説明

摩擦伝動ベルト

【課題】 被水時における伝達性能の低下や異音の発生を抑制し、更に耐摩耗性、耐久性に優れた摩擦伝動ベルトを提供することを目的とする。
【解決手段】 Vリブドベルト1は、ベルト長手方向に沿って本体内に心線2を埋設し、背面8を形成する伸張層5と、この伸張層5の下層に配置される接着層3と、さらにその下層に配置される圧縮層4とを備えて構成されている。そして摩擦伝動面を形成する圧縮層4は、ゴム100重量部に対して中空短繊維を5〜60重量部配合したゴム組成物で構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は動力伝動に用いられる摩擦伝動ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ゴム工業分野、なかでも自動車用部品の高機能、高性能化が望まれている。そのような状況の中で、通常走行時に限らず、被水時においても高い伝達性能を有する動力伝動ベルトが求められている。また静粛化についても厳しい要求があり、特に駆動装置においてはエンジン音以外の音は異音とされるため、ベルト発音対策についても要請がある。
【0003】
動力伝動ベルト駆動装置における異音としては、回転変動の大きな条件や高負荷条件において発生するスリップ音や、圧縮ゴム層が粘着摩耗を起こし、その結果リブ間の溝底に付着した粘着ゴムにより発生する騒音が指摘されているが、これら発音に対しては、圧縮ゴム層に綿、ナイロン、ポリエステル等の短繊維を配合したり、カーボンブラックなどの補強材を増量することによる対処が可能である。
【0004】
しかし、雨天走行時などにおいてエンジンルーム内に水が入り、ベルトとプーリの間に水が付着した際には、前記ベルトは水膜除去効果が低いためにスリップ率が高くなって、伝達性能が低下したり、異音が発生したりするなどの問題があった。なかでも、近年注目されているエチレン・α−オレフィンゴムで製造された動力伝動ベルトの場合、汎用的に用いられているクロロプレンゴムに比べると水濡れ性に劣ることから、被水時の伝達性能の低下や異音の発生が顕著であった。ここでいうスリップによる異音とは、エチレン・α−オレフィンゴムが水をはじき易いことから、被水時にベルト−プーリ間に水が均一に浸入せず、水が入った部分は摩擦係数が低下し、水が入らなかった部分は摩擦係数が低下しないために、ベルトがスティックすることに因るスティック−スリップ音である。このような注水時におけるスリップ対策としては、タルク等のパウダーを圧縮ゴム層表面に塗布したり、ベルト張力を高めてスリップ率を小さくする試みがなされている。また特定繊維(パラ系アラミド繊維、綿繊維)を配合したゴム組成物で圧縮ゴム層を形成するといった提案もある。(特許文献1参照)
【特許文献1】特開平07−151191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、パウダー塗布に関しては作業工程増によるコストアップとなるとともに、経時的にベルト表面のパウダーが剥がれ落ちてスリップ抑制効果が低下するといった問題があった。一方、初期にベルト張力を高く設定した場合、ベルトの摩耗や心線の伸び等でベルトの張力が徐々に低下していき、経時的にスリップが起こりやすくなるといった問題が指摘されている。またパラ系アラミド繊維を配合したベルトにあっては吸水性能が低く、水膜除去効果が充分とは言えない。一方、綿短繊維を配合したベルトは、被水時の性能低下は少ないものの、耐摩耗性が充分ではなく、また耐熱耐久性が低くなるという不具合があった。
【0006】
上記問題に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、本発明を提案するものであり、その目的とするところは、被水時における伝達性能の低下や異音の発生を抑制し、更に耐摩耗性、耐久性に優れた摩擦伝動ベルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願請求項1記載の発明は、少なくとも摩擦伝動面の一部が、中空短繊維を配合したゴム組成物で構成されることを特徴とする摩擦伝動ベルトである。
【0008】
本願請求項2記載の発明は、請求項1記載の摩擦伝動ベルトであって、摩擦伝動面から中空短繊維の一部が露出していることを特徴とする。
【0009】
本願請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の摩擦伝動ベルトであって、中空短繊維が、主鎖にポリアミド結合を有する熱可塑性ポリマーからなることを特徴とする。
【0010】
本願請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の摩擦伝動ベルトであって、中空短繊維の強度が、3.0〜10.0cN/dtexであることを特徴とする。
【0011】
本願請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の摩擦伝動ベルトであって、中空短繊維の繊維長が、0.5〜10.0mmであることを特徴とする。
【0012】
本願請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の摩擦伝動ベルトであって、ゴム組成物が、ゴム100質量部に対して中空短繊維を5〜60重量部配合してなることを特徴とする。
