説明

摩擦調整材料のナノ粒子を有する多孔質摩擦材料

【課題】連続スリップトルクコンバータとシフティングクラッチシステムとを有する連続トルクトランスミッションシステム用に、高い摩擦係数特性、耐ジャダ性、耐熱性を有する新しい摩擦材を提供する。
【解決手段】多孔質基材、少なくとも1つのタイプの樹脂材料、及び少なくとも1つのタイプのナノ粒子サイズの摩擦調整粒子を含む摩擦材料を開示する。樹脂材料は、基材全体にわたって実質的に均一に分散し、予め定められた量のナノ粒子サイズの摩擦調整材料の不連続層は、基材表面に多孔質上面を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質基材を含む第1の層すなわち下層と、摩擦調整材料のナノ粒子を含む少なくとも1つのタイプの摩擦調整粒子を含む第2の層すなわち上層とを有する多孔質摩擦材料に関する。本発明の摩擦材料は、高い摩擦係数特性、非常にロバストな耐シャダ特性及び極めて高い耐熱性を有する。本摩擦材料はまた、改良された強度、耐摩耗性及び耐ノイズ性を有する。
【背景技術】
【0002】
連続スリップトルクコンバータとシフティングクラッチシステムとを有する新しくかつ先進の連続トルクトランスミッションシステムが、自動車業界により開発されつつある。こうした新システムはしばしば、高エネルギー要件を伴う。従って、摩擦材料技術をも開発することで、こうした先進のシステムのますます増大しつつあるエネルギー要件を満たさなければならない。
【0003】
特に、新しく高性能で耐久性のある摩擦材料が必要である。新しい摩擦材料は、表面速度が約65m/秒にまでなるような高速度に耐えることができなければならない。また摩擦材料は、約1500psiまでの高フェーシングライニング圧力に耐えることができなければならない。また摩擦材料は、限定された潤滑条件下で有用であることも重要である。
【0004】
先進のシステムにおいて有用であるためには、摩擦材料は、耐久性がありかつ高い耐熱性を有しなければならない。摩擦材料は、高温で安定であり続けなければならないだけではなく、使用条件下で発生する高熱を迅速に放散できなければならない。
【0005】
新システムの係合及び切り離しの最中に高速度が生じているということは、摩擦材料は、係合の間じゅう終始比較的一定の摩擦を維持できなければならないということを意味する。摩擦係合が、広範囲の速度と温度とにわたって比較的一定であり、それにより、制動の最中の材料の“シャダリング”または1つのギヤから別のギヤへのパワーシフトの最中のトランスミッションシステムの“シャダリング”を最小にすることが重要である。また摩擦材料は、摩擦係合の間中、摩擦材料にノイズまたは“甲高い音”が生じないように、所望のトルク曲線形状を有することも重要である。
【0006】
特に、トランスミッションシステム及びトルクオンデマンドシステムは、主として燃料効率及び運転の快適さのために、スリッピングクラッチを取り入れている。こうしたシステム内部のスリップクラッチの役割は、車両発進装置の例えば湿式スタートクラッチからトルクコンバータクラッチまで変化する。動作条件によって、スリップクラッチは、次の3つの主要なクラスに区分することができる:(1)低圧及び高スリップ速度のクラッチの例えば湿式スタートクラッチ;(2)高圧及び低スリップ速度のクラッチの例えばコンバータクラッチ;並びに(3)極低圧及び低スリップ速度のクラッチの例えばニュートラルからアイドルのクラッチ。
【0007】
スリップクラッチの全ての用途に関わる主要な性能の関心事は、シャダの予防及び摩擦界面のエネルギー管理である。シャダの発生は、摩擦材料の摩擦特性、かみ合う面(mating surface)の硬さ及び粗さ、油膜の保持、潤滑剤の化学的性質及び相互作用、クラッチの動作条件、動力伝達装置の組み立て及びハードウェアの心合わせ、並びに動力伝達装置の汚染を含む多くの要因によるとすることができる。摩擦界面のエネルギー管理は、主として界面温度の制御と関係があり、ポンプ容量、油の流れの経路及び制御方法によって影響される。摩擦材料表面の設計も、界面エネルギー管理の効率に寄与する。
【0008】
以前には、温度安定性のためにアスベスト繊維を摩擦材料中に含ませていた。健康及び環境の問題が原因となって、アスベストはもはや使用されていない。より最近の摩擦材料においては、含浸用の紙または繊維材料を、フェノール樹脂またはフェノール変性樹脂類を用いて修正することで、摩擦材料中にアスベストの無いことを克服しようと試みてきた。しかしながらこうした摩擦材料は、発生した高熱を迅速に放散せず、かつ、現在開発中の高速度システム中に使用するために現在必要とされる、必要な耐熱性と満足の行く高摩擦係数性能とを有していない。
【0009】
Kearseyの米国特許第5,585,166号は、多孔質基体層(セルロース及び合成繊維、充填材並びに熱硬化性樹脂)及び多孔質摩擦層(熱硬化性樹脂中の不織布合成繊維)を有する多層摩擦ライニングを説明しており、ここで、摩擦層は基体層よりも高い多孔性を有する。
【0010】
Seitzの米国特許第5,083,650号参考文献は、多工程の含浸及び硬化方法を含む;すなわち、紙にコーティング組成物を含浸させ、炭素粒子を紙表面に置き、紙中のコーティング組成物を部分的に硬化し、第2のコーティング組成物を、部分的に硬化済みの紙に施用し、最後に両方のコーティング組成物を硬化する。
【0011】
