摩擦係合機構の油圧制御装置
【課題】エネルギ効率を向上させ、かつ摩擦係合機構の係合・解放制御を適切に実行することのできる油圧制御装置を提供する。
【解決手段】油圧発生源3とその油圧発生源3からの所定の油圧が供給されることにより係合しかつ油圧が排出されることにより解放する油圧式の摩擦係合機構1,2との間に設けられて摩擦係合機構1,2に対する油圧の給排状態を切り替える係合圧給排切替弁10を備えた摩擦係合機構の油圧制御装置HCUにおいて、油圧発生源3と係合圧給排切替弁10との間を連通する第1油路4の途中に、その第1油路4を開通させた状態と第1油路4を閉止させた状態とを選択的に設定する供給油路開閉弁9を設ける。
【解決手段】油圧発生源3とその油圧発生源3からの所定の油圧が供給されることにより係合しかつ油圧が排出されることにより解放する油圧式の摩擦係合機構1,2との間に設けられて摩擦係合機構1,2に対する油圧の給排状態を切り替える係合圧給排切替弁10を備えた摩擦係合機構の油圧制御装置HCUにおいて、油圧発生源3と係合圧給排切替弁10との間を連通する第1油路4の途中に、その第1油路4を開通させた状態と第1油路4を閉止させた状態とを選択的に設定する供給油路開閉弁9を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、クラッチやブレーキなどの摩擦係合機構の動作を制御するために、その摩擦係合機構に給排する油圧を制御する摩擦係合機構の油圧制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧は動力を伝達する手段として有効であり、各種機械装置類の動作を制御するための油圧制御装置で採用されている。例えば、車両に搭載される自動変速機やベルト式無段変速機などで用いられる前後進クラッチ(もしくはブレーキ)の係合・解放動作を制御するために油圧が用いられている。
【0003】
そのようなクラッチやブレーキの動作を制御するための油圧を制御する油圧制御装置の一例が、特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載されたクラッチ油圧機構は、変速時にオペレータへ与える違和感を防ぐことを目的として、前進側油圧クラッチへ供給される作動油の配管にチェックバルブが設けられ、チェックバルブと油圧クラッチとの間に油圧クラッチへ供給される作動油の一部を蓄積するアキュームレータが設けられ、油圧クラッチへ供給される作動油により動作してチェックバルブとともにアキュームレータに蓄積された作動油を保持するコントロールバルブが設けられた構成となっている。
【0004】
なお、特許文献2には、無段変速機における前後進切換装置の油圧制御回路に関する発明が記載されている。この特許文献2に記載された油圧制御回路は、マニュアル弁と前進用クラッチとの間に、入力ポートと出力ポートを連通して所定のクラッチ圧を前進用クラッチに出力し、出力ポートとドレーンポートとを連通して前進用クラッチのクラッチ圧をオイルタンク側へ流出させることが可能な前進用クラッチ制御弁が設けられていて、前進用クラッチ制御弁のドレーンポートには、前進用クラッチのクラッチ圧が最低限の締結状態を確保する圧力で保持されるように、前進用クラッチから流出してくる作動油の圧力制御を行う油流出制御手段が接続されている。
【0005】
また、特許文献3には、車両の搭乗者に耳障りな感覚を与えることなく、車両の走行状態に応じて自動的に適当な制動力を発生させることを目的として、所定の油圧を発生する高圧源と、その高圧源に連通して車両の走行状態に応じた制動油圧を発生すべく駆動される開閉弁とを備えた自動制動装置に関する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−227568号公報
【特許文献2】特開平7−259983号公報
【特許文献3】特開平11−139279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1に記載されたクラッチ油圧機構の構成によれば、変速が行われると、アキュームレータに蓄積された作動油により変速前の油圧クラッチの圧力が保持され、よって油圧クラッチのスリップによるトルクの回復の遅れを解消でき、オペレータに変速時に与えていたトルク抜け感やショック、坂道での後戻り感などの違和感を解消することができる、とされている。
【0008】
しかしながら、上記の特許文献1に記載されたクラッチ油圧機構や、あるいは従来のクラッチ(もしくはブレーキ)制御用の油圧制御装置の構成では、変速時のクラッチ油圧を安定させるため、またクラッチの係合状態を維持させるために、常に元圧を調圧(減圧)してクラッチ側に供給しておく必要がある。そのため、クラッチ係合中も常に油圧源を作動させて元圧を発生させ続けておく必要があり、また、元圧を減圧する際の圧力損失などが不可避的に生じることから、その分エネルギ効率が低下してしまう。
【0009】
このように、クラッチやブレーキなどの摩擦係合機構を油圧で制御する場合に、エネルギ効率を向上させて、適切なクラッチの係合・解放制御を実行するためには、未だ改良の余地があった。
【0010】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、エネルギ効率を向上させ、かつ摩擦係合機構の係合・解放制御を適切に実行することのできる油圧制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、油圧発生源と該油圧発生源からの所定の油圧が供給されることにより係合しかつ油圧が排出されることにより解放する油圧式の摩擦係合機構との間に設けられて前記摩擦係合機構に対する油圧の給排状態を切り替える係合圧給排切替弁を備えた摩擦係合機構の油圧制御装置において、前記油圧発生源と前記係合圧給排切替弁との間を連通する第1油路の途中に設けられて該第1油路を開通させた状態と該第1油路を閉止させた状態とを選択的に設定する供給油路開閉弁を備えていることを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記供給油路開閉弁と前記係合圧給排切替弁との間を連通する第2油路の途中に設けられて該第2油路の油圧を蓄圧するもしくは該第2油路へ油圧を供給する蓄圧器を更に備えていることを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記蓄圧器の使用下限圧が前記摩擦係合機構を作動させる際に最小限必要な作動最小圧と同等の圧力となり、かつ、前記蓄圧器の使用上限圧が前記摩擦係合機構を係合させる際に必要な係合必要圧以上の圧力となり、なおかつ、前記摩擦係合機構が係合されかつ前記供給油路開閉弁が閉じられた状態における前記第2油路の油圧が前記使用上限圧と前記係合必要圧との間の圧力となるように、前記蓄圧器の圧力特性が設定されていることを特徴とするものである。
【0014】
そして、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、前記供給油路開閉弁は、弁座のシート面に押し付けられる弁体を駆動することにより流路の開閉を行うポペット弁を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、摩擦係合機構を係合する場合、供給油路開閉弁を開き、係合圧給排切替弁を摩擦係合機構へ油圧を供給する位置に設定することにより、摩擦係合機構へ油圧源からの油圧が供給されて摩擦係合機構が係合する。そして、その摩擦係合機構の係合状態を保持する場合には、係合圧給排切替弁を摩擦係合機構へ油圧を供給する位置に設定したまま供給油路開閉弁を閉じることにより、供給油路開閉弁と摩擦係合機構との間に、摩擦係合機構を係合させるための油圧を密封することができる。その結果、摩擦係合機構を係合させて供給油路開閉弁を閉じた後に、油圧源からの油圧の供給を停止することが可能になる。そのため、摩擦係合機構を係合させた後は油圧源で油圧を発生させなくともよいので、油圧源を駆動するためのエネルギを低減することができ、油圧制御装置のエネルギ効率を向上させることができる。
【0016】
また、請求項2の発明によれば、第2油路に蓄圧器が設けられることにより、摩擦係合機構の係合状態を保持する際に供給油路開閉弁を閉じて第2油路内に圧油を封じ込める場合に、第2油路内の油圧を安定させることができる。例えば油路やバルブで不可避的な油圧漏れが発生して第2油路内の油圧が低下する場合であっても、蓄圧器から油圧が供給されるので、第2油路内で低下した油圧分を補填することができる。そのため、摩擦係合機構の係合状態を安定的に保持することができる。
【0017】
また、請求項3の発明によれば、第2油路に設けられた蓄圧器の油圧特性が適切に設定される。そのため、摩擦係合機構の係合状態をより安定的にかつ確実に保持することができる。
【0018】
そして、請求項4の発明によれば、供給油路開閉弁としてポペット弁が用いられる。ポペット弁は、弁体であるポペットが弁座のシート面に押し付けられることにより油路が閉じられ、またその弁体が弁座のシート面から離れることにより油路が開くように構成されたバルブであって、オイルの密封性に優れている。そのため、そのポペット弁からの実質的な油圧の漏洩を防止もしくは抑制することができ、油圧の漏洩による損失を低減して油圧制御装置のエネルギ効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の油圧制御装置の第1実施例の構成を模式的に示す図である。
【図2】この発明の油圧制御装置における供給油路開閉弁(ポペット弁)の具体的な構成を説明するための模式図である。
【図3】図1に示す第1実施例の他の構成を模式的に示す図である。
【図4】図1に示す第1実施例の他の構成を模式的に示す図である。
【図5】図1に示す第1実施例の構成における供給油路開閉弁の制御例を説明するためのフローチャートである。
【図6】この発明の油圧制御装置の第2実施例の構成を模式的に示す図である。
【図7】図6に示す第2実施例の構成における供給油路開閉弁および給排切替弁の制御例を説明するためのフローチャートである。
【図8】図6に示す第2実施例の他の構成を模式的に示す図である。
【図9】図6に示す第2実施例の他の構成を模式的に示す図である。
【図10】図6に示す第2実施例の他の構成を模式的に示す図である。
【図11】図6に示す第2実施例の構成における蓄圧器(係合圧アキュムレータ)の油圧特性を説明するための模式図である。
【図12】図6に示す第2実施例の構成における吐出圧アキュムレータの油圧特性を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施例)
つぎに、この発明を具体例を参照して説明する。図1には、例えば車両に搭載される前後進切換装置で用いられる前進クラッチ1および後退クラッチ(もしくはブレーキ)2などの摩擦係合機構1,2を油圧制御の対象とした油圧制御装置HCUに、この発明を適用した構成の一例であって、その第1実施例を模式的に示してある。
【0021】
前進クラッチ1および後退クラッチ2は、いずれも、所定の油圧(すなわち係合圧)が供給されることにより係合し、また係合圧が排出されることにより解放するように構成された油圧式の摩擦係合機構1,2である。そして前進クラッチ1は、車両を前進させる際に係合させられ、車両を後進させる際およびニュートラルを設定する際に解放されるクラッチであり、一方、後退クラッチ2は、車両を後進させる際に係合させられ、車両を前進させる際およびニュートラルを設定する際に解放されるクラッチである。
【0022】
符号3は、この発明における油圧発生源であり、この具体例では、例えばエンジンやモータ・ジェネレータなどの車両の駆動力源や、あるいは専用の電動モータ(いずれも図示せず)などの出力トルクにより駆動されて油圧を発生させるオイルポンプ3である。
【0023】
このオイルポンプ3の吐出口3aに、油路4と油路5とを介して、もしくは油路4と油路6とを介して、前進クラッチ1および後退クラッチ2がそれぞれ連通されている。そして、油路4には、吐出口3a側(図1での左側)から順に、リリーフ弁7、元圧調圧弁8、供給油路開閉弁9、係合圧給排切替弁10がそれぞれ設けられている。すなわち、油路4は、オイルポンプ3と係合圧給排切替弁10との間を連通する油路であって、この発明における第1油路に相当するものでる。
【0024】
リリーフ弁7は、常時閉形の開閉弁であって、前述の吐出口3aと係合圧給排切替弁10との間を連通する油路4のうちの吐出口3aと元圧調圧弁8との間を連通する油路4aの油圧、すなわちオイルポンプ3の吐出圧が入力される入力ポート7iと、その入力ポート7iに作用する油圧すなわちオイルポンプ3の吐出圧がフィードバック圧として入力されるフィードバックポート7fと、リリーフ弁7が開いた場合に入力ポート7iに作用する油圧を排圧するドレーンポート7dと、ばね7bとを備えている。
【0025】
そしてこのリリーフ弁7は、フィードバックポート7fに作用するフィードバック圧すなわちオイルポンプ3の吐出圧が、ばね7bの弾性力による押圧力よりも高い場合に開いて排圧するように構成されている。すなわち、このリリーフ弁7は、オイルポンプ3の吐出圧が、ばね7bの弾性力に応じて適宜設定される所定の設定圧力を超過した場合に開いて、その超過分の油圧をドレーンして油路4aの油圧超過を防止する圧力制御弁である。
【0026】
元圧調圧弁8は、オイルポンプ3の吐出圧を所定の圧力(すなわち元圧)に調圧もしくは減圧する電磁制御弁であって、油路4aを介してオイルポンプ3の吐出圧が入力される入力ポート8iと、開弁時に入力ポート8iに連通するとともに、前述の油路4のうちこの元圧調圧弁8と供給油路開閉弁9との間を連通する油路4bが接続された出力ポート8oと、その出力ポート8oから出力される油圧、すなわち元圧がフィードバック圧として入力されるフィードバックポート8fと、入力ポート8iと出力ポート8oとの間が遮断された場合に入力ポート8iに作用する油圧を排圧するドレーンポート8dと、入力ポート8iと出力ポート8oとの間の開通度もしくは開通時間を電気的に制御するソレノイド部8sとを備えている。
【0027】
そして、この元圧調圧弁8は、油圧制御装置HCUの各作動部の動作を電気的に制御するために設けられている電子制御装置(ECU)11により、ソレノイド部8sに通電する電流値を制御して元圧調圧弁8の開通度もしくは開通時間を調整することによって、入力ポート8iに入力されるオイルポンプ3の吐出圧を、所定の元圧に調圧して出力ポート8oから出力するように構成されている。なお、後述するこの発明における他の構成を説明する各図面においては、この電子制御装置(ECU)11の記載は省略している。
【0028】
供給油路開閉弁9は、元圧調圧弁8によって調圧された元圧を、前進クラッチ1および後退クラッチ2すなわち摩擦係合機構1,2側へ供給するための油路を開閉させる電磁開閉弁であって、油路4bを介して元圧調圧弁8により調圧された元圧が入力される入力ポート9iと、開弁時に入力ポート8iに連通するとともに、前述の油路4のうちこの供給油路開閉弁9と係合圧給排切替弁10との間を連通する油路4cが接続された出力ポート9oと、弁体(図示せず)の位置を電気的に制御するソレノイド部9sと、ソレノイド部9sへの通電時に弁体に作用する電磁力に対向する押圧力を弾性力によってその弁体へ作用させるばね9bとを備えている。
