説明

携帯機器と、携帯機器に用いる電池パック

【課題】仕様変更を行わずに電池パックと携帯機器との間で通信を行うことが可能な電池パックと電池パックを用いる携帯機器とを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の電池パックでは、電池パックの有するサーミスタの一端に接続されており、携帯機器に電池パックの温度検出させるための外部端子を通信端末としても用いる。また本発明の携帯機器は、この外部端子を温度検出端子及び通信端子として使用を可能とするインターフェイス回路を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯機器と、携帯機器に用いる電池パックに係り、特に三つの端子により携帯機器と電池パックとが接続される携帯機器と、携帯機器に用いる電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、二次電池としてリチウムイオン電池がデジタルカメラや携帯電話等の携帯機器に搭載されている。リチウムイオン電池は過充電及び過放電に弱いため、過充電及び過放電の保護回路を備えた電池パックの形態で使用される。また保護回路を備えた電池パックでは、電池パック内にサーミスタを設け、電池パック内の温度変化に対応した電圧変化を携帯機器側に検出させて、電池パックへの充電制御を行わせるものがある。
【0003】
図4は、従来の電池パックと、携帯機器の充電制御部のブロック図である。電池パック1は、リチウムイオン電池2と並列に抵抗R1とコンデンサC1の直列回路が接続されている。リチウムイオン電池2の正極は電池パック1の外部端子3に接続され、負極は電流遮断用のnチャネルMOS(金属酸化膜半導体)トランジスタM1、M2を介して電池パック1の外部端子4に接続されている。
【0004】
MOSトランジスタM1、M2はドレインを共通接続され、MOSトランジスタM1のソースはリチウムイオン電池2の負極に接続され、MOSトランジスタM2のソースは外部端子4に接続されている。また、MOSトランジスタM1、M2それぞれは、ドレイン・ソース間に等価的にボディダイオードD1、D2が接続されている。
【0005】
保護IC(集積回路)5は、過充電検出回路、過放電検出回路、過電流検出回路を内蔵している。また、保護IC5はリチウムイオン電池2の正極から抵抗R1を通して電源Vddを供給されると共にリチウムイオン電池2の負極から電源Vssを供給されて動作する。
【0006】
保護IC5は過放電検出回路或いは過電流検出回路で過放電或いは過電流を検出したときDOUT出力をローレベルとしてMOSトランジスタM1を遮断し、過充電検出回路で過充電を検出したときCOUT出力をローレベルとしてMOSトランジスタM2を遮断する。サーミスタR3の一端は電池パック1の外部端子6に接続され、他端は外部端子4に接続されている。
【0007】
電池パック1の外部端子6には充電時に携帯機器7から分圧抵抗R4を介して所定電圧が印加される。電池パック1の温度によってサーミスタR3の抵抗値が変化することで外部端子6の電圧は変化する。
【0008】
携帯機器7は、電池パック1の外部端子3、外部端子4、外部端子6にそれぞれ接続される端子8、端子9、端子10を有する。端子8は正の電源端子である。端子9は負の電源端子である。端子10は、外部端子6の電圧を検出する電圧検出用端子である。また携帯機器7は、基準電圧11、電流源12、ダイオードD3、コンパレータ13、充電制御回路14、MOSトランジスタM3を有する。
【0009】
コンパレータ13の一方の入力には、端子10により検出された外部端子6の電圧が入力される。尚端子10で検出される電圧は、基準電圧11を分圧抵抗R4とサーミスタR3で分圧した電圧である。コンパレータ13の他方の入力には、電流源12とダイオードD3により生成される所定電圧VTが入力される。コンパレータ13の出力は、端子10で検出された電圧が、所定電圧VTよりも低くなったときに変化する。コンパレータ13の出力は、充電制御回路14に入力される。
【0010】
充電制御回路14は、例えば充電電流又は充電電圧に応じてMOSトランジスタM3のオン/オフの制御を行う。また充電制御回路14は、例えば端子8と端子9との間に電池パック1が接続されたとき、電池パック1の温度上昇を検出して電池パック1の充電を停止する。例えばサーミスタの抵抗値の低下により端子10で検出される電圧が所定電圧VTより低下すると、充電制御回路14が非動作となり、MOSトランジスタM3をオフにして電池パックへの充電を停止する。