【0013】
本願請求項7記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の摩擦伝動ベルトであって、ゴムがエチレン・α−オレフィンエラストマーを主成分とすることを特徴とする。
【0014】
本願請求項8記載の発明は、ゴム組成物には共架橋剤としてN,N´−m−フェニレンジマレイミドを配合した請求項1から7のいずれかに記載の摩擦伝動ベルトである。
【0015】
本願請求項9記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の摩擦伝動ベルトであって、摩擦伝動ベルトが、ベルト長手方向に延びるリブ部を配設したVリブドベルトであることを特徴とする。
【0016】
本願請求項10記載の発明は、請求項9記載の摩擦伝動ベルトであって、リブ部表面が、中空短繊維を配合したゴム組成物で構成されることを特徴とする。
【0017】
本願請求項11記載の発明は、請求項9又は10記載の摩擦伝動ベルトであって、ベルト背面が、中空短繊維を配合したゴム組成物で構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本願請求項1記載の発明は、少なくとも摩擦伝動面の一部が、中空短繊維を配合したゴム組成物で構成されることで、被水時における伝達性能の低下や異音の発生を抑制した摩擦伝動ベルトとすることができる。
【0019】
本願請求項2記載の発明は、摩擦伝動面から中空短繊維の一部が露出していることで、走行初期から前記効果を発揮することができる。
【0020】
本願請求項3記載の発明は、中空短繊維が、主鎖にアミド結合を有する熱可塑性ポリマーからなることで、被水時における伝達性能の低下や異音の発生を抑制し、更に耐摩耗性、耐久性に優れた摩擦伝動ベルトとすることができる。
【0021】
本願請求項4記載の発明は、中空短繊維の強度が、3.0〜10.0cN/dtexであることで、被水時における伝達性能の低下や異音の発生を抑制し、更に耐摩耗性、耐久性に優れ、そしてこれらの効果を長期間に渡り発揮することが可能な摩擦伝動ベルトとすることができる。
【0022】
本願請求項5記載の発明は、中空短繊維の繊維長が、0.5〜10.0mmであることで、中空短繊維の脱落を抑制し、長期にわたり効果を持続させることが可能であると共に、良好な分散状態を呈することから、耐摩耗性、耐久性に優れた摩擦伝動ベルトとすることができる。
【0023】
本願請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の摩擦伝動ベルトであって、ゴム組成物が、ゴム100質量部に対して中空短繊維を5〜60質量部配合してなることで、被水時における伝達性能の低下や異音の発生の抑制効果が高く、更に耐摩耗性、耐久性に優れた摩擦伝動ベルトとすることができる。
【0024】
本願請求項7記載の発明は、ゴムがエチレン・α−オレフィンエラストマーを主成分とすることで、水濡れ性を良好なものとしつつ、優れた耐熱性、耐寒性、耐オゾン性を呈すると共に、脱ハロゲンを満たす摩擦伝動ベルトとすることができる。即ち、エチレン・α−オレフィンエラストマーを用いた場合、ゴム自身の水濡れ性の悪さから、被水時の性能低下が顕著に見られる傾向がある。しかし、本発明の構成によると、ゴムの主成分がエチレン・α−オレフィンであっても、被水時の伝達性能の改善や発音の抑制を実現することができると共に、エチレン・α−オレフィンエラストマーの優れた性質を具備することが可能となる。なお、主成分として用いられているゴムとは、複数の種類のゴム材料が含有されている場合においては、ゴムの組成において最も多く含有されている成分のゴムのことを指し、例えば、50%以上含有されているものであれば主成分となる。
【0025】
本願請求項8記載の発明は、ゴム組成物には共架橋剤としてN,N´−m−フェニレンジマレイミドを配合した請求項1から7のいずれかに記載の摩擦伝動ベルトであることから、架橋密度が高くなり、摩擦伝動ベルトとして耐摩耗性に優れ、又注水時と乾燥時の伝達性能の差が少ないといった効果がある。
【0026】
本願請求項9記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の摩擦伝動ベルトであって、摩擦伝動ベルトが、ベルト長手方向に延びるリブ部を配設したVリブドベルトであって、被水時の動力伝達性や耐発音性などが向上したVリブドベルトとすることができる。
【0027】
本願請求項10記載の発明は、リブ部表面が、中空短繊維を配合したゴム組成物で構成されることで、リブ面の駆動において効果を奏することができる。
【0028】
本願請求項11記載の発明は、ベルト背面が、中空短繊維を配合したゴム組成物で構成されることで、背面の駆動において効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の実施の形態について説明する。本実施形態は、摩擦伝動ベルトとして、ベルトの長手方向に延びるリブ部を有するVリブドベルトに本発明を適用したものである。
【0030】