【0029】
そして、この供給油路開閉弁9は、電子制御装置11によりソレノイド部9sに通電する電流値を制御して供給油路開閉弁9の弁体の位置を軸線方向で前後(図1の例では上下)に移動させることによって、「入力ポート9iと出力ポート9oとの間を連通する状態すなわち油路4bと油路4cとの間を開通させた状態」と、「入力ポート9iと出力ポート9oとの間を遮断する状態すなわち油路4bと油路4cとの間を閉止させた状態」とのいずれかを選択的に設定するように構成されている。すなわち、この供給油路開閉弁9は、ソレノイド部9sへ所定の電流が供給される通電時に、「油路4bと油路4cとの間を開通させた状態」を設定し、非通電時には、「油路4bと油路4cとの間を閉止させた状態」を設定するいわゆるON−OFFソレノイド弁である。
【0030】
なお、この供給油路開閉弁9は、具体的には、例えば図2に示すようなポペット弁100を適用するのが好ましい。このポペット弁100の基本的な構成を説明しておくと、図2において、ポペット弁100は、先端部がテーパ状もしくは半球状に形成された弁体すなわちポペット101と、そのポペット101が押し付けられる弁座102のシート面102aと、ポペット101が取り付けられたアーマチュア103と、ポペット101を弁座102に向けて(図2では上側に)押圧するばね104(ばね9bに相当)と、通電されることによりアーマチュア103をばね104(9b)の弾性力に抗して弁座102とは反対方向(図2では下側)に引き戻す電磁力を生じさせる電磁コイル105(ソレノイド部9sに相当)とを備えている。
【0031】
この図2に示す構成のポペット弁100において、電磁コイル105(9s)に通電しないいわゆるOFF状態では、ポペット101がばね104(9b)によって弁座102に押し付けられるので、入力ポート106(入力ポート9iに相当)と出力ポート107(出力ポート9oに相当)との間が遮断される。また反対に、電磁コイル105(9s)に通電するいわゆるON状態では、ポペット101がアーマチュア103と共に弁座102から離れるように引き戻されるので、入力ポート106(9i)と出力ポート107(9o)とが連通する。こうして前述の油路4bと油路4cとの間が連通・遮断されるようになっている。
【0032】
このような構成のポペット弁100は、通電時以外はポペット101が弁座102のシート面102aに密着させられていて、オイルの密封性に優れている。したがって、この発明における供給油路開閉弁9に対して上記のようなポペット弁100を適用することにより、供給油路開閉弁9本体における油圧の漏洩を防止もしくは抑制することができ、この油圧制御装置HCUにおけるエネルギ損失を低減することができる。
【0033】
図1に戻り、係合圧給排切替弁10は、前述の前進クラッチ1および後退クラッチ2すなわち摩擦係合機構1,2に対する油圧の給排状態を切り替える3位置の切替弁であって、この具体例では、運転者の手動操作により切り替えられるいわゆるマニュアルバルブである。そしてこの係合圧給排切替弁10は、油路4bおよび供給油路開閉弁9ならびに油路4cを介して元圧調圧弁8により調圧された元圧が入力される入力ポート10iと、前述の油路5を介して前進クラッチ1に連通する第1出力ポート10oと、前述油路6を介して後退クラッチ2に連通する第2出力ポート10pと、第1出力ポート10oに作用する油圧、もしくは第2出力ポート10pに作用する油圧、もしくはそれら第1出力ポート10oおよび第2出力ポート10pの両方に作用する油圧を排圧するドレーンポート10dとを備えている。
【0034】
そしてこの係合圧給排切替弁10は、スプール(図示せず)の位置を手動で切り替えることにより、「入力ポート10iと第1出力ポート10oとの間を連通するとともに第2出力ポート10pとドレーンポート10dとの間を連通する状態、すなわち前進クラッチ1に元圧を供給するとともに後退クラッチ2に作用する油圧を排圧する状態」と、「入力ポート10iと第2出力ポート10pとの間を連通するとともに第1出力ポート10oとドレーンポート10dとの間を連通する状態、すなわち後退クラッチ2に元圧を供給するとともに前進クラッチ1に作用する油圧を排圧させる状態」と、「入力ポート10iおよび第1出力ポート10oならびに第2出力ポート10pとドレーンポート10dとの間を連通する状態、すなわち前進クラッチ1および後退クラッチ2に作用する油圧をいずれも排圧させる状態」とのいずれかを選択的に設定するように構成されている。
【0035】
次に、上述したこの発明の第1実施例で示す油圧制御装置HCUの作用について説明する。オイルポンプ3は、例えばエンジンなどの車両の駆動力源あるいは専用に設けられた電動モータなどから動力を得て駆動されて油圧を発生する。オイルポンプ3で昇圧されて吐出口3aから吐出された圧油は、油路4aを介して元圧調圧弁8の入力ポート8iに供給され、元圧調圧弁8によりこの油圧制御装置HCUの元圧として所望される所定の圧力に調圧されて、元圧調圧弁8の入力ポート8iから油路4b側へ供給される。なお、例えばオイルポンプ3や元圧調圧弁8にフェイルが生じるなどして、油路4aの油圧が所定値以上に上昇した場合は、リリーフ弁7が開いて油路4aの油圧を排圧するので、油圧回路内における過大な油圧の発生が防止される。
【0036】
上記のようにして調圧された元圧が、前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2へ供給されること、および、前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2から油圧が排圧されることにより、それら前進クラッチ1および後退クラッチ2の係合・解放状態が制御される。先ず、車両を前進させるために、前進クラッチ1を係合しかつ後退クラッチ2を解放する場合は、供給油路開閉弁9が制御されて、その供給油路開閉弁9が「油路4bと油路4cとの間を開通させた状態(図1での下段位置)」に設定される。
【0037】
油路4bと油路4cとの間が開通させられることにより、元圧が係合圧給排切替弁10の入力ポート10iに供給され、併せて係合圧給排切替弁10が操作されて、その係合圧給排切替弁10のスプールが「入力ポート10iと第1出力ポート10oとの間を連通するとともに第2出力ポート10pとドレーンポート10dとの間を連通する位置(図1での上段位置)」に設定される。なお、係合圧給排切替弁10のスプール位置を切り替える操作は、運転者の手動操作に基づいて直接係合圧給排切替弁10が操作される構成であってもよく、あるいは、例えば運転者による変速機のシフトレバー操作に連動して係合圧給排切替弁10が操作される構成であってもよい。
【0038】
上記のように係合圧給排切替弁10が操作された結果、元圧がクラッチの係合圧として油路5を介して前進クラッチ1に供給されて、前進クラッチ1が係合させられる。具体的には、前進クラッチ1の摩擦係合部(図示せず)を作動させる油圧アクチュエータ(図示せず)に係合圧が供給されて、摩擦係合部が係合させられる、すなわち前進クラッチ1が係合させられる。またその際に、後退クラッチ2に係合圧が作用していた場合は、その後退クラッチ2の係合圧が油路6を介して排圧されて、後退クラッチ2が解放させられる。具体的には、後退クラッチ2の摩擦係合部(図示せず)を作動させる油圧アクチュエータ(図示せず)から係合圧が排圧されて、摩擦係合部が解放させられる、すなわち後退クラッチ2が解放させられる。
【0039】
一方、車両を後進させるために、後退クラッチ2を係合しかつ前進クラッチ1を解放する場合は、上記の車両を前進させる場合と同様に、供給油路開閉弁9が「油路4bと油路4cとの間を開通させた状態」に設定される。そして、油路4bと油路4cとの間が連通することにより、元圧が係合圧給排切替弁10の入力ポート10iに供給され、併せて係合圧給排切替弁10が操作されて、その係合圧給排切替弁10のスプールが「入力ポート10iと第2出力ポート10pとの間を連通するとともに第1出力ポート10oとドレーンポート10dとの間を連通する位置(図1での下段位置)」に設定される。
【0040】
上記のように係合圧給排切替弁10が操作された結果、元圧がクラッチの係合圧として油路6を介して後退クラッチ2に供給されて、後退クラッチ2が係合させられる。具体的には、後退クラッチ2の摩擦係合部(図示せず)を作動させる油圧アクチュエータ(図示せず)に係合圧が供給されて、摩擦係合部が係合させられる、すなわち後退クラッチ2が係合させられる。またその際に、前進クラッチ1に係合圧が作用していた場合は、その前進クラッチ1の係合圧が油路5を介して排圧されて、前進クラッチ1が解放させられる。具体的には、前進クラッチ1の摩擦係合部(図示せず)を作動させる油圧アクチュエータ(図示せず)から係合圧が排圧されて、摩擦係合部が解放させられる、すなわち前進クラッチ1が解放させられる。
【0041】
なお、係合圧給排切替弁10を操作して、その係合圧給排切替弁10のスプールが「入力ポート10iおよび第1出力ポート10oならびに第2出力ポート10pとドレーンポート10dとの間を連通する位置(図1での中段位置)」に設定されることにより、「前進クラッチ1および後退クラッチ2に作用する油圧がいずれも排圧させられる状態」になる。その結果、前進クラッチ1および後退クラッチ2がいずれも解放させられて、それら前進クラッチ1と後退クラッチ2とから構成される前後進切換装置では、いずれの方向にも動力を伝達しない状態、すなわちいわゆるニュートラル状態が設定される。
【0042】
そして、車両の前進(もしくは後進)走行が継続される場合、すなわち、上記のようにして前進クラッチ1(もしくは後退クラッチ2)が係合させられた状態が維持される場合は、前進クラッチ1(もしくは後退クラッチ2)へ元圧を供給するために、「油路4bと油路4cとの間を開通させた状態」に設定されていた供給油路開閉弁9が、「油路4bと油路4cとの間を閉止させた状態(図1での上段位置)」に切り替えられて設定される。
【0043】
供給油路開閉弁9が「油路4bと油路4cとの間を閉止させた状態」に設定されることにより、油路4cおよび油路5(もしくは油路6)を介して前進クラッチ1(もしくは後退クラッチ2)へ供給されていた元圧(係合圧)が、それら油路4cと油路5(もしくは油路6)との間で閉じ込められる。すなわち、油路4cと油路5(もしくは油路6)との間の油圧が、前進クラッチ1(もしくは後退クラッチ2)を係合させるために供給されていた係合圧に保持される。この場合、供給油路開閉弁9は、前述したように、例えばポペット弁100のようにオイルの密封性に優れた構造のバルブにより構成されているので、油路4cと油路5(もしくは油路6)との間で保持された係合圧は、供給油路開閉弁9から漏洩して低下したりすることなく保持される。
【0044】
したがって、前進クラッチ1(もしくは後退クラッチ2)に係合圧を供給して係合させた後に、供給油路開閉弁9を「油路4bと油路4cとの間を閉止させた状態」に設定することによって、オイルポンプ3側から新に元圧の供給を受けなくとも、前進クラッチ1(もしくは後退クラッチ2)に作用する係合圧を適切に保持することができる。そのため、前進クラッチ1(もしくは後退クラッチ2)の係合時に、例えばオイルポンプ3と車両のエンジンとの間の動力伝達を遮断すること、あるいは専用の電動モータの運転を停止することにより、オイルポンプ3の駆動を停止させることが可能になり、その結果、オイルポンプ3を駆動するためのエネルギや、あるいはオイルポンプ3で油圧を発生させる際や元圧調圧弁8で油圧を減圧させる際の損失を低減して、この油圧制御装置HCUのエネルギ効率を向上させることができる。
【0045】
上記のように、前進クラッチ1(もしくは後退クラッチ2)の係合・解放時に制御される供給油路開閉弁9を制御する際の制御手順の一例を、図3のフローチャートに示してある。このフローチャートで示すルーチンは、所定の短時間毎に繰り返し実行される。図3のフローチャートにおいて、先ず、車両のシフトレバーの設定位置が、前進走行のためのドライブ(D)レンジ、もしくは後進走行のためのリバース(R)レンジのいずれかであるか否かが、すなわち、前後進切換装置の前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2のいずれかを係合させる必要があるか否かが判断される(ステップS11)。
【0046】
シフトレバーの設定位置が、ドライブ(D)レンジおよびリバース(R)レンジのいずれでもないこと、すなわち、例えばシフトレバーがニュートラルレンジやパーキングレンジなどに設定されていることにより、このステップS11で否定的に判断された場合は、前進クラッチ1および後退クラッチ2のいずれも係合させる必要がない。したがって、供給油路開閉弁9を開いて元圧(係合圧)を油路4c側へ供給しなくともよいので、ステップS12へ進み、供給油路開閉弁9が「油路4bと油路4cとの間を閉止させた状態」に設定される(油路密封)。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
【0047】
一方、シフトレバーの設定位置が、ドライブ(D)レンジもしくはリバース(R)レンジのいずれかであることにより、ステップS11で肯定的に判断された場合には、前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2のいずれかを係合させる必要があるので、ステップS13へ進み、供給油路開閉弁9が「油路4bと油路4cとの間を開通させた状態」に設定される(油路連通)。
【0048】
供給油路開閉弁9が開かれて「油路4bと油路4cとの間を開通させた状態(油路連通)」に設定されると、前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2のいずれかの係合が完了したか否かが判断される(ステップS14)。前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2の係合が未だ完了していないことにより、このステップS14で否定的に判断された場合は、前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2に未だ元圧を供給する必要があるので、ステップS15へ進み、「油路4bと油路4cとの間を開通させた状態」に設定された供給油路開閉弁9の状態が継続される(油路連通継続)。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
【0049】
