説明

摩擦帯電性評価装置

【課題】試験布帛と摩擦布との摩擦により試験布帛の摩擦帯電性を評価する装置であって、試験布帛に蓄積された静電気を視覚的、触覚的に体感できる摩擦帯電性評価装置を提供する。
【解決手段】試験布帛と摩擦布との摩擦により発生する試験布帛の摩擦帯電性を評価する装置であって、摩擦布が貼り合わされた回転枠体1と試験布帛の固定部材8とを備え、前記回転枠体1が回転する際に前記摩擦布と前記試験布帛とが接触する位置に、前記試験布帛が取り付けられていることを特徴とする摩擦帯電性評価装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験布帛と摩擦布との摩擦により試験布帛の摩擦帯電性を評価する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、試験布帛と摩擦物との摩擦により試験布帛の摩擦帯電性を評価する装置としては、水平に設置された試験布帛と可動式摩擦物とを摩擦させる装置や、回転ドラムに取付けられた試験布帛と固定された摩擦布とを摩擦させる装置などが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、非特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、これらの装置では摩擦後においても試験布帛が摩擦物に接触しているため試験布帛に蓄積された静電気が除電されてしまい、静電気を視覚的、触覚的に体感できるものではなかった。
【0004】
【特許文献1】特開平1−216264号公報
【特許文献2】実開平5−92756号公報
【非特許文献1】「繊維工学[VI]最終繊維製品の製造と性能」の第319〜320ページ社団法人日本繊維機械学会 平成9年10月31日印刷発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、試験布帛と摩擦布との摩擦により試験布帛の摩擦帯電性を評価する装置であって、試験布帛に蓄積された静電気を視覚的、触覚的に体感できる摩擦帯電性評価装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、回転枠体に摩擦布を貼り付け、該回転枠体の回転中にのみ試験布帛と摩擦布とを接触させ、回転の停止後は試験布帛と摩擦布とを非接触とすることにより、試験布帛に蓄積された静電気が除電されず、試験布帛に蓄積された静電気を視覚的、触覚的に体感できることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0007】
かくして、本発明によれば「試験布帛と摩擦布との摩擦により発生する試験布帛の摩擦帯電性を評価する装置であって、摩擦布が貼り合わされた回転枠体1と試験布帛の固定部材8とを備え、前記回転枠体1が回転する際に前記摩擦布と前記試験布帛とが接触する位置に、前記試験布帛が取り付けられていることを特徴とする摩擦帯電性評価装置。」が提供される。
【0008】
その際、前記回転枠体1が2〜6個の円筒3を有し、かつ該円筒3に摩擦布が貼り合わされていることが好ましい。また、前記回転枠体1がハンドル4により手動で回転されることが好ましい。また、前記試験布帛を固定する固定部材8が弾性体であることが好ましい。その際、前記弾性体がスプリングであることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、試験布帛と摩擦布との摩擦により試験布帛の摩擦帯電性を評価する装置であって、試験布帛に蓄積された静電気を視覚的、触覚的に体感できるため、衣服の着用時に近い静電気の評価が可能な、布帛の摩擦帯電性評価装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の摩擦帯電性評価装置には、摩擦布が貼り合わされた回転枠体1が含まれる。かかる回転枠体1において、前記回転枠体1が2〜6個(好ましくは2〜4個、特に好ましくは2個)の円筒3を有し、かつ該円筒3に摩擦布が貼り合わされていることが好ましい。
【0011】
ここで、前記円筒3の寸法としては特に限定されないが、直径(外径)が10〜60mm、長さが100〜600mmの範囲内であることが好ましい。また、該円筒3の材質としてはアクリル円筒であることが好ましい。かかる円筒3に貼り合せる摩擦布としては、ウール標準布など公知の摩擦布でよい。また、摩擦布を円筒3に貼り付ける方法は特に限定されず、接着剤や両面テープなど公知の方法でよい。
【0012】
前記円筒3は図1に示すように、連結部材5により連結されている。かかる連結部材5の寸法としては特に限定されないが、巾10〜100mm、長さ100〜300mm、厚さ3〜8mmの範囲が好ましい。特に、巾と長さとの比(長さ/巾)が3〜10の範囲内であると、回転枠体の回転中のみ試験布帛と摩擦布とを接触させ、回転の停止後は試験布帛と摩擦布とを非接触とすることができ、特に好ましい。また、該連結部材5の材質としてはアクリル板であることが好ましい。なお、連結部材5は、通常円筒3の両端に1個ずつ合計2個用いられる。
【0013】
前記連結部材5の中央部には孔があけられており、回転軸6が通されている。かかる回転軸6としては丸断面であり、その材質としては鉄またはステンレスが好ましい。
かかる回転軸6は、筐体7にあけられた円孔9により支持されている。回転軸6の回転により、該回転軸6を中心にして前記連結部材5および円筒3が回転する。その際、回転軸6は電動式で回転させてもよいが、図1に示すように、回転軸6の端部にハンドル4を取付けて手動式で回転させることが好ましい。
【0014】
