説明

携帯情報端末装置

【課題】 斜め方向からの表示画面の覗き見を効果的に抑制することができる携帯情報端末装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 表示装置5の表示エリア内にマトリックス状に配置された複数のセグメント及び複数のセグメントを除くバックグランド領域が形成され、広視野モード時には、表示エリア全体を広視野角とし、狭視野モード時には、複数のセグメントを独立して広視野角又は狭視野角に切り替える。狭視野モード時に斜め方向から表示画面を見れば、バックグランド領域が狭視野角とされることによりコントラストが低下した画面表示に対して、広視野角のセグメントの領域にコントラストの高いパターンが視認される。従って、狭視野モード時に、表示画面を覗き見ようとする人の意識を高コントラストのパターンに引きつけて、画面表示を判読し難くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯情報端末装置に係り、さらに詳しくは、各種情報が表示される表示装置の視野角を可変制御し、その表示画面の覗き見を抑制することができる携帯電話機などの携帯情報端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
小型の携帯情報端末装置は、ポケットや鞄に入れて持ち運ぶことができ、様々な場所において使用される。例えば、会議室、飲食店、駅のホーム、電車やバスの車中などにおいて使用されることも少なくない。このような場合に、携帯情報端末装置の表示画面は、周辺の第三者に覗き見られるおそれがあり、ユーザのプライバシーを確保することができないという問題があった。
【0003】
このような覗き見への対策として、表示装置の視野角を狭小化させることが考えられる。例えば、携帯電話機の表示画面に貼付することができる狭視野フィルムが従来から知られている。狭視野フィルムは、正面からは透明に見えるが、斜めからは不透明(例えば黒)に見えるフィルムであり、覗き見の防止に一定の効果がある。ただし、この種の狭視野フィルムを貼付すれば、正面から見た場合であっても画質が劣化し、ユーザは、常時、低品質の画面表示を見なければならない。また、多人数で表示画面を見る場合のように、表示画面を斜めから見るような使い方はできなくなる。
【0004】
また、表示装置の視野角を可変制御する技術が従来から提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。特許文献1では携帯電話機の表示装置において、また、特許文献2ではカーナビゲーション装置の表示装置において、液晶パネルを用いて視野角を制御する構成がそれぞれ記載されている。特に、特許文献2のカーナビゲーション装置では、表示エリア内の一部の領域について視野角を狭め、当該領域のみを運転席から見えなくするという構成が記載されている。
【特許文献1】特開2004−62094号公報
【特許文献2】特開2003−15535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の表示装置は、表示画面の視野角を狭小化することによって、斜めから画面表示を見え難くしている。しかしながら、このような表示装置であっても、斜め方向から画面表示を完全に見えなくすることはできず、視野角外から見た場合であっても、コントラストが低下して見え難くなっているに過ぎない。従って、斜め方向からでも表示画面を注視すれば、第三者が覗き見することができるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、斜め方向からの表示画面の覗き見を効果的に抑制することができる携帯情報端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による携帯情報端末装置は、表示装置を広視野モード及び狭視野モードに切り替えることができ、狭視野モード時には、表示エリア内に狭視野角の領域と広視野角の領域とを混在させ、斜めから除き見ようとする人の意識を表示エリア内の視野角差に起因するパターンに引き付けて、覗き見を防止するものである。
【0008】
第1の本発明による携帯情報端末装置は、表示エリア内に複数のセグメントがマトリックス状に配置された表示装置と、上記表示エリアを広視野角で閲覧させる広視野モード及び上記表示エリアを狭視野角で閲覧させる狭視野モードを切り替えるモード切替手段と、広視野モード時には、上記表示エリア全体を広視野角とし、狭視野モード時には、上記複数のセグメントを独立して広視野角又は狭視野角に切り替える視野角制御手段とを備えて構成される。
【0009】
この様な構成により、狭視野モード時に斜め方向から表示画面を見れば、広視野角のセグメントと狭視野角のセグメントとの視野角の差によって、広視野角のセグメントの領域にコントラストの高いパターンが視認される。従って、狭視野モード時に、表示画面を覗き見ようとする人の意識を高コントラストのパターンに引きつけて、画面表示を判読し難くすることができる。複数のセグメントを独立して広視野角又は狭視野角に切り替えることにより、任意のパターンを表示させることができるので、人の興味を引きつけやすいパターンを表示させれば、画面表示をより判読し難くすることができる。
【0010】
第2の本発明による携帯情報端末装置において、上記視野角制御手段は、狭視野モード時には、上記表示エリアにおける上記複数のセグメントを除くバックグランド領域を狭視野角とするように構成される。
【0011】
この様な構成により、狭視野モード時に斜め方向から表示画面を見れば、バックグランド領域が狭視野角とされることによりコントラストが低下した画面表示に対して、広視野角のセグメントの領域にコントラストの高いパターンが視認される。従って、狭視野モード時に、表示画面を覗き見ようとする人の意識を高コントラストのパターンに効果的に引きつけて、画面表示をさらに判読し難くすることができる。
【0012】
第3の本発明による携帯情報端末装置は、表示画面上の表示エリアに情報表示を行う表示装置と、上記表示画面の視野角を切り替える視野切替装置とを備えた携帯情報端末装置において、上記視野切替装置が、上記表示画面上に配置され、上記表示エリア内にマトリックス状に配置された複数のセグメント及び上記複数のセグメントを除くバックグランド領域からなる表示透過面が形成された視野角切替パネルと、上記表示エリアを広視野角で閲覧させる広視野モード及び上記表示エリアを狭視野角で閲覧させる狭視野モードを切り替えるモード切替手段と、広視野モード時には、上記複数のセグメント及び上記バックグランド領域を広視野角とし、狭視野モード時には、上記バックグランド領域を狭視野とするとともに、上記複数のセグメントを独立して広視野角又は狭視野角に切り替える視野角制御手段とを備えて構成される。
【0013】
この様な構成により、狭視野モード時に斜め方向から表示画面を見れば、バックグランド領域が狭視野角とされることによりコントラストが低下した画面表示に対して、広視野角のセグメントの領域にコントラストの高いパターンが視認される。従って、狭視野モード時に、表示画面を覗き見ようとする人の意識を高コントラストのパターンに引きつけて、画面表示を判読し難くすることができる。複数のセグメントを独立して広視野角又は狭視野角に切り替えることにより、任意のパターンを表示させることができるので、人の興味を引きつけやすいパターンを表示させれば、画面表示をより判読し難くすることができる。
