説明

携帯電子機器用のアンテナ

【要 約】
【課題】 傾動機構における部品点数を削減する。
【解決手段】 アンテナ基部14内に収納されているスプリング部19の上端に形成されている起立部19aが、アンテナ基部14の上から突出してジョイント部18の下部に形成されている挟持片18bの周側面に弾性的に当接している。これにより、起立部19aが従来のアンテナにおけるボールおよび押し棒の機能を奏するようになるため、ボールおよび押し棒を省略することができ、傾動機構の部品点数を削減することができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも受信機能を有する電子機器、特に地上波デジタルテレビ放送を受信することのできる携帯電話機等に備えられる携帯電子機器用のアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機が普及しているが、この携帯電話機においては通話や情報を送受信するためにアンテナが備えられている。アンテナは携帯電話機の筐体に内蔵されていたり、携帯電話機の筐体に対して伸縮自在とされて不使用時には筐体内に収納できるリトラクティブなアンテナとされているのが一般的である。
ところで、近年地上波デジタルテレビ放送が開始されて、地上デジタルテレビジョン放送の1セグメント部分受信サービスを受信することのできる携帯電話機も知られている。この1セグメント部分受信サービスを効率よく受信するには、アンテナの指向特性を電波の到来方向に合致させて受信することが必要となる。このため、1セグメント部分受信サービスを受信するアンテナには、筐体に対して傾動可能かつ回転可能としてアンテナの指向特性を調整することができるアンテナが好適となる。また、待ち受け時には携帯に便利なように、アンテナを携帯電話機の筐体に収納できることが好適とされる。
【0003】
従来提案されている携帯電話機用のアンテナ100の構成を図28および図29に示す。図28は2段に伸縮自在とされたアンテナ100を伸張した際の構成を示す図であり、図29は図28に示すアンテナ100の構成の一部を断面図で示す図である。
従来のアンテナ100は、エレメント部111を備えており、エレメント部111は先端にトップ部110が設けられている。また、エレメント部111は第1エレメントと、第1エレメントを内部に摺動自在に収納可能な第2エレメントから構成されており、このエレメント部111はアンテナ基部114に傾動可能に保持されている。エレメント部111の下部にはジョイント部118が嵌着されており、ジョイント部118の下端には角が丸みを帯びた平板状の挟持片118aが形成されている。アンテナ基部114は、挟持片118aを挟持する挟持部114bを上部に備え、挟持片118aは軸部121により挟持部114b(すなわち、アンテナ基部114)に対して傾動可能に枢支されている。アンテナ基部114とエレメント部111はホルダー115内を摺動可能に保持されている。このホルダー115は上部に鍔部が形成され、その外周面にはネジ部が形成されている。このホルダー115を携帯電話機の筐体に螺着することにより、アンテナ100が携帯電話機に取り付けられるようになる。エレメント部111を上端まで伸張させた際には、アンテナ基部114の下端に形成された係合部114cがホルダー115の下面に当接するようになる。
【0004】
軸部121により挟持部114bに対して傾動可能に枢支されている挟持片118aは、アンテナ基部114内に収納されているスチール製のボール122および押し棒123を介してスプリング部119により上方に付勢されている。ボール122の外周面は押し棒123の上面および挟持片118aの周側面に当接している。押し棒123の下端には拡径された鍔部123aが形成されており、鍔部123aの下面にスプリング部119の上端が当接している。また、アンテナ基部114の下部にはストッパー120が嵌着されており、ストッパー120の上面にスプリング部119の下端が当接している。これにより、スプリング部119の付勢力が押し棒123およびボール122を介して挟持片118aの周側面に印加されて、エレメント部111を傾動した際に、安定してその傾動角度で保持できるようになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図28および図29に示す従来の携帯電子機器用のアンテナ100は、任意の角度にエレメント部111を傾けて保持する傾動機構を有している。