説明

摩擦攪拌接合方法

【課題】本発明は、接合部位の外観を優れるようにする摩擦攪拌接合方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る摩擦攪拌接合方法は、摩擦面を有する接合工具を提供するステップと、第一表面層及び第一接合部を有する第一部品を提供するステップと、第二表面層及び第二接合部を有する第二部品を提供するステップと、前記第一部品の第一接合部と第二部品の第二接合部とを対接させるステップと、前記接合工具の摩擦面を第一部品の第一表面層及び第二部品の第二表面層のうち少なくとも一方に圧接し、前記接合工具を回転させながら移動することにより、前記接合工具の摩擦面は第一部品の第一表面層及び第二部品の第二表面層のうち少なくとも一方を摩擦攪拌して熱量を生じ、前記熱量は第一部品の第一接合部及び第二部品の第二接合部に伝達されて第一接合部及び第二接合部を塑性状態に加熱して、前記第一部品及び第二部品を接合するステップとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦攪拌接合方法に関し、特に攪拌ピン(突起部)を備えない攪拌工具で摩擦攪拌接合する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
摩擦攪拌接合方法とは、板材を対接させて接合する場合、回転する攪拌工具で接合部位の材料を攪拌して接合することである。前記摩擦攪拌接合方法は、その簡単性及び優れた生産性によって徐々にその適用範囲が拡大している。前記摩擦攪拌接合方法において、攪拌工具の耐久性に対して要求が高いので、アルミニウム(Al)合金の接合に多く用いられる。しかし、接合面が製品の外表面である場合、接合加工によって製品の外表面に攪拌痕跡又はバリ(Burr)が残るので、切削加工又は研磨加工を行って接合ワークの表面層を除去しなければならない。
【0003】
前記表面層を除去して平滑な接合面を得たとしても、撹拌過程中で撹拌部分に比較的大きい塑性流動が重複するので、撹拌された部位の金属組織が母材と大きく異なることになる。これによって、後続のアルミニウム合金に多用されるアルマイト処理を行う場合、加工面に痕跡が残る。前記痕跡は、機械加工によって除去されるが、アルマイト処理によっては除去されない。即ち、通常のアルマイト処理に化学エッチング効果が付加されるので、前記アルマイト処理によって金属組織の変化が現れてしまう。即ち摩擦攪拌による塑性流動性によって攪拌される部分の材料の金属組織は機械的に改変されて、攪拌される部分の材料の金属組織は母材と大きく異なる。従って、前記摩擦攪拌接合されたワークに対してアルマイト処理を行うと、攪拌された部分の表面に生じる微細な凹凸によって、接合部を視認できる。
【0004】
さらに、接合部材を炉内に放置し、再結晶温度以上の温度まで加熱して、接合部分の金属組織の局部的な差異を除去する焼鈍などの熱処理を加えても、熱処理条件が適切でなければ、再結晶の時攪拌部位に存在する差異が現われ、全域にわたり金属組織を均一化することができない。
【0005】
上述したように、金属組織が相異の接合部分にアルマイト処理を行うと、その金属組織の差異が接合部材の表面から表現される。即ち、同じ成分の金属でも製造方法(圧延、押し出し、鍛造、鋳造、焼結)が異なれば、金属組織は異なるため、接合方法と関係無しに、接合部材に対してアルマイト処理を実施すれば、接合部位を境界とする差異が表現される。さらに摩擦攪拌によって接合された接合部材の接合部位の金属組織が母材と大きく異なるので、接合部材に対してアルマイト処理を実施すれば、接合部位は母材に対して差異が大きい。
【0006】