これに対して、前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2の係合が完了したことにより、ステップS14で肯定的に判断された場合には、前述のステップS12へ進み、供給油路開閉弁9が「油路4bと油路4cとの間を閉止させた状態」に設定される(油路密封)。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
【0050】
前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2の係合が完了した状態では、新に元圧を供給しなくとも、供給油路開閉弁9を閉じて「油路4bと油路4cとの間を閉止させた状態」に設定することにより、油路4cおよび油路5との間もしくは油路4cと油路6との間に、元圧すなわち前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2を係合させる係合圧を保持することができ、前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2の係合状態を安定して維持することができる。
【0051】
上述したこの発明の第1実施例で示す油圧制御装置HCUは、図4あるいは図5に示すように変形して構成することもできる。例えば図4に示すように、この発明の油圧制御装置HCUは、係合圧給排切替弁10と前進クラッチ1との間を連通する油路5に、絞り12およびアキュムレータ13を設け、係合圧給排切替弁10と後退クラッチ2との間を連通する油路6に、絞り14およびアキュムレータ15を設けた構成とすることもできる。
【0052】
具体的には、油路5には、係合圧供給切替弁10側に絞り12が設けられ、その絞り12と前進クラッチ1との間にアキュムレータ13が設けられている。同様に、油路6には、係合圧供給切替弁10側に絞り14が設けられ、その絞り14と後退クラッチ2との間にアキュムレータ15が設けられている。
【0053】
絞り12,14は、油路5,6を流通するオイルの流量を絞るためのものであり、例えば油路5,6の内部に貫通孔を中心部に形成した隔壁部によって形成される。その隔壁部は、油路5,6の内壁面と一体に成形したものであってもよく、あるいは隔壁部と一体のスリーブを油路5,6の内部に挿入したものであってもよい。
【0054】
アキュムレータ13,15は、油路5,6の油圧を蓄圧し、あるいは蓄えた油圧を油路5,6へ供給するためのものであり、蓄圧室に弾性体で押圧されたピストンや弾性膨張体などを容器内に収容し、その弾性力以上の圧力で油圧を蓄えるように構成されている。
【0055】
上記のように、油路5,6に絞り12,14がそれぞれ形成されることにより、油路5,6を介して各クラッチ1,2に係合圧を供給する場合、および各クラッチ1,2から係合圧を排圧する場合に、油路5,6をオイルが流通する際の流量が絞られる。そのため、各クラッチ1,2の係合・解放動作を滑らかにし、クラッチの係合ショックや解放ショックを抑制することができる。
【0056】
そして、油路5,6にアキュムレータ13,15がそれぞれ形成されることにより、各クラッチ1,2を係合させる際に油路5,6を介して供給される過剰な油圧や、各クラッチ1,2から油路5,6を介して排出される油圧を、無駄に捨てることなく回収することができる。また、各クラッチ1,2が係合された状態を保持する際に、油圧の漏洩などにより係合圧が減少する場合であっても、アキュムレータ13,15から油圧を供給することによりその係合圧の減少分を補填して、各クラッチ1,2の係合状態を安定して保持させることができる。
【0057】
さらに、例えば図5に示すように、この発明の油圧制御装置HCUは、2つの供給油路開閉弁9,16を設けることにより、上述の図1,図4で示す構成における元圧調圧弁8を廃止した構成とすることもできる。
【0058】
具体的には、この図5に示す具体例における油路4には、吐出口3a側(図5での左側)から順に、リリーフ弁7、供給油路開閉弁9、供給油路開閉弁16、係合圧給排切替弁10がそれぞれ設けられている。この図5に示す具体例における供給油路開閉弁9は、入力ポート9iに油路4aが接続され、出力ポート9oに油路4cが接続されている。
【0059】
供給油路開閉弁16は、供給油路開閉弁9と同様の構成の電磁開閉弁であって、油路4cに接続された入力ポート16iと、先端がオイルパンなどに開放されている油路4dが接続された出力ポート16oと、弁体(図示せず)の位置を電気的に制御するソレノイド部16sと、ソレノイド部16sへの通電時に弁体に作用する電磁力に対向する押圧力を弾性力によってその弁体へ作用させるばね16bとを備えている。
【0060】
したがって、この供給油路開閉弁16は、ソレノイド部16sへ所定の電流が供給される通電時に、「油路4cと油路4dとの間を開通させた状態、すなわち油路4cの油圧をドレーンする状態」を設定し、非通電時には、「油路4cと油路4dとの間を閉止させた状態」を設定するいわゆるON−OFFソレノイド弁である。そしてこれら各供給油路9,16は、前述したように、例えば図2に示すようなポペット弁100により構成されている。
【0061】
この図5に示す具体例において、車両を前進もしくは後進させるために、各クラッチ1,2の係合・開放状態を制御する場合は、供給油路開閉弁9,16がそれぞれ制御されて、油路4aの油圧すなわちオイルポンプ3の吐出圧が所定の元圧に調圧されて油路4c側へ供給されるとともに、供給油路開閉弁9が「油路4bと油路4cとの間を開通させた状態(図5での下段位置)」に設定され、供給油路開閉弁16が「油路4cと油路4d(ドレーン)との間を閉止させた状態(図5での上段位置)」に設定される。
【0062】
そして、車両の前進(もしくは後進)走行が継続される場合、すなわち、前進クラッチ1(もしくは後退クラッチ2)が係合させられた状態が維持される場合は、前進クラッチ1(もしくは後退クラッチ2)へ元圧を供給するために、「油路4bと油路4cとの間を開通させた状態」に設定されていた供給油路開閉弁9が、「油路4bと油路4cとの間を閉止させた状態(図5での上段位置)」に切り替えられて設定されるとともに、「油路4cと油路4d(ドレーン)との間を閉止させた状態(図5での上段位置)」に設定されていた供給油路開閉弁16は、引き続きその状態が維持される。
【0063】
このように、供給油路開閉弁9と供給油路開閉弁16との2つの開閉弁を設け、各供給油路開閉弁9,16のソレノイド部9s,16sに通電する電流値をそれぞれ制御して、それら各供給油路開閉弁9,16の開通度もしくは開通時間をそれぞれ調整することにより、前述の図1,図4で示した構成における元圧調圧弁8を設けなくとも、油路4aに供給されるオイルポンプ3の吐出圧を所定の元圧に調圧して油路4cへ供給することができる。
【0064】
以上のように、この発明の第1実施例で示す油圧制御装置HCUによれば、例えば前後進切換装置の前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2を係合する場合に、供給油路開閉弁9を開き、係合圧給排切替弁10を各クラッチ1,2へ油圧を供給する位置に設定することにより、各クラッチ1,2へ油圧が供給されて各クラッチ1,2が係合する。
【0065】
そして、その各クラッチ1,2の係合状態を保持する場合には、係合圧給排切替弁10を各クラッチ1,2へ油圧を供給する位置に設定したまま供給油路開閉弁9を閉じることにより、供給油路開閉弁9と各クラッチ1,2との間に、各クラッチ1,2を係合させるための油圧すなわち係合圧を密封することができる。その結果、各クラッチ1,2を係合させて供給油路開閉弁9を閉じた後に、オイルポンプ3からの油圧の供給を停止することが可能になる。そのため、各クラッチ1,2を係合させた後はオイルポンプ3で油圧を発生させなくともよいので、オイルポンプ3を駆動するためのエネルギを低減することができ、ひいては、油圧制御装置HCUのエネルギ効率を向上させることができる。
【0066】
(第2実施例)
つぎに、この発明の第2実施例を説明する。この第2実施例で示す油圧制御装置HCUは、前述の第1実施例で示した油圧制御装置HCUの構成において、供給油路開閉弁9と係合圧給排切替弁10との間を連通する油路にアキュムレータなどの蓄圧器を設けた構成となっている。すなわち、図6に示すように、この発明における第2油路に相当する供給油路開閉弁9と係合圧給排切替弁10との間を連通する油路4cに、アキュムレータ17が設けられている。なお、以降の説明では、前述のアキュムレータ13,15および後述するアキュムレータ19と区別するため、このアキュムレータ17を係合圧アキュムレータ17と称することにする。
【0067】
この係合圧アキュムレータ17は、前述のアキュムレータ13,15と同様の構成であり、油路4cの油圧を蓄圧し、あるいは蓄えた油圧を油路4cへ供給して、油路4cにおける係合圧を維持するためのものであって、蓄圧室に弾性体で押圧されたピストンや弾性膨張体などを容器内に収容し、その弾性力以上の圧力で油圧を蓄えるように構成されている。
【0068】
なお、この図6に示す構成は、前述の図1,図4,図5で示した第1実施例の各構成のうち、図5で示した構成に係合圧アキュムレータ17を追加した例を示しているが、前述の図1もしくは図4で示した第1実施例の構成に、係合圧アキュムレータ17を追加したものであってもよい。
【0069】
この発明の第2実施例で示す油圧制御装置HCUの作用について説明すると、上記のように、係合圧給排切替弁10との間を連通する油路4cに係合圧アキュムレータ17を設けたことにより、前進クラッチ1(もしくは後退クラッチ2)を係合させた後に、その係合状態を保持する際に、油圧の漏洩などにより係合圧が減少する場合であっても、係合圧アキュムレータ17から油圧が供給されてその係合圧の減少分が補填され、前進クラッチ1(もしくは後退クラッチ2)の係合状態が一定時間の間、安定的に保持される。
【0070】
すなわち、油路4cに係合圧アキュムレータ17が設けられたことにより、油路4cや、その前後の供給油路開閉弁9および係合圧給排切替弁10におけるシール部分を完全に密封しなくともよくなり、シールやバルブの気密性を高めるためのコストを低減することができる。また、油路4cおよび供給油路開閉弁9ならびに係合圧給排切替弁10における油圧の漏れがある程度許容できるので、油圧制御におけるいわゆるロバスト性が向上する。
【0071】
この第2実施例の構成における、前進クラッチ1(もしくは後退クラッチ2)の係合・解放時に制御される供給油路開閉弁9,16を制御する際の制御手順の一例を、図7のフローチャートに示してある。このフローチャートで示すルーチンは、所定の短時間毎に繰り返し実行される。図7のフローチャートにおいて、先ず、車両のシフトレバーの設定位置が、前進走行のためのドライブ(D)レンジ、もしくは後進走行のためのリバース(R)レンジのいずれかであるか否かが、すなわち、前後進切換装置の前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2のいずれかを係合させる必要があるか否かが判断される(ステップS21)。
【0072】
シフトレバーの設定位置が、ドライブ(D)レンジおよびリバース(R)レンジのいずれでもないこと、すなわち、例えばシフトレバーがニュートラルレンジやパーキングレンジなどに設定されていることにより、このステップS21で否定的に判断された場合は、前進クラッチ1および後退クラッチ2のいずれも係合させる必要がない。したがって、供給油路開閉弁9を開いて元圧を油路4c側へ供給しなくともよいので、ステップS22へ進み、供給油路開閉弁9が「油路4bと油路4cとの間を閉止させた状態」に設定され、供給油路開閉弁16が「油路4cと油路4d(ドレーン)との間を閉止させた状態」に設定される(油路密封)。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
【0073】
一方、シフトレバーの設定位置が、ドライブ(D)レンジもしくはリバース(R)レンジのいずれかであることにより、ステップS21で肯定的に判断された場合には、前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2のいずれかを係合させる必要があるので、ステップS23へ進み、前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2のいずれかが係合中であるか否かが判断される。
【0074】
前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2のいずれかが係合中であることにより、このステップS23で肯定的に判断された場合は、ステップS24へ進み、クラッチ係合制御が実行される。すなわち、供給油路開閉弁9,16がそれぞれ制御されて、オイルポンプ3の吐出圧が所定の元圧に調圧されて油路4c側へ供給されるとともに、供給油路開閉弁9が「油路4bと油路4cとの間を開通させた状態」に設定され、供給油路開閉弁16が「油路4cと油路4d(ドレーン)との間を閉止させた状態」、すなわち、供給油路開閉弁9と各クラッチ1,2との間が「油路連通」の状態に設定される。また、係合圧給排切替弁10が、「前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2のいずれかに係合圧を供給する状態」に設定される。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
【0075】
これに対して、前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2のいずれかが係合中でないことにより、このステップS23で否定的に判断された場合には、ステップS25へ進み、各供給油路開閉弁9,16が制御されて、供給油路開閉弁9と各クラッチ1,2との間が「油路密封」の状態にされた時点、すなわち油路4cと油路5もしくは油路6との間が密封された時点から所定の一定時間αが経過したか否かが判断される。
【0076】
供給油路開閉弁9と各クラッチ1,2との間が「油路密封」の状態にされた時点から所定時間αが経過したことにより、このステップS25で肯定的に判断された場合は、ステップS26へ進み、供給油路開閉弁9と各クラッチ1,2との間が「油路連通」の状態に設定された時点から所定の一定時間βが経過したか否かが判断される。
【0077】
前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2のいずれかが係合中でない場合、すなわち、前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2のいずれかの係合が完了しその係合が維持されている場合、もしくは前進クラッチ1および後退クラッチ2のいずれも解放されている場合は、各供給油路開閉弁9,16が制御されて供給油路開閉弁9と各クラッチ1,2との間が「油路密封」の状態にされるが、その「油路密封」の状態が長時間に及ぶと、油路やバルブでの不可避的な油圧の漏れの影響のため、油路4cに設けられた係合圧アキュムレータ17の蓄圧量が減少して油路4cの油圧低下を補えなくなり、「油路密封」により保持されている前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2の係合圧が低下してしまう場合がある。
