説明

携帯端末装置およびその製造方法

【課題】アンテナの取付け部分を止水領域の外側にし、アンテナの取付けや交換を容易化する。
【解決手段】筐体(4)の止水領域(5)の外側に設置されるアンテナ(8)を備える。筐体(4)の止水領域(5)の外側にはアンテナ取付け部(12)を備えた給電部材(10)が設置され、前記止水領域(5)の外側から止水領域(5)の内側に貫通させている。したがって、止水領域(5)の外側にあるアンテナ取付け部(12)でアンテナ(8)の取付け、交換が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TV受信用アンテナなどのアンテナを備える携帯端末装置のアンテナの取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機などの携帯端末装置にはTV受信用アンテナが備えられ、また、そのケースには止水構造を備えて、ケース内防水が図られている。このような携帯端末装置に設置されるアンテナは、ケース外にエレメントを備え、このエレメントをケース内の高周波回路部に接続している。
【0003】
このようなアンテナに関し、アンテナユニットを着脱可能にした構造が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−202071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、アンテナユニットを着脱可能にしたアンテナであっても、アンテナの損傷や、組立て工程で不良を発見した場合にはアンテナ自体の交換が必要である。
【0006】
また、従来の携帯端末装置について、図20を参照する。携帯端末装置200の筐体202にはアンテナ204が設置されている。筐体202は2つのケース206、208(図21)を合体して構成される。アンテナ204は棒状のエレメント210を備えており、このエレメント210がケース208の側部のアンテナ収納部212に収納されている。
【0007】
このアンテナ204のアンテナ給電部214について、図21を参照する。アンテナ給電部214にはケース208を貫通する固定ねじ216が設けられ、この固定ねじ216はケース208の内側に設けたねじ部218に固定されている。固定ねじ216の傘部とケース208との間にはアンテナ204の固定部220およびOリング222が挟み込まれて固定されている。ケース208とねじ部218との間にはアンテナ接点224が挟み込まれ、このアンテナ接点224に給電部材226が接している。この給電部材226には、接点228によって無線部230が接続されている。固定ねじ216とケース208との間にはOリング222が設置され、このOリング222でケース208を止水している。アンテナ204のエレメント210がヒンジ部232を介して固定部220に固定されている。
【0008】
このような携帯電話機200では、アンテナ204を固定している固定ねじ216がケース206に隠蔽されているので、アンテナ204を外すには、ケース206、208を分解する必要がある。アンテナ204を外した際、固定ねじ216とともにOリング222がケース208から離脱することになる。
【0009】
このようなアンテナ204の取付け構造では、組立工程で部品不良や、フィールド返却品などの故障修理のため、アンテナ交換の際に、ケース206、208の分解を伴い、アンテナの組立てや修理には多くの工数が必要となる。固定ねじ216とともにOリング222が外れるため、筐体202内の止水機能を低下させるおそれがある。このため、アンテナ単体の交換であっても工場内で行わなければならならず、修理時間が長くなり、修理コストもかかる。
【0010】
そこで、本開示の携帯端末装置およびその製造方法の目的は、上記課題に鑑み、アンテナの取付け部分を止水領域の外側にし、アンテナの取付けや交換を容易化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本開示の携帯端末装置およびその製造方法は、筐体の止水領域の外側にアンテナ取付け部を備える給電部材を止水領域の外側から止水領域の内側に貫通させている。したがって、止水領域の外側にあるアンテナ取付け部でアンテナの取付け、交換を可能にしたものである。
【発明の効果】
【0012】
本開示の携帯端末装置または携帯端末装置の製造方法によれば、次のいずれかの効果が得られる。