様々な紙ベースの繊維質材料が、摩擦材料中に使用するために開発されており、これは、本発明における譲受人であるボーグワーナーInc.(BorgWarner Inc.)によって共有されている。この参考文献を、本明細書において参考のために完全に引用する。
【0012】
特に、Lam et al.の米国特許第5,998,307号は、硬化可能な樹脂を含浸させた一次繊維質基材を有する摩擦材料に関し、ここで、多孔質の一次層は、少なくとも1種の繊維質材料を含み、二次層は、一次層の表面の少なくとも約3〜約90%を被覆する炭素粒子を含む。
【0013】
Lam et al.の米国特許第5,858,883号は、より少なくフィブリル化したアラミド繊維、人造黒鉛、及び少なくとも1つのタイプの充填材の一次層と、一次層の表面の炭素粒子を含む二次層と、を有する基材に関する。
【0014】
Lam et al.の米国特許第5,856,224号は、硬化可能な樹脂を含浸させた基材を含む摩擦材料に関する。一次層は、より少なくフィブリル化したアラミド繊維、人造黒鉛、及び充填材を含み;二次層は、炭素粒子及び歩留まり向上剤を含む。
【0015】
Lam et al.の米国特許第5,958,507号は、摩擦材料の製造方法に関し、ここで、より少なくフィブリル化したアラミド繊維を含む繊維質材料の少なくとも1つの表面の約3〜約90%に、炭素粒子をコーティングする。
【0016】
Lamの米国特許第6,001,750号は、硬化可能な樹脂を含浸させた繊維質基材を含む摩擦材料に関する。多孔質の一次層は、より少なくフィブリル化したアラミド繊維、炭素粒子、炭素繊維、充填材料、フェノールノボロイド繊維、及び所望により綿繊維を含む。二次層は、表面の約3〜約90%を被覆する炭素粒子を含む。
【0017】
さらに別の共有されている特許出願第09/707,274号は、一次層の表面積の約3〜約90%を被覆する摩擦調整粒子を有する多孔質の一次繊維質基材層を有する紙タイプの摩擦材料に関する。
【0018】
加えて、様々な紙タイプの繊維質基材は、共有されているボーグワーナーInc.、Lam et al.の米国特許第5,753,356号、及び同第5,707,905号に説明されており、これは、より少なくフィブリル化したアラミド繊維、人造黒鉛及び充填材を含む基材を説明しており、こうした参考文献も、本明細書において参考のために完全に引用する。
【0019】
別の共有されているLamの米国特許第6,130,176号は、より少なくフィブリル化したアラミド繊維、炭素繊維、炭素粒子及び充填材を含む非金属でかつ紙タイプの繊維質基材に関する。
【0020】
全てのタイプの摩擦材料にとって、“湿式”用途において有用であるためには、摩擦材料は広く様々な許容可能な特性を有しなければならない。摩擦材料は、良好な耐シャダ特性を有しなければならず;高い耐熱性を有し、また熱を速やかに放散できなければならず;長く持続し、安定で、むらのない摩擦性能を有しなければならない。こうした特性のいずれかが満たされない場合、摩擦材料の最適性能は実現されない。
【0021】
また、適切な含浸用樹脂を摩擦材料中に使用して、高エネルギー用途の摩擦材料を形成することも重要である。摩擦材料は、使用最中にブレーキ液またはトランスミッションオイルが摩擦材料にしみ込んだ時に、使用最中の良好なせん断強度を有しなければならない。
【0022】
従って、本発明の目的は、従来技術のものと比較して信頼性がありかつ改良された特性を有する、改良された摩擦材料を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、改良された“耐シャダ”、耐“ホットスポット”性、高い耐熱性、高い摩擦安定性及び耐久性、並びに強度を有する摩擦材料を提供することにある。
【発明の開示】
【0023】
本発明は、基材中に少なくとも1つのタイプの摩擦調整粒子を含む多孔質基材を含む第1の層を有する摩擦材料に関し、ここで、摩擦調整材料は少なくとも1つのタイプのナノ粒子サイズの摩擦調整粒子を含む。
【0024】
ナノ粒子サイズの摩擦調整粒子を上層表面の多孔質または不連続層として堆積し、これによって、上層は第1の層と実質的に同様の浸透性を有する。ナノ粒子サイズの摩擦調整粒子を、摩擦材料の基材すなわち第2の層を構成する個別の繊維及び/または充填材表面に堆積するか;または不織布材料である場合、摩擦材料の表面のランダムに間隔を置いた部分の表面に堆積する。摩擦材料を構成する個別の繊維及び/または充填材は、このような個別の繊維及び/または充填材表面に厚さ約0〜約250μmを有するナノ粒子サイズの摩擦調整粒子の層を有することができる。ナノ粒子サイズの摩擦調整粒子は、平均直径サイズ約10nm〜約150nmを有する。特定の具体例においては、ナノ粒子層は基材の個別の繊維及び/または充填材の約0〜約99面積%を被覆し、他の具体例においては、ナノ粒子は約3〜約20面積%を被覆する。さらに、特定の具体例においては、ナノ粒子は、基材の個別の繊維及び/または充填材を少なくとも部分的に被覆する。
【0025】
特定の好適な具体例においては、摩擦調整粒子はシリカナノ粒子を含む。特定の他の具体例においては、摩擦調整粒子は、シリカナノ粒子及び少なくとも1種の他のナノ粒子サイズの摩擦調整粒子をさらに含むことができる。
【0026】
