説明

撮像レンズおよび撮像装置

【課題】撮像レンズにおいて、良好な光学性能を保持するとともに、小型化および低コスト化を図る。
【解決手段】物体側から順に、像側に凹面を向けた負のパワーを持つ第1レンズL1と、正のパワーを持つ第2レンズL2と、開口絞りStと、両凹レンズである負の第3レンズL3と、正のパワーを持つ第4レンズL4と、像側に凸面を向けた正のパワーを持つ第5レンズL5とを備え、全系の焦点距離をf、第1レンズの中心厚をD1、第2レンズの像側の面から絞りまでの光軸上の距離をD4、絞りから第3レンズの物体側の面までの光軸上の距離をD5としたとき、下記条件式(1)および(2)を満足する。
0.18<(D4+D5)/f<0.44 (1)
0.18<D1/f (2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はCCDやCMOS等の撮像素子を用いた車載用カメラや監視カメラ等に用いられる撮像レンズに関するもので、主に自動車の前方、側方、後方などの映像を撮影するための車載用カメラ等に用いられる撮像レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
CCDやCMOS等の撮像素子は近年非常に小型化および高画素化が進んでいる。そのため、撮像機器本体並びにそれに搭載されるレンズにも小型、軽量化が求められている。一方、車載用カメラや監視カメラ等では、例えば高い耐候性を持ち、さらに真夏の熱帯地域の車内から冬の寒冷地の外気のような広い温度範囲の下で使用可能でありながら、夜間でも使用可能なようにFナンバーが明るい、高性能でしかも安価なレンズが求められている。
【0003】
このような要求に応えた撮像レンズとしては、例えば下記特許文献1〜7に記載のものが知られている。これら特許文献1〜7には、いずれも全体として比較的レンズ枚数の少ない5枚構成のレンズ光学系が記載されている。
【特許文献1】特許第3723654号明細書
【特許文献2】特開2003−329925号公報
【特許文献3】特開平10−293246号公報
【特許文献4】特開2002−277734号公報
【特許文献5】特開2002−228925号公報
【特許文献6】特開平03−063613号公報
【特許文献7】特開2008−008960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような撮像レンズでは、撮像機器に用いられる撮像素子の高性能化に伴い、さらなる小型化や明るさの向上が要求され、そのうえコストまでも低下させるよう要求されている。しかしながら、従来の光学系では、近年の要求を満たす、小型で明るくしかも安価な撮像レンズを実現することは困難であった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、小型で明るくしかも安価な撮像レンズおよびこの撮像レンズを備えた撮像装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の撮像レンズは、物体側から順に、像側に凹面を向けた負のパワーを持つ第1レンズと、正のパワーを持つ第2レンズと、絞りと、両凹レンズである負の第3レンズと、正のパワーを持つ第4レンズと、像側に凸面を向けた正のパワーを持つ第5レンズとを備え、全系の焦点距離をf、第1レンズの中心厚をD1、第2レンズの像側の面から絞りまでの光軸上の距離をD4、絞りから第3レンズの物体側の面までの光軸上の距離をD5としたとき、下記条件式(1)および(2)を満足することを特徴とするものである。
0.18<(D4+D5)/f<0.44 (1)
0.18<D1/f (2)
【0007】
このような構成とすることにより、高価な非球面レンズを用いず、第1〜第5レンズの全てを球面レンズで構成した場合でも十分な光学性能を発揮することができるため、小型で明るくしかも安価な撮像レンズを実現することができる。
【0008】
本発明の撮像レンズにおいては、第2レンズが、両凸レンズであり、物体側の面の曲率半径の絶対値が像側の面の曲率半径の絶対値より小さいものとなるように構成してもよい。
【0009】
また、第4レンズが、像側に凸面を向けたメニスカスレンズもしくは平凸レンズとしてもよい。
【0010】
また、第5レンズが、両凸レンズとしてもよい。
【0011】
また、第2レンズのd線に対するアッベ数をν2としたとき、下記条件式(3)を満足することが好ましい。
ν2<39 (3)
また、第1レンズの物体側の面頂点から結像面までの距離をLとしたとき、下記条件式(4)を満足することが好ましい。