【0078】
そこで、供給油路開閉弁9と各クラッチ1,2との間が「油路密封」の状態にされた時点からの経過時間を計測し、油圧漏れの影響を受ける可能性がある時間の閾値として予め設定した所定時間α以上経過した場合には、供給油路開閉弁9と各クラッチ1,2との間が「油路連通」の状態に設定され、油路4cに元圧が供給されて係合圧アキュムレータ17の油圧が充填される。その際に、係合圧アキュムレータ17の蓄圧量が充満する時間として予想して予め設定した所定時間βの間、係合圧アキュムレータ17への元圧の供給が継続される。
【0079】
したがって、供給油路開閉弁9と各クラッチ1,2との間が「油路連通」の状態に設定された時点から未だ所定時間βが経過していないことにより、ステップS26で否定的に判断された場合は、ステップS27へ進み、供給油路開閉弁9と各クラッチ1,2との間の「油路連通」の状態が継続される。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
【0080】
一方、供給油路開閉弁9と各クラッチ1,2との間が「油路密封」の状態にされた時点から未だ所定時間αが経過していないことにより、前述のステップS25で否定的に判断された場合には、ステップS28へ進み、供給油路開閉弁9と各クラッチ1,2との間の「油路密封」の状態が継続される。また、供給油路開閉弁9と各クラッチ1,2との間が「油路連通」の状態に設定された時点から所定時間βが経過したことにより、ステップS26で肯定的に判断された場合も、ステップS28へ進み、供給油路開閉弁9と各クラッチ1,2との間の「油路密封」の状態が継続される。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
【0081】
このように、油路4cに設けられた係合圧アキュムレータ17の蓄圧状態も考慮して、供給油路開閉弁9および供給油路開閉弁16が制御されることにより、油路4cおよび油路5との間もしくは油路4cと油路6との間に、前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2を係合させる係合圧を安定して保持することができ、前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2の係合状態をより一層安定して維持することができる。
【0082】
上述したこの発明の第2実施例で示す油圧制御装置HCUは、図8,図9,図10に示すように変形して構成することもできる。すなわち、これら図8,図9,図10に示すこの第2実施例の各構成では、前述の図1,図4,図5で示した第1実施例の各構成におけるリリーフ弁7に替えて、チェック弁18とアキュムレータ19とが設けられている。例えば図8には、前述の図6で示したこの第2実施例の構成を基に、リリーフ弁7に替えて上記のようなチェック弁18と吐出圧アキュムレータ19とを設けた構成を示してある。
【0083】
具体的には、図8,図9,図10に示す構成において、オイルポンプ3と供給油路開閉弁9との間を連通する油路4aの途中に、チェック弁18とアキュムレータ19とが直列して設けられている。すなわち、油路4aの吐出口3a側に、チェック弁18が設けられ、そのチャック弁18と供給油路開閉弁9との間の油路4aに、アキュムレータ19が設けられている。なお、以降の説明では、前述のアキュムレータ13,15および係合圧アキュムレータ17と区別するため、このアキュムレータ19を吐出圧アキュムレータ19と称することにする。
【0084】
チェック弁18は、いわゆる逆流防止弁(逆止弁)であって、油路4aにおいて、吐出口3aから供給油路開閉弁9側すなわち吐出圧アキュムレータ19側へのオイルの流動を許容し、反対に、吐出圧アキュムレータ19側から吐出口3aへのオイルの流動を制止する構成となっている。
【0085】
吐出圧アキュムレータ19は、前述のアキュムレータ13,15および係合圧アキュムレータ17と同様の構成であり、油路4aの油圧を蓄圧し、あるいは蓄えた油圧を油路4aへ供給して、油路4aの油圧を安定させるためのものであって、蓄圧室に弾性体で押圧されたピストンや弾性膨張体などを容器内に収容し、その弾性力以上の圧力で油圧を蓄えるように構成されている。
【0086】
このように、この図8で示す第2実施例の構成では、油路4aのチェック弁18と吐出圧アキュムレータ19とを設けることにより、例えば油路4aの油圧が想定している圧力を超過して上昇した場合に、その油圧の超過分を吐出圧アキュムレータ19に蓄えさせて、油路4aの油圧すなわちオイルポンプ3の吐出圧を安定させることができる。したがって、前述のリリーフ弁7の機能を、これらチェック弁18と吐出圧アキュムレータ19とで担うことができ、リリーフ弁7を廃止することができる。さらに、リリーフ弁7に替えてこれらチェック弁18と吐出圧アキュムレータ19とを設けた構成とすることにより、リリーフ弁7では排圧されることになる油圧の超過分を、無駄に捨てることなく回収することができる。
【0087】
そして、図9は、上記の図8で示したこの第2実施例の構成を基に、いずれもON−OFFソレノイド弁(もしくは2位置の電磁切替弁)により構成される供給油路開閉弁9および供給油路開閉弁16に替えて供給油路開閉弁20を設けた構成を示している。具体的には、この図9で示す第2実施例の構成では、油路4の途中であって、油路4aと油路4cとの間、より具体的には、油路4aに設けられた吐出圧アキュムレータ19と油路4cに設けられた係合圧アキュムレータ17との間に、供給油路開閉弁20が設けられている。
【0088】
供給油路切替弁20は、3位置の電磁切替弁であって、油路4aに接続された入力ポート20iと、油路4cに接続された出力ポート20oと、先端がオイルパンなどに開放されている油路4dが接続されたドレーンポート16dと、弁体(図示せず)の位置を電気的に制御するソレノイド部20sと、互いに対向するとともにソレノイド部20sへの通電時にスプール(図示せず)に作用する電磁力に対向する押圧力を弾性力によってその弁体へ作用させる2つのばね20bとを備えている。
【0089】
そしてこの供給油路開閉弁20は、ソレノイド部20+sへ供給する電流値を制御してスプールの位置を切り替えることにより、「入力ポート20iと出力ポート20oとの間を連通するとともにドレーンポート20dを閉止した状態」と、「入力ポート20iを閉止するとともに出力ポート20oとドレーンポート20dとの間を連通した状態」と、「入力ポート20iおよび出力ポート20oならびにドレーンポート20dをそれぞれ閉止した状態」とのいずれかを選択的に設定するように構成されている。
【0090】
したがって、この図9で示す第2実施例の構成では、供給油路開閉弁20のソレノイド部20sへ供給する電流値を制御することにより、「油路4aを介して入力されたオイルポンプ3の吐出圧を所定の元圧に調圧し、油路4c側へ出力する状態」と、「油路4cの油圧を油路4dを介して排圧する状態」と、「油路4cの供給油路開閉弁20側の端部におけるオイルの流通を遮断する状態」とを適宜に設定することができる。そのため、前述の図8で示した構成においては供給油路開閉弁9と供給油路開閉弁16との2つで担っていた機能を、この供給油路切替弁20だけで担うことができ、部品点数を削減することができる。
【0091】
さらに、図10は、上記の図8で示したこの第2実施例の構成を基に、ON−OFFソレノイド弁(もしくは2位置の電磁切替弁)により構成される供給油路開閉弁16に替えてリリーフ弁21を設けた構成を示している。具体的には、この図10で示す第2実施例の構成では、油路4cの途中であって、供給油路開閉弁9と係合圧アキュムレータ17との間に、リリーフ弁21が設けられている。
【0092】
リリーフ弁21は、前述のリリーフ弁7と同様、常時閉形の開閉弁であって、油路4cの油圧、すなわち供給油路開閉弁9で調圧された元圧が入力される入力ポート21iと、その入力ポート21iに作用する油圧すなわち元圧がフィードバック圧として入力されるフィードバックポート21fと、リリーフ弁21が開いた場合に入力ポート21iに作用する油圧を排圧するドレーンポート21dと、ばね21bとを備えている。
【0093】
また、このリリーフ弁21は、フィードバックポート21fに作用するフィードバック圧すなわち元圧が、ばね20bの弾性力による押圧力よりも高い場合に開いて排圧するように構成されている。すなわち、このリリーフ弁21は、オイルポンプ3の吐出圧が、ばね20bの弾性力に応じて適宜設定される所定の設定圧力を超過した場合に開いて、その超過分の油圧をドレーンして油路4aの油圧超過を防止する圧力制御弁である。
【0094】
したがって、このリリーフ弁21の設定圧力を所望する元圧と同等の値に設定しておくことにより、供給油路開閉弁9による油圧制御と併せて、油路4cの油圧を所定の元圧に調圧することができる。すなわち、所定の元圧(係合圧)を調圧して油路4cに供給する際の制御、および油路4cに作用している係合圧を保持する際の制御が、供給油路開閉弁9の開閉状態だけを制御することにより実行することができる。そのため、この油圧制御装置HCUにおける制御内容を簡素化して、各クラッチ1,2の係合・解放状態を容易に制御することができる。
【0095】
以上のように、この発明の第2実施例で示す油圧制御装置HCUによれば、供給油路開閉弁9と係合圧給排切替弁10との間を連通する油路4cに係合圧アキュムレータ17が設けられることにより、各クラッチ1,2の係合状態を保持する際に供給油路開閉弁9を閉じて油路4c内に係合圧を封じ込める場合に、油路4c内の油圧を安定させることができる。例えば油路4cやその油路4cに関連しているバルブ等で不可避的な油圧漏れが発生し、油路4c内の油圧が低下する場合であっても、係合圧アキュムレータ17から油圧が供給されるので、油路4c内で低下した油圧分を補填することができる。そのため、各クラッチ1,2などの摩擦係合機構1,2の係合状態を安定的に保持することができる。
【0096】
(第3実施例)
つぎに、この発明の第3実施例を説明する。この第3実施例で示す油圧制御装置HCUは、前述の第2実施例で示した油圧制御装置HCUの構成を対象にして、係合圧アキュムレータ17の圧力特性を適宜に設定することにより、摩擦係合機構1,2の係合状態を安定的に保持するようにした例である。
【0097】
具体的には、図11に示すように、係合圧アキュムレータ17の使用下限圧Pmin(図11における特性線Cで示される下限値)が、各クラッチ1,2をそれぞれ作動させる際に最小限必要な作動最小圧Psedと同等の圧力となり、また、係合圧アキュムレータ17の使用上限圧Pmax(図11における特性線Cで示される上限値)が、各クラッチ1,2をそれぞれ係合させる際に必要な係合必要圧Pc以上の圧力となり、さらに、各クラッチ1,2のいずれかが係合されかつ供給油路開閉弁9が閉じられた状態で油路4c内に保持される保持油圧Phが、係合必要圧Pcと使用上限圧Pmaxとの間の圧力となるように、係合圧アキュムレータ17の圧力特性が設定されている。
【0098】
なお、前述の図8,図9,図10で示す第2実施例の構成で設けられている吐出圧アキュムレータ19に関しては、例えば、図12に示すように、吐出圧アキュムレータ19の使用下限圧P0min(図12における特性線Dで示される下限値)が、係合圧アキュムレータ17の使用上限圧Pmaxと同等の圧力となり、また、吐出圧アキュムレータ19の使用上限圧P0max(図12における特性線Dで示される上限値)が、係合圧アキュムレータ17の使用上限圧Pmax以上の圧力となるように、その吐出アキュムレータ19の圧力特性が設定されればよい。
【0099】
以上のように、この発明の第3実施例で示す油圧制御装置HCUによれば、油路4cに設けられた係合圧アキュムレータ17の油圧特性が適切に設定されることにより、各クラッチ1,2などの摩擦係合機構1,2の係合状態をより安定的にかつ確実に保持することができる。例えば、供給油路開閉弁9(もしくは16もしくは20)のソレノイド特性がばらついた場合であっても、係合圧アキュムレータ17の作用によりそのばらつきが抑制されるので、各クラッチ12の係合時のショックを防止もしくは抑制することができる。
【0100】
また、上記のように、ある程度のソレノイド特性のばらつきが許容できるため、ソレノイドを選択する際の精度の基準を緩めることができ、すなわち高精度で高価なソレノイドを選択しなくともよいので、その分コストダウンを図ることができる。
【0101】
なお、上述の各具体例では、この発明における摩擦係合機構として、例えば車両に搭載される前後進切換装置で用いられる前進クラッチ1および後退クラッチ2を例に示して説明したが、この発明における摩擦係合機構の油圧制御装置は、それに限定されるものではなく、例えば、車両に搭載される自動変速機で変速制御を実行するために用いられるクラッチおよびブレーキを対象とした油圧制御装置に適用することもできる。あるいは、車両用の前後進切替装置や自動変速機に限らず、油圧によって駆動し、また制御する一般の産業機械や装置類の油圧制御装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0102】
1…前進クラッチ(摩擦係合機構)、 2…後退クラッチ(摩擦係合機構)、 3…オイルポンプ(油圧発生源)、 4…油路(第1油路)、 4c…油路(第2油路)、 9,16,20…供給油路開閉弁、 10…係合圧給排切替弁、 11…電子制御装置、 17…係合圧アキュムレータ(蓄圧器)、 100…ポペット弁(供給油路開閉弁)、 101…ポペット(弁体)、 102…弁座、 102a…シート面、 HCU…油圧制御装置。
【技術分野】
【0001】
この発明は、クラッチやブレーキなどの摩擦係合機構の動作を制御するために、その摩擦係合機構に給排する油圧を制御する摩擦係合機構の油圧制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧は動力を伝達する手段として有効であり、各種機械装置類の動作を制御するための油圧制御装置で採用されている。例えば、車両に搭載される自動変速機やベルト式無段変速機などで用いられる前後進クラッチ(もしくはブレーキ)の係合・解放動作を制御するために油圧が用いられている。
【0003】
そのようなクラッチやブレーキの動作を制御するための油圧を制御する油圧制御装置の一例が、特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載されたクラッチ油圧機構は、変速時にオペレータへ与える違和感を防ぐことを目的として、前進側油圧クラッチへ供給される作動油の配管にチェックバルブが設けられ、チェックバルブと油圧クラッチとの間に油圧クラッチへ供給される作動油の一部を蓄積するアキュームレータが設けられ、油圧クラッチへ供給される作動油により動作してチェックバルブとともにアキュームレータに蓄積された作動油を保持するコントロールバルブが設けられた構成となっている。