上述したように、アルマイト処理を実施する場合、母材の製造方法及びその金属組織を考慮しなければならなく、接合部位を完全に視認できない接合は、理論的にも実現し難い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上の問題点に鑑みて、本発明は、接合部位の外観を優れるようにする摩擦攪拌接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記問題を解決するために、本発明に係る摩擦攪拌接合方法は、摩擦面を有する接合工具を提供するステップと、第一表面層及び第一接合部を有する第一部品を提供するステップと、第二表面層及び第二接合部を有する第二部品を提供するステップと、前記第一部品の第一接合部と前記第二部品の第二接合部とを対接させるステップと、前記接合工具の摩擦面を前記第一部品の第一表面層及び前記第二部品の第二表面層のうちの少なくとも一方に圧接し、前記接合工具を回転させながら移動することにより、前記接合工具の摩擦面は前記第一部品の第一表面層及び前記第二部品の第二表面層のうちの少なくとも一方を摩擦攪拌して熱量を生じさせ、前記熱量は前記第一部品の第一接合部及び前記第二部品の第二接合部に伝達されて前記第一接合部及び前記第二接合部を塑性状態に加熱して、前記第一部品及び前記第二部品を接合するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る摩擦攪拌接合方法において、接合工具で第一部品及び第二部品の表面層だけを摩擦攪拌して熱量を産生し、且つ前記熱量を前記第一部品及び前記第二部品の接合部に伝達して前記第一部品及び前記第二部品を接合するため、前記第一部品及び前記第二部品の表面層の材料だけに塑性流動が発生し、前記第一部品及び前記第二部品の接合部の材料には流動が発生しない。従って、前記第一接合部及び前記第二接合部の材料は組織の変化が極めて少なく、本発明に係る方法による製品は優れた外観を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る摩擦攪拌接合方法に採用される接合工具の斜視図である。
【図2】図1に示す接合工具の摩擦面の構造図である。
【図3】図1に示す接合工具の摩擦面の他の構造図である。
【図4】本発明の第一実施例に係る第一部品及び第二部品を示す図である。
【図5】図1に示す接合工具で図4に示す第一部品及び第二部品を接合する過程を示す図である。
【図6】本発明の第二実施例に係る第一部品及び第二部品を示す図である
【図7】図1に示す接合工具で図6に示す第一部品及び第二部品を接合する過程を示す図である。
【図8】本発明の第三実施例に係る第一部品及び第二部品を示す図である。
【図9】図1に示す接合工具で図8に示す第一部品及び第二部品を接合する過程を示す図である。
【図10】図8に示す第一部品と第二部品とが接合された構造を示す図である。
【図11】本発明の第四実施例に係る第一部品及び第二部品を示す図である。
【図12】図1に示す接合工具で図11に示す第一部品及び第二部品を接合する過程を示す図である。
【図13】本発明の第五実施例に係る第一部品、第二部品及び溶接部材を示す図である。
【図14】図13に示す第一部品と第二部品とが接合された構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて、本発明に係る摩擦攪拌接合方法について詳細に説明する。
【0012】
図1、図4及び図5を参照すると、本発明の第一実施例に係る摩擦攪拌接合方法は、接合工具10を採用して第一部品20及び第二部品30に対して摩擦攪拌をして、前記第一部品20と前記第二部品30とを接合する。
【0013】
図1乃至図3を参照すると、前記接合工具10は、実質的に柱状体であり、その一端面は略平面状の摩擦面11である。前記摩擦面11には、前記接合工具10の内部へ凹入された複数の凹部13が形成されている。前記凹部13の形状は、螺旋状又は前記接合工具10の軸中心を共通の起点として放射状に配列される複数の円弧である。作業時の前記接合工具10の回転方向は、前記凹部13の中心から周縁へ延伸する方向(例えば、図2及び図3の矢印の方向)と同じである。
【0014】
図4及び図5を参照すると、前記第一部品20は、第一表面層21と、前記第一表面層21に隣接され且つ前記第一表面層21に垂直する平面である第一接合部23と、を備える。
【0015】
前記第二部品30は、第二表面層31と、前記第二表面層31に隣接され且つ前記第二表面層31に垂直する平面である第二接合部33と、を備える。
【0016】
前記第一部品20と前記第二部品30とを接合する時、先ず、前記第一部品20の第一接合部23と前記第二部品30の第二接合部33とを対接させてから、前記第一部品20及び前記第二部品30を固定させる。前記第一部品20の第一表面層21と前記第二部品30の第二表面層31は、同じ平面に置かれる。前記第一部品20の第一表面層21の接合辺縁と前記第二部品30の第二表面層31の接合辺縁とが接合する箇所に接合線29が形成される。
