説明

撓み振動型アクチュエータ

【課題】
ベースプレートと振動子保持部を一体形成とすることで、従来の撓み振動型アクチュエータよりも部品数を削減し、低背型撓み振動型アクチュエータを提供する。
【解決手段】
本発明に係る撓み振動型アクチュエータは、シムの保持部とベースプレートを一体形成し、前記ベースプレートの両側部に立設した側壁を有し、前記側壁の端部から一定の位置に切欠部を設け、前記切欠部にて前記シムを保持することを特徴とし、部品点数、組立の工程数を減らしながらも、ベースプレートの曲げ剛性が向上するため、ベースプレートの厚みを減らし、低背化することができる、撓み振動型アクチュエータを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機、携帯端末機などの小型電子機器のパネル型スピーカに利用されるアクチュエータに関するものであり、特に、表示パネル部前面の透明板などを振動板とする分布振動(Distributed Mode)方式の撓み振動型スピーカに使用される、圧電素子を使用した撓み振動型アクチュエータ(DMA:Distributed Mode Actuator)を、より薄い低背型とした撓み振動型アクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機や携帯端末機などの小型電子機器で、音楽や音声の出力方法として表示パネル部前面のタッチパネルを振動させて音を発生させる撓み振動型アクチュエータが使用されている。近年の携帯電話、携帯端末機などの小型電子機器は薄型化が進み、それに伴い使用される部品も小型、薄型化した部品が開発され、搭載されている。撓み振動型アクチュエータも同様に、従来の部品よりも低背型の部品の開発が望まれている。
【0003】
特許文献1は、従来の撓み振動型アクチュエータであり、シム1枚の上面と下面に圧電撓み振動素子を設置したバイモルフ型振動子と、ベースプレートの長手方向側に起立する折曲部を有する撓み振動型アクチュエータについて記載されている。前記折曲部に開口部を設け、前記シムの先端部に形成された凸部を前記開口部に挿入し、前記開口部の中で振動する。また、前記シムの根元側端部には、所定長にわたって、L字形状の折り曲げ部分を形成し、シムの剛性を高めている。特許文献2は、従来の撓み振動型エキサイタであり、上下2枚に配置したビームを、ケースに収容し保護する構造の振動型エキサイタが記載されている。特許文献3は従来の撓み振動型アクチュエータであり、シム1枚の上面と下面に圧電撓み振動素子を設置したバイモルフ型振動子と、ベースプレートの長手方向側に立設する折曲部を有する撓み振動型アクチュエータについて記載されている。前記シムの先端部付近の左右に形成された爪部が左右の側壁に設けられたコの字状の切欠部に挿入され、前記切欠部の中で振動する。また、前記ベースプレートの両側部には、一端側から他端部にわたって、側壁を形成し、シムの剛性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−252878公報
【特許文献2】特開2006−116399公報
【特許文献3】特願2009−245081
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の撓み振動型アクチュエータは図6に示すように、振動子70と振動子保持部61とベースプレート66からなり、ベースプレート66の長手方向側に起立する折曲部67を有し、折曲部67に開口部68を設ける。シム71の先端部に形成された凸部75が開口部68に挿入されて、凸部75は開口部68の中で振動する。また、シム71裏面に設置された圧電撓み振動子73とベースプレート66の間には、緩衝材として板状弾性体65を設置している。また、振動子70への給電用として給電用はさみ金具62を有する。特許文献2に記載の撓み振動型アクチュエータはシムと振動子保持部とベースプレートと複数の保持体からなり、ビームをケースに格納することで破損の防止対策をしている。特許文献3では、撓み振動型アクチュエータは、振動子10と振動子保持部20とベースプレート30からなり、ベースプレート30の両側部から立設した側壁35及び側壁36によってベースプレート30の剛性を増し、側壁35及び側壁36間に圧電撓み振動素子を設置する。また、振動子10への給電用として給電用端子16及び入力端子17を有する。但し、これらのベースプレート、緩衝材、ケース及び給電用端子類は、部品点数が多く、さらには部品の加工及び組立作業に精密さを要することから、工程が増え、コスト高になり、撓み振動型アクチュエータのさらなる簡略化、低コスト化が望まれている。
【0006】