図1に示すようにVリブドベルト1は、背面8を形成する伸張層5と、この伸張層5の下層に配置される接着層3と、さらにその下層に配置される圧縮層4とを備えて構成されている。また、心線2は、ベルト長手方向に沿って本体内に埋設されるように配置されており、その一部が伸張層5に接し、残りの部分が接着層3に接した状態で埋設されている。そして、圧縮層4には、断面が略台形形状でベルト長手方向に延びる複数のリブ部7が設けられている。また、圧縮層4に含有される短繊維はリブ形状に沿った流動状態を呈し、表面近傍の短繊維はリブ形状に沿って配向している。一方、伸張層5に含有される短繊維はベルト幅方向に配向している。
【0031】
ここで摩擦伝動面とは、リブ部7表面(圧縮層4表面)を指し、Vリブドベルト1が背面駆動を行う場合は、更にベルト背面8(伸張層5表面)をも指す。即ち、本発明では、少なくとも摩擦伝動面の一部を特定のゴム組成物で構成するものであり、具体的には、摩擦伝動ベルトがVリブドベルトである場合、少なくともリブ部表面及び/又はベルト背面の一部を、中空短繊維を配合したゴム組成物で構成するものである。この際、摩擦伝動面から中空短繊維の一部を露出させることで、ベルト走行初期から前記効果を発揮することができる。
【0032】
心線2は、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維、ポリブチレンテレフタレート(PBT)繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維、ポリアミド繊維、ガラス繊維、カーボン繊維、そしてアラミド繊維などから構成される撚糸コードが使用できる。
【0033】
前記心線は接着処理を施されることが望ましく、例えば(1)未処理コードを、エポキシ化合物やイソシアネート化合物などから選ばれた配合剤を含有する処理液を入れたタンクに含浸してプレディップした後、(2)160〜200°Cに温度設定した乾燥炉に30〜600秒間通して乾燥し、(3)続いてRFL液からなる接着液を入れたタンクに浸漬し、(4)210〜260°Cに温度設定した延伸熱固定処理器に30〜600秒間通し−1〜3%延伸して延伸処理コードとする、ことができる。
【0034】
この前処理液で使用するイソシアネート化合物としては、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレン2,4−ジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリアリールポリイソシアネート(例えば商品名としてPAPIがある)等がある。このイソシアネート化合物はトルエン、メチルエチルケトン等の有機溶剤に混合して使用される。
【0035】
また、上記イソシアネート化合物にフェノール類、第3級アルコール類、第2級アルコール類等のブロック化剤を反応させてポリイソシアネートのイソシアネート基をブロック化したブロック化ポリイソシアネートも使用可能である。
【0036】
エポキシ化合物としては、例えばエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールや、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコールとエピクロルヒドリンのようなハロゲン含有エポキシ化合物との反応生成物や、レゾルシン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルメタン、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂等の多価フェノール類やハロゲン含有エポキシ化合物との反応生成物などである。上記エポキシ化合物はトルエン、メチルエチルケトン等の有機溶剤に混合して使用される。
【0037】
RFL処理液はレゾルシンとホルムアルデヒドの初期縮合物をゴムラテックスと混合したものであり、この場合レゾルシンとホルムアルデヒドのモル比は1:2〜2:1にすることが接着力を高める上で好適である。モル比が1/2未満では、レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂の三次元化反応が進み過ぎてゲル化し、一方2/1を超えると、逆にレゾルシンとホルムアルデヒドの反応があまり進まないため、接着力が低下する。
【0038】
ゴムラテックスとしては、スチレン・ブタジエン・ビニルピリジン三元共重合体、水素化ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴムなどがあげられる。
【0039】
また、レゾルシン・ホルムアルデヒドの初期縮合物と上記ゴムラテックスの固形分質量比は1:2〜1:8が好ましく、この範囲を維持すれば接着力を高める上で好適である。上記の比が1/2未満の場合には、レゾルシン−ホルムアルデヒドの樹脂分が多くなり、RFL皮膜が固くなり動的な接着が悪くなり、他方1/8を超えると、レゾルシン・ホルムアルデヒドの樹脂分が少なくなるため、RFL皮膜が柔らかくなり、接着力が低下する。
【0040】
