説明

携帯機器

【課題】携帯機器の筐体に設けた開口を自在に開閉する蓋装置を備える携帯機器であって、該開口を確実にシールすることができて、しかも、シール材の汚損や破損の危険が小さい携帯機器を提供する。
【解決手段】第1の筐体2に設けた開口8を自在に開閉するコネクタカバー装置5において、開口8を閉蓋するコネクタカバー6と、半固体シール材14と、半固体シール材14が充填されるシール材充填槽12と、第1の筐体2のコネクタカバー6と接する面に配置されて開口8を囲繞するとともに、シール材充填槽12と連通するシール材出入口9と、シール材充填槽12と連通するとともに、コネクタカバー6が開口8を閉蓋するときに、コネクタカバー6の一部が挿入される挿入口13と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体の内部空間と外部空間を連絡する開口を自在に開閉する蓋装置を備える携帯機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯機器、例えば、携帯用電話機、携帯情報端末、ノート型パーソナルコンピュータ等の筐体には、内部空間と外部空間を連絡する開口を備えるものがある。例えば、該開口を通して、ケーブル等を筐体の内部空間に挿入して、該ケーブル等を筐体の内部に装置されたコネクタと接続する。あるいは、該開口から筐体の内部空間にメモリカード等を挿入して、筐体の内部に装置されたメモリカード用スロットに装着する。
【0003】
また、かかる携帯機器の中には、該開口を閉蓋して、水や埃の侵入を防止するコネクタカバーを備えるものがある。
【0004】
例えば、特許文献1には、コネクタカバーの金属製環状突起部の外周に設けた防水リングで、金属製環状突起部と開口部の間の隙間をシールする電子機器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3991546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された電子機器は、コネクタカバーの金属製環状突起部と開口部の間の隙間を防水リングでシールするので、十分な防塵性や防水性が確保される。
【0007】
しかしながら、該電子機器は、防水リングがコネクタカバーの外周に露出しているので、コネクタカバーを電子機器から取り外した時に、防水リングを傷つけたり、防水リングにゴミが付着したりする恐れがあった。そのために、電子機器の防塵性や防水性が損なわれる恐れがあった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、筐体に開口する開口を自在に開閉する蓋装置を備える携帯機器であって、該開口を確実にシールすることができて、しかも、シール材の汚損や破損の危険が小さい携帯機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る携帯機器は、筐体に設けた開口を自在に開閉する蓋装置を備える携帯機器において、前記蓋装置は、前記開口を閉蓋する蓋体と、半固体シール材と、前記半固体シール材が充填されるシール材充填槽と、前記筐体の前記蓋体と接する面にあって前記開口を囲繞するとともに、前記シール材充填槽と連通するシール材出入口と、前記シール材充填槽と連通するとともに、前記蓋体が前記開口を閉蓋するときに、前記蓋体の一部が挿入される挿入口と、を備えることを特徴とする。
【0010】
前記蓋体は、前記筐体に摺動自在に支持されて、前記蓋体が前記開口を閉蓋するときに、前記蓋体の摺動方向先端が前記挿入口に挿入されるようにしてもよい。
【0011】
あるいは、前記開口の内部にコネクタを備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、閉蓋時には、シール材出入口から膨出した半固体シール材が、開口の周縁において筐体と蓋体の間の隙間を塞ぐので、開口を確実にシールすることができる。一方、開蓋時には、半固体シール材はシール材充填槽に引き戻され、筐体の外に漏出しないので、半固体シール材が破損、汚損する危険が小さくなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態の一例を示す携帯電話端末の斜視図である。
【図2】蓋装置を筐体の外側から見た外形図である。
【図3】蓋装置の断面図である。
【図4】蓋装置の変形例を示す断面図である。
