説明

携帯通信端末装置

【課題】バッテリ電力による動作電圧が低下しても非接触近接通信による認証及び決済機能を継続して使用可能な携帯通信端末装置を提供する。
【解決手段】バッテリ(5)からの必要な電力供給がなくなった場合にだけ、セキュリティコントローラ(4)を低消費電力で動作するモードに制御し、外部からの電磁界電力により非接触認証及び決済機能を確保し、主目的の通信機能の使用によりバッテリ残量がなくなっても、非接触認証及び決済機能が使えるようにする。すなわち、バッテリから必要な電力供給がある場合には、本来バッテリ駆動されるセキュリティコントローラの利点である高速処理及び大容量記憶等を生かした高性能多機能な認証及び決済処理を可能としながら、バッテリ残量がなくなるという特異な場面では最低限の認証決済処理をすることができるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触近接通信と前記非接触近接通信よりも通信距離の長い無線通信の双方をサポートし且つ夫々の通信に際してセキュリティ処理に利用されるセキュリティコントローラを有する携帯通信端末装置に関し、例えば、認証及び決済機能を備えた携帯電話器に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触近接通信機能を備える携帯端末装置とは、元々別の使用目的を主とした装置(通話機能を主目的とした携帯電話等)に、非接触認証、決済機能を追加したものである。元々、非接触認証及び決済機能専用の単機能のカード型端末装置ではバッテリを使わず、対向の読取書込装置が発生する搬送波(キャリア)を受けてその電磁界電力を用いて動作する。携帯端末装置にその非接触認証及び決済機能を付加的に備えた場合には、カード型端末装置より消費電力が大きく、電磁界伝送電力による電源供給では機能を果たせず、バッテリを使用することになってしまっている。これは、カード型端末装置と比較して携帯端末装置では、非接触認証及び決済のためのセキュリティ処理を行なうセキュリティコントローラを移動体通信処理にも利用できるように多機能化したりするために、セキュリティコントローラのCPUの性能向上、更には記憶装置の大容量化が行われ、消費電力が大きくなっているからである。
【0003】
この携帯端末装置はバッテリからの供給電力により機能するものであるが、装置の主目的の使用により、バッテリの電力を消費し、電力供給能力が低下し、主目的の機能を果たせなくなる状況に陥ることがある。携帯端末装置内では、バッテリの出力電圧値を監視することにより電力供給能力を推測し、一定の電圧値以下になったら使用不可状態として、主目的の機能を停止していた。しかし、非接触認証、決済機能については消費電力が主目的と比較して小さいため、主目的での機能は果たせない電力供給能力状態であっても、次の決まった電圧値に低下するまで、非接触認証、決済機能を動作可能な場合がある。
【0004】
しかしながら、携帯端末装置に搭載された非接触認証、決済機能は非接触認証及び決済機能専用の単機能のカード型端末装置に比べれば前述の如く電力消費が大きく、自然放電するバッテリの状態からすると動作可能であったとしても非常にわずかな期間であり、主目的の機能停止から、非接触認証、決済が可能な期間にその機能を使える可能性は高くなく、結果的にバッテリの供給能力を回復しないと非接触認証、決済も行えない状況に陥る可能性が高い。例えば、通勤定期を電子情報として格納した携帯端末装置がバッテリ残量不足で非接触認証機能が使えなくなった場合、通勤定期としての動作ができなくなり、充電して使用可能状態にしない限り定期を持っているのに関わらず乗車料を支払う必要が起きてしまう。
【0005】
特許文献1には電話機能と共に非接触認証機能及び決済機能を実現する非接触ICカード機能部を搭載した携帯電話器における低消費電力化の技術が記載される。これによれば、バッテリ寿命を延ばすために、電磁界電力が不足する場合にバッテリ電力を非接触ICカード機能部に供給するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−60700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、電磁界電力が不足する場合にバッテリ電力を非接触ICカード機能部に供給してバッテリ寿命を延ばそうとしても、そもそも非接触ICカード機能部の消費電力が非接触認証及び決済機能専用のカード型端末装置に比べて大きくなっているという事情の下では、ほとんどの場合に電磁界電力だけでは電力不足を生じ、バッテリ寿命を思うように延ばすことができない場合の多いことが予想される。
【0008】
本発明の目的は、バッテリ電力による動作電圧が低下しても非接触近接通信による認証及び決済機能を継続して使用可能な携帯通信端末装置を提供することにある。
【0009】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0011】
すなわち、バッテリからの必要な電力供給がなくなった場合にだけ、セキュリティコントローラを低消費電力で動作するモードに制御し、外部からの電磁界電力により非接触認証及び決済機能を確保し、主目的の通信機能の使用によりバッテリ残量がなくなっても、非接触認証及び決済機能が使えるようになる。すなわち、バッテリから必要な電力供給がある場合には、本来バッテリ駆動されるセキュリティコントローラの利点である高速処理及び大容量記憶等を生かした高性能多機能な認証及び決済処理を可能としながら、バッテリ残量がなくなるという特異な場面では最低限の認証決済処理をすることができるようにする。
【発明の効果】
【0012】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば下記のとおりである。
【0013】
すなわち、非接触近接通信と前記非接触近接通信よりも通信距離の長い無線通信の双方をサポートし且つ夫々の通信におけるセキュリティ処理に利用可能なセキュリティコントローラを有する携帯通信端末装置において、バッテリ電力による動作電圧が低下しても非接触近接通信による認証及び決済機能を継続して安定的に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は本発明に係る携帯通信端末装置を例示するブロック図である。
【図2】図2は非接触近接通信部2の具体例を示すブロック図である。
【図3】図3はセキュリティコントローラを例示するブロック図である。
【図4】図4は電圧監視回路を例示するブロック図である。
【図5】図5は電源制御部による内部回路への動作電圧の供給形態を例示するブロック図である。
【図6】図6はセキュリティコントローラのクロック供給系統を例示するブロック図である。
【図7】図7はクロック制御部の一例を示すブロック図である。
