説明

撮像モジュール

【課題】 前ケースと後ケースとブラケットとを取り付ける締結部を小型化しつつ高い位置決め精度を確保することで、撮像モジュール自体を小型化し、また、ブラケットを自動車等に締結した際に、光軸がずれることを抑えて高精度の画像を得ることができるようにすること。
【解決手段】 撮像モジュール1は、レンズユニット2が被写体側に装着されている前ケース3と、前ケース3に取り付けられて撮像基板8を前ケース3との内側空間に封止する後ケース4と、後ケース4に取り付けられたブラケット5とを具備し、前ケース3に後ケース4が、ねじ止め穴3aおよびケースねじ止め貫通孔4aにねじ込まれたケース締結用ねじ10によって取り付けられているとともに、ケースねじ止め貫通孔4aに位置決め突部5aが挿入されることによって、後ケース4がブラケット5に位置決めされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体イメージセンサ等から成る撮像素子を用いた撮像モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等に取り付けるためのブラケットを有する従来の撮像モジュールは、例えば、以下のような構成を有している。
【0003】
レンズユニットが被写体側に装着されているとともに、撮像素子を搭載した撮像基板がレンズユニットに撮像素子を対向させて被写体側と反対側の部位に設置されている前ケースと、前ケースに取り付けられて撮像基板を前ケースとの内側空間に封止している後ケースと、後ケースに取り付けられたブラケットとを有する構成である。
【0004】
このような構成の従来の撮像モジュールにおいては、前ケースと後ケースとを第1のねじによってねじ止めして取り付け、さらに後ケースとブラケットとを第2のねじによってねじ止めして取り付け、高精度の位置決めをする為に位置決め用突起と穴を設置していた。そして、第1のねじと第2のねじと位置決め用突起は、それぞれ別々に配置されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−72856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の撮像モジュールにおいては、前ケースと後ケースとを第1のねじによってねじ止めして取り付け、さらに後ケースとブラケットとを、第1のねじとは別個のねじ止め部にねじ込まれた第2のねじによってねじ止めして取り付けて、さらに位置決め構造を配置していた。その結果、締結部が大型になり、撮像モジュール自体も大型になるという問題点があった。
【0007】
ところが、締結部を小型化するために、位置決め構造の設置を省略すると、ケースとブラケットの位置は一義的に定まらず、光軸がずれて画質が劣化するという問題点があった。
【0008】
従って、本発明は、上記従来の問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的は、前ケースと後ケースとブラケットとを取り付ける締結部を小型化しつつ高い位置決め精度を確保することで、撮像モジュール自体を小型化し、また、ブラケットを自動車等に締結した際に、光軸がずれることを抑えて高精度の画像を得ることができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の撮像モジュールは、レンズユニットが被写体側に装着されているとともに、撮像素子を搭載した撮像基板が前記レンズユニットに前記撮像素子を対向させて被写体側と反対側の部位に設置されている前ケースと、該前ケースに取り付けられて前記撮像基板を前記前ケースとの内側空間に封止している後ケースと、該後ケースに取り付けられた外部取付用のブラケットとを具備しており、前記前ケースにねじ止め穴が、前記後ケースにケースねじ止め貫通孔が、前記ブラケットに前記後ケースの位置決め突部がそれぞれ形成されており、前記前ケースに前記後ケースが、前記ねじ止め穴および前記ケースねじ止め貫通孔にねじ込まれたケース締結用ねじによって取り付けられているとともに、前記ケースねじ止め貫通孔に前記位置決め突部が挿入されることによって、前記後ケースが前記ブラケットに位置決めされていることