説明

摂食抑制剤

【課題】 新規成分であるレンギョウ葉エキスを含有する摂食抑制剤を提供すること。
【解決手段】 レンギョウ葉エキスを含む摂食抑制剤により達成される。この摂食抑制剤は、錠剤、顆粒剤、粉末剤、液剤などの形態で提供できる。本発明の摂食抑制剤は、基本的にレンギョウ葉エキスを主成分としているので、製造・提供が容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摂食抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年になって、肥満を病因の一つとする疾患(例えば、心疾患、糖尿病など)が、多くの死因に関与していると言われている。これらの疾患は、生活習慣に関連するものが多いため生活習慣病と呼ばれ、この生活習慣病に対する予防及び治療の意識が高まっている。生活習慣病とは、食習慣・運動習慣・休養・喫煙・飲酒等の生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群と定義されており、2型糖尿病、肥満、高脂血症(家族性のものを除く)、循環器病(先天性のものを除く)、高血圧症などが知られている。また、個人に対して、複数の危険因子(耐糖能異常、高血圧症、肥満、脂質代謝異常など)が重なり、致死的な心血管疾患や脳血管疾患を発症するメタボリックシンドロームも注目されている。
【0003】
日本においてもライフスタイルの欧米化に伴い、820万人の糖尿病患者(予備軍を入れると1870万人)を含め、高血圧症(患者数3970万人)・高脂血症(患者数約700万人)などの生活習慣病の患者数が5000万人以上にも上ると言われている。これらの病気発症の危険因子の一つである肥満は、深刻な社会問題となっており、その肥満対策は日本のみならず世界的な課題となっている。
また、女性については、特に摂食行動を抑制することにより、好ましい体型を維持しようとする努力が見られる。しかしながら、無理な摂食抑制を行うと、かえってリバウンドを起こしてしまい、非健康的な状態に陥るという現象もよく見られる。加えて、昨今のストレス社会の中では、ストレスを解消する目的で、知らず知らず摂食行動の促進による満足感を得ている。しかし、年齢とともにヒトの基礎代謝は低下するにもかかわらず、摂食行動の促進は肥満症の促進に貢献しているとしか言えない現状がある。
この様なことをふまえ、副作用の少ない摂食抑制剤に関する開発が行われている。例えば一般的技術水準を示すものとして、特許文献1には、杜仲茶から摂食抑制効果を示す物質を抽出することに成功した発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−262060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、摂食抑制効果を有する新たな成分を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討の結果、新規成分であるレンギョウ葉エキスの効果を確認したところ、摂食抑制効果を奏することを見出し、基本的には本発明を完成するに至った。
こうして、上記目的を達成するための発明に係る摂食抑制剤は、レンギョウ葉エキスを含むことを特徴とする。
また、摂食抑制剤が、錠剤、顆粒剤、粉末剤、液剤のうちのいずれか一つであることが好ましい。
「レンギョウ葉エキス」とは、レンギョウ葉から抽出されたものを意味する。レンギョウ葉エキスの抽出方法については、必ずしも問われないが、例えば通常の漢方生薬を得る方法を用いることができる。レンギョウ葉エキスの形態は問われず、例えば粉末、顆粒、粒状、液体などが含まれる。レンギョウとは、中国原産のモクセイ科落葉低木(高さは約2メートル程度)である。古くから観賞用に栽培されており、枝は長く伸びて先端はやや垂れる。果実は、漢方生薬の連翹として用いられ、消炎・利尿・排膿・解毒などの効果がある。レンギョウ葉とは、レンギョウの葉を意味する。本発明では、漢方に用いられるレンギョウ果実ではなく、レンギョウ葉を用いる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、新規な成分であるレンギョウ葉エキスを含む摂食抑制剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】2週間の摂食抑制剤摂取による摂食量への影響を調べたグラフである。グラフの左より、A群(HFD Cont.)、B群(HFD F)、C1群(HFD FC)、C2群(HFD MHE)、及びC3群(HFD BOFU)のデータを示す(図2においても同じ)。
【図2】2週間の摂食抑制剤摂取による摂水量への影響を調べたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態について、図表を参照しつつ説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施することができる。また、本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶものである。
【0010】
<実施例1> 摂食抑制剤の調製
