説明

携帯電子機器

【課題】簡易な構成で、蓋体を取り付けるために筺体に設けられた係合孔等の貫通孔からの静電気の侵入による静電破壊を防止することのできる携帯電子機器を提供する。
【解決手段】電子部品を実装する基板61と、該基板に接続され、グランド端子を有する第1電子部品57を収容する筐体20であって、該筺体20には外部に通じる貫通孔21の開設された筺体20を有する携帯電子機器において、前記第1電子部品57は、グランド端子と電気的に接続される露出した導電部53を有しており、該導電部は少なくとも一部が前記貫通孔と対向し、他の電子部品64よりも前記貫通孔に接近して配備される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を収容する筐体を具える携帯電子機器に関するものであり、より具体的には、蓋体を筺体に係合等するための貫通孔から筺体内部に侵入する静電気により筺体内部の電子部品が静電破壊されることを防止できる携帯電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電子機器は、筺体の内部にチップ等の電子部品を実装する基板を収容している。
一方、筺体にバッテリ等を収納する収納スペースを有し、該収納スペースを筺体に着脱可能な蓋体により覆っている。
【0003】
蓋体の筺体への取付けは、蓋体に差込片を突設し、該差込片を筐体に形成された係合孔に嵌めることで行なわれている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような筺体に形成された係合孔は、差込片と外れることなく係合させるために、係合孔に傾斜やかえしを設けるなど複雑な形状となっている。このため、樹脂の一体成形により筺体を作製するときに、金型数、工程数、その他必要な部品を低減するため、係合孔は筐体に貫通して形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−283871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、携帯電子機器の薄型化が要求される結果、係合孔に接近してチップ等の電子部品が配置されることになる。筐体から蓋体を取り外した状態では、係合孔に面する電子部品は係合孔を介して外部に曝される。このとき、筐体外部に帯電体が存在すると、これらの電子部品は、係合孔を介して帯電体からの放電を受けて静電破壊したり、電子部品が帯電してしまう虞がある。
【0007】
そこで、図7に示す如く、筐体(20)内側から係合孔(21)に耐電性のシート(80)を貼り付けて係合孔(21)を塞ぐことによって、電子部品(64)に向かう静電気の侵入を遮断することが考えられる。しかしながら、部品点数増及び工程増に繋がる。
【0008】
本発明の目的は、簡易な構成で、蓋体を取り付けるために筺体に設けられた係合孔等の貫通孔からの静電気の侵入による静電破壊を防止することのできる携帯電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る携帯電子機器は、
電子部品を実装する基板と、該基板に接続され、グランド端子を有する第1電子部品を収容する筐体であって、該筺体には外部に通じる貫通孔の開設された筺体を有する携帯電子機器において、
前記第1電子部品は、グランド端子と電気的に接続される露出した導電部を有しており、該導電部は少なくとも一部が前記貫通孔と対向し、他の電子部品よりも前記貫通孔に接近して配備される。
【発明の効果】
【0010】
上記本発明の携帯電子機器によれば、帯電体からの放電により、筐体の貫通孔に向けて放電が生じたとしても、グランド端子を有する第1電子部品を貫通孔に面して近接して配置しているから、静電気は第1電子部品のグランド端子に放電されて、グランドに逃げる。
従って、チップ等の他の電子部品に静電気が放電されて静電破壊されることを防止できる。
【0011】
本発明に係る携帯電子機器によれば、部品点数増や工程増を伴うことなく簡易な構成で電子部品の静電破壊を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の一実施形態である携帯電子機器の背面図である。
【図2】図2は、図1の線2−2に沿う断面図であって、蓋体を取り外した状態を示している。
【図3】図3は、蓋体を取り外した筐体の背面図である。
【図4】図4は、蓋体を裏側から見た図である。
【図5】図5は、図2の円5で囲った要部の拡大断面図である。
【図6】図6は、カメラユニットの正面図であって、コネクタからレジストの一部を剥離したカメラユニットを示している。
【図7】図7は、耐電性シートで係合孔を塞いだ携帯電子機器の要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の携帯電子機器を携帯電話機に実施した形態につき、図面に沿って説明する。なお、携帯電子機器は、携帯電話機に限定されるものではなく、例えば携帯ゲーム機、デジタルカメラ、リモートコントローラ等の携帯型の電子機器も含まれる。
【0014】