16.0mm<L<27.0mm (4)
また、全系の焦点距離をfとしたとき、下記条件式(5)を満足することが好ましい。
5.0mm<f<9.0mm (5)
また、全系の焦点距離をf、第1レンズと第2レンズとの空気間隔をD2としたとき、下記条件式(6)を満足することが好ましい。
0.2<D2/f<0.7 (6)
また、全系の焦点距離をf、最も像側のレンズの像側の面頂点から結像面までの空気換算距離をBfとしたとき、下記条件式(7)を満足することが好ましい。
0.5<Bf/f<1.5 (7)
また、全系の焦点距離をf、第1レンズの焦点距離をf1としたとき、下記条件式(8)を満足することが好ましい。
−2.2<f1/f<−1.2 (8)
また、全系の焦点距離をf、第3、第4および第5レンズからなるレンズ群の合成焦点距離をf345としたとき、下記条件式(9)を満足することが好ましい。
0.8<f345/f (9)
また、第3レンズの物体側の面の曲率半径をR6、第3レンズの像側の面の曲率半径をR7としたとき、下記条件式(10)を満足することが好ましい。
0.30<|R6/R7|<1.50 (10)
また、第1レンズのd線に対するアッベ数をν1、第4レンズのd線に対するアッベ数をν4、第5レンズのd線に対するアッベ数をν5としたとき、ν1が40以上、ν4およびν5が35以上であることが好ましい。
【0012】
また、第1および第2レンズからなるレンズ群の合成焦点距離をf12、第3、第4および第5レンズからなるレンズ群の合成焦点距離をf345としたとき、下記条件式(11)を満足することが好ましい。
0.3<|f12/f345|<1.4 (11)
また、第2レンズのd線に対する屈折率をN2としたとき、下記条件式(12−3)および(3−2)を満足することが好ましい。
1.81≦N2<1.92 (12−3)
25<ν2<38 (3−2)
【0013】
本発明の撮像装置は、上記記載の撮像レンズを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の撮像レンズによれば、物体側から順に、像側に凹面を向けた負のパワーを持つ第1レンズと、正のパワーを持つ第2レンズと、絞りと、両凹レンズである負の第3レンズと、正のパワーを持つ第4レンズと、像側に凸面を向けた正のパワーを持つ第5レンズとを備え、全系の焦点距離をf、第1レンズの中心厚をD1、第2レンズの像側の面から絞りまでの光軸上の距離をD4、絞りから第3レンズの物体側の面までの光軸上の距離をD5としたとき、条件式(1)および(2)を満足するようにしているため、小型で明るくしかも安価な撮像レンズを実現することができる。
【0015】
本発明の撮像装置は、本発明の撮像レンズを備えているため、小型かつ安価に構成可能であり、しかも明るく高画質の映像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。まず、図1を参照して、本発明の撮像レンズの実施の形態について説明し、その後で撮像装置の実施の形態について説明する。
【0017】
図1に本発明の一実施の形態にかかる撮像レンズ1のレンズ断面図を示す。図1には、軸上光束(光軸Z)の最外周光線2、軸外光束の主光線3、軸外光束の最外周光線4も合わせて示してある。
【0018】
撮像レンズ1は、光軸Zに沿って物体側から順に、像側に凹面を向けた負のパワーを持つ第1レンズL1と、正のパワーを持つ第2レンズL2と、開口絞りStと、両凹レンズである負の第3レンズL3と、正のパワーを持つ第4レンズL4と、像側に凸面を向けた正のパワーを持つ第5レンズL5とが配列されてなる。なお、図1における開口絞りStは形状や大きさを表すものではなく光軸Z上の位置を示すものである。
【0019】
なお、図1では、撮像レンズ1が撮像装置に適用される場合を考慮して、撮像レンズ1の結像位置を含む像面に配置された撮像素子6も図示している。撮像素子6は、撮像レンズ1により形成される光学像を電気信号に変換するものであり、例えばCCDイメージセンサ等からなる。
【0020】
また、撮像装置に適用する際には、レンズを装着するカメラ側の構成に応じて、第5レンズL5と像面との間に、カバーガラスや、ローパスフィルタまたは赤外線カットフィルタ等を配置することが好ましく、図1ではこれらを想定した平行平板状の光学部材PPを配置した例を示している。例えば、撮像レンズ1が、車載カメラに使用され、夜間の視覚補助用の暗視カメラとして使用される場合には、第5レンズL5と像面との間に紫外光から青色光をカットするようなフィルタを挿入してもよい。
