説明

携帯端末

【課題】マイク穴がユーザの頬で覆われても通話時におけるマイクの集音性能が損なわれることのない携帯端末を提供する。
【解決手段】本発明に係る携帯電話機1は、ヒンジ部4を開閉支点として、操作部側筐体2と表示部側筐体3とが相対的に開閉可能に構成され、操作部側筐体2の内部に収容されたマイク16と、操作部側筐体2を貫通して設けられ、内部側開口がマイク16に近接した位置に形成されるとともに、外部側開口がヒンジ部4に近接した位置に形成されたマイク穴8と、操作部側筐体2の表面に、マイク穴8からヒンジ部4の側へ向かって延びるように設けられたマイク溝9と、を備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機などの携帯端末の構造改良技術に係り、特に、内蔵されたマイクの集音性を高めるために構造を改良した折り畳み式の携帯端末に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、携帯電話機に内蔵されるアンテナは、ユーザの手に覆われない位置であるキー操作部の下部または上部の位置に配置されている。このようなアンテナは、ノイズの原因となるマイクの配置位置から所定の距離を保つ必要がある。従って、アンテナがキー操作部の下部に配置されているときは、マイクはキー操作部の上部、例えば折り畳み式の携帯電話機であればヒンジ部の近傍に配置されている。
【0003】
ここで、このようにマイクがヒンジ部の近傍に配置されている場合、ユーザが通話をするときに頬によってマイク穴(音孔)を覆ってしまうおそれがある。特に、ユーザが通話時にメモを取る際には、ユーザの頬と肩とよって携帯電話機を挟んだ状態で通話を行うため、頬によってマイク穴を塞いでしまうおそれがある。
【0004】
そこで、このような不具合を解決するための関連技術として、折り畳み式の携帯電話機において、マイク穴(音孔)の周囲に一本または複数本のマイク溝(スリット)を形成した技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この技術によれば、ヒンジ部下部の特殊操作部(四方向キーや各種ショートカットキー)の近傍の内部にマイクを配置したとき、そのマイクの真上のマイク穴(音孔)から特殊操作部またはキー操作部へ向けて一本または複数本のマイク溝を形成している。これによって、ユーザの頬が携帯電話機の表面へ密着しても、マイク溝によってマイクまでの伝音路は塞がれ難くなるのでマイクの集音性は確保される。すなわち、マイク穴の周辺に形成されたマイク溝の凹部によってマイク穴は塞がれ難くなるので、通話時において携帯電話機を頬と肩で挟んでメモを取るような姿勢でも、マイクの集音性は充分に確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−136722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術は、マイク穴(音孔)から特殊操作部の周辺に向けて一本または複数本のマイク溝(スリット)を形成しているので、マイク穴と同様にマイク溝もユーザの頬によって覆われ、これによりマイクの集音性能が損なわれるという問題がある。
【0007】
また、特許文献1に開示されている技術は、マイク穴(音孔)から特殊操作部の周辺に向けて一本または複数本のマイク溝(スリット)を形成しているので、携帯電話機の意匠形状(デザイン性)が悪くなるおそれがある。近年では、携帯電話機は女性や若者などによって汎用されているので、デザイン性は商品価値の重要は要素である。そのためには、携帯電話機の表面に配置されたそれぞれの機能要素は必要最小限にシンプルであることが望ましい。したがって、マイク穴やマイク溝もシンプルで目立たない形状であることが望ましい。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、デザイン性を確保しながら、マイク穴がユーザの頬で覆われても通話時におけるマイクの集音性能が損なわれることのない携帯端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明に係る携帯端末は、ヒンジ部を開閉支点として、操作部側筐体と表示部側筐体とが相対的に開閉可能に構成された携帯端末であって、前記操作部側筐体の内部に収容されたマイクと、前記操作部側筐体を貫通して設けられ、内部側開口が前記マイクに近接した位置に形成されるとともに、外部側開口が前記ヒンジ部に近接した位置に形成されたマイク穴と、前記操作部側筐体の表面に、前記マイク穴から前記ヒンジ部の側へ向かって延びるように設けられたマイク溝と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、マイク穴とマイク溝がヒンジ部の近傍に形成されていてマイクへ音を伝えるための伝音路が確保されているので、折り畳み式の携帯端末(携帯電話機)を開いたときのデザイン性と通話時の集音性能を低下させるおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に適用される携帯電話機の開いた状態を示す外観斜視図である。
【図2】図1に示す携帯電話機のA部拡大図である。
