説明

携帯用緊急標示装置

【課題】 登山(主に山菜取りなど、軽度の登山)における遭難時に木々の上方で標示体が持続的に発光、点滅して上空、遠方から視認しやすくした携帯用緊急標示装置を提供する。
【解決手段】 発光部11と、発光部11の電池部20と、発光部11と電池部20とを結ぶ電線27と、発光部11と電池部20とを分離可能に結合する磁石25とを有し、発光部11と電池部20とに電線27を介して分離する標示体10と、燃焼性物質の燃焼によってガス圧を発生させる火工式点火器から成るイニシエータ31と、標示体10を収容する収容部とを有し、イニシエータ31のガス圧力で標示体10を押し出す発射装置30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、登山(主に山菜取りなど、軽度の登山)において、遭難した場合に、遭難者が遭難信号を発し、自分の位置を示し救助を要求するための携帯型緊急標示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遭難等において、救助を求めるものが種々知られている。
例えば、特許文献1には、海上や山岳地帯等での遭難時に救援を求める際に用いる信号弾(光)とその信号弾発射装置が開示されている。
また、特許文献2には、危急の時に、被災した使用者が自分の位置を示すため、バルーンを浮上させ、救助を要求するための装置、およびこの装置を備える救命胴衣が開示されている。
【0003】
さらに、特許文献3には、遭難等の緊急時に、遠方でも聞こえるような大きな音を連続的、断続的に発し、遠方からでもよく見える赤色等の強い光を連続的、断続的に発光することによって、救助の人達等に自分の居場所を知らせることができる、ペンシル、小形懐中電灯程度の大きさの救難報知具が開示されている。
【特許文献1】特開平11−211400号公報
【特許文献2】特開2002−24950号公報
【特許文献3】特開2001−126151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の信号弾発射装置では、標示が一瞬であり、捜索隊が見つけることが困難である。また、装置を逆さまにすると作動する虞がある。
また、特許文献2の携帯可能な遭難信号装置では、装置が大型で重く、リックに入れることが困難である。また、風船を木の上方に浮かせることが難しいという問題がある。
さらに、特許文献3の救難報知具では、遭難者が携帯しているため、捜索者が見つけることが困難である。特に、木々に囲まれた山中で使用する場合は光を確認し難い。
【0005】
本発明は斯かる従来の問題点を解決するために為されたもので、その目的は、登山(主に山菜取りなど、軽度の登山)における遭難時に木々の上方で標示体が持続的に発光、点滅して上空、遠方から視認しやすくした携帯用緊急標示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る携帯用緊急標示装置は、標示体と、発射装置とで構成されている。
標示体は、発光部と、発光部の電池部と、発光部と電池部とを結ぶ電線と、発光部と電池部とを分離可能に結合する磁石とを有し、発光部と電池部とに電線を介して分離することができる。
発射装置は、燃焼性物質の燃焼によってガス圧を発生させる火工式点火器から成るイニシエータと、標示体を収容する収容部とを有し、イニシエータのガス圧力で標示体を押し出すことができる。
そして、標示体の発光部は、外周にミラーシールを貼着した容器と、容器に取り付けられるLEDライトと、LEDライトの点滅回路と、鉄製円板とを備えている。
【0007】
また、LEDライトは、光度20cd以上の高輝度LEDライトが用いられる。
また、標示体の電池部は、外周をカバーで覆い、電池を収納する電池ボックスを取り付ける容器と、電池ボックスルに取り付けられる磁石とを備えている。
また、電線は、長さ30〜50cmの絶縁電線が用いられる。
【0008】