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の撮像モジュールは、上記の構成において前記ケース締結用ねじは、ねじ山を有する本体部および該本体部よりも大径の頭部を有しており、前記位置決め用突起は円柱状に形成されており、その径が前記ケース締結用ねじの頭部の径よりも大きいことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の撮像モジュールは、上記の構成において、前記ケースねじ止め貫通孔および前記位置決め用突部を、複数組有することを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の撮像モジュールは、上記の構成において、前記ケースねじ止め貫通孔を複数有し、うち少なくとも1つに対応して前記ブラケットにブラケットねじ止め貫通孔が形成されており、前記後ケースに前記ブラケットが、前記ケースねじ止め貫通孔および前記ブラケットねじ止め貫通孔にねじ込まれた、前記ケース締結用ねじよりも大径のブラケット締結用ねじによって取り付けられていることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の撮像モジュールは、上記の構成において、前記ケース締結用ねじおよびブラケット締結用ねじはそれぞれ、ねじ山を有する本体部および該本体部よりも大径の頭部を有しており、前記ブラケット締結用ねじの前記本体部の径が前記ケース締結用ねじの頭部の径よりも大きいことを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の撮像モジュールは、上記の構成において、前記ブラケット締結用ねじは、前記ケース締結用ねじよりも前記本体部が長いことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の撮像モジュールは、レンズユニットが被写体側に装着されているとともに、撮像素子を搭載した撮像基板がレンズユニットに撮像素子を対向させて被写体側と反対側の部位に設置されている前ケースと、前ケースに取り付けられて撮像基板を前ケースとの内側空間に封止している後ケースと、後ケースに取り付けられた外部取付用のブラケットとを具備しており、前ケースにねじ止め穴が、後ケースにケースねじ止め貫通孔が、ブラケットに後ケースの位置決め突部がそれぞれ形成されており、前ケースに後ケースが、ねじ止め穴およびケースねじ止め貫通孔にねじ込まれたケース締結用ねじによって取り付けられているとともに、ケースねじ止め貫通孔に位置決め突部が挿入されることによって、後ケースがブラケットに位置決めされていることから、ねじ止め構造と位置決め構造を同軸的に配置することができ、撮像モジュールを大幅に小型化することができると同時に、高い位置決め精度を有することによって、光軸のずれを抑えて高精度の画像を得ることができる。
【0016】
また、位置決め用突起が円柱状に形成され、その径がケース締結用ねじの頭部の径よりも大きいことから、ケース締結用ねじの頭部の径を小さくしてねじ止め貫通孔への挿入がスムーズとなるようにしても、位置決め用突起をケースねじ止め貫通孔へ挿入した状態での遊びを少なくしてブラケットと後ケースの精度の良い位置決めを行なうことができる。
【0017】
また、ケースねじ止め貫通孔および前記位置決め用突部を、複数組有することで、より精度の高い良い位置決めが可能となる。
【0018】
また、ケースねじ止め貫通孔を複数有し、うち少なくとも1つに対応してブラケットねじ止め貫通孔が形成されており、ケースねじ止め貫通孔およびブラケットねじ止め貫通孔にねじ込まれたケース締結用ねじよりも大径のブラケット締結用ねじによって、後ケースにブラケットが取り付けられていることによって、精度良く位置決めされた後ケースとブラケットの位置関係をしっかりと固定することができる。
【0019】
また、ブラケット締結用ねじがケース締結用のねじよりも大径であることから、後ケースとブラケットとを強固に取り付けることができる。その結果、外部の自動車等にねじ止めによって取り付けられるブラケットに加わるねじ止めによる応力の後ケースに対する影響を小さくすることができる。従って、レンズユニットと撮像素子との間の光軸長さが変化したり、光軸がずれたりすることを抑えて、高画質の画像を得ることができる。