そこで本発明は、ベースプレートと振動子保持部を一体形成とすることや、また、組立時に給電用端子類をシムと一体化する構造とすることにより、従来の撓み振動型アクチュエータよりも部品数を削減すること、及び組立時の作業性を大幅改善することにより、低コスト化を実現したことを特徴とする、撓み振動型アクチュエータを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の撓み振動型アクチュエータは、細長くて薄い形状の圧電撓み振動素子を上面及び/又は下面に保持するシムからなる振動子と、細長い形状のベースプレートとを備え、前記ベースプレートの一端側は、前記振動子のシムの一端側を保持する振動子保持部を形成し、前記ベースプレートの振動子保持部は、樹脂から成る前記ベースプレートの一端に一体形成された樹脂から成る保持部基部と、前記保持部基部と嵌合する樹脂から成る保持部カバーからなること、を特徴とする。
【0008】
本発明の撓み振動型アクチュエータにおける、前記ベースプレートの両側部の少なくとも一部は、立設した側壁を有すること、を特徴とする
【0009】
本発明の撓み振動型アクチュエータにおける、前記ベースプレートの両側部は、立設した側壁を有し、該側壁に形成された切欠部に、前記振動子保持部に保持された前記振動子のシムの側部の突起部分が、前記切欠部の空間内で振動できるように挿入されてなること、を特徴とする。
【0010】
本発明の撓み振動型アクチュエータにおける、前記切欠部の設置位置は、前記振動子が振動した際に、振動した前記振動子と前記ベースプレートとが接触しない位置に設置されたことを特徴とする。
【0011】
本発明の撓み振動型アクチュエータにおける、前記ベースプレートの振動子保持部は、前記保持部基部と、前記保持部カバーとを超音波にて溶着して前記シムを固定すること、を特徴とする。
【0012】
本発明の撓み振動型アクチュエータにおける、前記シムの先端は、前記ベースプレートの底面と側壁で囲まれた空間内で振動できるように挿入されたこと、を特徴とする。
【0013】
本発明の撓み振動型アクチュエータは、前記シムの一方の側に設けられた圧電撓み振動素子と、前記ベースプレートとの間に弾性接着剤を塗布、又は両面テープを貼付することを特徴とする。
【0014】
本発明の撓み振動型アクチュエータにおける、前記ベースプレートは、振動板に取り付けられてなることを特徴とする。
【0015】
本発明の撓み振動型アクチュエータにおける、前記圧電撓み振動素子の幅は、前記ベースプレートの幅内で形成されてなることを特徴とする。
【0016】
本発明の撓み振動型アクチュエータにおける、前記側壁は、前記ベースプレートの両側部から直立していることを特徴とする。
【0017】
本発明の撓み振動型アクチュエータにおける、前記シムは、一端部にシム用の給電用入力端子と、圧電撓み振動素子用の給電用端子を一体形成し設けられていることを特徴とする。
【0018】
本発明の撓み振動型アクチュエータにおける、前記シムは、一部を切断することにより、シム用の給電用入力端子と、圧電撓み振動素子用の給電用端子に分離して使用することを特徴とする。
【0019】
本発明の撓み振動型アクチュエータにおける、前記ベースプレート及び保持部カバーは、液晶ポリマー(LCP:Liquid Crystal Polymer)又はポリフェニレンサルファイド(PPS:Polyphenylenesulfide)の樹脂を材料としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る撓み振動型アクチュエータは、シムの保持部とベースプレートとを一体形成し、前記ベースプレートの両側部に立設した側壁を有し、前記側壁の端部から一定の位置に切欠部を設け、前記切欠部にて前記シムを保持することを特徴とする撓み振動型アクチュエータを提供する。前記シムの前記保持部と前記ベースプレートとを一体形成することで、部品点数、組立の工程数を大幅に減らすことができるため、従来の撓み振動型アクチュエータと比べてコストダウンをすることができる。また、前記シムの前記保持部と前記ベースプレートとを樹脂により一体形成したことにより、形成が容易であり、この点からも大幅なコストダウンを図ることが可能である。また、ベースプレート側部が立設した形状により、前記ベースプレートの曲げ剛性が向上するため、ベースプレートの厚みを減らし、低背化することができる。また、前記ベースプレートの両側部に設けた前記側壁に前記切欠部を形成し、圧電撓み振動素子を上面及び/又は下面に保持するシムの両側面に設けた爪部を前記側壁の前記切欠部に挿入することによって、前記圧電撓み振動素子の過大な撓みを規制し、圧電素子が破損することを防止する、という効果を有する。また、組立時に給電用端子類をシムと一体の構造にすることで、位置決めが容易となり、組立時の作業が大幅改善となる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る撓み振動型アクチュエータの分解斜視図である。