また、発射装置は、イニシエータを保持する金属管と、イニシエータからの燃焼生成ガスを冷却濾過する成型フィルタと、ガスによる圧力で噴出される標示体を押し出すクッションプレートと、イニシエータ作動用の電源としての電池と、電池を保持するための電池ホルダと、イニシエータと電池を通電させるための作動スイッチと、作動スイッチの不意の操作を防ぐ安全ピンと傾斜スイッチとをさらに有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る携帯用緊急標示装置は、登山(主に山菜取りなど、軽度の登山)において携帯可能であり、遭難した場合に、発射装置を作動して標示体が打ち上げられると、標示体が樹木に引っ掛かり、高い位置で持続的に発光、点滅するので、上空、遠方から視認しやすい。従って、遭難者が自分の位置を示し、救助を要求することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(実施形態)
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づいて説明する。
図1〜図12は、本発明の一実施形態に係る携帯用緊急標示装置1を示す。
本実施形態に係る携帯用緊急標示装置1は、標示体10と、発射装置30とで構成されている。
【0011】
先ず、標示体10は、図1、図3、図5〜図9に示すように、発光部11と、発光部11の電池部20と、発光部11と電池部20とを結ぶ電線27と、発光部11と電池部20とを分離可能に結合する磁石25とを有する。
発光部11は、外周にミラーシール13を貼着した底付きの円筒形状の容器12を有する。容器12の底部14には、4つのLEDライト16を接着剤で固定するための4つの窓孔15が設けられている。4つの窓孔15には、4つのLEDライト16が接着剤で固定されている。4つのLEDライト16は、点滅回路17に半田付けされている。点滅回路17には、鉄製円板18が接着剤で固定されている。ここで、ミラーシール13は、太陽光の反射により標示効果を向上させるために設けられている。また、4つのLEDライト16は、光度20cd〜90cdの高輝度LEDライトが用いられている。さらに、点滅回路17は、例えば、10秒に1回の間隔で点滅を繰り返し、周囲に位置を標示することができるようにしてある。
【0012】
電池部20は、外周にカバー22を貼着した底付きの円筒形状の容器21を有する。容器21内には、電池24を収納する電池ボックス23が接着剤で固定されている。電池ボックス23の背面には、磁石25が接着剤で固定されている。ここで、カバー22は、標示体10を木の枝などに引っ掛かり易くし、落下衝撃を緩和するために設けられている。
電線27は、発光部11の点滅回路17と電池ボックス23とを接続している。電線27は、標示体10が木の枝などに引っ掛かり易くするために、長さ30〜50cmの絶縁電線(より線)が用いられている。
【0013】
このように構成された標示体10は、図9に示すように、電線27を巻きながら電線27を電池部20の磁石25の外周側に収容し、図5に示すように、発光部11の鉄製円板18と電池部20の磁石25とを接合し一体にされている。標示体10は、発射装置30によって押し出され、木の枝などにぶつかると、その衝撃で磁石25と鉄製円板18との結合が維持できなくなり、発光部11と電池部20とに分離し、電線27を介して分離するようになっている。さらに、磁石25と鉄製円板18との結合関係につて説明すると、本実施形態では、2つの容器(発光部11と電池部20)を一体にするために磁石を使用しているため、磁石25の重さ(磁石25のサイズ)が関係する。本実施形態では、磁石25として、φ5mm×h5mmのネオジウム磁石を用いた。この磁石25の吸着力は、0.73kgである。この吸着力が、標示体10を打ち上げたときは、2つの容器(発光部11と電池部20)を一体にすることができるが、枝などにぶつかると分離するのに適している。なお、打ち上げ時に2つの容器(発光部11と電池部20)が一体で、枝などにぶつかったときに、分離する吸着力は0.3kg〜2kgであるが、本実施形態では、標示体10のサイズから磁石25の吸着力を0.73kgとした。
【0014】