【0014】
第4の本発明による携帯情報端末装置は、狭視野モード時に上記視野角制御手段が上記複数のセグメントを独立して広視野角又は狭視野角に切り替えるときのパターンデータを記憶するパターンデータ記憶手段を備えて構成される。
【0015】
この様な構成により、ユーザの好みに応じて任意のパターンデータをパターンデータ記憶手段に記憶させ、そのパターンデータに基づいて、狭視野モード時に複数のセグメントを独立して広視野角又は狭視野角に切り替えることができる。
【0016】
第5の本発明による携帯情報端末装置は、基地局との間で無線信号を送受信する無線通信手段を備え、上記パターンデータ記憶手段は、上記基地局から受信したパターンデータを記憶するように構成される。
【0017】
この様な構成により、ユーザの好みに応じて所望のパターンデータを基地局から受信してパターンデータ記憶手段に記憶させることにより、狭視野モード時に斜め方向から表示画面を見たときに、そのパターンを高コントラストで視認させることができる。
【0018】
第6の本発明による携帯情報端末装置は、画像データを作成するための画像データ作成手段と、上記画像データ作成手段により作成した画像データに基づいて、狭視野モード時に上記視野角制御手段が上記複数のセグメントを独立して広視野角又は狭視野角に切り替えるときのパターンデータを作成するパターンデータ作成手段とを備え、上記パターンデータ記憶手段は、上記パターンデータ作成手段により作成されたパターンデータを記憶するように構成される。
【0019】
この様な構成により、ユーザの好みに応じて所望の画像データを作成し、その画像データに基づいて作成されるパターンデータをパターンデータ記憶手段に記憶させることにより、狭視野モード時に斜め方向から表示画面を見たときに、そのパターンを高コントラストで視認させることができる。
【0020】
第7の本発明による携帯情報端末装置は、上記画像データ作成手段により作成した画像データを所定の閾値に基づいて二値化するデータ二値化手段を備え、上記パターンデータ作成手段は、上記データ二値化手段により二値化された画像データに基づいてパターンデータを作成し、上記所定の閾値は、狭視野モード時に上記視野角制御手段が上記複数のセグメントを独立して広視野角又は狭視野角に切り替えるときの、広視野角のセグメントと狭視野角のセグメントとの割合に応じて異なる値に設定されるように構成される。
【0021】
この様な構成により、画像データ作成手段により作成したカラーやグレースケールの画像データを二値化し、その二値化された画像データに基づいて作成されるパターンデータをパターンデータ記憶手段に記憶させることができる。従って、狭視野モード時に斜め方向から表示画面を見たときに、カラーやグレースケールで表された所望の画像データに基づく二値化されたパターンを視認させることができる。画像データを二値化する際の閾値を、視野角制御時の広視野角のセグメントと狭視野角のセグメントとの割合に応じて異なる値に設定することにより、狭視野モード時に画面表示をより効果的に判読し難くすることができる。
【0022】
第8の本発明による携帯情報端末装置において、上記画像データ作成手段は、被写体を撮影して画像データを出力する撮像手段を備えて構成される。
【0023】
この様な構成により、被写体を撮影することにより得られた所望の画像データに基づいて作成されるパターンデータをパターンデータ記憶手段に記憶させ、狭視野モード時に斜め方向から表示画面を見たときに、そのパターンを高コントラストで視認させることができる。
【0024】
第9の本発明による携帯情報端末装置において、上記視野角制御手段は、狭視野モード時には、上記複数のセグメントを所定時間ごとに独立して広視野角又は狭視野角に切り替えるように構成される。
【0025】
この様な構成により、狭視野モード時に斜め方向から見える高コントラストのパターンを動的に変化させることができる。このため、表示画面を覗き見ようとする人の意識を動きのあるパターンに引きつけ、画面表示をより判読し難くすることができる。静的なパターンに比べて、動的なパターンでは変化の態様を予測することが困難であるので、画面表示をより一層判読し難くすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明による携帯情報端末装置は、表示エリアを狭視野角で閲覧させる狭視野モードにおいて、複数のセグメントを独立して広視野角又は狭視野角に切り替えて、表示エリア内の視野角を部分的に異ならせることにより、任意のパターンを表示させることができる。人の興味を引きつけやすいパターンを表示させれば、覗き見る人の意識をそのパターンに効果的に引きつけることができるので、斜め方向から画面表示を判読又は認識しにくくすることができる。
【0027】
また、基地局から受信したパターンデータや、携帯情報端末装置内で作成した画像データに基づくパターンデータなどの所望のパターンデータをパターンデータ記憶手段に記憶させることにより、狭視野モード時に斜め方向から表示画面を見たときに、そのパターンを高コントラストで視認させることができる。
【0028】
また、複数のセグメントを所定時間ごとに独立して広視野角又は狭視野角に切り替えれば、狭視野モード時に斜め方向から見える高コントラストのパターンを動的に変化させることができ、覗き見る人の意識を効果的に引き付けることができる。従って、斜め方向から画面表示をより一層判読又は認識しにくくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1は、本発明の実施の形態による携帯情報端末装置の一例を示した外観図であり、携帯情報端末装置の一例として携帯電話機1が示されている。この携帯電話機1は、いわゆる折り畳み式の携帯電話機であり、表示筐体100及び操作筐体200がヒンジ部300を介して連結され、表示筐体100及び操作筐体200の一面を対向させて折り畳むことができる。
【0030】
表示筐体100は、折り畳み時に内側となる筐体面にメイン表示部101及び受話用レシーバ103が配置され、外側となる筐体面にサブ表示部102及びカメラ104が配置されている。また、操作筐体200は、折り畳み時に内側となる筐体面に多数の操作キー201及び送話用マイクロフォン203が配置されている。このような折り畳み式携帯電話機1は、コンパクトに折り畳んだ状態で携帯することができ、筐体を展開させれば、メイン表示部101の表示を見ながら、操作キー201を押下操作することができる。つまり、主な情報表示はメイン表示部101を用いて行われ、主な操作入力は操作キー201を用いて行われている。
【0031】