更に、上記RFL液には加硫促進剤や加硫剤を添加してもよく、添加する加硫促進剤は、含硫黄加硫促進剤であり、具体的には2−メルカプトベンゾチアゾール(M)やその塩類(例えば、亜鉛塩、ナトリウム塩、シクロヘキシルアミン塩等)ジベンゾチアジルジスルフィド(DM)等のチアゾール類、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(CZ)等のスルフェンアミド類、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TS)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TT)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(TRA)等のチウラム類、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸ナトリウム(TP)、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(PZ)ジエチルジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(EZ)等のジチオカルバミン酸塩類等がある。
【0041】
また、加硫剤としては、硫黄、金属酸化物(酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化鉛)、有機過酸化物等があり、上記加硫促進剤と併用する。
【0042】
圧縮層4は、中空短繊維を配合したゴム組成物で構成される。原料ゴムとしては、天然ゴム、ブチルゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アルキル化クロロスルフォン化ポリエチレン、エチレン−・α−オレフィンゴム、水素化ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩との混合ポリマー等のゴム材を単独で、またはこれらを混合して用いることが使用できる。なかでもエチレン・α−オレフィンゴムが、優れた耐オゾン性、耐熱性、耐寒性を有しているとともに比較的に安価で、脱ハロゲンという要求を満たすことから好ましく用いられる。また、エチレン・α−オレフィンゴムは他のゴムに比べて水濡れ性に乏しいことから、本発明の適用によって注水時の動力伝動性及び静音性の向上が顕著である。
【0043】
エチレン・α−オレフィンゴムとしては、エチレンとα−オレフィン(プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテンなど)の共重合体、あるいは、エチレンと上記α−オレフィンと非共役ジエンの共重合体であり、具体的にはエチレン−プロピレンゴム(EPM)やエチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)などのゴムをいう。上記ジエン成分としては、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネンなどの炭素原子数5〜15の非共役ジエンが挙げられる。EPDMは耐熱性や耐寒性に優れるという特性を有しており、耐熱・耐寒性能の高い動力伝動ベルトを得ることができる。このEPDMはヨウ素価が3〜40のものが好ましく用いられる。ヨウ素価が3未満であると、ゴム組成物の加硫が十分でなく摩耗や粘着の問題が発生し、またヨウ素価が40を超えると、ゴム組成物のスコーチが短くなって扱い難くなり、耐熱性が悪くなるものである。
【0044】
上記ゴムの架橋には、硫黄や有機過酸化物が使用される。有機過酸化物としては具体的には、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、1.1−t−ブチルペロキシ−3.3.5−トリメチルシクロヘキサン、2.5−ジ−メチル−2.5−ジ(t−ブチルペロキシ)ヘキサン、2.5−ジ−メチル−2.5−ジ(t−ブチルペロキシ)ヘキサン−3、ビス(t−ブチルペロキシジ−イソプロピル)ベンゼン、2.5−ジ−メチル−2.5−ジ(ベンゾイルペロキシ)ヘキサン、t−ブチルペロキシベンゾアート、t−ブチルペロキシ−2−エチル−ヘキシルカーボネートが挙げられる。この有機過酸化物は、単独もしくは混合物として、ゴム100質量部に対して1〜8質量部の範囲で好ましく使用される。
【0045】
また加硫促進剤を配合しても良い。加硫促進剤としてはチアゾール系、チウラム系、スルフェンアミド系の加硫促進剤が例示でき、チアゾール系加硫促進剤としては、具体的に2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトチアゾリン、ジベンドチアジル・ジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩等があり、チウラム系加硫促進剤としては、具体的にテトラメチルチウラム・モノスルフィド、テトラメチルチウラム・ジスルフィド、テトラエチルチウラム・ジスルフィド、N,N’−ジメチル−N,N’−ジフェニルチウラム・ジスルフィド等があり、またスルフェンアミド系加硫促進剤としては、具体的にN−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N’−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等がある。また、他の加硫促進剤としては、ビスマレイミド、エチレンチオウレアなども使用できる。これら加硫促進剤は単独で使用してもよいし、2種以上の組み合わせで使用してもよい。