【0020】
また、本発明の撮像モジュールは、上記の構成において、ケース締結用およびブラケット締結用ねじはそれぞれ、ねじ山を有する本体部およびその本体部よりも大径の頭部を有しており、ブラケット締結用ねじの本体部の径がケース締結用のねじの頭部の径よりも大きいときには、ケース締結用のねじをブラケット締結用ねじ止め貫通孔を通してねじ止め穴およびケース締結用のねじ止め貫通孔にねじ込むことが容易になる。また、後ケースとブラケットとをより強固に取り付けることができ、外部の自動車等にねじ止めによって取り付けられるブラケットに加わるねじ止めによる応力の後ケースに対する影響をより小さくすることができる。従って、レンズユニットと撮像素子との間の光軸長さが変化したり光軸がずれたりすることをより抑えることができる。
【0021】
また、本発明の撮像モジュールは、上記の構成において、ブラケット締結用ねじは、ケース締結用のねじよりも本体部が長いときには、後ケースとブラケットとをより強固に取り付けることができ、外部の自動車等にねじ止めによって取り付けられるブラケットに加わるねじ止めによる応力の後ケースに対する影響をより小さくすることができる。従って、レンズユニットと撮像素子との間の光軸長さが変化したり光軸がずれたりすることをより抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の撮像モジュールについて実施の形態の1例を示す基本構成の斜視図である。
【図2】図1の撮像モジュールのA−A線における縦断面図である。
【図3】本発明の撮像モジュールについて実施の形態の1例を示す構成の斜視図である。
【図4】図1の撮像モジュールのB−B線における縦断面図である。
【図5】本発明の撮像モジュールのケースの底面から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の撮像モジュールの実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0024】
図1、図2は、本発明の撮像モジュールの実施の形態の一例を示し、図1は撮像モジュールの基本構成の斜視図、図2は図1のA−A線における縦断面図である。
【0025】
本実施の形態の撮像モジュール1は、レンズユニット2が被写体側に装着されているとともに、撮像素子7を搭載した撮像基板8がレンズユニット2に撮像素子7を対向させて被写体側と反対側の部位に設置されている前ケース3と、前ケース3に取り付けられて撮像基板8を前ケース3との内側空間に封止している後ケース4と、後ケース4に取り付けられた外部取付用のブラケット5とを具備しており、前ケース3にねじ止め穴3aが、後ケース4にケースねじ止め貫通孔4aが、ブラケット5に位置決め突部5aがそれぞれ形成されており、前ケース3に後ケース4が、ねじ止め穴3aおよびケースねじ止め貫通孔4aにねじ込まれたケース締結用ねじ10によって取り付けられているとともに、ケースねじ止め貫通孔4aにケース締結用ねじ10の頭部よりも径の大きい位置決め突部5aが挿入されることによって、後ケース4がブラケット5に位置決めされている。
【0026】
上記の構成により、ケース締結用ねじ10および位置決め突部5aを同軸的に配置することができ、前ケース3と後ケース4を取り付けるねじ止め部と後ケース4をブラケット5に位置決めする位置決め部とが占める面積とを重複させることで削減して、撮像モジュール1自体をも小型化することができる。
【0027】
ケース締結用ねじ10および位置決め突部5aは同軸的に配置されるが、完全に同軸上に配置される必要はなく、ケース締結用ねじ10の軸と位置決め突部5aの軸とは若干ずれていてもよい。例えば、ケース締結用ねじ10の軸と位置決め突部5aの軸とが2mm以下程度ずれていてもよい。
【0028】
また、ケースねじ止め貫通孔4aと位置決め突部5aの組は複数組あることがよい。この場合、前ケース3と後ケース4とブラケット5とを取り付ける際に、レンズユニット2および撮像素子7のブラケット5への取り付け位置がずれることをより抑えて精度良く取り付けることができる。