【0004】
なお、特許文献2には、無段変速機における前後進切換装置の油圧制御回路に関する発明が記載されている。この特許文献2に記載された油圧制御回路は、マニュアル弁と前進用クラッチとの間に、入力ポートと出力ポートを連通して所定のクラッチ圧を前進用クラッチに出力し、出力ポートとドレーンポートとを連通して前進用クラッチのクラッチ圧をオイルタンク側へ流出させることが可能な前進用クラッチ制御弁が設けられていて、前進用クラッチ制御弁のドレーンポートには、前進用クラッチのクラッチ圧が最低限の締結状態を確保する圧力で保持されるように、前進用クラッチから流出してくる作動油の圧力制御を行う油流出制御手段が接続されている。
【0005】
また、特許文献3には、車両の搭乗者に耳障りな感覚を与えることなく、車両の走行状態に応じて自動的に適当な制動力を発生させることを目的として、所定の油圧を発生する高圧源と、その高圧源に連通して車両の走行状態に応じた制動油圧を発生すべく駆動される開閉弁とを備えた自動制動装置に関する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−227568号公報
【特許文献2】特開平7−259983号公報
【特許文献3】特開平11−139279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1に記載されたクラッチ油圧機構の構成によれば、変速が行われると、アキュームレータに蓄積された作動油により変速前の油圧クラッチの圧力が保持され、よって油圧クラッチのスリップによるトルクの回復の遅れを解消でき、オペレータに変速時に与えていたトルク抜け感やショック、坂道での後戻り感などの違和感を解消することができる、とされている。
【0008】
しかしながら、上記の特許文献1に記載されたクラッチ油圧機構や、あるいは従来のクラッチ(もしくはブレーキ)制御用の油圧制御装置の構成では、変速時のクラッチ油圧を安定させるため、またクラッチの係合状態を維持させるために、常に元圧を調圧(減圧)してクラッチ側に供給しておく必要がある。そのため、クラッチ係合中も常に油圧源を作動させて元圧を発生させ続けておく必要があり、また、元圧を減圧する際の圧力損失などが不可避的に生じることから、その分エネルギ効率が低下してしまう。
【0009】
このように、クラッチやブレーキなどの摩擦係合機構を油圧で制御する場合に、エネルギ効率を向上させて、適切なクラッチの係合・解放制御を実行するためには、未だ改良の余地があった。
【0010】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、エネルギ効率を向上させ、かつ摩擦係合機構の係合・解放制御を適切に実行することのできる油圧制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、油圧発生源と該油圧発生源からの所定の油圧が供給されることにより係合しかつ油圧が排出されることにより解放する油圧式の摩擦係合機構との間に設けられて前記摩擦係合機構に対する油圧の給排状態を切り替える係合圧給排切替弁を備えた摩擦係合機構の油圧制御装置において、前記油圧発生源と前記係合圧給排切替弁との間を連通する第1油路の途中に設けられて該第1油路を開通させた状態と該第1油路を閉止させた状態とを選択的に設定する供給油路開閉弁を備えていることを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記供給油路開閉弁と前記係合圧給排切替弁との間を連通する第2油路の途中に設けられて該第2油路の油圧を蓄圧するもしくは該第2油路へ油圧を供給する蓄圧器を更に備えていることを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記蓄圧器の使用下限圧が前記摩擦係合機構を作動させる際に最小限必要な作動最小圧と同等の圧力となり、かつ、前記蓄圧器の使用上限圧が前記摩擦係合機構を係合させる際に必要な係合必要圧以上の圧力となり、なおかつ、前記摩擦係合機構が係合されかつ前記供給油路開閉弁が閉じられた状態における前記第2油路の油圧が前記使用上限圧と前記係合必要圧との間の圧力となるように、前記蓄圧器の圧力特性が設定されていることを特徴とするものである。
【0014】
そして、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、前記供給油路開閉弁は、弁座のシート面に押し付けられる弁体を駆動することにより流路の開閉を行うポペット弁を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、摩擦係合機構を係合する場合、供給油路開閉弁を開き、係合圧給排切替弁を摩擦係合機構へ油圧を供給する位置に設定することにより、摩擦係合機構へ油圧源からの油圧が供給されて摩擦係合機構が係合する。そして、その摩擦係合機構の係合状態を保持する場合には、係合圧給排切替弁を摩擦係合機構へ油圧を供給する位置に設定したまま供給油路開閉弁を閉じることにより、供給油路開閉弁と摩擦係合機構との間に、摩擦係合機構を係合させるための油圧を密封することができる。その結果、摩擦係合機構を係合させて供給油路開閉弁を閉じた後に、油圧源からの油圧の供給を停止することが可能になる。そのため、摩擦係合機構を係合させた後は油圧源で油圧を発生させなくともよいので、油圧源を駆動するためのエネルギを低減することができ、油圧制御装置のエネルギ効率を向上させることができる。
【0016】
また、請求項2の発明によれば、第2油路に蓄圧器が設けられることにより、摩擦係合機構の係合状態を保持する際に供給油路開閉弁を閉じて第2油路内に圧油を封じ込める場合に、第2油路内の油圧を安定させることができる。例えば油路やバルブで不可避的な油圧漏れが発生して第2油路内の油圧が低下する場合であっても、蓄圧器から油圧が供給されるので、第2油路内で低下した油圧分を補填することができる。そのため、摩擦係合機構の係合状態を安定的に保持することができる。
【0017】
また、請求項3の発明によれば、第2油路に設けられた蓄圧器の油圧特性が適切に設定される。そのため、摩擦係合機構の係合状態をより安定的にかつ確実に保持することができる。
【0018】
そして、請求項4の発明によれば、供給油路開閉弁としてポペット弁が用いられる。ポペット弁は、弁体であるポペットが弁座のシート面に押し付けられることにより油路が閉じられ、またその弁体が弁座のシート面から離れることにより油路が開くように構成されたバルブであって、オイルの密封性に優れている。そのため、そのポペット弁からの実質的な油圧の漏洩を防止もしくは抑制することができ、油圧の漏洩による損失を低減して油圧制御装置のエネルギ効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の油圧制御装置の第1実施例の構成を模式的に示す図である。
【図2】この発明の油圧制御装置における供給油路開閉弁(ポペット弁)の具体的な構成を説明するための模式図である。
【図3】図1に示す第1実施例の他の構成を模式的に示す図である。
【図4】図1に示す第1実施例の他の構成を模式的に示す図である。
【図5】図1に示す第1実施例の構成における供給油路開閉弁の制御例を説明するためのフローチャートである。
【図6】この発明の油圧制御装置の第2実施例の構成を模式的に示す図である。
【図7】図6に示す第2実施例の構成における供給油路開閉弁および給排切替弁の制御例を説明するためのフローチャートである。
【図8】図6に示す第2実施例の他の構成を模式的に示す図である。
【図9】図6に示す第2実施例の他の構成を模式的に示す図である。
【図10】図6に示す第2実施例の他の構成を模式的に示す図である。
【図11】図6に示す第2実施例の構成における蓄圧器(係合圧アキュムレータ)の油圧特性を説明するための模式図である。
【図12】図6に示す第2実施例の構成における吐出圧アキュムレータの油圧特性を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施例)
つぎに、この発明を具体例を参照して説明する。図1には、例えば車両に搭載される前後進切換装置で用いられる前進クラッチ1および後退クラッチ(もしくはブレーキ)2などの摩擦係合機構1,2を油圧制御の対象とした油圧制御装置HCUに、この発明を適用した構成の一例であって、その第1実施例を模式的に示してある。
【0021】
前進クラッチ1および後退クラッチ2は、いずれも、所定の油圧(すなわち係合圧)が供給されることにより係合し、また係合圧が排出されることにより解放するように構成された油圧式の摩擦係合機構1,2である。そして前進クラッチ1は、車両を前進させる際に係合させられ、車両を後進させる際およびニュートラルを設定する際に解放されるクラッチであり、一方、後退クラッチ2は、車両を後進させる際に係合させられ、車両を前進させる際およびニュートラルを設定する際に解放されるクラッチである。
【0022】
符号3は、この発明における油圧発生源であり、この具体例では、例えばエンジンやモータ・ジェネレータなどの車両の駆動力源や、あるいは専用の電動モータ(いずれも図示せず)などの出力トルクにより駆動されて油圧を発生させるオイルポンプ3である。
【0023】
このオイルポンプ3の吐出口3aに、油路4と油路5とを介して、もしくは油路4と油路6とを介して、前進クラッチ1および後退クラッチ2がそれぞれ連通されている。そして、油路4には、吐出口3a側(図1での左側)から順に、リリーフ弁7、元圧調圧弁8、供給油路開閉弁9、係合圧給排切替弁10がそれぞれ設けられている。すなわち、油路4は、オイルポンプ3と係合圧給排切替弁10との間を連通する油路であって、この発明における第1油路に相当するものでる。
【0024】
リリーフ弁7は、常時閉形の開閉弁であって、前述の吐出口3aと係合圧給排切替弁10との間を連通する油路4のうちの吐出口3aと元圧調圧弁8との間を連通する油路4aの油圧、すなわちオイルポンプ3の吐出圧が入力される入力ポート7iと、その入力ポート7iに作用する油圧すなわちオイルポンプ3の吐出圧がフィードバック圧として入力されるフィードバックポート7fと、リリーフ弁7が開いた場合に入力ポート7iに作用する油圧を排圧するドレーンポート7dと、ばね7bとを備えている。
【0025】
そしてこのリリーフ弁7は、フィードバックポート7fに作用するフィードバック圧すなわちオイルポンプ3の吐出圧が、ばね7bの弾性力による押圧力よりも高い場合に開いて排圧するように構成されている。すなわち、このリリーフ弁7は、オイルポンプ3の吐出圧が、ばね7bの弾性力に応じて適宜設定される所定の設定圧力を超過した場合に開いて、その超過分の油圧をドレーンして油路4aの油圧超過を防止する圧力制御弁である。
【0026】
元圧調圧弁8は、オイルポンプ3の吐出圧を所定の圧力(すなわち元圧)に調圧もしくは減圧する電磁制御弁であって、油路4aを介してオイルポンプ3の吐出圧が入力される入力ポート8iと、開弁時に入力ポート8iに連通するとともに、前述の油路4のうちこの元圧調圧弁8と供給油路開閉弁9との間を連通する油路4bが接続された出力ポート8oと、その出力ポート8oから出力される油圧、すなわち元圧がフィードバック圧として入力されるフィードバックポート8fと、入力ポート8iと出力ポート8oとの間が遮断された場合に入力ポート8iに作用する油圧を排圧するドレーンポート8dと、入力ポート8iと出力ポート8oとの間の開通度もしくは開通時間を電気的に制御するソレノイド部8sとを備えている。
【0027】
そして、この元圧調圧弁8は、油圧制御装置HCUの各作動部の動作を電気的に制御するために設けられている電子制御装置(ECU)11により、ソレノイド部8sに通電する電流値を制御して元圧調圧弁8の開通度もしくは開通時間を調整することによって、入力ポート8iに入力されるオイルポンプ3の吐出圧を、所定の元圧に調圧して出力ポート8oから出力するように構成されている。なお、後述するこの発明における他の構成を説明する各図面においては、この電子制御装置(ECU)11の記載は省略している。
【0028】
供給油路開閉弁9は、元圧調圧弁8によって調圧された元圧を、前進クラッチ1および後退クラッチ2すなわち摩擦係合機構1,2側へ供給するための油路を開閉させる電磁開閉弁であって、油路4bを介して元圧調圧弁8により調圧された元圧が入力される入力ポート9iと、開弁時に入力ポート8iに連通するとともに、前述の油路4のうちこの供給油路開閉弁9と係合圧給排切替弁10との間を連通する油路4cが接続された出力ポート9oと、弁体(図示せず)の位置を電気的に制御するソレノイド部9sと、ソレノイド部9sへの通電時に弁体に作用する電磁力に対向する押圧力を弾性力によってその弁体へ作用させるばね9bとを備えている。
【0029】
そして、この供給油路開閉弁9は、電子制御装置11によりソレノイド部9sに通電する電流値を制御して供給油路開閉弁9の弁体の位置を軸線方向で前後(図1の例では上下)に移動させることによって、「入力ポート9iと出力ポート9oとの間を連通する状態すなわち油路4bと油路4cとの間を開通させた状態」と、「入力ポート9iと出力ポート9oとの間を遮断する状態すなわち油路4bと油路4cとの間を閉止させた状態」とのいずれかを選択的に設定するように構成されている。すなわち、この供給油路開閉弁9は、ソレノイド部9sへ所定の電流が供給される通電時に、「油路4bと油路4cとの間を開通させた状態」を設定し、非通電時には、「油路4bと油路4cとの間を閉止させた状態」を設定するいわゆるON−OFFソレノイド弁である。
【0030】
なお、この供給油路開閉弁9は、具体的には、例えば図2に示すようなポペット弁100を適用するのが好ましい。このポペット弁100の基本的な構成を説明しておくと、図2において、ポペット弁100は、先端部がテーパ状もしくは半球状に形成された弁体すなわちポペット101と、そのポペット101が押し付けられる弁座102のシート面102aと、ポペット101が取り付けられたアーマチュア103と、ポペット101を弁座102に向けて(図2では上側に)押圧するばね104(ばね9bに相当)と、通電されることによりアーマチュア103をばね104(9b)の弾性力に抗して弁座102とは反対方向(図2では下側)に引き戻す電磁力を生じさせる電磁コイル105(ソレノイド部9sに相当)とを備えている。
【0031】
この図2に示す構成のポペット弁100において、電磁コイル105(9s)に通電しないいわゆるOFF状態では、ポペット101がばね104(9b)によって弁座102に押し付けられるので、入力ポート106(入力ポート9iに相当)と出力ポート107(出力ポート9oに相当)との間が遮断される。また反対に、電磁コイル105(9s)に通電するいわゆるON状態では、ポペット101がアーマチュア103と共に弁座102から離れるように引き戻されるので、入力ポート106(9i)と出力ポート107(9o)とが連通する。こうして前述の油路4bと油路4cとの間が連通・遮断されるようになっている。
【0032】
