説明

携帯端末

【課題】視認性を向上させることで、2つのケース間の隙間をシール部材により確実にシールすることができる携帯端末を提供する。
【解決手段】上ケース20の溝部21内には、組付時に下ケース30の突出部31により押圧されることで上ケース20および下ケース30の間の隙間をシールするシール部材40が配置される。そして、シール部材40は、組付前の上ケース20における溝部21内に配置されるときに視認される視認部位43において色の属性である色相、彩度および明度のうち少なくともいずれか1つが、上ケース20のうち溝部近傍部位22に対して異なるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのケースが組み付けられることで収容された被収容物を保護する筐体が構成される携帯端末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2つのケースが組み付けられることで構成される筐体にて収容された被収容物を保護するためには、両ケース間の隙間を埋めるためのゴムパッキン等のシール部材が必要となる。一般に、組付時に配置すべきシール部材がなくても2つのケースを組み付けることができるため、シール部材を配置し忘れて両ケースを組み付けてしまうと、両ケース間の隙間が埋まらないために、筐体の防塵性や防水性等の機能が低下することとなる。
【0003】
下記特許文献1に示す携帯端末では、本体において、光学ホルダが位置する空間部は局部保護カバーで気密に保護されている。この局部保護カバーは透光性部材からなり、光学ホルダの組付け状態を外部から目視点検可能となっている。このように、透光性部材からなるケース(カバー)を採用することで、シール部材が所定の位置に配置されているか視認することができ、シール部材の配置忘れを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−352972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、両ケースのうちシール部材が配置される部位の少なくとも一部を透光性部材にて構成する必要があり、筐体として防塵性や防水性、耐久性等を持たせるためには、製造コストが増大してしまうという問題がある。また、シール部材は、添加剤としてカーボンが添加された黒色のゴム部材が多く採用されており、両ケースは、汚れを目立ちにくくするために黒色が多く採用されるために、シール部材とケースとが同系色となる場合が多い。この場合には、ケースの所定の位置にシール部材が配置されているか否かを、容易に視認することが困難である。また、上述のような透光性部材を採用したとしても、同様の課題がある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、視認性を向上させることで、2つのケース間の隙間をシール部材により確実にシールすることができる携帯端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の携帯端末では、第1ケースおよび第2ケースが組み付けられることで収容された被収容物を保護する筐体が構成される携帯端末であって、前記第1ケースのうち組付時に前記第2ケースに接触する部位には、溝部が形成され、前記第2ケースには、組付時に前記溝部に係合可能な突出部が当該溝部の深さよりも短く突出するように形成され、前記溝部内には、組付時に前記突出部により押圧されることで前記第1ケースおよび前記第2ケースの間の隙間をシールするシール部材が配置され、前記シール部材は、組付前の前記第1ケースにおける前記溝部内に配置されるときに視認される部位の少なくとも一部において色の属性である色相、彩度および明度のうち少なくともいずれか1つが、前記第1ケースのうち前記溝部近傍部位に対して異なるように構成されることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の携帯端末において、前記シール部材は、前記溝部内に配置されるときに視認される部位の少なくとも一部が、前記第1ケースのうち前記溝部近傍部位の色相に対して色相環における反対色にて構成されることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の携帯端末において、前記シール部材は、前記溝部内に配置されるときに視認される部位の一部が、残部の色相に対して色相環における反対色にて構成されることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1に記載の携帯端末において、シール部材は、無彩色であって、かつ、組付前の前記第1ケースにおける前記溝部内に配置されるときに視認される部位の少なくとも一部において色の属性である色相、彩度および明度のうち少なくともいずれか1つが、前記第1ケースのうち前記溝部近傍部位に対して異なるように構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明では、第1ケースの溝部内には、組付時に第2ケースの突出部により押圧されることで第1ケースおよび第2ケースの間の隙間をシールするシール部材が配置される。そして、シール部材は、組付前の第1ケースにおける溝部内に配置されるときに視認される部位の少なくとも一部において色の属性である色相、彩度および明度のうち少なくともいずれか1つが、第1ケースのうち溝部近傍部位に対して異なるように構成される。
【0012】
これにより、第1ケースの溝部内にシール部材を配置するときには、シール部材と溝部近傍部位との色相、彩度および明度のうち少なくともいずれか1つが異なるために当該溝部近傍部位に対してシール部材の視認性が向上するので、第1ケースの溝部内にシール部材が配置されているか否かを容易に視認することができる。
したがって、シール部材の視認性を向上させることで当該シール部材の配置忘れを防止して、2つのケース間の隙間をシール部材により確実にシールすることができる。
