撮像技術
本発明は特徴付けを必要とする主体中の肺機能を特徴付けする方法に関する。方法は関係する肺領域内で規定されているボクセルで撮像技術を行うことを含んでいる。画像データは常磁性気体の少なくとも2つの異なる部分圧力を有する気体を主体が吸入する時間期間にわたって生成される。コンパートメントモデルアルゴリズムは肺の換気、拡散、潅流についての情報を提供するためボクセルで発生される画像データに適用される。常磁性気体は好ましくは酸素である。撮像技術は好ましくは酸素強化された磁気共鳴映像(OE−MRI)である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は肺の撮像に関し、特に酸素強化磁気共鳴映像(OE−MRI)(しかしそれに限定されない)に対するコンパートメントモデルの適用に関する。
【背景技術】
【0002】
核磁気共鳴(NMR)は分数スピン量子数を有する原子核に作用し、それらを分極する磁界の適用を含んでいる。測定期間中、所定の共鳴エネルギの無線周波数パルスが供給され、これは核スピンをフリップし配向分布を妨害する。核はその後時間依存指数関数的に初期状態に戻り(リラックスし)、それによって記録可能なデータへ電子的に処理されることができる信号を与える。信号が空間的に微分され、十分なレベルであるとき、データは組織されスクリーン上に画像として表示されることができる。例えば有機組織内の水の陽子により発生される信号の計算は磁気共鳴映像(MRI)を構成することを可能にし、生体中の内部器官の直接的な視覚化を可能にする。NMRはそれ故、診断、医学治療、手術において強力なツールである。
【0003】
臨床医は多くの理由で肺の機能を検査することを望んでいることが認識されよう。例により、肺の換気を特徴付けすることは有益であり、それはこのような換気が様々の閉塞性肺疾患により影響される可能性があるからである。現在、標準的な肺機能検査は肺の生理学を説明する広範囲の広域変数を評価できるが、局部的な病気を調査するために使用されていない。シンチグラフィーは機能撮像に使用されるが、この技術は放射性物質の吸入を必要とし、低い空間分解能により限定され、トモグラフィーではない。
【0004】
比較的最近まで、MRIはその本質的に低い陽子密度と大きな感受性差と呼吸器及び心臓運動のためにその応用が肺に限定されていた。3Heまたは129Xeを使用する過分極気体MRIは肺の機能の詳細な局部的評価の可能性を示しているが、関係する高価で特殊化された装置のために臨床状況における使用が限定されている。
【0005】
OE−MRIは健康なボランティアと肺疾患を有する患者との両者で肺換気を視覚化するための代替の間接的方法として実演されている。分子酸素は常磁性であり、したがってT1(T1はNMR技術の当業者にはスピン格子緩和時間という名称で知られ、z方向における時定数であり、Z方向は与えられた磁界と平行に取られる)における影響のために実質水で溶解されるときNMR造影剤として作用する。100%酸素の呼吸は肺組織で溶解された酸素の濃度の増加を生じ、これはT1において対応する減少を生じ、それはT1加重画像の局部的な信号強度の増加として検出される。画素毎の解析は呼吸による1つの画像から次の画像への肺の寸法と形状の変化によって困難になる。息止めが幾つかの研究で使用されているが、肺疾患を有する患者では、これは不快である可能性があり、結果として再生可能な方法で行うことが困難である。息止めは正常な呼吸拡散容量の誤った解釈になりかねない大きな静的吸入を要するので査定される現象に干渉することも論じられている。したがって呼吸運動を補正するための画像登録方法が開発されている(例えばNaish等(2005)のMagnetic Resonance in Medicine 54:464-469参照)。このような方法は肺の輪郭の登録を可能にし、その後の肺画像への登録の適用はT1における局部的な酸素誘発による変化と酸素の流入と流出期間中の局部的な信号強度の変化の時間的経過の決定において大きな改良になる。
【0006】
Naish等(上記)及びその他(Ohno Y等(2002) Magnetic Resonance Medicine, 47, 1139, Jakob PM等(2004)Magnetic Resonance Medicine, 51, 1009-1016)はOE−MRIが呼吸気と100%酸素との強化比を測定し、さらに増加された信号効果の飽和までの時間を測定することにより肺機能(即ち酸素の流入レートと酸素の流出レート)を査定するために使用されることができることを実証している。しかしながら、これらの定数は肺の換気、拡散および潅流についての特別ではない情報を与え、生理学的に関連されるプロセスに関して吸収特徴で生じる差の解釈を困難にする。それ故、通常のOE−MRIは、臨床医が道理的な診断又は予知を与えることを助ける限定された情報だけを提供できるという問題を残す。
【0007】
公開された米国特許出願第5,694,934A号明細書は放射線科医による直接的解釈のための肺の画像を捕捉する方法を記載している。この方法はMR映像装置により検出されるような肺組織のT1緩和時間における溶解された酸素の弱い常磁性効果を使用する。酸素が肺に換気されるとき、酸素の常磁性効果は酸素が溶解されている肺領域のT1加重されたMR走査の信号を強化する。それ故米国特許出願第5,694,934A号明細書によれば、第1のT1加重された画像は酸素が肺に吸収される前に発生され、第2のT1加重された画像は酸素が肺に吸収された後に発生される。2つの画像はその後医療の専門家により解釈され比較される。信号が強化されているようには見られない第2の酸素強化された領域の画像は医療の専門家により換気がなされていないと解釈され、これは肺のその領域の問題を示している。
【0008】
米国特許出願第5,694,934A号明細書に記載されている方法により発生される2つの画像は肺内の位置に溶解された酸素が存在するか存在しないかのみに関する。この情報は単独では限定された診断値であり、それは酸素が肺の各領域に溶解されているか否か及びその程度を示すだけであるからである。米国特許第5,694,934A号明細書に記載されているように、情報は単に肺の換気の明白なインジケータであり、肺の換気を示す他の検査の代わりに使用されることができる。
【0009】
公開された欧州特許出願第EP1588180A1号明細書は主体に分極された129Xeを吸入させることにより過分極化された129Xeを造影剤として導入することにより主体の肺のNMR分光走査からダイナミックなデータセットを得る方法を記載している。この方法は肺内の各気体状態、水で溶解された状態、血液で溶解された状態における過分極化された129Xeを直接検出することを含んでいる。3つのタイプの検出されたデータはダイナミックデータセットを生成するために解析され、このデータセットは例えば組織の厚さ、血液のコンパートメントの厚さ、潅流または肺胞半径についての情報を含むことができる。残念ながら、この方法は貴気体の吸入および息止めを含んでおり、これは患者、特に肺病理の疑いのある患者に対して潜在的な危険が確認されている。息止め技術は肺機能の測定における誤りの原因であることも知られており、それは肺はこれらが測定時に正常であるように機能していないためである。また、主体は通常過分極化された129Xeで呼吸しておらず、それによってこの種の走査からは正常に機能する状況下、即ち酸素を含む気体の混合で呼吸する状況の肺のダイナミックなデータセットを示さない。
【0010】
過分極化された気体の使用は気体の生成、転送、保存、患者への投与において費用を生じる。過分極化されていない129XeはNMR分光学走査で信号をほとんどまたは全く発生しない。129Xeを分極化するプロセスは共通して129Xeを生きた主体に損傷を与えるアルカリ蒸気に混合することを含んでいる。アルカリ蒸気はそれ故、安心と効率を犠牲にして、過分極化された129Xeが主体に投与される前に除去されなければならない。また、過分極化された129Xeは時間の経過と共に分極が減少するので、限定された保管寿命を有し、この寿命時間後には欧州特許出願第EP1588180A1号明細書に記載された目的では役に立たなくなる。分極のなくなった129Xeの再分極のような分極化期間を延長するための129Xeの保存も高価であり非効率である。
