説明

携帯装置のための指向性触覚効果

携帯装置が、実質的に機械的に隔離されている少なくとも2つのセクションを備える。各セクションは、触覚効果を生成するアクチュエータを含む。一方のセクションにおいてアクチュエータによって生成される触覚効果は他方のセクションに対して実質的に隔離され、従って、たとえば、指向性触覚効果を携帯装置上で生成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一実施形態は、携帯装置に関する。より詳細には、一実施形態は、指向性触覚効果を有する携帯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置の製造者は、ユーザにとって豊富なインタフェースを製造しようと努力している。従来の装置は、ユーザにフィードバックを提供するために、視覚的及び聴覚的キュー(cue)を用いている。いくつかのインタフェース装置において、より一般的には総括して「触覚フィードバック」又は「触覚効果」として知られる、運動感覚フィードバック(作用力及び抵抗力フィードバック等)及び/又は触知フィードバック(振動、触感、及び熱等)もまた、ユーザに提供される。触覚フィードバックは、ユーザインタフェースを強化及び単純化するキューを提供し得る。具体的に、振動効果、すなわち振動触知触覚効果は、ユーザに特定のイベントを通知するために、電子装置のユーザへキューを提供するのに有用であり得るか、又は擬態環境若しくは仮想環境内でより大きく感覚を集中させるために、現実的なフィードバックを提供し得る。
【0003】
また、触覚フィードバックは、携帯電話、携帯情報端末(Personal Digital Assistant:PDA)、携帯ゲーム機、及び様々な他の携帯装置等の携帯電子装置に、増大的に組み込まれてきた。例えば、触覚フィードバックを提供するように構成される、より大きな規模のゲームシステムで使用される制御装置(例えば、ジョイスティック等)と同様の方法で振動することが可能な携帯ゲームアプリケーションもある。さらに、携帯電話及びPDA等の装置は、振動によりユーザに様々な通知を提供することが可能である。例えば、携帯電話は、振動によりユーザに着信を通知することができる。同様に、PDAは、ユーザに予定されている予定事項を通知するか、又はユーザに「やるべきこと」(to do)一覧事項若しくは予定されている約束事項の注意を喚起することができる。
【0004】
いくつかの用途に関して、方向(たとえば、左、右等)をユーザに示すことができるように、携帯装置が指向性フィードバックを含むことが必要とされている。指向性フィードバックを生むための1つの既知の方法は、一方のアクチュエータを携帯装置のずっと右へ配置し、他方のアクチュエータをずっと左へ配置し、双方を携帯装置のハウジングに配置させることである。しかしながら、ほとんどの携帯装置は概して剛性のハウジングを有するため、いずれのアクチュエータが装置を実際に動かしているのかを見分けるのは困難であり、またユーザが装置のいずれのアクチュエータが振動をもたらしているのかを判断するのも困難である。
【0005】
上記に基づき、タッチスクリーンの触覚効果を生成するための改良された指向性触角システム及び方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
一実施形態は、実質的に機械的に隔離されている少なくとも2つのセクションを備える携帯装置である。各セクションは、触覚効果を生成するアクチュエータを含む。一方のセクションにおいてアクチュエータによって生成される触覚効果は他方のセクションに対して実質的に隔離されて、従って、たとえば、指向性触覚効果を携帯装置上で生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】一実施形態による携帯装置の上面のブロック図である。
【図2】アクチュエータを備える触覚フィードバックシステムのブロック図である。
【図3】図1の線A−Aに沿った携帯装置の断面図のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一実施形態は、触覚効果を生成するための複数のアクチュエータを備える携帯装置である。各アクチュエータは、該装置の残りの部分から機械的に隔離されている、該装置のセクションに配置される。したがって、各アクチュエータによって発生する振動は、該装置の特定の部分に対して隔離される。
【0009】