【0029】
また、ケースねじ止め貫通孔4aが複数あり、図3に示すように、うち少なくとも1つに対応してブラケット5には位置決め突部5aの替わりにブラケットねじ止め貫通孔5bを形成し、図1のB−B線における縦断面図である図2に示すように、前ケース3に後ケース4が、ねじ止め穴3aおよびケースねじ止め貫通孔4aにねじ込まれたケース締結用ねじ10によって取り付けられているとともに、後ケース4にブラケット5が、ケースねじ止め貫通孔4aおよびブラケットねじ止め貫通孔5bにねじ込まれた、ケース締結用ねじ10よりも大径のブラケット締結用ねじ11によって取り付けられるようにしてもよい。
【0030】
更には、図5に示すように、複数のケースねじ止め貫通孔4aのうち、孔の開口が円形ではなく長孔や楕円であったり、孔の径が大きかったりするものが含まれていても良い。図5の例では4つあるねじ止め貫通孔4aのうち、4a−2と4a−4をブラケット5への位置決めに、4a−1と4a−3をブラケット5への締結のためのねじ止めに用いるものとする。ケースねじ止め貫通孔4aの径は、位置決め突部5aの径に対して遊びの少ないほうが高い取付精度が期待できる。しかしながら、後ケース4やブラケット5の成型のばらつきによって、貫通孔4a−2と4a−4の間隔とそれに対応する位置決め突部5aの間隔が一致しなくなることもあり得る。そのような場合でも、ねじ止め貫通孔4aのいずれか一つ(4a−2)を位置決め突部5aの径に対しての遊びを少なく、それ以外(4a−4)を孔の開口を長孔や楕円にしたり、もしくは孔の径を大きくしたりすることで、高い取付精度を確保しつつ、後ケース4やブラケット5の寸法ばらつきもある程度許容することが可能となる。
【0031】
また、複数の位置決め突部5aはその間隔を広くした方が位置決めの精度を高めることができ、複数のブラケットねじ止め貫通孔5bはその間隔を広くした方がより取付けの安定性と確保する事ができる。そこで、図5に示すように、それらをそれぞれ対角に配置することで、各々の間隔を最長で確保して設置する事が出来、精度と強度の両立がより期待できる。
【0032】
上記の構成により、ケース締結用ねじ10と位置決め突部5aによって精度良く位置決めされた後ケース4とブラケット5の位置関係を固定することができるとともに、ケース締結用ねじ10およびブラケット締結用ねじ11を同軸的に配置することで撮像モジュール1自体をも小型化することができる。
【0033】
また、ブラケット締結用ねじ11がケース締結用ねじ10よりも大径であることから、ブラケット締結用ねじ11の取り付けの締結力がケース締結用ねじ10のそれよりも大きくなる。その結果、例えば、4個のケース締結用ねじ10を用いた場合には、そのうち2個のケース締結用ねじ10のケースねじ止め貫通孔4aを位置決め突部5aによる位置決めに用いて、残りの2個のケース締結用ねじ10のケースねじ止め貫通孔4aをブラケット締結用ねじ11に用いれば十分な取り付けの強度が得られる。従って、後ケース4にブラケット5を精度良い位置決めを行いながら強固に取り付けることができる。更には、ブラケット締結用ねじ11の使用個数を少なくできることで、撮像モジュール1の軽量化も行なうことができる。
【0034】
また、ブラケット締結用ねじ11がケース締結用ねじ10よりも大径であることから、後ケース4とブラケット5とを強固に取り付けることができる。その結果、外部の自動車等にねじ止めによって取り付けられるブラケット5に加わるねじ止めによる応力の後ケース4に対する影響を小さくすることができる。従って、レンズユニット2と撮像素子7との間の光軸長さが変化したり、光軸がずれたりすることを抑えて、高画質の画像を得ることができる。
【0035】
さらに、ケース締結用ねじ10は、ブラケット5の取付け前には前ケース3の被写体側から見えず、また、ブラケット5の取付け後には外部から見えないため、外観形状の美観を損ねないものとなる。
【0036】
ケース締結用ねじ10およびブラケット締結用ねじ11は同軸的に配置されるが、完全に同軸上に配置される必要はなく、ケース締結用ねじ10の軸とブラケット締結用ねじ11の軸とは若干ずれていてもよい。例えば、ケース締結用ねじ10の軸とブラケット締結用ねじ11の軸とが2mm以下程度ずれていてもよく、この範囲内とすることにより、上記の効果を奏するものとなる。