【図8】図8にはクロック制御部の別の例を示すブロック図である。
【図9】図9はセキュリティコントローラのクロック供給系統の別の例を示すブロック図である。
【図10】図10は図9の機能を実現するクロック制御回路の制御論理を例示するブロック図である。
【図11】図11は電源制御回路を用いてプログラムスタートアドレスを選択可能にする構成を例示するブロック図である。
【図12】図12は第1プログラムPGM_Fと第2プログラムPGM_Sを固定されたメモリ領域にマッピングした例を示すメモリマップ図である。
【図13】図13は第1プログラムPGM_Fと第2プログラムPGM_Sを任意のメモリ領域にマッピング可能としたメモリマップ図である。
【図14】図14はセキュリティコントローラが電源オンにされたとき動作を例示するフローチャートである。
【図15】図15はプログラム領域の活性化制御によって実行するプログラムを切換え制御する例を示すブロック図である。
【図16】図16はバッテリ電圧VDDbをセキュリティコントローラが判別するようにした携帯通信端末装置を例示するブロック図である。
【図17】図17は16におけるセキュリティコントローラの構成を例示するブロック図である。
【図18】図18は図16においてセキュリティコントローラが電源オンにされたとき動作を例示するフローチャートである。
【図19】図19は図16の構成に対してバッテリ電圧VDDbを移動体通信部からセキュリティコントローラ4へ渡すようにした携帯通信端末装置のブロック図である。
【図20】図20はバッテリ電圧VDDbを非接触近接通信部が判別する場合の携帯通信端末装置を示すブロック図である。
【図21】図21は図20におけるセキュリティコントローラのブロック図である。
【図22】図22は図20においてセキュリティコントローラが電源オンにされたとき動作を例示するフローチャートである。
【図23】図23はバッテリ電圧VDDbを非接触近接通信部と移動体通信部の双方が判別する場合の携帯通信端末装置を示すブロック図である。
【図24】図24は図23におけるセキュリティコントローラのブロック図である。
【図25】図25は図24のセキュリティコントローラの低消費電力制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。代表的な実施の形態についての概要説明で括弧を付して参照する図面中の参照符号はそれが付された構成要素の概念に含まれるものを例示するに過ぎない。
【0016】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係る携帯通信端末装置(1)は、非接触近接通信を行う非接触近接通信部(2)と、前記非接触近接通信よりも通信距離の長い無線通信を行うと共に当該無線通信のための入出力制御を行う無線通信部(3)と、前記非接触近接通信部及び前記無線通信部のためのセキュリティ処理に利用されるセキュリティコントローラ(4)と、バッテリ(5)とを有する。前記非接触近接通信部は非接触近接通信のキャリアによる電磁界電力と前記バッテリからのバッテリ電力を受取って動作し、受取った電力を前記セキュリティコントローラに供給する。前記セキュリティコントローラは前記非接触近接通信部から供給される電力(VDDA)による電圧が規定レベル(Vref)に達しているか否かを判別し、規定レベルに達していないことが判別されたときは前記セキュリティコントローラの電力消費を減らす制御を行う。
【0017】
これにより、バッテリからの必要な電力供給がなくなった場合にだけ、セキュリティコントローラを低消費電力で動作させて、外部からの電磁界電力により非接触認証及び決済機能を確保するから、無線通信部の動作によりバッテリ残量が少なくなっても、非接触近接通信部を介するセキュリティコントローラを用いた非接触認証及び決済機能を継続して安定的に使用することができる。
【0018】
〔2〕項1の携帯通信端末装置において、前記セキュリティコントローラは、内部動作の同期クロック信号を生成するクロック制御回路(25)を有する。前記クロック制御回路は、前記規定レベルに達していないと判別されたときは、達していると判別されたときに比べて前記同期クロック信号(図7,8のCK)の周波数を低くする。クロック信号周波数を低くすることによってセキュリティコントローラ全体の電力消費量を低減して、近接非接触通信による最低限の認証決済処理だけを生かすことができる。
【0019】
〔3〕項1の携帯通信端末装置において、前記セキュリティコントローラは、内部動作の同期クロック信号を生成するクロック制御回路(25)を有する。前記クロック制御回路は前記規定レベルに達しないと判別されたときは、前記無線通信部のためのセキュリティ処理にのみ利用される回路への同期クロック信号(図9のCK1)の供給を遮断する。バッテリ残量が少なくなってそもそも動作不可能な無線通信部のためのセキュリティ処理にのみ利用される回路への同期クロック信号の供給を遮断することにより、近接非接触通信による最低限の認証決済処理だけを生かすことができる。
【0020】
〔4〕項1乃至3の何れかの携帯通信端末装置において、前記セキュリティコントローラは、前記規定レベルに達しないと判別されたときは、前記無線通信部のためのセキュリティ処理にのみ利用される回路への動作電源(図5のVdd2)の供給を遮断する。バッテリ残量が少なくなってそもそも動作不可能な無線通信部のためのセキュリティ処理にのみ利用される回路への動作電源の供給を遮断することにより、近接非接触通信による最低限の認証決済処理だけを生かすことができる。
【0021】
〔5〕項4の携帯通信端末装置において、前記セキュリティコントローラは、プログラムメモリ部(20)、前記プログラムメモリ部が保持するプログラムを実行するプロセッサ(21)、前記無線通信部のためのセキュリティ処理に用いる第1回路(22)、及び前記非接触近接通信部のためのセキュリティ処理に用いる第2回路(23)を有する。前記プログラムメモリは、前記無線通信部のためのセキュリティ処理に用いる回路を初期化する第1初期化プログラム(MIPGM)、前記非接触近接通信部のためのセキュリティ処理に用いる回路を初期化する第2初期化プログラム(NIPGM)、前記無線通信部のためのセキュリティ処理に用いる第1セキュリティ処理プログラム(MSPGM,RTOS)、及び前記非接触近接通信部のためのセキュリティ処理に用いる第2セキュリティ処理プログラム(NSPGM)を保有する。
【0022】