1態様においては、摩擦材料は、多孔質基材及び少なくとも1つのタイプの樹脂材料を有する第1の層、並びに多孔質基材の上面を少なくとも部分的に被覆する少なくとも1つのタイプのナノ粒子サイズの摩擦調整粒子を有する第2の層を含む。第2の層は、基材を構成する個別の繊維及び/または充填材表面で約0〜約200μmの範囲にわたる平均厚さを有し、これによって、上層は、第1の層と実質的に同じかまたは超える浸透性を有する。特定の具体例においては、多孔質基材を構成する個別の繊維及び/または充填材表面のナノ粒子サイズの摩擦調整粒子の層は、このような個別の繊維及び/または充填材粒子表面で厚さ約75〜約85μmを有する。特定の具体例においては、上層は、多孔質基材よりも、半径方向に実質的に同じかまたは超える浸透性及び垂直方向に実質的に同じかまたは超える浸透性を有する。
【0027】
本発明によれば、ナノ粒子の層を、繊維質摩擦基材の表面及び内部に堆積させる。基材繊維質層を、ナノ粒子で部分的に被覆する。ナノ粒子は内部構造中に浸透し、基材の繊維及び/または充填材成分の表面に接着する。
【0028】
理論によって束縛されることを望むものではないが、ナノ粒子は、基材の繊維に接着した場合、さらなる機械的強度と摩擦特性の増大とを摩擦材料に与えると考えられている。ナノ粒子は、その極めて小さなサイズが理由となって、また、繊維/充填材自体によって提供される、ナノ粒子と比較して比較的大きな表面積が理由となって、基材中に存在する繊維及び/または充填材の表面に接着する。ナノ粒子が基材中の繊維/充填材と比較して極めて小さなサイズであることは、ナノ粒子サイズの摩擦調整材料が、基材を構成する成分(すなわち、例えば、繊維及び/または充填材)の表面全体に実質的に均一に分布することを可能にする。
【0029】
基材を構成する個別の繊維及び/または充填材の表面の上にこのようなナノ粒子を堆積させることの1利点は、摩擦性能が高められる(例えば、より高い摩擦係数、より良好なmu−v勾配、及びその他同様なもの)という点である。
【0030】
特定の具体例においては、ナノ粒子は、約10nm〜150nmの範囲にわたる直径サイズを有する。また、特定の具体例においては、ナノ粒子は、基材を構成する個別の繊維及び/または充填材の表面に群または塊になって堆積するナノ粒子のクラスターを形成する。
【0031】
本発明の別の態様によれば、ナノ粒子摩擦調整粒子は、基材層よりも高い浸透性を有する開放されたすなわち実質的に多孔質の層を形成する。ナノ粒子摩擦調整粒子の上層のより高い浸透性は、摩擦材料が、摩擦材料の上面に所望の量の流体を保持することを依然として可能にし、同時に、所望の特性を有する摩擦材料を与える。
【0032】
特定の具体例においては、本発明は、多孔質のすなわちかさ高(lofty)で開放された基材を有する摩擦材料に関する。摩擦材料は、所望の低密度を有し、樹脂材料が摩擦材料中にしみ込むことを可能にする繊維構造を有する。摩擦材料は、摩擦材料が熱応力及び機械的応力下で申し分なく応答することを可能にする極めて良好な耐熱性と摩擦係数特性とを有する。
【0033】
別の態様においては、本発明は、ナノ粒子サイズの摩擦調整材料で部分的に被覆された表面を有する“マクロ細孔性(macro porous)”繊維質基材(例えば織物状基材)に関する。多孔質の基材中の大きな細孔は、ナノ粒子サイズの摩擦調整材料が、多孔質の基材中の空隙または間隙中に沈降することを可能にする。本発明のマクロ細孔性摩擦材料においては、大きな細孔は、流体中の汚染物が摩擦材料を容易に通過することを可能にする。当業者には周知のように、潤滑は時間と共に劣化し、破片が生成する。本発明の摩擦材料は、摩擦材料の摩擦挙動を、摩擦材料の耐用寿命の間じゅう終始一定に維持する。
【0034】
本発明の1態様においては、基材の平均空隙容量は約40〜約80%である。特定の具体例においては、基材は、平均細孔/空隙/間隙直径約2〜約10μmを有し、平均直径約5〜約7μmを有する。
【0035】
さらに、特定の具体例においては、摩擦調整粒子はシリカのナノ粒子を含み、他の具体例においては、ナノ粒子は、他の摩擦調整粒子の混合物を組み合わせることができる。
基材中の摩擦調整粒子のナノ粒子は、得られた摩擦材料に改良された三次元構造を与える。
【0036】
基材は、平均空隙容量約60〜約85%を有する。特定の具体例においては、多孔質基材層は、約70〜85重量%の繊維及び10〜30重量%の充填材を含む。特定の具体例においては、多孔質基材は、約80%の繊維及び約20%の充填材を含むことができる。
【0037】
別の態様においては、本発明は摩擦材料の製造方法に関し、ここで、多孔質基材を飽和剤で飽和させる。飽和剤は、少なくとも1種の樹脂材料及び少なくとも1つのタイプのナノ粒子サイズの摩擦調整粒子を含むことができ、これによって、複数のナノ粒子サイズの摩擦調整粒子は、基材を構成する個別の繊維及び/または充填材の表面に層を形成する。特定の具体例においては、上層は、ほぼ第1の層以上の浸透性を有し、飽和済み基材を、予め定められた温度で予め定められた時間硬化する。
【0038】
別の態様においては、本方法は、少なくとも1種の硬化可能な樹脂材料及び少なくとも1つのタイプのナノ粒子サイズの摩擦調整粒子を含む飽和剤材料を製造することと、貫通して分散する複数の間隙を有する多孔質基材を製造することと、多孔質基材を飽和剤材料で飽和させることとによって摩擦材料を製造することとを含み、これによって、基材を構成する個別の繊維表面に複数のナノ粒子サイズの摩擦調整粒子を少なくとも部分的に堆積させ、樹脂材料を基材全体にわたって実質的に均一に分布させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