この傾動機構においては、ボール122と押し棒123およびスプリング部119が少なくとも必要とされており、部品点数が多くなるという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は傾動機構における部品点数を削減することのできる携帯電子機器用のアンテナを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の携帯電子機器用のアンテナは、コイルスプリングの上端に起立して形成された起立部を有し、アンテナ基部の貫通孔内に収納されて、アンテナ基部の上端から突出した起立部の先端が挟持片の周側面に当接し、挟持片にコイルスプリングにより付勢力を与えているスプリング部を備えていることを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スプリング部に形成されている起立部が、従来のアンテナにおけるボールおよび押し棒の機能を奏するようになるため、ボールおよび押し棒を省略することができ、傾動機構の部品点数を削減することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施例とされる携帯電子機器用のアンテナ1の構成の一例を図1に示す。図1は2段に伸縮自在とされたアンテナ1を伸張した際の構成を一部半断面図で示す断面図である。
図1に示す本発明の実施例にかかるアンテナ1は、先端にトップ部10が設けられているパイプ状の第1エレメント12と、第1エレメント12の内部に摺動自在に収納可能な第2エレメント13からなるエレメント部を備えている。第2エレメント13の下部はジョイント部18に嵌挿されて固着されており、ジョイント部18はアンテナ基部14に傾動可能に保持されている。トップ部10は、第1エレメント12および第2エレメント13からなるエレメント部を伸縮する際に把持される摘みとなり、金属製のトッププラグ11の上部に合成樹脂製の円盤状の部位が固着されている。トッププラグ11の下部は、第1エレメント12の上端から内部に挿通されてカシメ加工により第1エレメント12の上端に固着されている。第1エレメント12は、金属製のパイプから構成されており、内部は第2エレメント13を収納する収納空間とされている。また、第2エレメント13は、超弾性合金製の可撓性を有するエレメント導体13aを柔軟な絶縁チューブ13dで被覆して構成されている。第2エレメント13の上部に嵌挿されている摺動バネ17は、第1エレメント12の内周面に弾性的に接触して第2エレメント13を第1エレメント12に対して摺動可能としている。これにより、第1エレメント12から第2エレメント13を任意の長さで引き出して保持することができるようになる。第2エレメント13の下部にはローレット加工が施されて金属製のジョイント部18に嵌着されている。ジョイント部18の下端には平板状で周側面の角が丸みを帯びた後述する挟持片18bが形成されている。
【0010】
アンテナ基部14は、ジョイント部18に形成されている挟持片18bを両側から挟持する後述する挟持部14bを上部に備え、挟持片18bは軸部により挟持部14b(すなわち、アンテナ基部14)に対して傾動可能に枢支されている。金属製のアンテナ基部14には貫通孔が形成されており、この貫通孔内にスプリング部19が収納されている。そして、貫通孔内からスプリング部19が下方へ抜け出ないように貫通孔の下端からストッパー20が圧入されている。スプリング部19の上端にはコイルスプリングの1ターンを起立させた起立部が一体に形成されており、起立部の先端が挟持片18bの周側面に弾性的に当接している。これにより、アンテナ部をアンテナ基部14に対して所望の角度で傾動させて保持することができるようになる。アンテナ基部14の外径は、第1エレメント12の外径とほぼ等しくされている。そして、アンテナ基部14と第1エレメント12はホルダー15内を上下方向に摺動可能に保持されている。ホルダー15は上部に鍔部15aが形成された円筒状の本体部を備えている。円筒状の本体部の外周面にはネジ部15bが形成されており、この本体部を例えば携帯電話機の筐体に螺着することにより、アンテナ1が携帯電話機に取り付けられるようになる。また、本体部に設けられている貫通孔内にドラム状バネ16が収納されており、ドラム状バネ16の作用によりアンテナ基部14と第1エレメント12はホルダー15内を上下方向に摺動可能に保持されるようになる。図1には、第2エレメント13が第1エレメント12から伸張されると共に、エレメント部が摺動されてホルダー15が第1エレメント12の上部に位置している状態が示されている。