【0017】
次に、前記接合工具10の摩擦面11を、前記第一部品20の第一表面層21と前記第二部品30の第二表面層31とに圧接(即ち、前記接合線29の上に圧接)してから、前記接合工具10を前記接合線29の延伸方向を沿って回転及び移動させて、前記第一部品20の第一表面層21及び前記第二部品30の第二表面層31を摩擦攪拌する。前記摩擦攪拌によって産生される熱量は、摩擦攪拌されない前記第一接合部23及び前記第二接合部33に伝達されて、前記第一接合部23及び前記第二接合部33を塑性状態に加熱して、前記第一部品20及び前記第二部品30を無間隙に接合させる。
【0018】
前記接合工具10の回転方向は、前記凹部13の摩擦面11の中心から周縁へ延伸する方向と同じである。前記接合工具10を、前記摩擦面11が前記第一部品20の第一表面層21及び前記第二部品30の第二表面層31にやや挿入された状態で高速回転させるとともに低速移動させて、前記第一部品20及び前記第二部品30に対して摩擦攪拌接合を行う。前記接合工具10の回転速度S、移動速度V及び前記接合工具10の先端が前記第一部品20の第一表面層21及び前記第二部品30の第二表面層31に挿入される深さHは、前記第一部品20及び前記第二部品30の接合部位の厚さ及び材料、前記接合工具10のサイズ及び材料等によって決定される。即ち、前記第一部品20及び前記第二部品30の部分の材料だけが塑性流動状態になるとともに、十分な熱量を産生して攪拌されない部分に伝達して、前記第一部品20の第一接合部23と前記第二部品30の第二接合部33とが接合できさえすれば良い。本実施例において、前記接合工具10の回転速度Sは7000回/分であり、移動速度Vは500mm/分であり、前記第一表面層21及び前記第二表面層31の摩擦攪拌される厚さHは0.15mmである。
【0019】
図1、図6及び図7を参照すると、本発明の第二実施例に係る摩擦攪拌接合方法は、接合工具10を採用して第一部品40及び第二部品50に対して摩擦攪拌して、前記第一部品40と前記第二部品50とを接合する。本実施例の接合工具10は、第一実施例の接合工具10と同じである。
【0020】
前記第一部品40は、第一表面層41と、前記第一表面層41に対して垂直する平面である第一接合部43と、前記第一表面層41と前記第一接合部43とを連結する第一斜面45と、を備える。
【0021】
前記第二部品50は、第二表面層51と、前記第二表面層51に対して垂直する平面である第二接合部53と、前記第二表面層51と前記第二接合部53とを連結する第二斜面55と、を備える。
【0022】
前記第一部品40と前記第二部品50とを接合する時、先ず、前記第一部品40の第一接合部43と前記第二部品50の第二接合部53とを対接させてから、前記第一部品40及び前記第二部品50を固定する。前記第一部品40の第一表面層41と前記第二部品50の第二表面層51とは、同じ平面に置かれ、前記第一斜面45と前記第二斜面55とは凹部49を形成し、前記凹部49の底部には接合線59が形成される。また、前記斜面は、前記第一部品40と前記第二部品50のうちの一方だけに設置することができ、前記凹部は、任意形状とすることができる。
【0023】
次に、前記接合工具10の摩擦面11を、前記第一部品40の第一表面層41と前記第二部品50の第二表面層51とに圧接(即ち、前記凹部49の上に圧接)してから、前記接合工具10を前記接合線59の延伸方向に沿って回転及び移動させて、前記第一部品40の第一表面層41及び前記第二部品50の第二表面層51を摩擦攪拌する。前記摩擦攪拌によって産生される熱量は、摩擦攪拌されない前記第一接合部43及び前記第二接合部53に伝達されて、前記第一接合部43及び前記第二接合部53を塑性状態に加熱して、前記第一部品40及び前記第二部品50を無間隙に接合させる。また、摩擦攪拌によって塑性流動された第一部品40の材料及び第二部品50の材料が前記凹部49に充填されて、前記第一部品40と前記第二部品50との接合が堅固になる。
【0024】