【0037】
ブラケット締結用ねじ11は、ケース締結用ねじ10よりも大径のものであるが、ブラケット締結用ねじ11のねじ山を有する本体部の径がケース締結用ねじ10の本体部の径の1.5倍〜3倍であることが好ましい。この範囲内とすることにより、レンズユニット2と撮像素子7との間の光軸長さが変化したり光軸がずれたりすることを抑えることができ、また、ねじ止め部が大型化することを抑えることができる。
【0038】
また、ケース締結用ねじ10とブラケット締結用ねじ11の組は複数組あることがよい。この場合、前ケース3と後ケース4とブラケット5とを取り付ける際に、レンズユニット2と撮像素子7との間の光軸長さが変化したり光軸がずれたりすることをより抑えて取り付けることができる。
【0039】
また、ケース締結用ねじ10とブラケット締結用ねじ11の組は複数組ある場合、ねじ込みの回転方向を異ならせることがよい。この場合、ねじ込みによる応力による歪みが互いに打ち消し合うようにして、前ケース3と後ケース4とブラケット5とが歪みによって変形することを抑えることができる。
【0040】
このような撮像モジュール1は、例えば車載用として用いられるものであり、道路上の白線の撮像あるいは車両を運転する運転手の死角を撮像する機能を有し、自動車の走行の制御を行なうECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)により動作が制御される。なお、撮像モジュール1から出力された電気信号は、ECUによって画像信号に変換され、例えば運転席の前方に設置されたディスプレイに表示されることとなる。
【0041】
撮像素子7は、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等の半導体イメージセンサ素子である。
【0042】
レンズユニット2は、被写体からの光を撮像素子7に集光する機能を有し、例えば、光を広角度で集光するために前面側を凸形状とした第1のレンズと、第1のレンズを通過した光を光線として平行に近づけるための第2のレンズと、第3のレンズとから成るレンズ群により構成されている。レンズユニット2が上述の3枚のレンズからなる場合は、例えば、前面側(被写体側であって図2では上側)から第1のレンズ、第2のレンズ、第3のレンズの順で光軸方向に重なるように配置される。なお、レンズユニット2は、4枚以上のレンズを有していてもよい。
【0043】
ケースは、前面側に位置するレンズユニット2を装着し支持する。ケースは、前ケース3と後ケース4とに分割され、それらが一体的に取り付けられて構成される。前ケース3は、例えば、前面側に配置されてレンズユニット2の第1のレンズを背面側(被写体側と反対側)へ押える押え部材としての環状のリテーナ12と、リテーナ12の背面側に配置されるレンズ保持具としての全体的に筒状のレンズ鏡筒6とから構成されている。前ケース3のレンズ鏡筒6に第2のレンズおよび第3のレンズが固定され、第1のレンズはリテーナ12によりレンズ鏡筒6に押さえ付けるようにして固定されている。
【0044】
これらリテーナ12およびレンズ鏡筒6は、例えば次に述べる方法により作製される。
【0045】
レンズ鏡筒6は、レンズ鏡筒6の形状に合わせて設けられているキャビティを有する射出成形用の金型を準備して、このキャビティ内にレンズ鏡筒6用の原材料を流し込んで固化させて成形することにより所定の形状に形成する射出成形法を用いて作製することができる。また同様に、リテーナ12は、リテーナ12の形状に合わせた形状に形成されているキャビティを有する射出成形用の金型を準備して、このキャビティ内にリテーナ12用の原材料を流し込んで固化させて成形することにより所定の形状に形成して作製することができる。このようなリテーナ12およびレンズ鏡筒6は、例えばポリカーボネイト(PC)やポリフタルアミド(PPA)等の絶縁性の樹脂により構成されて軽量化が図られている。なお通常は、リテーナ12およびレンズ鏡筒6の熱膨張・熱収縮を合わせるために、両者に同一の材料を用いることが好ましい。
【0046】