本発明の摩擦帯電性評価装置において、前記回転枠体1が回転する際に前記摩擦布と接触する位置に試験布帛2が取付けられており、回転時にだけ前記摩擦布と試験布帛2とが摩擦し、試験布帛に静電気が蓄積される。そして、回転の停止時には、図1に示すように摩擦布と試験布帛2とを非接触とすることができるので、試験布帛に蓄積した静電気が除電されることがない。
【0015】
ここで、試験布帛2の寸法は限定されないが、巾50〜150mm、長さ300〜800mmの範囲が好ましい。また、試験布帛2の枚数は限定されず、図1に示すように2枚でもよいし、さらには3枚以上でもよい。
【0016】
また、試験布帛2は図1に示すようにスプリングなどの弾性体からなる固定部材8を介して固定されていると、回転枠体1が回転する際、摩擦布が貼り付けられた円筒3が試験布帛2に接触してもスプリングが引き伸ばされるため、回転枠体1の回転が容易となり好ましい。
【0017】
また、本発明の摩擦帯電性評価装置において、筐体7の寸法は特に限定されないが、巾300〜600mm、高さ250〜650mm、奥行き150〜350mmの範囲内であることが好ましい。また、図1のように前面1面があいていると、摩擦布と試験布帛2とを摩擦した後、試験布帛2を容易に触ることができ好ましい。さらに、側面または背面からも筐体の中が見えるよう、筐体7の材質を無色透明アクリル板とすることが好ましい。
【0018】
本発明の摩擦帯電性評価装置において、摩擦布と試験布帛2とを摩擦した後、試験布帛2には静電気が蓄積されており、また、試験布帛2に手をかざすと静電気により、試験布帛2が手に吸い付く現象を触角で体感することができる。また、塵埃等を試験布帛2に近づけると塵埃がひきつけられ、視覚でも静電気を体感することができる。
なお、図1には、円筒3が2個図示されているが、本発明の摩擦帯電性評価装置において、円筒3の個数が2個に限定されないことはいうまでもない。
【実施例】
【0019】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0020】
[実施例1]
厚さ5mmの無色透明アクリル板を用いて、巾400mm、高さ450mm、奥行き250mmにて、図1のように前面1面のみが空いた筐体7を作製した。前記筐体7の前面より奥行き方向に60mm、両側面より50mm、150mmの位置に試験布帛2を固定するための金属リング固定具を、上面および底面にそれぞれ4個設置した。さらに、奥行き方向に130mm、高さ250mmの位置に回転軸6を支持するため、直径13mmの円孔を両側面に設けた。
【0021】
次いで、円筒3として直径30mm、長さ350mmの円筒アクリルを用い、該アクリル円筒2個の両端に、厚さ5mm、巾35mm、長さ200mmのアクリル板(連結部材5)を1個ずつ取り付け、さらに両側面のアクリル板(連結部材5)の中心部にステンレス棒(回転軸6)を取り付けた。そして、該ステンレス棒(回転軸6)を前記筐体7の円孔に取り付けた後、ステンレス棒(回転軸6)の一方端にL字型ハンドル4を取り付け、容易に手動で回転できるようにした。また、2個の円筒3には、摩擦布として公知のウール標準布を巻きつけた。
試験布帛2は、あらかじめ巾100mm、長さ500mmに切断したものを、直径10mm、長さ150mmの木円筒に両側から巻きつけ、若干の弛みを与えた状態で、上部を金属リングに固定し、下部を木円筒と金属リングをスプリング(固定部材8)にて固定した。
【0022】
これにより、ローラーが回転した際、スプリングの弾性により、容易に回転枠体1が回転可能となり、かつ、回転枠体1の回転停止時には、回転枠体1に貼り合わされた摩擦布が試験布帛2に直接触れることはなく、試験布帛2に手をかざすと静電気により、試験布帛2が手に吸い付く現象を触角で体感することができる。また、塵埃等を試験布帛2に近づけると塵埃がひきつけられ、視覚でも静電気を体感することができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明によれば、試験布帛と摩擦布との摩擦により試験布帛の摩擦帯電性を評価する装置であって、試験布帛に蓄積された静電気を視覚的、触覚的に体感できるため、衣服の着用時に近い静電気の評価が可能な、布帛の摩擦帯電性評価装置が得られ、その工業的価値は極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る摩擦帯電性評価装置を例示する図である。
【図2】図1に従い製作した摩擦帯電性評価装置を写真撮影したものである。
【符号の説明】
【0025】
1:回転枠体
2:試験布帛
3:円筒
4:ハンドル
5:連結部材
6:回転軸
7:筐体
8:固定部材
9:円孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験布帛と摩擦布との摩擦により発生する試験布帛の摩擦帯電性を評価する装置であって、摩擦布が貼り合わされた回転枠体1と試験布帛の固定部材8とを備え、前記回転枠体1が回転する際に前記摩擦布と前記試験布帛とが接触する位置に、前記試験布帛が取り付けられていることを特徴とする摩擦帯電性評価装置。
【請求項2】
前記回転枠体1が2〜6個の円筒3を有し、かつ該円筒3に摩擦布が貼り合わされてなる、請求項1に記載の摩擦帯電性評価装置。
【請求項3】
前記回転枠体1がハンドル4により手動で回転される、請求項1または請求項2に記載の摩擦帯電性評価装置。
【請求項4】
前記試験布帛を固定する固定部材8が弾性体である、請求項1〜3のいずれかに記載の摩擦帯電性評価装置。
【請求項5】
前記弾性体がスプリングである、請求項4に記載の摩擦帯電性評価装置。

【図1】
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【図2】
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