前記接合工具10の回転方向は、前記凹部13の摩擦面11の中心から周縁へ延伸する方向と同じである。前記接合工具10を、前記摩擦面11が前記第一部品40の第一表面層41及び前記第二部品50の第二表面層51にやや挿入された状態で高速回転させるとともに低速移動させて、前記第一部品40及び前記第二部品50に対して摩擦攪拌接合を行う。前記接合工具10の回転速度S、移動速度V及び前記接合工具10の先端が前記第一部品40の第一表面層41及び前記第二部品50の第二表面層51に挿入される深さHは、前記第一部品40及び前記第二部品50の接合部位の厚さ及び材料、前記接合工具10のサイズ及び材料等によって決定される。即ち、前記第一部品40及び前記第二部品50の部分の材料だけが塑性流動状態になるとともに、十分な熱量を産生して攪拌されない部分に伝達して、前記第一部品40の第一接合部43と前記第二部品50の第二接合部53とが接合できさえすれば良い。本実施例において、前記接合工具10の回転速度Sは7000回/分であり、移動速度Vは500mm/分であり、前記第一表面層41及び前記第二表面層51の摩擦攪拌される厚さHは0.15mmである。
【0025】
図1、図8、図9及び図10を参照すると、本発明の第三実施例に係る摩擦攪拌接合方法は、接合工具10を採用して第一部品60及び第二部品70に対して摩擦攪拌して、前記第一部品60と前記第二部品70とを接合する。本実施例の接合工具10は、第一実施例の接合工具10と同じである。
【0026】
前記第一部品60は、第一表面層61と、前記第一表面層61に隣接され且つ前記第一表面層61に対して傾斜された平面である第一接合部63と、を備える。
【0027】
前記第二部品70は、第二表面層71と、前記第二表面層71に隣接され且つ前記第二表面層71に対して傾斜された平面である第二接合部73と、を備える。
【0028】
前記第一部品60と前記第二部品70とを接合する時、先ず、前記第一部品60の第一接合部63と前記第二部品70の第二接合部73とを対接させてから、前記第一部品60及び前記第二部品70を固定する。前記第一部品60の第一表面層61と前記第二部品70の第二表面層71とは任意の角度を成す。本実施例において、前記第一部品60の第一表面層61と前記第二部品70の第二表面層71とが成す角度は、90度である。即ち、前記第一部品60と前記第二部品70とは直交する。前記第一部品60の第一表面層61の接合辺縁と前記第二部品70の第二表面層71の接合辺縁とが接合する箇所には接合線69が形成されている。前記接合線69は、前記第一部品60と前記第二部品70とによって形成される摩擦攪拌製品300の辺角線と重畳される。
【0029】
前記摩擦攪拌接合方法は、摩擦攪拌接合製品300に対する後処理加工をさらに含む。例えば、前記第一部品60と前記第二部品70とを接合した後、前記第一部品60の第一表面層61及び前記第二部品70の第二表面層71の組織が変化した部分(摩擦攪拌された部分)を除去して、組織が変化しない部分を露出させる。これによって、陽極酸化などのような後続の処理を実施しても、接合された製品300は優れた外観を有する。即ち、摩擦攪拌接合製品300の外観において、色差などのような欠陥を低減するか、又は欠陥を避けることができる。また、前記接合線69と前記摩擦攪拌接合製品300の辺角線とが重畳されるので、接合部位を視認し難い。
【0030】
また、第一実施例及び第二実施例における第一部品20、40と第二部品30、50とを接合した後、上述したような後処理加工(組織が変化した部分の除去及び陽極酸化)を行うことができる。
【0031】
前記接合工具10の回転方向は、前記凹部13の摩擦面11の中心から周縁へ延伸する方向と同じである。前記接合工具10を、前記摩擦面11が前記第一部品60の第一表面層61にやや挿入された状態で高速回転させるとともに低速移動させて、前記第一部品60及び前記第二部品70に対して摩擦攪拌接合を行う。前記接合工具10の回転速度S、移動速度V及び前記接合工具10の先端が前記第一部品60の第一表面層61に挿入される深さHは、前記第一部品60及び前記第二部品70の接合部位の厚さ及び材料、前記接合工具10のサイズ及び材料等によって決定される。即ち、前記第一部品60の部分の材料だけが塑性流動状態になるとともに、十分な熱量を産生して、攪拌されない部分に伝達して、前記第一部品60の第一接合部63と前記第二部品70の第二接合部73とが接合できさえすれば良い。本実施例において、前記接合工具10の回転速度Sは7000回/分であり、移動速度Vは500mm/分であり、前記第一表面層61の摩擦攪拌される厚さHは0.15mmである。