上記に検討した要件を実現するために、使用最中に生じる条件と同様の条件下で、多くの摩擦材料を、摩擦と耐熱性特性とに関して評価した。市販の摩擦材料を調査して、高エネルギー用途での使用には適していないことが判明した。
【0040】
本発明によれば、摩擦材料は、多孔質基材と多孔質基材中のナノ粒子サイズの摩擦調整材料の実質的に不均一な層との全体にわたる、硬化可能な樹脂の均一な分散を有する。
1態様においては、基材層は高度多孔質材料の例えば長繊維織物状材料を含み、他の態様においては、高度多孔質不織布材料を含む。特定の具体例においては、多孔質基材は、基材の総重量を基準として、約75〜約85%の範囲内の高い繊維含量を有し、特定の具体例においては、約80重量%である。基材は、基材の総重量を基準として、約15〜約25重量%の範囲内の充填材含量を有し、特定の具体例においては、約20重量%である。基材中の充填材がより少ないと、横方向浸透性をかなり向上させる。
【0041】
さらに他の具体例においては、ナノ粒子サイズの摩擦調整粒子はまた、他の摩擦調整粒子の例えば金属酸化物、窒化物、炭化物、及びこれらの混合物を含むことができる。こうした具体例としては、例えば、シリカ酸化物、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化チタン及びその他同様なもの;シリカ窒化物、窒化鉄、窒化アルミニウム、窒化チタン及びその他同様なもの;並びにシリカ炭化物、炭化鉄、炭化アルミニウム、炭化チタン及びその他同様なものが挙げられることは、本発明の予測される範囲内である。
【0042】
様々な基材が本発明の摩擦材料において有用であり、こうした基材としては、例えば、布材料、織物状材料及び/または不織布材料を含む非アスベスト繊維質基材が挙げられる。適切な繊維質基材としては、例えば、繊維及び充填材が挙げられる。繊維は、有機繊維、無機繊維及び炭素繊維とすることができる。有機繊維は、アラミド繊維の例えばフィブリル化したアラミド繊維及び/または非フィブリル化アラミド繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリアミド繊維、綿/セルロース繊維及びその他同様なものとすることができる。充填材は、例えば、シリカ、ケイソウ土、黒鉛、アルミナ、カシュー粉(cashew dust)及びその他同様なものとすることができる。
【0043】
他の具体例においては、基材は、繊維質織物状材料、繊維質不織布材料、及び紙材料を含むことができる。さらに、本発明において有用な様々なタイプの繊維質基材の例は、上記に参照したボーグワーナーの米国特許において開示されており、これを、本明細書において参考のために完全に引用する。しかしながら、本発明の他の具体例はさらに異なる基材を含むことができることは理解できるはずである。
【0044】
特定の具体例においては、摩擦材料は、内部に複数の空隙または間隙を有する基材を含む。繊維質基材中の空隙のサイズは、0.5μm〜約20μmの範囲にわたることができる。
【0045】
特定の具体例においては、基材は好ましくは空隙容量約50〜約60%を有し、これによって、繊維質基材は、“多孔質”の織物状材料と比較して“緻密”であるとみなされる。
【0046】
本発明の1態様においては、新規でミクロ構造化された表面を有する摩擦材料に関する。ミクロ構造化された表面を有する摩擦材料は、より高い摩擦係数、さらにロバストな耐シャダ特性、及び極めて高い耐熱性を有する。
【0047】
1態様においては、本発明は、多孔質のすなわちかさ高で開放された基材を有する摩擦材料に関する。材料は、低密度を有し、樹脂材料が摩擦材料中にしみ込むことを可能にする繊維構造を有する。摩擦材料は、摩擦材料が熱応力及び機械的応力下で申し分なく応答することを可能にする極めて良好な耐熱性と摩擦係数特性とを有する。
【0048】
別の態様においては、“マクロ細孔性(macro porous)”繊維質材料は、摩擦調整材料で部分的に被覆されない表面を有する。大きな細孔は、ナノ粒子サイズの摩擦調整材料が、基材中の空隙または間隙中に沈降することを可能にする。本発明のマクロ細孔性摩擦材料においては、大きな細孔は、流体中の汚染物が容易に通過することを可能にする。潤滑が時間と共に劣化するにつれて、破片が生成する。本発明の摩擦材料は、摩擦材料の摩擦挙動を一定に維持する。
【0049】
特定の具体例においては、摩擦材料は、繊維質基材中の空隙を少なくとも部分的に充填する樹脂材料をさらに含む。樹脂材料は、基材の厚さ全体にわたって実質的に均一に分散する。
【0050】
特定の具体例においては、基材は繊維質基材を含み、ここで、より少なくフィブリル化した繊維と炭素繊維とを繊維質基材中に使用して、望ましい細孔構造を摩擦材料に与える。繊維の幾何学的形状は、向上した耐熱性を与えるだけではなく、耐層間剥離性と耐スキール性または耐ノイズ性とを与える。また、特定の具体例においては、炭素繊維と炭素粒子との存在は、繊維質基材の耐熱性を向上し、安定した摩擦係数を維持し、耐スキール性を向上する助けとなる。特定の具体例においては、繊維質基材中に綿繊維を含ませて、摩擦材料のクラッチ“慣らし運転”特性を改良することができる。
【0051】