このような構成のポペット弁100は、通電時以外はポペット101が弁座102のシート面102aに密着させられていて、オイルの密封性に優れている。したがって、この発明における供給油路開閉弁9に対して上記のようなポペット弁100を適用することにより、供給油路開閉弁9本体における油圧の漏洩を防止もしくは抑制することができ、この油圧制御装置HCUにおけるエネルギ損失を低減することができる。
【0033】
図1に戻り、係合圧給排切替弁10は、前述の前進クラッチ1および後退クラッチ2すなわち摩擦係合機構1,2に対する油圧の給排状態を切り替える3位置の切替弁であって、この具体例では、運転者の手動操作により切り替えられるいわゆるマニュアルバルブである。そしてこの係合圧給排切替弁10は、油路4bおよび供給油路開閉弁9ならびに油路4cを介して元圧調圧弁8により調圧された元圧が入力される入力ポート10iと、前述の油路5を介して前進クラッチ1に連通する第1出力ポート10oと、前述油路6を介して後退クラッチ2に連通する第2出力ポート10pと、第1出力ポート10oに作用する油圧、もしくは第2出力ポート10pに作用する油圧、もしくはそれら第1出力ポート10oおよび第2出力ポート10pの両方に作用する油圧を排圧するドレーンポート10dとを備えている。
【0034】
そしてこの係合圧給排切替弁10は、スプール(図示せず)の位置を手動で切り替えることにより、「入力ポート10iと第1出力ポート10oとの間を連通するとともに第2出力ポート10pとドレーンポート10dとの間を連通する状態、すなわち前進クラッチ1に元圧を供給するとともに後退クラッチ2に作用する油圧を排圧する状態」と、「入力ポート10iと第2出力ポート10pとの間を連通するとともに第1出力ポート10oとドレーンポート10dとの間を連通する状態、すなわち後退クラッチ2に元圧を供給するとともに前進クラッチ1に作用する油圧を排圧させる状態」と、「入力ポート10iおよび第1出力ポート10oならびに第2出力ポート10pとドレーンポート10dとの間を連通する状態、すなわち前進クラッチ1および後退クラッチ2に作用する油圧をいずれも排圧させる状態」とのいずれかを選択的に設定するように構成されている。
【0035】
次に、上述したこの発明の第1実施例で示す油圧制御装置HCUの作用について説明する。オイルポンプ3は、例えばエンジンなどの車両の駆動力源あるいは専用に設けられた電動モータなどから動力を得て駆動されて油圧を発生する。オイルポンプ3で昇圧されて吐出口3aから吐出された圧油は、油路4aを介して元圧調圧弁8の入力ポート8iに供給され、元圧調圧弁8によりこの油圧制御装置HCUの元圧として所望される所定の圧力に調圧されて、元圧調圧弁8の入力ポート8iから油路4b側へ供給される。なお、例えばオイルポンプ3や元圧調圧弁8にフェイルが生じるなどして、油路4aの油圧が所定値以上に上昇した場合は、リリーフ弁7が開いて油路4aの油圧を排圧するので、油圧回路内における過大な油圧の発生が防止される。
【0036】
上記のようにして調圧された元圧が、前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2へ供給されること、および、前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2から油圧が排圧されることにより、それら前進クラッチ1および後退クラッチ2の係合・解放状態が制御される。先ず、車両を前進させるために、前進クラッチ1を係合しかつ後退クラッチ2を解放する場合は、供給油路開閉弁9が制御されて、その供給油路開閉弁9が「油路4bと油路4cとの間を開通させた状態(図1での下段位置)」に設定される。
【0037】
油路4bと油路4cとの間が開通させられることにより、元圧が係合圧給排切替弁10の入力ポート10iに供給され、併せて係合圧給排切替弁10が操作されて、その係合圧給排切替弁10のスプールが「入力ポート10iと第1出力ポート10oとの間を連通するとともに第2出力ポート10pとドレーンポート10dとの間を連通する位置(図1での上段位置)」に設定される。なお、係合圧給排切替弁10のスプール位置を切り替える操作は、運転者の手動操作に基づいて直接係合圧給排切替弁10が操作される構成であってもよく、あるいは、例えば運転者による変速機のシフトレバー操作に連動して係合圧給排切替弁10が操作される構成であってもよい。
【0038】
上記のように係合圧給排切替弁10が操作された結果、元圧がクラッチの係合圧として油路5を介して前進クラッチ1に供給されて、前進クラッチ1が係合させられる。具体的には、前進クラッチ1の摩擦係合部(図示せず)を作動させる油圧アクチュエータ(図示せず)に係合圧が供給されて、摩擦係合部が係合させられる、すなわち前進クラッチ1が係合させられる。またその際に、後退クラッチ2に係合圧が作用していた場合は、その後退クラッチ2の係合圧が油路6を介して排圧されて、後退クラッチ2が解放させられる。具体的には、後退クラッチ2の摩擦係合部(図示せず)を作動させる油圧アクチュエータ(図示せず)から係合圧が排圧されて、摩擦係合部が解放させられる、すなわち後退クラッチ2が解放させられる。
【0039】
一方、車両を後進させるために、後退クラッチ2を係合しかつ前進クラッチ1を解放する場合は、上記の車両を前進させる場合と同様に、供給油路開閉弁9が「油路4bと油路4cとの間を開通させた状態」に設定される。そして、油路4bと油路4cとの間が連通することにより、元圧が係合圧給排切替弁10の入力ポート10iに供給され、併せて係合圧給排切替弁10が操作されて、その係合圧給排切替弁10のスプールが「入力ポート10iと第2出力ポート10pとの間を連通するとともに第1出力ポート10oとドレーンポート10dとの間を連通する位置(図1での下段位置)」に設定される。
【0040】
上記のように係合圧給排切替弁10が操作された結果、元圧がクラッチの係合圧として油路6を介して後退クラッチ2に供給されて、後退クラッチ2が係合させられる。具体的には、後退クラッチ2の摩擦係合部(図示せず)を作動させる油圧アクチュエータ(図示せず)に係合圧が供給されて、摩擦係合部が係合させられる、すなわち後退クラッチ2が係合させられる。またその際に、前進クラッチ1に係合圧が作用していた場合は、その前進クラッチ1の係合圧が油路5を介して排圧されて、前進クラッチ1が解放させられる。具体的には、前進クラッチ1の摩擦係合部(図示せず)を作動させる油圧アクチュエータ(図示せず)から係合圧が排圧されて、摩擦係合部が解放させられる、すなわち前進クラッチ1が解放させられる。
【0041】
なお、係合圧給排切替弁10を操作して、その係合圧給排切替弁10のスプールが「入力ポート10iおよび第1出力ポート10oならびに第2出力ポート10pとドレーンポート10dとの間を連通する位置(図1での中段位置)」に設定されることにより、「前進クラッチ1および後退クラッチ2に作用する油圧がいずれも排圧させられる状態」になる。その結果、前進クラッチ1および後退クラッチ2がいずれも解放させられて、それら前進クラッチ1と後退クラッチ2とから構成される前後進切換装置では、いずれの方向にも動力を伝達しない状態、すなわちいわゆるニュートラル状態が設定される。
【0042】
そして、車両の前進(もしくは後進)走行が継続される場合、すなわち、上記のようにして前進クラッチ1(もしくは後退クラッチ2)が係合させられた状態が維持される場合は、前進クラッチ1(もしくは後退クラッチ2)へ元圧を供給するために、「油路4bと油路4cとの間を開通させた状態」に設定されていた供給油路開閉弁9が、「油路4bと油路4cとの間を閉止させた状態(図1での上段位置)」に切り替えられて設定される。
【0043】
供給油路開閉弁9が「油路4bと油路4cとの間を閉止させた状態」に設定されることにより、油路4cおよび油路5(もしくは油路6)を介して前進クラッチ1(もしくは後退クラッチ2)へ供給されていた元圧(係合圧)が、それら油路4cと油路5(もしくは油路6)との間で閉じ込められる。すなわち、油路4cと油路5(もしくは油路6)との間の油圧が、前進クラッチ1(もしくは後退クラッチ2)を係合させるために供給されていた係合圧に保持される。この場合、供給油路開閉弁9は、前述したように、例えばポペット弁100のようにオイルの密封性に優れた構造のバルブにより構成されているので、油路4cと油路5(もしくは油路6)との間で保持された係合圧は、供給油路開閉弁9から漏洩して低下したりすることなく保持される。
【0044】
したがって、前進クラッチ1(もしくは後退クラッチ2)に係合圧を供給して係合させた後に、供給油路開閉弁9を「油路4bと油路4cとの間を閉止させた状態」に設定することによって、オイルポンプ3側から新に元圧の供給を受けなくとも、前進クラッチ1(もしくは後退クラッチ2)に作用する係合圧を適切に保持することができる。そのため、前進クラッチ1(もしくは後退クラッチ2)の係合時に、例えばオイルポンプ3と車両のエンジンとの間の動力伝達を遮断すること、あるいは専用の電動モータの運転を停止することにより、オイルポンプ3の駆動を停止させることが可能になり、その結果、オイルポンプ3を駆動するためのエネルギや、あるいはオイルポンプ3で油圧を発生させる際や元圧調圧弁8で油圧を減圧させる際の損失を低減して、この油圧制御装置HCUのエネルギ効率を向上させることができる。
【0045】
上記のように、前進クラッチ1(もしくは後退クラッチ2)の係合・解放時に制御される供給油路開閉弁9を制御する際の制御手順の一例を、図3のフローチャートに示してある。このフローチャートで示すルーチンは、所定の短時間毎に繰り返し実行される。図3のフローチャートにおいて、先ず、車両のシフトレバーの設定位置が、前進走行のためのドライブ(D)レンジ、もしくは後進走行のためのリバース(R)レンジのいずれかであるか否かが、すなわち、前後進切換装置の前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2のいずれかを係合させる必要があるか否かが判断される(ステップS11)。
【0046】
シフトレバーの設定位置が、ドライブ(D)レンジおよびリバース(R)レンジのいずれでもないこと、すなわち、例えばシフトレバーがニュートラルレンジやパーキングレンジなどに設定されていることにより、このステップS11で否定的に判断された場合は、前進クラッチ1および後退クラッチ2のいずれも係合させる必要がない。したがって、供給油路開閉弁9を開いて元圧(係合圧)を油路4c側へ供給しなくともよいので、ステップS12へ進み、供給油路開閉弁9が「油路4bと油路4cとの間を閉止させた状態」に設定される(油路密封)。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
【0047】
一方、シフトレバーの設定位置が、ドライブ(D)レンジもしくはリバース(R)レンジのいずれかであることにより、ステップS11で肯定的に判断された場合には、前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2のいずれかを係合させる必要があるので、ステップS13へ進み、供給油路開閉弁9が「油路4bと油路4cとの間を開通させた状態」に設定される(油路連通)。
【0048】
供給油路開閉弁9が開かれて「油路4bと油路4cとの間を開通させた状態(油路連通)」に設定されると、前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2のいずれかの係合が完了したか否かが判断される(ステップS14)。前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2の係合が未だ完了していないことにより、このステップS14で否定的に判断された場合は、前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2に未だ元圧を供給する必要があるので、ステップS15へ進み、「油路4bと油路4cとの間を開通させた状態」に設定された供給油路開閉弁9の状態が継続される(油路連通継続)。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
【0049】
これに対して、前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2の係合が完了したことにより、ステップS14で肯定的に判断された場合には、前述のステップS12へ進み、供給油路開閉弁9が「油路4bと油路4cとの間を閉止させた状態」に設定される(油路密封)。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
【0050】
前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2の係合が完了した状態では、新に元圧を供給しなくとも、供給油路開閉弁9を閉じて「油路4bと油路4cとの間を閉止させた状態」に設定することにより、油路4cおよび油路5との間もしくは油路4cと油路6との間に、元圧すなわち前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2を係合させる係合圧を保持することができ、前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2の係合状態を安定して維持することができる。
【0051】
上述したこの発明の第1実施例で示す油圧制御装置HCUは、図4あるいは図5に示すように変形して構成することもできる。例えば図4に示すように、この発明の油圧制御装置HCUは、係合圧給排切替弁10と前進クラッチ1との間を連通する油路5に、絞り12およびアキュムレータ13を設け、係合圧給排切替弁10と後退クラッチ2との間を連通する油路6に、絞り14およびアキュムレータ15を設けた構成とすることもできる。
【0052】
具体的には、油路5には、係合圧供給切替弁10側に絞り12が設けられ、その絞り12と前進クラッチ1との間にアキュムレータ13が設けられている。同様に、油路6には、係合圧供給切替弁10側に絞り14が設けられ、その絞り14と後退クラッチ2との間にアキュムレータ15が設けられている。
【0053】
絞り12,14は、油路5,6を流通するオイルの流量を絞るためのものであり、例えば油路5,6の内部に貫通孔を中心部に形成した隔壁部によって形成される。その隔壁部は、油路5,6の内壁面と一体に成形したものであってもよく、あるいは隔壁部と一体のスリーブを油路5,6の内部に挿入したものであってもよい。
【0054】
アキュムレータ13,15は、油路5,6の油圧を蓄圧し、あるいは蓄えた油圧を油路5,6へ供給するためのものであり、蓄圧室に弾性体で押圧されたピストンや弾性膨張体などを容器内に収容し、その弾性力以上の圧力で油圧を蓄えるように構成されている。
【0055】