メイン表示部101は、一般に縦長の矩形形状からなる表示エリアを有し、この表示エリア内に個人情報を含む様々な情報が表示される。このような表示が第三者によって覗き見られるのを防止するため、メイン表示部101は、左右方向の視野角を可変制御することができる。ここでは、視野角の広い動作状態である広視野モードと、視野角の狭い動作状態である狭視野モードとを切り替えることができるものとする。一般に、携帯電話機のメイン表示部101は、テレビ受像装置や据置型の情報端末装置に比べて表示エリアの面積が小さく、また、手に持って使用するためにユーザの目と表示画面との位置関係が概ね一定であることから、視野角制御に適している。また、携帯電話機は、メイン表示部101をある程度立てた状態で使用されることから、左右方向の視野角を狭小化させれば、覗き見を効果的に防止することができる。
【0032】
操作キー201には、ユーザがメイン表示部101の視野角の切り替えを指示するためのプライバシースイッチ202が含まれる。メイン表示部101が、斜め方向からも良好に視認できる広視野モードである場合に、ユーザがプライバシースイッチ202を操作すれば、メイン表示部101は、斜め方向からは容易に視認できない狭視野モードとなる。その後、ユーザがプライバシースイッチ202を再操作すれば、メイン表示部101は広視野モードに戻る。
【0033】
なお、本実施の形態では、メイン表示部101について視野角制御を行う場合の例について説明するが、サブ表示部102についても、同様の視野角制御を適用できることはいうまでもない。また、本実施の形態では、左右方向の視野角を制御する場合の例について説明するが、同様にして、上下方向の視野角を制御することもできる。
【0034】
図2は、狭視野モードのメイン表示部101の見え方の一例を示した説明図である。図中の(a)には、狭視野モードにおける視野角内の視点からメイン表示部101を見た場合のイメージが示され、(b)には、狭視野モードにおける視野角外の視点から斜めに見た場合のイメージが示されている。
【0035】
広視野モードの場合、広視野モードにおける視野角内の視点からメイン表示部101を見れば、当然のことではあるが、画面表示を良好に視認することができる。同様にして、狭視野モードの場合にも、狭視野モードにおける視野角内の視点からメイン表示部101を見れば、図中の(a)に示した通り、画面表示を良好に視認することができる。なお、狭視野モードでは、広視野モードの場合に比べて多少の色品質等の低下を伴うが、概ね良好に視認することができる。
【0036】
一方、広視野モードであれば視野角内となるが、狭視野モードでは視野角外となる視点から、狭視野モードのメイン表示部101を見た場合、図中の(b)に示した通り、本来の画面表示は低コントラストでしか見えず、これに重畳させた複数のドットからなるパターンが高コントラストで見える。このパターンは、メイン表示部101の表示エリア内において部分的に視野角を異ならせることによって実現される。
【0037】
メイン表示部101の表示エリアには、それぞれドット状の領域からなる複数のセグメントが、M行×N列(M,Nはそれぞれ自然数)のマトリックス状に配置されている。広視野モードでは、全てのセグメントと、表示エリアにおけるセグメントを除くバックグランド領域とが、それぞれ広視野角とされることにより、表示エリア全体が広視野角となる。一方、狭視野モードでは、バックグランド領域が狭視野角とされるとともに、複数のセグメントが選択的に広視野角又は狭視野角とされる。このため、狭視野モードでメイン表示部101を斜め方向から見た場合、図中の(b)に示した通り、低コントラストの表示エリア内における広視野角のセグメントの領域に、高コントラストのパターンが浮かび上がって見える。
【0038】
このようなコントラストの異なるパターンが重畳された画面表示を見た場合、人間の視覚は、高コントラストのパターンに無意識的に引き付けられ、低コントラストのパターンを認識しにくくなるという性質を持っている。本実施の形態による携帯電話機1は、この様にして覗き見る人の意識を高コントラストのパターンに引き付けることによって、たとえ本来の画面表示が低コントラストで見えていたとしても、その内容を認識又は判読しにくくしている。
【0039】
なお、高コントラストのパターン領域内だけに注目すれば、表示エリア全体を狭視野化する場合に比べて画面表示が見え易くなっている。しかしながら、複数のセグメントを選択的に広視野角又は狭視野角に切り替えることにより、任意のパターンを表示させることができるので、人の興味を引きつけやすいパターンを表示させれば、内容を認識又は判読しにくくすることができる。
【0040】
図3は、メイン表示部101の一構成例を示した断面図であり、図1のA−A断面が示されている。このメイン表示部101は、視野切替パネル2及び液晶表示装置5によって構成される。液晶表示装置5の表示画面上には、視野切替パネル2の表示透過面が配置されており、視野切替パネル2が、表示透過面の視野角を切り替えることによって、メイン表示部101の視野角が切り替えられる。
【0041】
液晶表示装置5は、表示用液晶パネル3及びバックライト4からなる周知の表示装置である。表示用液晶パネル3は、2枚の絶縁性透明基板(例えばガラス基板)32a,32b間に液晶34が封入されている。また、各基板32a,32bの外面には偏光板31a,31bがそれぞれ配置され、内面には透明電極(例えばITO電極)33a,33bがそれぞれ形成されている。例えば、一般的なTFT方式の液晶表示装置であれば、前面側の電極33aとして共通電極が形成され、背面側の電極33bとして多数の画素電極が形成されている。
【0042】
バックライト4は、透過型の表示用液晶パネル3に対し、背面側から光を供給する光源である。表示用液晶パネル3は、各画素電極の電位を制御して、バックライト4からの入射光を透過させるか否かを画素ごとに制御して、文字や画像を表示している。つまり、上記画素電極の配置されている基板32b上の領域が表示エリアに相当し、当該表示エリア内の位置に応じて光の透過率を異ならせることにより、文字や図形等からなる情報が表示される。
【0043】
一方、視野切替パネル2は、光の進行方向に応じて透過率を異ならせることによって、視野角の可変制御を実現している。なお、液晶表示装置5からの光を透過させる領域、つまり、液晶表示装置5の表示エリアに対応した視野切替パネル2上の領域を表示透過面と呼ぶことにする。
【0044】
この視野切替パネル2は、2枚の絶縁性透明基板(例えばガラス基板)22a,22b間に液晶24が封入され、前面側の基板22aの外面には偏光板21が配置され、各基板22a,22bの内面には透明電極(例えばITO電極)23a,23bがそれぞれ形成されている。つまり、表示用液晶パネル3の偏光板31aを加えれば、表示用液晶パネル3と同様の構成となる。
【0045】
偏光板21,31aは、互いに透過軸が一致するように配置されており、表示用液晶パネル3からの入射光は、液晶24において偏光面が変動しなければ、視野切替パネル2を透過することができる。液晶24では、透過光の光軸が正面方向となす角度に応じて、当該透過光の偏光面が回転するため、所定の視野角よりも外側に向けて液晶24中を斜めに進む入射光は、偏光板21において遮断される。
【0046】
図4及び図5は、視野角制御の原理について説明するための図であり、図4は、広視野モードにおける様子を示した模式図であり、図中の(a)は斜視図、(b)はC矢視図である。また、図5は、狭視野モードにおける様子を示した模式図であり、図中の(a)は斜視図、(b)はD矢視図である。