【0013】
(1) 筐体の止水領域の外部でアンテナの取付けまたは交換を行うことができ、アンテナの取付けや交換を容易化できる。部品不良などでアンテナ交換が必要な際にケースを分解することなく行え、修理工数を削減でき、店頭での交換が可能になる。
【0014】
(2) 携帯端末装置の保守の容易化とともに、アンテナ交換の迅速化を図ることができ、店頭での簡易交換を行うことができる。
【0015】
そして、本発明の他の目的、特徴及び利点は、添付図面及び各実施の形態を参照することにより、一層明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施の形態に係る携帯電話機の一例を示す図である。
【図2】第2の実施の形態に係る携帯電話機の一例を示す図である。
【図3】ケースおよびアンテナの取付け構造の分解斜視図である。
【図4】ケースおよびアンテナの取付け構造を示す分解斜視図である。
【図5】アンテナを示す斜視図である。
【図6】給電部材を示す斜視図である。
【図7】接点部材を示す斜視図である。
【図8】ケース側の給電部材と接点部材との係合関係を示す斜視図である。
【図9】給電部材と接点部材の係合状態を示す斜視図である。
【図10】カバーを示す斜視図である。
【図11】アンテナ側から見た携帯電話機を示す斜視図である。
【図12】図11のXII −XII 線で切断したアンテナ給電部を示す断面図である。
【図13】アンテナの取付け工程を示すフローチャートである。
【図14】給電部材の装着前後を示す断面図である。
【図15】アンテナの取付け前後を示す断面図である。
【図16】アンテナの交換工程を示すフローチャートである。
【図17】第3の実施の形態に係る給電部材の一例を示す分解斜視図である。
【図18】第4の実施の形態に係るアンテナ給電部の止水構造の一例を示す図である。
【図19】アンテナ給電部の止水構造の変形例を示す図である。
【図20】アンテナ側から見た従来の携帯端末装置を示した斜視図である。
【図21】従来のアンテナ給電部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第1の実施の形態〕
【0018】
第1の実施の形態について図1を参照する。図1は携帯電話機およびアンテナ給電部の一例を示している。図1に示す構成は一例であって、斯かる構成に本発明が限定されるものではない。
【0019】
図1の(A)に示す携帯電話機2は本開示の携帯端末装置およびその製造方法の一例である。この携帯電話機2の筐体4には止水領域5が設定されている。止水領域5は、水や塵埃の侵入を遮断するため、筐体4内に周回する止水部材7によって設定されたいわゆる防水領域である。止水部材7はエラストマーなどの止水材料で構成される。
【0020】
この筐体4には止水領域5に跨がってアンテナ給電部6が設置されている。アンテナ8はたとえば、TV受信用アンテナであれば、アンテナ8の受信信号がアンテナ給電部6により筐体4内に導かれる。このアンテナ給電部6には給電部材10が設置され、この給電部材10は止水領域5の外側から内側に貫通している。この給電部材10には止水領域5の外側にアンテナ取付け部12が備えられ、このアンテナ取付け部12にはアンテナ8が取外し可能に取り付けられている。
【0021】
給電部材10には止水領域5内にある接点部材14を介して高周波回路部15が接続されている。つまり、アンテナ8は止水領域5の外部で給電部材10と接続され、この給電部材10を介して止水領域5内の高周波回路部15と接続されている。高周波回路部15は、受信回路や無線部の一例である。
【0022】
斯かる構成によれば、図1の(B)に示すように、アンテナ8を筐体4の止水領域5の外部で取外しまたは取付けを行うことができる。アンテナ8の交換やリペアは、筐体4の止水領域5を外気に触れさせることなく行うことができる。つまり、筐体4を分解する必要がなく、携帯電話機2を専門工場に持ち込むことなく、アンテナ8の交換や修理を店頭などで簡易に行うことができる。
【0023】
〔第2の実施の形態〕
【0024】
第2の実施の形態について図2を参照する。図2は携帯電話機の一例を示している。図2に示す構成は一例であって、斯かる構成に限定されるものではない。図2において、図1と同一部分には同一符号を付してある。
【0025】