【0011】
このような従来の電池パックと、電池パックと接続される携帯機器において、リチウムイオン電池2の電池残量などの状態を検出する状態検出回路等が搭載される場合がある。この場合電池パックには、状態検出回路からの出力信号を携帯機器に送信するための通信端子が別途設けられ、携帯機器はこの通信端子から出力される電池パックの状態情報を取得して電池パックの状態管理を行う。
【0012】
特許文献1には、電池パックの通信端子から、電池パックの充電を制御するための制御信号を受信する充電装置が記載されている。
【特許文献1】特開2000−209788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記従来の電池パックに通信端末を別途設けた場合、電池パックは4端子の構成となり、端子数が増加する。このため携帯機器側の4端子の構成としなければならず、携帯機器側の仕様の変更が余儀なくされ、コストアップの要因となる。また電池パックでは、限られたスペースに部品を実装する必要があり、新たに端子を設けることが困難である。
【0014】
本発明は、上記事情を鑑みて、これを解決すべくなされたものであり、仕様変更を行わずに電池パックと携帯機器との間で通信を行うことが可能な電池パックと電池パックを用いる携帯機器とを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記目的を達成するために以下の如き構成を採用した。
【0016】
本発明の携帯機器は、当該携帯機器(200)に給電する二次電池(110)を有する電池パック(100)の充電制御を行う充電制御回路(220)と、
前記電池パック(100)の有する温度検出手段(R10)から前記二次電池(110)の温度を検出する温度検出端子(213)と、
前記電池パック(100)に接続される正負の電源端子(211、212)と、
当該携帯機器(200)の動作を制御する制御回路(210)と、
前記温度検出端子(213)と、前記充電制御回路(220)の入力端子及び前記制御回路(210)の入力端子との間に接続されたインターフェイス回路(230)とを有し、
前記温度検出端子(213)から検出された信号は、前記インターフェイス回路(230)を介して前記充電制御回路(220)と、前記制御回路(210)とに供給されることにより、仕様変更を行わずに電池パックと携帯機器との間で通信を行うことができる。
【0017】
また本発明の携帯機器において、前記インターフェイス回路(230)は、前記温度検出端子(213)から検出された信号が入力されるピークホールド回路(231)を有し、前記ピークホールド回路(231)の出力端子は、前記充電制御回路(220)の入力端子と接続されている構成とした。
【0018】
また本発明の携帯機器において、前記ピークホールド回路(230)は、前記温度検出端子(213)から検出された信号のパルス幅が所定幅よりも狭いとき、前記温度検出端子(213)から検出された信号のピーク値を保持する構成とした。
【0019】
また本発明の携帯機器において、前記インターフェイス回路(230)は、前記温度検出端子(213)から検出された信号のレベルシフトを行うレベルシフト回路(232)を有し、前記レベルシフト回路(232)の出力端子は、前記制御回路(210)の入力端子と接続されている構成とした。
【0020】
また本発明の携帯機器は、前記温度検出用端子(213)に接続される第一の外部端子(113)と、当該携帯機器(200)の有する正負の電源端子(211、212)とに接続される第二及び第三の外部端子(111、112)と、
前記第二の外部端子(111)と前記第三の外部端子(112)との間に接続される二次電池(110)と、
前記第二の外部端子(111)と前記第三の外部端子(112)との間に接続されて、前記二次電池(110)の状態を検出する状態検出回路(120)と、
前記第一の外部端子(113)と前記第三の外部端子(112)との間に接続されたサーミスタ(R10)と、
前記第一の外部端子(113)と前記状態検出回路(120)の出力端子との間に接続されて、前記状態検出回路(120)から出力される出力信号の電圧レベルをシフトするレベルシフト回路(131)とを有する電池パック(100)が内蔵される構成とした。
【0021】