【発明の概要】
【0011】
それ故、本発明の目的は従来技術の走査方法(例えばOE−MRI方法)に関連される問題を克服し、健康および病理状態の肺の機能と生理学についての臨床的に重要な情報を与える技術を提供することである。
【0012】
本発明の第1の特徴によれば、このような特徴付けが必要な主体の肺の機能を特徴付ける方法が提供され、この方法は、
関係する肺空間内に規定されているボクセルで撮像技術を行い、
画像データは主体が常磁性気体の少なくとも2つの異なる部分圧力を有する気体を吸入する時間の期間にわたって発生され、
肺の換気、拡散および潅流についての情報を与えるためボクセルで発生された画像データに対してコンパートメントモデルアルゴリズムを適用するステップを含んでいる。
【0013】
撮像技術は当業者に知られている任意の適当な撮像技術でよい。例えばこれは任意の形態のMRI、CT走査、X線等であってもよい。しかしながら撮像技術はMRIであることが好ましい。
【0014】
常磁性気体は任意の適切な常磁性気体であってもよいが、常磁性気体は酸素であることが好ましい。
【0015】
撮像技術がMRIであるとき、常磁性気体は酸素であることが好ましい。代わりに、MRIが使用されるとき、常磁性気体はMRIで観察するとき肺実質で信号変化を生じるエアロゾルまたはガドリニウムベースのエアロゾルのような他の造影剤またはコントラスト媒体でもよい。
【0016】
撮像技術は酸素強化磁気共鳴映像技術(OE−MRI)であることが最も好ましい。
【0017】
画像データは換気、肺胞膜を横切る拡散、および、または肺の潅流に関する情報を提供することが好ましい。
【0018】
本発明の第1の特徴の方法は、肺機能が評価されることを可能にし、診断を行い肺の損傷又は病気を有する主体(例えば肺の線維症を有する主体、閉塞性の肺状態を有する主体、喫煙者、喘息患者等)または(例えば環境的原因からまたは遺伝的理由で)このような損傷又は病気にかかりやすい人の予知を行うために有用である重要なデータを提供する。
【0019】
用語「ボクセル」は、肺の容積内の3次元空間により規定される格子中の体積要素を意味している。ボクセルの寸法は拡張可能であり、肺全体を含むことができる。しかしながら本発明では、各肺はそれぞれ典型的に数立方ミリメートルのボクセルのマトリックスに分割されることが好ましい。
【0020】
本発明は、MRI、特にOE−MRI及び画像処理の分野の発明者の知識に基づいている。彼らはOE−MRIが肺の視覚化に有用であることを認識しており、その理由は(例えば気管支または肺胞スペースで)HMR撮像を使用するとき、分子酸素は実効的に気体形態では非MRI可視であり、(例えば間質液、細胞内またはプラズマ中の)水性の環境にあるとき水中の陽子と相互作用し、それ故変更されたNMR信号を生じるからである。本発明は発明者が分子酸素のこれらのMRI特性がOE−MRIからの肺機能に関する有意義なデータを得ることを可能にするか否かを考慮したときに行われた。彼らは気体および水/液相の分子酸素間のMRI可視度の差によって、酵素が血管流を介して身体に取り入れられるとき、酸素が肺胞の気体腔から肺胞膜の流体、間質腔、肺胞毛細血管へ移動され、最後に肺胞毛細血管から除去される速度を測定するためにOE−MRIを使用することが可能になることを認識した。このようなデータは臨床医に主体の肺の健康状態に関する有益な情報データを提供するので大きな価値がある。臨床医は気道に沿った肺胞への換気、または肺胞における酸素の拡散或いは肺の潅流の効率のいずれか(又はこれらの任意の組合せ)が妥協され、任意のこれらの機能の特徴における機能障害を患っている肺領域を可視化するための技術が診断又は予知的な査定を行うのに非常に強力であることを認識するであろう。
【0021】
ボクセルサイズは非常に小さく設定されることができ、NMRはその肺又は一部のスペース全体を満たすボクセルのマトリックスからNMR信号を検出することにより肺全体を視覚化するために使用されたので、発明者はさらにOE−MRIが強力な技術であることを認識した。したがって本発明の方法は好ましくは肺スペース内でマトリックスを形成する“n”ボクセル上でOE−MRIを行うことを含んでいる。気体交換の効率は各ボックセルで測定されることができ、臨床医はその後肺のディスクリートな領域で換気、拡散さ、潅流についての特別な情報を与えられることができる。
【0022】
発明者は、気体供給が酸素の可変の部分的圧力の気体混合物間で切り換えられ、肺胞に到着する気体酸素の濃度の漸進的変化を生じながら、肺胞からのNMRデータを連続的にダイナミックに監視することによって、酸素転送速度の最良の計算方法が肺胞気体腔(第1のコンパートメント)から組織(第2のコンパートメント)への酸素の転送を解析することであることを認識した。原理的に、これは酸素の少なくとも2つの異なる濃度で主体が呼吸することを必要とすることによって実現されることができる。肺が酸素の異なる濃度で換気されるときに集められたMRIデータは以下詳細に説明するアルゴリズムを使用して、気道を通る酸素換気速度と肺胞膜を横切る転送を計算するために使用されることができる。
【0023】
本発明の実現に貢献するさらに重要な要因は発明者が肺胞壁を横切って転送される多量の酸素が肺から静脈網を介して最終的には肺静脈へ迅速に転送されることを認識することである。したがってこの効果は本発明により使用されるアルゴリズムへ織り込まれる。
【0024】
本発明の方法により検査される主体は肺機能の検査が所望される任意の主体であってもよい。主体は好ましくは哺乳類(方法は通常、鳥類、虫類、両生類のような肺を有する任意の有機体にも応用可能である)であり、その方法は特に獣医学的に重要な動物(例えば馬、牛、犬又は猫)または治療学的(薬理学を含むがそれに限定されない)開発事業に重要な動物(例えば鼠)の肺機能を検査するのに適している。しかしながら、主体は好ましくは人間である。
【0025】
方法は特に喘息、慢性の閉塞性肺疾患、線維性肺疾患、気腫、気管支炎、アルファ1抗トリプシン欠乏、気管支拡張症または、喫煙或いは環境要素によって生じる気道構造または肺胞の損傷の場合のような状態を有する人間の主体の検査に有用である。
【0026】
検査される主体はMRIマシンで典型的であるが限定ではない1.5テスラの磁界強度下に置かれるべきである。この方法はほとんど専門家の装置を必要としないので、人間又は動物の使用のために設計された任意のMRIマシンでOE−MRIを使用することが可能である。T1加重された撮像プロトコルは肺の撮影に適しており、即ち肺の低陽子密度により生じる問題と肺の多数の空気組織境界により誘発される均質性の磁界を克服し、例えば反転回復半フーリエ単発ターボスピン−エコー(IR−HASTE)シーケンスまたは反転回復スナップショット高速度低アングルショット(IRスナップショット FLASH)シーケンスのように、吸入された酸素濃度の変化により生じる信号変化に十分な感度があるように選択されるべきである。気体は典型的に10−15リットル/分の速度で転送される。最も好ましいNMRパラメータは例1の方法セクションで与えられている。
【0027】
常磁性気体の少なくとも2つの異なる部分圧力を有する気体を吸入する主体にはMRI走査が行われながら異なる気体が吸入されるように気体の転送のためのマスク又は呼吸装置が取付けられることができる。気体が酸素であるとき、大気は酸素の部分圧力の1つとして使用されることができ、この例では主体は何等の装置を使用せずに正常に呼吸する。
【0028】
主体は2つの気体を吸入し、第1の気体は比較的低濃度の酸素(例えば10%−35%)であり、他方の気体は比較的高い酸素濃度(例えば45%−100%)を含むことが好ましい。第1の気体は(約21%の酸素を有する)空気であり、他方は90%−100%の酸素内容を含む気体であることが最も好ましい。使用される気体の選択は主体の健康状態に依存することが認識されよう。
【0029】