この携帯電話機2には第1の筐体3に第2の筐体として既述の筐体4を備え、筐体3、4の間には摺動機構および回転機構が備えられている。筐体4をたとえば、固定側筐体とすれば、図2に示すように、筐体3は既述の摺動機構により長手方向(縦方向)に摺動し、既述の回転機構により横方向に回転させることができる。筐体3の上面には情報表示部を兼用するタッチパネル9が搭載されている。
【0026】
筐体4には第1のケース16と、第2のケース18とが備えられている。ケース16は筐体3側と接する側に設置され、このケース16の上面部にはキーボードなどが備えられている。これらケース16、18は共に絶縁性合成樹脂の成形体であり、ケース16、18の合体により筐体4が構成されている。
【0027】
この筐体4の側面には既述のアンテナ8が設置されている。このアンテナ8には一例として棒状のエレメント19が備えられ、このエレメント19は伸縮可能であり、図中のエレメント19は最も短縮された状態である。このエレメント19はヒンジ部20を中心に、破線で示すように180度方向に回動させることができる。エレメント19を円弧回動させれば、電波の受信強度に応じて方向を変更でき、また、伸縮させて受信周波数(波長)に応じた電気長に変更できる。
【0028】
このアンテナ8の取付け構造について、図3を参照する。図3はケース18およびアンテナ8の取付け構造を分解して示している。図3において、図1または図2と同一部分には同一符号を付してある。
【0029】
ケース18の側面部には、給電部材10およびアンテナ8の固定部21が収納される収納室22が形成され、この収納室22に隣接してエレメント収納部24が形成されている。この収納室22は止水領域5(図1)の外側に形成されている。収納室22はたとえば、絶縁性合成樹脂によるケース18の成形加工により形成されている。エレメント収納部24は、短縮状態にあるアンテナ8のエレメント19を収納するポケット(凹部)である。
【0030】
給電部材10は導電性の良い導体材料で形成され、平板状のベース部26を備えている。ベース部26はたとえば、台形状であり、収納室22内に位置決めされて設置される。収納室22には貫通孔28、位置決め部30および溝部32を備えている。貫通孔28は、収納室22内でケース18の内外、つまり止水領域5の外側からその内側に貫通している。位置決め部30はケース18の底面と平行面を持つ立壁であり、カバー44の縁部(凸部48:図10)が当てられ、給電部材10が収納室22内で位置決めされる。溝部32はアンテナ8にある支持片34が挿入される。
【0031】
このベース部26には前面側にアンテナ取付け部12が備えられ、背面側に連結ピン38が備えられている。アンテナ取付け部12にはねじ孔40が備えられ、アンテナ8の固定部21が固定ねじ42によって固定される。連結ピン38は接点部材14(図1)と連結する連結部材の一例である。
【0032】
収納室22の貫通孔28には給電部材10の連結ピン38が挿入される。つまり、給電部材10のベース部26およびアンテナ取付け部12は収納室22に収納され、止水領域5の外側に設置され、連結ピン38は止水領域5(図4)の外側から内側に貫通する。
【0033】
収納室22には取外し可能にカバー44が取り付けられる。このカバー44は、収納室22の開口形状と共通した平面形状のカバー本体46を備える。このカバー本体46はたとえば、五角形状であり、このカバー本体46の側面部には凸部48および保持部50が形成されている。凸部48および保持部50は収納室22に挿入されて係合し、これによりカバー44が収納室22に取り付けられる。保持部50にはケース18側の既述のエレメント収納部24と共通する係合凹部52が形成されている。エレメント収納部24および係合凹部52はエレメント19の外周形状に対応した湾曲面部である。係合凹部52は、エレメント収納部24に収納されたエレメント19に当たり、このエレメント19によってカバー44の脱落を防止できる。
【0034】
このアンテナ8の取付け構造について、図4を参照する。図4はケース18およびアンテナ8の取付け構造を分解して示している。図4において、図2または3と同一部分には同一符号を付してある。
【0035】
ケース18には周回状の止水部材7が設置され、この止水部材7がケース16、18の接合部分に介在し、既述の止水領域5が筐体4内に形成される。
【0036】