【0046】
また、共架橋剤(co−agent)を配合することによって、架橋度を上げて粘着摩耗等の問題を防止することができる。共架橋剤として挙げられるものとしては、TAIC、TAC、1,2ポリブタジエン、不飽和カルボン酸の金属塩、p−ベンゾキノンジオキシム、p,p’−ジベンゾキノンジオキシム、テトラクロロベンゾキノンポリ(P−ジニトロベンゾキノン)、グアニジン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、N−N’−m−フェニレンビスマレイミド、硫黄など通常、有機過酸化物架橋に用いるものであるが、なかでもN,N’−m−フェニレンジマレイミド及び/又はキノンジオキシム類が好ましい。その配合量はゴム100質量部に対して、0.5〜10質量部が望ましく、0.5質量部未満では添加による効果が顕著でなく、10質量部を超えると引裂き力や接着力が低下するといった不具合がある。このとき、共架橋剤としてN,N’−m−フェニレンジマレイミドを選択した場合、架橋密度が高くなり、耐摩耗性が高く、また注水時と乾燥時の伝達性能の差が少ないといった特徴がある。またキノンジオキシム類を選択した場合は、繊維基材との接着性に優れるといった特徴がある。
【0047】
前記ゴム組成物に配合する中空短繊維は、例えば、主鎖にアミド結合を有する熱可塑性ポリマーを選択すると強度と分散性のバランスがとれている点から好ましい。また限定されるものではないが、中空率10〜50%の中空短繊維が好ましく用いられる。中空率が10%未満では、被水時における伝達性能の低下や異音の発生の抑制効果が顕著ではない恐れがあり、一方、中空率が50%を超えると、短繊維の強度が低下し、ベルト成形体において中空部形状を維持できない恐れがある。ここで、中空率とは、単糸の横断面形状において中空部の占める面積割合をいい、ベルトの被水時においては、この中空部の微細な孔を通じて水が移行し、優れた水膜除去効果を呈することが可能であると考えられる。尚、中空部は、単糸の横断面形状において、単一の孔で構成される必要はなく、複数の孔から構成されていてもよい。例えば、同じ中空率であっても、単一の孔で構成される中空短繊維と、複数の孔で構成される中空短繊維では、後者のほうが中空短繊維の強度を維持できると共に、ベルト成形体において中空部形状を保持できるものと期待できる。また強度3.0〜10.0cN/dtexの中空短繊維が、耐摩耗性、耐久性などの観点から好ましく用いられる。そして繊維長が0.5〜10.0mmの中空短繊維を選択することで、中空短繊維の脱落を抑制し、長期にわたり効果を持続させることが可能であると共に、良好な分散状態を呈し、優れた耐摩耗性、耐久性の効果を期待できる。
【0048】
中空短繊維は、所望に応じて、接着処理を施すことができる。例えば、RFL液で処理する方法、イソシアネート化合物及び/又はエポキシ化合物を主成分とする処理剤で処理する方法、エポキシ化合物及び/又はイソシアネート化合物で第1処理した後、RFL液で第2処理する方法、そして更に前記処理に加えて、ゴム糊などでオーバーコート処理する方法などを挙げることができる。
【0049】
また前記ゴム組成物には、上記中空短繊維以外の短繊維を含有させることもできる。短繊維としては、ポリアミド、ポリエステル、綿、アラミド、PBOなどからなる短繊維を例示できる。アラミド繊維は分子構造中に芳香環をもつ、例えば商品名コーネックス、ノーメックス、ケブラー、テクノーラ、トワロン等を挙げることができる。前記短繊維は、繊維長が1〜20mmが好ましく、その添加量は、例えばゴム100質量部に対して5〜50質量部とすることができる。前記短繊維もまた接着処理を施されることが好ましい。
【0050】
そして、上記以外に必要に応じてカーボンブラック、シリカのような増強剤、グラファイト、二硫化モリブデン、PTFEのような固体潤滑剤、充填剤、可塑剤、安定剤、加工助剤、着色剤といった通常のゴム配合物に使用されるものを用いることができる。
【0051】
接着層3,伸張層5は、圧縮層4と同様のゴム組成物を用いることもできるが、別のゴム組成物で構成してもよい。上述の如き原料ゴム、配合剤を用いることができるが、接着性を考慮すると短繊維は混入しないほうが好ましい。
【0052】
尚、Vリブドベルトは、図1のような構成に限定されず、例えば接着層を配置しないVリブドベルトや、背面に帆布を貼着したVリブドベルトなども本発明の技術範囲に属する。以下、これらの実施形態を図面をもとに説明する。
【0053】
図2に示すVリブドベルト21は、背面28が帆布で形成された伸張層25と、該伸張層25の下層に接着層23が配設され、更にその下層に圧縮層24を配置した構成を有する。心線22は、ベルト長手方向に沿って本体内に埋設されてなり、接着層23に埋設されている。そして前記圧縮層24はベルト長手方向に伸びる断面略三角形の複数のリブ部27が設けられている。ここで、圧縮層24に含有される短繊維はベルト幅方向に配向している。
【0054】