【0032】
本実施例において、前記第一部品60と前記第二部品70とを接合する時、補助的部材200を採用することができる。前記補助的部材200は、端面201と、前記端面201に隣接する第三表面層203と、を備える。前記補助的部材200の端面201を、前記補助的部材200の第三表面層203と前記第一部品60の第一表面層61とが同じ平面に置かれるように、前記第二部品70の第二表面層71に当接させる。
【0033】
前記補助的部材200は、摩擦面積を増加させるので、摩擦による熱量も増加され、且つ前記熱量が前記第一部品60の第一接合部63及び前記第二部品70の第二接合部73に伝達されることによって、前記第一部品60と前記第二部品70とはより十分に接合される。
【0034】
図1、図11及び図12を参照すると、本発明の第四実施例に係る摩擦攪拌接合方法は、接合工具10を採用して第一部品80及び第二部品90に対して摩擦攪拌して、前記第一部品80と前記第二部品90とを接合する。本実施例の接合工具10は、第一実施例の接合工具10と同じである。
【0035】
前記第一部品80は、第一表面層81と、前記第一表面層81に対して傾斜される平面である第一接合部83と、前記第一表面層81と前記第一接合部83とを連結する側面85と、を備える。
【0036】
前記第二部品90は、第二表面層91と、前記第二表面層91に隣接され且つ前記第二表面層91に対して傾斜される平面である第二接合部93と、を備える。
【0037】
前記第一部品80と前記第二部品90とを接合する時、先ず、前記第一部品80の第一接合部83と前記第二部品90の第二接合部93とを対接させてから、前記第一部品80及び前記第二部品90を固定する。前記第一部品80の側面85と前記第二部品90の第二表面層91は、同じ平面に置かれ、前記第一部品80の第一表面層81と前記第二部品90の第二表面層91は任意の角度を成す。本実施例において、前記第一部品80の第一表面層81と前記第二部品90の第二表面層91とが成す角度は、90度である。即ち、前記第一部品80と前記第二部品90は直交する。前記第一接合部83と前記第二接合部93は、前記側面85と前記第二表面層91との間で接合線89を形成する。
【0038】
次に、前記接合工具10の摩擦面11を、前記第一部品80の側面85に近接するように前記第一部品80の第一表面層81に圧接してから、前記接合工具10を前記接合線89の延伸方向に沿って回転及び移動させて、前記第一部品80の第一表面層81を摩擦攪拌する。前記摩擦攪拌によって産生される熱量は、摩擦攪拌されない前記第一接合部83及び前記第二接合部93に伝達されて、前記第一接合部83及び前記第二接合部93を塑性状態に加熱して、前記第一部品80及び前記第二部品90は無間隙に接合される。
【0039】
前記接合工具10の回転方向は、前記凹部13の摩擦面11の中心から周縁へ延伸する方向と同じである。前記接合工具10を、前記摩擦面11が前記第一部品80の第一表面層81にやや挿入された状態で高速回転させるとともに低速移動させて、前記第一部品80及び前記第二部品90に対して摩擦攪拌接合を行う。前記接合工具10の回転速度S、移動速度V及び前記接合工具10の先端が前記第一部品80の第一表面層81に挿入される深さHは、前記第一部品80及び前記第二部品90の接合部位の厚さ及び材料、前記接合工具10のサイズ及び材料等によって決定される。即ち、前記第一部品80の部分の材料だけが塑性流動状態になるとともに、十分な熱量を産生して、攪拌されない部分に伝達して、前記第一部品80の第一接合部83と前記第二部品90の第二接合部93とが接合できさえすれば良い。
【0040】
また、前記第一部品80と前記第二部品90とを接合してから、摩擦攪拌によって組織が変化された部分を除去することができる。
【0041】