ケース18の内部には既述の収納室22を包摂するブロック部56が形成され、このブロック部56は止水領域5内に設置されている。このブロック部56の側部には接点部材14を固定する凸部60および固定凹部62が形成されている。凸部60には既述の貫通孔28の終端が開口され、貫通孔28には給電部材10の連結ピン38を貫通させる。貫通孔28から突出させた連結ピン38には接点部材14を係合させて固定し、これにより給電部材10が収納室22に固定される。つまり、給電部材10のベース部26と接点部材14の嵌合部64との間にケース18を挟み込み、接点部材14と連結ピン38との連結状態で、給電部材10および接点部材14がケース18に固定される。
【0037】
このように連結ピン38は、ケース18の止水領域5の外側から止水領域5の内側に貫通される。そして、連結ピン38の中途部には止水手段の一例であるOリング66が取り付けられる。このOリング66は、止水領域5の外側にある収納室22と止水領域5とを止水分離する。つまり、止水部材7を跨がる給電部材10において、貫通孔28の中間部分にあるOリング66により止水領域5が形成される。
【0038】
次に、アンテナ8について図5を参照する。図5の(A)は支持部側から見たアンテナ8を示している。また、図5の(B)は固定部側から見たアンテナ8を示している。
【0039】
このアンテナ8には図5の(A)および(B)に示すように、エレメント19と、ヒンジ部20と、固定部21と、支持部34を備えている。エレメント19は伸縮自在であり、このエレメント19の基端部側にはヒンジ部20を介して固定部21および支持部34が固定されている。固定部21および支持部34は単一の金属板の成形体であり、固定部21はヒンジ部20の支持軸68と平行な固定面を備えている。この固定部21と屈曲させて支持部34が形成されている。この固定部21には既述の固定ねじ42を挿通させる挿通孔70が形成されている。支持部34には既述のヒンジ部20が設けられているとともに、固定部21と直交する面部を持つ支持片69が形成されている。この支持片69が収納室22の溝部32に挿入されて支持される。
【0040】
次に、給電部材10について図6を参照する。図6の(A)は、アンテナ取付け部側から見た給電部材10を示している。図6の(B)は、連結ピン側から見た給電部材10を示している。
【0041】
この給電部材10には、図6の(A)および(B)に示すように、平板状のベース部26の外面にアンテナ取付け部12を備えるとともに、内面側に連結ピン38が備えられている。アンテナ取付け部12の中心と連結ピン38の中心は平行であるとともに、ベース部26の面方向に変位している。
【0042】
アンテナ取付け部12は、連結ピン38より径大であり、その中心には固定ねじ42を固定するための既述のねじ孔40が形成されている。
【0043】
連結ピン38は、径大部74と、径小部76と、フランジ部78とを備えている。径大部74は、ベース部26側に配置され、既述の貫通孔28の内径に密着する外径である。径小部76は径大部74に対して垂直な段部77を設けて形成され、既述のOリング66の取付け部である。フランジ部78は径小部76より径大であり、径大部74より径小である。このフランジ部78は、径小部76の先端をたとえば、加締め加工によって形成されている。加締め加工に代え、削りだしで形成してもよい。Oリング66は、止水材料としてたとえば、止水性の高いゴムを用いて形成された弾性環である。
【0044】
この給電部材10の連結ピン38について、径大部74および径小部76の軸長をL1 、貫通孔28の孔長をL2 、接点部材14の肉厚をWとすると、L1 ≧L2 +Wに設定されている。つまり、フランジ部78を除く軸長L1 は貫通孔28の孔長L2 に接点部材14の肉厚Wを加算した値と同等かまたは僅かに長い値に設定されている。斯かる構成とすれば、接点部材14を容易に連結ピン38に係合させ、接点部材14を固定することができる。
【0045】
次に、接点部材14について図7を参照する。図7は接点部材14を示している。
【0046】
この接点部材14はたとえば、導電性の良い金属板を成形したものであり、この実施の形態では、箱状に成形された嵌合部64と、平板状の接点部80とを一体に備えている。嵌合部64は、連結ピン38に係合させる側壁部81と、既述の凸部60の頂部に被せる天井部83と、凸部60の壁面に設置する側壁部85を備えている。側壁部81には、連結ピン38と係合させるU字形の切欠部82が形成されている。接点部80はケース18の固定凹部62に設置されて保持される。