【図3】図2に示すA部拡大図のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る携帯端末の実施形態では携帯電話機を例に挙げて説明する。本発明に係る携帯電話機は、折り畳み式の筐体におけるヒンジ部の近傍までマイク及びマイク穴の配置位置を近づけることにより、ユーザの頬によってマイ孔が塞がれ難くすると共に、そのマイク穴からヒンジ部に向けてマイク溝を設けることにより、ユーザの頬によってマイク穴が塞がれても、マイク溝によってマイクへの伝音路が確保されるように構成したことを特徴としている。このようにして、マイクへの伝音路が完全に塞がれないようなマイク穴とマイク溝の配置と形状を実現することにより、マイク穴とマイク溝の部分のデザイン性を確保すると共に、マイクの集音性能を良好に維持することができる。
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る携帯電話機について、図面を参照しながら好適な実施形態を詳細に説明する。なお、実施形態に用いる各図面において、同一の構成要素は原則として同一符号を付し、かつ、重複する説明は可能な限り省略する。
【0014】
《実施形態》
図1は、本発明の一実施形態に適用される携帯電話機の開いた状態を示す外観斜視図である。また、図2は、図1に示す携帯電話機のA部拡大図である。したがって、図1、図2を参照しながら本発明の一実施形態に係る携帯電話機の構成について説明する。
【0015】
図1に示すように、携帯電話機1は、操作部側筐体2と表示部側筐体3とがヒンジ部4によって開閉自在に構成された折り畳み式携帯電話機である。操作部側筐体2は、数字キーや文字キーなどのキー操作部5と、四方向キーや各種ショートカットキーなどの特殊操作部6と、アンテナが内蔵されたアンテナ内蔵部7と、内蔵されたマイク(図示せず)の伝音路となるマイク穴8と、マイク穴8からヒンジ部4の側へ向かって延びるように設けられて伝音路を実現するマイク溝9とを主に備えて構成されている。
【0016】
また、表示部側筐体3は、ディスプレイとなる表示部10と、レシーバとなる受話口11とを主に備えて構成されている。なお、この携帯電話機1は、マイク穴8及びマイク溝9を除いた各要素は一般的な構成であるので、それらの要素については詳細な説明を省略する。したがって、以下の説明ではマイク穴8及びマイク溝9の部分について詳細に説明する。
【0017】
図2に示すように、ヒンジ部4の近傍における操作部側筐体2の操作部側表面ケース12にはマイク穴8が形成されている。なお、マイク穴8の下部にはマイク(図示せず)が配置されているので、このマイク穴8はマイクの伝音路となっている。また、操作部側表面ケース12の表面において、マイク穴8からヒンジ部4の側へ向かって延びるようにマイク溝9が形成されている。このマイク溝9の溝幅と溝の深さについては、マイク溝9がマイクへの伝音路を形成できれば任意の寸法とすることができる。
【0018】
また、操作部側表面ケース12に形成されるマイク穴8や、マイク穴8に連通するマイク溝9の配置位置は、操作部側筐体2におけるマイクの収容位置に応じて適宜設計変更が可能である。
【0019】
図3は、図2に示すA部拡大図のA−A断面図である。図3に示すように、操作部側筐体2は、操作部側表面ケース12と操作部側裏面ケース13とによって構成されている。また、表示部側筐体3は、表示部側表面ケース14と表示部側裏面ケース15とによって構成されている。操作部側筐体2と表示部側筐体3は、表示部側表面ケース14と表示部側裏面ケース15の終端に形成されたヒンジ部4によって相対的に開閉自在に構成されている。
【0020】
操作部側筐体2にける操作部側表面ケース12の内部にはマイク16が収容されている。なお、このマイク16は、ヒンジ部4に近い位置の表示部側表面ケース14の内部に配置されている。また、マイク16の上部の操作部側表面ケース12には、マイク16へ音を伝えるための伝音路となるマイク穴8が貫通して形成されている。そして、このマイク穴8の内部側開口8Aがマイク16に近接した位置に形成されるとともに、外部側開口8Bがヒンジ部4に近接した位置に形成されている。
【0021】
さらに、マイク穴8の側部からヒンジ部4の側へ向かって延びるように、操作部側表面ケース12の表面部分にマイク溝9が形成されている。このマイク溝9もマイク16へ音を伝えるための伝音路となる。すなわち、マイク16の上部の操作部側表面ケース12には、伝音路としてマイク穴8とマイク溝9が形成されている。さらに、マイク溝9は、操作部側筐体2におけるヒンジ部4側の端部まで達し、ヒンジ部4と操作部側表面ケース12との間の隙間部分Sに連通している。
【0022】
マイク穴8とマイク溝9とをこのように形成することにより、ヒンジ部4と操作部側表面ケース12との間の隙間部分Sも伝音路として利用することができる。すなわち、マイク16へ音を伝えるための伝音路は、マイク穴8とマイク溝9とヒンジ部4の隙間部分Sとによって形成されることになる。
【0023】
これによって、ユーザが携帯電話機1で通話中にマイク穴8を頬で覆っても、マイク溝9とヒンジ部4の隙間部分Sとによって伝音路を確保することができるので、マイク16の集音性や感度が損なわれるおそれはなくなる。しかも、ヒンジ部4の隙間部分Sを伝音路として有効に利用することができるので、マイク溝9の溝幅や溝の深さを必要最小限にすることができると共に、マイク16をヒンジ部4側へできるだけ近づけることによってマイク溝9の長さを短くすることができるので、携帯電話機1のデザイン性は殆んど損なわれない。さらには、マイク溝9は、ヒンジ部4で折り畳む位置の近傍に形成されるために殆んど目立たないので、その観点からも携帯電話機1のデザイン性を低下させるおそれは少ない。