【図2】本発明に係る撓み振動型アクチュエータの斜視図である。
【図3】図3Aは本発明に係る撓み振動型アクチュエータの上面図、図3Bは本発明に係る撓み振動型アクチュエータの側面図、図3Cは本発明に係る撓み振動型アクチュエータの底面図、図3Dは本発明に係る撓み振動型アクチュエータのII方向から見た正面図である。
【図4】本発明に係る撓み振動型アクチュエータを携帯端末機に組み込んだ図である。
【図5】図4のIII−III線断面図である。
【図6】従来の撓み振動型アクチュエータの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る撓み振動型アクチュエータを実施するための形態について、図1乃至図3を参照して説明する。図1は、本発明に係る撓み振動型アクチュエータの分解斜視図、図2は、撓み振動型アクチュエータの斜視図、図3Aは本発明に係る撓み振動型アクチュエータの上面図、図3Bは本発明に係る撓み振動型アクチュエータの側面図、図3Cは本発明に係る撓み振動型アクチュエータの底面図、図3Dは本発明に係る撓み振動型アクチュエータのII方向から見た正面図である。
【0023】
図1乃至図3に示すように、本発明に係る撓み振動型アクチュエータは、金属片からなるシム11の一方の側に圧電撓み振動子12を設け、さらに他方の側にも圧電撓み振動子13を設けたバイモルフ型の振動子10と、振動子保持部20と、給電用端子16及び入力端子18と、ベースプレート30とからなる。バイモルフ型とは、アクチュエータの振動子の構造であり、薄手の圧電素子2枚で金属板(シム)を挟む構造をいう。
【0024】
本発明に係る撓み振動型アクチュエータはバイモルフ型を使用した形態であるが、薄手の圧電素子1枚を金属板(シム)の片面に設置した、ユニモルフ型を使用しても良い。
【0025】
圧電素子に電圧をかけることにより、圧電素子が伸縮すると貼り合わせた金属板の寸法は変わらないため、反りが生ずる。この反りにより発生する振動や変位を利用する。振動子10に電圧を供給すると、シム11の撓み振動が振動子保持部20とベースプレート30を介して振動板40(例えば、携帯電話機や携帯端末機などの小型電子機器の表示パネル部前面のタッチパネル)に伝播される。また、圧電素子に加える電圧よって振動の強度や変位が変化する。また、振動を効率よく広域に渡り伝達するために、ベースプレート30の振動子保持部20側に上面の弾性接着剤塗布部32に、弾性接着剤(図示せず)を塗布することによって、振動の伝達面積が拡大し、音響特性が優れる。
【0026】
シム11は、全体が細長くて薄い矩形形状の金属板からなり、圧電素子である圧電撓み振動子12は、図1及び図2に示すように、シム11の表面に接着され、圧電素子である圧電撓み振動子13は、シム11の裏面に接着される。また、シム11は、図1及び図2に示すように、長手方向の一方の端部に近接する側面に凸状の爪部14及び爪部15が形成され、他方の端部には、給電用端子16、給電用端子接触部17、給電用の入力端子18、シム嵌合部19及び端子連結部29が一体形成された形状となっている。入力端子18及びシム嵌合部19はシム11から二股に分かれた凹字形に形成されており、凹字に窪んだ箇所には、給電用端子16の他端である給電用端子接触部17が配置され、入力端子18、給電用端子接触部17、シム嵌合部19の順番で、長手方向に平行に形成される。給電用端子16と入力端子18とは端子連結部29によって繋がって形成されている。ここでI−I線で端末用連結部をシム11から切り離すと、シム11、入力端子18及びシム嵌合部19からなる1の部品と、給電用端子16と給電用端子接触部17からなる1の部品の、2つの部品に分離する。
シム11の材質は、ステンレス鋼やアルミ合金などの硬めの材質が好適であり、摩擦損失が少なく、高Q値の素材を使用することが望ましい。これらの材質を用いることによって、音響特性、励振効率が良好となる。
【0027】
また、圧電撓み振動子12は、図1及び図2に示すように、シム11の表面側に長手方向に沿って接着される。この圧電撓み振動子12は、薄く細長い矩形形状で形成されており、下面、すなわちシム11の表面側の接着面には接着剤(図示せず)が塗布されて接着される。また、給電用端子接触部17と接触する圧電撓み振動子12の端部は導電部(図示せず)となっており、給電用端子16に印加すると、給電用端子接触部17から導電接着剤28(図2及び図3に示す)を経由して圧電撓み振動子12に通電される。また、導電部(図示せず)の周囲は絶縁部となっており、圧電撓み振動子12の長手方向の他方の端部には対極となる導電部が設けられ(図示せず)、シム11と通電する。圧電撓み振動子13は、圧電撓み振動子12と同じく、細長くて薄い矩形形状をしており、上面、すなわちシム11の裏面側の接着面には接着剤(図示せず)が塗布されて接着される。給電についても、圧電撓み振動子12と同じく、給電用端子接触部17と接触する圧電撓み振動子13の端部は導電部(図示せず)となっており、給電用端子16に印加すると、給電用端子接触部17から導電接着剤(図示せず。導電接着剤28とシム11を介して対称であり、同様の構成と成っている)を経由して圧電撓み振動子13に通電される。また、導電部(図示せず)の周囲は絶縁部となっており、圧電撓み振動子13の長手方向の他方の端部には対極となる導電部が設けられ(図示せず)、シム11と通電する。