〔6〕項5の携帯通信端末装置において、前記プログラムメモリ部は、前記第1初期化プログラム及び前記第1セキュリティ処理プログラムを格納する第1プログラムメモリ部(41)と、前記第2初期化プログラム及び前記第2セキュリティ処理プログラムを格納する第2プログラムメモリ部(40)とを有する。前記第1プログラムメモリ部と前記第2プログラムメモリ部の双方に動作電源が供給される第1動作形態、又は前記第2プログラムメモリ部のみに動作電源が供給される第2動作形態が選択可能にされる。前記無線通信部のためのセキュリティ処理にのみ利用される回路への動作電源の供給が遮断されるときは前記第2動作携帯が選択される。プログラムメモリ部をそのように分けることにより、電磁波電力だけでセキュリティコントローラを動作するときの電力消費をさらに抑えることができる。
【0023】
〔7〕項6の携帯通信端末装置において、前記プロセッサは、パワーオンリセットにおいて、前記電圧が規定レベルに達していると判別されたときには前記第1初期化プログラム及び第2初期化プログラムを実行して初期化処理を行ない、前記電圧が規定レベルに達していないと判別されたときには前記第2初期化プログラムを実行して初期化処理を行なう。電磁波電力だけでセキュリティコントローラを動作するとき、使用しない余計な回路に対する初期化動作による無駄な電力消費を低減することができる。
【0024】
〔8〕項1乃至7の何れかの携帯通信端末装置において、前記非接触近接通信部は、前記バッテリ電力による電圧が所定の電圧を超えているとき、前記電磁界電力が発生していれば当該電磁界電力を、発生していなければバッテリ電力を、前記セキュリティコントローラに供給し、前記バッテリ電力による電圧が前記所定の電圧以下のときは前記セキュリティコントローラに前記電磁界電力を供給し前記バッテリ電力の供給を遮断する(図2の13)。
【0025】
前記非接触近接通信部が通信動作を行うときは常に前記セキュリティコントローラに電磁界電力が供給され、セキュリティコントローラが電磁界電力による電圧を規定電圧に達していない電圧であると判別することにより、非接触近接通信が行われるときはバッテリ電源の電圧如何にかかわらずセキュリティコントローラを低消費電力化して動作させることができる。前記非接触近接通信部が通信動作を行うときは無線通信部が通信を行うことはない、ということを前提とする。
【0026】
〔9〕項1乃至7の何れかの携帯通信端末装置において、前記非接触近接通信部は、前記バッテリ電力による電圧が所定の電圧を超えているときは少なくともバッテリ電力を前記セキュリティコントローラに供給し、前記バッテリ電力による電圧が前記所定の電圧以下のときは前記セキュリティコントローラに前記電磁界電力を供給し前記バッテリ電力の供給を遮断する。
【0027】
〔10〕項8又は9の携帯通信端末装置において、前記既定の電圧と前記所定の電圧は等しい電圧である。
【0028】
〔11〕本発明の別の実施の形態に係る携帯通信端末装置は、非接触近接通信を行う非接触近接通信部と、前記非接触近接通信よりも通信距離の長い無線通信を行うと共に当該無線通信のための入出力制御を行う無線通信部と、前記非接触近接通信部及び前記無線通信部のためのセキュリティ処理に利用されるセキュリティコントローラと、バッテリとを有し、前記非接触近接通信部は非接触近接通信のキャリアによる電磁界電力と前記バッテリからのバッテリ電力を受取り、受取ったバッテリ電力による電圧が規定レベルに達しているか否かを判別する(図20の30B)。前記セキュリティコントローラは前記判別の結果を受取り、前記規定レベルに達していないことが判別されたときは前記セキュリティコントローラの電力消費を減らす制御を行う。これによれば、前記セキュリティコントローラに重ねて前記判別機能を設けなくてもよい。項1の携帯通信端末装置において、前記非接触近接通信部が電磁界電力又はバッテリ電力を選択的にセキュリティコントローラに供給する場合には前記セキュリティコントローラだけでなく前記非接触近接通信部も前記判別機能を備えることが必要である。
【0029】
〔12〕本発明の更に別の実施の形態に係る携帯通信端末装置は、非接触近接通信を行う非接触近接通信部と、前記非接触近接通信よりも通信距離の長い無線通信を行うと共に当該無線通信のための入出力制御を行う無線通信部と、前記非接触近接通信部及び前記無線通信部のためのセキュリティ処理に利用されるセキュリティコントローラと、バッテリとを有する携帯通信端末装置であって、前記非接触近接通信部は非接触近接通信のキャリアによる電磁界電力と前記バッテリからのバッテリ電力を受取り、受取ったバッテリ電力による電圧が規定レベルに達しているか否かを判別し、規定レベルに達していないことが判別されたときは前記セキュリティコントローラに電力消費を減らす制御を指示するコマンド(NCMD)を発行する(図23の30B)。前記無線通信部は前記バッテリからのバッテリ電力を受取り、受取ったバッテリ電力による電圧が規定レベルに達しているか否かを判別し、規定レベルに達していないことが判別されたときは前記セキュリティコントローラに電力消費を減らす制御を指示するコマンド(MCMD)を発行する(図23の30C)。
【0030】
2.実施の形態の詳細
実施の形態について更に詳述する。
【0031】
図1には本発明に係る携帯通信端末装置が例示される。図に示される携帯通信端末装置(PDA)1は、所謂移動体通信を行う携帯電話器に非接触近接通信機能を備えたICカード機能が付加されて構成される。具体的には、携帯通信端末装置1は、非接触近接通信を行う非接触近接通信部(NFDCOM)2、前記非接触近接通信よりも通信距離の長い無線通信(例えば、携帯電話等の移動体通信)を行うと共に当該無線通信のための入出力制御を行う無線通信部としての移動体通信部(MBLCOM)3、前記非接触近接通信部2及び前記移動体通信部3のためのセキュリティ処理に利用されるセキュリティコントローラ(SCRCNT)4、及びバッテリ(BTRY)5を有する。
【0032】
移動体通信部3は、特に図示はしないが、アンテナ10に接続された高周波部、送信データに対する変調や受信信号に対する復調などのプロトコル処理を行なうベースバンド部、送信データの生成や受信データの表示制御などのデータ処理を行なうアプリケーションプロセッサ部、液晶ディスプレイ、及びキーボード等を備えることによって携帯電話の機能を実現し、バッテリ5からのバッテリ電圧VDDbを動作電源として動作される。
【0033】
非接触近接通信部2は、対向する読取書込装置(RDWR)6との近距離無線通信におけるデータの送受信を行うとともに、読取書込装置6からのキャリアによる電磁界電力とバッテリからのバッテリ電力を受け、受取った電力を前記セキュリティコントローラ4に供給する。
【0034】