【0047】
メイン表示部101は、偏光板21,31aの透過軸a1,a2をともに表示画面の上下方向と一致させ、これらの偏光板21,31a間に配置された液晶分子24e(液晶24の分子)の配向方向を制御することによって、表示画面の左右方向に関する視野角を変化させている。
【0048】
広視野モードでは、透過軸a1,a2と平行になるように液晶分子24eが配向されている(図4参照)。このとき、視野切替パネル2を正面の視点e1から見た場合であっても、この視点e1に対して左右方向に角度αを有する視点e2から見た場合であっても、液晶分子24eの方向は、透過軸a1,a2に一致して見える。従って、光の進行方向にかかわらず、表示用液晶パネル3からの入射光は、液晶24において複屈折されず、偏光板21を透過することができる。メイン表示部101の視野角は、この場合に最も広くなり、表示用液晶パネル3の視野角と一致する。
【0049】
一方、狭視野モードでは、電極23a,23b間に電界を形成して、液晶分子24eを図4の状態から回転させ、透過軸a1,a2に対して角度θをなすように配向させている(図5参照)。ただし、液晶分子24eは、上記回転によって前後方向に傾けられるのみであり、表示画面上への投影像は、依然として透過軸a1,a2と平行になるように保たれている。つまり、表示画面に垂直で透過軸a1,a2に平行な面内において、液晶分子24eを回転させている。
【0050】
このような狭視野モードの視野切替パネル2を正面の視点e1から見れば、広視野モードの場合と同様、液晶分子24eの方向は透過軸a1,a2の方向と一致しているが、視点e1に対して左右方向に角度αを有する視点e2から見れば、液晶分子24eの方向が透過軸a1,a2と角度βをなしている。このため、視点e2へ向かう光は、液晶24において角度βに応じて偏光面が回転し、偏光板21において減衰され、あるいは、遮断される。この角度βは、角度θ及び角度αに応じて変化するため、角度θに応じた視野角が得られる。
【0051】
従って、視野切替パネル2の視野角は、液晶分子24eが透過軸a1,a2となす角度θに応じて、リニアに変化させることができる。ただし、本実施の形態では、電極23a,23bを同一電位とする広視野モードと、電極23a,23bを部分的に異なる電位とする狭視野モードとを切り替え制御するものとする。
【0052】
図6は、図2の視野切替パネル2の電極23a,23bの一構成例を示した図である。
【0053】
前面側の電極23aは、1枚の平板状の電極片として構成され、電極端子Ta0に接続されている。
【0054】
背面側の電極23bは、それぞれドット状の領域からなる9行×10列のマトリックス状に配置された計90個のセグメントと、表示エリアにおけるセグメントを除くバックグランド領域とに分割され、それぞれの領域が独立した電極片として構成されている。これらの電極片は、隣接する電極片との間に僅かな隙間(例えば最小12μm)が設けられ、互いに絶縁されている。
【0055】
各セグメントは、それぞれ異なる電極端子に接続されている。すなわち、1行目の10個のセグメントは電極端子Tb1〜Tb10に接続され、2行目の10個のセグメントは電極端子Tb11〜Tb20に接続されるといった様にして、90個のセグメントがそれぞれ異なる電極端子Tb1〜Tb90に接続されている。バックグランド領域は、電極端子Tb0に接続されている。
【0056】
このように1つの電極23bに対して複数の電極端子Tb0〜Tb90を接続する場合、電極23bの各電極片と各電極端子Tb0〜Tb90とを連結する複数本の配線を、互いに短絡しないように引き回すことが困難となる。そこで、本実施の形態では、電極23bの背面側において、いわゆる多層配線技術を用いて複数本の配線の引き回しを行っている。すなわち、電極23bの背面側に複数の絶縁層を積層配置するとともに、電極23bの各電極片から背面側に向かって配線を引き延ばし、これらの配線を複数の絶縁層を介して電極端子Tb0〜Tb90に導くことにより、短絡させることなく複数本の配線の引き回しを達成している。
【0057】
このような電極端子Ta0,Tb0〜Tb90に対し、2種類の電圧レベル(例えば0V及び3V)のいずれかを印加すれば、対向する電極片の電位が異なる領域については狭視野角となり、電位が同一となる領域については広視野角となる。従って、各電極端子Ta0,Tb0〜Tb90に印加する電圧レベルの組み合わせに応じて、表示エリア内の視野角を部分的に異ならせることができる。
【0058】
図7は、狭視野モードにおける視野切替パネル2の表示透過面の一例を示した図である。ここでは、(a)及び(b)のいずれの場合も、前面側の電極23aの電極端子Ta0には高レベル(3V)が印加されているものとして説明する。
【0059】
(a)には、電極端子Tb0に低レベル(0V)、電極端子Tb1〜Tb90に高レベル(3V)を印加した場合が示されている。この場合、電極端子Tb0に接続されたバックグランド領域には電界が形成されて狭視野角となり、電極端子Tb1〜Tb90に接続された複数のセグメントには電界が形成されずに広視野角となる。
【0060】
(b)には、背面側の電極23bに接続されたすべての電極端子Tb0〜Tb90に低レベルを印加した場合が示されている。この場合、電極端子Tb0に接続されたバックグランド領域及び電極端子Tb1〜Tb90に接続された複数のセグメントのいずれにも電界が形成されて、表示透過面全体が狭視野角となる。
【0061】
電極23a,23bを構成する各電極片に印加する電圧レベルの組み合わせを切り替えれば、狭視野モードにおいて、マトリックス状に配置された複数のセグメントを独立して広視野角又は狭視野角に切り替えて、表示エリアに任意のパターンを高コントラストで表示させることができる。すなわち、電極端子Tb1〜Tb90のうち所定の端子を電極端子Ta0と同一の電圧レベルとして、対応するセグメントを広視野角とするとともに、電極端子Tb1〜Tb90のうちの他の端子及び電極端子Tb0を電極端子Ta0とは異なる電圧レベルとして、対応するセグメント及びバックグランド領域を狭視野角とする。この状態で斜め方向から表示画面を見れば、コントラストが低下した画面表示に対して、広視野角のセグメントの領域にコントラストの高いパターンが視認される(図2(b)参照)。
【0062】
従って、本実施の形態の携帯電話機1では、狭視野モード時に、表示画面を覗き見ようとする人の意識を高コントラストのパターンに引きつけて、画面表示を判読し難くすることができる。複数のセグメントを独立して広視野角又は狭視野角に切り替えることにより、任意のパターンを表示させることができるので、人の興味を引きつけやすいパターンを表示させれば、画面表示をより判読し難くすることができる。
【0063】
図8は、図1に示した携帯電話機1の内部構成の一例を示したブロック図である。主制御部400は、携帯電話機1の主要な動作を制御するプロセッサである。ここでは、受話用レシーバ103、カメラ104、操作キー201、送話用マイクロフォン203、無線部401、視野角コントローラ402、LCDコントローラ403、パターンデータ記憶部404及び画像作成プログラム記憶部405の制御を行っている。