特定の具体例においては、より少なくフィブリル化したアラミド繊維と炭素繊維とを繊維質基材中に使用することで、高温に耐える摩擦材料の能力が改良される。より少なくフィブリル化したアラミド繊維は一般に、コア繊維に結合したフィブリルをほとんど有しない。より少なくフィブリル化したアラミド繊維を使用することで、より多孔質の構造を有する摩擦材料が得られる;すなわち、典型的なフィブリル化アラミド繊維を使用した場合よりも、大きな細孔が存在する。多孔質構造は一般に、孔径と液体浸透性とによって定義される。
【0052】
また、特定の具体例においては、アラミド繊維は、約0.5〜約10mmの範囲にわたる長さと約300を超えるカナダ標準形ろ水度(CSF)とを有することが望ましい。特定の具体例においては、CSF約450〜約550、好ましくは約530以上;他の特定の具体例においては、約580〜650以上、好ましくは約650以上を有するより少なくフィブリル化したアラミド繊維を使用することも望ましい。それに反して、より多くフィブリル化した繊維の例えばアラミドパルプは、ろ水度約285〜290を有する。
【0053】
“カナダ標準形ろ水度”(T227 om−85)とは、繊維のフィブリル化度は、繊維のろ水度の測定値で表わすことができることを意味する。CSF試験は、1リットルの水中の3グラムの繊維の懸濁液を排水できる速度の任意の尺度を与える実験的手順である。従って、より少なくフィブリル化したアラミド繊維は、より多くフィブリル化したアラミド繊維またはパルプよりも高いろ水度すなわち摩擦材料からの流体のより大きい排水速度を有する。約430〜650(特定の具体例においては、好ましくは約580〜640、または好ましくは約620〜640)の範囲にわたるCSFを有するアラミド繊維を含む摩擦材料は、優れた摩擦性能を提供し、また、従来のより多くフィブリル化したアラミド繊維を含む摩擦材料よりも良好な材料特性を有する。繊維長がより大きいことは、高いカナダろ水度に加えて、摩擦材料に高強度、高多孔性及び良好な耐摩耗性を与える。より少なくフィブリル化したアラミド繊維(CSF約530〜約650)は、特に良好な長期耐久性と安定した摩擦係数とを有する。
【0054】
様々な充填材も、本発明の繊維質基材の一次層において有用である。特に、シリカ充填材の例えばケイソウ土は有用である。しかしながら、他のタイプの充填材が本発明において使用するために適切であることと、充填材の選択が摩擦材料の個々の要件によって決まることとは予測される。
【0055】
特定の具体例においては、綿繊維を本発明の繊維質基材に加えることで、摩擦材料により高い摩擦係数を与える。特定の具体例においては約10〜約20%、特定の具体例においては約10%の綿も、繊維質基材に加えることができる。
【0056】
繊維質基材の一次層のための配合物の1例は、約15〜約25%の綿、約40〜約50%のアラミド繊維、約10〜約20%の炭素繊維、約5〜約15%の炭素粒子、約5〜約15%のセライト、及び所望により追加で(add-on)約1〜約3%のラテックスを含む。
【0057】
基材が、より高い平均細孔直径(mean pore diameter)と流体浸透性とを有する場合、摩擦材料は、摩擦材料の多孔質構造全体にわたる自動変速機油のより良好な流れが理由となって、恐らくより低温で動作するかまたはトランスミッション中に発生する熱がより少ないと思われる。トランスミッションシステムの動作中に、特に高温では、流体は時間と共に分解し、“油堆積物”を形成する傾向がある。こうした“油堆積物”は、細孔の開口部を減少させる。従って、摩擦材料が最初により大きな細孔を有する場合、摩擦材料の耐用寿命の間中、より多くの開放気孔が残存する。
【0058】
繊維質基材中の摩擦調整粒子は、得られた摩擦材料に改良された三次元構造を与える。
摩擦調整材料層は、流体潤滑剤を基材中に保持し、摩擦材料の油保持容量を増大させる。本発明の摩擦材料は従って、油膜が表面に残存することを可能にする。これはまた、良好な摩擦係数特性及び良好なスリップ耐久性特性を与える。
【0059】
特定の具体例においては、上層を形成する摩擦調整粒子の平均被覆面積は、表面積の約0〜約50%の範囲内である。特定の他の具体例においては、平均被覆面積は、約40〜約50%の範囲にわたる。
【0060】
繊維質基材の表面のナノ粒子サイズの摩擦調整粒子の被覆の量を十分にランダムにし、これによって、基材の個別の繊維及び/または充填表面のナノ粒子サイズの摩擦調整粒子の層が三次元構造を有するようにする。この三次元構造は、基材の個別の繊維及び/または充填材表面及び個別の繊維間の空隙または間隙中の摩擦調整材料の個別の粒子で構成される。特定の具体例においては、(ナノ粒子サイズの摩擦調整粒子の)上層は、(繊維質基材の)下層と同程度に多孔質またはより多孔質である。
【0061】
基材中の堆積済みのナノ粒子サイズの摩擦調整粒子の均一性を実現するために、一次粒度として直径約10〜約150nm、好ましくは約10〜約50nmの範囲にわたることがある摩擦調整粒子のサイズを使用する。特定の具体例においては、粒子は、一次ナノ粒子サイズとして平均ナノ粒子直径約15nm〜約30nmを有する。
【0062】