【図5】蓋装置の別の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の具体的な実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1に示した携帯電話端末1は本発明に係る携帯機器の一例であり、第1の筐体2と第2の筐体3とから構成され、両者はヒンジ軸4を介して、回動自在に連結されている。そして、第1の筐体2の側面には、コネクタカバー装置5を備えている。
【0016】
図2は、コネクタカバー装置5を第1の筐体2の外側から見た外形図である。図2に示すように、コネクタカバー装置5は、コネクタカバー6を備える。コネクタカバー6は、第1の筐体2に形成されたレール溝7に支持されて、開位置(図2(a)参照)と閉位置(図2(b))の間で自在に摺動する。また、コネクタカバー装置5は、開口8を備える。開口8は第1の筐体2の内部と外部を連絡する。また、開口8の奥(第1の筐体2の内部)には、図示しないコネクタが備えられて、該コネクタは外部から開口8を通って挿通される信号ケーブルと連結される。
【0017】
また、図2(c)に示すように、コネクタカバー6の上下端にはレール10が形成されて、レール10はレール溝7に係合する。コネクタカバー6の前端(閉位置に近い端)には、シール材押し出し爪11が形成されている。シール材押し出し爪11の作用については、後述する。
【0018】
さて、図3はコネクタカバー装置5を図2(a)のAA’線で切断した断面図であり、コネクタカバー6が開位置にある状態(図3(a))、開位置と閉位置の間にある状態(図3(b))、及び閉位置にある状態(図3(c))を、それぞれ示している。なお、図3においては、コネクタカバー装置5の上方が第1の筐体2の内部の空間に相当し、下方が第1の筐体2の外部に相当する。
【0019】
図3に示すように、第1の筐体2(正確に言えば、第1の筐体2の外郭を構成する殻体の内部)には、シール材充填槽12が形成されている。シール材充填槽12はシール材出入口9と連通している。また、第1の筐体2の第1の筐体2のシール材押し出し爪11と対向する部位には挿入口14があって、挿入口14は、シール材充填槽12と連通している。
【0020】
コネクタカバー6を閉位置方向にスライドさせると、コネクタカバー6の先端のシール材押し出し爪11は挿入口14を通って、シール材充填槽12の内部に進入する(図3(b)参照)。シール材押し出し爪11がシール材充填槽12の内部に進入すると、シール材充填槽12に充填された半固体シール材14の一部がシール材出入口9から押し出される。そして、コネクタカバー6が閉位置に達する(図3(c)参照)と、シール材充填槽12から押し出された半固体シール材14が、開口8の周縁において、筐体2とコネクタカバー6の間の隙間を塞ぐ。
【0021】
このように、シール材出入口9を通ってシール材充填槽12から押し出された半固体シール材14が、開口8の周縁において、筐体2とコネクタカバー6の間の隙間を塞ぐので、開口8は塵埃密、水密に閉蓋される。
【0022】
逆に、コネクタカバー6を閉位置(図3(c))から開位置(図3(a))に戻すと、シール材押し出し爪11が半固体シール材14に加えていた圧力が消滅するので、シール材出入口9を通ってシール材充填槽12の外に押し出されていた半固体シール材14は、シール材充填槽12の内部に戻る。そのため、開口8を開放した状態では、半固体シール材14は第1の筐体2の外部に露出しない。
【0023】
半固体シール材14には、ポリビニルアルコールの水溶液と硼砂の水溶液を混合して、ポリビニルアルコールの分子を架橋結合させた、俗にスライムと呼ばれる材料を使用する。また、半固体シール材14は、ポリビニルアルコールの水溶液と硼砂の水溶液の混合物を、半固体化する前(流動性を失う前)に、シール材充填槽12に注入充填して形成される。あるいは、図示しない成形型に前記混合物を注入充填して、所定の形状に成形したものをシール材充填槽12の中に組み込むようにしても良い。
【0024】
以上説明したように、コネクタカバー6を閉位置にすると、シール材充填槽12の内部に充填された半固体シール材14が、開口8の周縁において、第1の筐体2とコネクタカバー6を間の隙間を塞ぐので、開口8は塵埃密、水密に閉蓋される。そのため第1の筐体2の内部に装置された電子部品等は塵埃や水分から十分に保護される。また、コネクタカバー6が開位置に有る場合は、半固体シール材14がシール材充填槽12の内部に引き込まれるので、半固体シール材14を汚したり傷つけたりすることがない。そのため、半固体シール材14の汚損や破損を抑制できる。また、汚損や破損に起因するシール性能の低下を抑制できる。