【0064】
無線部401は、基地局500との間で無線信号の送受信を行うことにより、通話音や電子メールなどの各種情報の送受信を行っている。LCDコントローラ403は、メイン表示部101及びサブ表示装置102に駆動信号を供給している。視野角コントローラ402は、視野切替パネル2に駆動信号を供給して視野角の切替制御を行っており、視野切替パネル2とともに視野切替装置を構成している。
【0065】
主制御部400は、プライバシースイッチ202が操作された場合、あるいは、その他の操作キー201の操作によって視野角制御に関する設定変更が行われた場合に、視野角コントローラ402に制御信号を出力する。視野角コントローラ402は、この制御信号に基づいて、視野切替パネル2の各電極端子Ta0,Tb0〜Tb90に印加する電圧信号を生成している。
【0066】
パターンデータ記憶部404は、狭視野モード時に視野切替パネル2の複数のセグメントを独立して広視野角又は狭視野角に切り替えるときのパターンデータ、すなわち、狭視野モード時に視野切替パネル2の各電極端子Ta0,Tb0〜Tb90に印加する電圧レベルの組み合わせのパターンデータを記憶している。視野角コントローラ402は、パターンデータ記憶部404から主制御部400を介して与えられるパターンデータに基づいて、視野角切替パネル2の視野角の切替制御を行う。
【0067】
画像作成プログラム記憶部405には、画像データを作成するためのアプリケーションプログラム(画像作成プログラム)が記憶されている。ユーザによる操作キー201の所定の操作に基づいて、主制御部400が画像作成プログラムを実行することにより、メイン表示部101に画像データを作成するための画面が表示される。そして、ユーザは、操作キー201を操作して、メイン表示部101上で所望の画像データを作成することができる。
【0068】
本実施の形態の携帯電話機1では、以下に説明する3つの態様でパターンデータを取得し、そのパターンデータをパターンデータ記憶部404に記憶させることができる。ユーザは、好みに応じて任意のパターンデータをパターンデータ記憶部404に記憶させ、そのパターンデータに基づいて狭視野モード時に視野切替パネル2の視野角の切替制御を行わせることができる。
【0069】
(1)基地局からのパターンデータの受信
本実施の形態の携帯電話機1では、基地局500から無線通信でパターンデータを受信し、パターンデータ記憶部404に記憶させることにより、パターンデータを取得することができる。基地局500に接続されたサーバ装置501には、複数種類のパターンデータが記憶されており、ユーザは、携帯電話機1を用いて基地局500との間で無線通信を行うことにより、通話、インターネット又は電子メールなどを介して、サーバ装置501に記憶されている複数種類のパターンデータから所望のパターンデータを選択することができる。
【0070】
選択されたパターンデータは、サーバ装置501から基地局500を介して無線通信により携帯電話機1に送信され、パターンデータを受信した携帯電話機1は、そのパターンデータをパターンデータ記憶部404に記憶させる。ユーザは、携帯電話機1の操作キー201を操作して、パターンデータ記憶部404に記憶されたパターンデータを選択することにより、基地局500から受信したパターンデータに基づいて視野角の切替制御を行うように設定することができる。
【0071】
この様な態様によれば、ユーザの好みに応じて所望のパターンデータを基地局500から受信してパターンデータ記憶部404に記憶させることにより、狭視野モード時に斜め方向から表示画面を見たときに、そのパターンを高コントラストで視認させることができる。
【0072】
(2)画像作成プログラムによる画像データの作成
本実施の形態の携帯電話機1では、ユーザが操作キー201を操作して、画像作成プログラムを実行させ、携帯電話機1のメイン表示部101上で所望の画像データを作成することにより、その画像データに基づいてパターンデータを作成することができる。
【0073】
画像作成プログラムを用いた画像データの作成は、複数のセグメントの配置態様に対応する9行×10列のマトリックス状のドットの組み合わせにより作成されるものであってもよい。すなわち、ユーザが、操作キー201を操作して、メイン表示部101上にマトリックス状に表示される複数のドットをそれぞれ広視野角又は狭視野角のいずれかに設定することにより、画像データを作成するような態様であってもよい。この場合、主制御部400は、作成された画像データに基づいて、各ドットに対応付けられた広視野角又は狭視野角の情報を抽出することによりパターンデータを作成し、そのパターンデータをパターンデータ記憶部404に記憶させる。
【0074】
また、画像作成プログラムを用いた画像データの作成は、複数のセグメントの配置態様に関わりなく、任意の画像データを作成することにより行われるようになっていてもよい。すなわち、ユーザが、操作キー201を操作して、メイン表示部101上に任意の文字や図形を適宜配置することにより、画像データを作成するような態様であってもよい。この場合、主制御部400は、作成された画像データにおける各セグメントに対応する画素の色に応じてパターンデータを作成し、そのパターンデータをパターンデータ記憶部404に記憶させる。例えば、メイン表示部101上で白黒の画像データが作成された場合には、主制御部400は、各セグメントに対応する画素の色が黒色であれば狭視野角の情報を割り当て、白色であれば広視野角の情報を割り当てることにより、パターンデータを作成する。
【0075】
ユーザは、携帯電話機1の操作キー201を操作して、パターンデータ記憶部404に記憶されたパターンデータを選択することにより、画像作成プログラムにより作成した画像データから作成されたパターンデータに基づいて視野角の切替制御を行うように設定することができる。
【0076】
この様な態様によれば、ユーザの好みに応じて所望の画像データを作成し、その画像データに基づいて作成されるパターンデータをパターンデータ記憶部404に記憶させることにより、狭視野モード時に斜め方向から表示画面を見たときに、そのパターンを高コントラストで視認させることができる。
【0077】
任意の画像データを作成する場合には、作成される画像データはカラーやグレースケールであってもよい。この場合、主制御部400は、作成された画像データの各画素データ(輝度データなど)を所定の閾値と比較することにより、画像データの二値化を行う。
【0078】
図9のステップS101〜S106は、作成された画像データの二値化処理の一例を示したフォローチャートである。主制御部400は、まず、二値化に用いる閾値を、携帯電話機1に備えられたメモリ(図示せず)に予め記憶されている基準閾値とし(ステップS101)、その基準閾値を、画像作成プログラムを用いて作成されたカラーやグレースケールの画像データの各画素データと比較することにより、画像データの二値化を行う(ステップS102)。
【0079】