【0013】
請求項2の発明では、シール部材は、溝部内に配置されるときに視認される部位の少なくとも一部が、第1ケースのうち溝部近傍部位の色相に対して色相環における反対色にて構成される。これにより、溝部近傍部位に対してシール部材の視認性がより向上するので、第1ケースの溝部内にシール部材が配置されているか否かを容易かつ確実に視認することができる。
【0014】
請求項3の発明では、シール部材は、溝部内に配置されるときに視認される部位の一部が、残部の色相に対して色相環における反対色にて構成される。このため、例えば、シール部材の一部の色相が溝部近傍部位の色相に近い場合でも、シール部材の残部の色相が溝部近傍部位の色相に対して遠くなる。これにより、溝部近傍部位の色相にかかわらず、当該溝部近傍部位に対するシール部材の視認性を向上させることができる。
【0015】
請求項4の発明では、請求項1に記載のシール部材に対して、当該シール部材がさらに無彩色にて構成されるため、有彩色にてシール部材を構成する場合と比較して、成形が容易になり、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る携帯端末の構成概要を示す図であり、図1(A)は正面図、図1(B)は側面図である。
【図2】シール部材を溝部内に配置した上ケースを下ケース側から見た状態を示す説明図である。
【図3】図3(A)は、組付前の両ケースとシール部材との位置関係を示す拡大断面図であり、図3(B)は、組付後の両ケースとシール部材との位置関係を示す拡大断面図である。
【図4】シール部材の詳細形状を示す図であり、図4(A)は正面図、図4(B)は側面図である。
【図5】図2の一部を拡大して示す拡大図である。
【図6】本実施形態の第2変形例に係るシール部材の要部を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の携帯端末を具現化した一実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る携帯端末10の構成概要を示す図であり、図1(A)は正面図、図1(B)は側面図である。
【0018】
図1(A)、(B)に示すように、携帯端末10は、上ケース20および下ケース30が組み付けられることで収容された被収容物を保護する筐体11を備えており、当該筐体11は、例えば、ABS樹脂等の合成樹脂により形成されている。この筐体11内には、被収容物として、例えば、情報コードを光学的に読み取るコードリーダを構成するための制御回路や光源、レンズ、受光センサ、記憶装置等の各種電気部品が収容されている。この筐体11内の電気的構成は、公知のコードリーダ(バーコードリーダ、二次元コードリーダ等)と同様の構成とすることができる。
【0019】
また、上ケース20には、上記制御回路に対して所定の情報を入力する際に操作されるファンクションキーおよびテンキー等の情報入力キー12や、上記制御回路により制御されて所定の情報を表示するための液晶表示器13等が配置されている。また、下ケース30には、読取口14が下方に向けて開口するように形成されている。さらに、筐体11の前端部(読取口14近傍)および後端部(情報入力キー12近傍)は、外部からの衝撃を吸収するための緩衝ゴム15,16がそれぞれ装着されている。
【0020】
次に、シール部材40を用いた上ケース20および下ケース30の組み付け構成について図2〜図5を用いて説明する。図2は、シール部材40を溝部21内に配置した上ケース20を下ケース30側から見た状態を示す説明図である。図3(A)は、組付前の両ケース20,30とシール部材40との位置関係を示す拡大断面図であり、図3(B)は、組付後の両ケース20,30とシール部材40との位置関係を示す拡大断面図である。図4は、シール部材40の詳細形状を示す図であり、図4(A)は正面図、図4(B)は側面図である。図5は、図2の一部(Iで示す円領域)を拡大して示す拡大図である。
【0021】
本実施形態では、上ケース20および下ケース30間に、ゴムパッキン等からなるシール部材40を設けることで、筐体11の防塵性や防水性等の機能を確保している。具体的には、図2および図3に示すように、上ケース20の下端部を構成する外縁のうち組付時に下ケース30に対して環状に接触する部位には、溝部21が上記外縁に沿い環状に形成されている。また、下ケース30には、組付時に溝部21に係合可能な突出部31が当該溝部21の深さよりも短く突出するように環状に形成されている。なお、突出部31は、組付時にシール部材40にのみ接触するように形成されてもよい。
【0022】
また、シール部材40は、図2および図4に示すように、溝部21内に配置可能に環状に形成されている。当該シール部材40は、図3(A),(B)から分かるように、溝部21内に配置されるとき、ねじ部材等を用いて締結する組付時に、突出部31により押圧されることで上ケース20および下ケース30の間の隙間をシールするように形成されている。このシール部材40には、外側に突出する一対の係合部41と内側に突出する一対の係合部42とが形成されており、これら係合部41,42が溝部21に形成される凹部21a,21bに係合することで、溝部21に対するシール部材40の位置決めがなされる。
【0023】
このシール部材40は、組付前の溝部21内に配置されるときに視認される部位(以下、視認部位43ともいう)が色の属性である色相、彩度および明度のうち少なくともいずれか1つが、上ケース20のうち溝部21の近傍部位(以下、溝部近傍部位22ともいう)に対して異なるように構成されている。本実施形態では、例えば、図5にて例示するように、溝部近傍部位22を含めた上ケース20が無彩色である黒色で構成されるときに、視認部位43を含めたシール部材40が無彩色であるグレー色で構成されている。なお、図5では、視認部位43のグレー色をクロスハッチングで示し、溝部近傍部位22の黒色をハッチングで示している。