予め非接触近接通信部2の具体例を図2に基づいて説明する。アンテナ11とこれに並列に接続された容量19は共振回路を構成する。電源回路12はそれぞれ図示を省略する整流回路及び平滑容量から構成され、アンテナ10で受信された非接触通信の電磁波電力としてのキャリア(交流信号)を整流及び平滑して受信電圧VDDrを生成する。動作電圧判別選択回路13は前記受信電圧VDDrとバッテリ5からのバッテリ電圧VDDbとを入力し、バッテリ電圧VDDbが所定の電圧、例えば受信電圧VDDrとして期待される電圧(期待受信電圧)よりも高い電圧のとき、前記電磁界電力が発生していれば当該電磁界電力による受信電圧VDDrを、発生していなければバッテリ電圧VDDbを動作電圧VDDAとして出力し、バッテリ電圧VDDbが前記所定の電圧以下のであれば受信電圧VDDrを動作電圧VDDAとして出力する。動作電圧VDDAは内部回路14及びセキュリティコントローラ4の動作電源に用いられる。内部回路14は入力した動作電圧VDDAが動作許容電圧の上限を超えている場合には動作電圧VDDAを降圧して受信電圧VDDrとして期待される期待受信電圧を生成して内部の動作電圧とする。
【0035】
内部回路14は受信部15、送信部16、制御部17、及びメモリ18から構成される。受信部14はアンテナ11によって受信された交流信号に重畳されたデータ信号を復調してディジタルの受信データとして制御部17に供給する。また、送信部16は、制御部17から供給されるディジタルの送信データに基づいて、アンテナ11が受信しているキャリアとしての交流信号を変調する。メモリは送受信データを一時的に保持する。
【0036】
前記セキュリティコントローラ4は、例えば図3に例示されるように、プログラムメモリ部(PMRY)20、プログラムメモリ部20が保持するプログラムを実行するプロセッサ(PRSC)21、移動体通信部3とのインタフェースに用いる移動体通信部用インタフェース回路(MFNC)22、非接触近接通信部2とのインタフェースに用いる非接触近接通信部用インタフェース回路(NFNC)23、セキュリティコントローラ4の電源制御を行う電源制御部(PWCNT)24、及びセキュリティコントローラ4のクロック制御を行うクロック制御部(CKCNT)25を有し、それらは内部バス26に接続される。移動体通信部用回路22は移動体通信部3に接続され、非接触近接通信部用インタフェース回路23は非接触近接通信部2に接続される。
【0037】
電源制御部24は電圧監視回路(VdMNT)30を有する。電圧監視回路30は、図4に例示されるように、非接触近接通信部2から供給される動作電圧VDDAが規定レベルVrefを超えているか否かを比較器(CMP)31で判別し、判別信号φdtを出力する。規定レベルVrefは基準電圧生成回路(VrGNR)32で生成する。ここで、規定レベルVrefとは、特に制限されないが、セキュリティコントローラ4がその全ての機能を用いて動作するために必要とされる最低レベルの電圧、即ち、全機能動作保証電圧とされる。この全機能動作保証電圧は、例えば非接触近接通信部2の動作電圧判別選択回路13が判別する所定の電圧と同一或いは僅かに高い電圧である。
【0038】
セキュリティコントローラ4は電圧監視回路30で生成される判別信号φdtに基づく低消費電力制御を行う。以下、その低消費電力の制御形態について複数の例を挙げて詳述する。
【0039】
《動作電圧の供給/遮断制御》
低消費電力の第1の制御形態は動作電圧の供給/遮断を制御する方式である。
【0040】
電源制御部30は、図5に例示されるように、セキュリティコントローラ4の内部において、移動体通信部3のためのセキュリティ処理にのみ利用される回路部分へ動作電圧Vdd2を供給する第2電源供給部34、及びその他の回路部分へ動作電源Vdd1を供給する第1電源供給部35を備える。第2電源供給部34は、前記規定レベルVrefを超えていないことを判別信号φdtが示すとき第2動作電圧Vdd2の供給を遮断し、第1電源供給部35は第1動作電圧Vdd1を常時供給する。
【0041】
図5においてプログラムメモリ部20は第1プログラムメモリ部(20_F)40と第2プログラムメモリ部(20_S)41に分離され、夫々個別に動作電源を受けてメモリ動作可能にされる。第2プログラムメモリ部41は、特に制限されないが、移動体通信用セキュリティ処理プログラム(MSPGM)、移動体通信用セキュリティ処理初期化プログラム(MIPGM)、及びリアルタイムOS(RTOS)を格納する。第1プログラムメモリ部40は、特に制限されないが、非接触近接通信用セキュリティ処理プログラム(NSPGM)、及び非接触近接通信用セキュリティ処理初期化プログラム(NIPGM)を格納する。
【0042】
図5の例に従えば、第2電源供給部34が出力する動作電圧Vdd2は第2プログラムメモリ部41及び移動体通信部用インタフェース回路(MFNC)22に供給される。第1電源供給部35が出力する動作電圧Vdd1は第1プログラムメモリ部40、プロセッサ21、クロック制御部25及び非接触近接通信部用インタフェース回路(MFNC)23に供給される。
【0043】
上記より、動作電圧VDDAが規定レベルVrefを超えていないと判別されたときは、前記移動体通信のためのセキュリティ処理にのみ利用される回路22,41への動作電圧Vdd2の供給が遮断される。バッテリ残量が少なくなってそもそも動作不可能な移動体通信のためのセキュリティ処理にのみ利用される回路への動作電圧Vdd2の供給を遮断することにより、近接非接触通信による最低限の認証決済処理だけを生かすことができる。特に、非接触近接通信部2における動作電圧判別選択回路13は電源回路12で受信電圧VDDrが生成される場合、即ち、非接触近接通信が行われるときは、バッテリ電圧VDDbが規定レベル以下になっていなくても、動作電圧VDDAとして受信電圧VDDrをセキュリティコントローラ4に供給する。したがって、非接触近接通信が行われるときはバッテリ電源の電圧如何にかかわらずセキュリティコントローラ4を低消費電力化して動作させることができる。これは前記非接触近接通信部が通信動作を行うときは無線通信部が通信を行うことはない、ということを前提とするものである。要するに、非接触近接通信部2が非接触近接通信を行うとき、移動体通信部3は移動体通信を行わず、セキュリティコントローラ4は非接触近接通信のためのセキュリティ処理が可能にされれば十分であり、セキュリティコントローラには動作電圧VDDAとして受信電圧VDDrが供給され、非接触認証及び決済に不要な移動体通信部用インタフェース回路22及び第2プログラムメモリ部41には動作電源の供給が遮断される。
【0044】
《クロック周波数制御》
低消費電力の第2の制御形態はクロック周波数を制御する方式である。
【0045】
図6にはセキュリティコントローラ4のクロック供給系統が例示される。クロック制御回路25は前記判別信号φdtを受けて、その値にしたがってクロック信号CKの周波数を制御する。即ち、動作電圧VDD2が規定レベルVrefを超えていないと判別されたときは、超えていると判別されたときに比べて前記クロック信号CKの周波数を低くする。クロック信号周波数を低くすることによってセキュリティコントローラ全体の電力消費量を低減して、近接非接触通信による最低限の認証決済処理だけを生かすことができる。