図1は、一実施形態による携帯装置10の上面のブロック図である。携帯装置10は、タッチスクリーン11又は他のユーザインタフェースを含み、機械的キー/ボタンも含み得る。装置10の内部には、2つのアクチュエータ14及び15がある。アクチュエータ14は装置10の左側に配置されており、アクチュエータ15は右側に配置されている。アクチュエータ14及び15は、振動を装置10上で発生させる触覚フィードバックシステムの一部である。装置10は、2つのアクチュエータを含んでいるが、他の実施形態では、装置10はさらなるアクチュエータを含んでもよい。一実施形態では、装置10は、左右に加えて、前後にもアクチュエータを備える。
【0010】
図2は、アクチュエータ14を備える触覚フィードバックシステム30のブロック図である。触覚フィードバックシステム30は、メモリ20に結合されているプロセッサ12と、振動アクチュエータ14に結合されているアクチュエータ駆動回路16とを備える。プロセッサ12は、任意のタイプの汎用プロセッサであり得るか、又は特定用途向け集積回路(Application-Specific Integrated Circuit:ASIC)等の、触覚効果を提供するように特別に設計されたプロセッサであり得る。プロセッサ12は、装置10全体を操作するプロセッサと同一であってもよいし、又は別個のプロセッサであってもよい。プロセッサ12は、高レベルパラメータに基づいて、どのような触覚効果を発生させるか、及び、触覚効果が発生される順番を決定し得る。一般に、特定の触覚効果を定義する高レベルパラメータは、強度、周波数、及び持続時間を含む。また、ストリーミングモータコマンド等の低レベルパラメータも、特定の触覚効果を決定するために使用され得る。
【0011】
プロセッサ12は、駆動回路16に制御信号を出力し、駆動回路16は、所望の触覚効果をもたらすために必要とされる電流及び電圧をアクチュエータ14に供給するために使用される電子構成要素及び回路を含む。アクチュエータ14は、携帯装置10上で振動を発生させる触覚装置である。アクチュエータ14は、装置10のユーザに振動触知力を印加することが可能な、1つ又は複数の力印加機構を含み得る。アクチュエータ14は、たとえば、電磁アクチュエータ、偏心質量体がモータによって動く偏心回転質量体(Eccentric Rotating Mass:ERM)アクチュエータ、ばねに取り付けられた質量体が前後に駆動されるリニア共振アクチュエータ(Linear Resonant Actuator:LRA)、又は圧電ポリマー、電気活性ポリマー若しくは形状記憶合金等の「スマート材料」であり得る。
【0012】
メモリ装置20は、ランダムアクセスメモリ(RAM)又は読み取り専用メモリ(Read-Only Memory:ROM)等の、任意のタイプの記憶装置又はコンピュータ可読媒体であり得る。メモリ20は、プロセッサ12によって実行される命令を記憶する。また、メモリ20は、プロセッサ12の内部に位置していてもよいし、内部メモリ及び外部メモリの任意の組み合わせであってもよい。
【0013】
1つのプロセッサ12及び駆動回路16は、装置10内のアクチュエータ毎に装置10に含めることができるし、又は触覚制御信号を生成してアクチュエータ14及び15等の複数のアクチュエータに送信することができる。
【0014】
図3は、図1の線A−Aに沿った携帯装置10の断面図のブロック図である。携帯装置10は、各自がアクチュエータ14及び15の一方をそれぞれ含む、別個の「実質的に機械的に隔離されている」セクション46及び44を備える。セクション46、44はそれぞれ振動隔離障壁43によって互いから実質的に隔離されている。一実施形態の振動隔離障壁43は、ポロン発泡体から形成されるが、概して振動を隔離するが装置10の外側ハウジングの感触及び完全性が維持されるように相対的な剛性を維持する、任意の材料から形成してもよい。
【0015】
隔離障壁43は、セクション46内のアクチュエータによって引き起こされる振動がセクション44に伝わる(またその逆も同様である)のを実質的に低減することによってセクション46及び44を実質的に機械的に隔離する。一実施形態では、セクション46内の100%の強度の振動がセクション44内では約30%の強度の振動まで低減する。障壁43を通していくらか振動が伝わる場合であっても、その振動はアクチュエータ14が発生させるものでしかない場合、ユーザが、この振動はセクション44からではなくセクション46から生じるものであると容易に判断することができるように、振動は実質的に低減される。
【0016】