本発明の電池パックは、携帯機器(200)の有する温度検出用端子(213)に接続される第一の外部端子(113)と、前記携帯機器(200)の有する正負の電源端子(211、212)とに接続される第二及び第三の外部端子(111、112)と、
前記第二の外部端子(111)と前記第三の外部端子(112)との間に接続される二次電池(110)と、
前記第二の外部端子(111)と前記第三の外部端子(112)との間に接続されて、前記二次電池(110)の状態を検出する状態検出回路(120)と、
前記第一の外部端子(113)と前記第三の外部端子(112)との間に接続されたサーミスタ(R10)と、
前記第一の外部端子(113)と前記状態検出回路(120)の出力端子との間に接続されて、前記状態検出回路(120)から出力される出力信号の電圧レベルをシフトするレベルシフト回路(131)とを有することにより仕様変更を行わずに電池パックと携帯機器との間で通信を行うことができる。
【0022】
なお、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例にすぎず、図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、仕様変更を行わずに電池パックと携帯機器との間で通信を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の電池パックでは、電池パックの有するサーミスタの一端に接続されており、携帯機器に電池パックの温度検出させるための外部端子を通信端末としても用いる。また本発明の携帯機器は、この外部端子を温度検出端子及び通信端子としての使用を可能にするインターフェイス回路を有する。
【0025】
以下に図面を参照して本発明の最良の実施形態について説明する。図1は、本発明の電池パックと、携帯機器を説明するブロック図である。
【0026】
本発明の携帯機器200は、電池パック100を内蔵することで、電池パック100から給電される。尚本発明の携帯機器200は、例えば携帯電話、デジタルカメラ等であり、電池パックにより給電されて駆動する電子機器である。
【0027】
始めに、本発明の電池パック100について説明する。
【0028】
電池パック100は、例えばリチウムイオン電池等の二次電池110を有する。また電池パック100は、電池パック100を組み込む携帯機器200と接続するための正極端子111及び負極端子112と、二次電池110との間に、状態検出IC120及び保護IC130を有する。
【0029】
状態検出IC120は、電源端子VDD及び基準電位端子VSSと、電圧検知端子VBAT1と、ひと組の電流検知端子VRSP及びVRSMと、通信端子SIO1とを有する。状態検出IC120は、電源端子VDDを介して、保護IC130において電池電圧からレギュレートされた電圧を受け取ることができる。基準電位端子VSSは、二次電池110の負極へ接続されている。
【0030】
状態検出IC120は、二次電池110の正極へ接続された電圧検知端子VBAT1を介して二次電池110の出力電圧を検出することができる。電流検知端子の一方VRSMは二次電池110の負極へ接続され、更に、状態検出IC120の外部で抵抗R11を介してもう一方の電流検知端子VRSPへ接続されている。状態検出IC120は、電流検知端子VRSP及びVRSMを介して、外部抵抗R11に流れる電流、即ち、二次電池110の充放電電流を検出することができる。通信端子SIO1は、保護IC130を介して、携帯機器200との通信に使用される外部端子113へ接続されている。状態検出IC120は、通信端子SIO1及び保護IC130を介して携帯機器200と通信することができる。
【0031】
尚二次電池110の状態情報とは、例えば二次電池110の残量や二次電池110の異常を示す情報等である。状態検出IC120による状態情報の検出の詳細は後述する。
【0032】
外部端子113には、サーミスタR10の一端が接続されており、サーミスタR10の他端は負極端子112に接続されている。本実施形態のサーミスタR10は、二次電池110の温度を検出する温度検出手段であり、電池パック100内で二次電池110の近傍に配設されて二次電池110と熱結合されている。サーミスタR10は負の温度係数を持つNTC(Negative Temperature Coefficient)サーミスタを用いる。
【0033】