【0046】
図7にはクロック制御部25の一例が示される。ここではクロック制御部25はクロック信号CK1を生成する第1クロック源(CKSRC_F)41とクロック信号CK2を生成する第2クロック源(CKSRC_S)42を有し、判別信号φdtの値に従って何れか一方のクロック源を発振動作させてクロック信号CKを生成する。クロック信号CK1はクロック信号CK2よりも周波数が高い。動作電圧VDD2が規定電圧Vref以下になっていることを判別信号φdtが示しているときは第2のクロック源42を発振動作させ、そうでないときは第1のクロック源41を発振動作させて、クロック信号CKを生成する。発振動作されていないクロック源の出力は高出力インピーダンス状態にされている。第2クロック源42の動作を選択すればクロック源の発振動作による電力消費も少なくなる。
【0047】
図8にはクロック制御部25の別の例が示される。ここではクロック制御部25はクロック信号CK1を生成する第1クロック源(CKSRC)43、クロック信号CK1を分周してクロック信号CK2を生成する分周回路(CKDIV)44、およびクロック選択回路(CKSLC)45を有し、判別信号φdtの値に従ってクロック信号CK1又はCK2の何れか一方を選択する。動作電圧VDD2が規定電圧Vref以下になっていることを判別信号φdtが示しているときはクロック信号CK2を選択し、そうでないときはクロック信号CK1を選択する。クロック源を単一にできるから例えば半導体集積回路として1チップにセキュリティコントローラ4が形成されるような場合にクロック制御回路25のチップ占有面積を小さくすることができる。クロック源はセキュリティコントローラ4内に形成することに限定されず、外部発振子又は外部からクロック信号の供給を受ける場合も同様である。
【0048】
上記クロック周波数制御を採用することにより、セキュリティコントローラ4は供給される動作電圧VDD2の値を監視することによってバッテリ5の残電力を判断でき、バッテリの残電力があっても移動体通信が行われずに非接触近接通信が行われるとき、バッテリ電源の供給が断たれているときの何れにおいても、電磁界電力による受信電圧VDDrを用いた省電力動作が可能となる。
【0049】
《クロック信号の供給/遮断制御》
低消費電力の第3の制御形態はクック信号の供給/遮断を制御する方式である。
【0050】
図9にはセキュリティコントローラ4のクロック供給系統の別の例が示される。クロック制御回路25はクロック信号CKmを移動体通信のためのセキュリティ処理にのみ使用する回路である移動体通信部用インタフェース回路22に供給し、クロック信号CKnをその他の回路部分に供給する。クロック信号CKmとCKnの周波数と、特に制限されないが、同一周波数とされる。図9においてクロック制御部25は動作電圧VDDAが前記規定電圧Vrefよりも高いことを判別信号φdtが示しているときはクロック信号CKm及びCKnの双方を夫々の回路に供給し、動作電圧VDDAが前記規定電圧Vrefよりも低いことを判別信号φdtが示しているときはクロック信号CKmの供給を遮断する。クロック信号CKmの供給を選択的に遮断することによってセキュリティコントローラ全体の電力消費量を低減して、近接非接触通信による最低限の認証決済処理だけを生かすことができる。
【0051】
図10には図9の機能を実現するクロック制御回路25の制御論理が例示される。クロック制御回路25はクロック信号CKnを出力するクロック源(CKSRC)50を備え、判別信号φdtのハイレベルに応答してクロック信号CKnをクロック信号CKmとしてナンドゲート51から出力するように構成される。
【0052】
《プログラムの切換え》
低消費電力の第4の制御形態はプロセッサ21が実行するプログラムを切換え制御する方式である。
【0053】
図11には電源制御回路を用いてプログラムスタートアドレスを選択可能にする構成が例示される。第1スタートアドレスレジスタ(SAREG_F)61はプロセッサ21の制御によってセキュリティコントローラ4の全ての機能を利用可能にするための第1プログラムのスタートアドレスを保持し、第2スタートアドレスレジスタ(SAREG_S)62はプロセッサ21の制御によってセキュリティコントローラ4の非接触近接通信のためのセキュリティ処理を行なうための第2プログラムのスタートアドレスを保持する。特に制限されないが、プログラムスタートアドレスはセキュリティコントローラ4のパワーオンリセット若しくはシステムリセットの際に速やかに読み出されるものであり、リセット前後でそのアドレス情報が保持されていることが望ましい。よって、第1スタートアドレスレジスタ61および第2スタートアドレスレジスタ62は、アドレス情報を変更可能とするために専用の不揮発性メモリであってもよいし、不揮発性メモリの一部であってもよい、また、ROM等で固定的に保持していてもよい。アドレスセレクタ60は、セキュリティコントローラ4のパワーオンリセット若しくはシステムリセットにおいて、動作電圧VDDAが前記規定電圧Vrefよりも低いことを判別信号φdtが示しているときは第2スタートアドレスレジスタ62のスタートアドレスを、動作電圧VDDAが前記規定電圧Vrefを越えていることを判別信号φdtが示しているときは第1スタートアドレスレジスタ61のスタートアドレスを、プロセッサ21の図示を省略するプログラムカウンタ(PC)に初期設定する。特に制限されないが、第1プログラムはそのプログラム格納領域のスタートアドレスから順に格納された移動体通信用セキュリティ処理初期化プログラム(MIPGM)、非接触近接通信用セキュリティ処理初期化プログラム(NIPGM)、リアルタイムOS(RTOS)、移動体通信用セキュリティ処理プログラム(MSPGM)、及び非接触近接通信用セキュリティ処理プログラム(NSPGM)から成る。第2プログラムはそのプログラム格納領域のスタートアドレスから順に格納された非接触近接通信用セキュリティ処理初期化プログラム(NIPGM)及び非接触近接通信用セキュリティ処理プログラム(NSPGM)から成る。例えば図12に例示されるように、第1プログラムPGM_Fと第2プログラムPGM_Sが完全に分離されてプログラムメモリ20に格納され、1プログラムPGM_Fはアドレス0を先頭とする領域に格納され、第2プログラムPGM_SはアドレスYを先頭とする領域に格納される。また、図13のように第1スタートアドレスレジスタ(SAREG_F)61及び第2スタートアドレスレジスタ(SAREG_S)62をメモリ空間にマッピングして書換え可能とすれば、第1プログラムPGM_Fと第2プログラムPGM_Sを任意のメモリ領域にマッピング可能になる。
【0054】