次に、発射装置30は、図2に示すように、上部ハウジング30Aと下部ハウジング30Bとをネジ44で螺合することで外形が形成され、内部に、図1〜図4に示すように、燃焼性物質の燃焼によってガス圧を発生させる火工式点火器から成るイニシエータ31と、イニシエータ31を保持する金属管32と、イニシエータ31からの燃焼生成ガスを冷却濾過する成型フィルタ33と、ガスによる圧力で噴出される標示体10を押し出すクッションプレート34と、標示体10を収容する金属管35と、金属管35の開口を封鎖する蓋36と、イニシエータ作動用の電源としての電池37と、電池37を保持するための電池ボックス38と、イニシエータ31と電池37を通電させるために導線31a、37aを介してイニシエータ31と電池37とに接続されている作動スイッチ(傾斜スイッチ)39と、作動スイッチ(傾斜スイッチ)39の不意の操作を防ぐ安全ピン40とが、収容されている。上部ハウジング30Aおよび下部ハウジング30Bは、上記各部品を確実に収容するために、各部品を納め込む領域として凹部や係止壁を形成している。
【0015】
イニシエータ31は、図1に示すように、片方のみ開放された筒状容器から成る有底のガス発生器管体に、ガス発生剤と点火薬カップと点火薬と電橋線付塞栓とを装着している。
ガス発生器管体は、アルミニウム等の軟質金属材料を用いることによって、非火薬組成物であるガス発生剤の反応熱および反応ガス圧力で容易に破壊して標示体10に伝達することができる。このガス発生器管体は、加工性の良い軟質金属材料であれば何でも良いが、例えば銅を用いる電気雷管と全く同一の形状に成るため、アルミニウム(例えば、Al−6016−0等)を用いることにより紛らわしさを除いたものである。なお、このアルミニウム製のガス発生器管体には、内外面にアルマイト処理が施されている。
ガス発生器管体には、ガス発生剤が0.1g〜1.1gの範囲で充填されている。このガス発生剤は、低振動・低騒音破砕薬剤ガンサイザー(日本工機株式会社製商品名)を使用している。これは、火薬類を用いた破砕方法と全く同じ手順で消費許可を必要とせずに岩盤等を破砕する非火薬破砕組成物である。この非火薬破砕組成物は、例えば、特開平11−029389号公報に開示されている。本発明者は、この非火薬破砕組成物を岩盤等を破砕する目的ではなく、このガス圧力を標示体10を飛ばす目的を達成するために、ガス発生剤31fの粒径を揃えることでガス圧力のバラツキを小さくできることを見出した。また、物体を飛ばす性能にあわせてガス発生剤の薬量は変えることが可能である。
【0016】
次に、ガス発生剤について説明する。
ガス発生剤を構成するテルミット剤、ガス発生剤、バインダーおよび鈍化剤の割合は、テルミット剤が酸化第二銅33〜44重量部とアルミニウム9〜17重量部とから成り、ガス発生剤がカリウム明礬又はアンモニウム明礬45〜55重量部から成り、バインダーが塩化ビニル1.2〜1.8重量部から成り、鈍化剤がステアリン酸カルシウム2.4〜2.6重量部とから成る。
本実施形態では、アルミニウム11.5重量部と酸化第二銅38.5重量部とから成るテルミット剤と、カリウム明礬又はアンモニウム明礬50重量部から成るガス発生剤と、予めアセトンに溶かしておいたバインダーとして用いる塩化ビニル粉1.5重量部とを同一容器に入れ、更に適量のアセトンを加えて良く混ぜる。アセトンがほぼ揮発し固まってきたら8メッシュの篩で造粒し、それを乾燥させる。乾燥後、鈍化剤としてステアリン酸カリウムを2.5重量部とアセトン適量を加えゆっくり混和し、先と同様にアセトンが気化し固まったら造粒し、乾燥してガス発生剤を得る。
このガス発生剤は、24タイラーメッシュ通過42タイラーメッシュ止まりの篩分け品を用いる。すなわち、粒径が0.35mm〜0.71mmの範囲に調整されている。
【0017】
ガス発生器管体内には、充填されたガス発生剤と点火薬との混合防止のために隔壁と成る合成樹脂製のカプセル形状の点火薬カップが配置されている。この点火薬カップは、金属、非金属を問わないが、金属材料では良電性であるために、電気的発火信号が電橋線には流れず放電エネルギーに費やされて、点火薬が不着火となる虞があることから絶縁処理(例えば、アルマイト処理等)する必要がある。
点火薬カップは、肉厚0.1μm以下の薄膜で形成したカプセルを半切した形状のものを使用し、点火薬カップに挿入される。点火薬カップおよび点火薬ホルダーには、非火薬組成物で構成する点火薬と電橋線付塞栓の電橋線(例えば、白金−イリジュウム線)とが配置されている。点火薬として、ボロン/酸化第二銅=10〜20重量%/80〜90重量%を用いた。