本実施形態の電池パック100では、携帯機器200に、二次電池110の温度変化に起因する外部端子113の電圧変化を検出させ、電池パック100の充電制御を行わせることができる。
【0034】
保護IC130は、電池パック100の充放電を遮断するMOSトランジスタM11、M12のゲートにそれぞれ接続される端子DOUTと端子COUTとを有する。保護IC130は過放電或いは過電流を検出したときDOUT出力をローレベルとしてMOSトランジスタM11を遮断し、過充電検出回路で過充電を検出したときCOUT出力をローレベルとしてMOSトランジスタM12を遮断する。
【0035】
また保護IC130は、状態検出IC120の通信端子SIO1から出力される通信パルス信号のレベルシフトを行うレベルシフト回路131を有する。レベルシフト回路131は、状態検出IC120と携帯機器200とを通信可能とすべく、通信端子SIO1から出力された状態情報を示す通信パルス信号のレベルをシフトして出力する。レベルシフト回路131の出力端子は、外部端子113と接続されている。
【0036】
したがって本実施形態の電池パック100の外部端子113は、電池パック100の温度検出端子としての役割と、電池パック100と携帯機器200との通信を行うための通信端子としての役割とを果たす。
【0037】
次に、本発明の携帯機器200について説明する。
【0038】
携帯機器200は、電池パック100の正極端子111と負極端子112にそれぞれ接続される端子211、212、電池パック100の外部端子113に接続される端子213を有する。端子211は正極の電源端子であり、端子212は負極の電源端子である。端子213は、電池パック100の外部端子113と接続されて、二次電池110の温度検出端子及び状態検出IC120との通信端子の役割を果たす。
【0039】
また携帯機器200は、本体制御回路(以下、MCU)210、充電制御回路220、インターフェイス回路230、電源回路(以下、LDO)240を有する。
【0040】
MCU210は、携帯機器200の動作を制御する制御回路であり、通信端子SIO2を有する。通信端子SIO2は、インターフェイス回路230に接続されており、MCU210は、インターフェイス回路230を介して端子213から電池パック100の状態情報を取得する。
【0041】
充電制御回路220は、電池パック100の充電を制御するものであり、インターフェイス回路230を介して端子213の電圧変化を監視する。充電制御回路220の出力端子は、スイッチング素子M10のゲートと接続されている。充電制御回路220は、端子213の電圧変化に基づきスイッチング素子M10のオン/オフを制御することで、電池パック100への充電を制御する。
【0042】
例えば充電制御回路220は、二次電池110の温度上昇によりサーミスタの抵抗値が低下し、端子213で検出される電圧が所定電圧VTより低下すると、MOSトランジスタM10をオフにして電池パック100への充電を停止する。
【0043】
インターフェイス回路230は、電池パック100と充電制御回路220及びMCU210とのインターフェイスとなる。インターフェイス回路230は、ピークホールド回路231、レベルシフト回路232を有する。ピークホールド回路231は、比較器233、遅延回路234を有する。
【0044】
インターフェイス回路230の入力端子Tinは端子213と接続されている。インターフェイス回路230において、入力端子Tinに印加された信号は、ピークホールド回路231を構成する比較器233の一方の入力と、レベルシフト回路232とに入力される。比較器233の他方の入力には、基準信号となる所定幅のパルス信号が入力されており、入力端子Tinから入力された信号のパルス幅と基準信号のパルス幅とを比較する。遅延回路234は、比較器233の出力に応じて、信号を所定時間遅延させる。レベルシフト回路234は、入力端子Tinに印加された信号のレベルを、MCU210と通信可能なレベルにシフトさせる。
【0045】
LDO240は、携帯機器200の有する各回路に電源電圧Vpuを供給する。またLDO240は、抵抗R20を介して端子213に接続されている。したがって携帯機器200と電池パック100とが接続されたとき、端子213の電圧は、LDO240から供給される電源電圧Vpuの抵抗R20とサーミスタR10とによる分圧となる。
【0046】