主体は連続して空気で呼吸しているので、造影剤として溶解された酸素を使用する走査の開始前に生体の主体の肺内の溶解された酸素の濃度は常にゼロよりも大きい。これは過分極化された129Xeのような人工的な造影剤が使用される撮像技術とは異なっており、その理由は過分極化された129Xeが自然に発生する物質ではなく、したがって走査前の主体の肺中の129Xeの濃度はゼロであると仮定されることができるためである。第1の酸素濃度の第1の気体の提供により信号が肺内の溶解された酸素濃度で検出されることが可能になる。走査期間中に異なる濃度の別の気体を提供することにより、溶解された酸素濃度の変化は肺胞腔が他の気体で充填され他の気体内の酸素の増加した濃度が肺へ溶解される転移期間中に検出されることが可能になる。さらに別の測定がその後、この気体の呼吸期間中に行われることができる。
【0030】
主体は第1の気体の呼吸に戻ることができる。このとき、測定は好ましく行われ、このさらに別の転移期間中に肺内の溶解された酸素の濃度の変化を検出する。各気体間の転移は必要ならば反復されてもよい。この方法は単一の気体の溶解された酸素濃度を単に測定することにより得られるよりも正確な肺内の酸素の局部濃度の測定を行う。
【0031】
肺胞腔中の低から高への酸素濃度の転移にかかる時間は「流入」時間として知られている。肺胞腔中の高から低への酸素濃度の転移にかかる時間は「流出」時間として知られている。流入時間および流出時間の長さは単一の走査期間中の単一の主体でほぼ等しく、したがって単一の走査期間中の単一の主体の流入及び流出時間のおおよその秒による長さはここでは単一値(TVENT)により示される。
【0032】
OE−MRIデータは低濃度の酸素における主体で開始し、吸入された気体を時間期間に高い酸素濃度を有する気体と交換し、その後主体に低濃度の酸素気体を再度吸入するように戻すことにより各ボクセルに対して記録されることが好ましい。本発明の方法は最も好ましくは主体からOE−MRIデータを生成し、ここで個人が100%の酸素の吸入前と後に通常の空気(例えば医学的な空気は21%の酸素を含む)で呼吸しているとき100%の酸素が流入され流出される。造影剤として作用する酸素の異なる濃度は、陽子NMRが使用されているならば(主に肺組織中の水または液体からの)陽子から検出されたNMR信号に影響するが、陽子ではないMRIが使用されるならば潜在的に他のNMR可視核から検出された信号に影響し、このOE−MRIデータはその後本発明によるアルゴリズムの入力を生成するために使用される。最も好ましい管理を例で説明する。
【0033】
健康な肺機能を有する人では、肺の酸素強化されたMRI信号は約5分間以内で増加するか飽和に達する。気体が空気に切り換えられて戻されるとき信号がその標準的なベースライン値まで減少するための時間も約5分間の同じ時間フレーム内である。典型的に、主体は気体混合物または約10分間の最大期間に高い酸素濃度を有する混合物で呼吸することを要される。高い酸素濃度の呼吸からの悪影響は約24時間の露出後のみに感じられ、それ故この露出の長さは安全であり、大部分の主体には有害な影響はないと思われる。
【0034】
肺でNMRを使用する主な挑戦は呼吸期間中の肺の動きと膨張および心臓の鼓動により生じる動きによっても生じる問題である。これはMRI信号が時間にわたって単一のボクセルから測定される必要があるとき技術的課題を生じる。それ故、測定が同じ体積の組織から行われることができることを確実にするために画像登録技術が適用されることが好ましい。Naish等により開発された画像登録技術は本発明の方法により使用されることが好ましい(Naish等(2005) Magnetic Resonance in Medicine 54;464-469)。
【0035】
本発明は局部換気、拡散、潅流についてのより特別な情報を与える強化情報からパラメータの抽出を可能にするためにコンパートメントモデル化方法がOE−MRIに適用されることができる理解に基づいている。コンパートメントモデルは(MRIではない可視気体の酸素を含む)肺胞腔である第1のコンパートメントと、(肺胞膜と、膜と肺胞毛細血管との間の間質腔と、毛細血管内のプラズマ間を含めた)組合された酸素濃度に水で溶解された酸素を含む第2のコンパートメントとに基づき、これは肺胞を含むボクセルからNMR信号を決定する(図1)。
【0036】
データに適用されるモデルは優先的にはコンパートメントモデルであるが、分配されたパラメータモデルのような類似の方法も使用されることができることが認識される。したがって分配されたパラメータモデルのような類似の方法はここで使用されるように「コンパートメントモデルアルゴリズム」の定義内に入る。例えば本発明による方法は以下説明するコンパートメントモデルの代わりにJohnson JA、Wilson TA.A model for capillary exchange. Am J Physio1 1966;210(6):1299-1303に記載されている原理にしたがって分配されたパラメータモデルを使用できる。
【0037】
このようなモデルの開発が相当の技術的ハードルを表すことが認識されよう。それ故本発明は換気の効率、肺胞膜を横切る拡散速度、肺胞毛細血管を通る血流速度を示すパラメータの計算を可能にする肺のOE−MRIに対するコンパートメントモデルを開発するための相当の発明の努力を適用する。
【0038】
発明者の1つの特別な実施はコンパートメントモデルがコンパートメントの少なくとも1つにおける検出された信号値、即ち肺胞腔の濃度値(CA)が存在しないこのようなパラメータを計算するために使用されることができることである。これは個々のコンパートメントの値が読取られ、コンパートメントモデルの機能が各コンパートメントの値の変化に基づいてコンパートメント間の伝送パラメータを単に推測するという走査データを解釈するためのコンパートメントモデルの従来の使用とは正反対である。一般的に、この方法の利点は他のコンパートメントの内容からモデルのコンパートメントの内容を推察する能力である。特にOE−MRIの場合、肺胞で可視ではない気体酸素は呼吸マスクにより制御された方法で主体に転送される酸素から推測されることができ、肺胞腔に転送される酸素の遅延時間は組織に溶解する酸素と、肺胞腔を包囲する血液との値から推測されることができる。
【0039】
本発明による方法は好ましくは肺胞膜を横切る酸素拡散速度と肺の血流の既知の生理学的パラメータに基づいた2コンパートメントモデルである。このようなコンパートメントモデルは好ましくは変化するNMR信号値から得られる肺胞膜と、膜と肺胞毛細血管との間の間質腔と、毛細血管内のプラズマ(Cp)とを含んでいる第2のコンパートメントの組合された酸素濃度をモデル化する。これは信号変化を生じるT1スピン格子緩和時間を計算し、溶解された酸素濃度の変化に比例する既知の割合定数を通してT1時間の変化を変換することによって実現されることができる。
【0040】
コンパートメントモデルは以下のパラメータの1以上を考慮するか、このようなパラメータの計算を助けることも好ましく、パラメータはMRI可視組織当りの血液プラズマと組織水の分数モデル(Vp)と、肺胞膜の拡散容量(K0X)と、組織水と毛細血管からの酸素の抽出割合(E)と、毛細血管中の血流速度(Fb)と、さらに肺胞に到着する予測された酸素の濃度を規定する入力関数の形状を示すパラメータ(即ち上昇されたレベルの酸素の吸入と、肺胞内の最大の入力酸素濃度との間の時間遅延または換気時間)である。
【0041】
コンパートメントモデルは肺胞腔中の酸素量と、(撮像走査により検出された信号によって示される)肺領域中の溶解された酸素量と、肺内の組織及び血液に溶解される酸素の速度と、溶解された酸素が血液によって肺の領域から除去される速度を考慮することが特に好ましい。モデルは好ましくは肺胞腔中の酸素量の値が直接決定されることができないので、これを間接的に明らかにする。コンパートメントモデルのこの部分が撮像走査により検出される必要がないという認識は主な技術的ハードルであり、これは酸素強化されたMRIと共に使用するためのコンパートメントモデルの開発期間中に克服された。
【0042】