【0028】
ベースプレート30は、樹脂で形成されており、ベースプレート底面31と側壁35及び側壁36とからなり、長手方向の一端側には、図1乃至図3に示すように、幅方向の両側部から立設(直立が望ましい)して一端から他端まで連続した側壁35及び側壁36を形成し、側壁35及び側壁36には開口した切欠部37及び切欠部38を形成する。切欠部37(切欠部38)は、上辺が側壁35(側壁36)の上端に接触し、底辺が側壁35(側壁36)の底辺(ベースプレート底面31)に接触しない範囲に設けられる。切欠部37(切欠部38)に爪部15(爪部14)が挿入され、切欠部37(切欠部38)の開口された空間内で爪部15(爪部14)が垂直方向に揺動する。切欠部37(切欠部38)は爪部15(爪部14)の上方への揺動を規制すべく、底辺に比べて上辺が狭く設けられている。本発明では切欠部37(切欠部38)は逆L字形状(L字形状)を形成している。また、他端側にはシム11を固定するための保持部基部21がベースプレート30と一体形成されている。
【0029】
本発明に係るベースプレート30は、側壁35及び側壁36が一端から他端まで連続した形状を説明したが、一部分のみにおいて側壁35及び側壁36が形成される構成等、一端から他端まで連続していない形状でもよい。また、側壁35及び側壁36の高さは、切欠部38に爪部14を及び、切欠部37に爪部15を挿入できる高さであればよい。
【0030】
また、側壁35及び側壁36の間には、ベースプレート底面31の上面の長手方向に沿って保持部基部21側に隣接して弾性接着剤塗布部32に弾性接着剤を塗布、又は両面テープを貼付する。
【0031】
前記切欠部37及び切欠部38は、シム11の爪部14及び爪部15が挿入され、シム11本体は側壁35及び側壁36の間に設置される。切欠部37及び切欠部38はベースプレート30の端部から離れた位置に形成される。形成位置は、ベースプレート30の振動子保持部20側の一端から爪部15(爪部14)間の距離L1と爪部15(爪部14)からベースプレート30の先端との間の距離L2とする。振動子10を振動させる。この時、L1が長くL2が短すぎると、撓んだ圧電撓み振動子13の中間部とベースプレート底面31がL1の範囲で接触する。また、L1が短くL2が長すぎると、撓んだ圧電撓み振動子13の先端が、L1の範囲でベースプレート底面31と接触する。圧電撓み振動子13とベースプレート底面31が接触すると、圧電撓み振動子13が破損する。このような落下時の撓みによる接触が発生しないようにL1及びL2の設置を決定する。撓みによる接触が発生しなければ、L1及びL2の設置は任意でよい。また、L1がL2よりも長くなるように設置すると音響の面から好適である。
【0032】
シム11とベースプレート30は、縦方向には切欠部37及び切欠部38の開口以上に振れないように、横方向にはシム11が側壁35及び側壁36の間でずれないように、規制する作用を有している。また、本発明に係る切欠部37及び切欠部38は、側壁35及び側壁36の上端部を一部切り欠いた逆L字形状(L字形状)を示したが、爪部14及び爪部15を保持可能な構造であればよく、例えば、円形状や多角形状の孔など、側壁の上端を切り欠かない形状であっても良い。
【0033】
上記のような圧電撓み振動子12及び圧電撓み振動子13は、チタン酸バリウムなどの圧電セラミックの薄板で、電極層で挟みながら複数枚積層した構造などが好適であり、また、チタン酸バリウムなどは比較的脆い圧電材料であるため、過大な撓み振動が発生すると、破損するおそれがある。この過大な撓み振動は、信号よりも、むしろ、このアクチュエータが装着された携帯電話機などの小型電子機器が、コンクリートなどの硬い床に落下した時の衝撃によって発生する場合が多い。この衝撃を抑制するため、切欠部37及び切欠部38でシム11の爪部14及び爪部15の過大な振れを規制し、さらには側壁35及び側壁36で振動子10を保護する構成としている。
【0034】
次に、振動子保持部20について説明する。
