル/hr添加して反応を行なった。
槽型反応器から溢れ出る反応液を連続的に抜き出し、静置することで水相を分離除去し、塩化メチレン相を採取した。
このようにして得られたポリカーボネートオリゴマーは、濃度329g/L、クロロホーメート基濃度0.74mol/Lであった。
【0032】
ポリカーボネート−ポリジメチルシロキサン共重合体の製造
邪魔板、パドル型攪拌翼及び冷却用ジャケットを備えた50L槽型反応器に上記で製造したポリカーボネートオリゴマー溶液15L、塩化メチレン9.0L、ジメチルシロキサン単位の繰返し数が90であるアリルフェノール末端変性ポリジメチルシロキサン(PDMS)343g及びトリエチルアミン8.8mLを仕込み、攪拌下でここに6.4質量%水酸化ナトリウム水溶液1389gを加え、10分間ポリカーボネートオリゴマーとアリルフェノール末端変性PDMSの反応を行った。
この重合液に、p−t−ブチルフェノール(PTBP)の塩化メチレン溶液(PTBP126gを塩化メチレン2.0Lに溶解したもの)、BPAの水酸化ナトリウム水溶液(NaOH577gと亜二チオン酸ナトリウム2.0gを水8.4Lに溶解した水溶液にBPA1012gを溶解させたもの)を添加し50分間重合反応を行った。
希釈のため塩化メチレン10Lを加え10分間攪拌した後、ポリカーボネート−ポリジメチルシロキサン共重合体を含む有機相と過剰のBPA及びNaOHを含む水相に分離し、有機相を単離した。
こうして得られたポリカーボネート−ポリジメチルシロキサン共重合体の塩化メチレン溶液を、その溶液に対して順次、15容積%の0.03mol/LNaOH水溶液、0.2モル/L塩酸で洗浄し、次いで洗浄後の水相中の電気伝導度が0.01μS/m以下になるまで純水で洗浄を繰り返した。
洗浄により得られたポリカーボネート−ポリジメチルシロキサン共重合体の塩化メチレン溶液を濃縮・粉砕し、得られたフレークを減圧下120℃で乾燥した。
得られたポリカーボネート−ポリジメチルシロキサン共重合体の核磁気共鳴(NMR)により求めたPDMS残基量(PDMS共重合量)は5.6質量%、ISO1628−4(1999)に準拠して測定した粘度数は51.2、粘度平均分子量Mv=19300であった。
【0033】
〔ポリカーボネート−ポリジメチルシロキサン共重合体(PC/PDMS共重合体)の製造例2〜9〕
末端変性PDMS(アリルフェノール末端変性PDMS又はオイゲノール末端変性PDMS)の種類、ジメチルシロキサン単位の繰返し数、末端変性PDMSの使用量、PTBPの使用量を表1に記載の通りとして、ポリカーボネート−ポリジメチルシロキサン共重合体を製造した。
得られたポリカーボネート−ポリジメチルシロキサン共重合体のPDMS残基量(PDMS共重合量)、粘度数、粘度平均分子量Mvを表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
実施例1〜7及び比較例1〜3
製造例1〜9で製造したポリカーボネート−ポリジメチルシロキサン共重合体(PC/PDMS共重合体)、FN1500(商品名,出光興産(株)製、p−t−ブチルフェノールを末端基に有するBPAポリカーボネート、粘度数39.2、粘度平均分子量Mv=14500)、タフロンFN1700A(商品名、出光興産(株)製、p−t−ブチルフェノールを末端基に有するBPAポリカーボネート、粘度数47.1、粘度平均分子量Mv=17500)、タフロンFN2700A(商品名,出光興産(株)製、p−t−ブチルフェノールを末端基に有するBPAポリカーボネート、粘度数69.6、粘度平均分子量Mv=27500)、IRGAFOS168(商品名、(株)ADEKA製)を表2に記載の質量部の通りブレンドし、ベント付き40mmφの単軸押出機を用いて、樹脂温度280℃で造粒しペレットを得た。
尚、比較例3のみ樹脂温度を300℃とした。
【0036】
得られたペレットを120℃で8時間乾燥した後、射出成形機を用いて、成形温度280℃、金型温度80℃で射出成形して試験片を得た。
ペレットまたは射出成形により得られた試験片を用いて、以下の測定を行った。
結果を表2に示す。
(1)溶融流動性MFR(メルトフローレート)
JIS K7210に準拠し、280℃、2.16kgの加重下にて、直径2mm、長さ8mmのダイより流出する溶融樹脂量(g/10分)を測定した。
(2)Q値(流れ値)〔単位;10-2ml/sec〕