モデルはコンパートメントモデルCpにより示される機能形態(式II参照)が肺水中で変化するNMR信号から計算されたダイナミック酸素濃度のデータセットに適合することを可能にする(レベンバーグ マルカルトの非線形の最小二乗適合アルゴリズムのような)任意のアルゴリズムを使用してこれらのパラメータの計算を可能にする。
【0043】
本発明により使用されるモデルは第1のコンパートメントとして肺胞の気体スペースを再度割当てるがこのとき肺胞膜と間質流体が第2の別のコンパートメントを具備し肺胞毛細血管内のプラズマが第3の別のコンパートメントとして割当てられるような複数のコンパートメントモデルに基づくことができる。
【0044】
コンパートメントモデルは肺胞膜を横切り肺胞毛細血管の血液への気体拡散の速度を説明したKety(Kety, SS(1951) Pharmacological Reviews. 3:1-41)により開発された式の適合であることが好ましい。
【0045】
それ故本発明の第1の特徴の方法は好ましくはKetyの2コンパートメントモデルに基づいたコンパートメントモデルアルゴリズムを適用する。このアルゴリズムは酸素の少なくとも2つの異なる部分圧力を有する流入及び流出吸入される気体により得られるOE−MRIデータに適用される。好ましくはMRI測定は通常の空気(21%の酸素)で呼吸を開始する主体で行われ、100%の酸素がその後通常の空気(21%の酸素)での呼吸に戻すことにより流出される。造影剤として作用する酸素の異なる濃度は(主に肺組織中の水からの)陽子から検出されるNMR信号に影響し、このOE−MRIデータはその後本発明により2つのコンパートメントモデルにより適合される機能として使用される。
【0046】
多数の異なるアルゴリズムが本発明の第1の特徴の方法にしたがった使用のために開発されることができることが認識されよう。本発明の方法の進歩性の1理由は発明者が(このような技術に関連される問題にかかわらず)最初にコンパートメントモデルが肺からのOE−MREデータに適用されることができることを認識したことであることがさらに認識されよう。
【0047】
本発明の好ましい実施形態では、発明者は以下の条件を適用することによりアルゴリズムを開発した。
【0048】
第1のコンパートメントは肺胞腔であり、酸素濃度はCAにより示されることができ、第2のコンパートメントはCpにより示される組合された酸素濃度を有して肺胞膜と、膜と肺胞毛細血管との間の間質腔と、毛細血管内のプラズマを含むことができる(図1参照)。
【0049】
本発明者はその後、空気で呼吸する期間に動脈のヘモグロビン中の酸素のほぼ飽和状態は、100%の酸素の呼吸が生じるときに主にプラズマ中で過剰な酸素が伝播されると仮定することによってモデルを開発した。肺では、増加された信号が実質水および毛細血管の血液で生じ、それ故次式に等しい測定され増加された濃度が考慮されることができる。
【数1】
【0050】
これらの近似式を使用して発明者は以下の式(I)を展開した。
【数2】
【0051】
ここでVpはMRI可視組織当りの血液プラズマと組織水の体積割合であり、K0Xは肺胞膜の拡散容量を示す項であり、Eは組織水および毛細血管からの酸素の抽出割合であり、Fbは毛細血管における血流速度である。これらの計算に基づいて本発明者は式IIを使用してCp(即ち肺胞膜と、膜と肺胞毛細血管との間の間質腔と、毛細血管内のプラズマを具備する第2のコンパートメントの組合された酸素濃度)を解くことが可能であることを認識した。
【数3】
【0052】
臨床的に有意義な情報はEFbとK0Xの値に取り付けられることができ、気体の肺胞腔中の最大の酸素濃度への遅延時間及びデータは肺領域から存在し、さらに例中の肺の冠状断面からパラメータマップが存在する。
【0053】
本発明の方法は特に呼吸器官の状態の予知及び診断の両目的に有用である。しかしながら好ましい実施形態では、この方法は特に予知および開発と薬物治療の監視で使用される。予知的使用は所定の治療選択肢に多かれ少なかれ効き目をあらわす可能性のある患者の識別を含むこともできる。
【0054】
局部的な肺機能を測定するこの技術により、換気障害、肺胞膜又は構造の損傷の測定、肺潅流および、気腫、気管支炎、喘息、臨床的閉塞性肺疾患、気管支拡張症、線肺症、細気管支炎、石綿症、線維症、過敏症肺炎、喫煙による肺の損傷及び肺炎と、肺塞栓症のような肺血管状態とを含むがそれらに限定されない広範囲の病気及び状態の査定が可能になる。
【0055】
本発明の方法は従来技術よりも多くの利点を有することが認識されよう。本発明に先だって、米国特許第5,694,934 A号の発明者のような他の技術者は変化する酸素濃度で実現された信号変化の大きさ、および/または信号が最大の強化を実現するためにかかる時間または信号がベースラインまで低下する時間の単純化された比較によってOE−MRI信号を解析した。これらの単純化された方法は、測定された強化信号を生成するように組み合わされる肺換気、肺胞攪拌、肺潅流の複雑な根本的な相互作用を考慮していない。
【0056】
本発明の主要な利点は、時には非常に確実でも又は再生可能でもなく如何なる場合でも局部的情報を提供できないことが指摘されている肺活量測定または拡散容量(DLCO)検査のような肺機能に関するデータを得るための時間がかかる一般的な検査を臨床医が行う必要がない。この方法は検査を行う人が(主体が第1の気体とさらに異なる酸素濃度を含む別の気体の供給のためのマスクを着用する必要があっても)比較的標準的なMRIを迅速に行うことを可能にし、非常に迅速に肺機能の画像を生成することができる。
【0057】
肺機能の撮像に適用されるコンパートメントモデルの概念は患者により呼吸されることができ、その後肺の実質で観察される信号に変化を生じる他の気体又はエアロゾルにも応用可能であることに注意すべきである。
【0058】
溶解された実質酸素の濃度の測定と入力関数を伴うコンパートメントモデルの使用は走査マシン又はデータ捕捉方法とは独立した値を有する生理学的パラメータの導出を可能にする(しかしこれらの要素は得られたパラメータの品質に影響する可能性があることが確認されている)ことが認識されよう。
【0059】
これはそれぞれフィールド強度、気体又はエアロゾルの特質、NMRデータ捕捉技術の選択肢に依存する可能性があるNMR信号またはT1値に基づいて酸素強化比または流入速度を測定しようとする方法よりも利点がある。
【0060】
造影剤として酸素を使用するさらに別の利点は、これが有害ではなく純粋な酸素の供給の準備以外の専門家の準備を必要としないことである。コンパートメントモデルで使用されることができる他の造影剤は通常専門家の特質(例えばガドリニウムベースのエアロゾル)であり、これは酸素よりも実用的選択肢を小さくする。さらに酸素は任意の実用又は生理的複雑さがなく数分以上快適に呼吸されることができる。他の可能な媒体(例えばガドリウムベースのエアロゾル)は通常ひと息の投与に限定されるので、それらの実用性は限定される。
【0061】
本発明の(前述の)第1の特徴による方法は呼吸可能な形態で肺に転送されることができ肺流体で溶解されるときのみ測定可能になり、その後肺血液供給により洗い流される任意の気体、エアロゾルまたは他の造影剤の量の査定を可能にする任意の撮像技術を使用して肺機能を評価するように適合されることができることが認識されよう。これはMRIで観察されるとき肺中に信号変化を生じるガドリウムベースのエアロゾルのような任意の他の常磁性気体、エアロゾル、他の造影剤を含むことができる。これは肺の水で溶解されるときのみ検出可能である適切な造影剤を有する撮像モダリティを含むこともできる。
【0062】
本発明の第2の特徴によれば、肺機能に関するデータを生成するためのコンピュータ装置が提供され、その装置は、
プロセッサの読取り可能な命令を記憶するメモリと、
そのメモリに記憶された命令を読取って実行するように構成されたプロセッサとを具備し、
そのプロセッサの読取り可能な命令は本発明の第1の特徴で規定されているアルゴリズムを肺の画像データへ適用するように前記プロセッサを制御する命令を含んでいる。
【0063】