また、以下では筺体(20)に形成される貫通孔として、筺体(20)に着脱可能な蓋体(30)を係合する係合孔(21)を例示して説明するが、この種係合孔に限定して解釈されるべきではなく、マイクロフォンやスピーカ等に用いられる貫通孔、ネジ孔、その他の貫通孔を例示できる。加えて、貫通孔は以下の説明のように、蓋体(30)などにより通常の使用時に塞がれるものであってもよいし、常時又は使用時等に貫通孔が露出しているものであってもよい。
【0015】
図1は、本発明の携帯電話機(10)の背面図、図2は、図1の線2−2に沿う断面図であり、蓋体(30)を筐体(20)から取り外した状態を示している。
図に示すように、携帯電話機(10)は、縦長の筐体(20)に蓋体(30)を着脱可能に構成して外装をなしている。
筐体(20)は、夫々樹脂の一体成形により得られる前半体(22)と後半体(23)を組み合わせて構成され、後半体(23)には同じく樹脂の一体成形により得られる蓋体(30)が着脱可能となっている。
【0016】
前半体(22)は、前面側に各種操作を行なう操作部(42)及び液晶表示パネル等の表示部(43)が配置されている。なお、操作部(42)と表示部(43)は、液晶表示パネルにタッチパネルを設けることで一体化することもできる。
【0017】
後半体(23)は、中央よりもやや上部にカメラユニット(51)のレンズ(56)が臨出しており、該レンズ(56)の下側に蓋体(30)が装着される。
【0018】
筐体(20)の内部には、通話、通信、撮像、その他種々の機能を実行するための複数の電子部品(41)が収容されている。
【0019】
図2及び図3に示すように、筐体(20)の後半体(23)は、蓋体(30)により覆われる蓋体取付面(28)を有しており、該蓋体取付面(28)は、中央のフラットな部分に図3に示すようにバッテリ(44)やSIMカード(Subscriber Identity Module Card)(図示せず)等の電子部品を着脱可能に収納する収納スペース(27)が設けられている。蓋体取付面(28)の下部及び側部は湾曲している。
【0020】
蓋体取付面(28)には、図2及び図3に示すように、蓋体(30)を固定する複数の受部(21)(26)が形成されている。
受部(21)(26)は、凹形状とすることができ、より具体的には、図2及び図3に示すように、収納スペース(27)の上側に貫通開設された係合孔(21)と、筺体(20)の下端に設けられた係合溝(26)を例示できる。図示の実施例では、係合孔(21)は、中央及びその左右の3箇所に形成され、係合溝(26)は左右の2箇所に形成されている。
【0021】
係合孔(21)は、図3及び図5に示すように、蓋体取付面(28)の上端に貫通開設される。係合孔(21)は、断面略矩形の筒状のリブ(24)を後半体(23)から前方に向けて突設して形成され、リブ(24)の後端側には、後述する蓋体(30)の差込片(31)を受ける係止部(25)が下方に向けて突設されている。
【0022】
係合溝(26)は、図3及び図4に示すように蓋体取付面(28)の下端から上向きに凹設され、蓋体(30)の爪片(36)が挿入可能となっている。
【0023】
蓋体(30)は、図1及び図4に示すように、後半体(23)の蓋体取付面(28)を塞ぐ樹脂製のカバーであり、後半体(23)に着脱可能となっている。
蓋体(30)は、上下に夫々、係合孔(21)と係合溝(26)に係合する係合部(31)(36)を有する。上端の係合部(31)は、前記係合孔(21)に嵌まる差込片(31)であり、上向きに突設されている。下端の係合部(36)は、前記係合溝(26)に嵌まる爪片(36)である。差込片(31)及び爪片(36)は夫々係合孔(21)と係合溝(26)の数に合わせて形成されており、図示の実施例では差込片(31)は3箇所、爪片(36)は2箇所に設けられている。
【0024】
また、蓋体(30)には、爪片(36)(36)の間に、作業者の指爪を挿入することにより蓋体(30)をこじ開けて取り外すための凹み(37)が設けられている。
【0025】
然して、図5に示すように蓋体(30)の差込片(31)を係合孔(21)に挿入し、この状態で蓋体(30)を筺体(20)に向けて押し込むことで、爪片(36)が係合溝(26)に嵌まり、蓋体(30)は筺体(20)に固定される。
なお、蓋体(30)を筺体(20)から取り外すには、こじ開け用の凹み(37)に指爪等を挿入し、蓋体(30)を撓み変形させることで爪片(36)を係合溝(26)から抜き取り、その後、差込片(31)を係合孔(21)から外せばよい。
【0026】
上記携帯電話機(10)において、図2及び図5に示すように、筺体(20)の内部には、通話、通信、撮像、その他種々の機能を実行するための複数の電子部品(41)が収容されている。
【0027】
より具体的には、各電子部品(41)は、プリント基板(61)やフレキシブルプリント基板(52)に電気的に接続されて配置される。
例えば、図5では、プリント基板(61)に電子部品として複数のチップ(64)を実装している。
【0028】
筺体(20)には、蓋体(30)を装着するための前記係合孔(21)が貫通開設されており、該係合孔(21)から特に蓋体(30)を取り外した状態で人体等の帯電体から係合孔(21)を介してチップ(64)等が放電を受け、静電破壊されてしまうことがある。