図1乃至図3に示すように、振動子保持部20は、樹脂を主成分とし、ベースプレート30に一体形成された保持部基部21と、保持部基部21の上部に嵌合する、樹脂を主成分とする保持部カバー22からなる。なお、樹脂は、液晶ポリマー(LCP)やポリフェニレンサルファンド(PPS)などの硬い材料が好適である。保持部基部21には、給電用端子16が嵌合する給電用端子溝25と、入力端子18が嵌合する入力端子溝23と、シム嵌合部19が嵌合する入力端子溝24が形成される。また、入力端子溝23、入力端子溝24及び給電用端子溝25の内部にはそれぞれ、嵌合用凸部26a乃至26cが一体形成され、それぞれがシム11の対応する嵌合孔27a乃至27cに貫通する。
【0035】
保持部カバー22は、保持部基部21と嵌合し、振動子保持部20を形成する。保持部カバー22の左右側部にはそれぞれ保持部嵌合凸部221及び保持部嵌合凸部222が設けられ、側壁35には保持部嵌合凹部33、側壁36には保持部嵌合凹部34が設けられる。保持部カバー22と保持部基部21を重ねると、保持部嵌合凸部221と保持部嵌合凹部33が嵌合し、保持部嵌合凸部222と保持部嵌合凹部34が嵌合し、固定される。また、保持部カバー22の底面には嵌合用凸部26a、26b及び26cに対応する窪み(図示せず)を設けてもよい。これらの凹凸部や窪みは、保持部カバー22が当初の設置位置からずれないようにする機能を有するものであれば、どのような形状でもよい。
【0036】
保持部基部21とシム11を組み合わせ、保持部カバー22を被せ、保持部基部21と保持部カバー22とを溶着することにより、シム11を振動子保持部20を固定する。また、図1及び図2に示すように、給電用端子16及び入力端子18は、振動子保持部20からシム11の反対側に露出する。
【0037】
振動子保持部20に形成された入力端子溝23に勘合し、振動子保持部20露出した入力端子18は、シム11の一端側に形成されており、シム11に給電できるようになっている。また、給電用端子溝25に嵌め込まれた給電用端子16は、振動子保持部20からシム11側に給電用端子接触部17を露出し、給電用端子接触部17に塗布された導電接着剤28によって、圧電撓み振動子12の端部に設置された電極部(図示せず)及び圧電撓み振動子13の端部に設置された電極部(図示せず)と接触し、給電できるようになっている。入力端子18を有するシム11は連接部を介して端子連結部29と一体形成されており、シム11を振動子保持部20に固定後、端子連結部29を切り離して使用する。
【0038】
次に、ベースプレート底面31の振動子保持部20側に上面の弾性接着剤塗布部32に塗布された弾性接着剤は、振動子10の振動の振幅を抑制(ダンプ)することで慣性振動となり、最低次の固有振動数(共振周波数)を従来の低音域から中音域にまで高めることができる。この結果、中音域の振動エネルギーが増加し、ベースプレート30に伝達する振動特性が平坦化され、この結果広帯域な周波数特性が得られる。また、圧電撓み振動子13と接触し、振動子10の振動を伝播する面積が拡張することで効率よくベースプレート30に伝達することができるという用途もある。
【0039】
図1に示す振動板40は、主に、携帯電話機や携帯端末機の表示パネルの保護板を使用することができ、振動子保持部20から振動子10の圧電撓み振動子12及び圧電撓み振動子13を振動させて音を出力する。振動板40はタッチパネル形式でも良く、透明な素材など種々の素材を用いることができる。
【0040】
本発明に係る撓み振動型アクチュエータのシム11、圧電撓み振動子12、圧電撓み振動子13、振動子保持部20は、全体として長手状に形成されているが、それらの幅方向は、図1乃至図3に示すように、シム11はベースプレート30よりもやや小さく、その他の構成物はベースプレート30の幅内で形成されているので、全体として小型に構成されている。また、各々の厚みも薄く形成しているので、全体として高さ方向も薄く構成されている。
【0041】
本発明に係る撓み振動型アクチュエータの組立方法について説明する。
図1及び図2に示すように、まず、圧電撓み振動子12及び圧電撓み振動子13を接着剤(図示せず)によってシム11に接着した振動子10を、シム11に形成された嵌合孔27a乃至27cと保持部基部20に形成された嵌合用凸部26a、26b及び26cが嵌め合う位置に設置する。
【0042】
このとき、シム11の爪14は切欠部38に挿入され、爪部15は切欠部37に挿入され、それぞれこの切欠部37及び切欠部38の空間内をシム11の爪部14及び爪部15が振動できるようになっている。また、シム11の先端部はベースプレート30の底面と側壁35及び側壁36に挟まれた空間内に配置され、この空間内で振動する。
【0043】