【0011】
次に、図2に示す本発明にかかるアンテナ1の分解組立図を参照しながら本発明の実施例のアンテナ1の組み立て工程について説明するが、説明に先立ってアンテナ1を構成する主な各部の構成を図13ないし図27に示す。
図13はアンテナ基部14の構成を示す正面図であり、図14はアンテナ基部14の構成を示す側面図であり、図15はアンテナ基部14の構成を示す下面図であり、図16はアンテナ基部14の構成を示す上面図であり、図17はアンテナ基部14の構成をc−c線で切断した断面図で示す正面図であり、図18はアンテナ基部14の構成をb−b線で切断した断面図で示す側面図である。
これらの図に示すように、アンテナ基部14は真鍮等の金属製とされ先端部に対面するよう形成された挟持部14bと、挟持部14bの下部に設けられた円筒状の本体部14aとから構成されている。上部が丸みを帯びて形成された挟持部14bにより、ジョイント部18に形成されている挟持片18bが嵌入される挟持溝14fがほぼ中央に形成されている。また、挟持部14bには挿通孔14cが横方向に形成されており、挟持溝14fに挟持片18bを嵌入して挿通孔14cに軸部となるピンを嵌着することにより、ジョイント部18はアンテナ基部14に対して傾動可能に枢支される。また、本体部14aには全体にわたって貫通孔14gが形成されており、貫通孔14gの先端において横長の細長い挿通溝14eが形成されている。この挿通溝14eからは、スプリング部19の起立部が突出する。また、本体部14aの下部には外径が若干大きくされた係合部14dが形成されている。この係合部14dは、第1エレメント12と第2エレメント13とからなるエレメント部が上端まで伸張された際に、ホルダー15の下端に当接する。
【0012】
次に、図19はジョイント部18の構成を示す正面図であり、図20はジョイント部18の構成を側面図であり、図21はジョイント部18の構成を示す下面図であり、図22はジョイント部18の構成を示す上面図であり、図23はジョイント部18の構成をe−e線で切断した断面図で示す正面図であり、図24はジョイント部18の構成をd−d線で切断した断面図で示す側面図である。
これらの図に示すように、ジョイント部18は真鍮等の金属製とされ一端が閉じた円筒状の本体部18aと、本体部18aの下端から延伸された平板状の挟持片18bとから構成されている。本体部18aには第2エレメント13の下部が嵌着される嵌挿孔18fが形成されており、平板状の挟持片18bには挿通孔18eが形成されている。アンテナ基部14における挟持部14bの間の挟持溝14f内に挟持片18bを挿入し、挟持部14bの一方の挿通孔14cから挿通したピンを挟持片18bに形成された挿通孔18eを貫通させて他方の挿通孔14cまで挿通し、ピンが抜け出ないようにピンの先端に加工を施して軸部21を挟持部14bに固着する。平板状の挟持片18bの周側面は、角が丸みを帯びた半円状とされており、周側面の下面には凹部とされるテーパ状孔部18cが形成され、テーパ状孔部18cから約±90°の位置にそれぞれ矩形状の凹部とされる係合部18dが形成されている。挟持片18bの周側面にはスプリング部19の起立部が弾性的に押圧されている。これにより、アンテナ部(ジョイント部18)をほぼ直立させた際に、テーパ状孔部18cにスプリング部19の起立部が係合して、クリック感が得られると共に安定して直立するようになる。また、アンテナ部(ジョイント部18)をほぼ90°傾動させた際に、係合部18dにスプリング部19の起立部が係合して、クリック感が得られると共に安定して傾動状態を保持できるようになる。なお、嵌挿孔18fには第2エレメント13のローレット加工が施された下部が嵌挿されてカシメ加工されることにより、第2エレメント13の下部がジョイント部18に嵌着される。
【0013】
