説明

摺動式等速自在継手

【課題】 スプラインに捩れ角を設けることなく、簡便な手段により、内側継手部材とシャフトとの嵌合部に生じるガタを確実に低減する。
【解決手段】 外側継手部材10と、その外側継手部材10との間で軸方向変位および角度変位を許容しながらトルクが伝達される内側継手部材20とを備え、その内側継手部材20をシャフト50に挿入してトルク伝達可能に嵌合させた摺動式等速自在継手であって、内側継手部材20の反軸挿入側の端面23から軸方向に延出された円筒形状をなし、径方向外側からの加締めにより縮径可能としたストッパ部70を、内側継手部材20の反軸挿入側に設け、そのストッパ部70をシャフト50に加締め固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、航空機、船舶や各種産業機械の動力伝達系において使用され、例えば4WD車やFR車などで使用されるドライブシャフトやプロペラシャフト等に組み込まれて駆動側と従動側の二軸間で軸方向変位および角度変位を許容する摺動式等速自在継手に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のエンジンから車輪に回転力を等速で伝達するドライブシャフトやプロペラシャフト等に組み込まれる等速自在継手には、固定式等速自在継手と摺動式等速自在継手の二種がある。これら両者の等速自在継手は、駆動側と従動側の二軸を連結してその二軸が作動角をとっても等速で回転トルクを伝達し得る構造を備えている。
【0003】
自動車のエンジンから駆動車輪に動力を伝達するドライブシャフトは、エンジンと車輪との相対的位置関係の変化による角度変位と軸方向変位に対応する必要があるため、一般的に、エンジン側(インボード側)に摺動式等速自在継手を、駆動車輪側(アウトボード側)に固定式等速自在継手をそれぞれ装備し、両者の等速自在継手をシャフトで連結した構造を具備する。
【0004】
このドライブシャフトのエンジン側に組み付けられる摺動式等速自在継手の一つに、トルク伝達部材としてボールを用いたボールタイプのダブルオフセット型等速自在継手(DOJ)がある。他の摺動式等速自在継手には、トルク伝達部材としてローラを用いたローラタイプのトリポード型等速自在継手(TJ)がある。
【0005】
これら各種の等速自在継手は、内側継手部材をシャフトの軸端部に挿入してスプライン嵌合させた構造を具備する。つまり、内側継手部材の孔の内周面にスプラインを形成すると共に、シャフトの軸端部の外周面にスプラインを形成し、内側継手部材をシャフトの軸端部に外挿することにより、内側継手部材のスプラインとシャフトのスプラインとを嵌合させてトルク伝達可能としている。
【0006】
ドライブシャフトに使用される等速自在継手では、自動車のNVH(Noise Vibration Harshness)特性の向上を図るため、内側継手部材のスプラインとシャフトのスプラインとの嵌合部に生じるガタを抑制する手段が種々講じられている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に開示された等速自在継手では、シャフトのスプラインに捩れ角を設け、その捩れ角を持つシャフトのスプラインに内側継手部材のスプラインを嵌合させることにより、その嵌合部に生じるガタを低減するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公平6−33220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前述したように、特許文献1で開示された従来の等速自在継手は、内側継手部材のスプラインとシャフトのスプラインとの嵌合部に生じるガタを低減することを目的として、シャフトのスプラインに捩れ角を設けた構造を具備している。
【0009】
しかしながら、内側継手部材とシャフトとのスプライン嵌合をタイトにするため、シャフトのスプラインの捩れ角を大きく設定すると、内側継手部材をシャフトに挿入するに際して、大きな荷重を付与しなければならず、内側継手部材とシャフトとをスプライン嵌合により結合させることが困難となる。
【0010】
これを回避するため、シャフトのスプラインの捩れ角を小さく設定すると、ルーズなスプライン嵌合になり易く、その嵌合部に生じるガタを完全になくすことが難しくなってくる。このように、スプラインの捩れ角を最適に設定することは非常に難しい。
【0011】
そこで、本発明は前述の問題点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、スプラインに捩れ角を設けることなく、簡便な手段により、内側継手部材とシャフトとの嵌合部に生じるガタを確実に低減し得る摺動式等速自在継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、外側継手部材と、その外側継手部材との間で軸方向変位および角度変位を許容しながらトルクが伝達される内側継手部材とを備え、その内側継手部材を軸部材に挿入してトルク伝達可能に嵌合させた摺動式等速自在継手であって、内側継手部材の反軸挿入側にストッパ部を設け、そのストッパ部を軸部材に加締め固定したことを特徴とする。ここで、「反軸挿入側」とは、軸部材に対して内側継手部材が軸方向に沿って挿入される側の反対側を意味する。なお、「軸挿入側」とは、軸部材に対して内側継手部材が軸方向に沿って挿入される側を意味する。