本発明の第2の特徴による装置は、アルゴリズムの適用後に出力を計算してこれを表示するために必要な計算ハードウェアと表示装置を具備することができる。ハードウェア及び表示装置は方法で使用される走査装置に対して別のエンティティ(例えばMRIスキャナ)であるか、またはMRIスキャナのような多数の生物医学的デジタル撮像システムの場合のようにスキャナ内に統合されることができる。それ故、コンピュータ装置は走査装置の一部であってもよい。
【0064】
コンピュータソフトウェアはモデルを生(未加工)のOE−MRIデータに適合し、出力パラメータをヒストグラムまたは肺機能のマップに或いは局部的な平均値に変換するために必要なアルゴリズムを適用できることが認識されよう。このようなヒストグラムおよびマップはMRIで通常発生される(例えば図4又は5参照)。このようなソフトウェアによるOE−MRIデータの操作は肺全体またはその1領域を横切って機能の詳細な画像を提供するために多数のボクセルからのデータがユーザ入力なしに迅速に操作されることができるという利点を有する。
【0065】
本発明のアルゴリズムはコンピュータソフトウェア内で実施されることができ、撮像装置と別であるかそれに統合されている計算ハードウェアとディスプレイ装置を使用して実行されることができる。このようなソフトウェアは本発明のさらに別の特徴を表し、本発明の第3の特徴にしたがって、本発明の第1の特徴で規定されているようなアルゴリズムの適用方法をコンピュータに実行させるように構成されているコンピュータの読取り可能なプログラムコードを伝播するキャリア媒体が提供される。
【0066】
本発明を実施するコンピュータプログラムは任意の所望な方法で与えられることができることが認識されよう。任意の形態のこのようなコンピュータプログラムは本発明のさらに別の特徴を表し、本発明の第4の特徴によれば、本発明の第1の特徴で規定されているようなアルゴリズムの適用方法をコンピュータに実行させるように構成されているコンピュータプログラムが提供される。
【0067】
本発明の第4の特徴によるソフトウェアはJava(登録商標) TM(Sun Microsystems, Inc. 901 San Antonio Road Palo Alto, CA 94303, USA)と、C++(One Microsoft Way Redmond, WA 98052-6399, USA)またはMatlab(The MathWorks, Inc. P.O. Box 845428 Boston MA, USA)を含めた任意の所望のプログラミング言語で提供されることができる。
【0068】
本発明によるソフトウェアのユーザは好ましくはソフトウェアを獲得し、OE−MRIデータのような適切なMR画像データを受信するように構成されている適切なコンピュータシステムにそのソフトウェアをインストールする。
【0069】
本発明の実施形態を以下の例及び図面を参照して、例示によってのみさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】OE−MRIを使用する肺中の酸素の転送のための2コンパートメントモデルを示す図であり、第1のコンパートメントは気体の部分圧力濃度PAO2に比例する実効的な酸素濃度CAを有する肺胞であり、その内部では酸素はNMR信号において無視できる程度の影響を有し、定数K0Xは膜、間質腔、肺胞毛細血管内の血液パラズマを構成している第2のコンパートメントへまたはその第2のコンパートメントからの拡散速度を示し、その内部では酸素はNMR信号を変更し、酸素は抽出分画E×血流速度Fbにより規定される速度で第2のコンパートメントから抽出される。
【図2a】主体により呼吸される酸素の部分圧力(PO2)の所定の変化に対する予測された流入及び流出時間(TVENT)を表す図である。
【図2b】例1で説明されている主体の右肺の上部の問題の領域の評価された平均組織PO2(ベースラインの空気呼吸を超える差)へのコンパートメントモデルの適合を示す図であり、肺胞酸素入力関数も示されている。
【図3】例1で説明されているように一人の人の右肺で得られたコンパートメントモデルパラメータのマップを表す図であり、マップ(a)は血流により乗算される抽出分画を虹色のマップで示しており、肺の上部方向に及び周辺で値が低くなっている肺上の局部的な変化を示し、マップ(b)はグレースケールのカラーマップを使用するマップ(a)の結果を示しており、Eが1に等しいと仮定されるならば、Fb値は文献で報告されているものと一貫しており、マップ(c)は虹色のカラーマップを使用して肺の中心部のさらに高い換気の明白なクラスタから離れて主に均一であるK0Xの分布を示しており、マップ(d)はグレースケールのカラーマップを使用するマップ(c)の結果を示しており、マップ(e)は肺の周辺で2分間までの値が得られながら中心領域が1分間の予測される値に近い時間を実現している肺胞中において最大のPO2を実現するための時間の変化を示しており、マップ(f)はグレースケールのカラーマップを使用してマップ(e)の結果を示している。
【図4】例2で説明したような(a)非喫煙者と(b)喫煙者の右肺で得られたコンパートメントモデルパラメータのマップ及びヒストグラムを表す図である。
【図5】例2で説明するような(a)非喫煙者のグループと(b)喫煙者のグループの右肺で得られたコンパートメントモデルパラメータの平均データのヒストグラムを表す図である。
【図6】特に例示的な実施形態の第2のコンパートメントの酸素の濃度(Cp)のモデル化された値を示す図であり、酸素の濃度Ceの検出された信号値も示されている。
【図7】第3の例の複数の検査主体のK0Xの解析からの結果のボックスプロットを表す図である。
【図8】第3の例の複数の検査主体のEFbの解析の結果のボックスプロットを表す図である。
【図9】第3の例の複数の検査主体の肺の組織及び血液中の酸素の最大濃度に到達するための時間TVENTにおける流入の解析の結果のボックスプロットを表す図である。
【図10】健康な非喫煙主体の肺のa)K0X、b)EFb、c)TVENTの値の画像マップを表す図である。
【図11】健康な肺活量を有する喫煙主体の肺のa)K0X、b)EFb、c)TVENTの値の画像マップを表す図である。
【図12】不健康な喫煙主体の肺のa)K0X、b)EFb、c)TVENTの値の画像マップを表す図である。
【図13】本発明による方法によりモデル化されたK0Xの値と標準的なダイナミックコントラスト強化MRI(DCE−MRI)から発生されたPSとの間の相関プロットを表す図であり、各データ点は喫煙者(正方形の点)または非喫煙者(円形の点)に属するとして示されている。
【図14】本発明による方法によりモデル化されたEFbの値と標準的なDCE−MRIから発生されたPSとの間の相関プロットを表す図であり、各データ点は喫煙者(正方形の点)または非喫煙者(円形の点)に属するものとして示されている。
【発明を実施するための形態】
【0071】
[例1]
本発明の第1の特徴の方法が開発され正常な人のグループの肺機能の測定に適用された。
【0072】
1.1 方法
(a)画像捕捉
この研究で使用される画像は1.5 T Philips Gyroscan NT Intera MR system(Philips Medical Systems, Best, Netherland)を使用して、5人の正常の同意が得られたボランティアから得られたものである(2人の男性と3人の女性、年齢30−39歳)。主体は医療的空気または100%酸素をMRコンパチブルベイン呼吸システム(Intersurgical Ltd,, Wokingham, UK)と緊密に適合するマスクを通して呼吸した。標準的な麻酔トロリー(10 l/分の性能)が使用された。画像の第1のセットは空気の呼吸期間中にT1を測定するために捕捉された。半フーリエ単発ターボスピン−エコー(HASTE)シーケンスは68相の符合化ステップと4msの内部エコー空間と、16msの実効エコー時間と、450×450mm2の視界を有する128×128マトリックスと、10mmのスライスの厚さを有する冠状断面で使用された。T1測定は100、200、400、800、1200、1700、2300、3000、3500msの飽和時間(TSAT)で飽和回復HASTEシーケンスを使用して行われた。5つの画像が心臓周期にわたる平均化を可能にするために各飽和時間で集められた。飽和回復(SR)はここではさらに短い総撮像時間を与えるために選択された。次に、(空気で呼吸している間の肺からの信号をほぼ無効にするように選択された)720msの反転時間を有するIR HASTEシーケンスを使用してダイナミック画像捕捉が行われた。気体供給は一連の第10の画像後に医療空気から100%酸素へ切り換えられた。主体が100%の酸素で呼吸し続けている間にT1測定SR画像のセットが捕捉された。最後にダイナミック画像の第2のシリーズが第10番目の画像後に医療空気に切り換えられている気体供給で捕捉された。