【0047】
次に、この接点部材14と給電部材10との係合関係および係合状態について、図8および図9を参照する。図8は給電部材10に対する接点部材14の嵌合前の状態を示している。図9は給電部材10に対する接点部材14の嵌合後の状態を示している。
【0048】
図8に示すように、収納室22に収納された給電部材10の連結ピン38を凸部60から突出させる。この状態を維持しながら、接点部材14の嵌合部64を凸部60に合わせ、切欠部82に連結ピン38の径小部76を挿入させる。これにより、接点部材14は図9に示すように、凸部60に被せられた状態で、連結ピン38に係合する。このとき、接点部材14の接点部80はケース18の固定凹部62内に位置決めされて設置される。
【0049】
次に、カバー44について図10を参照する。図10の(A)および(B)は、カバーの前面側および背面側を示している。
【0050】
このカバー44は収納室22の蓋部の一例であり、図10の(A)に示すように、収納室22に固定される凸部48および保持部50をカバー本体46に備えている。この保持部50は図10の(B)に示すように、背面側に突出しており、収納室22の内部に収納される。カバー44の縁部には、収納室22の縁部に当接させるストッパ部84が形成され、このストッパ部84により、カバー44が収納室22の閉塞位置に位置決めされて保持される。
【0051】
カバー本体46の背面には円形の凹部86が形成され、この凹部86には固定ねじ42の頭部が挿入される。保持部50の保持面部88には接着部材90が接着され、この接着部材90が収納室22の内壁面に接着される。これにより、カバー44が収納室22に強固に保持される。
【0052】
次に、アンテナ8の収納状態について図11を参照する。図11はアンテナ給電部の組立て状態を示している。
【0053】
図11に示すように、ケース18の収納室22には、既述の給電部材10およびアンテナ8の固定部21を収納し、カバー44が取り付けられている。アンテナ8のヒンジ部20およびエレメント19がケース18の外側に設置され、ケース18にあるエレメント収納部24に収納されている。
【0054】
アンテナ8のエレメント19はヒンジ部20の支持軸68を中心に回動させることにより、エレメント収納部24から引き出し、伸縮させることができる。
【0055】
次に、アンテナ給電部について、図12を参照する。図12はアンテナ給電部の断面を示している。
【0056】
アンテナ給電部6は図12に示すように、給電部材10および接点部材14を備えている。収納室22に設置された給電部材10の連結ピン38は、ケース18の貫通孔28に挿入され、止水領域5の外側から内側に貫通している。貫通孔28の収納室22側の開口にはテーパ部92が形成されており、このテーパ部92により連結ピン38を容易に挿入することができる。
【0057】
連結ピン38の中間部にはOリング66が取り付けられ、このOリング66が貫通孔28の中間で内壁に接している。つまり、Oリング66は貫通孔28の内壁と連結ピン38との間に圧縮状態で保持されている。したがって、貫通孔28では、Oリング66を境界にして止水領域5が設定され、貫通孔28は収納室22側の止水領域5の外側に開口される一方、凸部60から止水領域5内に開口されている。Oリング66は連結ピン38の中間部にある段部77に当接して連結ピン38上に支持され、貫通孔28を止水している。
【0058】
ケース18内に突出した連結ピン38の径小部76には接点部材14の嵌合部64が嵌合されている。これにより、給電部材10と接点部材14との電気的な接続が図られている。また、給電部材10のベース部26と接点部材14とは、両者間にケース18を挟み込んでケース18に固定されている。
【0059】
収納室22を閉じるカバー44は収納室22に固定されているとともに、ケース18のエレメント収納部24に収納されたエレメント19とケース18との間に挟み込まれている。
【0060】
次に、アンテナ8の取付け手順について図13、図14および図15を参照する。図13はアンテナの取付け手順を示している。図14は給電部材10の装着前後を示している。図15はアンテナの固定前後を示している。図14および図15において、図1ないし図12と同一部分には同一符号を付してある。
【0061】