上記構成によれば、図14に例示されるようにセキュリティコントローラ4が電源オンにされたとき、その動作電圧VDDAが前記規定電圧Vrefを越えているか否かが判別され(S1)、例えば規定電圧Vref(=2.2V)を超えていれば第1スタートアドレスレジスタ(SAREG_F)61のアドレスがプロセッサ21のプログラムカウンタ(PC)にロードされ(S2)、ロードされたアドレスを先頭に第1プログラムが実行開始され、セキュリティコントローラ4の全ての機能が利用可能にされる(S3)。一方、例えば規定電圧Vref(=2.2V)以下であれば第2スタートアドレスレジスタ(SAREG_S)62のアドレスがプロセッサ21のプログラムカウンタ(PC)にロードされ(S4)、ロードされたアドレスを先頭に第2プログラムが実行開始され、セキュリティコントローラ4は非接触近接通信のためのセキュリティ処理だけが利用可能にされる(S5)。バッテリ電力が低下したときにはセキュリティコントローラ4は非接触近接通信のためのセキュリティ処理に要する初期化動作だけが行なわれ、移動体通信のためのセキュリティ処理に要する初期化動作は行なわれず、電磁界電力による少ない電力を用いた処理において無駄な処理を省くことができ、非接触近接通信への速やかな移行を保証することができる。図14では例示していないが、電源オン時のみの電圧レベル判別となっているが、必要に応じ、又は常時監視していてもよく、これに応じて状態を変更してもよい。
【0055】
図15にはプログラム領域の活性化制御によって実行するプログラムを切換え制御する例が示される。第1プログラム(PGM_F)の格納部71はその格納領域のスタートアドレスから順に移動体通信用セキュリティ処理初期化プログラム(MIPGM)、非接触近接通信用セキュリティ処理初期化プログラム(NIPGM)、リアルタイムOS(RTOS)、移動体通信用セキュリティ処理プログラム(MSPGM)、及び非接触近接通信用セキュリティ処理プログラム(NSPGM)を保有する。第2プログラム(PGM_S)の格納領部72はそのスタートアドレスから順に非接触近接通信用セキュリティ処理初期化プログラム(NIPGM)及び非接触近接通信用セキュリティ処理プログラム(NSPGM)を保有する。プログラムの格納部71,72は個別メモリであてもよいし、同一メモリ内の異なるメモリブロックであってもよいが、少なくとも選択的に活性化される用になっている。プログラムセレクタ(PGMSLC)70は、セキュリティコントローラ4のパワーオンリセット若しくはシステムリセットにおいて、動作電圧VDDAが前記規定電圧Vrefよりも低いことを判別信号φdtが示しているときは第2プログラムの格納領域72を、動作電圧VDDAが前記規定電圧Vrefを越えていることを判別信号φdtが示しているときは第1プログラムの格納領域71を、活性化制御信号φmenにて動作可能にする。活性化された一方の格納領域がプロセッサ21のメモリ空間にマッピングされることになり、当該格納領域の先頭アドレスの命令から順に実行される。図15の構成においても、バッテリ電力が低下したときにはセキュリティコントローラ4は非接触近接通信のためのセキュリティ処理に要する初期化動作だけが行なわれ、移動体通信のためのセキュリティ処理に要する初期化動作は行なわれず、電磁界電力による少ない電力を用いた処理において無駄な処理を省くことができ、非接触近接通信への速やかな移行を保証することができる。
【0056】
《セキュリティコントローラによるバッテリ電圧の判別》
以上説明した低消費電力の制御ではセキュリティティコントローラ4が動作電圧VDDAのレベルを判別した。低消費電力の第5の制御形態として、バッテリ電圧VDDbをセキュリティコントローラ4が判別する場合を説明する。
【0057】
図16に例示されるようにセキュリティコントローラ4にはバッテリ5からバッテリ電圧VDDbが直接供給される。このとき、セキュリティコントローラ4は図17に例示されるように電圧監視回路30Aでバッテリ電圧VDDbが規定電圧Vrefに達しているか否かを判別する。それによる判別信号φdtは例えば図11で説明したプログラムのスタートアドレス選択に利用する。この場合には、図18に示されるように、セキュリティコントローラ4が電源オンにされたとき、バッテリ電圧VDDbが前記規定電圧Vrefを越えているか否かが判別され(S6)、例えば規定電圧Vref(=2.2V)を超えていれば第1スタートアドレスレジスタ(SAREG_F)61のアドレスがプロセッサ21のプログラムカウンタ(PC)にロードされ(S2)、ロードされたアドレスを先頭に第1プログラムが実行開始され、セキュリティコントオr-ラ4の全ての機能が利用可能にされる(S3)。一方、例えば規定電圧Vref(=2.2V)以下であれば第2スタートアドレスレジスタ(SAREG_S)62のアドレスがプロセッサ21のプログラムカウンタ(PC)にロードされ(S4)、ロードされたアドレスを先頭に第2プログラムが実行開始され、セキュリティコントローラ4は非接触近接通信のためのセキュリティ処理だけが利用可能にされる(S5)。判別信号φdtを用いた定消費電力制御の形態はその他の第1形態乃至第3形態の何れであってもよい。図18では例示していないが、電源オン時のみの電圧レベル判別となっているが、必要に応じ、又は常時監視していてもよく、これに応じて状態を変更してもかまわない。
【0058】
尚、図16の構成に対して図19のようにバッテリ電圧VDDbを移動体通信部3からセキュリティコントローラ4へ渡すようにしてもよい。
【0059】
《非接触近接通信部によるバッテリ電圧の判別》
以上説明した低消費電力の制御ではセキュリティコントローラ4が動作電圧VDDA又はバッテリ電圧を判別した。低消費電力の第6の制御形態として、バッテリ電圧VDDbを非接触近接通信部2が判別する場合を説明する。
【0060】