【0021】
なお、第5レンズL5と像面との間にローパスフィルタや特定の波長域をカットするような各種フィルタ等を配置する代わりに、各レンズの間にこれらの各種フィルタを配置してもよい。あるいは、撮像レンズ1が有するいずれかのレンズのレンズ面に、各種フィルタと同様の作用を有するコートを施してもよい。
【0022】
ここで、上記撮像レンズ1は、全系の焦点距離をf、第1レンズL1の中心厚をD1、第2レンズL2の像側の面から開口絞りStまでの光軸Z上の距離をD4、開口絞りStから第3レンズL3の物体側の面までの光軸Z上の距離をD5としたとき、下記条件式(1)および(2)を満足するものである。
0.18<(D4+D5)/f<0.44 (1)
0.18<D1/f (2)
【0023】
条件式(1)の上限をこえると、第2レンズL2から第3レンズL3までの距離が大きくなり過ぎてしまい、全長が大きくなりすぎてしまうと共に開口絞りStより前側のレンズ径も大きくなってしまい、小型化の目的を達成できなくなってしまう。また、条件式(1)の下限をこえると、第2レンズL2から第3レンズL3までの距離が小さくなりすぎるため像面湾曲と、コマ収差を良好に補正することが困難になる。
【0024】
例えば車載カメラとして使用される場合、第1レンズL1は外部に露出するため各種衝撃に対する強度がもとめられる。条件式(2)の下限をこえると第1レンズL1が割れやすくなるため、条件式(2)を満足することで、第1レンズL1が厚くなり、各種衝撃に強いレンズを作成することができる。
【0025】
このような構成とすることにより、高価な非球面レンズを用いず、第1〜第5レンズの全てを球面レンズで構成した場合でも十分な光学性能を発揮することができるため、小型で明るくしかも安価な撮像レンズを実現することができる。
【0026】
上記撮像レンズ1において、第2レンズL2は両凸レンズであることが好ましい。また、第2レンズL2は物体側の面の曲率半径の絶対値が、像側の面の曲率半径の絶対値より小さいことが好ましい。第2レンズL2の物体側の面の曲率半径の絶対値を、像側の面の曲率半径の絶対値より小さくすることで、球面収差とコマ収差を良好に補正することが可能となる。
【0027】
第4レンズL4は像側に凸面を向けたメニスカスレンズもしくは平凸レンズであることが好ましい。第4レンズL4を像側に凸面を向けたメニスカスレンズもしくは平凸レンズとすることで、像面湾曲を良好に補正することが可能となる。また、第4レンズL4を像側に凸面を向けたメニスカスレンズもしくは平凸レンズとすることで、第3レンズL3と第4レンズL4を平落とし面同士で接触させることができる。例えば車載カメラに使用される場合、レンズ同士をエッジにより接触させると、振動によりエッジ部がカケてしまい、その欠片が異物となりゴーストなどの原因になってしまうが、レンズ同士を平落とし面で接触させることで、振動に強いレンズを作製することができる。
【0028】
第5レンズL5は両凸レンズであることが好ましい。また、第5レンズL5は物体側の面の曲率半径の絶対値が、像側の面の曲率半径の絶対値より小さいことが好ましい。第5レンズL5の物体側の面の曲率半径の絶対値を、像側の面の曲率半径の絶対値より小さいものとすることで、球面収差とコマ収差をさらに良好に補正することが可能となる。
【0029】
上記撮像レンズ1は、第2レンズL2のd線に対するアッベ数をν2としたとき、下記条件式(3)を満足することが好ましい。ここで、条件式(3)の上限をこえると、軸上の色収差を良好に補正することが困難となる。
ν2<39 (3)
さらに、下記条件式(3−2)を満足することが好ましい。ここで、条件式(3−2)の上限を満足することで、軸上の色収差を良好に補正することが可能となり、条件式(3−2)の下限を満足することで、倍率の色収差を良好に補正することが可能となる。
25<ν2<38 (3−2)
また、上記撮像レンズ1は、第1レンズL1の物体側の面頂点から撮像素子6までの距離をLとしたとき、下記条件式(4)を満足することが好ましい。ここで、条件式(4)の上限をこえるとレンズ系が大型化してしまい、小型化の目的を達成できなくなり、条件式(4)の下限をこえると、小型化の目的は達成できるが各レンズが薄くなりすぎて加工が困難となる。
16.0mm<L<27.0mm (4)
さらに、条件式(4−2)を満足することが好ましい。条件式(4−2)を満足することで、レンズ系をさらに小型化することが可能となる。