この取付け手順は本開示の携帯端末装置の製造方法の一例である。図13に示す取付け手順では、ケース18に形成されている収納室22に給電部材10を設置する(ステップS11)。この設置工程では、図14の(A)に示すように、給電部材10を収納室22に合わせ、図14の(B)に示すように、収納室22に給電部材10のベース部26を嵌め込み、ベース部26にある連結ピン38を収納室22内の貫通孔28に貫通させる。
【0062】
収納室22内に給電部材10が設置され、ケース18内に突出した連結ピン38に接点部材14を嵌合する(ステップS12)。図15の(A)に示すように、連結ピン38の径小部76に接点部材14の切欠部82を合わせ、図8および図15の(B)に示すように、切欠部82内に径小部76を挿入させ、連結ピン38に接点部材14を嵌合させる。
【0063】
この工程により、貫通孔28内にOリング66とともに連結ピン38が設置されるので、これによりアンテナ給電部6に止水領域5が形成される。
【0064】
収納室22内に設置された給電部材10のアンテナ取付け部12にアンテナ8の組込みを行う(ステップS13)。このアンテナ組込み工程では、アンテナ8の固定部21にある支持部34を収納室22の溝部32に挿入し、ケース18にアンテナ8を保持させるとともに、固定部21の挿通孔70をアンテナ取付け部12のねじ孔40に合致させる。
【0065】
アンテナ取付け部12に固定ねじ42によってアンテナ8の固定部21を固定する(ステップS14)。この固定工程では、固定部20にある挿通孔70から固定ねじ42をアンテナ取付け部12に締め付ける。
【0066】
そして、収納室22にカバー44を取り付ける(ステップS15)。カバー44は保持部50をアンテナ8のエレメント19の背後に潜らせ、エレメント収納部24とカバー44の保持部50の係合凹部52とを合致させ、収納室22に固定する。これにより、図11に示すように、収納室22がカバー44によって閉塞され、アンテナ給電部6の給電部材10およびアンテナ8の固定部21が収納室22およびカバー44の閉塞空間内に隠蔽される。
【0067】
このアンテナ8の交換手順について図16を参照する。図16はアンテナ交換手順の一例を示している。
【0068】
このアンテナ交換手順は、本開示の携帯端末装置の製造方法の一例である。図16に示すアンテナ交換手順では、携帯電話機2からカバー44の取外しを行う(ステップS21)。カバー44を取り外すと、収納室22は固定ねじ42が露出するので、固定部21を固定している固定ねじ42を緩め、アンテナ8を取り外す(ステップS22)。
【0069】
収納室22にある給電部材10のアンテナ取付け部12に交換するアンテナ8を取り付ける(ステップS23)。このアンテナ8の取付けでは、図15の(A)に示すように、給電部材10のアンテナ取付け部12にアンテナ8の固定部21を合わせ、図15の(B)に示すように、固定ねじ42により固定する。
【0070】
アンテナ8の取付け後、カバー44の取付けを行う(ステップS24)。カバー44は図12に示すように、アンテナ8のエレメント19にカバー44の保持部50を潜らせ、収納室22に固定し、固定部21および給電部材10を収納室22に隠蔽する。
【0071】
この第1の実施の形態について、効果を以下に列挙する。
【0072】
(1) 筐体4の止水領域5の内外に跨がる給電部材10を備え、この給電部材10の止水領域5の外側にあるアンテナ取付け部12でアンテナ8を着脱することができ、アンテナ8の交換やリペアを行うことができる。
【0073】
(2) 部品不良などでアンテナ8を交換する際には、筐体4を分解する必要がなく、修理工数を削減できる。
【0074】
(3) アンテナ8の交換の際には、カバー44を外し、筐体4の止水領域5の外側から簡易な工具たとえば、ドライバーで固定ネジ42を外すだけで、アンテナ8を外し、アンテナ8を取り付けることができ、店頭交換や店頭修理など、迅速な保守対応が可能である。
【0075】
(4) アンテナ交換の際にケース16、18を分解しないので、止水領域5を外気に晒すことがなく、止水領域5内を防護することができる。
【0076】
〔第3の実施の形態〕
【0077】
第3の実施の形態について、図17を参照する。図17は給電部材10の一例を示している。図17において、図6と同一部分には同一符号を付してある。
【0078】