上記のように、油路5,6に絞り12,14がそれぞれ形成されることにより、油路5,6を介して各クラッチ1,2に係合圧を供給する場合、および各クラッチ1,2から係合圧を排圧する場合に、油路5,6をオイルが流通する際の流量が絞られる。そのため、各クラッチ1,2の係合・解放動作を滑らかにし、クラッチの係合ショックや解放ショックを抑制することができる。
【0056】
そして、油路5,6にアキュムレータ13,15がそれぞれ形成されることにより、各クラッチ1,2を係合させる際に油路5,6を介して供給される過剰な油圧や、各クラッチ1,2から油路5,6を介して排出される油圧を、無駄に捨てることなく回収することができる。また、各クラッチ1,2が係合された状態を保持する際に、油圧の漏洩などにより係合圧が減少する場合であっても、アキュムレータ13,15から油圧を供給することによりその係合圧の減少分を補填して、各クラッチ1,2の係合状態を安定して保持させることができる。
【0057】
さらに、例えば図5に示すように、この発明の油圧制御装置HCUは、2つの供給油路開閉弁9,16を設けることにより、上述の図1,図4で示す構成における元圧調圧弁8を廃止した構成とすることもできる。
【0058】
具体的には、この図5に示す具体例における油路4には、吐出口3a側(図5での左側)から順に、リリーフ弁7、供給油路開閉弁9、供給油路開閉弁16、係合圧給排切替弁10がそれぞれ設けられている。この図5に示す具体例における供給油路開閉弁9は、入力ポート9iに油路4aが接続され、出力ポート9oに油路4cが接続されている。
【0059】
供給油路開閉弁16は、供給油路開閉弁9と同様の構成の電磁開閉弁であって、油路4cに接続された入力ポート16iと、先端がオイルパンなどに開放されている油路4dが接続された出力ポート16oと、弁体(図示せず)の位置を電気的に制御するソレノイド部16sと、ソレノイド部16sへの通電時に弁体に作用する電磁力に対向する押圧力を弾性力によってその弁体へ作用させるばね16bとを備えている。
【0060】
したがって、この供給油路開閉弁16は、ソレノイド部16sへ所定の電流が供給される通電時に、「油路4cと油路4dとの間を開通させた状態、すなわち油路4cの油圧をドレーンする状態」を設定し、非通電時には、「油路4cと油路4dとの間を閉止させた状態」を設定するいわゆるON−OFFソレノイド弁である。そしてこれら各供給油路9,16は、前述したように、例えば図2に示すようなポペット弁100により構成されている。
【0061】
この図5に示す具体例において、車両を前進もしくは後進させるために、各クラッチ1,2の係合・開放状態を制御する場合は、供給油路開閉弁9,16がそれぞれ制御されて、油路4aの油圧すなわちオイルポンプ3の吐出圧が所定の元圧に調圧されて油路4c側へ供給されるとともに、供給油路開閉弁9が「油路4bと油路4cとの間を開通させた状態(図5での下段位置)」に設定され、供給油路開閉弁16が「油路4cと油路4d(ドレーン)との間を閉止させた状態(図5での上段位置)」に設定される。
【0062】
そして、車両の前進(もしくは後進)走行が継続される場合、すなわち、前進クラッチ1(もしくは後退クラッチ2)が係合させられた状態が維持される場合は、前進クラッチ1(もしくは後退クラッチ2)へ元圧を供給するために、「油路4bと油路4cとの間を開通させた状態」に設定されていた供給油路開閉弁9が、「油路4bと油路4cとの間を閉止させた状態(図5での上段位置)」に切り替えられて設定されるとともに、「油路4cと油路4d(ドレーン)との間を閉止させた状態(図5での上段位置)」に設定されていた供給油路開閉弁16は、引き続きその状態が維持される。
【0063】
このように、供給油路開閉弁9と供給油路開閉弁16との2つの開閉弁を設け、各供給油路開閉弁9,16のソレノイド部9s,16sに通電する電流値をそれぞれ制御して、それら各供給油路開閉弁9,16の開通度もしくは開通時間をそれぞれ調整することにより、前述の図1,図4で示した構成における元圧調圧弁8を設けなくとも、油路4aに供給されるオイルポンプ3の吐出圧を所定の元圧に調圧して油路4cへ供給することができる。
【0064】
以上のように、この発明の第1実施例で示す油圧制御装置HCUによれば、例えば前後進切換装置の前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2を係合する場合に、供給油路開閉弁9を開き、係合圧給排切替弁10を各クラッチ1,2へ油圧を供給する位置に設定することにより、各クラッチ1,2へ油圧が供給されて各クラッチ1,2が係合する。
【0065】
そして、その各クラッチ1,2の係合状態を保持する場合には、係合圧給排切替弁10を各クラッチ1,2へ油圧を供給する位置に設定したまま供給油路開閉弁9を閉じることにより、供給油路開閉弁9と各クラッチ1,2との間に、各クラッチ1,2を係合させるための油圧すなわち係合圧を密封することができる。その結果、各クラッチ1,2を係合させて供給油路開閉弁9を閉じた後に、オイルポンプ3からの油圧の供給を停止することが可能になる。そのため、各クラッチ1,2を係合させた後はオイルポンプ3で油圧を発生させなくともよいので、オイルポンプ3を駆動するためのエネルギを低減することができ、ひいては、油圧制御装置HCUのエネルギ効率を向上させることができる。
【0066】
(第2実施例)
つぎに、この発明の第2実施例を説明する。この第2実施例で示す油圧制御装置HCUは、前述の第1実施例で示した油圧制御装置HCUの構成において、供給油路開閉弁9と係合圧給排切替弁10との間を連通する油路にアキュムレータなどの蓄圧器を設けた構成となっている。すなわち、図6に示すように、この発明における第2油路に相当する供給油路開閉弁9と係合圧給排切替弁10との間を連通する油路4cに、アキュムレータ17が設けられている。なお、以降の説明では、前述のアキュムレータ13,15および後述するアキュムレータ19と区別するため、このアキュムレータ17を係合圧アキュムレータ17と称することにする。
【0067】
この係合圧アキュムレータ17は、前述のアキュムレータ13,15と同様の構成であり、油路4cの油圧を蓄圧し、あるいは蓄えた油圧を油路4cへ供給して、油路4cにおける係合圧を維持するためのものであって、蓄圧室に弾性体で押圧されたピストンや弾性膨張体などを容器内に収容し、その弾性力以上の圧力で油圧を蓄えるように構成されている。
【0068】
なお、この図6に示す構成は、前述の図1,図4,図5で示した第1実施例の各構成のうち、図5で示した構成に係合圧アキュムレータ17を追加した例を示しているが、前述の図1もしくは図4で示した第1実施例の構成に、係合圧アキュムレータ17を追加したものであってもよい。
【0069】
この発明の第2実施例で示す油圧制御装置HCUの作用について説明すると、上記のように、係合圧給排切替弁10との間を連通する油路4cに係合圧アキュムレータ17を設けたことにより、前進クラッチ1(もしくは後退クラッチ2)を係合させた後に、その係合状態を保持する際に、油圧の漏洩などにより係合圧が減少する場合であっても、係合圧アキュムレータ17から油圧が供給されてその係合圧の減少分が補填され、前進クラッチ1(もしくは後退クラッチ2)の係合状態が一定時間の間、安定的に保持される。
【0070】
すなわち、油路4cに係合圧アキュムレータ17が設けられたことにより、油路4cや、その前後の供給油路開閉弁9および係合圧給排切替弁10におけるシール部分を完全に密封しなくともよくなり、シールやバルブの気密性を高めるためのコストを低減することができる。また、油路4cおよび供給油路開閉弁9ならびに係合圧給排切替弁10における油圧の漏れがある程度許容できるので、油圧制御におけるいわゆるロバスト性が向上する。
【0071】
この第2実施例の構成における、前進クラッチ1(もしくは後退クラッチ2)の係合・解放時に制御される供給油路開閉弁9,16を制御する際の制御手順の一例を、図7のフローチャートに示してある。このフローチャートで示すルーチンは、所定の短時間毎に繰り返し実行される。図7のフローチャートにおいて、先ず、車両のシフトレバーの設定位置が、前進走行のためのドライブ(D)レンジ、もしくは後進走行のためのリバース(R)レンジのいずれかであるか否かが、すなわち、前後進切換装置の前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2のいずれかを係合させる必要があるか否かが判断される(ステップS21)。
【0072】
シフトレバーの設定位置が、ドライブ(D)レンジおよびリバース(R)レンジのいずれでもないこと、すなわち、例えばシフトレバーがニュートラルレンジやパーキングレンジなどに設定されていることにより、このステップS21で否定的に判断された場合は、前進クラッチ1および後退クラッチ2のいずれも係合させる必要がない。したがって、供給油路開閉弁9を開いて元圧を油路4c側へ供給しなくともよいので、ステップS22へ進み、供給油路開閉弁9が「油路4bと油路4cとの間を閉止させた状態」に設定され、供給油路開閉弁16が「油路4cと油路4d(ドレーン)との間を閉止させた状態」に設定される(油路密封)。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
【0073】
一方、シフトレバーの設定位置が、ドライブ(D)レンジもしくはリバース(R)レンジのいずれかであることにより、ステップS21で肯定的に判断された場合には、前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2のいずれかを係合させる必要があるので、ステップS23へ進み、前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2のいずれかが係合中であるか否かが判断される。
【0074】
前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2のいずれかが係合中であることにより、このステップS23で肯定的に判断された場合は、ステップS24へ進み、クラッチ係合制御が実行される。すなわち、供給油路開閉弁9,16がそれぞれ制御されて、オイルポンプ3の吐出圧が所定の元圧に調圧されて油路4c側へ供給されるとともに、供給油路開閉弁9が「油路4bと油路4cとの間を開通させた状態」に設定され、供給油路開閉弁16が「油路4cと油路4d(ドレーン)との間を閉止させた状態」、すなわち、供給油路開閉弁9と各クラッチ1,2との間が「油路連通」の状態に設定される。また、係合圧給排切替弁10が、「前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2のいずれかに係合圧を供給する状態」に設定される。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
【0075】
これに対して、前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2のいずれかが係合中でないことにより、このステップS23で否定的に判断された場合には、ステップS25へ進み、各供給油路開閉弁9,16が制御されて、供給油路開閉弁9と各クラッチ1,2との間が「油路密封」の状態にされた時点、すなわち油路4cと油路5もしくは油路6との間が密封された時点から所定の一定時間αが経過したか否かが判断される。
【0076】
供給油路開閉弁9と各クラッチ1,2との間が「油路密封」の状態にされた時点から所定時間αが経過したことにより、このステップS25で肯定的に判断された場合は、ステップS26へ進み、供給油路開閉弁9と各クラッチ1,2との間が「油路連通」の状態に設定された時点から所定の一定時間βが経過したか否かが判断される。
【0077】
前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2のいずれかが係合中でない場合、すなわち、前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2のいずれかの係合が完了しその係合が維持されている場合、もしくは前進クラッチ1および後退クラッチ2のいずれも解放されている場合は、各供給油路開閉弁9,16が制御されて供給油路開閉弁9と各クラッチ1,2との間が「油路密封」の状態にされるが、その「油路密封」の状態が長時間に及ぶと、油路やバルブでの不可避的な油圧の漏れの影響のため、油路4cに設けられた係合圧アキュムレータ17の蓄圧量が減少して油路4cの油圧低下を補えなくなり、「油路密封」により保持されている前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2の係合圧が低下してしまう場合がある。
【0078】
そこで、供給油路開閉弁9と各クラッチ1,2との間が「油路密封」の状態にされた時点からの経過時間を計測し、油圧漏れの影響を受ける可能性がある時間の閾値として予め設定した所定時間α以上経過した場合には、供給油路開閉弁9と各クラッチ1,2との間が「油路連通」の状態に設定され、油路4cに元圧が供給されて係合圧アキュムレータ17の油圧が充填される。その際に、係合圧アキュムレータ17の蓄圧量が充満する時間として予想して予め設定した所定時間βの間、係合圧アキュムレータ17への元圧の供給が継続される。
【0079】
したがって、供給油路開閉弁9と各クラッチ1,2との間が「油路連通」の状態に設定された時点から未だ所定時間βが経過していないことにより、ステップS26で否定的に判断された場合は、ステップS27へ進み、供給油路開閉弁9と各クラッチ1,2との間の「油路連通」の状態が継続される。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
【0080】
一方、供給油路開閉弁9と各クラッチ1,2との間が「油路密封」の状態にされた時点から未だ所定時間αが経過していないことにより、前述のステップS25で否定的に判断された場合には、ステップS28へ進み、供給油路開閉弁9と各クラッチ1,2との間の「油路密封」の状態が継続される。また、供給油路開閉弁9と各クラッチ1,2との間が「油路連通」の状態に設定された時点から所定時間βが経過したことにより、ステップS26で肯定的に判断された場合も、ステップS28へ進み、供給油路開閉弁9と各クラッチ1,2との間の「油路密封」の状態が継続される。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
【0081】
このように、油路4cに設けられた係合圧アキュムレータ17の蓄圧状態も考慮して、供給油路開閉弁9および供給油路開閉弁16が制御されることにより、油路4cおよび油路5との間もしくは油路4cと油路6との間に、前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2を係合させる係合圧を安定して保持することができ、前進クラッチ1もしくは後退クラッチ2の係合状態をより一層安定して維持することができる。
【0082】