成型フィルタ33は、金網を圧縮成型した成型体が使用される。成型フィルタ33は、ガス発生剤の燃焼残渣を冷却、濾過し、火炎が噴出しないように最適な成型密度を有する必要があり、3.8〜4.0g/cm3に設定される。また、効率良く燃焼残渣を濾過するため、金網は線径が細い物が適しており、直径0.2mmを使用する。
【0018】
また、金属管32は、内部にイニシエータ31を収容、固定し、ハウジング30A,30Bが発火衝撃で破損するのを防ぐ。金属管35は、発射装置30に標示体10を収容し、発射口を形成する。クッションプレート34は、金属管35内に収容され、標示体10の代わりにガス圧を受け、推進力を標示体10に伝える。電池37は、電池ボックス38に収容され、イニシエータ31を発火させる電源である。作動スイッチ(傾斜スイッチ)39は、イニシエータ31と電池37の通電を開閉する。また、安全ピン40が取り付けてあり、安全ピン40を抜かないと物理的に作動スイッチ(傾斜スイッチ)39を押すことができない。傾斜スイッチは、作動スイッチ(傾斜スイッチ)39とイニシエータ31の間に接続し、発射装置30を鉛直方向に対して20度の範囲に向けないと回路がONにならないように設定されている。
【0019】
次に、本実施形態に係る携帯用緊急標示装置1の作用を説明する。
本実施形態に係る携帯用緊急標示装置1を携帯する登山者が、例えば、図10(A)に示すように、樹林中で遭難した場合、遭難者は、発射装置30の安全ピン40を外し、作動スイッチ39(傾斜スイッチ)をON操作にすると、電池37のBAT(+)とEXP(+)とがショートし、イニシエータ31のEXP(+)とEXP(−)と間に接続した素子に通電が起こり、ガス発生剤が燃焼し、ガス発生剤の燃焼に伴うガス圧力が高まり、図11に示すように、発生ガスが成型フィルタ33にて冷却濾過されクッションプレート34を介して標示体10を金属管35の発射口から蓋36とともに噴出する。
【0020】
標示体10は、図10(B)に示すように、上空に打ち上がり、重力により木の上に落下する。
この際、図12(a)に示すように、木の枝50に標示体10が当たると、発光部11と電池部20とを結合している磁石25の磁力では両者の結合を維持できなくなり、図12(b)に示すように、発光部11と電池部20とが分離し、図12(c)に示すように、それぞれが重力により地上に向かって落下し、両者を結ぶ電線27が木の枝50に引っ掛かり、発光部11と電池部20とが木の枝50に吊り下げられた状態で保持される。
そのため、図10(C)に示すように、4つのLEDライト16が、光度20cd〜90cdの高輝度で発光し、点滅し、捜索者がヘリコプターなどによって上空から捜索する場合には、遠くからでも視認することが可能となる。
【0021】
図13は、発射装置30の変形例を示す。
本例では、電池ボックス38と、作動スイッチ(傾斜スイッチ)39とをイニシエータ31と直列に並べた点で、図1〜図12に示す携帯用緊急標示装置1とは相違する。
本例も、上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0022】
図14〜図16は、標示体10の変形例を示す。
本例では、LEDライト16を電池部20方向に2つ追加した点で、図1〜図12に示す携帯用緊急標示装置1とは相違する。
本例では、電池部20方向にも発光するように2つのLEDライト16を追加したので、例えば、図10(C)のように木の枝に引っ掛かった場合、LEDライト16の発光、点滅を視認する範囲が広くなり、捜索者への視認性が向上する。
また、本例も、上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0023】
(実験例)
次に、本実施形態携帯用緊急標示装置1における標示体10について、さらに説明する。
(A)標示体重量に応じたイニシエータ薬量の設定について
標示体重量に応じたイニシエータの薬量の設定を以下のように行った。
(1)標示体の条件
(1) 打ち上げ高さの設定
一般的な樹木の高さ
アカマツ30〜35m、クスノキ20〜35m、ヒノキ20〜30m、クロマツ3 0〜35m、スギ20〜30m、モミ20〜30m
(社団法人全国森林レクリエーション協会HP「街の近くで見かける樹木50」よ り抜粋)