その後、主制御部400は、二値化された画像データにおける各セグメントに対応する画素の色に基づいて、各セグメントに対応する画素の色が黒色であれば狭視野角の情報を割り当て、白色であれば広視野角の情報を割り当てることにより、パターンデータを作成する(ステップS103)。この様に一定の閾値との比較により作成されるパターンデータにおいては、二値化される前の画像データの輝度に応じて、広視野角のセグメントと狭視野角のセグメントとの割合が異なる。すなわち、二値化される前の画像データが全体的に暗い画像データの場合には、狭視野角のセグメントに対する広視野角のセグメントの割合が少なくなり、二値化される前の画像データが全体的に明るい画像データの場合には、狭視野角のセグメントに対する広視野角のセグメントの割合が多くなる。
【0080】
狭視野角のセグメントに対する広視野角のセグメントの割合があまりに多いと、狭視野モード時に斜め方向から表示画面を見たときに、広視野角のセグメントに対応する領域を介して、画面表示が容易に判読又は認識されてしまうおそれがある。そこで、本実施の形態において、主制御部400は、狭視野角のセグメントに対する広視野角のセグメントの割合が一定値未満であれば(ステップS104でNo)、そのままパターンデータをパターンデータ記憶部404に記憶させるが(ステップS105)、狭視野角のセグメントに対する広視野角のセグメントの割合が一定値以上の場合には(ステップS104でYes)、閾値を変更し(ステップS106)、その変更後の閾値に基づいて再び画像データの二値化を行うようになっている(ステップS102)。
【0081】
この様にして、狭視野角のセグメントに対する広視野角のセグメントの割合が一定値以上になるまで(ステップS104でNoとなるまで)、主制御部400は、閾値の変更及びその閾値に基づく画像データの二値化という一連の処理(ステップS102,S103,S104,S106)を繰り返し、狭視野角のセグメントに対する広視野角のセグメントの割合が一定値未満となった時点で(ステップS104でNo)、そのパターンデータをパターンデータ記憶部404に記憶させる(ステップS105)。この様に、画像データを二値化する際の閾値を、視野角制御時の広視野角のセグメントと狭視野角のセグメントとの割合に応じて異なる値に設定することにより、狭視野モード時に画面表示をより効果的に判読し難くすることができる。
【0082】
(3)カメラ撮影による画像データの作成
本実施の形態の携帯電話機1では、カメラ104で被写体を撮影することにより画像データを作成し、その画像データに基づいてパターンデータを作成することができる。
【0083】
カメラ104を用いた撮影により作成された任意の画像データは、カラー又はグレースケールである。従って、主制御部400は、図9で説明した様な態様で画像データの二値化を行うことによりパターンデータを作成し、その作成したパターンデータをパターンデータ記憶部404に記憶させることができる。
【0084】
ユーザは、携帯電話機1の操作キー201を操作して、パターンデータ記憶部404に記憶されたパターンデータを選択することにより、カメラ撮影により作成した画像データから作成されたパターンデータに基づいて視野角の切替制御を行うように設定することができる。
【0085】
この様な態様によれば、被写体を撮影することにより得られた所望の画像データに基づいて作成されるパターンデータをパターンデータ記憶部404に記憶させ、狭視野モード時に斜め方向から表示画面を見たときに、そのパターンを高コントラストで視認させることができる。
【0086】
図10は、図8の視野角コントローラ402の一構成例を示したブロック図である。この視野角コントローラ402は、電圧制御部410、PWM発生回路411、インバータ412、92個のスイッチング素子413及び92個のアンプ414によって構成される。
【0087】
PWM発生回路411は、視野切替パネル2を交流駆動するためのパルス信号を生成している。例えば、周波数70Hzのパルス信号を生成している。インバータ412は、このパルス信号(非反転信号)を反転させた反転信号を生成している。各スイッチング素子413は、これらの非反転信号及び反転信号のいずれか一方を選択して出力している。各スイッチング素子413の出力信号は、対応するアンプ414において所定の電圧レベルに増幅された後、電極端子Ta0,Tb0〜Tb90にそれぞれ出力される。
【0088】
電圧制御部410は、主制御部400の指示に基づいて、各スイッチング素子413を制御し、広視野モード及び狭視野モードの切り替えや、狭視野モードにおける広視野角パターンの切り替えを行っている。
【0089】
視野切替パネル2を交流駆動する場合、対向する電極23a,23bに同相のパルス信号を印加すれば広視野角となり、逆相のパルス信号を印加すれば狭視野角となる。このため、広視野モードでは、全ての電極端子Ta0,Tb0〜Tb90に対して、同相のパルス信号(例えば非反転信号)を供給するように、電圧制御部410がスイッチング素子413を制御することにより、複数のセグメント及びバックグランド領域を全て広視野角とする。狭視野モードでは、スイッチング素子413を制御して、電極端子Ta0に非反転信号を供給するとともに、電極端子Tb0に反転信号を印加することにより、バックグランド領域を狭視野角とし、電極端子Tb1〜Tb90に対して選択的に反転信号又は非反転信号を印加することにより、反転信号を印加したセグメントを狭視野角、非反転信号を印加したセグメントを広視野角とする。
【0090】
図11は、狭視野モードにおいて広視野角のパターン領域を動的に切り替える場合の一例を示した図である。図中の(a)及び(b)は、ともに狭視野モードのメイン表示部101を左右方向の斜めから見たときの様子を示したものであるが、広視野角になっているセグメントのパターンが異なっている。狭視野モード時に(a)及び(b)の広視野角パターンを動的に切り替えることによって、斜め方向から覗き見る人からは、動きを伴ったパターンが見える。
【0091】
このようなパターンの動的切替は、図10の電圧制御部410によって行われ、予め定められた所定時間が経過するごとに(a)及び(b)の広視野角パターンが交互に切り替えられる。例えば、1〜2秒ごとにパターンが切り替えられる。一般に、人間の視覚は、動くパターンに引きつけられるという性質を持っているため、低コントラストの表示エリア内に、高コントラストの動くパターンを重畳させれば、覗き見る人の意識を当該パターンにより強く引き付け、画面表示をより判読し難くすることができる。静的なパターンに比べて、動的なパターンでは変化の態様を予測することが困難であるので、画面表示をより一層認識又は判読し難くすることができる。
【0092】
なお、広視野角パターンの動的切替のタイミングは、必ずしも一定の時間間隔でなくてもよいが、人間の目にとって動的であると認識できる程度のタイミングで切り替える必要があり、切り替えのタイミングが速すぎると、十分な効果を得ることができない。交流駆動を行っている場合であれば、少なくともその周期よりも長い時間間隔で切り替える必要があり、例えば1/10秒以上の時間間隔で切り替えることが望ましい。
【0093】
なお、本実施の形態では、2種類のパターン領域を切り替える場合の例について説明したが、互いに異なる3種類以上のパターン領域を順次に切り替えれば、より効果的である。さらに、切り替え順序を変化させながら、3種類以上の広視野角パターンを切り替えれば、より一層効果的である。