様々なタイプのナノ粒子サイズの摩擦調整粒子が、摩擦材料において有用である。1具体例においては、有用な摩擦調整粒子としては、シリカ粒子が挙げられる。他の具体例は、ナノ粒子サイズの摩擦調整粒子の例として樹脂粉末の例えばフェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂及びこれらの混合物を有することができる。さらに他の具体例としては、部分的及び/または完全に炭化したナノ粒子サイズの摩擦調整粒子炭素粉末及び/または粒子及びこれらの混合物;並びにこのようなナノ粒子サイズの摩擦調整粒子の混合物が挙げられる。特定の具体例においては、ナノ粒子サイズのシリカ粒子の例えばケイソウ土、セライト(登録商標)、セラトム(Celatom)(登録商標)、及び/または二酸化ケイ素は特に有用である。ナノ粒子サイズのシリカ粒子は、基材に強く結合する無機材料である。ナノ粒子サイズのシリカ粒子は、摩擦材料に高い摩擦係数を与える。ナノ粒子サイズのシリカ粒子はまた、基材に平滑な摩擦表面を与え、摩擦材料に良好な“シフト感触”と摩擦特性とを与え、これによって、いかなる“シャダ”も最小になるようにする。
【0063】
特定の具体例においては、摩擦材料に、様々な樹脂系を使用して含浸させることができる。特定の具体例においては、少なくとも1種のフェノール樹脂、少なくとも1種の変性フェノールベースの樹脂、少なくとも1種のシリコーン樹脂、少なくとも1種の変性シリコーン樹脂、少なくとも1種のエポキシ樹脂、少なくとも1種の変性エポキシ樹脂、及び/または上記の組合せを使用することは有用である。特定の他の具体例においては、シリコーン樹脂を相溶性溶媒中でフェノール樹脂とブレンドするかまたは混合することは有用である。
【0064】
様々な樹脂が本発明において有用である。特定の具体例においては、好ましくは、飽和剤材料が、100重量部の摩擦材料につき約45〜約65重量部を占めるように、樹脂は、フェノール樹脂またはフェノールベースの樹脂を含むことができる。樹脂混合物を基材に施用し、基材に樹脂混合物を含浸させた後、含浸済みの基材を、予め定められた長さの時間、所望の温度に加熱して、摩擦材料を形成する。特定の具体例においては、加熱によって、飽和剤中に存在するフェノール樹脂を温度約300°Fで硬化する。シリコーン樹脂等の他の樹脂が飽和剤中に存在する場合、加熱によって、シリコーン樹脂を温度約400°Fで硬化する。その後、硬化済みの摩擦材料を、適切な手段によって所望の基体に接着させる。
【0065】
様々な有用な樹脂としては、フェノール樹脂及びフェノールベースの樹脂が挙げられる。樹脂ブレンド中に他の変性成分の例えばエポキシ、ブタジエン、シリコーン、桐油、ベンゼン、カシューナッツ油及びその他同様なものを含むような様々なフェノールベースの樹脂は、本発明に関して有用であると予測されることは理解できるはずである。フェノール変性樹脂においては、フェノール樹脂は一般に、樹脂ブレンドの約50重量%以上(存在するいかなる溶媒も除いて)存在する。しかしながら、混合物が、シリコーン−フェノール樹脂混合物の重量を基準として(溶媒と他の加工用酸を除いて)、特定の具体例においては約5〜約80重量%、特定の目的のためには約15〜約55重量%、特定の具体例においては約15〜約25重量%のシリコーン樹脂を含む樹脂ブレンドを含む場合、摩擦材料を改良できることが見い出された。
【0066】
本発明において有用なフェノール樹脂及びフェノール−シリコーン樹脂の例は、上記に参照したボーグワーナーの米国特許において完全に開示されており、これを、本明細書において参考のために完全に引用する。本発明において有用なシリコーン樹脂としては、例えば、熱硬化シリコーンシーラント及びシリコーンゴムが挙げられる。様々なシリコーン樹脂類が、本発明に関して有用である。1つの樹脂は、特に、キシレンとアセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)とを含む。このシリコーン樹脂は、沸点約362°F(183℃)、蒸気圧68°Fで21mmHg、蒸気密度(空気=1)4.8、無視し得る水への溶解度、比重約1.09、パーセント揮発性5重量%、蒸発率(エーテル=1)0.1未満、ペンスキー−マルテンス法を使用して引火点約149°F(65℃)、を有する。他のシリコーン樹脂を本発明に関して利用できることは理解できるはずである。他の有用な樹脂ブレンドとしては、例えば:(重量%で)約55〜約60%のフェノール樹脂、約20〜約25%のエチルアルコール、約10〜約14%のフェノール、約3〜約4%のメチルアルコール、約0.3〜約0.8%のホルムアルデヒド、及び約10〜約20%の水、を含むような、適切なフェノール樹脂が挙げられる。別の適切なフェノールベースの樹脂は:(重量%で)約50〜約55%のフェノール/ホルムアルデヒド樹脂、約0.5%のホルムアルデヒド、約11%のフェノール、約30〜約35%のイソプロパノール、及び約1〜約5%の水、を含む。
【0067】
別の有用な樹脂は、約5〜約25重量%、好ましくは約10〜約15重量%のエポキシ化合物を含み、残り(溶媒と他の加工助剤を除いて)はフェノール樹脂であるようなエポキシ変性フェノール樹脂であることが見い出された。エポキシ−フェノール樹脂化合物は、特定の具体例においては、フェノール樹脂単独の場合よりも高い耐熱性を摩擦材料に与える。
【0068】
特定の具体例においては、基材による樹脂の標的ピックアップが、全シリコーン−フェノール樹脂の約25〜約70重量%、他の具体例においては約40〜約65重量%、特定の具体例においては約60〜少なくとも65重量%の範囲にわたるように、樹脂混合物が、所望の量の樹脂とナノ粒子サイズの摩擦調整粒子とを含むことが好ましい。基材を樹脂で飽和させた後、基材を、ある時間(特定の具体例においては約1/2時間)、300〜400℃の範囲にわたる温度で硬化して、樹脂結合剤を硬化し、摩擦材料を形成する。摩擦材料の最終厚さは、基材の初期厚さによって決まる。