セクション46及び44は、振動隔離障壁45によって装置10の共通セクション42からさらに隔離される。一実施形態では、共通セクション42は、装置10の上部であり、タッチスクリーン11及び他の任意のユーザインタフェースを含む。一実施形態では、障壁45は、障壁43と同一の材料から形成される。障壁45は、能動アクチュエータを含む特定のセクション内への振動をさらに隔離する。
【0017】
他の実施形態では、装置10は、アクチュエータ14及び15よりも多くの数のアクチュエータを備える。たとえば、一実施形態では、装置10は、4つのアクチュエータを、すなわち前後に1つずつ、また左右に1つずつ備える。これらの実施形態では、各アクチュエータは別個のセクションに収容されており、各セクションは共通セクション42を含む他のすべてのセクションから振動隔離障壁によって分離されている。別の実施形態では、タッチスクリーン11を含む共通セクション42内の振動が実質的に隔離され得るようにアクチュエータが共通セクション42に含まれる。
【0018】
それぞれが別個の実質的に機械的に隔離されているセクションに配置されている4つのアクチュエータ(すなわち、左方、右方、前方及び後方)を備える一実施形態では、携帯装置を用いてユーザに指向性基準を提供することができる。たとえば、触覚効果は、以下の方法を用いて生成することができる:(1)左方アクチュエータ、続いて右方アクチュエータを起動して左方から右方への動きを擬態する。これは、ユーザに右方へ移動するように指示する。(2)右方アクチュエータ、続いて左方アクチュエータを起動して右方から左方への動きを擬態する。これは、ユーザに左方へ移動するように指示する。(3)前方アクチュエータ、続いて後方アクチュエータを起動して前方から後方への動きを擬態する。これは、ユーザに方向転換して進む、すなわち後退するように指示する。(4)後方アクチュエータ、続いて前方アクチュエータを起動して後方から前方への動きを擬態する。これは、ユーザに前進するように指示する。(5)触覚効果の強度又は持続時間を変えて、目指す目的地への相対的な近さを示す。たとえば、触覚効果が強くなるにつれ、ユーザは目的地に近くなる。
【0019】
一実施形態では、携帯装置10はテレビゲームコントローラであり、4つのアクチュエータ上で生成される触覚効果によって、効果を高めることができるようになる。たとえば、ビデオカー(video car)のタイヤ下の道路感覚を擬態する場合、そのビデオカーの前方タイヤは前方アクチュエータを通して道路の感触を得ることができ、後方タイヤは後方アクチュエータを通して道路感覚を感じる。したがって、車が道路の凹凸の上を通る場合、その車が凹凸の上を進行するにつれ、またその車が平坦な舗装路面から凹凸を有する砂利道を走行するにつれ、触覚効果は前方アクチュエータから後方アクチュエータへ伝達され得る。後者の場合、触覚効果は路面の種類の変化に基づいて変化し得る。さらに、ビデオ車両(video vehicles)の位置通知、特徴、シールド、武器又は損傷を、異なるアクチュエータ上での触覚効果を用いて起動することができる。たとえば、武器を発射する場合、後方アクチュエータを左方/右方アクチュエータと共に起動してロケット弾の発射を擬態することができ、次いで前方アクチュエータを単独で又は左方/右方アクチュエータと共に起動して、遠く離れたよりかすかな爆発を感じとることができる。テレビゲームのための「ジェスチャリング(Gesturing)」を強化することができる。たとえば、ゴルフゲームでゴルフクラブを「スイングする」ジェスチャリングは、異なるアクチュエータを起動させて方向指示を提供することができる。
【0020】
別の実施形態では、異なるアクチュエータ上で演奏する異なる振動ベースのMIDI楽器を生成することによって、複数の「チャネル」着信音を生成することができる。たとえば、バスドラムを下部アクチュエータ上で生成することができ、歌声を上部アクチュエータ上で生成することができ、メロディ又は他のサポートビート(supporting beat)楽器を左方/右方アクチュエータ上で生成することができる。さらに、単一のアクチュエータを用いる代わりに、複数のアクチュエータによって、振動ベースの発信者番号の種類をはるかに増やすことができるようになる。さらに、MP3ファイル等の音楽ファイルの再生中に、異なる周波数帯域を、隔離したアクチュエータを含む異なる領域へ方向付けることができる。
【0021】
開示されたように、実施形態による携帯装置が、それぞれが実質的に機械的に隔離しているセクションに包囲されている、複数のアクチュエータを備える。複数のアクチュエータ上で生成される触覚効果は、装置の有用性を高める指向性情報をユーザに提供することができる。