したがって、標示体10の打ち上げ高さは、最低でも樹木の高さを十分に超える、 40m以上は必要である。
また、標示体10を打ち上げ過ぎると、打ち上げた位置から大きくずれてしまう可 能性があるため打ち上げ高さを60m程度までに制限する。
以上より、標示体の打ち上げ高さを40〜60mと設定した。
【0024】
(2) 設定した打ち上げ高さを実現するための速度
一般に、鉛直上向きに初速v0で投げ上げた物体が到達する高さは以下の式で求めら れる。
H=vo2/2g
標示体を40〜60m打ち上げるために必要な初速は28〜35m/sになる。
(3) 標示体重量
携帯型緊急標示装置は携帯可能な大きさであり、そこから発射される標示体も大き さに制限がある。
発射装置30の大きさ、標示体10の部品構成から、標示体10の重量は最低でも 40g、最大でも100gとする。
【0025】
(2)実験
(1) 標示体初速測定
標示体重量を56gと仮定し、初速測定(m/s)を行った。
その結果を、表1に示す。
【0026】
【表1】

表1において、フィルタ密度は3.8〜4.0g/cm3の範囲になるように成型し た。
【0027】
(2) イニシエータガス発生剤薬量と10ccタンク圧力の関係
図17は、イニシエータガス発生剤薬量と10ccタンク圧力の関係を示すグラフ である。
(3) 圧力と運動エネルギーの関係
(1)と(2)の結果からイニシエータの圧力と標示体の運動エネルギーの関係を求めた。
その結果を図18に示す。
(4) 標示体重量と薬量の関係
1.(3)で求めた運動エネルギーを初速31m/sの二乗と2で除すと、任意の圧力 における標示体重量が分かる。
初速31m/sは標示体の打ち上げ高さである40〜60mの中間の50mまで打 ち上げるための初速である。
初速を31m/sにすることで、打ち上げ高さの範囲内に標示体を打ち上げること ができる。
2.1項で求めた圧力から(2)を参考に薬量を求め、標示体重量と薬量の関係を求め た。その結果を図19に示す。
(1)(2)より、以下の表2のように標示体重量に合わせた薬量を設定できる。
【0028】
【表2】

【0029】
(3)実施例
(2)で求めた、標示体重量と薬量の関係を利用して実際に試験した。
標示体重量が60gでフィルタ重量が3.0gのときの薬量は0.25gである。
参考までに、標示体重量、フィルタ重量は同じで、薬量が0.2g、0.3gの場合 の試験も行った。
その結果を表3に示す。
【0030】
【表3】

【0031】
・薬量0.25gでは、打ち上げ高さ40〜60mの範囲であった。
・薬量0.2gでは、打ち上げ高さ40mを超えることはできなかった。
・薬量0.3gでは、打ち上げ高さ60mを超えてしまうことがあった。
【0032】
(B)標示体10の電線27の設定について
標示体10が樹木に引っ掛かるための最適な電線27を検討する。
標示体10が樹木に引っ掛かる原理を、図20に示す。
試験方法
1.図21に示すように、枝を模擬した、φ20程度の丸棒を固定したフレームを準 備する。
2.1番上(1段目)の丸棒の1m上から図22の試験品を落下させる。
絶縁電線は、より線とし、柔軟性のあるより線であれば、引っ掛かる機能に線径 は影響しないため、本試験においては、線径0.9mmを基準に、線径1.2mm を加え試験する。
3.落下した試験品が丸棒に引っ掛かるか試験する。
結果を表4に示す。
【0033】
【表4】

【0034】
表中、1は、1段目に引っ掛かる
2は、2段目に引っ掛かる
3は、3段目に引っ掛かる
4は、4段目に引っ掛かる
×は、引っ掛からない
電線は、絶縁電線
【0035】
電線の長さを30cm以上にすると、引っ掛かり率が100%であった。
以上より、最適な電線の長さは、30〜50cmであることが分かった。
なお、汎用の絶縁電線の最小線径は0.5mmである。この線径であっても、引っ掛かり性は最適な電線長さであれば同等と推定できる。
【0036】
(C)LEDライト16視認性について
視認性の良いLEDライトの条件を検証する。
試験方法
図23のように、距離150m、高さ180cmの位置にLEDライトを試験者に向 けて設置する。
ここで、距離150mは、航空法の最低安全高度を参考に設定した。