【0069】
さらに、樹脂ブレンドの製造と基材の製造との両方において有用であることが周知の他の成分と加工助剤とを含めることができ、これは、本発明の予測される範囲内にあることは予測される。
【0070】
特定の具体例においては、樹脂混合物は、互いに相溶性である溶媒中に存在するシリコーン樹脂とフェノール樹脂との両方を含むことができる。こうした樹脂類を共に混合して(好適な具体例において)均一ブレンドを形成し、次にこれを使用して繊維質基材を飽和する。特定の具体例においては、基材にフェノール樹脂を含浸させ、次にシリコーン樹脂をその後加えた場合と、逆の場合とでは、同じ効果は生じない。また、シリコーン−フェノール樹脂溶液の混合物と、シリコーン樹脂粉末及び/またはフェノール樹脂粉末のエマルションとの間にも、相違がある。シリコーン樹脂とフェノール樹脂とが溶液中にある場合、これらは全く硬化しない。それに反して、シリコーン樹脂とフェノール樹脂との粉末粒子は部分的に硬化する。シリコーン樹脂とフェノール樹脂の部分的硬化は、基材の良好な飽和を阻害する。
【0071】
本発明の特定の具体例においては、基材に、溶媒中のシリコーン樹脂ブレンドを含浸させ、ここで溶媒は、フェノール樹脂とその溶媒とに相溶性があるようなものである。1具体例においては、イソプロパノールは特に適切な溶媒であることが見い出された。しかしながら、様々な他の適切な溶媒の例えばエタノール、メチルエチルケトン、ブタノール、イソプロパノール、トルエン及びその他同様なものを、本発明の実施において利用できることは理解できるはずである。シリコーン樹脂をフェノール樹脂とブレンドしてから、これを使用して基材を飽和した場合、得られた摩擦材料は、シリコーン樹脂が存在することで、フェノール樹脂のみを含浸させた基材よりも弾性が大きくなる。シリコーン−フェノール樹脂をブレンドし含浸させた本発明の摩擦材料に圧力を加えた場合、より均一な圧力分布が得られ、その結果、不均一なライニングの摩耗が生じる可能性が低減する。シリコーン樹脂とフェノール樹脂とを摩擦調整粒子と共に混合した後、この混合物を使用して基材に含浸させる。
【0072】
本発明の摩擦材料は、基材内部にランダムに分散したナノ粒子サイズの摩擦調整粒子を含み、良好な耐シャダ特性、高い抵抗、高い摩擦係数、高い耐久性、良好な耐摩耗性及び改良された慣らし運転特性を摩擦材料に与える。
【0073】
図1aは、繊維質基材12と珪藻摩擦調整粒子14とを有する従来技術の摩擦材料10を示す概略図である。図1b、1c及び1dは、繊維(図1b)、従来のシリカ粒子(図1c)、及び本発明において使用するナノ粒子(図1d)のサイズの比較を示す略図である。図2は、繊維の表面にナノ粒子を有する繊維の略図である。
【0074】
特定の具体例においては、摩擦調整粒子のサイズが極めて小さい場合、所望の最適三次元構造が実現され、従って熱放散及び耐シャダ特性が最適化されることが発見されている。
【0075】
特定の具体例においては、摩擦調整材料のナノ粒子は、基材層の外側表面を形成する個別の繊維及び充填材の表面にナノ粒子のクラスターまたはアグリゲートを形成すると考えられている。特定の具体例においては、クラスターは平均直径約30〜100nm未満を有する。
【0076】
本発明の多孔質摩擦材料中に使用するナノ粒子サイズの摩擦調整材料は、摩擦材料に良好な耐シャダ特性を与える。示される具体例においては、基材の高温合成繊維と多孔性とは、改良された耐熱性を与える。
【0077】
加えて、多孔質摩擦材料は、流体の汚染物が容易に通過することを可能にする比較的に大きな細孔を有する。このような劣化生成物のこの吸収は、摩擦材料にさらに一定の摩擦挙動を与える。
【0078】
本発明の摩擦材料内部のナノ粒子サイズの摩擦調整粒子の勾配は、従来の摩擦材料に勝る改良を提供する。本摩擦材料は、望ましい摩擦係数、耐熱性及び耐久性特性を有する。
基材内部にナノ粒子サイズの摩擦調整粒子を堆積させることは、基材の浸透性を大幅に低下させない多孔質表面層を生成する。基材の浸透性は、流体または潤滑剤が基材中に流れ、摩擦材料の表面で保持されたままにならないことを可能にする。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、クラッチ板、トランスミッションバンド、ブレーキシュー、シンクロナイザーリング、摩擦円板またはシステムプレートと共に使用するための高エネルギー摩擦材料として有用である。
【0080】
本発明の好適な具体例及び他の具体例に関する上記の説明は、例示とするためのものであり、請求の範囲及びその内容を限定するためのものではない。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1aは、繊維質基材と摩擦調整粒子とを有する従来技術の摩擦材料を示す概略図である。
【0082】
図1bは、粒子の相対的サイズを示す概略図であり、代表的な繊維直径として10〜15マイクロメートルを示す。
図1cは、粒子の相対的サイズを示す概略図であり、珪藻粒子の代表的な平均サイズとして10〜20マイクロメートルを示す。
【0083】
図1dは、粒子の相対的サイズを示す概略図であり、ナノ粒子サイズとして0.01マイクロメートルを示す。