【0024】
これにより、溝部21内にシール部材40を配置するときには、シール部材40の視認部位43と上ケース20の溝部近傍部位22との色相、彩度および明度のうち少なくともいずれか1つが異なるために当該溝部近傍部位22に対してシール部材40の視認性が向上するので、溝部21内にシール部材40が配置されているか否かを容易に視認することができる。
したがって、シール部材40の視認性を向上させることで当該シール部材40の配置忘れを防止して、2つのケース間20,30の隙間をシール部材40により確実にシールすることができる。
【0025】
特に、シール部材40は、無彩色にて構成されるため、有彩色にてシール部材40を構成する場合と比較して、成形が容易になり、製造コストを低減することができる。
【0026】
なお、シール部材40は、視認部位43のみがグレー色で構成されてもよいし、視認部位43のうちの一部のみがグレー色で構成されてもよい。このようにしても、黒色である溝部近傍部位22に対するシール部材40の視認性を向上させることができる。この場合、シール部材40のうち視認部位43、または、視認部位43のうちの一部を除く部位は、黒色で構成されてもよいし、他の色相、彩度および明度で構成されてもよい。
【0027】
本実施形態の第1変形例として、シール部材40は、視認部位43が、上ケース20の溝部近傍部位22の色相に対して色相環における反対色にて構成されてもよい。これにより、溝部近傍部位22に対してシール部材40の視認性がより向上するので、上ケース20の溝部21内にシール部材40が配置されているか否かを容易かつ確実に視認することができる。
【0028】
図6は、本実施形態の第2変形例に係るシール部材40の要部を示す拡大図である。
図6に示すように、本実施形態の第2変形例として、シール部材40は、視認部位43の一部43aが、残部43bの色相に対して色相環における反対色にて構成されてもよい。なお、図6では、便宜上、視認部位43の残部43bにのみクロスハッチングを付している。
【0029】
このため、例えば、視認部位43の一部43aの色相が上ケース20の溝部近傍部位22の色相に近い場合でも、視認部位43の残部43bの色相が溝部近傍部位22の色相に対して遠くなる。これにより、溝部近傍部位22の色相にかかわらず、当該溝部近傍部位22に対するシール部材40の視認性を向上させることができる。
【0030】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよく、その場合でも、上記実施形態と同等の作用・効果が得られる。
(1)本発明に係るシール部材40を用いた組み付け構成は、上述したコードリーダに限らず、ICカードやRFIDタグの情報を無線通信により読み取るRFIDリーダライタ等の携帯端末に適用されてもよい。
【0031】
(2)溝部21、突出部31およびシール部材40は、環状に形成されることに限らず、組付時に両ケース20,30が接触する部位の一部に設けられるようにそれぞれ形成されてもよい。
【0032】
(3)溝部21が下ケース30に形成され、この溝部21に係合可能な突出部31が上ケース20に形成されてもよい。この場合には、シール部材40の視認部位43と下ケース30の溝部近傍部位22との色相、彩度および明度のうち少なくともいずれか1つを異ならせることで、当該溝部近傍部位22に対してシール部材40の視認性が向上し、溝部21内にシール部材40が配置されているか否かを容易に視認することができる。
【符号の説明】
【0033】
10…携帯端末
11…筐体
20…上ケース
21…溝部
22…溝部近傍部位
30…下ケース
31…突出部
40…シール部材
43…視認部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ケースおよび第2ケースが組み付けられることで収容された被収容物を保護する筐体が構成される携帯端末であって、
前記第1ケースのうち組付時に前記第2ケースに接触する部位には、溝部が形成され、
前記第2ケースには、組付時に前記溝部に係合可能な突出部が当該溝部の深さよりも短く突出するように形成され、
前記溝部内には、組付時に前記突出部により押圧されることで前記第1ケースおよび前記第2ケースの間の隙間をシールするシール部材が配置され、
前記シール部材は、組付前の前記第1ケースにおける前記溝部内に配置されるときに視認される部位の少なくとも一部において色の属性である色相、彩度および明度のうち少なくともいずれか1つが、前記第1ケースのうち前記溝部近傍部位に対して異なるように構成されることを特徴とする携帯端末。
【請求項2】
前記シール部材は、前記溝部内に配置されるときに視認される部位の少なくとも一部が、前記第1ケースのうち前記溝部近傍部位の色相に対して色相環における反対色にて構成されることを特徴とする請求項1に記載の携帯端末。
【請求項3】
前記シール部材は、前記溝部内に配置されるときに視認される部位の一部が、残部の色相に対して色相環における反対色にて構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の携帯端末。
【請求項4】
前記シール部材は、無彩色であって、かつ、組付前の前記第1ケースにおける前記溝部内に配置されるときに視認される部位の少なくとも一部において色の属性である色相、彩度および明度のうち少なくともいずれか1つが、前記第1ケースのうち前記溝部近傍部位に対して異なるように構成されることを特徴とする請求項1に記載の携帯端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−228373(P2011−228373A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94617(P2010−94617)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】