【0013】
本発明では、内側継手部材の反軸挿入側に設けられたストッパ部を軸部材に加締めて締め付けることにより、内側継手部材のストッパ部が軸部材に密着することで軸方向および径方向のガタを低減することができる。
【0014】
本発明におけるストッパ部は、内側継手部材の反軸挿入側の端面から軸方向に延出された円筒形状をなし、径方向外側からの加締めにより縮径可能とした構造が望ましい。この場合、円筒形状をなすストッパ部を径方向外側からの加締めにより縮径させて軸部材に締め付けることにより、内側継手部材のストッパ部の内周面を軸部材の外周面に密着させることで軸方向および径方向のガタを低減することができる。
【0015】
本発明において、内側継手部材と軸部材との嵌合部は、内側継手部材の内周面に軸方向と平行に形成されたスプラインと軸部材の外周面に軸方向と平行に形成されたスプラインとで構成されている構造が可能である。この嵌合部構造の場合、内側継手部材を軸部材に軸方向に沿って挿入して内側継手部材のスプラインと軸部材のスプラインとを嵌合させた後、内側継手部材のストッパ部を軸部材に加締める。
【0016】
この嵌合部構造の場合、ストッパ部の加締めにより接触する軸部材の外周部分にスプラインが形成されていることが望ましい。このようにすれば、ストッパ部が軸部材のスプラインに食い込んでそのストッパ部を強固に軸部材に固定することができ、軸方向および径方向のガタをより一層低減することができる。
【0017】
本発明において、内側継手部材と軸部材との嵌合部は、内側継手部材の軸挿入側の内周面に軸方向と傾斜して形成されたスプラインと軸部材の拡径部の外周面に軸方向と傾斜して形成されたスプラインとで構成されている構造が可能である。この嵌合部構造の場合、内側継手部材を軸部材に軸方向に沿って圧入して内側継手部材のスプラインと軸部材のスプラインとを嵌合させながら、内側継手部材のストッパ部を軸部材に加締める。この嵌合部構造は、特に、径方向のガタ低減に有効である。
【0018】
本発明において、内側継手部材と軸部材との嵌合部は、内側継手部材の軸挿入側の端面に径方向と平行に形成されたスプラインと軸部材のフランジ部の端面に径方向と平行に形成されたスプラインとで構成されている構造が可能である。この嵌合部構造の場合、内側継手部材を軸部材に軸方向に沿って圧入して内側継手部材のスプラインと軸部材のスプラインとを嵌合させながら、内側継手部材のストッパ部を軸部材に加締める。この嵌合部構造は、特に、径方向のガタ低減に有効である。
【0019】
前述した全ての嵌合部構造において、ストッパ部の加締めにより接触する軸部材の外周部分はフラット面であることが望ましい。この場合、ストッパ部が軸部材の外周部分に密着することでストッパ部を強固に軸部材に固定することができ、軸方向および径方向のガタをより一層低減することができる。
【0020】
また、前述した全ての嵌合部構造において、ストッパ部の加締めにより接触する軸部材の外周部分に、ストッパ部の加締め部分が嵌入する環状の凹溝を形成した構造が望ましい。このようにすれば、加締め部分が凹溝に嵌入することでストッパ部を強固に軸部材に固定することができ、軸方向のガタをより一層低減することができる。
【0021】
さらに、前述した全ての嵌合部構造において、軸部材の外周部分と接触するストッパ部の内周部分は、鋸歯の断面形状を有する構造が望ましい。このようにすれば、ストッパ部の鋸歯部分が軸部材の外周面に食い込むことでストッパ部を強固に軸部材に固定することができ、軸方向のガタをより一層低減することができる。
【0022】
なお、本発明における外側継手部材は、軸方向に延びる直線状トラック溝が内周面の複数箇所に形成され、内側継手部材は、軸方向に延びる直線状トラック溝が外側継手部材のトラック溝と対をなして外周面の複数箇所に形成され、外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝との間に配されたボールと、外側継手部材の内周面と内側継手部材の外周面との間に介在してボールを保持するケージとを備えた構造が望ましい。つまり、このような構造を具備するボールタイプのダブルオフセット型等速自在継手に適用することが有効である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、内側継手部材の反軸挿入側に設けられたストッパ部を軸部材に加締めて締め付けることにより、内側継手部材のストッパ部が軸部材に密着することで軸方向および径方向のガタを低減することができる。その結果、従来のようにスプラインに捩れ角を設けることなく、簡便な手段により、内側継手部材と軸部材とを嵌合部によりタイトに結合させることができ、信頼性の高い長寿命の摺動式等速自在継手を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態で、ダブルオフセット型等速自在継手の全体構成を示す縦断面図である。