次に、図25はスプリング部19の構成を示す側面図であり、図26はスプリング部19の構成を示す上面図であり、図27はスプリング部19の構成を示す正面図である。これらの図に示すように、スプリング部19はリン青銅等の弾性を有する線材をコイル状に巻回したコイルスプリング19bと、コイルスプリング19bの先端を1ターン分だけ起立させて一体に形成した起立部19aとから構成されている。コイルスプリング19bは間隔を空けて巻回されており、スプリング部19がアンテナ基部14における貫通孔14g内に収納されて、アンテナ基部14の下端からストッパー20が圧入された際に、スプリング部19は貫通孔14gにおいて圧縮されるようになる。さらに、貫通孔14gの先端に形成されている挿通溝14eから起立部19aが突出して、起立部19aの先端がジョイント部18における挟持片18bの周側面に弾性的に当接するようになる。
【0014】
図2に戻り、本発明の実施例のアンテナ1の組み立て工程について説明すると、円盤状のトップ部10の本体部10aには底面に収納孔10bが形成されており、この収納孔10b内にトッププラグ11の上部に形成されている円盤状の取付部11aが固着されている。この場合、取付部11aにトップ部10をモールドしたり、トップ部10の収納孔10b内に取付部11aを嵌入して接着等により固着することができる。これにより、トップ部10の下面からトッププラグ11の径の小さい丸棒状の嵌挿部11cが突出するようになり、この嵌挿部11cを第1エレメント12を構成しているパイプ部12bの上端から、パイプ部12b内に挿入する。次いで、パイプ部12bの上部に形成されている溝部12aにカシメ加工を施すと、溝部12aが嵌挿部11cに形成されている溝部11bに係合して、トップ部10が第1エレメント12の上端に固着されるようになる。
【0015】
次に、第2エレメント13は超弾性合金製のエレメント導体13aからなり、エレメント導体13aの先端に拡径部13bが形成されていると共に、下部にはローレット部13cが形成されている。このエレメント導体13aの下からリン青銅等の弾性を有する金属性とされている摺動バネ17がエレメント導体13aに挿通され、続いて柔軟な樹脂製の絶縁チューブ13dがエレメント導体13aに挿入される。これにより、摺動バネ17が挿通されている部位を除いてエレメント導体13aのほぼ全体が絶縁チューブ13dで被覆されるようになり、下部のローレット部13cだけが露出するようになる。そこで、このローレット部13cをジョイント部18の上から嵌挿孔18f内に圧入することにより、第2エレメント13の下部にジョイント部18が固着される。この状態の第2エレメント13を第1エレメント12の下からパイプ部12b内に挿通すると、中央部が外側に膨出されているバネ部17aの作用により、第2エレメント13は弾性的にパイプ部12b内を摺動していくようになる。次いで、パイプ部12bの下端の径を絞るように加工することにより、第2エレメント13を第1エレメント12から引き出しても抜け出ないようになる。なお、摺動バネ17と絶縁チューブ13dの間に配置されるようスペーサをエレメント導体13aに挿通してもよい。
【0016】
ホルダー15は上部に鍔部15aが形成された円筒状の本体部を備え、円筒状の本体部の外周面にはネジ部15bが形成されている。そして、ホルダー15の全体にわたり軸方向に形成されている貫通孔内にリン青銅等の弾性を有する金属性とされているドラム状バネ16を嵌挿して、ジョイント部18の下からホルダー15を挿通させる。ドラム状バネ16の中央部は内側へ向かって膨出されていることから、ジョイント部18および第1エレメント12はホルダー15に対して摺動可能に弾性的に保持されるようになる。次いで、ホルダー15の下から突出したジョイント部18の下部に形成されている挟持片18bをアンテナ基部14の上部に形成されている挟持部14bにおける挟持溝14f内に位置させて、一方の挟持部14bの挿通孔14cから挿通した軸部21を挟持片18bの挿通孔18eに挿通して、他方の挟持部14bの挿通孔14cまで挿通させる。ここで、軸部21が挿通孔14cから抜け出ないように加工を施すことにより、ジョイント部18がアンテナ基部14に傾動可能に枢支されるようになる。
【0017】