第2の実施の形態では、給電部材10を単一部材で構成したが、図17に示すように、ベース部26、アンテナ取付け部12および連結ピン38をそれぞれ独立した部材で構成してもよい。この場合、ベース部26には円環状のアンテナ固定部12をたとえば、溶接などの固定手段により固定してもよい。連結ピン38の径大部74に形成されたねじ部94を、ベース部26に形成したねじ孔96に固定する構成としてもよい。
【0079】
斯かる構成とすれば、給電部材10の各部を単一部材で構成する場合に比較して部品点数が増加するものの、製造コストを低減でき、各部材を所望の形状や大きさにできるなど、対応の容易化を図ることができる。
【0080】
〔第4の実施の形態〕
【0081】
第4の実施の形態について、図18を参照する。図18は止水構造の一例を示している。図18において、図12と同一部分には同一符号を付してある。
【0082】
第2の実施の形態では、給電部材10の連結ピン38にOリング66を取付け、このOリング66とともに連結ピン38を貫通孔28に取り付けることにより、止水構造を構成している。これに対し、図18の(A)に示すように、貫通孔28側にOリング66を設置してもよい。斯かる構成では、Oリング66内に給電部材10の連結ピン38を貫通させ、図18の(B)に示すように、径大部74と径小部76との段部77と、接点部材14との間にOリング66を挟み込んで止水構造を構成してもよい。
【0083】
この変形例について、図19を参照する。図19は止水構造の一例を示している。図19において、図18と同一部分には同一符号を付してある。
【0084】
図19の(A)に示すように、貫通孔28の収納室22側の開口部にOリング66を設置してもよい。この場合、給電部材10の連結ピン38は径小部76とフランジ部78とすればよい。斯かる構成では、図19の(B)に示すように貫通孔28の入口部にあるOリング66内に給電部材10の連結ピン38を貫通させて止水構造が構成される。給電部材10は、貫通孔28を貫通した連結ピン38の径小部76に接点部材14を係合させて固定される点は上記実施の形態と同様である。
【0085】
〔他の実施の形態〕
【0086】
(1) 上記実施の形態では、携帯端末装置として携帯電話機2を例示したが、これに限定されない。パーソナルコンピュータや携帯情報端末機(PDA:Personal Digital Assistant)であってもよく、本開示の携帯端末装置に含まれる。
【0087】
(2) 上記実施の形態では、縦方向に摺動したり、横方向に回動する携帯電話機を例示したが、折畳み構造の携帯電話機であってもよい。
【0088】
(3) 上記実施の形態では、TV受信用のアンテナ8を例示したが、TV受信以外の無線送信用や受信用のアンテナであってもよい。
【0089】
(4) 上記実施の形態では、給電部材10が接続される止水領域5の部材として接点部材14や高周波回路部15を例示したが、送信回路の無線部であってもよい。
【0090】
以上述べた実施例を含む実施の形態に関し、更に以下の付記を開示する。以下の付記に本発明が限定されるものではない。
【0091】
(付記1) 筐体と、
前記筐体の止水領域の外側に設置されるアンテナと、
前記アンテナを取り付けるアンテナ取付け部を前記筐体の止水領域の外側に備え、かつ前記止水領域の外側から前記止水領域の内側に貫通する給電部材と、
を備えることを特徴とする携帯端末装置。
【0092】
(付記2) さらに、前記給電部材は、
前記アンテナ取付け部を備えるベース部と、
前記ベース部に設けられて前記止水領域の外側から前記止水領域の内側に貫通し、前記止水領域の内側にある部材と連結される連結部と、
を備えることを特徴とする付記1に記載の携帯端末装置。
【0093】
(付記3) さらに、前記給電部材または前記筐体に設けられ、前記止水領域を止水する止水手段と、
を備えることを特徴とする付記1または2に記載の携帯端末装置。
【0094】
(付記4) さらに、前記筐体の前記止水領域に設置され、前記筐体を前記給電部材との間に挟み込んで前記給電部材と係合する接点部材と、
を備えたことを特徴とする付記1ないし3の何れかに記載の携帯端末装置。
【0095】
(付記5) さらに、前記アンテナ取付け部が設置された収納部に取外し可能に取り付けられ、前記アンテナが取り付けられた前記アンテナ取付け部を覆うカバーと、
を備えることを特徴とする付記1ないし4の何れかに記載の携帯端末装置。