【0025】
また、携帯電話端末1は開口8の内部にコネクタを備えているので、コネクタカバー装置5を開放するだけで、ケーブル等を携帯電話端末1の内部に引き込んで接続することができる。ケーブル等を接続しないときは、コネクタカバー装置5を閉鎖するだけで、コネクタは塵埃や水分から十分に保護される。
【0026】
また、コネクタカバー6は第1の筐体2に摺動自在に支持されて、開口8を開放している間も第1の筐体2に保持されているので、コネクタカバー6の紛失や破損の危険が小さい。
【0027】
また、上述の実施形態は本発明の実施形態の例示であって、本発明の技術的範囲は上記説明によって限定されない。本発明は特許請求の範囲に記載された技術的思想の限りにおいて、応用、変形あるいは改良して実施することができる。
【0028】
例えば、上述の実施形態では、半固体シール材14に、ポリビニルアルコールに硼砂を加えてポリビニルアルコールの分子を架橋結合させた、俗にスライムと呼ばれる材料を使用する例を示したが、半固体シール材14の素材は、スライムには限定されない。半固体、つまり固体と液体の中間の性質を備える材料、内力と外力が釣り合った状態では所定の形状を保つが、一部を押圧すればその影響が他の部位に及ぶような材料を、任意に選択することができる。
【0029】
また、上述の実施形態では、コネクタカバー6が開位置と閉位置の間でスライドする例を示したが、他の形態を選択することもできる。例えば、図4に示すように、ヒンジ15を介してコネクタカバー6を第1の筐体2に回動自在に取り付けて、コネクタカバー6が開位置(図4(a)参照)と閉位置(図4(b))の間で回動するようにしても良い。あるいは、図5に示すように、コネクタカバー6を第1の筐体2に着脱自在に取り付けて、コネクタカバー6を第1の筐体2に装着すると、シール材押し出し爪11が半固体シール材14をシール材出入口9から押し出す(図5(b)参照)ようにしても良い。
【0030】
また、上述の実施形態では、携帯機器の一例として携帯電話端末1を示したが、本発明の携帯機器は、携帯電話端末1には限定されない。例えば、電子卓上計算機、電子辞書、携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistant)、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯オーディオ機器、電子カメラ、携帯テレビ受信器、携帯通信機器等、各種の携帯機器に適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1…携帯電話端末,2…第1の筐体,3…第2の筐体,4…ヒンジ軸,5…コネクタカバー装置,6…コネクタカバー,7…レール溝,8…開口,9…シール材出入口,10…レール,11…シール材押し出し爪,12…シール材充填槽,13…挿入口,14…半固体シール材,15…ヒンジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に設けた開口を自在に開閉する蓋装置を備える携帯機器において、
前記蓋装置は、
前記開口を閉蓋する蓋体と、
半固体シール材と、
前記半固体シール材が充填されるシール材充填槽と、
前記筐体の前記蓋体と接する面にあって前記開口を囲繞するとともに、前記シール材充填槽と連通するシール材出入口と、
前記シール材充填槽と連通するとともに、前記蓋体が前記開口を閉蓋するときに、前記蓋体の一部が挿入される挿入口と、を備える
ことを特徴とする携帯機器。
【請求項2】
前記蓋体は、前記筐体に摺動自在に支持されて、
前記蓋体が前記開口を閉蓋するときに、前記蓋体の摺動方向先端が前記挿入口に挿入される
ことを特徴とする請求項1に記載の携帯機器。
【請求項3】
前記開口の内部にコネクタを備える
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の携帯機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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