そして、保持部カバー22を保持部基部21の上部に被せる。保持部カバー22の左右側部に形成された保持部嵌合凸部221及び保持部嵌合凸部222と、側壁35に形成された保持部嵌合凹部33と及び側壁36に形成された保持部嵌合凹部34が嵌合することにより、組立が容易なり、部品同士がずれることが無くなるばかりか、組立の精度が向上する。保持部基部21と保持部カバー22は超音波により溶着させる。嵌合用凸部26a、26b及び26cは保持部カバー22の裏面と接触しているので、嵌合用凸部26a、26b及び26cの先端部を超音波で融解し、保持部カバー22に溶着させる。超音波溶着は、従来の方法である保持部材をベースプレートの側壁でかしめて固定する方法と比較して、部品が削減による、組立作業工程の削減、部材をかしめる精度、組立に位置決め等の精度誤差が無くなるので、作業の簡素化及び組立の精度の向上という効果が得られる。また、保持部カバー22と保持部基部21は嵌合用凸部26a、26b及び26cの先端部自体を超音波で溶着させることから、接着剤を使用して接着した場合に比べて、嵌合用凸部26a、26b及び26cの先端部自体が媒介となるため、媒介の存在によって厚みが増してしまうことはなく、また、接着剤が固着するまでの待ち時間の必要がないことで生産性も向上する。
【0044】
ベースプレート30の振動子保持部20に隣接する弾性接着剤塗布部32には、弾性接着剤が塗布され、ベースプレート30と圧電撓み振動子13を接着する。弾性接着剤の厚みは0.24mmであるため、弾性接着剤が塗布されていないベースプレート30のベースプレート底面31と圧電撓み振動子13の先端部は0.24mmの空間を有し、この空間を振動子10が撓み振動する。また、弾性接着剤に代えて、両面テープを貼付してもよい。
【0045】
ここで、振動子保持部20の圧電撓み振動子12の他端からは、給電用端子16、入力端子18、端子連結部29が露出する。そしてI−Iの位置(図1に示す)で切断することによって、3つの部材に分割される。1つの部材は切断した端子連結部29であり、他の1つの部材は、入力端子18及びシム嵌合部19を有するシム11であり、他の1つの部材は、一端が給電用端子16、他端が給電用端子接触部17から成る部材である。振動子保持部20の内部にて接触することは無く、それぞれ電気的に独立しているので、シム11に電気的に連接している入力端子18と、給電用端子接触部17に電気的に連接している給電端子16とを介することにより、圧電撓み振動子12及び圧電撓み振動子13に通電可能となる。
【0046】
各構成物を図3に示すように組み合わせることで、撓み振動型アクチュエータ1が構成される。なお、本発明に係る撓み振動型アクチュエータの組立の順番については、適宜変えてよいことは勿論である。
【0047】
本発明に係る撓み振動型アクチュエータ1は、ベースプレート30に保持部基部21、側壁35、側壁36、切欠部37及び切欠部38を設け、シム11を保持している。側壁を設け、側壁、保持部基部21及びベースプレート30を一体形成することによって、圧電撓み振動子12及び圧電撓み振動子13の保護を兼ねると共に、部品数の削減と、ベースプレート30の剛性が向上する。
【0048】
また、作成工程に於いては樹脂によってベースプレート30と振動子保持部20(保持基部21)を一体形成するために、従来の係止爪、ベースプレート先端部の立設部などの型抜きや形成、組立時のかしめ加工等が不要となる。従来の長手方向側に起立する折曲部の加工は、折曲部の角度の調整に精度を必要としているため加工が困難となる恐れがあり、係止爪の折り曲げなど加工によって製品の個体差によるばらつきが発生する可能性があった。しかしながら、本発明のベースプレートは樹脂によって一体形成するために従来の加工が不要となり、作業工程を低減することができ、そして、製品毎のばらつきが無い等の高精度な製品を提供することができる。また、構成部品を削減することができる。このように、一体形成することによって、構成部品の削減、作業工数の低減、製品精度の向上、コストダウン化、部品管理の簡素化、低背化及び軽量化、等を図ることができる。
【0049】
また、図6に示す先行技術に係る発明では落下時の保護として緩衝材となる板状弾性体をベースプレートに貼付していたが、本発明では切欠部37及び切欠部38で保護することができるため、板状弾性体が削除できる。また、従来の弾性板状体を接着剤で接着していたものを、本発明では弾性体を兼ねる弾性接着剤のみ構成としたため、部品を削減することができる。また、従来の板状弾性体の厚さは0.33mmであり、弾性板状体に塗布する接着剤の厚さが、前記板状弾性体の厚さとほぼ同じ厚さになるように、ベースプレートと振動子の離間間隔を調整していた。本発明では、厚さ0.33mmの板状弾性体が削除できたため、振動子とベースプレート間は弾性接着剤の、厚さ0.24mmとなり、従来よりも低背化することができる。これにより、構成部品をさらに減少することが可能となり、作成工数の削減、低背化、軽量化及びコストダウン化することができる。
【0050】