図20に例示されるようにセキュリティコントローラ4は非接触近接通信部2の電圧監視回路30Bによるバッテリ電圧VDDbの判別結果に応ずる指示信号φinstを受取って前述の定消費電力制御を行う。電圧監視回路30Bは図2で説明した動作電圧判別選択回路13における判別機能によって実現される。即ち、バッテリ電圧VDDbが所定の電圧を超えているかを判別する機能を流用し、その判別結果を図2の制御部17に渡し、制御部17は指示信号φinstをセキュリティコントローラ4に出力する。ここでは前記所定電圧は規定電圧Vrefに等しいものとする。バッテリ電圧VDDbが前記所定電圧を超えていれば指示信号φinstをハイレベル、所定電圧以下であれば指示信号φinstをローレベルとする。セキュリティコントローラ4は図21に例示されるように非接触近接通信用インタフェース回路23が指示信号φinstを受け取る。受取った指示信号φinstは例えば図11で説明したプログラムのスタートアドレス選択に利用する。この場合には、図22に示されるように、セキュリティコントローラ4が電源オンにされたとき、指示信号φinstのレベルが判別され(S7)、例えばハイレベルであれば(即ちバッテリ電圧VDDbが2.2Vのような所定電圧を超えている)、第1スタートアドレスレジスタ(SAREG_F)61のアドレスがプロセッサ21のプログラムカウンタ(PC)にロードされ(S2)、ロードされたアドレスを先頭に第1プログラムが実行開始され、セキュリティコントローラ4の全ての機能が利用可能にされる(S3)。一方、指示信号φinstのレベルがローレベルであれば(即ちバッテリ電圧VDDbが2.2Vのような所定電圧以下である)、第2スタートアドレスレジスタ(SAREG_S)62のアドレスがプロセッサ21のプログラムカウンタ(PC)にロードされ(S4)、ロードされたアドレスを先頭に第2プログラムが実行開始され、セキュリティコントローラ4は非接触近接通信のためのセキュリティ処理だけが利用可能にされる(S5)。指示信号φdtを用いた定消費電力制御の形態はその他の第1形態乃至第3形態の何れであってもよい。例えば電源供給/遮断制御などに適用する場合には指示信号φinstは非接触近接通信用インタフェース回路23から電源制御回路24に与えられれば良い。図22では例示していないが、電源オン時のみの電圧レベル判別となっているが、必要に応じ、又は常時監視していてもよく、これに応じて状態を変更してもかまわない。
【0061】
《移動体通信部及び非接触近接通信部の双方によるバッテリ電圧の判別》
最後に、低消費電力の第7の制御形態として、バッテリ電圧VDDbを非接触近接通信部2と移動体通信部3の双方が判別する場合を説明する。
【0062】
図23に例示されるように非接触近接通信部2は前記電圧監視回路30Bを備え、移動体通信部3は3Bと同様のバッテリ電圧VDDbを判別する電圧監視回路30Cを備える。非接触近接通信部2はバッテリ電圧VDDbが規定電圧以下になったことが前記電圧監視回路30Bによって検出されると、コマンドNCMDをセキュリティコントローラ4に発行し、一方、移動体通信部3はバッテリ電圧VDDbが規定電圧を越えていることが前記電圧監視回路30Cによって検出されると、コマンドMCMDをセキュリティコントローラ4に発行する。図24に示されるように、コマンドMCMDは移動体通信部用インタフェース回路22が受取り、コマンドNCMDは非接触近接通信部用インタフェース回路23が受取る。セキュリティコントローラ4はコマンドMCMDを受取ると、図5で説明した電源Vdd2の供給開始、図7および図8で説明したクロック信号CKの周波数増加、又は図9で説明したクロック信号CK1の供給開始等を指示する。一方セキュリティコントローラ4はコマンドNCMDを受取ると、図5で説明した電源Vdd2の供給遮断、図7および図8で説明したクロック信号CKの周波数低下、又は図9で説明したクロック信号CK1の供給停止等を指示する。したがって、図25に例示されるように、セキュリティコントローラ4にコマンドMCMDが発行されれば、セキュリティコントローラ4の全ての機能が利用可能にされ(S3)、セキュリティコントローラ4にコマンドNCMDが発行されれば非接触近接通信のためのセキュリティ処理だけが利用可能にされる(S5)。コマンドに対してプロセッサが応答することによって低消費電力の制御を行うから、その処理はソフトウェ(プロセッサの動作プログラム)差に大きく依存し、したがって、実仕様環境に合わせて定消費電力の制御形態を容易にカスタマイズすることができるようになる。
【0063】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0064】
例えば、非接触近接通信部の動作電圧判別選択回路13は、バッテリ電圧VDDbが所定の電圧以下になるまで動作電圧VDDAとしてバッテリ電圧VDDbを出力するように構成されていてもよい。非接触近接通信よりも通信距離の長い無線通信は移動体通信に限定されず無線LAN通信などであってもよい。非接触近接通信は、ISO/IEC14443(近接型:通信距離10cm以下)で国際標準化されている非接触式ICカードの規格及びそれに準拠する規格、そして、VICCタイプのようなISO/IEC15693の規格及びそれに準拠する規格に限定されず、適宜変更可能である。本発明は携帯電話器に適用される場合に限定されず、種々の携帯通信端末装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 携帯通信端末装置(PDA)
2 非接触近接通信部(NFDCOM)
3 移動体通信部(MBLCOM)
4 セキュリティコントローラ(SCRCNT)
5 バッテリ(BTRY)
6 読取書込装置(RDWR)
11 アンテナ
VDDr 電磁界電力による受信電圧
VDDb バッテリ電圧
VDDA 動作電圧
13 動作電圧判別選択回路
14 内部回路
15 受信部
16 送信部
17 制御部
18 メモリ
20 プログラムメモリ部(PMRY)
21 プロセッサ(PRSC)
22 移動体通信部用インタフェース回路(MFNC)
23 非接触近接通信部用インタフェース回路(NFNC)
24 電源制御部(PWCNT)
25 クロック制御部(CKCNT)
30,30A,30B,30C 電圧監視回路(VdMNT)
Vref 規定レベル
31 比較器(CMP)
32 基準電圧生成回路(VrGNR)
φdt 判別信号
Vdd2 セキュリティ処理にのみ利用される回路部分へ動作電圧
Vdd1 その他の回路部分へ動作電源
35 第1電源供給部
34 第2電源供給部
40 第1プログラムメモリ部(20_F)
41 第2プログラムメモリ部(20_S)
MSPGM 移動体通信用セキュリティ処理プログラム
MIPGM 移動体通信用セキュリティ処理初期化プログラム
RTOS リアルタイムOS
NSPGM 非接触近接通信用セキュリティ処理プログラム
NIPGM 非接触近接通信用セキュリティ処理初期化プログラム
41 クロック信号CK1を生成する第1クロック源(CKSRC_F)
42 クロック信号CK2を生成する第2クロック源(CKSRC_S)
43 クロック信号CK1を生成する第1クロック源(CKSRC)
44 クロック信号CK1を分周してクロック信号CK2を生成する分周回路(CKDIV)
45 クロック選択回路(CKSLC)
CKm 移動体通信部用インタフェース回路22に供給されるクロック信号
CKn その他の回路部分に供給されるクロック信号
61 第1スタートアドレスレジスタ(SAREG_F)
62 第2スタートアドレスレジスタ(SAREG_S)