【0022】
いくつかの実施形態が、本明細書において具体的に説明及び/又は記載されている。しかしながら、本発明の精神及び意図する範囲から逸脱することなく、それらの実施形態の改良形態及び変形形態は上記の教示により包含され、添付の特許請求の範囲内にあることが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯装置であって、
第1のセクションと、
前記第1のセクションに結合されている第1のアクチュエータと、
第2のセクションと、
前記第2のセクションに結合されている第2のアクチュエータと、
を備え、前記第1のセクション及び前記第2のセクションは実質的に機械的に隔離されている、携帯装置。
【請求項2】
前記第1のセクション及び前記第2のセクションに結合されている第1の振動隔離障壁をさらに備える、請求項1に記載の携帯装置。
【請求項3】
第3のセクションと、
前記第3のセクションに結合されているユーザインタフェースと、
をさらに備える、請求項1に記載の携帯装置。
【請求項4】
前記ユーザインタフェースはタッチスクリーンである、請求項3に記載の携帯装置。
【請求項5】
前記第1のセクション、前記第2のセクション、及び前記第3のセクションに結合されている第2の振動隔離障壁をさらに備える、請求項3に記載の携帯装置。
【請求項6】
前記第1の振動隔離障壁はポロン発泡体から成る、請求項1に記載の携帯装置。
【請求項7】
前記第1のアクチュエータ及び前記第2のアクチュエータに結合されているプロセッサをさらに備える、請求項1に記載の携帯装置。
【請求項8】
前記第1の振動隔離障壁は、前記第1のアクチュエータによって発生する振動の強度を、前記第2のセクションにおいて実質的に低減させるようになっている、請求項2に記載の携帯装置。
【請求項9】
前記第3のセクションに結合されている第3のアクチュエータをさらに備える、請求項3に記載の携帯装置。
【請求項10】
触覚効果を生成する装置であって、
第1のセクションと、
前記第1のセクションに結合されている第1のアクチュエータと、
第2のセクションと、
前記第2のセクションに結合されている第2のアクチュエータと、
前記第1のセクション及び前記第2のセクションに結合されている第1の振動隔離障壁と、
を備える、装置。
【請求項11】
前記第1のセクション及び前記第2のセクションに結合されている第2の振動隔離障壁と、
前記第2の振動隔離障壁に結合されており、ユーザインタフェースを備える第3のセクションと、
をさらに備える、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記ユーザインタフェースはタッチスクリーンである、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記第1の振動隔離障壁はポロン発泡体から成る、請求項10に記載の装置。
【請求項14】
前記第1のアクチュエータ及び前記第2のアクチュエータに結合されているプロセッサをさらに備える、請求項10に記載の装置。
【請求項15】
前記第1の振動隔離障壁は、前記第1のアクチュエータによって発生する振動の強度を、前記第2のセクションにおいて実質的に低減させるようになっている、請求項10に記載の装置。
【請求項16】
前記第3のセクションに結合されている第3のアクチュエータをさらに備える、請求項11に記載の装置。
【請求項17】
前記第1のアクチュエータ及び前記第2のアクチュエータはそれぞれ、指向性情報を提供する振動を生成する、請求項11に記載の装置。
【請求項18】
前記第1のアクチュエータ及び前記第2のアクチュエータはそれぞれ、指向性情報を提供する振動を生成する、請求項1に記載の携帯装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2011−501902(P2011−501902A)
【公表日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528038(P2010−528038)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/077588
【国際公開番号】WO2009/045820
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(500390995)イマージョン コーポレーション (65)
【氏名又は名称原語表記】IMMERSION CORPORATION
【Fターム(参考)】