【図2】図1のA方向から見た矢視図である。
【図3】図1の実施形態で、内側継手部材とシャフトとの結合構造を示す要部拡大断面図である。
【図4】図1の実施形態のサブアッセンブリで、(A)はストッパ部を加締める前の状態を示す断面図、(B)はストッパ部を加締めた後の状態を示す断面図である。
【図5】他の実施形態のサブアッセンブリで、(A)はストッパ部を加締める前の状態を示す断面図、(B)はストッパ部を加締めた後の状態を示す断面図である。
【図6】他の実施形態のサブアッセンブリで、(A)はストッパ部を加締める前の状態を示す断面図、(B)はストッパ部を加締めた後の状態を示す断面図である。
【図7】他の実施形態のサブアッセンブリで、(A)はストッパ部を加締める前の状態を示す断面図、(B)はストッパ部を加締めた後の状態を示す断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態で、ダブルオフセット型等速自在継手の全体構成を示す縦断面図である。
【図9】図8の実施形態で、内側継手部材とシャフトとの結合構造を示す要部拡大断面図である。
【図10】本発明の他の実施形態で、ダブルオフセット型等速自在継手の全体構成を示す縦断面図である。
【図11】図10の実施形態で、内側継手部材とシャフトとの結合構造を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る摺動式等速自在継手の実施形態を以下に詳述する。以下の実施形態では、トルク伝達部材としてボールを用いたダブルオフセット型等速自在継手(DOJ)を例示する。なお、本発明は、ダブルオフセット型等速自在継手以外に、トルク伝達部材としてローラを用いたトリポード型等速自在継手(TJ)などの他の摺動式等速自在継手にも適用可能である。
【0026】
この実施形態の等速自在継手は、図1および図2に示すように、外側継手部材10、内側継手部材20、ボール30およびケージ40で主要部が構成されている。この等速自在継手は、一端が開口したカップ状をなし、軸方向に延びる直線状トラック溝11が内周面の複数箇所に円周方向等間隔で形成された外側継手部材10と、軸方向に延びる直線状トラック溝21が外側継手部材10のトラック溝11と対をなして外周面の複数箇所に円周方向等間隔で形成された内側継手部材20と、外側継手部材10のトラック溝11と内側継手部材20のトラック溝21との間に配されたボール30と、外側継手部材10の内周面と内側継手部材20の外周面との間に介在してボール30を保持するケージ40とを備えた構造を具備する。
【0027】
なお、この実施形態では、6個ボールの等速自在継手(図2参照)を例示するが、8個ボールの等速自在継手にも適用可能であり、ボール30の個数は任意である。この外側継手部材10の内部には、内側継手部材20、ボール30およびケージ40からなる内部部品が軸方向摺動自在に収容されている。
【0028】
この等速自在継手において、内側継手部材20と軸部材であるシャフト50とが以下の構造でもってスプライン嵌合によりトルク伝達可能に結合されている。なお、摺動式等速自在継手の製造においては、シャフト50の軸端部51に内側継手部材20を挿入し、この内側継手部材20、ボール30およびケージ40からなる内部部品をシャフト50に組み付けたサブアッセンブリを製作した後、このサブアッセンブリの内部部品を外側継手部材10に挿入することにより組み立てられる。つまり、この内側継手部材20とシャフト50との結合作業は、サブアッセンブリを外側継手部材10に収容する前に行われる。
【0029】
内側継手部材20とシャフト50とを結合する嵌合部60は、図1および図2に示す実施形態において、図3に示すように、内側継手部材20の孔の内周面に軸方向と平行に形成されたスプライン22とシャフト50の軸端部51の外周面に軸方向と平行に形成されたスプライン52とで構成されている。このような嵌合部構造を有する実施形態において、内側継手部材20の反軸挿入側にストッパ部70を設ける。ここで、「反軸挿入側」とは、前述したようにサブアッセンブリ製作時、シャフト50に対して内側継手部材20が軸方向に沿って挿入される側の反対側を意味する。このストッパ部70は、内側継手部材20の反軸挿入側の端面23から軸方向に延出された円筒形状をなし、径方向外側からの加締めにより縮径可能な構造としている。
【0030】
この実施形態では、図4(A)に示すように、シャフト50の軸端部51に内側継手部材20を軸方向に沿って挿入して内側継手部材20のスプライン22とシャフト50のスプライン52とを嵌合させ、この内側継手部材20、ボール30およびケージ40からなる内部部品をシャフト50に組み付けたサブアッセンブリを製作した後、内側継手部材20のストッパ部71をシャフト50に加締める。この場合、図4(B)の矢印で示すように、円筒形状をなすストッパ部70を径方向外側からの加締めにより縮径させてシャフト50に締め付ける。これにより、内側継手部材20のストッパ部70の内周面をシャフト50の外周面に密着させることで軸方向および径方向のガタを低減することができる。