前記第一部品20、40、60、80及び前記第二部品30、50、70、90の材料は、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金、銅合金、ゴムなどのような低熔点の材料である。前記第一部品20、40、60、80及び前記第二部品30、50、70、90の形状は限定されない。第一接合部23、43、63、83及び第二接合部33、53、73、93は、面、線又は点とすることができる。
【0042】
本発明に係る摩擦攪拌接合方法は、主に接合強度が高くない外観製品の接合に適用される。従って、前記表面層21、31、41、51、61、81だけに対して摩擦攪拌して接合する方式は、一般的に外観製品の強度要求を満足することができる。
【0043】
図13及び図14に示したように、より高い接合強度を得るために、前記第一部品60の第一接合部63及び前記第二部品70の第二接合部73に別々に装着溝67、77を設置し、且つ前記装着溝67、77に半田材(Solder)のような低熔点の溶接部材400を装着することができる。前記溶接部材400の熔点は、前記第一部品60及び前記第二部品70より低い。本発明に係る摩擦攪拌接合方法は、熱量の伝達によって部品を接合し、摩擦攪拌部位から遠く離れている部位に伝達される熱量が比較的低いので、前記溶接部材400を収納する装着溝67、77を摩擦撹拌部位から遠く離れた箇所に設置して、接合強度を高める。
【0044】
前記第一装着溝67は、前記第一接合部63の前記第一表面層61から離れている一端に形成されている。前記第二装着溝77は、前記第二接合部73の前記第二表面層71から離れている一端に形成され、且つ前記第一装着溝67と配合して装着部を構成する。
【0045】
前記第一部品60と前記第二部品70とを接合する時、前記溶接部材400は前記装着部に装着され、前記第一部品60の第一表面層61を摩擦攪拌することによって産生される熱量が前記第一装着溝67及び前記第二装着溝77に伝達され、前記第一装着溝67及び前記第二装着溝77によって構成される装着部に装着された前記溶接部材400の熔点が低いので、溶接部材400は容易に流動状態になる。これによって、前記第一部品60と前記第二部品70との接合強度は優れたものとなる。また、前記第一部品60及び前記第二部品70のうちのいずれか一方に装着部を設置することができる。また、前記第一部品60及び前記第二部品70にそれぞれ装着部を設置することもできる。
【0046】
本発明に係る摩擦攪拌接合方法において、接合される製品のサイズは比較的小さいので、接合に用いられる接合工具10のサイズも比較的小さい。そして、製品に対して部分的な連続加工を行い、必要とされる加工動力及び加工圧力が比較的小さいので、加工設備は、構造が簡単であって、比較的廉価である。
【0047】
また、本発明に係る摩擦攪拌接合方法に用いられる接合工具10を汎用の機械加工センター(図示せず)に応用することができる。即ち、前記第一部品20、40、60、80及び前記第二部品30、50、70、90に対して予め処理を行う時、専門設備を必要とせず汎用性に優れ、前記第一部品20、40、60、80と前記第二部品30、50、70、90とを摩擦攪拌接合してから、同じ機械加工センターで後処理を行うので、生産効率が高くなる。
【0048】
また、本発明に係る摩擦撹拌接合方法において、平面である摩擦面11を有する接合工具10を採用し、前記接合工具10で製品の表面に対して加工をするので、結合部位が曲面又は曲線でもその接合加工を良好に完成することができる。
【0049】
以上、本発明の好適な実施例について詳細に説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形又は修正が可能であり、該変形又は修正も又、本発明の特許請求の範囲内に含まれるものであることは、いうまでもない。
【符号の説明】
【0050】
10 接合工具
11 摩擦面
13 凹部
20 第一部品
21 第一表面層
23 第一接合部
29 接合線
30 第二部品
31 第二表面層
33 第二接合部
40 第一部品
41 第一表面層
43 第一接合部
45 第一斜面
49 凹部
50 第二部品
51 第二表面層
53 第二接合部
55 第二斜面
59 接合線
60 第一部品
61 第一表面層
63 第一接合部
67 第一装着溝
69 接合線
70 第二部品
71 第二表面層
73 第二接合部