また、撮像モジュール1の背面側には撮像基板8が取り付けられている。撮像基板8の前面側の主面に、セラミックス,樹脂等から成るパッケージに収納された撮像素子7が設置されている。
【0047】
撮像素子7のケースへの取付けは、撮像素子7を撮像基板8の前面側の主面に搭載し、その撮像基板8を接続端子9およびはんだ等を介して前ケース3に取り付けることによって行なわれる。
【0048】
撮像基板8は、例えばガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させて形成した、あるいはエポキシ樹脂にガラスフィラーを添加して形成したプリント配線基板により構成されている。撮像基板8の表面や内部には、搭載される撮像素子7と異なる他の部品等の端子との電気的接続あるいはこれらを固定する配線導体やアース用のグランド配線が形成されている。このような配線導体やグランド配線は、銅・金等の導電性金属をメッキ法により形成する方法、あるいは予め配線パターン形状に形成した金属箔を接着する方法、あるいは全面に金属箔を被着した基板からエッチングにより不要な部分をエッチング除去して形成する方法等を用いることにより、プリント配線基板の表面や内部に形成される。
【0049】
このような撮像基板8は、例えば市販の表裏全面に銅箔を被着した銅貼基板を準備し、この基板を所望の大きさに切断するとともに、表面に被着した銅箔を希塩酸等の酸性溶液で所望の配線パターンにエッチングすることにより製作される。なお、必要に応じてレーザやドリルを用いて貫通孔を形成し、この貫通孔に金属ペーストを充填することによって貫通導体を埋設して、基板表裏の配線パターン間を電気的に接続することも可能である。
【0050】
撮像基板8の背面側の主面には、撮像素子7からの電気信号を処理するIC(図示せず)、および撮像基板8の配線導体とECUとを電気的に接続するケーブル(図示せず)を接続するためのコネクタ(図示せず)等の部品が搭載されていてもよい。
【0051】
後ケース4は、前ケース3と同様に射出成形法を用いて作製することができる。即ち、後ケース4の形状に合わせて設けられているキャビティを有する射出成形用の金型を準備して、このキャビティ内に後ケース4用の原材料を流し込んで固化させて成形することにより所定の形状に形成する。
【0052】
前ケース3および後ケース4は、ステンレススチール,アルミニウム,真鍮(銅−亜鉛合金)等の金属から成っていてもよい。この場合、撮像モジュールで発生した熱を前ケース3および後ケース4からケース締結用ねじ10やブラケット締結用ねじ11およびブラケット5を通じて外部へ効率的に放熱することができる。
【0053】
ブラケット5は、自動車等の外部の機械、装置等に撮像モジュール1を取り付けるための板状の張出部であり、外部の機械、装置等にねじ止め等によって取り付けるための貫通孔5cを有している。ブラケット5の形状は、板状に限らず、ケースを保護する側壁部を有する形状、例えば皿状、箱状等の形状であってもよい。また、ブラケット5は、ポリカーボネイト(PC),ポリフタルアミド(PPA)等の樹脂、ステンレススチール,銅,アルミニウム等の金属等から成る。
【0054】
また、本実施の形態の撮像モジュール1は、後ケース4は、撮像素子7がレンズユニット2に対して位置決めされた撮像基板8を内側に収容していることが好ましい。この場合、位置決めされた撮像基板8を後ケース4によって保護するとともに、前ケース3および後ケース4から成るケースを小型化することができる。また、ケースの内側空間は後ケース4の内側のみとなり、ケースの内側空間を小さくすることができる。
【0055】
また、本実施の形態の撮像モジュール1は、ケース締結用およびブラケット締結用ねじ10,11はそれぞれ、ねじ山を有する本体部およびその本体部よりも大径の頭部を有しており、ブラケット締結用ねじ11の本体部の径がケース締結用ねじ10の頭部の径よりも大きいことが好ましい。
【0056】
上記の構成により、ケース締結用ねじ10をブラケットねじ止め貫通孔5aを通してねじ止め穴3aおよびケースねじ止め貫通孔4aにねじ込むことが容易になる。また、後ケース4とブラケット5とをより強固に取り付けることができ、外部の自動車等にねじ止めによって取り付けられるブラケット5に加わるねじ止めによる応力の後ケース4に対する影響をより小さくすることができる。従って、レンズユニット2と撮像素子7との間の光軸長さが変化したり光軸がずれたりすることをより抑えることができる。