19.0mm<L<26.0mm (4−2)
また、上記撮像レンズ1は、全系の焦点距離をfとしたとき、下記条件式(5)を満足することが好ましい。ここで、条件式(5)の上限をこえると、広角化が不十分となり、条件式(5)の下限をこえると、広角化は十分達成可能だが、バックフォーカスを長く取ることが困難となる。
5.0mm<f<9.0mm (5)
また、上記撮像レンズ1は、全系の焦点距離をf、第1レンズL1と第2レンズL2との空気間隔をD2としたとき、下記条件式(6)を満足することが好ましい。ここで、条件式(6)の上限をこえると、第1レンズL1と第2レンズL2の間隔が大きくなりすぎて、第1レンズL1の径が大きくなってしまい、小型化を達成することが困難となり、条件式(6)の下限をこえると、第1レンズL1と第2レンズL2が近接しすぎるため、バックフォーカスを長くすることが困難となる。
0.2<D2/f<0.7 (6)
また、上記撮像レンズ1は、全系の焦点距離をf、第5レンズL5の像側の面頂点から撮像素子までの空気換算距離をBfとしたとき、下記条件式(7)を満足することが好ましい。ここで、条件式(7)の上限をこえるとバックフォーカスが長くなりすぎて全長が長くなり、広角化の目的を達成することが困難となり、条件式(7)の下限をこえるとバックフォーカスが短くなり、撮像レンズ1と撮像素子6との間に各種フィルタやカバーガラスなどを挿入することが困難となる。また、撮像素子6の受光面からの反射光を原因とするゴーストも発生しやすくなってしまう。
0.5<Bf/f<1.5 (7)
また、上記撮像レンズ1におけるバックフォーカスBfは、5mm以上であることが好ましい。バックフォーカスBfを5mm以上とすることで、撮像レンズ1と撮像素子6との間に各種フィルタやカバーガラスを挿入することが容易となる。また、撮像素子6の受光面からの反射光を原因とするゴーストを防止することができる。さらに、バックフォーカスBfを6mm以上とすれば、撮像素子6の受光面からの反射光を原因とするゴーストを防止することがより容易となる。
【0030】
また、上記撮像レンズ1は、全系の焦点距離をf、第1レンズL1の焦点距離をf1としたとき、下記条件式(8)を満足することが好ましい。ここで、条件式(8)の上限をこえると、第1レンズL1のパワーが強くなりすぎて球面収差の補正が困難となり、条件式(8)の下限をこえると、第1レンズL1のパワーが弱くなりすぎて広角化が不十分となる。
−2.2<f1/f<−1.2 (8)
また、上記撮像レンズ1は、全系の焦点距離をf、第3、第4および第5レンズからなるレンズ群の合成焦点距離をf345としたとき、下記条件式(9)を満足することが好ましい。ここで、条件式(9)の下限をこえると像面湾曲とコマ収差を良好に補正することが困難となる。
0.8<f345/f (9)
また、上記撮像レンズ1は、第3レンズL3の物体側の面の曲率半径をR6、第3レンズL3の像側の面の曲率半径をR7としたとき、下記条件式(10)を満足することが好ましい。ここで、条件式(10)の上限をこえると、球面収差と像面湾曲が補正不足となり、良好な画像を得ることが困難となり、条件式(10)の下限をこえると、バックフォーカスが長くなりすぎてしますため、結果として全長が長くなってしまい、小型化の目的を達成することが困難となる。
0.30<|R6/R7|<1.50 (10)
また、上記撮像レンズ1は、第1レンズL1のd線に対するアッベ数をν1、第4レンズL4のd線に対するアッベ数をν4、第5レンズL5のd線に対するアッベ数をν5としたとき、ν1が40以上、ν4およびν5が35以上であることが好ましい。ν1を40以上、ν4およびν5を35以上とすることで、色収差を抑えながら各種収差を補正することが可能となる。さらに、第3レンズL3のd線に対するアッベ数をν3とするとき、ν3は30以下とすることが好ましい。ν3を30以下とすることで、軸上の色収差と倍率の色収差を良好に補正することが可能となる。
【0031】
また、上記撮像レンズ1は、全径の焦点距離をf、第1および第2レンズからなるレンズ群の合成焦点距離をf12、第3、第4および第5レンズからなるレンズ群の合成焦点距離をf345としたとき、下記条件式(11)を満足することが好ましい。ここで、条件式(11)の上限をこえると、全長が大きくなり、小型化の目的を達成できなくなり、条件式(11)の下限をこえると、像面湾曲の補正が困難となる。
0.3<|f12/f345|<1.4 (11)