上述したこの発明の第2実施例で示す油圧制御装置HCUは、図8,図9,図10に示すように変形して構成することもできる。すなわち、これら図8,図9,図10に示すこの第2実施例の各構成では、前述の図1,図4,図5で示した第1実施例の各構成におけるリリーフ弁7に替えて、チェック弁18とアキュムレータ19とが設けられている。例えば図8には、前述の図6で示したこの第2実施例の構成を基に、リリーフ弁7に替えて上記のようなチェック弁18と吐出圧アキュムレータ19とを設けた構成を示してある。
【0083】
具体的には、図8,図9,図10に示す構成において、オイルポンプ3と供給油路開閉弁9との間を連通する油路4aの途中に、チェック弁18とアキュムレータ19とが直列して設けられている。すなわち、油路4aの吐出口3a側に、チェック弁18が設けられ、そのチャック弁18と供給油路開閉弁9との間の油路4aに、アキュムレータ19が設けられている。なお、以降の説明では、前述のアキュムレータ13,15および係合圧アキュムレータ17と区別するため、このアキュムレータ19を吐出圧アキュムレータ19と称することにする。
【0084】
チェック弁18は、いわゆる逆流防止弁(逆止弁)であって、油路4aにおいて、吐出口3aから供給油路開閉弁9側すなわち吐出圧アキュムレータ19側へのオイルの流動を許容し、反対に、吐出圧アキュムレータ19側から吐出口3aへのオイルの流動を制止する構成となっている。
【0085】
吐出圧アキュムレータ19は、前述のアキュムレータ13,15および係合圧アキュムレータ17と同様の構成であり、油路4aの油圧を蓄圧し、あるいは蓄えた油圧を油路4aへ供給して、油路4aの油圧を安定させるためのものであって、蓄圧室に弾性体で押圧されたピストンや弾性膨張体などを容器内に収容し、その弾性力以上の圧力で油圧を蓄えるように構成されている。
【0086】
このように、この図8で示す第2実施例の構成では、油路4aのチェック弁18と吐出圧アキュムレータ19とを設けることにより、例えば油路4aの油圧が想定している圧力を超過して上昇した場合に、その油圧の超過分を吐出圧アキュムレータ19に蓄えさせて、油路4aの油圧すなわちオイルポンプ3の吐出圧を安定させることができる。したがって、前述のリリーフ弁7の機能を、これらチェック弁18と吐出圧アキュムレータ19とで担うことができ、リリーフ弁7を廃止することができる。さらに、リリーフ弁7に替えてこれらチェック弁18と吐出圧アキュムレータ19とを設けた構成とすることにより、リリーフ弁7では排圧されることになる油圧の超過分を、無駄に捨てることなく回収することができる。
【0087】
そして、図9は、上記の図8で示したこの第2実施例の構成を基に、いずれもON−OFFソレノイド弁(もしくは2位置の電磁切替弁)により構成される供給油路開閉弁9および供給油路開閉弁16に替えて供給油路開閉弁20を設けた構成を示している。具体的には、この図9で示す第2実施例の構成では、油路4の途中であって、油路4aと油路4cとの間、より具体的には、油路4aに設けられた吐出圧アキュムレータ19と油路4cに設けられた係合圧アキュムレータ17との間に、供給油路開閉弁20が設けられている。
【0088】
供給油路切替弁20は、3位置の電磁切替弁であって、油路4aに接続された入力ポート20iと、油路4cに接続された出力ポート20oと、先端がオイルパンなどに開放されている油路4dが接続されたドレーンポート16dと、弁体(図示せず)の位置を電気的に制御するソレノイド部20sと、互いに対向するとともにソレノイド部20sへの通電時にスプール(図示せず)に作用する電磁力に対向する押圧力を弾性力によってその弁体へ作用させる2つのばね20bとを備えている。
【0089】
そしてこの供給油路開閉弁20は、ソレノイド部20+sへ供給する電流値を制御してスプールの位置を切り替えることにより、「入力ポート20iと出力ポート20oとの間を連通するとともにドレーンポート20dを閉止した状態」と、「入力ポート20iを閉止するとともに出力ポート20oとドレーンポート20dとの間を連通した状態」と、「入力ポート20iおよび出力ポート20oならびにドレーンポート20dをそれぞれ閉止した状態」とのいずれかを選択的に設定するように構成されている。
【0090】
したがって、この図9で示す第2実施例の構成では、供給油路開閉弁20のソレノイド部20sへ供給する電流値を制御することにより、「油路4aを介して入力されたオイルポンプ3の吐出圧を所定の元圧に調圧し、油路4c側へ出力する状態」と、「油路4cの油圧を油路4dを介して排圧する状態」と、「油路4cの供給油路開閉弁20側の端部におけるオイルの流通を遮断する状態」とを適宜に設定することができる。そのため、前述の図8で示した構成においては供給油路開閉弁9と供給油路開閉弁16との2つで担っていた機能を、この供給油路切替弁20だけで担うことができ、部品点数を削減することができる。
【0091】
さらに、図10は、上記の図8で示したこの第2実施例の構成を基に、ON−OFFソレノイド弁(もしくは2位置の電磁切替弁)により構成される供給油路開閉弁16に替えてリリーフ弁21を設けた構成を示している。具体的には、この図10で示す第2実施例の構成では、油路4cの途中であって、供給油路開閉弁9と係合圧アキュムレータ17との間に、リリーフ弁21が設けられている。
【0092】
リリーフ弁21は、前述のリリーフ弁7と同様、常時閉形の開閉弁であって、油路4cの油圧、すなわち供給油路開閉弁9で調圧された元圧が入力される入力ポート21iと、その入力ポート21iに作用する油圧すなわち元圧がフィードバック圧として入力されるフィードバックポート21fと、リリーフ弁21が開いた場合に入力ポート21iに作用する油圧を排圧するドレーンポート21dと、ばね21bとを備えている。
【0093】
また、このリリーフ弁21は、フィードバックポート21fに作用するフィードバック圧すなわち元圧が、ばね20bの弾性力による押圧力よりも高い場合に開いて排圧するように構成されている。すなわち、このリリーフ弁21は、オイルポンプ3の吐出圧が、ばね20bの弾性力に応じて適宜設定される所定の設定圧力を超過した場合に開いて、その超過分の油圧をドレーンして油路4aの油圧超過を防止する圧力制御弁である。
【0094】
したがって、このリリーフ弁21の設定圧力を所望する元圧と同等の値に設定しておくことにより、供給油路開閉弁9による油圧制御と併せて、油路4cの油圧を所定の元圧に調圧することができる。すなわち、所定の元圧(係合圧)を調圧して油路4cに供給する際の制御、および油路4cに作用している係合圧を保持する際の制御が、供給油路開閉弁9の開閉状態だけを制御することにより実行することができる。そのため、この油圧制御装置HCUにおける制御内容を簡素化して、各クラッチ1,2の係合・解放状態を容易に制御することができる。
【0095】
以上のように、この発明の第2実施例で示す油圧制御装置HCUによれば、供給油路開閉弁9と係合圧給排切替弁10との間を連通する油路4cに係合圧アキュムレータ17が設けられることにより、各クラッチ1,2の係合状態を保持する際に供給油路開閉弁9を閉じて油路4c内に係合圧を封じ込める場合に、油路4c内の油圧を安定させることができる。例えば油路4cやその油路4cに関連しているバルブ等で不可避的な油圧漏れが発生し、油路4c内の油圧が低下する場合であっても、係合圧アキュムレータ17から油圧が供給されるので、油路4c内で低下した油圧分を補填することができる。そのため、各クラッチ1,2などの摩擦係合機構1,2の係合状態を安定的に保持することができる。
【0096】
(第3実施例)
つぎに、この発明の第3実施例を説明する。この第3実施例で示す油圧制御装置HCUは、前述の第2実施例で示した油圧制御装置HCUの構成を対象にして、係合圧アキュムレータ17の圧力特性を適宜に設定することにより、摩擦係合機構1,2の係合状態を安定的に保持するようにした例である。
【0097】
具体的には、図11に示すように、係合圧アキュムレータ17の使用下限圧Pmin(図11における特性線Cで示される下限値)が、各クラッチ1,2をそれぞれ作動させる際に最小限必要な作動最小圧Psedと同等の圧力となり、また、係合圧アキュムレータ17の使用上限圧Pmax(図11における特性線Cで示される上限値)が、各クラッチ1,2をそれぞれ係合させる際に必要な係合必要圧Pc以上の圧力となり、さらに、各クラッチ1,2のいずれかが係合されかつ供給油路開閉弁9が閉じられた状態で油路4c内に保持される保持油圧Phが、係合必要圧Pcと使用上限圧Pmaxとの間の圧力となるように、係合圧アキュムレータ17の圧力特性が設定されている。
【0098】
なお、前述の図8,図9,図10で示す第2実施例の構成で設けられている吐出圧アキュムレータ19に関しては、例えば、図12に示すように、吐出圧アキュムレータ19の使用下限圧P0min(図12における特性線Dで示される下限値)が、係合圧アキュムレータ17の使用上限圧Pmaxと同等の圧力となり、また、吐出圧アキュムレータ19の使用上限圧P0max(図12における特性線Dで示される上限値)が、係合圧アキュムレータ17の使用上限圧Pmax以上の圧力となるように、その吐出アキュムレータ19の圧力特性が設定されればよい。
【0099】
以上のように、この発明の第3実施例で示す油圧制御装置HCUによれば、油路4cに設けられた係合圧アキュムレータ17の油圧特性が適切に設定されることにより、各クラッチ1,2などの摩擦係合機構1,2の係合状態をより安定的にかつ確実に保持することができる。例えば、供給油路開閉弁9(もしくは16もしくは20)のソレノイド特性がばらついた場合であっても、係合圧アキュムレータ17の作用によりそのばらつきが抑制されるので、各クラッチ12の係合時のショックを防止もしくは抑制することができる。
【0100】
また、上記のように、ある程度のソレノイド特性のばらつきが許容できるため、ソレノイドを選択する際の精度の基準を緩めることができ、すなわち高精度で高価なソレノイドを選択しなくともよいので、その分コストダウンを図ることができる。
【0101】
なお、上述の各具体例では、この発明における摩擦係合機構として、例えば車両に搭載される前後進切換装置で用いられる前進クラッチ1および後退クラッチ2を例に示して説明したが、この発明における摩擦係合機構の油圧制御装置は、それに限定されるものではなく、例えば、車両に搭載される自動変速機で変速制御を実行するために用いられるクラッチおよびブレーキを対象とした油圧制御装置に適用することもできる。あるいは、車両用の前後進切替装置や自動変速機に限らず、油圧によって駆動し、また制御する一般の産業機械や装置類の油圧制御装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0102】
1…前進クラッチ(摩擦係合機構)、 2…後退クラッチ(摩擦係合機構)、 3…オイルポンプ(油圧発生源)、 4…油路(第1油路)、 4c…油路(第2油路)、 9,16,20…供給油路開閉弁、 10…係合圧給排切替弁、 11…電子制御装置、 17…係合圧アキュムレータ(蓄圧器)、 100…ポペット弁(供給油路開閉弁)、 101…ポペット(弁体)、 102…弁座、 102a…シート面、 HCU…油圧制御装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧発生源と該油圧発生源からの所定の油圧が供給されることにより係合しかつ油圧が排出されることにより解放する油圧式の摩擦係合機構との間に設けられて前記摩擦係合機構に対する油圧の給排状態を切り替える係合圧給排切替弁を備えた摩擦係合機構の油圧制御装置において、
前記油圧発生源と前記係合圧給排切替弁との間を連通する第1油路の途中に設けられて該第1油路を開通させた状態と該第1油路を閉止させた状態とを選択的に設定する供給油路開閉弁を備えていることを特徴とする摩擦係合機構の油圧制御装置。
【請求項2】
前記供給油路開閉弁と前記係合圧給排切替弁との間を連通する第2油路の途中に設けられて該第2油路の油圧を蓄圧するもしくは該第2油路へ油圧を供給する蓄圧器を更に備えていることを特徴とする請求項1に記載の摩擦係合機構の油圧制御装置。
【請求項3】
前記蓄圧器の使用下限圧が前記摩擦係合機構を作動させる際に最小限必要な作動最小圧と同等の圧力となり、かつ、前記蓄圧器の使用上限圧が前記摩擦係合機構を係合させる際に必要な係合必要圧以上の圧力となり、なおかつ、前記摩擦係合機構が係合されかつ前記供給油路開閉弁が閉じられた状態における前記第2油路の油圧が前記使用上限圧と前記係合必要圧との間の圧力となるように、前記蓄圧器の圧力特性が設定されていることを特徴とする請求項2に記載の摩擦係合機構の油圧制御装置。
【請求項4】
前記供給油路開閉弁は、弁座のシート面に押し付けられる弁体を駆動することにより流路の開閉を行うポペット弁を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の摩擦係合機構の油圧制御装置。
【請求項1】
油圧発生源と該油圧発生源からの所定の油圧が供給されることにより係合しかつ油圧が排出されることにより解放する油圧式の摩擦係合機構との間に設けられて前記摩擦係合機構に対する油圧の給排状態を切り替える係合圧給排切替弁を備えた摩擦係合機構の油圧制御装置において、
前記油圧発生源と前記係合圧給排切替弁との間を連通する第1油路の途中に設けられて該第1油路を開通させた状態と該第1油路を閉止させた状態とを選択的に設定する供給油路開閉弁を備えていることを特徴とする摩擦係合機構の油圧制御装置。
【請求項2】
前記供給油路開閉弁と前記係合圧給排切替弁との間を連通する第2油路の途中に設けられて該第2油路の油圧を蓄圧するもしくは該第2油路へ油圧を供給する蓄圧器を更に備えていることを特徴とする請求項1に記載の摩擦係合機構の油圧制御装置。
【請求項3】
前記蓄圧器の使用下限圧が前記摩擦係合機構を作動させる際に最小限必要な作動最小圧と同等の圧力となり、かつ、前記蓄圧器の使用上限圧が前記摩擦係合機構を係合させる際に必要な係合必要圧以上の圧力となり、なおかつ、前記摩擦係合機構が係合されかつ前記供給油路開閉弁が閉じられた状態における前記第2油路の油圧が前記使用上限圧と前記係合必要圧との間の圧力となるように、前記蓄圧器の圧力特性が設定されていることを特徴とする請求項2に記載の摩擦係合機構の油圧制御装置。
【請求項4】
前記供給油路開閉弁は、弁座のシート面に押し付けられる弁体を駆動することにより流路の開閉を行うポペット弁を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の摩擦係合機構の油圧制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−64280(P2011−64280A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216180(P2009−216180)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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