ここで、本実施形態の電池パック100及び携帯機器200の動作の説明に先立ち、電池パック100の有する外部端子113を温度検出端子及び通信用端子として使用する場合の問題点について説明する。
【0047】
本実施形態では、電池パック100と携帯機器200とが接続されたとき、携帯機器200の内部で外部端子113が抵抗R20により電源電圧Vpuにプルアップされた状態となる。この抵抗R20の抵抗値Rpuと電源電圧Vpuは、携帯機器200の仕様により決定されている。
【0048】
サーミスタR10は温度により抵抗値が変化する抵抗素子であるため、外部端子113(端子213)の電圧Vthは、抵抗R20の抵抗値Rpu及びサーミスタR10の抵抗値Rthの分圧比で決定される。
【0049】
本実施形態の携帯機器200では、外部端子113の電圧Vthを監視して電池パック100が充電可能な温度であるか否かを判断し、二次電池110の充電を行うか否かを決定している。したがって外部端子113の電圧Vthは、温度に依存して、安定して供給される必要がある。
【0050】
しかしながら、外部端子113を用いて電池パック100と携帯機器200が通信を行う場合、電圧Vthに通信パルス信号が印加されるため、携帯機器200側の温度検出において誤動作を引き起こす虞がある。
【0051】
また通常、通信パルス信号を出力する状態検出IC120は、二次電池110から供給される電圧で駆動し、電圧Vthをハイレベル(以下、Hレベル)とし、0Vをローレベル(以下、Lレベル)として取り扱う。これに対し、通信パルス信号が入力されるMCU210では、状態検出IC120を駆動させる電圧よりも大きい電圧(電源電圧Vpu)で駆動する。よって状態検出IC120で取り扱う信号のレベルとMCU210で取り扱う信号のレベルとに差が生じる。
【0052】
そのため、MCU210において、状態検出IC120から出力された信号の0VをLレベルの信号として取り扱うこうは可能であるが、電圧VthをHレベルの信号として取り扱うことに問題が生じる。例えば二次電池110の温度変化により電圧Vthが変化して低くなった場合、Lレベルの信号である0Vと、Hレベルの信号である電圧Vthとの電圧差が小さくなる。この場合Hレベルの信号とノイズとの判別が困難となり、誤動作が生じる虞がある。また携帯機器200の仕様が、通常の電池パック100の使用温度において電圧Vthが電源電圧Vpuの1/2付近になるような仕様である場合、リーク電流の発生原因となる虞がある。
【0053】
本実施形態の電池パック100及び携帯機器200では、携帯機器200のインターフェイス回路230を有する構成により、携帯機器200の仕様を変更せずに上記の問題点を解決している。
【0054】
以下に本実施形態の電池パック100及び携帯機器200の動作を説明する。
【0055】
電池パック100と携帯機器200とが接続された状態において、携帯機器200は、電池パック100の温度検出を行いつつ、電池パック100と通信を行う。
【0056】
電池パック100の温度が充電可能な温度である場合、サーミスタと接続された外部端子113の電圧Vthは、充電不可能と判断する基準の所定電圧VTより高い。このとき外部端子113に状態検出IC120から出力された通信パルス信号が印加されると、通信パルス信号がLレベルなるときに外部端子113の電圧Vthが一時的に所定電圧VTよりも小さくなる。
【0057】
本実施形態の携帯機器200のインターフェイス回路230では、電圧Vthが所定電圧VTよりも小さくなる時間が所定時間以下である場合、外部端子113からの信号を温度異常を示す信号と判断せず、充電制御は行わない。これは、二次電池110の温度異常を検出するために必要となる時間(以下、温度検出時間)と、通信パルス信号の1クロックの時間との差を利用したものである。通常、温度検出時間の方が、通信パルス信号の1クロックの時間よりも長い。そこで本実施形態の携帯機器200では、温度検出時間を1クロックの時間とする基準信号を用いて、外部端子113から入力される信号が通信パルス信号か、又は温度異常を示す信号かを判断する。
【0058】
端子213から入力された信号は、インターフェイス回路230の有するピークホールド回路231への入力信号となる。ピークホールド回路231において、入力信号(通信パルス信号)は、比較器233の一方の入力端子へ入力される。比較器233は、入力信号のパルス幅と、他方の入力端子に入力される基準信号のパルス幅とを比較する。比較器233は、入力信号のパルス幅が基準信号のパルス幅より狭い場合、出力信号を反転させる。