また、上記撮像レンズ1は、第2レンズL2のd線に対する屈折率をN2としたとき、下記条件式(12)を満足することが好ましい。ここで、条件式(12)の下限をこえると、第2レンズL2の前後面の曲率半径が小さくなり、加工が困難となるか、正の強いパワーを持たせことが困難となる。
1.75<N2 (12)
さらに、条件式(12−2)を満足するようにすれば、第2レンズL2に正の強いパワーを持たせことが容易となる。
1.80<N2 (12−2)
さらに、条件式(12−3)を満足することが好ましい。ここで、条件式(12−3)の上限を満足すると、材料の選択の幅が広がると共に、材料が安価になり、コストを抑えることが容易となる。また、条件式(12−3)の下限より大きくすることで、第2レンズに正の強いパワーを持たせことがさらに容易となる。
1.81≦N2<1.92 (12−3)
また、上記撮像レンズ1は、全系の焦点距離をf、第2レンズL2の焦点距離をf2とするとき、下記条件式(13)を満足することが好ましい。ここで、条件式(13)の上限をこえると、第2レンズL2のパワーが弱くなるためレンズ系が大型化してしまい、条件式(13)の下限をこえると、第2レンズL2のパワーが強くなりすぎて、球面収差の補正が困難となる。
0.6<f2/f<1.1 (13)
また、上記撮像レンズ1は、全系の焦点距離をf、第1レンズL1の物体側の面頂点から撮像素子6までの距離をLとするとき、下記条件式(14)を満足することが好ましい。ここで、条件式(14)の上限をこえると、レンズ系が大型化してしまい、条件式(14)の下限をこえると、小型化は容易に達成可能だが、広角化が不十分となる。
2.0<L/f<4.0 (14)
また、上記撮像レンズ1は、第2レンズL2から開口絞りStまでの距離をD4、開口絞りStから第3レンズL3までの距離をD5としたとき、下記条件式(15)を満足することが好ましい。ここで、条件式(15)の上限をこえると、開口絞りStが第3レンズL3側によることで、第1レンズL1、第2レンズL2を通過する光線の光線高が高くなり、レンズの径が大きくなってしまう。例えば車載カメラレンズ用のレンズとして用いる場合、車の外観を乱さないように、外部に露出する第1レンズL1のレンズ径は小さいことが好ましい。
D4/D5<1.5 (15)
また、上記撮像レンズ1は、理想像高をftanθとしたとき、ディストーションが±10%以下であることが好ましい。ディストーションを±10%に抑えることで、歪みの少ない画像を得ることができる。さらに、ディストーションを±5%以下とすることで、より画像の歪みを抑えることができる。
【0032】
なお、第1レンズL1は、最も物体側のレンズであるため、例えば車載用カメラ等の厳しい環境において使用される場合には、風雨による表面劣化、直射日光による温度変化に強く、さらには油脂・洗剤等の化学薬品に強い材質、すなわち耐水性、耐候性、耐酸性、耐薬品性等が高い材質を用いることが好ましい。また、第1レンズL1の材質としては堅く、割れにくい材質を用いることが好ましく、具体的にはガラスもしくは透明なセラミックスを用いることが好ましい。セラミックスは通常のガラスに比べ強度が高く、耐熱性が高いという性質を有する。
【0033】
撮像レンズ1が、例えば車載用カメラに適用される場合には、寒冷地の外気から熱帯地方の夏の車内まで広い温度範囲で使用可能なことが要求される。そのため全てのレンズの材質がガラスであることが好ましい。具体的には−40℃〜125℃の広い温度範囲で使用可能なことが好ましい。また、安価にレンズを製作するためには、全てのレンズが球面レンズであることが好ましいが、コストよりも光学性能を優先する場合には非球面レンズを用いてもよい。
【0034】
撮像レンズ1において、第1レンズL1と第2レンズL2との間の有効径外を通過する光束は、迷光となって像面に達し、ゴーストとなるおそれがある。図1における軸外光線の最外周光線4よりも外側を通過する光束は迷光となるおそれがあるため、第1レンズL1と第2レンズL2との間に遮光手段5を設けて迷光を遮断することが好ましい。この遮光手段5としては、例えば第1レンズL1の像側の有効径外の部分に不透明な塗料を施したり、不透明な板材を設けたりしてもよい。または、迷光となる光束の光路に不透明な板材を設けて遮光手段としてもよい。このような目的の遮光手段は、第1レンズL1と第2レンズL2との間だけでなく、必要に応じて他のレンズ間に配置してもよい。さらに、第1レンズL1の物体側前方に、迷光を防止するフード状のものを配置してもよい。
【実施例】
【0035】
次に、本発明にかかる撮像レンズ1の具体的な数値実施例について説明する。