この状態において、アンテナ基部14の貫通孔14g内に下からスプリング部19を起立部19aから挿入し、貫通孔14gの上端に形成されている挿通溝14eに位置合わせして、コイルスプリング19bの上端に形成されている起立部19aを上方へ突出させる。次いで、ストッパー20をアンテナ基部14の貫通孔14g内に下から圧入することにより、コイルスプリング19bが圧縮されるよう固着すると、挿通溝14eから上部へ突出している起立部19aの先端が挟持片18bの周側面に弾性的に当接するようになる。すなわち、コイルスプリング19bにより起立部19aを介して挟持片18bの周側面に、アンテナ基部14の軸方向に沿った付勢力が与えられる。この際に、起立部19aがコイルスプリング19bの1ターンとして一体に形成されていても、起立部19aは挿通溝14eにより姿勢が規制されるため、傾くことなく安定して挟持片18bの周側面に付勢力を与えることができる。なお、ストッパー20は真鍮等の金属製とされている断面が円形とされた本体部20aを有し、本体部20aの上部は次第に径が細くなるテーパ状に形成され、本体部20aの下端には径が大きくされた鍔部20bが形成されている。ストッパー20を固着する際は、アンテナ基部14の貫通孔14g内にストッパー20のテーパ状の上部から挿入していき、鍔部20bがアンテナ基部14の下面に当接するまで圧入させる。
以上の工程により、図1に示す構成のアンテナ1を組み立てることができる。
【0018】
このようにして組み立てられた図1に示す本発明にかかるアンテナ1の下部の構成を拡大して図3ないし図6に示す。図3はアンテナ1の下部の構成を拡大して示す正面図であり、図4はアンテナ1の下部の構成を拡大して断面図で示す正面図であり、図5はアンテナ1の下部の構成を拡大して示すa−a線で切断した断面図で示す上面図であり、図6はアンテナ1の下部の構成を拡大して断面図で示す側面図である。
これらの図に示すように、第2エレメント13の下部が固着されているジョイント部18は、下端から突出している平板状の挟持片18bがアンテナ基部14の挟持部14bに挟持されるとと共に、挟持片18bおよび挟持部14bを貫通する軸部21により枢支されている。アンテナ基部14の貫通孔14g内にはスプリング部19が収納され、アンテナ基部14の貫通孔14g内の下部に固着されているストッパー20の上面がコイルスプリング19bの下端に当接していることにより、コイルスプリング19bは押し縮められて上方へ向かう付勢力を発生している。スプリング部19の起立部19aは、貫通孔14gの上端に形成されている横長の挿通溝14eから上方へ突出しており、起立部19aの先端は挟持片18bの周側面にコイルスプリング19bによる付勢力を持って当接している。
【0019】
ここで、アンテナ1において第1エレメント12および第2エレメント13からなるエレメント部を把持して傾動させた状態を図7に示し、ジョイント部18とアンテナ基部14との結合部の構成を拡大して図8に示す。これらの図に示すように、アンテナ基部14に対してエレメント部が固着されているジョイント部18を約90°右方向に傾動した際には、挟持片18bの周側面に形成されている係合部18dにスプリング部19の起立部19aの先端が係合されて、この傾動角度において安定してエレメント部がアンテナ基部14に保持されるようになる。また、起立部19aが係合部18dに係合した際にクリック感を得ることができる。さらに、2点鎖線で示すようにエレメント部が固着されているジョイント部18をアンテナ基部14に対して約180°の範囲内の任意の角度に傾動させることができる。この場合、図8に示すように起立部19aの先端がテーパ状孔部18cあるいは係合部18dに係合していない際には、起立部19aは2点鎖線で示すように挟持片18bの周側面により押されて若干アンテナ基部14内に下降してコイルスプリング19bがさらに押し縮められて付勢力が増加することから、アンテナ部を任意の角度に傾動させてもスプリング部19の作用により安定して保持されるようになる。そして、傾動させた場合に、起立部19aが周側面に形成されているテーパ状孔部18cに係合した際にはクリック感を得ることができると共に、起立部19aが周側面に形成されている係合部18dに係合した際にもクリック感を得ることができる。なお、エレメント部を直立させた際の状態が図6に示されており、図6に示すように、この場合にはテーパ状孔部18cに起立部19aの先端が係合することにより、エレメント部が直立状態で安定してアンテナ基部14に保持されるようになる。
【0020】