摂食抑制剤として、レンギョウ葉エキス(F:タマ生化学株式会社製レンギョウ葉エキス)を用いた。上記エキスは、粉末剤であった。
また、コントロールとして、FC(レンギョウ葉エキス:シトラスエキス=1:1のもの)、MHE(レンギョウ葉エキス:シトラスエキス:カンゾウエキス:サンシシエキス=3:3:5:3の質量比としたもの)、及び防風通聖散(BOFU)を用いた。
【0011】
<実施例2> 摂食抑制剤の効果確認試験
4週齢オスSDラットを用いて、摂食抑制剤の効果確認試験を行った。下記いずれの群についても一群当り4匹のラットを用いた。
A群(HFD Cont.):1週間の予備飼育後、35%ラードを含む高脂肪食(HFD)を与えた。飲料水として、水(H2O)を自由摂取させた。
B群(HFD F):1週間の予備飼育後、HFDに5%の摂食抑制剤を含有したものを自由摂取させた。飲料水として、水を自由摂取させた。
【0012】
C1群(HFD FC):1週間の予備飼育後、HFDに5%のFCを含有したものを自由摂取させた。飲料水として、水を自由摂取させた。
C2群(HFD MHE):1週間の予備飼育後、HFDに5%のMHEを含有したものを自由摂取させた。飲料水として、水を自由摂取させた。
C3群(HFD BOFU):1週間の予備飼育後、HFDに5%のBOFUを含有したものを自由摂取させた。飲料水として、水を自由摂取させた。
上記5群のいずれについても、2週間の飼育を行った後、摂取量(Food intake (g)/rat/day)、及び摂水量(Water intake(mL)/rat/day)を計測した。
【0013】
結果を図1及び図2に示した。図中のデータについては、平均値±標準誤差で示した。表中の記号a)は、A群(HFD Cont.)との間で有意差(p<0.05)が認められたことを意味している。
図1に示すように、摂食抑制剤(F)を投与したB群では、有意差は認められなかったものの、A群に比べると約25%程度の摂食抑制効果が認められた。但し、各データの標準誤差は小さいことから、例数を増加することにより、両群間の摂食量には有意差が認められるようになるものと考えられた。また、C1群(FC)では、A群に比べて摂食量には変化が見られず、C2群(MHE)では、A群に比べて有意に摂食量が増加した。なお、抗肥満作用があると考えられている漢方薬の防風通聖散を投与したC3群(BOFU)では、A群に比べると約20%程度の摂食抑制が見られた(但し、有意差は認められなかった)。
また、図2に示すように、B群の摂水量は、A群に比べると有意に減少した(約40%程度の減少であった)。また、C1群及びC3群についても、A群と比べると有意に摂水量が減少した(それぞれ、約35%及び約10%程度の減少であった)。以上のことからも、摂食抑制剤(F)を投与したB群では、摂食量の減少と平衡して、飲水量の減少が見られた。両項目の正比例した減少は摂食抑制剤(F)が摂食抑制を示す能力を持つことを示す重要な結果である。
【0014】
<実施例3> 製剤例
次に、本実施形態の摂食抑制剤を提供する際の製剤例について説明する。
錠剤として、50mgの摂食抑制剤と、178mgの乳糖と、30mgのコーンスターチと、30mgの結晶セルロースと、3mgのショ糖脂肪酸エステルとを良く混合し、従来周知の打錠装置(例えば、菊水製作所製LIBRA2)を用いることにより、1個が300mgのものを製造した。
顆粒剤として、300mgの摂食抑制剤と、216mgの乳糖と、60mgの結晶セルロースと、6mgのショ糖脂肪酸エステルとを良く混合し、従来周知の乾式造粒機(例えば、フロイント産業社製TF208)を用いることにより製造した。この顆粒剤を一包あたり600mgとして、一回分の投与顆粒剤とした。
【0015】
散剤として、300mgの摂食抑制剤と、180mgのコーンスターチと、120mgの乳糖とを良く混合することにより製造した。この散剤を一包あたり600mgとして、一回分の投与散剤とした。
液剤として、600mgの摂食抑制剤と、1000mgのグリセリンと、100mgのD−ソルビトールと、500mgのクエン酸と、30mgの安息香酸ナトリウムとを良く混合し、全量が100mLになるよう精製水を加えることにより製造した。この液剤を一瓶あたり100mLとして、一回分の投与液剤とした。
このように本実施形態によれば、レンギョウ葉エキスを含有した摂食抑制剤を提供できた。この摂食抑制剤は、レンギョウ葉エキスを主成分としているので、製造・提供が容易となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンギョウ葉エキスを含むことを特徴とする摂食抑制剤。
【請求項2】
前記摂食抑制剤が、錠剤、顆粒剤、粉末剤、液剤のうちのいずれか一つであることを特徴とする請求項1に記載の摂食抑制剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−208982(P2010−208982A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55938(P2009−55938)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(594054900)アスゲン製薬株式会社 (3)
【Fターム(参考)】