【0036】
<実施例1>
実施例1にかかる撮像レンズのレンズデータ、各種データおよび式データを表1に、レンズ構成図を図2に示す。表1のレンズデータにおいて、面番号は最も物体側の構成要素の面を1番目として像側に向かうに従い順次増加するi番目(i=1、2、3、…)の面番号を示す。なお、表1のレンズデータには開口絞りStおよび光学部材PPも含めて付している。
【0037】
表1のRiはi番目(i=1、2、3、…)の面の曲率半径を示し、Diはi(i=1、2、3、…)番目の面とi+1番目の面との光軸Z上の面間隔を示す。また、Ndjは最も物体側の光学要素を1番目として像側に向かうに従い順次増加するj番目(j=1、2、3、…)の光学要素のd線に対する屈折率を示し、νdjはj番目の光学要素のd線に対するアッベ数を示す。表1において、曲率半径および面間隔の単位はmmであり、曲率半径は物体側に凸の場合を正、像側に凸の場合を負としている。
【0038】
表1の各種データにおいて、Lは全系の第1レンズL1の物体側の面から像面までの光軸Z上の距離(バックフォーカス分は空気換算)、Bfは空気換算したバックフォーカス、fは全系の焦点距離、f1は第1レンズL1の焦点距離、f2は第2レンズL2の焦点距離、f3は第3レンズL3の焦点距離、f4は第4レンズL4の焦点距離、f5は第5レンズL5の焦点距離、f12は第1および第2レンズからなるレンズ群の合成焦点距離、f345は第3、第4および第5レンズからなるレンズ群の合成焦点距離である。表1の各種データにおける単位は全てmmである。なお、表1中の記号の意味は後述の実施例についても同様である。
【0039】
【表1】

【0040】
<実施例2>
実施例2にかかる撮像レンズのレンズデータ、各種データおよび式データを表2に、レンズ構成図を図3に示す。
【0041】
【表2】

【0042】
<実施例3>
実施例3にかかる撮像レンズのレンズデータ、各種データおよび式データを表3に、レンズ構成図を図4に示す。
【0043】
【表3】

【0044】
<実施例4>
実施例4にかかる撮像レンズのレンズデータ、各種データおよび式データを表4に、レンズ構成図を図5に示す。
【0045】
【表4】

【0046】
<実施例5>
実施例5にかかる撮像レンズのレンズデータ、各種データおよび式データを表5に、レンズ構成図を図6に示す。
【0047】
【表5】

【0048】
<実施例6>
実施例6にかかる撮像レンズのレンズデータ、各種データおよび式データを表6に、レンズ構成図を図7に示す。
【0049】
【表6】

【0050】
<実施例7>
実施例7にかかる撮像レンズのレンズデータ、各種データおよび式データを表7に、レンズ構成図を図8に示す。
【0051】
【表7】

【0052】
<実施例8>
実施例8にかかる撮像レンズのレンズデータ、各種データおよび式データを表8に、レンズ構成図を図9に示す。
【0053】
【表8】

【0054】
実施例1〜8の撮像レンズにおける条件式(1)〜(15)に対応する値を表9に示す。表9の各値は、d線(波長587.56nm)に対するものである。表9からわかるように、実施例1〜8は、条件式(1)〜(15)を全て満たしている。また、実施例6は、より厳しい条件式(3−2)および(4−2)をも満たしており、実施例6以外は、さらに厳しい条件式(3−2)、(4−2)および条件式(12−3)をも満たしている。
【0055】
【表9】

【0056】
上記実施例1〜8にかかる撮像レンズの球面収差、非点収差、ディストーション(歪曲収差)、倍率色収差の収差図をそれぞれ図10〜図17に示す。各収差図には、d線(587.56nm)を基準波長とした収差を示すが、球面収差図および倍率色収差図には、F線(波長486.13nm)、C線(波長656.27nm)、s線(852.11nm)についての収差も示す。さらに、球面収差図には、OSCとして正弦条件違反量(Offence against the Sine Condition)も合わせて示す。ディストーションの図は、レンズ全系の焦点距離f、光束のレンズへの入射角θ(変数扱い、0≦θ≦ω)を用いて、理想像高をftanθとし、それからのずれ量を示す。球面収差図の縦軸のFno.はFナンバーであり、その他の収差図の縦軸のωは半画角を示す。
【0057】
図10〜図17からわかるように、上記実施例1〜8は、F値が1.8〜2.5と明るい光学系であるとともに、各収差が良好に補正されているため、動画の撮影にも好適に使用可能である。
【0058】