【0057】
この場合、ブラケット締結用ねじ11の本体部の径がケース締結用ねじ10の頭部の径の1倍を超え2倍以下であることがより好ましい。この範囲内とすることにより、レンズユニット2と撮像素子7との間の光軸長さが変化したり光軸がずれたりすることを抑えることができ、また、ねじ止め部が大型化することを抑えることができる。
【0058】
また、本実施の形態の撮像モジュールは、ブラケット締結用ねじ11は、ケース締結用ねじ10よりも本体部が長いことが好ましい。
【0059】
上記の構成により、後ケース4とブラケット5とをより強固に取り付けることができ、外部の自動車等にねじ止めによって取り付けられるブラケット5に加わるねじ止めによる応力の後ケース4に対する影響をより小さくすることができる。従って、レンズユニット2と撮像素子7との間の光軸長さが変化したり光軸がずれたりすることをより抑えることができる。
【0060】
この場合、ブラケット締結用ねじ11の長さがケース締結用ねじ10の長さの1.5倍〜3倍であることがより好ましい。この範囲内とすることにより、レンズユニット2と撮像素子7との間の光軸長さが変化したり光軸がずれたりすることを抑えることができ、また、撮像モジュール1がねじ込みの方向(光軸方向)に長くなることを抑えることができる。
【0061】
ケース締結用ねじ10およびブラケット締結用ねじ11は、セルフタップねじであってもよい。この場合、前ケース3および後ケース4として、樹脂等のセルフタップ(ねじによるねじ切り)が可能な材料から成るものを用いることができ、前ケース3および後ケース4を、成形が可能な安価な材料で作製することができる。
【実施例】
【0062】
本発明の撮像モジュールの実施例について以下に説明する。
【0063】
図1、図2の構成の本実施例の撮像モジュールを以下のようにして作製した。まず、射出成形法によって形成した、ポリカーボネイトから成る四角筒状の前ケース3と、射出成形法によって形成した、ポリカーボネイトから成る四角箱状の後ケース4を準備した。前ケース3は、四角形状の断面が縦23mm、横23mmの大きさを有し、高さが10mmであるものとし、後ケース4は、四角形状の断面が縦23mm、横23mmの大きさを有し、高さが13mmであるものとした。また、前ケース3は、内側に円筒状のレンズ鏡筒6を有している。
【0064】
次に、前ケース3の内側のレンズ鏡筒6に、3枚のレンズから成るレンズユニット2を装着し、環状のリテーナ12によってレンズユニット2を固定した。また、前ケース3の内側のレンズ鏡筒6に設けられた接続端子9を、被写体側の主面に撮像素子7が設置された撮像基板8の貫通孔に挿通させて、貫通孔の周囲の電極パッドにはんだを介して接続端子9を接合することによって、撮像基板8を前ケース4に取り付けた。
【0065】
次に、前ケース3と後ケース4とを、ねじ止め穴3aおよびケースねじ止め貫通孔4aにねじ込まれたケース締結用ねじ10によって取り付けるとともに、後ケース4とブラケット5とを、ケースねじ止め貫通孔4aおよびブラケットねじ止め貫通孔5aにねじ込まれた、ケース締結用ねじ10よりも大径のブラケット締結用ねじ11によって取り付けた。これにより、撮像基板8が前ケース3と後ケース4とから構成される内側空間に封入された。
【0066】
このとき、ブラケット締結用ねじ11の本体部の径(2.6mm)がケース締結用ねじ10の本体部の径(1.4mm)の1.86倍であり、ブラケット締結用ねじ11の本体部の径がケース締結用ねじ10の頭部の径(2mm)の1.3倍であり、ブラケット締結用ねじ11の長さ(6.5mm)がケース締結用ねじ10の長さ(4mm)の1.625倍であった。
【0067】
これに対して、比較例として、前ケースと後ケースとを第1のねじによってねじ止めして取り付け、さらに後ケースとブラケットとを、第1のねじとは別個のねじ止め部にねじ込まれた第2のねじによってねじ止めして取り付けた撮像モジュールを作製した。この撮像モジュールは、前ケースが、四角形状の断面が縦25mm、横25mmの大きさを有し、高さが12mmであるものとし、後ケース4は、四角形状の断面が縦25mm、横25mmの大きさを有し、高さが19mmであった。