【0073】
(b)コンパートメントモデル
第1のコンパートメントは肺胞腔であり、酸素濃度はCAにより示され、第2のコンパートメントは肺胞膜と、膜と肺胞毛細血管の間の間質腔と、毛細血管内のプラズマを含んでおり、Cpにより示される組み合わされた酸素濃度を有する(図1参照)。
【0074】
発明者はその後、空気で呼吸する期間に動脈のヘモグロビン中の酸素のほぼ飽和状態が100%の酸素の呼吸が生じるとき主にプラズマで過剰な酸素が伝播されることを仮定することによってモデルを開発した。肺中では、増加された信号が実質水および毛細血管の血液で生じ、それ故次式、即ち
【数4】
【0075】
に等しい測定され増加された濃度が考慮されることができる。これらの概算を使用して、発明者は次式(I)を展開した。
【数5】
【0076】
ここでVpはMRI可視組織当りの血液プラズマと組織水の分数体積であり、K0Xは肺胞膜の拡散容量を示す項であり、Eは組織水および毛細血管からの組織の抽出分画であり、Fbは毛細血管における血流速度である。これらの計算に基づいて発明者は式IIを使用してCp(即ち肺胞膜と、膜と肺胞毛細血管との間の間質腔と、前述したように計算された毛細血管内のプラズマを具備する第2のコンパートメントの組合された酸素濃度)を解くことが可能であることを認識した。
【数6】
【0077】
臨床的に有意義な情報はEFbとK0Xの値に取り付けられることができ、データは肺領域から存在し、図中の肺全体からのパラメータマップが存在する。
【0078】
(c)コンパートメントモデルの画像登録及び応用
登録において、アクチブ形状モデル(Cootes 等(1995) Computer Vision and Image Understanding, 61:38)は正常な呼吸運動を特徴付けし、肺の輪郭の自動化された識別を可能にするために使用された。肺の形状はその後、線形の再サンプリングを使用して平均形状に変形された。T1マップはレベンバーグ−マルカルトの適合アルゴリズムを使用して飽和回復画像を式IIIへ当てはめることにより空気と酸素の呼吸で計算された。
【数7】
【0079】
溶解される酸素濃度を空気の呼吸よりも増加するようにダイナミック信号強度データを変換するため、値はT1マップからのブックエンディングを使用して最初にT1値へ変換された(Cron等(1999) Magnetic Resonance in Medicine. 42 4:746-53)。これらはその後反転によりR1に変換され、ベースライン空気呼吸R1は減算され、最後に値は既知の緩和定数r1=4×10−4s−1mmHg−1による割算でPO2(mmHg)に変換された(Jacob等(2004) Magnetic Resonance in Medicine. 51:1009-1016)。
【0080】
酸素入力関数は肺胞気体部分圧力の既知の比から評価された(Martin, L(1999): All you really need to know to interpret Arterial Blood Gases. Lippincott Williams & Wilkins 2nd ed.)。空気呼吸中の肺胞のPO2(PAO2)は典型的に104mmHgであり、760mmHgの気圧下での100%酸素の呼吸期間中では673mmHgで評価されることができる。空気呼吸におけるPAO2の差は569mmHgとして概算されることができる。肺中の空気の置換率は典型的に1呼吸当り7.5%として見積もられる。安静時には、5秒間当りの1呼吸の平均を取り、それ故全ての空気が置換されるには平均約1分間かかる。これは評価されたPAO2の入力関数の勾配のエッジで示されている(図2a参照)。100%の酸素で空気を置換する期間中、肺は肺胞で空気を未知の変数レートで置換する。(指数関数又は他のさらに複雑な関数よりもむしろ(これらの選択肢は容易に方法に組み込まれることができる))線形関数はそれ故、真の形態に対する最も簡単な近似として入力関数のエッジを説明するように選択される。変化する人の肺容量と肺内の位置にしたがって、最大のPAO2に対する遅延時間、即ちTVENTの値は最適化を必要とすることが発見された。レベンバーグ−マルカルトの適合アルゴリズムを使用し、1のVp分数を仮定すると、式IIは各肺の上部の問題の領域にわたる平均でEFbとK0Xについて解かれる(表1参照)。TVENTは適合の第3の自由パラメータであった(図2b参照)。ボクセル×ボクセルパラメータマップも計算された(図3参照)。EFbの値は肺の周辺近くの肺密度0.15g/mlを想定して標準的な単位(ml/min/ml)に変換された(Hatabu等(1999). Magnetic Resonance in Medicine. 42:1033-1038)。
【0081】
(d)肺活量測定
本発明の第1の特徴による方法は、肺機能に関連する方法の診断能力を確認するためには肺活量測定と比較されることができる。肺活量測定は共通して行われる臨床状態である肺機能検査である。現在の肺活量測定は不規則な肺機能を診察するために使用される主要な検査である。肺活量測定はチューブを素尾しての主体の吸入又は吐き出しから取られる測定を含んでいる。主体はチューブを通して吹き、1分間で吐き出された総体積(FEV1)と吐き出された総体積(FVC)が測定される。これらの値から、FEV1%PREDの値が集団内で知られている正常範囲と比較してFEV1とFVCの比の関数により計算される。FEV1%PREDは主体の肺活量測定の健全さのよく知られた測定値であり、健康な値は0.75よりも大きい。
【0082】
(e)ボックスプロット
図7乃至9に示されている結果はボックスプロットとして示されている。ボックスプロットは技術で知られている。ボックスプロット表示はデータのグループ当り1つのグリフを含んでおり、各グリフはグリフの上および下に水平線を含み、これはそれぞれグループの最大及び最小の観察された値を示している。グリフ中のボックス形状は上、中間、下の水平線を有し、これは上の四分位範囲と、中の四分位範囲と、下の四分位範囲を示している。
【0083】
1.2 結果
1の抽出分画を仮定すると、表1で与えられているFb値は肺の潅流について文献で引用された値と一貫している(前述のHatabu等)。拡散測定はかなりの個人差があるがそれぞれの人において主に両肺の間で主に一貫されたK0Xで得られた。パラメータEFb(図3)は右肺のスライスにわたる変化を示し、肺のエッジ又は上方向で潅流が少なく、主肺血管に対応する値は中心で大きい。K0Xパラメータマップは中心の肺でさらに強力な換気−拡散を示すが、周辺値は肺のエッジに対してEFbマップよりも均一である。CAを最大にするための時間遅延TVENTのマップは中心の肺で短い時間を示し、周辺で長い時間を示す。
【表1】
【0084】
1.3 結論
これらのデータは肺への酸素転送のコンパートメントモデルを示し、これはOE−MRIを使用して肺潅流、拡散、換気の直接的な査定を可能にする。これは患者のグループに適用されるとき障害のある換気、拡散または潅流の領域を検出するために使用されることができる。
【0085】
この作業は第1の時間において、肺の潅流がOE−MRIを使用して如何にして評価されるかを実演している。この技術は、実行が容易であり、酸素造影剤に関連する危険性がなく、即ちDCE−MRIで使用されるガドリウムベースの造影剤はアレルギー反応の危険性と腎臓機能障害を有する患者において高まる危険性を最小にとどめることを含めて、潅流を測定するための他の方法よりも優れた利点を有する。
【0086】