【0094】
カメラ撮影により画像データを作成する場合、カメラ104で動画を撮影することにより動画データを作成し、その作成された動画データに基づいてパターンデータを作成することができるようになっていてもよい。この場合、動画データから作成されたパターンデータに基づいてパターン領域を連続的に切り替えることにより、表示エリア内に動画を表示させることができる。
【0095】
図12は、視野角制御に関するユーザ設定手順の一例を示した図であり、メイン表示部101に表示される設定画面間の遷移の様子が示されている。(a)は、ユーザが視野切替に関する設定を行うための視野切替設定画面である。この視野切替設定画面において、ユーザはマナーモード連動設定やパターン設定を選択することができる。マナーモード連動設定は、狭視野モードをマナーモードに連動させる設定のための選択肢であり、パターン設定は、狭視野モードにおける広視野角パターンを変更するための選択肢である。視野切替設定画面上でパターン設定を選択して決定キーを操作すれば、(b)のパターン設定画面へ移行する。
【0096】
ユーザは、パターン設定画面において、予め用意されている複数のパターンから任意のパターンを選択することができる。選択肢「パターンA」、「パターンB」及び「パターンC」は、動的切替を伴わない固定パターンであって、初期設定されたパターンや、画像作成プログラムにより作成された画像データに基づくパターンの設定である。選択肢「パターン切替」は、2以上のパターンを動的に切り替える設定である。選択肢「カメラ画像」は、動的切替を伴わない固定パターンであって、カメラ撮影により作成された画像データに基づくパターンの設定である。いずれかの選択肢を選択して決定キーを操作すれば、(c)のパターン設定完了のメッセージがポップアップされた後、(a)の視野切替設定画面に戻る。
【0097】
一方、(b)のパターン設定画面が表示されている状態で確認キーを操作すれば、パターンの確認を促すメッセージからなる(d)のパターン確認画面が表示される。パターン確認画面の表示中は、狭視野角モードになっており、ユーザは選択した広視野角パターンを確認することができる。このパターン確認画面が表示されている状態で、決定キーを操作すれば(c)の画面へ移行し、クリアキーを操作すれば(b)のパターン設定画面へ戻る。
【0098】
図13のステップS201〜S206は、狭視野モード処理の一例を示したフローチャートである。この狭視野モード処理は、狭視野モードにおける視野角コントローラ402の動作手順であり、広視野モード時にユーザがプライバシースイッチ202を操作することによって開始される。
【0099】
まず、図12のパターン設定画面におけるユーザ設定に基づいて、表示エリアの視野角が狭小化される(ステップS201)。広視野モード時には、表示エリア全体が広視野角になっているため、ユーザが指定したパターンに対応する広視野角のセグメントを除いて、表示エリアの視野角が狭小化される。なお、パターン設定画面において「パターン切替」が選択されている場合には、動的に切り替えられる任意のパターンが用いられ、タイマーをスタートさせる。
【0100】
パターン設定画面において、ユーザが固定パターンではなく、パターン切替を選択している場合であって、所定時間が経過して上記タイマーがタイムアップしていれば、パターンの切り替えが行われる(ステップS202〜S204)。このとき、上記タイマーを再スタートさせる。
【0101】
上記ステップS202〜S204は、狭視野モードを終了させるまで繰り返される(ステップS205)。ユーザがプライバシースイッチ202を操作し、狭視野モードを終了させて広視野モードへ移行する場合には、表示エリア全体を広視野角化し、この狭視野モード処理を終了する(ステップS206)。
【0102】
上記実施の形態では、マトリックス状に配置されたセグメントの数が比較的少ない場合、例えば、9行×10列のマトリックス状に配置された場合について説明したが、一定の面積を有する表示エリア内により多くのセグメントをマトリックス状(例えば、100行×100列)に配置して、より複雑なパターンを表示させれば、狭視野モード時に画面表示をより一層判読又は認識し難くすることができる。特に、カメラ撮影により作成した画像データに基づくパターンを表示エリアに表示させる場合には、セグメントの数がある程度多くなければ、撮影した画像を認識することができる程度にパターンを表示させることができない。
【0103】
しかし、上述したような多層配線技術を用いて配線の引き回しを行う場合、セグメントの数が多いと、配線の本数もその分多くなるので、複数本の配線を互いに短絡させることなく引き回すことが困難になる。そこで、この様な場合には、いわゆるアクティブマトリックス方式で配線を引き回すことにより、比較的少ない本数の配線で、各セグメントに対応する電極端子に電圧を印加することができる。
【0104】
図14は、アクティブマトリックス方式で引き回された配線の具体例を示す回路図である。視野切替パネル2の背面側の電極23bには、マトリックス状に配置されるM行×N列のセグメントに対応付けて、M行のゲートラインGL1〜GLMが互いに平行に配置されるとともに、これらのゲートラインGL1〜GLMに直交するように、N列のソースラインSL1〜SLNが互いに平行に配置されている。そして、これらのゲートラインGL1〜GLM及びソースラインSL1〜SLNの各交差点にスイッチング素子SWが設けられることにより、各セグメントに対応するコンデンサが構成されている。
【0105】
各セグメントを広視野角又は狭視野角に切り替える際には、まず、M本のゲートラインGL1〜GLMのうちの1行目のゲートラインGL1に高レベルの電圧が印加され、他のゲートラインGL2〜GLMに低レベルの電圧が印加される。このとき、そのゲートラインGL1に接続されているスイッチング素子SWがオン状態となり、ソースラインSL1〜SLNにそれぞれ高レベル又は低レベルの電圧が印加されることにより、高レベルの電圧が印加されたソースラインとゲートラインGL1との交差点のコンデンサに電荷が蓄えられる。
【0106】
その後、ゲートラインGL1及びソースラインSL1〜SLNへの印加電圧が低レベルとされ、次の行のゲートラインGL2に高レベルの電圧が印加されて、同様に、ソースラインSL1〜SLNにそれぞれ高レベル又は低レベルの電圧が印加されることにより、高レベルの電圧が印加されたソースラインとゲートラインGL2との交差点のコンデンサに電荷が蓄えられる。この様にして、全ての行のコンデンサに選択的に電荷を蓄えて、当該電極23bと対向する電極23aとの間に部分的に電位差を生じさせることにより、各セグメントを独立して広視野角又は狭視野角に切り替えることができる。
【0107】
この様なアクティブマトリックス方式での配線の引き回しによれば、多層配線を引き回す場合のようにM×N本もの配線が必要とならず、M+N本の配線で済むので、短絡を防止して各セグメントの視野角制御を良好に行うことができる。
【0108】
以上の説明では、狭視野モード時に斜め方向から表示画面を見たときに、広視野角のセグメントの領域に高コントラストのパターンが白色で表示されるような構成について説明したが、この様な構成に限らず、広視野角のセグメントの領域に高コントラストのパターンをカラーで表示できるようにしてもよい。