次に、本発明の実施例のアンテナ1を備える携帯電話機50の構成の一例を図9ないし図12に示す。ただし、図9は本発明にかかるアンテナ1を携帯電話機50から伸張させて傾動させた状態を示す斜視図であり、図10は本発明にかかるアンテナ1を携帯電話機50内に収納した状態を示す斜視図であり、図11は本発明にかかるアンテナ1を携帯電話機50から伸張させた際の傾動範囲を示す正面図であり、図12は本発明にかかるアンテナ1を携帯電話機50から伸張させた際の回動範囲を示す側面図である。
これらの図に示すように、本発明にかかるアンテナ1は、携帯電話機50を構成している筐体50aの一側面に取り付けられている。筐体50aには、図示していないテンキーや操作ボタンからなる操作部と液晶等からなるディスプレイ51とが設けられている。アンテナ1は、伸張した際に筐体50aに対して傾動可能とされており、図9に示すアンテナ1の伸張状態ではアンテナ基部14に対して約90°傾動されて第1エレメント12と第2エレメント13からなるエレメント部は、横向きとされた筐体50aに対してほぼ垂直となっている。アンテナ1においては、第1エレメント12から第2エレメント13を引き出せることができ、2段に伸縮自在とされてアンテナ1の長さを変えることができるようにされている。また、ホルダー15は筐体50aの一側面に形成されている円形の凹部内に固着されているため、ホルダー15は図11に示すように筐体50aの表面から凹んだ位置に配置されている。そこで、アンテナ1を縮納した際には図10に示すようにトップ部10の上面が筐体50aの表面とほぼ同一面になるように収納することができる。
【0021】
また、伸張状態のアンテナ1は筐体50aに対して任意の角度で傾動可能とされており、図11に示すように傾動範囲は0°〜約±90°とされる。さらに、伸張状態のアンテナ1は筐体50aに対してアンテナ基部14を回転軸として回動可能とされており、回動範囲は図12に示すように約360°と任意の角度に回動することができる。これにより、携帯電話機50に取り付けられているアンテナ1の指向特性を所望の方向に向けると共に、アンテナ1の長さを変えることができるようになり、地上デジタルテレビジョン放送の1セグメント部分受信サービスを受信することのできる携帯電話機50に好適なアンテナとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
以上の説明では、地上デジタルテレビジョン放送の1セグメント部分受信サービスを受信することのできる携帯電話機等の携帯電子機器用のアンテナとして説明したが、これに限るものではなく傾動して水平面内において回転することが必要とされるアンテナ一般に適用することができるものである。
また、第1エレメントおよび第2エレメントからなるアンテナ部は2段に伸縮可能としたが、これに限るものではなく第1エレメントのみからなる1段構成のアンテナ部としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例とされる携帯電子機器用のアンテナの構成の一例を一部半断面図で示す断面図である。
【図2】本発明にかかるアンテナの分解組立図である。
【図3】本発明にかかるアンテナの下部の構成を拡大して示す正面図である。
【図4】本発明にかかるアンテナの下部の構成を拡大して断面図で示す正面図である。
【図5】本発明にかかるアンテナの下部の構成を拡大して示すa−a線で切断した断面図で示す上面図である。
【図6】本発明にかかるアンテナの下部の構成を拡大して断面図で示す側面図である。
【図7】本発明にかかるアンテナにおいてエレメント部を傾動させた状態を示す図である。
【図8】本発明にかかるアンテナにおいてエレメント部を傾動させた状態における一部を拡大して示す図である。
【図9】本発明にかかるアンテナを携帯電話機から伸張させて傾動させた状態を示す斜視図である。
【図10】本発明にかかるアンテナを携帯電話機に収納した状態を示す斜視図である。
【図11】本発明にかかるアンテナを携帯電話機から伸張させた際の傾動範囲を示す正面図である。
【図12】本発明にかかるアンテナを携帯電話機から伸張させた際の回動範囲を示す側面図である。
【図13】本発明のアンテナにかかるアンテナ基部の構成を示す正面図である。
【図14】本発明のアンテナにかかるアンテナ基部の構成を示す側面図である。
【図15】本発明のアンテナにかかるアンテナ基部の構成を示す下面図である。
【図16】本発明のアンテナにかかるアンテナ基部の構成を示す上面図である。
【図17】本発明のアンテナにかかるアンテナ基部の構成をc−c線で切断した断面図で示す正面図である。