上述した撮像レンズ1および実施例1〜8の撮像レンズは、良好な光学性能を有し、小型化および低コスト化を実現できるものであるため、自動車の前方、側方、後方などの映像を撮影するための車載用カメラなどに好適に使用可能である。
【0059】
図18に使用例として、自動車100に本実施の形態の撮像レンズおよび撮像装置を搭載した様子を示す。図18において、自動車100は、その助手席側の側面の死角範囲を撮像するための車外カメラ101と、自動車100の後側の死角範囲を撮像するための車外カメラ102と、ルームミラーの背面に取り付けられ、ドライバーと同じ視野範囲を撮影するための車内カメラ103とを備えている。車外カメラ101と車外カメラ102と車内カメラ103とは、撮像装置であり、本発明の実施の形態による撮像レンズ1と、撮像レンズ1により形成される光学像を電気信号に変換する撮像素子6とを備えている。
【0060】
上述したように、本発明の実施形態にかかる撮像レンズ1は、小型で良好な光学性能を有するため、車外カメラ101、102および車内カメラ103も小型に構成することができ、その撮像素子6の撮像面には良好な像を結像することができる。また、撮像レンズ1は非球面レンズを用いなくとも十分な光学性能を発揮できることから、安価に製作可能であり、したがって、車外カメラ101、102および車内カメラ103も安価に製作可能となる。
【0061】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、各レンズ成分の曲率半径、面間隔および屈折率の値は、上記各数値実施例で示した値に限定されず、他の値をとり得るものである。
【0062】
また、撮像装置の実施の形態では、車載用カメラに適用した例について図を示して説明したが、本発明はこの用途に限定されるものではなく、例えば、携帯端末用カメラや監視カメラ等にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施の形態にかかる撮像レンズの光路図
【図2】本発明の実施例1にかかる撮像レンズのレンズ構成を示す断面図
【図3】本発明の実施例2にかかる撮像レンズのレンズ構成を示す断面図
【図4】本発明の実施例3にかかる撮像レンズのレンズ構成を示す断面図
【図5】本発明の実施例4にかかる撮像レンズのレンズ構成を示す断面図
【図6】本発明の実施例5にかかる撮像レンズのレンズ構成を示す断面図
【図7】本発明の実施例6にかかる撮像レンズのレンズ構成を示す断面図
【図8】本発明の実施例7にかかる撮像レンズのレンズ構成を示す断面図
【図9】本発明の実施例8にかかる撮像レンズのレンズ構成を示す断面図
【図10】本発明の実施例1にかかる撮像レンズの各収差図
【図11】本発明の実施例2にかかる撮像レンズの各収差図
【図12】本発明の実施例3にかかる撮像レンズの各収差図
【図13】本発明の実施例4にかかる撮像レンズの各収差図
【図14】本発明の実施例5にかかる撮像レンズの各収差図
【図15】本発明の実施例6にかかる撮像レンズの各収差図
【図16】本発明の実施例7にかかる撮像レンズの各収差図
【図17】本発明の実施例8にかかる撮像レンズの各収差図
【図18】本発明の実施形態にかかる車載用の撮像装置の配置を説明するための図
【符号の説明】
【0064】
1 撮像レンズ
2 軸上光線の最外周光線
3 軸外光線の主光線
4 軸外光線の最外周光線
5 遮光手段
6 撮像素子
100 自動車
101、102 車外カメラ
103 車内カメラ
L1 第1レンズ
L2 第2レンズ
L3 第3レンズ
L4 第4レンズ
L5 第5レンズ
PP 光学部材
St 開口絞り
Z 光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から順に、像側に凹面を向けた負のパワーを持つ第1レンズと、正のパワーを持つ第2レンズと、絞りと、両凹レンズである負の第3レンズと、正のパワーを持つ第4レンズと、像側に凸面を向けた正のパワーを持つ第5レンズとを備え、
全系の焦点距離をf、前記第1レンズの中心厚をD1、前記第2レンズの像側の面から前記絞りまでの光軸上の距離をD4、前記絞りから前記第3レンズの物体側の面までの光軸上の距離をD5としたとき、下記条件式(1)および(2)を満足することを特徴とする撮像レンズ。
0.18<(D4+D5)/f<0.44 (1)
0.18<D1/f (2)
【請求項2】
前記第2レンズが、両凸レンズであり、物体側の面の曲率半径の絶対値が像側の面の曲率半径の絶対値より小さいものであることを特徴とする請求項1記載の撮像レンズ。