77 第二装着溝
80 第一部品
81 第一表面層
83 第一接合部
85 側面
89 接合線
90 第二部品
91 第二表面層
93 第二接合部
200 補助的部材
201 端面
203 第三表面層
300 摩擦攪拌接合製品
400 溶接部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦面を有する接合工具を提供するステップと、
第一表面層及び第一接合部を有する第一部品を提供するステップと、
第二表面層及び第二接合部を有する第二部品を提供するステップと、
前記第一部品の第一接合部と前記第二部品の第二接合部とを対接させるステップと、
前記接合工具の摩擦面を、前記第一部品の第一表面層及び前記第二部品の第二表面層のうちの少なくとも一方に圧接し、前記接合工具を回転させながら移動することにより、前記接合工具の摩擦面は、前記第一部品の第一表面層及び前記第二部品の第二表面層のうちの少なくとも一方を摩擦攪拌して熱量を生じさせ、前記熱量は前記第一部品の第一接合部及び前記第二部品の第二接合部に伝達されて前記第一接合部及び前記第二接合部を塑性状態に加熱して、前記第一部品及び前記第二部品を接合するステップと、
を備えることを特徴とする摩擦攪拌接合方法。
【請求項2】
前記第一部品は、前記第一表面層と前記第一接合部とを連結する第一斜面をさらに備え、前記接合工具で前記第一部品の第一表面層及び前記第二部品の第二表面層のうちの少なくとも一方を摩擦攪拌する時、摩擦攪拌による前記第一表面層及び前記第二表面層の材料が前記第一斜面に充填されることを特徴とする請求項1に記載の摩擦攪拌接合方法。
【請求項3】
前記第二部品は、前記第二表面層と前記第二接合部とを連結する第二斜面をさらに備え、前記接合工具で前記第一部品の第一表面層及び前記第二部品の第二表面層のうちの少なくとも一方を摩擦攪拌する時、摩擦攪拌による前記第一表面層及び前記第二表面層の材料が、前記第一斜面と前記第二斜面とが構成する凹部に充填されることを特徴とする請求項2に記載の摩擦攪拌接合方法。
【請求項4】
前記第一表面層と前記第二表面層との成す角度が0度より大きく180度より小さくなるように、前記第一部品の第一接合部と前記第二部品の第二接合部とを対接させて、前記接合工具の摩擦面を前記第一部品の第一表面層に圧接することを特徴とする請求項1に記載の摩擦攪拌接合方法。
【請求項5】
前記第一部品の第一接合部は、前記第一表面層に傾斜する斜面であり、前記第二部品の第二接合部は、前記第二表面層に傾斜する斜面であることを特徴とする請求項4に記載の摩擦攪拌接合方法。
【請求項6】
前記第一接合部の前記第一表面層から離れている一端に第一装着溝が設置され、前記第一装着溝に、熔点が前記第一部品より低い溶接部材を装着することを特徴とする請求項1に記載の摩擦攪拌接合方法。
【請求項7】
前記第二接合部の前記第二表面層から離れている一端に第二装着溝が設置され、前記第一装着溝と前記第二装着溝は装着部を構成し、前記溶接部材は前記装着部内に装着されることを特徴とする請求項6に記載の摩擦攪拌接合方法。
【請求項8】
前記第一部品は、前記第一表面層と前記第一接合部とを連結する側面をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の摩擦攪拌接合方法。
【請求項9】
前記接合工具の摩擦面には、前記接合工具の内部へ凹入された複数の凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の摩擦攪拌接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−115846(P2011−115846A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90340(P2010−90340)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(503023069)鴻富錦精密工業(深▲セン▼)有限公司 (399)
【出願人】(305052584)ファインテック株式会社 (6)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】