高架式フローテスターを用い、JIS K7210に準拠し、280℃、15.7MPaの圧力下にて、直径1mm、長さ10mmのノズルより流出する溶融樹脂量(mL/sec)を測定した。
Q値は、単位時間当たりの流出量を表しており、数値が高いほど、流動性がよいことを示す。
(3)HDT(熱変形温度)
ASTM D648に準拠し、荷重0.45MPaで測定した。
HDTは、耐熱性の目安を示すものである。
【0037】
〔携帯電話モデル型の成形〕
上記で得られたペレットを用い、下記の条件にて射出成形により図1の寸法説明図に示す成形品(50mm×88mm、深さ4.5mm、厚さ1.2mm)を得た。
尚、比較例3については射出成形を試みたが、300〜320℃のシリンダー温度では粘度が高く、充填が不可能となり成形品を得ることができなかった。
更に、シリンダー温度を360℃まで上げて成形を試みたが、成形品を得ることができず、シリンダー温度を380℃まで上げたところ、樹脂組成物の劣化による着色が現れ始めたため成形を中止した。
成形条件
射出成形機:日精樹脂工業株式会社製 電動射出成形機 ES−1000 80トン
成形機シリンダー温度:300〜320℃
成形サイクル:30秒/cycle
金型温度:130℃
〔耐落下衝撃性評価〕
得られた成形品を恒温槽に入れ所定の温度(0℃、−10℃、−20℃)に冷却した。
2時間後、恒温槽から成形品を取出し、直ちに1280gの錘を1.85mの高さから成形品に落下させることにより、耐落下衝撃性を評価した。
同じ試験を5回行い、割れの有無、クラック発生の有無、割れの種類(延性割れ、脆性割れ)を表2に示す。
割れ面(破壊面)が延性の場合を延性割れ、割れ面が脆性の場合を脆性割れとして評価した。
なお、数値は5回の試験における割れの有無、クラック発生の有無、割れの種類の回数を示し、合計が5となる。
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によれば、薄肉で、耐落下衝撃性、流動性及び耐熱性に優れる携帯型電子機器筐体を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で表される構成単位及び一般式(II)で表される構成単位を有し、一般式(II)で表される構成単位を含む、ポリオルガノシロキサンブロック部分の含有量が1〜30質量%であり、かつ、該一般式(II)の構成単位の平均繰り返し単位数が70〜1000で、粘度平均分子量が13000〜26000であるポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体(A−1)10〜100質量部及び(A−1)以外の芳香族ポリカーボネート(A−2)0〜90質量部を、合計量が100質量部になるように含むポリカーボネート樹脂組成物を成形することを特徴とする携帯型電子機器筐体。
【化1】

[式中、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基又はアルコキシ基、Xは単結合、炭素数1〜8のアルキレン基、炭素数2〜8のアルキリデン基、炭素数5〜15のシクロアルキレン基、炭素数5〜15のシクロアルキリデン基、−S−、−SO−、−SO2−、−O−又は−CO−、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は置換基を有していてもよいアルキル基もしくはアリール基を示し、a及びbは、それぞれが独立に0〜4の整数を示す。]
【請求項2】
射出成形により成形する請求項1に記載の携帯型電子機器筐体。
【請求項3】
携帯型電子機器筐体の肉厚が0.5〜1.5mmである請求項2に記載の携帯型電子機器筐体。
【請求項4】
携帯型電子機器筐体の携帯型電子機器が携帯電話機である請求項2又は3に記載の携帯型電子機器筐体。

【図1】
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【公開番号】特開2011−21127(P2011−21127A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168185(P2009−168185)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】