伸張層25を構成する帆布は、織物、編物、不織布などから選択される繊維基材である。構成する繊維素材としては、公知公用のものが使用できるが、例えば綿、麻等の天然繊維や、金属繊維、ガラス繊維等の無機繊維、そしてポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリフロルエチレン、ポリアクリル、ポリビニルアルコール、全芳香族ポリエステル、アラミド等の有機繊維が挙げられる。織物の場合は、これらの糸を平織、綾織、朱子織等することにより製織される。
【0055】
上記帆布は、公知技術に従ってRFL液に浸漬することが好ましい。またRFL液に浸漬後、未加硫ゴムを帆布に擦り込むフリクションを行ったり、ゴムを溶剤に溶かしたソーキング液に浸漬処理することができる。尚、RFL液には適宜カーボンブラック液を混合して処理反を黒染めしたり、公知の界面活性剤を0.1〜5.0質量%加えてもよい。
【0056】
図3に示すVリブドベルト31は、背面38を形成する伸張層35と、該伸張層35の下層に圧縮層34を配置した構成を有する。心線32は、ベルト長手方向に沿って本体内に埋設されてなり、その一部が伸張層35に接し、残部が圧縮層34に接した状態となっている。そして、前記圧縮層34にはベルト長手方向に伸びる断面略三角形の複数のリブ部37が設けられており、該リブ表面には植毛層が設けられている。ここで、伸張層25に含有される短繊維はランダム方向に配向している。
【0057】
図1,3では、伸張層35を帆布で構成せず、短繊維を含有するゴム組成物で形成した構成を示したが、この際、背面駆動時の異音を抑制すべく、背表面に凹凸パターンを設けることができる。凹凸パターンとしては、編布パターン、織布パターン、スダレ織布パターンなどを挙げることができるが、最も好ましくは織物パターンである。
【0058】
そして図3では伸張層35に含有される短繊維はランダム方向に配向しているが、図1のようにベルト幅方向に配向させるなど一方向に配向していてもかまわない。尚、ランダム方向に配向させた場合、多方向からの裂きや亀裂の発生を抑制できるといった特徴があるが、このとき短繊維として屈曲部を有する短繊維(例えばミルドファイバー)を選択すると、より多方向から作用する力に対して耐性ができるといった特徴がある。
【0059】
また図3のように接着層を配置しない構成の場合、心線32は伸張層35と圧縮層34の境界領域でベルト本体に埋設されることになる。この時、心線32とベルト本体との接着性を考慮すると、伸張層35及び圧縮層34のどちらか一方のゴム層は、短繊維を含有しないゴム組成物で構成することが望ましい。
【0060】
尚、図3では、圧縮層24を、短繊維を含有しないゴム組成物表面に植毛層を設けた構成としているが、短繊維を含有するゴム組成物表面に植毛層を設けた構成とすることも可能である。また図1では圧縮層24に含有される短繊維はリブ形状に沿った流動状態を呈しているが、図2のように短繊維が幅方向に配向した構成としてもかまわない。
【0061】
尚、Vリブドベルトが背面伝動を行う場合は、伸張層の表面も摩擦伝動面となりうる。よって、伸張層を本発明のゴム組成物で構成してもかまわない。例えば、図1の場合は、背面、リブ部表面共にゴム組成物で形成されることから、少なくともどちらか一方を本発明のゴム組成物で形成すればよい。また図2の場合、背面は帆布で形成されることから、リブ部表面を本発明のゴム組成物で形成すればよい。そして図3の場合、圧縮層34の表面は植毛層が形成されており、圧縮層34を構成するゴム組成物が表面に直接露出していないことから、背面を本発明のゴム組成物で形成すればよい。
【0062】
次に、これらVリブドベルトの製造方法を説明する。製造方法としては限定されるものではないが例えば以下のような方法がある。
【0063】
第1の方法としては、まず、円筒状の成形ドラムの周面に伸張層を構成する部材と接着層を構成する接着ゴムシートとを巻き付けた後、この上にコードからなる心線を螺旋状にスピニングし、更に圧縮層を構成する圧縮ゴムシートを順次巻き付けて未加硫スリーブを形成した後、加硫して加硫スリーブを得る。次に、加硫スリーブを駆動ロールと従動ロールに掛架され所定の張力下で走行させ、更に回転させた研削ホイールを走行中の該加硫スリーブに当接するように移動してスリーブの圧縮層表面に3〜100個の複数の溝状部を一度に研磨して摩擦伝動面を形成する。このようにして得られたスリーブを駆動ロールと従動ロールから取り外し、該スリーブを他の駆動ロールと従動ロールに掛架して走行させ、カッターによって所定に幅に切断して個々のVリブドベルトに仕上げる。
【0064】
第2の方法としては、周面にリブ刻印を設けた円筒状の成形ドラムに、圧縮層を構成する圧縮ゴムシート、接着層を構成する接着ゴムシートを巻き付けた後、心線をスピニングし、伸張層を構成する部材を巻き付けて未加硫スリーブを配置する。その後、該未加硫スリーブを成形ドラムに押圧しながら加硫することで、圧縮層にリブを型付けする。得られた加硫スリーブにはリブが形成されてなるが、必要に応じてリブ表面を研磨し、所定幅に切断して個々のVリブドベルトとする。
【0065】