71,72 プログラムの格納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触近接通信を行う非接触近接通信部と、前記非接触近接通信よりも通信距離の長い無線通信を行うと共に当該無線通信のための入出力制御を行う無線通信部と、前記非接触近接通信部及び前記無線通信部のためのセキュリティ処理に利用されるセキュリティコントローラと、バッテリとを有する携帯通信端末装置であって、
前記非接触近接通信部は非接触近接通信のキャリアによる電磁界電力と前記バッテリからのバッテリ電力を受取って動作し、受取った電力を前記セキュリティコントローラに供給し、
前記セキュリティコントローラは前記非接触近接通信部から供給される電力による電圧が規定レベルに達しているか否かを判別し、規定レベルに達していないことが判別されたときは前記セキュリティコントローラの電力消費を減らす制御を行う、携帯通信端末装置。
【請求項2】
前記セキュリティコントローラは、内部動作の同期クロック信号を生成するクロック制御回路を有し、
前記クロック制御回路は、前記規定レベルに達していないと判別されたときは、達していると判別されたときに比べて前記同期クロック信号の周波数を低くする、請求項1記載の携帯通信端末装置。
【請求項3】
前記セキュリティコントローラは、内部動作の同期クロック信号を生成するクロック制御回路を有し、
前記クロック制御回路は前記規定レベルに達しないと判別されたときは、前記無線通信部のためのセキュリティ処理にのみ利用される回路への同期クロック信号の供給を遮断する、請求項1記載の携帯通信端末装置。
【請求項4】
前記セキュリティコントローラは、前記規定レベルに達しないと判別されたときは、前記無線通信部のためのセキュリティ処理にのみ利用される回路への動作電源の供給を遮断する、請求項1乃至3の何れか1項記載の携帯通信端末装置。
【請求項5】
前記セキュリティコントローラは、プログラムメモリ部、前記プログラムメモリ部が保持するプログラムを実行するプロセッサ、前記無線通信部のためのセキュリティ処理に用いる第1回路、及び前記非接触近接通信部のためのセキュリティ処理に用いる第2回路を有し、
前記プログラムメモリは、前記無線通信部のためのセキュリティ処理に用いる回路を初期化する第1初期化プログラム、前記非接触近接通信部のためのセキュリティ処理に用いる回路を初期化する第2初期化プログラム、前記無線通信部のためのセキュリティ処理に用いる第1セキュリティ処理プログラム、及び前記非接触近接通信部のためのセキュリティ処理に用いる第2セキュリティ処理プログラムを保有する、請求項1又は4記載の携帯通信端末装置。
【請求項6】
前記プログラムメモリ部は、前記第1初期化プログラム及び前記第1セキュリティ処理プログラムを格納する第1プログラムメモリ部と、前記第2初期化プログラム及び前記第2セキュリティ処理プログラムを格納する第2プログラムメモリ部とを有し、前記第1プログラムメモリ部と前記第2プログラムメモリ部の双方に動作電源が供給される第1動作形態、又は前記第2プログラムメモリ部のみに動作電源が供給される第2動作形態が選択可能にされ、前記無線通信部のためのセキュリティ処理にのみ利用される回路への動作電源の供給が遮断されるときは前記第2動作携帯が選択される、請求項5記載の携帯通信端末装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、パワーオンリセットにおいて、前記電圧が規定レベルに達していると判別されたときには前記第1初期化プログラム及び第2初期化プログラムを実行して初期化処理を行ない、前記電圧が規定レベルに達していないと判別されたときには前記第2初期化プログラムを実行して初期化処理を行なう、請求項6記載の携帯通信端末装置。
【請求項8】
前記非接触近接通信部は、前記バッテリ電力による電圧が所定の電圧を超えているとき、前記電磁界電力が発生していれば当該電磁界電力を、発生していなければバッテリ電力を、前記セキュリティコントローラに供給し、前記バッテリ電力による電圧が前記所定の電圧以下のときは前記セキュリティコントローラに前記電磁界電力を供給し前記バッテリ電力の供給を遮断する、請求項1乃至7の何れか1項記載の携帯通信端末装置。
【請求項9】
前記非接触近接通信部は、前記バッテリ電力による電圧が所定の電圧を超えているときは少なくともバッテリ電力を前記セキュリティコントローラに供給し、前記バッテリ電力による電圧が前記所定の電圧以下のときは前記セキュリティコントローラに前記電磁界電力を供給し前記バッテリ電力の供給を遮断する、請求項1乃至7の何れか1項記載の携帯通信端末装置。
【請求項10】
前記既定の電圧と前記所定の電圧は等しい電圧である、請求項8又は9記載の携帯通信端末装置。
【請求項11】
非接触近接通信を行う非接触近接通信部と、前記非接触近接通信よりも通信距離の長い無線通信を行うと共に当該無線通信のための入出力制御を行う無線通信部と、前記非接触近接通信部及び前記無線通信部のためのセキュリティ処理に利用されるセキュリティコントローラと、バッテリとを有する携帯通信端末装置であって、
前記非接触近接通信部は非接触近接通信のキャリアによる電磁界電力と前記バッテリからのバッテリ電力を受取り、受取ったバッテリ電力による電圧が規定レベルに達しているか否かを判別し、
前記セキュリティコントローラは前記判別の結果を受取り、前記規定レベルに達していないことが判別されたときは前記セキュリティコントローラの電力消費を減らす制御を行う、携帯通信端末装置。
【請求項12】
非接触近接通信を行う非接触近接通信部と、前記非接触近接通信よりも通信距離の長い無線通信を行うと共に当該無線通信のための入出力制御を行う無線通信部と、前記非接触近接通信部及び前記無線通信部のためのセキュリティ処理に利用されるセキュリティコントローラと、バッテリとを有する携帯通信端末装置であって、
前記非接触近接通信部は非接触近接通信のキャリアによる電磁界電力と前記バッテリからのバッテリ電力を受取り、受取ったバッテリ電力による電圧が規定レベルに達しているか否かを判別し、規定レベルに達していないことが判別されたときは前記セキュリティコントローラに電力消費を減らす制御を指示するコマンドを発行し、
前記無線通信部は前記バッテリからのバッテリ電力を受取り、受取ったバッテリ電力による電圧が規定レベルに達しているか否かを判別し、規定レベルに達していないことが判別されたときは前記セキュリティコントローラに電力消費を減らす制御を指示するコマンドを発行する、携帯通信端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2011−35749(P2011−35749A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181288(P2009−181288)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】