次に、本発明に係る撓み振動型アクチュエータの動作について説明する。
本発明に係る撓み振動型アクチュエータのベースプレート30の切欠部37及び切欠部38の空間内に振動可能に挿入されるシム11の爪部14及び爪部15は、先端が自由端となっており、音響振動用として作用する。
【0051】
本発明に係る撓み振動型アクチュエータ1の給電用端子16及び入力端子18を交流電源(図示せず)に接続して、振動子10を構成するシム11と、シム11の表面側と裏面側に設置された圧電撓み振動子12及び圧電撓み振動子13に交流電圧を印加する。圧電撓み振動子12及び圧電撓み振動子13は、互いに逆極性となるような厚み方向への分極が形成されているため、厚み方向に伸縮が生じる。電圧は交流なので、交互に反対方向への伸縮を行う。ここで、シム11は伸縮しないため、シム11には圧電撓み振動子12及び圧電撓み振動子13の伸縮に合わせて撓みが生ずる。
【0052】
シム11が撓むと、その先端と振動子保持部20とが上下方向に互いに逆向きに変位する。シム11の先端の自由端が下方に変位すると、その反作用(慣性力)によって、その振動子保持部20が上方に変位し、その結果、ベースプレート30を介して振動板40が上方に変位する。振動板40が変位することで、振動板40に振動が発生し、音を発生する。
【0053】
なお、本発明に係る撓み振動型アクチュエータでは交流電源(図示せず)への接続を説明したが、直流電源の印加の有無の繰り返しによる制御や、矩形波を用いてもよい。
【0054】
[実施例1]
図4は、本発明に係る撓み振動型アクチュエータに適用した実施例であり、図5は、図4のIII−III線断面図である。携帯端末機50は、フィルム54とガラス55でなる振動板を兼ねるタッチパネル部51と、表示部52と、操作部53と、撓み振動型アクチュエータ2a及び2bと、クッション56a及び56bと、クッション57a及び57bとを有する。
【0055】
タッチパネル部51のガラス55は、図4及び図5に示すように薄く透明な板状であり、上面にフィルム54を接着している。ガラス55とフィルム54の間には透明導電膜(図示せず)及びドットスペーサ(図示せず)を有する。ガラス55の下面には表示部52にクッション57a及び57bが接着されおり、クッション57a及び57bの他端は表示部52に接着されている。また、表示部52の外側に撓み振動型アクチュエータ2a及び2bが、ガラス55に接着剤で直接接着されている。また、ガラス55の下面外縁部はクッション56a及び56bが接着されており、クッション56a及び56bの他端は、筐体50に接着されている。
【0056】
タッチパネル部51のフィルム54はガラス55と同じ大きさに形成された薄く透明な板状であり、下面をガラス55に接着されている。フィルム54の表面を使用者が触覚入力すると、フィルム54が撓み、ガラス55とフィルム54の間に設置された透明導電膜とドットスペーサが接触することで電流が流れ、タッチパネル部に入力があったことを検出する。
【0057】
使用者は、携帯端末機50への入力を操作部53又はタッチパネル部51を操作して行い、携帯端末機50は入力に対して、表示・音声・振動等によって応答する。ここで音声は撓み振動型アクチュエータ2a及び2bが振動することにより、タッチパネル部51に伝達し、タッチパネル部51を振動させて音声を出力する。
【0058】
従来の撓み振動型アクチュエータを設置した携帯端末機は、振動板を兼ねるタッチパネル部51を押した(タッチした)際に、タッチパネル部に接着されている撓み振動型アクチュエータのベースプレートに圧力が掛かり、ベースプレートが著しく撓む場合がある。その際、著しく撓んだベースプレートと振動子が接触し、異音が発生する可能性があった。ベースプレートが薄いため剛性が不足するためである。
【0059】
本発明の撓み振動型アクチュエータを設置した場合、本発明のベースプレート30は従来のベースプレートの約2倍の剛性を持つため、タッチパネル部51を押した(タッチした)際にベースプレートに圧力が掛っても撓みが発生しづらい。ベースプレートが撓みづらいため、撓んだベースプレートと振動子が接触し、異音が発生するという問題点を解消することができる。また、一体形成としたことで、従来の撓み振動型アクチュエータの厚みを低背化しているため、携帯端末機50の厚みも薄くすることができる。
【0060】
本発明に係る撓み振動型アクチュエータは、上記実施形態や実施例に限定されるものではなく、改良の目的または本発明の趣旨の範囲内において適宜改良または変更することができることは勿論である。
【符号の説明】
【0061】
1 撓み振動型アクチュエータ
10 振動子
11 シム
12、13 圧電撓み振動子
14、15 爪部
16 給電用端子
17 給電用端子接触部
18 入力端子
19 シム嵌合部
20 振動子保持部
21 保持部基部