第3の方法としては、円筒状の成形ドラムに装着された可撓性ジャケットの上に伸張層を構成する部材、接着層を構成する接着ゴムシートを巻き、その上に心線をスピニングした後、さらに圧縮層を構成する圧縮ゴムシートを順次無端状に捲き付けて未加硫スリーブを形成する。そして、可撓性ジャケットを膨張させて、未加硫スリーブをリブ部に対応した刻印を有する外型に押圧して加硫成形する。得られた加硫スリーブにはリブが形成されてなるが、必要に応じてリブ表面を研磨し、所定幅に切断して個々のVリブドベルトとする。
【0066】
第4の方法としては、円筒状の成形ドラムに装着された可撓性ジャケットの上に圧縮層を構成する圧縮ゴムシートを配置した第1未加硫スリーブを形成した後、可撓性ジャケットを膨張させて、該第1未加硫スリーブをリブ部に対応した刻印を有する外型に押圧して、リブ部を有する予備成型体を作製する。そして、前記予備成型体を密着させた外型から、内型を離間させ、次いで、内型に伸張層を構成する部材、接着層を構成する接着ゴムシートを配置し、心線をスピニングして第2未加硫スリーブを形成する。そして、可撓性ジャケットを膨張させて、前記予備成型体を密着させた外型に、該第2未加硫スリーブを内周側から押圧して予備成型体と一体的に加硫する。得られた加硫ベルトスリーブにはリブが形成されてなるが、必要に応じてリブ表面を研磨し、所定幅に切断して個々のVリブドベルトとする。
【0067】
尚、Vリブドベルトの圧縮層を表層と内層の2層からなる構成とする場合、表層と内層の2層構成を有する圧縮ゴムシートを巻き付ける、もしくは表層用圧縮ゴムシートと内層用圧縮ゴムシートを順次巻き付けるなどにより、表層と内層の2層構成を有する圧縮層を配置した未加硫スリーブを形成する必要がある。このとき、第1の方法では研磨によりリブを形成するため、得られたVリブドベルトのリブ山には表層が存在するがリブ側面やリブ底には内層が露出することが考えられる。そのため、表層と内層の2層からなるVリブドベルトは、第2の方法、第3の方法、もしくは第4の方法で製造することが望ましい。
【0068】
また図3のような接着層を配置しないVリブドベルトは、上記方法において接着ゴムシートを配置せずに製造することで得ることができる。更に、図1のように圧縮層4に含有される短繊維がリブ形状に沿った流動状態を呈しているVリブドベルトは、例えば第2の方法、第3の方法、もしくは第4の方法で製造することで得られる。そして、図2のように圧縮層24に含有される短繊維が幅方向に配向したVリブドベルトは、例えば第1の方法で製造することで得られる。
【0069】
ここで、摩擦伝動面を構成するゴム組成物は以下のようにして調製することができる。具体的には、バンバリーミキサー、ニーダー等の混練機を用いて、中空短繊維と各配合剤とゴムの混練を行う。そして、このようにして調製されたゴム組成物を圧延することにより、摩擦伝動面を構成するゴムシートを作製することができるものである。
【0070】
尚、本実施形態は、Vリブドベルトに本発明を適用した一例であるが、Vリブドベルトに限らず、他の種類の摩擦伝動ベルトにも本発明を適用することが可能である。
【実施例】
【0071】
以下、具体的な実施例を伴って説明する。
【0072】
実施例1〜4、比較例1〜4
表1の配合に従いゴム組成物を調製し、JIS K6300−1に準じてムーニー粘度を測定した。また該ゴム組成物をカレンダーロールにて圧延して、厚み1.0mmのゴムシートとし、更にこれを2枚重ねて厚み2.0mmの未加硫ゴムシートを作製し、165°Cで30分間加プレス加硫して加硫ゴムシートを得た。この加硫ゴムについて、JIS K6253に従って硬度(JIS−A)を、JIS K6251に従って切断時の伸びEB(%)を、JIS K6251に従って切断時の応力TB(MPa)をそれぞれ測定した。DIN摩耗試験はJIS K 6264に準じて行い、サンプルは摩耗面に対し垂直に短繊維が配向するよう作製した。吸水試験は、前記加硫ゴムシートを幅20mm、長さ50mmに打ち抜いて試験片を作製し、この試験片を80°Cのイオン交換水に168時間浸漬して、浸漬前後の体積変化を測定した。これら測定結果を表2に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
次にVリブドベルトを作製した。Vリブドベルトは、ベルト本体にポリエステル繊維のロープからなる心線を埋設し、背面(伸張層)をゴム層で形成し、他方の面側に設けられた圧縮層に複数のリブ部をベルトの長手方向に配したものである。前記圧縮層、伸張層には短繊維が含有されてなり、かつ短繊維はベルト幅方向に配向している。
【0075】
ここで、圧縮層及び伸張層を、表1の配合に従い調整したゴム組成物からなる未加硫ゴムシートを用いて形成した。ベルトの製造方法としては、以下のような公知の方法を用いた。まず、フラットな円筒状の成形モールドに伸張ゴムシートを巻きつけ、心線をスピニングし、さらに、圧縮ゴムシートを巻きつけた後、該圧縮ゴムシートの上に加硫用ジャケットを挿入する。ついで、成形モールドを加硫缶内に入れて加硫した後、筒状の加硫スリーブを成形モールドから取り出す。そして、加硫スリーブの圧縮層をグラインダーにより研削して複数のリブ部を形成してから、カッターにより個々のベルトに切断して、Vリブドベルトを得た。実施例1〜4の研削面を確認したところ、中空短繊維が一部露出しているのが確認された。そして、このVリブドベルトを用いて、耐熱耐久性、伝達性の評価を行った。尚、Vリブドベルトは、6PK1100サイズ、3PK1100サイズのものを作製した。