【0059】
インターフェイス回路230の遅延回路234は、前段の比較器233の出力の変化を受けて、入力信号のHレベルの電圧Vthをピーク値として保持し、この信号を充電制御回路220へ出力する。充電制御回路220は、ピークホールド回路231の出力に基づき、電圧VthがHレベルであると検出する。すなわち充電制御回路220は、二次電池110の温度上昇に伴うサーミスタR10の抵抗値の低下が発生していないものとして、電池パック100が充電可能な温度と判定し、充電を継続する。
【0060】
本実施形態では、例えば外部端子113の電圧Vthが、1秒以上所定電圧VTより低い場合、電池パック100の温度異常と判定する。よってこの場合、基準信号のパルス幅を1秒間とし、ピークホールド回路231の入力信号の1クロックの時間が1秒未満であれば、温度異常と検出しない。尚基準信号のパルス幅は、ターフェイス回路230の設計段階で予め決定されていても良い。
【0061】
また電池パック100が充電不可能な温度である場合、サーミスタと接続された外部端子113の電圧Vthが所定電圧VTより小さい状態が温度検出時間よりも長い時間続く。すなわち比較器233において、外部端子113からの入力信号のパルス幅が、基準信号のパルス幅よりも広くなるため、比較器233の出力は反転しない。したがって遅延回路234は、入力信号をそのまま充電制御回路220へ出力する。
【0062】
充電制御回路220は、インターフェイス回路230からの出力を受けて、電圧VthがLレベルであると検出する。よって充電制御回路220は、二次電池110の温度上昇に伴うサーミスタR10の抵抗値の低下が発生したものとして、電池パック100の温度異常を検出し、スイッチング素子M10をオフして充電を停止させる。
【0063】
このように本実施形態の携帯機器200では、インターフェイス回路230を有する構成により、外部端子113を通信端子として使用している場合にも、外部端子113を用いて電池パック100の温度検出を行うことができる。
【0064】
また本実施形態の携帯機器200のインターフェイス回路230において、レベルシフト回路232は、電圧Vthと0Vの間の信号である通信パルス信号を、MCU210の電源電圧Vpuと0Vの間の信号に変換し、変換後の信号をMCU210へ出力する。よってMCU210は、通常通りの処理で通信パルス信号を受けることができる。このため携帯機器200では、従来のMCU210の仕様を変更する必要がない。
【0065】
このように本実施形態の携帯機器200では、外部端子113を温度検出端子として使用している場合にも、外部端子113を用いて電池パック100との通信を行うことができる。
【0066】
したがって本実施形態の電池パック100及び携帯機器200では、端子数を増加させることなく、電池パック100の温度検出を行い、かつ電池パック100と携帯機器200との通信も行うことができる。
【0067】
さらに本実施形態では、インターフェイス回路230を設けるだけで、従来の携帯機器のMCU、充電制御回路の仕様を変更せずに電池パック100と携帯機器200とが通信を行うことができる。よって本実施形態によれば、従来の携帯機器の仕様を変更せずに、電池パック100から取得した二次電池110の状態情報に基づく電池パック100の状態管理機能等を追加することができる。
【0068】
ここで、本実施形態の電池パック100における二次電池110の状態情報取得について説明する。本実施形態の電池パック100では、状態検出IC120により二次電池110の状態情報を取得する。
【0069】
図2は、状態検出IC120のハードウェア構成を表すブロック図である。図2において、状態検出IC120は、CPU(Central Processing Unit)121と、センサ部122と、ROM(Read Only Memory)123と、EEPROM(Electrically Erasable and Programable ROM)124と、シリアルインターフェース(I/F)125とを有する。
【0070】