【図2】繊維の表面にナノ粒子を有する繊維の略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質基材及び少なくとも1つのタイプの樹脂材料を含む第1の層、並びに前記多孔質基材の上面を少なくとも部分的に被覆する少なくとも1つのタイプのナノ粒子サイズの摩擦調整粒子を含む第2の層を含み、該第2の層は、前記基材を構成する個別の繊維及び充填材表面で平均厚さ約0〜200μmを有する、摩擦材料において、上層は、前記第1の層と実質的に同じかまたは超える浸透性を有する、摩擦材料。
【請求項2】
前記多孔質基材を構成する個別の繊維及び充填材表面の前記ナノ粒子サイズの摩擦調整粒子の層は、厚さ約75〜約85μmを有する、請求項1に記載の摩擦材料。
【請求項3】
前記上層は、前記多孔質基材よりも、半径方向に実質的に同じかまたは超える浸透性及び垂直方向に実質的に同じかまたは超える浸透性を有する、請求項1に記載の摩擦材料。
【請求項4】
前記ナノ粒子サイズの摩擦調整粒子は、平均直径サイズ約10nm〜約150nmを有する、請求項1に記載の摩擦材料。
【請求項5】
前記摩擦調整粒子のサイズは約1〜約20nmである、請求項1に記載の摩擦材料。
【請求項6】
前記多孔質基材は平均空隙容量約65〜約85%を有する、請求項1に記載の摩擦材料。
【請求項7】
前記ナノ粒子サイズの摩擦調整粒子はシリカ粒子を含む、請求項1に記載の摩擦材料。
【請求項8】
前記ナノ粒子サイズの摩擦調整粒子はセライト粒子を含む、請求項7に記載の摩擦材料。
【請求項9】
前記ナノ粒子サイズの摩擦調整粒子はケイソウ土を含む、請求項7に記載の摩擦材料。
【請求項10】
前記ナノ粒子サイズの摩擦調整粒子は炭素粒子とシリカ粒子との混合物を含む、請求項1に記載の摩擦材料。
【請求項11】
セライトは不規則な形状を有する、請求項7に記載の摩擦材料。
【請求項12】
セライトの粒子は約2〜約20nmの範囲にわたるサイズを有する、請求項8に記載の摩擦材料。
【請求項13】
前記ナノ粒子サイズの摩擦調整粒子は金属酸化物を含む、請求項1に記載の摩擦材料。
【請求項14】
前記ナノ粒子サイズの摩擦調整粒子は窒化物を含む、請求項1に記載の摩擦材料。
【請求項15】
前記ナノ粒子サイズの摩擦調整粒子は炭化物を含む、請求項1に記載の摩擦材料。
【請求項16】
前記基材は繊維質基材を含む、請求項1に記載の摩擦材料。
【請求項17】
前記基材は不織布繊維質材料である、請求項1に記載の摩擦材料。
【請求項18】
前記基材は織物状繊維質材料である、請求項1に記載の摩擦材料。
【請求項19】
前記繊維質基材は、約15〜約25%の綿、約40〜約50%のアラミド繊維、約10〜約20%の炭素繊維、約5〜約15%の炭素粒子、及び約5〜約15%のセライト、並びに所望により追加で約1〜約3%のラテックスを含む、請求項17に記載の摩擦材料。
【請求項20】
摩擦材料の上層は、前記不織布繊維質材料の繊維の表面及び前記繊維質基材中の充填材料の表面に堆積したシリカのナノ粒子サイズの摩擦調整粒子を含む、請求項19に記載の摩擦材料。
【請求項21】
前記繊維質基材は平均細孔直径約5μmを有する、請求項17に記載の摩擦材料。
【請求項22】
樹脂は、少なくとも1種のフェノール樹脂または少なくとも1種の変性フェノール樹脂を含む、請求項1に記載の摩擦材料。
【請求項23】
前記樹脂は、少なくとも1種のフェノール樹脂と少なくとも1種のシリコーン樹脂との混合物を含み、該樹脂混合物中のシリコーン樹脂の量は、前記樹脂混合物の重量を基準として約5〜約80重量%の範囲にわたる、請求項1に記載の摩擦材料。
【請求項24】
摩擦材料の製造方法であって、
少なくとも1種の樹脂材料及び少なくとも1つのタイプのナノ粒子サイズの摩擦調整粒子を含む飽和剤で多孔質基材を飽和させ、これによって、複数の摩擦調整粒子は、基材を構成する個別の繊維及び充填材の表面に層を形成し、ナノ粒子サイズの摩擦調整粒子の層は平均厚さ約0〜200μmを有し、上層は、ほぼ第1の層以上の浸透性を有することと、
飽和済み基材を、予め定められた温度で予め定められた時間硬化することと、
を含む方法。
【請求項25】
摩擦材料の製造方法であって、
少なくとも1種の硬化可能な樹脂材料及び少なくとも1つのタイプのナノ粒子サイズの摩擦調整粒子を含む飽和剤材料を製造することと、
貫通して分散する複数の間隙を有する多孔質基材を製造することと、
前記多孔質基材を飽和剤材料で飽和させることと、を含み、これによって、前記基材を構成する個別の繊維表面に複数の前記ナノ粒子サイズの摩擦調整粒子を少なくとも部分的に堆積させ、前記樹脂材料を前記基材全体にわたって実質的に均一に分布させる、方法。
【請求項26】
前記ナノ粒子サイズの摩擦調整粒子は、前記基材の少なくとも1つの面の表面に多孔質上層を形成する、請求項25に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−52845(P2006−52845A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−212382(P2005−212382)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(500124378)ボーグワーナー・インコーポレーテッド (302)
【Fターム(参考)】