【請求項3】
前記第4レンズが、像側に凸面を向けたメニスカスレンズもしくは平凸レンズであることを特徴とする請求項1または2記載の撮像レンズ。
【請求項4】
前記第5レンズが、両凸レンズであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の撮像レンズ。
【請求項5】
前記第2レンズのd線に対するアッベ数をν2としたとき、下記条件式(3)を満足することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載の撮像レンズ。
ν2<39 (3)
【請求項6】
前記第1レンズの物体側の面頂点から結像面までの距離をLとしたとき、下記条件式(4)を満足することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項記載の撮像レンズ。
16.0mm<L<27.0mm (4)
【請求項7】
全系の焦点距離をfとしたとき、下記条件式(5)を満足することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項記載の撮像レンズ。
5.0mm<f<9.0mm (5)
【請求項8】
全系の焦点距離をf、前記第1レンズと前記第2レンズとの空気間隔をD2としたとき、下記条件式(6)を満足することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項記載の撮像レンズ。
0.2<D2/f<0.7 (6)
【請求項9】
全系の焦点距離をf、前記第5レンズの像側の面頂点から結像面までの空気換算距離をBfとしたとき、下記条件式(7)を満足することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項記載の撮像レンズ。
0.5<Bf/f<1.5 (7)
【請求項10】
全系の焦点距離をf、前記第1レンズの焦点距離をf1としたとき、下記条件式(8)を満足することを特徴とする請求項1から9のいずれか一項記載の撮像レンズ。
−2.2<f1/f<−1.2 (8)
【請求項11】
全系の焦点距離をf、前記第3、第4および前記第5レンズからなるレンズ群の合成焦点距離をf345としたとき、下記条件式(9)を満足することを特徴とする請求項1から10のいずれか一項記載の撮像レンズ。
0.8<f345/f (9)
【請求項12】
前記第3レンズの物体側の面の曲率半径をR6、前記第3レンズの像側の面の曲率半径をR7としたとき、下記条件式(10)を満足することを特徴とする請求項1から11のいずれか一項記載の撮像レンズ。
0.30<|R6/R7|<1.50 (10)
【請求項13】
前記第1レンズのd線に対するアッベ数をν1、前記第4レンズのd線に対するアッベ数をν4、前記第5レンズのd線に対するアッベ数をν5としたとき、ν1が40以上、ν4およびν5が35以上であることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項記載の撮像レンズ。
【請求項14】
前記第1および第2レンズからなるレンズ群の合成焦点距離をf12、前記第3、第4および前記第5レンズからなるレンズ群の合成焦点距離をf345としたとき、下記条件式(11)を満足することを特徴とする請求項1から13のいずれか一項記載の撮像レンズ。
0.3<|f12/f345|<1.4 (11)
【請求項15】
物体側から順に、像側に凹面を向けた負のパワーを持つ第1レンズと、正のパワーを持つ第2レンズと、絞りと、両凹レンズである負の第3レンズと、正のパワーを持つ第4レンズと、像側に凸面を向けた正のパワーを持つ第5レンズとを備え、前記第2レンズのd線に対する屈折率をN2としたとき、下記条件式(12−3)および(3−2)を満足することを特徴とする撮像レンズ。
1.81≦N2<1.92 (12−3)
25<ν2<38 (3−2)
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項記載の撮像レンズを備えたことを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−107606(P2010−107606A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277691(P2008−277691)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】