CPU121は、状態検出IC120の各部を制御することができる。センサ部122は、二次電池110(図1参照)の電圧、電流及び温度を検出することができる。ROM123は、CPU121が状態検出IC120の各部を制御するために実行するプログラムを記憶することができる。EEPROM124は、センサ部122によって検出された二次電池110の電圧、電流及び温度の各パラメータや、携帯機器200との間で認証を行うための認証ID等の情報を記憶することができる。シリアルI/F125は、通信端子SIO1を介して携帯機器200と通信することができる。CPU121、センサ部122、ROM123、EEPROM124及びシリアルI/F125は、バス126によって接続されており、夫々の間でデータ及びプログラムをやり取りすることができる。
【0071】
また、センサ部122は、温度センサ回路122aと、電圧センサ回路122bと、電流センサ回路122cと、マルチプレクサ122dと、アナログ−デジタル(A/D)変換回路122eとを有する。
【0072】
温度センサ回路122aは、二次電池110の温度を検出する。電圧センサ回路122bは、二次電池110へ接続された電圧検知端子VBAT1を介して、二次電池110の出力電圧を検出する。電流センサ回路122cは、電流検知端子VRSP及びVRSMを介して、抵抗R11に流れる電流、即ち、二次電池110の充放電電流を検出する。温度センサ回路122a、電圧センサ回路122b及び電流センサ回路122cの各出力はマルチプレクサ122dへ接続されており、マルチプレクサ122dによって1つの信号として出力される。A/D変換回路122eは、マルチプレクサ122dによって出力された信号をアナログからデジタルに変換する。
【0073】
図3は、状態検出IC120の機能構成を表すブロック図である。尚本実施形態において、図3に表される状態検出IC120の機能構成は、図2に示されたROM123に記憶された特定のプログラムによって具現される。当然、他の実施形態では、かかる機能構成を具現するハードウェアモジュールが、図2のハードウェア構成において他の構成要素とは別個に設けられても良い。
【0074】
図3において、状態検出IC120は、記憶部140と、パラメータ取得部141と、判定部142と、通知部143と、表示部144と、受信部145とを有する。
【0075】
記憶部140は、二次電池110(図1参照)の状態を表す状態情報を記憶する。状態情報とは、二次電池110の満充電容量、残容量、及び/又は電圧を表す。また、記憶部140は、例えば、図2に示されたEEPROM124の記憶領域の一部を使用しても良い。
【0076】
パラメータ取得部141は、センサ部122により検出された電圧、電流、及び/又は温度を二次電池110の状態を示すパラメータとして取得する。
【0077】
判定部142は、記憶部140に記憶された状態情報と、パラメータ取得部141によって取得されたパラメータとに基づき、二次電池110が異常であるかどうかを判定する。また判定部142は、記憶部140に記憶された状態情報と、パラメータ取得部141によって取得されたパラメータとに基づき、二次電池110の劣化状態を判定する。尚二次電池110の異常とは、例えば二次電池110が充電不可能な温度であった場合や、二次電池110が携帯機器200と対応した正規品ではない場合(模倣品等)等を示す。
【0078】
通知部143は、判定部142において二次電池110が異常であると判定される場合に、携帯機器200へ二次電池110が異常である旨を通知する。具体的には通知部143は、図2に示されたシリアルI/F125に、二次電池110が異常である旨を携帯機器200へ通知させる。
【0079】
表示部144は、判定部142において二次電池110が異常であると判定される場合に、二次電池110が異常である旨を表示する。例えば、表示部144は、電池パック100に設けられたLEDを点灯させることによって、二次電池110が異常である旨をユーザに通知する。
【0080】
受信部145は、携帯機器200から認証信号(例えば、認証ID)等を受信する。具体的には受信部145は、図2に示されたシリアルI/F125に、携帯機器200からの認証信号を受信させる。
【0081】
本実施形態の状態検出IC120では、上記各部の有する機能により、二次電池110の状態情報を取得し、携帯機器200へ送信することができる。また本実施形態の状態検出IC120では、携帯機器200に予め登録された認証IDを取得し、この認証IDに基づき二次電池110が適正なものである否かの判定し、その結果を携帯機器200へ通知することができる。
【0082】