試験者は視力0.7〜1.2以内の5人を選び、天気が晴れとくもりの日中にそれぞ れ試験した。ここで、視力0.7以上は第1種普通自動車の免許取得に必要な視力であ る。
1回目で確認できれば1、2回目は2、3回目は3、確認できなければ×と記録した。
晴れとくもりで、5人中5人全員が3回以内に確認できた項目はハッチングした。
その結果表5に示す。
【0037】
【表5】

【0038】
表中、LEDライト仕様
(1)φ3mm白色LED(光度:11cd、指向角度:25°)
(2)φ5mm白色LED(光度:20cd、指向角度:80°)
(3)φ5mm白色LED(光度:25cd、指向角度:20°)
(4)φ10mm白色LED(光度:90cd、指向角度9°)
(5)φ5mm赤色LED(光度:14cd、指向角度:15°)
(6)φ5mm赤色LED(光度:20cd、指向角度:20°)
(7)φ10mm赤色LED(光度:30cd、指向角度:25°)
(8)φ5mm黄色LED(光度:20cd、指向角度:20°)
(9)φ5mm青色LED(光度:9cd、指向角度:20°)
この結果を1回目で確認できれば3点、2回目で2点、3回目で1点、確認できなければ0点とし、点数化すると表6のようになる。
この結果と同様に、視認率100%の水準は、ハッチングした。
【0039】
【表6】

【0040】
装置の性質上、視認率は100%が最適であり、それを満たす仕様は(4)(6)(7)ある。
したがって、LEDライトの光度の最低要件は、20cd以上となる。
なお、LEDライトの色については、入手性も考慮すると、赤が最適であり、次いで白、黄、青の順となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態に係る携帯用緊急標示装置の上部ハウジングを取り除き、標示体とイグナイタが見えるようにした一部切り欠き平面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る携帯用緊急標示装置の分解図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る携帯用緊急標示装置の上部ハウジングを取り除いた斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る携帯用緊急標示装置の斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る携帯用緊急標示装置に用いる標示体の断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る携帯用緊急標示装置に用いる標示体の分解図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る携帯用緊急標示装置に用いる標示体を発光部と電池部とに分離して示す断面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る携帯用緊急標示装置に用いる標示体を発光部と電池部とに分離して示す斜視図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る携帯用緊急標示装置に用いる標示体を発光部と電池部とに結合する前の状態を示す斜視図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る携帯用緊急標示装置の使用例を示す説明図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る携帯用緊急標示装置を作動した状態を示す斜視図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る携帯用緊急標示装置から発射された標示体が木の枝にぶつかって発光部と電池部とに分離し木の枝に引っ掛かる状態を示す説明図である。
【図13】本発明の一実施形態に係る携帯用緊急標示装置の変形例を上部ハウジングを取り除いて示す斜視図である。
【図14】本発明の一実施形態に係る携帯用緊急標示装置の標示体の変形例を示す断面図である。
【図15】本発明の一実施形態に係る携帯用緊急標示装置の標示体の変形例を発光部と電池部とに分離して示す断面図である。