酸素の転送機構の理解に関して、このモデル化方法は通常の気道の健康に関連される情報(またはTVENT、即ち最大値CAを実現するためにかかる時間)を膜を横切る拡散速度(K0X)から分離する新しい手段も提供する。
【0087】
例2
例1で説明されている方法は肺機能がこれらの2つのグループ間で如何にして変化するかを示すために本発明の方法が使用されることができる態様を示すために非喫煙者のグループと喫煙者のグループに適用された。
【0088】
図4は(a)非喫煙者と(b)喫煙者の右肺の(それぞれの)K0X、EFbと換気時間のマップとヒストグラムを表している。
【0089】
図5は(a)非喫煙者グループと(b)喫煙者グループの右肺の(それぞれの)K0X、EFbと換気時間の平均化されたデータのヒストグラムを表している。
【0090】
これらのデータは本発明の方法がこれらの2つのグループの肺機能が異なることを例証するために使用されることができることを示している。喫煙者では、K0Xヒストグラムは右にシフトされている。これは(他の発見と一貫して、Mason等(2001) Clinical Science, 100:231-236)恐らく増加された肺胞膜の透過性のために、または喫煙者中の血液酸素が低いことが知られているので喫煙者の膜を横切る酸素濃度の初期勾配が大きいことにより、或いは両者の組合せにより、組織への酸素の拡散速度が高いことを示唆している。さらに喫煙者のEFbヒストグラムは左へシフトされ、これは肺組織からの血流が低いことを示唆し、このことは既知の喫煙者の血液循環に障害があることに一貫している。最後に換気時間ヒストグラムは喫煙者では右にシフトされ、喫煙の既知の気道の狭窄効果のために、刺激された酸素が肺胞に到達するためにさらに長くかかることを示している。
【0091】
全てのこれらのデータは臨床医が喫煙者において見られると予測している妥協された肺機能と一致しており、本発明の方法が肺機能に関する重要なデータを得るために使用されることができることを示している。2つのグループ間の差は予測可能であり、方法は複数の獣医学または診察使用に適用されることができることを示している。
【0092】
例3
第3の例では、さらに本発明の第1の特徴による方法を確認するために例1のコンパートメントモデルアルゴリズムのさらに別の評価が喫煙者と非喫煙者のグループを使用して実行されている。
【0093】
3.1 方法
例1に示されている方法はさらに別の11人の非喫煙者と12人の喫煙者のグループに適用され、肺機能がどの程度これらの2つのグループ間で変化するかおよび主体の健康ではない部分的な肺機能が肺全体の平均として考慮したとき、特に肺活量測定に対して検査されるときにどの程度健康に見えるかを解析するために本発明の方法が使用されることができる態様をさらに示す。
【0094】
(a)OE−MRI走査およびコンパートメントモデル
12人の喫煙者と11人の非喫煙者はそれぞれ第1の例で説明された方法によりOE−MRI走査を受けた。各主体の走査からのデータは前述され式(II)及び例1に説明されているコンパートメントモデルにしたがってコンパートメントモデルに与えられた。K0X、EFb、TVENTのような肺機能に関するデータはコンパートメントモデルから得られ、データは解析された。解析結果を以下に示す。
【0095】
3.2 結果
本発明による各サブジェクトからOE−MRIデータへの適合コンパートメントモデルの結果は以下の種々の形態で示されている。
【0096】
(a)健康な非喫煙者の平均結果
図6は(P1O2とラベル付けされる)酸素の2つの異なる部分圧力を有する気体で呼吸する健康な非喫煙主体についてのコンパートメントモデルの第2のコンパートメントCp(組織及び血液)への(PAO2とラベル付けされる)平均右肺の酸素吸収に2コンパートメントモデルを適合した結果を示している。モデルが右肺全体の平均値に適合されたとき、K0X、EFb、TVENTの結果的な値は右肺全体の平均値を表す。
【0097】
図6に示されている値は主体により呼吸される酸素の2つの異なる部分的圧力に付いて各コンパートメント中のPO2の差(ΔPO2)を表しており、第1の圧力は大気(21%のO2)に近似しており、第2の圧力は純粋な酸素(100%のO2)である。約200秒で、主体により呼吸されている気体混合物中の酸素の濃度は増加された。図6に示されているように、第1のコンパートメント中の酸素濃度CAが増加すると、第2のコンパートメント中の酸素濃度Cpは第1のコンパートメント中の変化に比例して増加する。これは両コンパートメントの酸素の濃度が一定になる飽和点に両コンパートメントが到達するまで継続する。第1のコンパートメントの最大の酸素濃度に到達するためにかかる時間はTVENTとラベル付けされ、健康な非喫煙者では60秒である。約700秒では、主体により呼吸される酸素濃度が検査開始時のその初期濃度に戻されるとき、2つのコンパートメント中の酸素濃度は時間にわたってその前の状態まで減少する。
【0098】
(b)喫煙者と非喫煙者のグループの平均結果
図6を参照して前述された検査は喫煙者と非喫煙者の両者を含む検査グループの各メンバーで反復された。K0X、EFb、TVENTの値は各主体で行われたコンパートメントモデル適合から生成された。主体は彼らの喫煙習慣と通常の健康状態にしたがってグループに分けられた。喫煙者は「全喫煙者」と「>20PYの喫煙者」に分けられ、ここでのPYはパック年数であり、これは複数年間、一日当りに喫煙した煙草の箱数であり、これまでに吸われた箱数である。例えば20PYの人は20年間一日当り1箱喫煙しており、恐らく10年間では一日当り2箱喫煙している。非喫煙者は「健康な」非喫煙者と「全非喫煙者」に分けられる。健康な喫煙者は健康な肺活量検査と0PYとを有し、自然喫煙に対する規則的な露出がない人として規定される。各グループの結果は図7乃至9に示されているボックスプロットに示されている。
【0099】
図7は12人の喫煙者と11人の非喫煙者のグループ間のK0Xの比較結果のボックスプロットを示している。図7から喫煙者と火喫煙者との間の平均値K0Xが非常に異なることが明白である。これは各サブジェクトの平均K0X値を単に計算することによって喫煙者と非喫煙者を弁別することが可能であることを示している。主体のK0X値は肺胞膜を横切る酸素の拡散レートを示している。
【0100】
図8は主体の各グループのコンパートメントモデルから抽出されたEFbの値の比較結果を示している。前述したように、EFbは酸素が血液により肺組織から除去されるレートの測定値である。身体を廻って転送するため肺組織から酸素が除去されるレートは主体の健康な呼吸機能に臨界的であるので、この値は呼吸システムに対する損傷の重要な測定値である。これらの結果から、健康、不健康な非喫煙者におけるEFbが喫煙グループのいずれかよりも高いことが明白である。この減少された呼吸機能は主体の健康に重要な要素であり、129Xe撮像のような方法により直接検出されることができず、それはこのような技術により発生されるデータが酸素ではなく129Xeが肺組織から除去されるレートに関連するからである。
【0101】
図9は主体グループ間の流入及び流出値TVENTの比較結果を示している。コンパートメントモデルのコンパートメントの最大の酸素濃度に到達するのにかかる時間(TVENT)は肺から古い気体を出し、肺へ新しい気体を導入する人の各呼吸の効率を示している。TVENTの値は肺中の新しい空気が肺組織に溶解されるのにかかる時間の良好な指示である。これらの結果から、非喫煙グループは通常喫煙グループよりも非常に低いTVENT値を有することが明白である。これは患者の減少された肺機能を示す。
【0102】
図7、8、9に示されている各測定では、本発明のコンパートメントモデルから抽出されることができる値は喫煙者と非喫煙者の肺機能の種々の特徴間の検出可能な差を測定することができることが明らかである。特に、値は図7、8、9に示されている4つの各グループ間の差を示すことができる。
【0103】
(c)例示的な肺機能マップ