【0031】
この嵌合部構造の場合、ストッパ部70の加締めにより接触するシャフト50の軸端部51の外径部分(内側継手部材20の反軸挿入側の端面23から突出する部分)にスプライン52が形成されている。そのため、ストッパ部70がシャフト50のスプライン52に食い込んでそのストッパ部70を強固にシャフト50に固定することができ、軸方向および径方向のガタをより一層低減することができる。
【0032】
さらに、図5(A)に示すように、ストッパ部70の加締めにより接触するシャフト50の軸端部51の外周部分に、そのストッパ部70の加締め部分(先端部分)が嵌入する環状の凹溝53を形成した構造とすることが可能である。この場合、図5(B)に示すように、その加締め部分(先端部分)が凹溝53に嵌入することでストッパ部71を強固にシャフト50に固定することができ、軸方向のガタをより一層低減することができる。
【0033】
ここで、図4(A)(B)に示す実施形態では、ストッパ部70の加締めにより接触するシャフト50の軸端部51の外周部分にスプライン52が形成されている場合について説明したが、必ずしもスプライン52が形成されている必要はない。
【0034】
例えば、図6(A)に示すように、ストッパ部70の加締めにより接触するシャフト50の軸端部51の外周部分(内側継手部材20の反軸挿入側の端面23から突出する部分)はフラット面(円筒面)54であってもよい。この場合、図6(B)の矢印で示すように、加締めによりストッパ部70の内周面がシャフト50の軸端部51のフラット面(円筒面)54に密着することでストッパ部70を強固にシャフト50に固定することができ、軸方向および径方向のガタをより一層低減することができる。なお、ストッパ部70の加締めによる縮径が可能なように、軸端部51のうち、フラット面54が形成された部分はスプライン52が形成された部分よりも若干小径としている。
【0035】
さらに、図7(A)に示すように、シャフト50の軸端部51の外周部分(内側継手部材20の反軸挿入側の端面23から突出する部分)と接触するストッパ部70の内周部分を鋸歯71の断面形状とすることも可能である。この場合、図7(B)の矢印で示すように、加締めによりストッパ部70の鋸歯71部分がシャフト50のフラット面(円筒面)54に食い込むことでストッパ部70を強固にシャフト50に固定することができ、軸方向のガタをより一層低減することができる。
【0036】
以上の実施形態では、内側継手部材20とシャフト50とを結合する嵌合部60が、内側継手部材20の内周面に軸方向と平行に形成されたスプライン22とシャフト50の軸端部51の外周面に軸方向と平行に形成されたスプライン52とで構成されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、以下のような嵌合部構造であってもよい。
【0037】
図8および図9に示す実施形態の等速自在継手において、内側継手部材20とシャフト50とを結合する嵌合部61は、内側継手部材20の軸挿入側の内周面(軸方向外側に向けて拡径するテーパ面25)に軸方向と傾斜して形成されたスプライン26とシャフト50の拡径部55の外周面に軸方向と傾斜して形成されたスプライン56とで構成されている。内側継手部材20の内周面27およびシャフト50の軸端部51の外周面57にはスプラインが形成されておらず、内側継手部材20の内周面27およびシャフト50の軸端部51の外周面57は円筒形状をなす。
【0038】
この嵌合部構造では、内側継手部材20をシャフト50の軸端部51に軸方向に沿って圧入して内側継手部材20の軸挿入側のテーパ面25のスプライン26とシャフト50の拡径部55のスプライン56とを嵌合させながら、内側継手部材20のストッパ部70をシャフト50に加締める。このストッパ部70の加締めにより、ストッパ部70の内周面がシャフト50の軸端部51の外周面(フラットな円筒面)57に密着することで、ストッパ部70はシャフト50に強固に固定される。この嵌合部構造は、内側継手部材20のスプライン26およびシャフト50のスプライン56が軸方向に対して傾斜していることから、特に、径方向のガタ低減に有効である。
【0039】
また、図10および図11に示す実施形態の等速自在継手において、内側継手部材20とシャフト50とを結合する嵌合部62は、内側継手部材20の軸挿入側の端面28に径方向と平行に形成されたスプライン29とシャフト50のフランジ部の端面58に径方向と平行に形成されたスプライン59とで構成されている。内側継手部材20の内周面27およびシャフト50の軸端部51の外周面57にはスプラインが形成されておらず、内側継手部材20の内周面27およびシャフト50の軸端部51の外周面57は円筒形状をなす。
【0040】