【図18】本発明のアンテナにかかるアンテナ基部の構成をb−b線で切断した断面図で示す側面図である。
【図19】本発明のアンテナにかかるジョイント部の構成を示す正面図である。
【図20】本発明のアンテナにかかるジョイント部の構成を示す側面図である。
【図21】本発明のアンテナにかかるジョイント部の構成を示す下面図である。
【図22】本発明のアンテナにかかるジョイント部の構成を示す上面図である。
【図23】本発明のアンテナにかかるジョイント部の構成をe−e線で切断した断面図で示す正面図である。
【図24】本発明のアンテナにかかるジョイント部の構成をd−d線で切断した断面図で示す側面図である。
【図25】本発明のアンテナにかかるスプリング部の構成を示す側面図である。
【図26】本発明のアンテナにかかるスプリング部の構成を示す上面図である。
【図27】本発明のアンテナにかかるスプリング部の構成を示す正面図である。
【図28】従来提案されている携帯電話機用のアンテナの一例の構成を示す図である。
【図29】従来提案されているアンテナの構成の一部を断面図で拡大して示す図である。
【符号の説明】
【0024】
1 アンテナ、10 トップ部、10a 本体部、10b 収納孔、11 トッププラグ、11a 取付部、11b 溝部、11c 嵌挿部、12 第1エレメント、12a 溝部、12b パイプ部、13 第2エレメント、13a エレメント導体、13b 拡径部、13c ローレット部、13d 絶縁チューブ、14 アンテナ基部、14a 本体部、14b 挟持部、14c 挿通孔、14d 係合部、14e 挿通溝、14f 挟持溝、14g 貫通孔、15 ホルダー、15a 鍔部、15b ネジ部15b、16 ドラム状バネ、17 摺動バネ、17a バネ部、18 ジョイント部、18a 本体部、18b 挟持片、18c テーパ状孔部、18d 係合部、18e 挿通孔、18f 嵌挿孔、19 スプリング部、19a 起立部、19b コイルスプリング、20 ストッパー、20a 本体部、20b 鍔部、21 軸部、50 携帯電話機、50a 筐体、51 ディスプレイ、100 アンテナ、110 トップ部、111 エレメント部、114 アンテナ基部、114a 本体部、114b 挟持部、114c 係合部、115 ホルダー、118 ジョイント部、118a 挟持片、119 スプリング部、120 ストッパー、121 軸部、122 ボール、123 押し棒、123a 鍔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレメント部と、
下端に平板状の挟持片が形成され、上部に前記エレメント部の下部が固着されているジョイント部と、
前記挟持片を挟持すると共に軸部で枢支することにより、前記エレメント部を傾動可能に保持する挟持部が上部に形成され、貫通孔が形成されている円筒状のアンテナ基部と、
コイルスプリングの上端に起立して一体に形成された起立部を有し、前記アンテナ基部の前記貫通孔内に収納されて、前記アンテナ基部の上端から突出した前記起立部の先端が前記挟持片の周側面に当接することにより、前記挟持片に前記コイルスプリングによる付勢力を与えているスプリング部と、
前記スプリング部が前記アンテナ基部の前記貫通孔内から下方へ抜け出ないように前記アンテナ基部の下端に嵌着されているストッパーと、
を備えることを特徴とする携帯電子機器用のアンテナ。
【請求項2】
前記起立部は、前記アンテナ基部における前記貫通孔の上端に形成された横長の形状の挿通溝を介して前記挟持片側へ突出しており、前記挿通溝の形状が前記起立部を投影した形状とほぼ同様の形状とされて、前記起立部の先端が前記挟持片の周側面に当接した際に、前記起立部の姿勢が前記挿通溝により傾かないよう規制されていることを特徴とする請求項1記載の携帯電子機器用のアンテナ。
【請求項3】
前記挟持片の周側面に、前記エレメント部を所定角度に保持するための凹状の部位が複数形成されており、前記エレメント部を傾動させて何れかの該凹状の部位に前記スプリング部における前記起立部が係合した際にクリック感が得られることを特徴とする請求項1記載の携帯電子機器用のアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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