22 保持部カバー
221、222 保持部嵌合凸部
23、24 入力端子溝
25 給電用端子溝
26a、26b、26c 嵌合用凸部
27a、27b、27c 嵌合孔
28 導電接着剤
29 端子連結部
30 ベースプレート
31 ベースプレート底面
32 弾性接着剤塗布部
33、34 保持部嵌合凹部
35、36 側壁
37、38 切欠部
40 振動板
50 携帯端末機
51 タッチパネル部
52 表示部
53 操作部
54 フィルム
55 ガラス
56a、56b クッション
57a、57b クッション
60 撓み振動型アクチュエータ
61 振動子保持部
62 給電用端子
64 弾性板状体
65 板状弾性体
66 ベースプレート
67 折曲部
68 開口部
70 振動子
71 シム
72、73 圧電撓み振動子
74 おもり
75 凸部
78、79 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長くて薄い形状の圧電撓み振動素子を上面及び/又は下面に保持するシムからなる振動子と、
細長い形状のベースプレートとを備え、
前記ベースプレートの一端側は、前記振動子のシムの一端側を保持する振動子保持部を形成し、
前記ベースプレートの振動子保持部は、樹脂から成る前記ベースプレートの一端に一体形成された樹脂から成る保持部基部と、前記保持部基部と嵌合する樹脂から成る保持部カバーからなること、
を特徴とする撓み振動型アクチュエータ。
【請求項2】
前記ベースプレートの両側部の少なくとも一部は、立設した側壁を有すること、
を特徴とする請求項1に記載の撓み振動型アクチュエータ。
【請求項3】
前記ベースプレートの両側部は、立設した側壁を有し、該側壁に形成された切欠部に、前記振動子保持部に保持された前記振動子のシムの側部の突起部分が、前記切欠部の空間内で振動できるように挿入されてなること、
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の撓み振動型アクチュエータ。
【請求項4】
前記切欠部の設置位置は、前記振動子が振動した際に、
振動した前記振動子と前記ベースプレートとが接触しない位置に設置されたこと、
を特徴とする請求項3に記載の撓み振動型アクチュエータ。
【請求項5】
前記ベースプレートの振動子保持部は、
前記保持部基部と、前記保持部カバーとを超音波にて溶着して前記シムを固定すること、
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の撓み振動型アクチュエータ。
【請求項6】
前記シムの先端は、前記ベースプレートの底面と側壁で囲まれた空間内で振動できるように挿入されたこと、
を特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1に記載の撓み振動型アクチュエータ。
【請求項7】
前記シムの一方の側に設けられた圧電撓み振動素子と、前記ベースプレートとの間に弾性接着剤を塗布、又は両面テープを貼付すること、
を特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1に記載の撓み振動型アクチュエータ。
【請求項8】
前記ベースプレートは、振動板に取り付けられてなることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1に記載の撓み振動型アクチュエータ。
【請求項9】
前記圧電撓み振動素子の幅は、前記ベースプレートの幅内で形成されてなることを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか1に記載の撓み振動型アクチュエータ。
【請求項10】
前記側壁は、前記ベースプレートの両側部から直立していること
を特徴とする請求項1乃至請求項9の何れか1に記載の撓み振動型アクチュエータ。
【請求項11】
前記シムは、一端部にシム用の給電用入力端子と、圧電撓み振動素子用の給電用端子を一体形成し設けられていること
を特徴とする請求項1乃至請求項10の何れか1に記載の撓み振動型アクチュエータ。
【請求項12】
前記シムは、一部を切断することにより、シム用の給電用の入力端子と、圧電撓み振動素子用の給電用端子に分離して使用すること、
を特徴とする請求項1乃至請求項11の何れか1に記載の撓み振動型アクチュエータ。
【請求項13】
前記ベースプレート及び保持部カバーは、液晶ポリマー(LCP)又はポリフェニレンサルファイド(PPS)の樹脂を材料としたことを特徴とする、請求項1に記載の撓み振動型アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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