【0109】
また、メイン表示部101の表示エリアが複数の分割エリアに分割されていて、各分割エリアにそれぞれマトリックス状に配置された複数のセグメントの視野角を、分割エリアごとに個別に制御することができるようになっていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の実施の形態による携帯情報端末装置の一例を示した外観図であり、携帯情報端末装置の一例として携帯電話機1が示されている。
【図2】狭視野モードのメイン表示部101の見え方の一例を示した説明図であり、(a)は視野角内の視点、(b)は視野角外の視点から見た場合のイメージである。
【図3】メイン表示部101の一構成例を示した断面図であり、図1のA−A断面が示されている。
【図4】視野角制御の原理について説明するための図であり、広視野モードの場合を示した模式図である。
【図5】視野角制御の原理について説明するための図であり、狭視野モードの場合を示した模式図である。
【図6】図2の視野切替パネル2の電極23a,23bの一構成例を示した図である。
【図7】狭視野モードにおける視野切替パネル2の表示透過面の一例を示した図である。
【図8】図1に示した携帯電話機1の内部構成の一例を示したブロック図である。
【図9】作成された画像データの二値化処理の一例を示したフォローチャートである。
【図10】図8の視野角コントローラ402の一構成例を示したブロック図である。
【図11】狭視野モードにおいて広視野角パターンを動的に切り替える場合の一例を示した図である。
【図12】視野角制御に関するユーザ設定手順の一例示した図であり、設定画面間の遷移の様子が示されている。
【図13】狭視野モード処理の一例を示したフォローチャートである。
【図14】アクティブマトリックス方式で引き回された配線の具体例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0111】
1 携帯情報端末装置(携帯電話機)
2 視野切替パネル
3 表示用液晶パネル
4 バックライト
5 液晶表示装置
21,31a,31b 偏光板
22a,22b,32a,32b 絶縁性透明基板
23a,23b,33a,33b 透明電極
24,34 液晶
101 メイン表示部
102 サブ表示部
104 カメラ
201 操作キー
202 プライバシースイッチ
400 主制御部
401 無線部
402 視野角コントローラ
403 LCDコントローラ
404 パターンデータ記憶部
405 画像作成プログラム記憶部
410 電圧制御部
411 PWM発生回路
412 インバータ
413 スイッチング素子
414 アンプ
500 基地局
501 サーバ装置
a1,a2 透過軸
e1,e2 視点
Ta0 前面側の電極端子
Tb0〜Tb90 背面側の電極端子
GL1〜GLM ゲートライン
SL1〜SLN ソースライン
SW スイッチング素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示エリア内に複数のセグメントがマトリックス状に配置された表示装置と、
上記表示エリアを広視野角で閲覧させる広視野モード及び上記表示エリアを狭視野角で閲覧させる狭視野モードを切り替えるモード切替手段と、
広視野モード時には、上記表示エリア全体を広視野角とし、狭視野モード時には、上記複数のセグメントを独立して広視野角又は狭視野角に切り替える視野角制御手段とを備えたことを特徴とする携帯情報端末装置。
【請求項2】
上記視野角制御手段は、狭視野モード時には、上記表示エリアにおける上記複数のセグメントを除くバックグランド領域を狭視野角とすることを特徴とする請求項1に記載の携帯情報端末装置。
【請求項3】
表示画面上の表示エリアに情報表示を行う表示装置と、上記表示画面の視野角を切り替える視野切替装置とを備えた携帯情報端末装置において、
上記視野切替装置が、上記表示画面上に配置され、上記表示エリア内にマトリックス状に配置された複数のセグメント及び上記複数のセグメントを除くバックグランド領域からなる表示透過面が形成された視野角切替パネルと、
上記表示エリアを広視野角で閲覧させる広視野モード及び上記表示エリアを狭視野角で閲覧させる狭視野モードを切り替えるモード切替手段と、
広視野モード時には、上記複数のセグメント及び上記バックグランド領域を広視野角とし、狭視野モード時には、上記バックグランド領域を狭視野とするとともに、上記複数のセグメントを独立して広視野角又は狭視野角に切り替える視野角制御手段とを備えたことを特徴とする携帯情報端末装置。
【請求項4】
狭視野モード時に上記視野角制御手段が上記複数のセグメントを独立して広視野角又は狭視野角に切り替えるときのパターンデータを記憶するパターンデータ記憶手段を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の携帯情報端末装置。
【請求項5】
基地局との間で無線信号を送受信する無線通信手段を備え、
上記パターンデータ記憶手段は、上記基地局から受信したパターンデータを記憶することを特徴とする請求項4に記載の携帯情報端末装置。
【請求項6】
画像データを作成するための画像データ作成手段と、
上記画像データ作成手段により作成した画像データに基づいて、狭視野モード時に上記視野角制御手段が上記複数のセグメントを独立して広視野角又は狭視野角に切り替えるときのパターンデータを作成するパターンデータ作成手段とを備え、
上記パターンデータ記憶手段は、上記パターンデータ作成手段により作成されたパターンデータを記憶することを特徴とする請求項4に記載の携帯情報端末装置。
【請求項7】
上記画像データ作成手段により作成した画像データを所定の閾値に基づいて二値化するデータ二値化手段を備え、
上記パターンデータ作成手段は、上記データ二値化手段により二値化された画像データに基づいてパターンデータを作成し、
上記所定の閾値は、狭視野モード時に上記視野角制御手段が上記複数のセグメントを独立して広視野角又は狭視野角に切り替えるときの、広視野角のセグメントと狭視野角のセグメントとの割合に応じて異なる値に設定されることを特徴とする請求項6に記載の携帯情報端末装置。
【請求項8】
上記画像データ作成手段は、被写体を撮影して画像データを出力する撮像手段を備えることを特徴とする請求項6又は7に記載の携帯情報端末装置。
【請求項9】
上記視野角制御手段は、狭視野モード時には、上記複数のセグメントを所定時間ごとに独立して広視野角又は狭視野角に切り替えることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の携帯情報端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−330391(P2006−330391A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−154355(P2005−154355)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】