【0076】
耐熱耐久試験
Vリブドベルトとして、6PK1100サイズのものを用いて評価した。耐熱耐久試験の評価に用いた走行試験機は、図4に示すように、駆動プーリ40(直径60mm)、アイドラープーリ41(直径50mm)、従動プーリ42(直径50mm)、テンションプーリ43(直径50mm)及びアイドラープーリ44(直径50mm)とを順に配置して構成したものである。そして、試験機の各プーリ40〜44にVリブドベルト1を掛架し、Vリブドベルト1のアイドラープーリ41,44への巻き付け角度を90°にして、雰囲気温度130°C、駆動プーリの回転数3300rpm、ベルト張力800N/6リブの試験条件で、駆動プーリ40に荷重を付与してVリブドベルト1を走行させ、心線に達する亀裂が6個発生するまでの時間を調べた。尚、本試験は400時間を打ち切りとした。
【0077】
伝達性能試験
Vリブドベルトとして、3PK1100サイズのものを用いて評価した。各Vリブドベルトを室温下で駆動プーリ(直径120mm)、従動プーリ(直径120mm)に巻き掛けし、ベルト張力が150N/3リブになるように駆動プーリに荷重をかけた。そして、駆動プーリの回転数2000rpmにて走行せしめ、従動プーリの負荷を0から増加させてベルトが2%スリップするときのトルクを測定した。この伝達性能試験では、乾燥時の伝達性能及び水を300ml/min垂らした注水時の伝達性能の評価を行った。これらの結果を表2に記す。
【0078】
【表2】

【0079】
結果、実施例は耐摩耗性、耐熱耐久性に優れるとともに、注水時の伝達性能が高く、乾燥時との伝達性能の差が少ないことが判明した。一方、中空部を有さない主鎖にアミド結合を有する短繊維を配合した比較例1,2では、吸水試験において体積変化が殆どなく、吸水性が極めて低いことが知見された。また伝達性能試験においては、注水時の伝達トルクが急激に低下しており、乾燥時との伝達トルクの差が大きいことが判った。そして、中空部を有さない綿短繊維を配合した比較例3,4では、耐摩耗性、耐熱耐久性に乏しいことが判った。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明にかかる伝動ベルトは自動車用あるいは一般産業用の駆動装置などに装着できる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明に係る摩擦伝動ベルトであるVリブドベルトの断面図である。
【図2】本発明に係る摩擦伝動ベルトである別のVリブドベルトの断面図である。
【図3】本発明に係る摩擦伝動ベルトである更に別のVリブドベルトの断面図である。
【図4】実施例における耐熱耐久試験のレイアウトを示す図である。
【符号の説明】
【0082】
1,21,31 Vリブドベルト
2,22,32 心線
3,23 接着層
4,24,34 圧縮層
5,24,25 伸張層
7,27,37 リブ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも摩擦伝動面の一部が、中空短繊維を配合したゴム組成物で構成されることを特徴とする摩擦伝動ベルト。
【請求項2】
摩擦伝動面から中空短繊維の一部が露出している請求項1記載の摩擦伝動ベルト。
【請求項3】
中空短繊維が、主鎖にアミド結合を有する熱可塑性ポリマーからなる請求項1又は2記載の摩擦伝動ベルト。
【請求項4】
中空短繊維の強度が、3.0〜10.0cN/dtexである請求項1〜3のいずれか1項に記載の摩擦伝動ベルト。
【請求項5】
中空短繊維の繊維長が、0.5〜10.0mmである請求項1〜4のいずれか1項に記載の摩擦伝動ベルト。
【請求項6】
ゴム組成物が、ゴム100質量部に対して中空短繊維を5〜60質量部配合してなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の摩擦伝動ベルト。
【請求項7】
ゴムがエチレン・αーオレフィンエラストマーを主成分とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の摩擦伝動ベルト。
【請求項8】
ゴム組成物には共架橋剤としてN,N´−m−フェニレンジマレイミドを配合した請求項1から7のいずれかに記載の摩擦伝動ベルト。
【請求項9】
摩擦伝動ベルトが、ベルト長手方向に延びるリブ部を配設したVリブドベルトである請求項1〜8のいずれか1項に記載の摩擦伝動ベルト。
【請求項10】
リブ部表面が、中空短繊維を配合したゴム組成物で構成される請求項9記載の摩擦伝動ベルト。
【請求項11】
ベルト背面が、中空短繊維を配合したゴム組成物で構成される請求項9又は10記載の摩擦伝動ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−157319(P2008−157319A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−344920(P2006−344920)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】