【図16】本発明の一実施形態に係る携帯用緊急標示装置の標示体の変形例を発光部と電池部とに分離して示す斜視図である。
【図17】イニシエータガス発生剤薬量と10ccタンク圧力の関係を示すグラフで ある。
【図18】イニシエータの圧力と標示体の運動エネルギーの関係を求めたグラフである。
【図19】標示体重量と薬量の関係を求めたグラフである。
【図20】標示体10が樹木に引っ掛かる原理を示す説明図である。
【図21】標示体10が樹木に引っ掛かる試験装置を示す説明図である。
【図22】標示体10が樹木に引っ掛かる試験装置に用いられる試験品を示す説明図である。
【図23】視認性の良いLEDライトの条件を検証する試験方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0042】
1 携帯用緊急標示装置
10 標示体
11 発光部
12 容器
13 ミラーシール
14 底部
15 窓孔
16 LEDライト
17 点滅回路
18 鉄製円板
20 電池部
21 容器
22 カバー
23、38 電池ボックス
24、37 電池
25 磁石
27 電線
30 発射装置
30A 上部ハウジング
30B 下部ハウジング
31 イニシエータ
32、35 金属管
33 成型フィルタ
34 クッションプレート
36 蓋
39 作動スイッチ(傾斜スイッチ)
40 安全ピン
44 ネジ
50 木の枝


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部と、前記発光部の電池部と、前記発光部と前記電池部とを結ぶ電線と、前記発光部と前記電池部とを分離可能に結合する磁石とを有し、前記発光部と前記電池部とに電線を介して分離する標示体と、
燃焼性物質の燃焼によってガス圧を発生させる火工式点火器から成るイニシエータと、前記標示体を収容する収容部とを有し、前記イニシエータのガス圧力で前記標示体を押し出す発射装置と
を備えることを特徴とする携帯用緊急標示装置。
【請求項2】
請求項1記載の携帯用緊急標示装置において、
前記標示体の発光部は、
外周にミラーシールを貼着した容器と、前記容器に取り付けられるLEDライトと、前記LEDライトの点滅回路と、鉄製円板とを備える
ことを特徴とする携帯用緊急標示装置。
【請求項3】
請求項2記載の携帯用緊急標示装置において、
前記LEDライトは、光度20cd以上の高輝度LEDライトである
ことを特徴とする携帯用緊急標示装置。
【請求項4】
請求項1記載の携帯用緊急標示装置において、
前記標示体の電池部は、
外周をカバーで覆い、電池を収納する電池ボックスを取り付ける容器と、前記電池ボックスルに取り付けられる磁石とを備える
ことを特徴とする携帯用緊急標示装置。
【請求項5】
請求項1記載の携帯用緊急標示装置において、
前記電線は、長さ30〜50cmの絶縁電線である
ことを特徴とする携帯用緊急標示装置。
【請求項6】
請求項1記載の携帯用緊急標示装置において、
前記発射装置は、前記イニシエータを保持する金属管と、前記イニシエータからの燃焼生成ガスを冷却濾過する成型フィルタと、ガスによる圧力で噴出される前記標示体を押し出すクッションプレートと、前記イニシエータ作動用の電源としての電池と、前記電池を保持するための電池ホルダと、前記イニシエータと前記電池を通電させるための作動スイッチと、前記作動スイッチの不意の操作を防ぐ安全ピンと傾斜スイッチとをさらに有する
ことを特徴とする携帯用緊急標示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図10】
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【図12】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−283143(P2009−283143A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−130913(P2008−130913)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(390037224)日本工機株式会社 (43)
【Fターム(参考)】