この嵌合部構造では、内側継手部材20をシャフト50の軸端部51に軸方向に沿って圧入して内側継手部材20の端面28のスプライン29とシャフト50のフランジ部の端面58のスプライン59とを嵌合させながら、内側継手部材20のストッパ部70をシャフト50に加締める。このストッパ部70の加締めにより、ストッパ部70の内周面がシャフト50の軸端部51の外周面(フラットな円筒面)57に密着することで、ストッパ部70はシャフト50に強固に固定される。この嵌合部構造は、内側継手部材20のスプライン29およびシャフト50のスプライン59が径方向と平行に形成されていることから、特に、径方向のガタ低減に有効である。
【0041】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0042】
10 外側継手部材
11 トラック溝
20 内側継手部材
21 トラック溝
22,26,29 スプライン
23 内側継手部材の反軸挿入側の端面
28 内側継手部材の軸挿入側の端面
30 ボール
40 ケージ
50 軸部材(シャフト)
52,56,59 スプライン
53 凹溝
54 フラット面
55 拡径部
58 フランジ部の端面
60〜62 嵌合部
70 ストッパ部
71 鋸歯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側継手部材と、前記外側継手部材との間で軸方向変位および角度変位を許容しながらトルクが伝達される内側継手部材とを備え、前記内側継手部材を軸部材に挿入してトルク伝達可能に嵌合させた摺動式等速自在継手であって、前記内側継手部材の反軸挿入側にストッパ部を設け、前記ストッパ部を前記軸部材に加締め固定したことを特徴とする摺動式等速自在継手。
【請求項2】
前記ストッパ部は、内側継手部材の反軸挿入側の端面から軸方向に延出された円筒形状をなし、径方向外側からの加締めにより縮径可能とした請求項1に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項3】
前記内側継手部材と前記軸部材との嵌合部は、内側継手部材の内周面に軸方向と平行に形成されたスプラインと軸部材の外周面に軸方向と平行に形成されたスプラインとで構成されている請求項1又は2に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項4】
前記内側継手部材と前記軸部材との嵌合部は、内側継手部材の軸挿入側の内周面に軸方向と傾斜して形成されたスプラインと軸部材の拡径部の外周面に軸方向と傾斜して形成されたスプラインとで構成されている請求項1又は2に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項5】
前記内側継手部材と前記軸部材との嵌合部は、内側継手部材の軸挿入側の端面に径方向と平行に形成されたスプラインと軸部材のフランジ部の端面に径方向と平行に形成されたスプラインとで構成されている請求項1又は2に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項6】
前記ストッパ部の加締めにより接触する軸部材の外周部分にスプラインが形成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項7】
前記ストッパ部の加締めにより接触する軸部材の外周部分はフラット面である請求項1〜5のいずれか一項に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項8】
前記ストッパ部の加締めにより接触する軸部材の外周部分に、前記ストッパ部の加締め部分が嵌入する環状の凹溝を形成した請求項1〜7のいずれか一項に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項9】
前記軸部材の外周部分と接触するストッパ部の内周部分は、鋸歯の断面形状を有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項10】
前記外側継手部材は、軸方向に延びる直線状トラック溝が内周面の複数箇所に形成され、前記内側継手部材は、軸方向に延びる直線状トラック溝が前記外側継手部材のトラック溝と対をなして外周面の複数箇所に形成され、前記外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝との間に配されたボールと、前記外側継手部材の内周面と内側継手部材の外周面との間に介在して前記ボールを保持するケージとを備えた請求項1〜8のいずれか一項に記載の摺動式等速自在継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−225430(P2012−225430A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93940(P2011−93940)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)