【0096】
(付記6) さらに、前記アンテナは、
前記アンテナ取付け部に固定される固定部と、
前記筐体に設けられた溝部に挿入されて前記筐体に支持される支持部と、
を備えることを特徴とする付記1ないし5の何れかに記載の携帯端末装置。
【0097】
(付記7) さらに、前記筐体は、前記止水領域に凹部または凸部を備え、
前記接点部材は、前記凹部または前記凸部と係合して前記筐体に固定される係合部を備える、
ことを特徴とする付記4ないし6の何れかに記載の携帯端末装置。
【0098】
(付記8) 前記止水手段は、防水材料で形成され、前記給電部材または前記筐体に取り付けられたOリングであることを特徴とする付記3ないし7の何れかに記載の携帯端末装置。
【0099】
(付記9) 筐体の止水領域の外側に給電部材のアンテナ取付け部を配置し、前記筐体の前記止水領域の外側から前記止水領域の内側に貫通させて前記給電部材を前記筐体に取り付け、
前記給電部材または前記筐体に取り付けられた止水手段で前記止水領域を止水し、
前記筐体の前記止水領域の外側に配置された前記アンテナ取付け部にアンテナを取り付ける、
ことを特徴とする携帯端末装置の製造方法。
【0100】
以上説明したように、携帯端末装置およびその製造方法の最も好ましい実施の形態等について説明したが、本発明は、上記記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載され、又は発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能であることは勿論であり、斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0101】
2 携帯電話機
4 筐体
5 止水領域
6 アンテナ給電部
7 止水部材
8 アンテナ
10 給電部材
12 アンテナ取付け部
14 接点部材
15 高周波回路部
16 ケース
18 ケース
21 固定部
22 収納室
26 ベース部
28 貫通孔
34 支持片
38 連結ピン
44 カバー
50 保持部
66 Oリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体の止水領域の外側に設置されるアンテナと、
前記アンテナを取り付けるアンテナ取付け部を前記筐体の止水領域の外側に備え、かつ前記止水領域の外側から前記止水領域の内側に貫通する給電部材と、
を備えることを特徴とする携帯端末装置。
【請求項2】
さらに、前記給電部材は、
前記アンテナ取付け部を備えるベース部と、
前記ベース部に設けられて前記止水領域の外側から前記止水領域の内側に貫通し、前記止水領域の内側にある部材と連結される連結部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の携帯端末装置。
【請求項3】
さらに、前記給電部材または前記筐体に設けられ、前記止水領域を止水する止水手段と、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の携帯端末装置。
【請求項4】
さらに、前記筐体の前記止水領域に設置され、前記筐体を前記給電部材との間に挟み込んで前記給電部材と係合する接点部材と、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の携帯端末装置。
【請求項5】
さらに、前記アンテナ取付け部が設置された収納部に取外し可能に取り付けられ、前記アンテナが取り付けられた前記アンテナ取付け部を覆うカバーと、
を備えることを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の携帯端末装置。
【請求項6】
筐体の止水領域の外側に給電部材のアンテナ取付け部を配置し、前記筐体の止水領域の外側から前記止水領域の内側に貫通させて前記給電部材を前記筐体に取り付け、
前記給電部材または前記筐体に取り付けられた止水手段で前記止水領域を止水し、
前記筐体の前記止水領域の外側に配置された前記アンテナ取付け部にアンテナを取り付ける、
ことを特徴とする携帯端末装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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