【0068】
実施例の撮像モジュール1と比較例の撮像モジュールの大きさを体積比で比較したところ、実施例の撮像モジュール1は比較例の撮像モジュールの約0.67倍であり、大幅に小型化されたものとなった。
【0069】
また、実施例の撮像モジュールは、ブラケット締結用ねじ11がケース締結用ねじ10よりも大径であることから、後ケース4とブラケット5とを強固に取り付けることができた。その結果、レンズユニット2と撮像素子7との間の光軸長さが変化したり光軸がずれたりすることを抑えて、高画質の画像を得ることができた。
【0070】
なお、本発明は、上記実施の形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を加えても何等差し支えない。
【符号の説明】
【0071】
1:撮像モジュール
2:レンズユニット
3:前ケース
3a:ねじ止め穴
4:後ケース
4a:ケースねじ止め貫通孔
5:ブラケット
5a:位置決め突部
5b:ブラケットねじ止め貫通孔
5c:外部へ取り付けるための貫通孔
6:レンズ鏡筒
7:撮像素子
8:撮像基板
9:接続端子
10:ケース締結用ねじ
11:ブラケット締結用ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズユニットが被写体側に装着されているとともに、撮像素子を搭載した撮像基板が前記レンズユニットに前記撮像素子を対向させて被写体側と反対側の部位に設置されている前ケースと、該前ケースに取り付けられて前記撮像基板を前記前ケースとの内側空間に封止している後ケースと、該後ケースに取り付けられた外部取付用のブラケットとを具備しており、前記前ケースにねじ止め穴が、前記後ケースにケースねじ止め貫通孔が、前記ブラケットに前記後ケースの位置決め突部がそれぞれ形成されており、前記前ケースに前記後ケースが、前記ねじ止め穴および前記ケースねじ止め貫通孔にねじ込まれたケース締結用ねじによって取り付けられているとともに、前記ケースねじ止め貫通孔に前記位置決め突部が挿入されることによって、前記後ケースが前記ブラケットに位置決めされていることを特徴とする撮像モジュール。
【請求項2】
前記ケース締結用ねじは、ねじ山を有する本体部および該本体部よりも大径の頭部を有しており、前記位置決め用突起は円柱状に形成されており、その径が前記ケース締結用ねじの頭部の径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の撮像モジュール。
【請求項3】
前記ケースねじ止め貫通孔および前記位置決め用突部を、複数組有することを特徴とする請求項1もしくは2に記載の撮像モジュール。
【請求項4】
前記ケースねじ止め貫通孔を複数有し、うち少なくとも1つに対応して前記ブラケットにブラケットねじ止め貫通孔が形成されており、前記後ケースに前記ブラケットが、前記ケースねじ止め貫通孔および前記ブラケットねじ止め貫通孔にねじ込まれた、前記ケース締結用ねじよりも大径のブラケット締結用ねじによって取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至3に記載の撮像モジュール。
【請求項5】
前記ケース締結用ねじおよびブラケット締結用ねじはそれぞれ、ねじ山を有する本体部および該本体部よりも大径の頭部を有しており、前記ブラケット締結用ねじの前記本体部の径が前記ケース締結用ねじの頭部の径よりも大きいことを特徴とする請求項4に記載の撮像モジュール。
【請求項6】
前記ブラケット締結用ねじは、前記ケース締結用ねじよりも前記本体部が長いことを特徴とする請求項4もしくは5に記載の撮像モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−3244(P2013−3244A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132067(P2011−132067)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】