【0024】
図3によってさらに説明すると、例えば、携帯電話機1で通話するときにメモを取る際には、その携帯電話機1を頬と肩とで挟みながら通話を行う場合がある。そのような場合には、図3に示すように、ユーザの頬20が操作部側表面ケース12やヒンジ部4に密着することがある。このとき、マイク穴8の外部側開口8Bの位置がヒンジ部4に近いために、頬20の外形を示す実線のように、外部側開口8Bは頬20によって塞がれ難くなる。これによってマイク16の伝音路はマイク穴8によって確保されるのでマイク16の集音性や感度は殆んど損なわれない。
【0025】
さらに、ユーザの頬20を操作部側表面ケース12へ強く密着させて、頬20の外形が破線で示すような状態になったときは、外部側開口8Bは頬20によって塞がれるが、マイク溝9とヒンジ部4の隙間部分Sとによってマイク16の伝音路は確保されるので、マイク16の集音性や感度が劣化されるおそれはない。
【0026】
《実験結果》
本発明の実施形態に係る携帯電話機の効果を裏付けるために、図3に示すような形状の携帯電話機のシミュレータを用いてマイクの感度低下を定量的に測定した。まず、従来のようにマイク穴の周囲に凹部(スリット)を設けた形状の携帯電話機では、通常の通話においてはマイクの感度低下は−4〜−5dBV(つまり、マイクの感度低下の割合は0・7倍程度)と測定された。次に、携帯電話機を頬と肩で挟みながら通話を行ったところ、頬によってマイク穴が覆われたことにより、マイクの感度低下は−23dBV(つまり、マイクの感度低下の割合は0.08倍程度)と測定され、測定不可に近い低い値となった。
【0027】
一方、図3に示すような本実施形態の携帯電話機のシミュレータでは、マイク穴8よりヒンジ部4側に向かってマイク溝9が設けられているので、携帯電話機を頬と肩で挟みながら通話を行ったためにマイク穴8が頬20で覆われた状態でも、マイク溝9及びヒンジ部4の隙間部分Sによる伝音路の効果により、マイクの感度低下は−4〜−6dBV(つまり、マイクの感度低下の割合は0・7倍程度)と測定された。すなわち、頬20でマイク穴8を覆ってもマイクの感度低下は殆んど見られなかった。
【0028】
以上、本発明に係る携帯端末の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、本発明の具体的に構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもそれらは本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明によれば、携帯電話機などの携帯端末に利用できることは勿論であるが、PHS(Personal Handy Phone System)、IP(Internet Protocol)電話、コードレス電話などにも利用することが可能あり、さらには、PDM(Product Data Management:製品データ管理)に用いるマイクの配置などにも利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 携帯電話機
2 操作部側筐体
3 表示部側筐体
4 ヒンジ部
5 キー操作部
6 特殊操作部
7 アンテナ内蔵部
8 マイク穴
8A 内部側開口
8B 外部側開口
9 マイク溝
10 表示部
11 受話口
12 操作部側表面ケース
13 操作部側裏面ケース
14 表示部側表面ケース
15 表示部側裏面ケース
16 マイク
20 頬
S 隙間部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒンジ部を開閉支点として、操作部側筐体と表示部側筐体とが相対的に開閉可能に構成された携帯端末であって、
前記操作部側筐体の内部に収容されたマイクと、
前記操作部側筐体を貫通して設けられ、内部側開口が前記マイクに近接した位置に形成されるとともに、外部側開口が前記ヒンジ部に近接した位置に形成されたマイク穴と、
前記操作部側筐体の表面に、前記マイク穴から前記ヒンジ部の側へ向かって延びるように設けられたマイク溝と、
を備えることを特徴とする携帯端末。
【請求項2】
前記マイク溝が、前記操作部側筐体におけるヒンジ部側の端部まで達していることを特徴とする請求項1に記載の携帯端末。
【請求項3】
前記マイクが、前記操作部側筐体に設けられたアンテナから離間した位置に収容されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の携帯端末。
【請求項4】
前記携帯端末が、携帯電話機であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の携帯端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−21470(P2013−21470A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152603(P2011−152603)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】