【0029】
そこで、本発明では、係合孔(21)と対向する位置に、グランド端子を有する第1電子部品を配置し、該第1電子部品を避雷針の如く作用させることで、侵入する静電気を第1電子部品からグランドに逃がすようにしている。
より具体的には、図5に示すように、第1電子部品は、グランド端子を有するコネクタ(57)を例示することができる。なお、第1電子部品は、コネクタに限定されるものではなく、他のグランド端子を有する電子部品であってもよい。
【0030】
コネクタ(57)は、図6に示すようにカメラユニット(51)から延出するフレキシブルプリント基板(52)の先端に形成されたものを例示できる。このコネクタ(57)は、プリント基板(61)に形成されたコネクタ(以下「基板側コネクタ(67)」と称する)に接続可能となっている。なお、コネクタ(57)のグランド端子は、基板側コネクタ(67)のグランドに電気的に接続される。
【0031】
コネクタ(57)は、絶縁性を確保するためにレジスト(58)によりコーティングされているが、係合孔(21)と対向する位置、図示の実施例ではコネクタ(57)の先端は、レジスト(58)を剥がして、グランド端子と電気的に接続された導電部(53)が露出するようにしている。なお、コネクタ(57)の先端にレジスト(58)が形成されないようにコーティングを施すことで導電部(53)を形成することもできる。
【0032】
コネクタ(57)は、係合孔(21)との対向面においては、他のチップ(64)等の電子部品に比して、係合孔(21)に近い位置に配置する。これにより、係合孔(21)から侵入した静電気は、係合孔(21)に最も近いコネクタ(57)の導電部(53)に落ちて、導電部(53)からグランド端子を通って、基板側コネクタ(67)のグランドに逃がすことができ、他のチップ(64)等の電子部品が静電破壊されたり、帯電することを防ぐことができる。
【0033】
より望ましくは、コネクタ(57)は、係合孔(21)を外部から視認したときに、導電部(53)が見える位置に設ける。これにより、係合孔(21)を通過する静電気を導電部(53)により導き易くすることができる。
【0034】
なお、上記では、コネクタ(57)の先端全体に導電部(53)を露出して形成しているが、先端の一部に導電部を形成したり、側部やその他の位置に導電部を形成することもできる。
何れの場合でも、係合孔(21)と対向する位置に導電部が臨出するよう配置すればよい。
【0035】
また、携帯電話機(10)の形状や蓋体(30)の着脱方法は上記に限定されるものではなく、例えば折り畳み型の携帯電子機器や、蓋体(30)をスライドやネジ止め、その他別途ロック機構等により着脱可能なものにも適用できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、簡易な構成により別途追加の部品等を必要とすることなく貫通孔から侵入する静電気からチップ(64)等の電子部品を保護することができ、これら電子部品の静電破壊や帯電を防止することができる携帯型電子機器として有用である。
【符号の説明】
【0037】
(10) 携帯電話機
(20) 筐体
(21) 係合孔(貫通孔)
(28) 蓋体取付面
(30) 蓋体
(31) 差込片(係合部)
(41) 電子部品
(51) カメラユニット
(52) フレキシブルプリント基板
(53) 導電部
(56) レンズ
(57) コネクタ(第1電子部品)
(61) プリント基板
(64) 電子部品(チップ)
(67) 基板側コネクタ
(80) 耐電性シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を実装する基板と、該基板に接続され、グランド端子を有する第1電子部品を収容する筐体であって、該筺体には外部に通じる貫通孔の開設された筺体を有する携帯電子機器において、
前記第1電子部品は、グランド端子と電気的に接続される露出した導電部を有しており、該導電部は少なくとも一部が前記貫通孔と対向し、他の電子部品よりも前記貫通孔に接近して配備されることを特徴とする携帯電子機器。
【請求項2】
前記第1電子部品は、前記導電部が貫通孔を介して外部から視認可能な位置に配備される請求項1に記載の携帯電子機器。
【請求項3】
前記第1電子部品は基板に接続されるコネクタである請求項1又は請求項2に記載の携帯電子機器。
【請求項4】
前記コネクタはフレキシブルプリント基板に接続される請求項3に記載の携帯電子機器。
【請求項5】
前記フレキシブルプリント基板はカメラユニットに用いられる請求項4に記載の携帯電子機器。
【請求項6】
前記筐体に着脱自在に取り付けられる蓋体を具え、
該蓋体は、前記貫通孔に係合可能な係合部を突設してなり、
該係合部を貫通孔と係合させることにより蓋体が筺体に取り付けられる請求項1乃至請求項5の何れかに記載の携帯電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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