以上、実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施形態に示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の電池パックと、携帯機器を説明するブロック図である。
【図2】状態検出IC120のハードウェア構成を表すブロック図である。
【図3】状態検出IC120の機能構成を表すブロック図である。
【図4】従来の電池パックと、携帯機器の充電制御部のブロック図である。
【符号の説明】
【0084】
100 電池パック
111 正極端子
112 負極端子
113 外部端子
110 二次電池
120 状態検出IC
130 保護IC
200 携帯機器
210 MCU
211、212、213 端子
220 充電制御回路
230 インターフェイス回路
231 ピークホールド回路
232 レベルシフト回路
R10 サーミスタ
R20 抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
当該携帯機器に給電する二次電池を有する電池パックの充電制御を行う充電制御回路と、
前記電池パックの有する温度検出手段から前記二次電池の温度を検出する温度検出端子と、
前記電池パックに接続される正負の電源端子と、
当該携帯機器の動作を制御する制御回路と、
前記温度検出端子と、前記充電制御回路の入力端子及び前記制御回路の入力端子との間に接続されたインターフェイス回路とを有し、
前記温度検出端子から検出された信号は、前記インターフェイス回路を介して前記充電制御回路と、前記制御回路とに供給されることを特徴とする携帯機器。
【請求項2】
前記インターフェイス回路は、
前記温度検出端子から検出された信号が入力されるピークホールド回路を有し、
前記ピークホールド回路の出力端子は、前記充電制御回路の入力端子と接続されていることを特徴とする請求項1記載の携帯機器。
【請求項3】
前記ピークホールド回路は、
前記温度検出端子から検出された信号のパルス幅が所定幅よりも狭いとき、前記温度検出端子から検出された信号のピーク値を保持することを特徴とする請求項2記載の携帯機器。
【請求項4】
前記インターフェイス回路は、
前記温度検出端子から検出された信号のレベルシフトを行うレベルシフト回路を有し、
前記レベルシフト回路の出力端子は、前記制御回路の入力端子と接続されていることを特徴とする請求項1ないし3の何れか一項に記載の携帯機器。
【請求項5】
前記温度検出用端子に接続される第一の外部端子と、当該携帯機器の有する正負の電源端子とに接続される第二及び第三の外部端子と、
前記第二の外部端子と前記第三の外部端子との間に接続される二次電池と、
前記第二の外部端子と前記第三の外部端子との間に接続されて、前記二次電池の状態を検出する状態検出回路と、
前記第一の外部端子と前記第三の外部端子との間に接続されたサーミスタと、
前記第一の外部端子と前記状態検出回路の出力端子との間に接続されて、前記状態検出回路から出力される出力信号の電圧レベルをシフトするレベルシフト回路とを有する電池パックが内蔵されることを特徴とする請求項1ないし4記載の何れか一項に記載の携帯機器。
【請求項6】
携帯機器の有する温度検出用端子に接続される第一の外部端子と、前記携帯機器の有する正負の電源端子とに接続される第二及び第三の外部端子と、
前記第二の外部端子と前記第三の外部端子との間に接続される二次電池と、
前記第二の外部端子と前記第三の外部端子との間に接続されて、前記二次電池の状態を検出する状態検出回路と、
前記第一の外部端子と前記第三の外部端子との間に接続されたサーミスタと、
前記第一の外部端子と前記状態検出回路の出力端子との間に接続されて、前記状態検出回路から出力される出力信号の電圧レベルをシフトするレベルシフト回路とを有することを特徴とする電池パック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−153238(P2009−153238A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326444(P2007−326444)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【出願人】(501431073)ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ株式会社 (810)
【Fターム(参考)】