前述のセクション(b)で与えられた結果は各個人の右肺全体を横切る平均値として生成された。しかしながら、本発明によるコンパートメントモデルは肺全体を横切る広い測定値を単に生成するのではなく、肺組織又は血液を含むOE−MRIにより発生されたデータ中の各ボクセルに対してK0X、EFb、TVENTのような測定値の個人の値を示す肺パラメータマップを生成することができる。図10、11、12に示されている以下の結果は本発明の例で説明される検査に参加した主体で発生されたこのような肺パラメータマップの例である。本発明のコンパートメントモデルの結果を既存の診察方法と比較するため、主体は各主体のFEV%PREDの値を決定する肺活量検査も受けた。
【0104】
図の10の(a)、(b)、(c)は健康で非喫煙の23歳の女性である主体についてK0X、EFb、TVENTの肺パラメータマップをそれぞれ示している。マップ中の明るい画素は各測定値の高値を示し、マップ中の暗い画素は低値を示している。主体はFEV%PRED=93%の肺活量値を有し、これはこの主体が健康な肺機能を有することを示している。図7乃至9に示された統計的結果に貢献し、この主体のコンパートメントモデルから抽出された中間結果を次に示す。
中間K0X=3.19ml/分/g
中間EFb=19.4ml/分/g
中間TVENT=24秒
図12の(a)に示されているK0Xに対する肺機能マップのグレーレベルは各肺を横切って均一であり、肺の異なる領域間の肺胞膜を横切る拡散レートの差が小さいことを示している。類似の結果が図12の(b)に示され、これは溶解された酸素が肺組織から除去されるレートが各肺を横切って均一に高いことを示している。最後に、図12の(c)は各肺の流入および流出時間が通常肺の範囲を横切って同等に低いが、高いTVENTの幾らかの領域は右に示されている肺で明白であることを示している。これはこの主体の肺の全領域が良好に機能しており、主体の呼吸に貢献していることを示している。大きく明確で黒い領域は各画像の各肺で可視であるが、これらは空気を各肺に送入し各肺から送出する気管支または気道の大きな領域に対応する。領域に組織及び血液が無いために第2のコンパートメント測定は存在しないので、これらの領域はK0X、EFb、TVENTの低い値を有する。
【0105】
図11の(a)、(b)、(c)は明白に健康な喫煙の54歳の女性である第2の主体についてK0X、EFb、TVENTの画像結果をそれぞれ示している。この主体はFEV%PRED=92%の肺活量値を有し、これは健康範囲内の肺機能を示している。この主体のコンパートメントモデルから抽出され、図7乃至9に示されている統計結果に貢献する中間結果を次に示す。
中間K0X=3.7ml/分/g
中間EFb=16.6ml/分/g
中間TVENT=90秒
主体のK0X、EFb、TVENTの中間値は健康で非喫煙の主体の値よりも低く、これはこの主体の肺機能全体が僅かに減少されていることを示す。図11の(a)と(b)に示されているK0XとEFbの肺パラメータマップのグレーレベルは、肺全体を通して小さく暗い領域が存在する点で、領域図10の(a)と(b)に示されている画像とは異なることが認められる。これは血液による肺胞膜を横切る酸素の拡散と、肺組織からの酸素の除去とにおいてレートが減少されていることを示している。2つの画像は単独で肺の多数の領域における主体の減少された肺機能を示している。図11の(a)と(b)に加えて、11の(c)は肺の各領域が酸素の最大濃度に到達するのにかかる時間(TVENT)を示している。図10の(c)に示されている健康で非喫煙の主体のTVENTの肺パラメータマップと比較するとき、図11の(c)に示されている明白に健康な喫煙主体のTVENTの肺パラメータマップは明白に多くの領域で明るい。これはその主体の酸素の最大飽和に到達する時間が長く、それ故肺機能は健康な非喫煙者程には効率的ではないことを示している。
【0106】
このことはこの主体は標準的な肺活量検査の結果を示しているが、それらは実際に肺の幾つかの領域において減少された肺機能を有することを意味している。任意の他の手段によりこの機能の不規則性を直接診断することは可能ではない。これは本発明の方法の診断能力が肺活量が通常の性能を示す状況で肺の異常を検出でき、従来の方法よりも大きな利点を提示することを示している。
【0107】
図12の(a)、(b)、(c)は不健康な喫煙の57歳の男性についてK0X、EFb、TVENTの肺パラメータマップをそれぞれ示している。主体はタイプIIB慢性の閉塞性肺疾患(CORP)で診断されている。喫煙者はFEV%PRED=39%を有し、これは実質的に減少された肺機能を示している。コンパートメントモデルから抽出されたこの主体の右肺全体の主体の中間結果を以下示す。
中間K0X=3.34ml/分/g
中間EFb=16.9ml/分/g
中間TVENT=123秒
K0X、EFb、TVENTの中間値、特にTVENTの値の中間値から、主体の肺の機能が2つの主体のいずれかと比較して減少されていることが明らかであり、その結果が図10および11に示されている。図12の(a)と(b)に示されているK0X、EFbの肺パラメータマップの黒い領域はこれらの領域の肺組織が機能していないことを示している。TVENTの肺のパラメータマップ中の白色領域はこれらの肺領域が最大の酸素濃度に到達するまでに非常に長い時間がかかっていることを示している。図12の(c)の完全に黒い領域は肺の領域が最大の酸素濃度に非常に迅速に到達することを示しているが、図12の(a)と(b)の低値から、最大の酸素濃度がこの主体ではこれらの図面に結果が示されている主体よりも実質的に低いことが明らかである。
【0108】
(d)DCE−MRIでの独立した測定値との相関
発明者は本発明の例のコンパートメントモデルアルゴリズムを同じ主体の肺の浸透性と表面積の積(PS)の測定値と比較し、それは標準的なDCE−MRIにより生成された。PSの測定値は肺の浸透性の査定のための現在の標準であるが、酸素自体ではなく非酸素の造影剤に対する肺の毛細血管壁の浸透性の測定値であることに注意すべきである。それ故、DCE−MRIからの酸素に対する肺の浸透性の任意の測定値はコントラストの直接の測定値から計算される間接的な測定値である。この場合、DCE−MRIで使用されるコントラスト造影剤はガドリニウムベースの低分子量の造影剤であった。
【0109】
図13は本発明のK0X測定値とDCE−MRIのPS(浸透性×表面積)測定値との間の相関を示している。図14は本発明のEFb測定値とDCE−MRIのPS測定値との間の相関を示している。これは本発明による方法が造影剤を生成し、保存し、転送し、および生体の主体中にこのような造影剤を導入することに関連する多くの問題を改善するために、DCE−MRIの代わりに使用されることができることを示している。
【0110】
3.3 結論
この例は喫煙者と非喫煙者のOE−MRI画像データに適用される本発明による方法が喫煙者と非喫煙者の肺の局部機能を区別することができ、幾つかのケースでは肺機能のグローバル査定が肺活量によって臨界的に正常であるように見えるとき局部的な肺機能の減少を診断できることが示されている。DCE−MRIとの比較によって、本発明による方法は病的な肺機能の診断のためにDCE−MRIに加えて又はその代わりに使用されることができることが示されている。
【0111】
例4
この例では、発明者は本発明の特徴によるコンパートメントモデルアルゴリズムを実行した。このアルゴリズムはマトラブスクリプトのソフトウェアとして実行された。本発明はマトラブスクリプトをパッケージし、これはコンパクトディスクに分配するためにコンパートメントモデルアルゴリズムを実行する。
【0112】
ソフトウェアを含んでいるコンパクトディスクは1.5 T Philips Gyroscan NT Intera MR
スキャナを所有する技師に対して自信をもって与えられた。技師は第1の例に記載されている方法にしたがって人間の患者でOE−MRI走査を行うため医療環境で広く入手可能な酸素呼吸装置と共にスキャナを使用した。技師はその後、本発明の特徴にしたがって患者の肺機能を特徴付けするために患者のOE−MRI走査により発生されるデータを解析するためコンパクトディスク上のソフトウェアを使用した。
【0113】
コンパートメントモデルはK0X、EFb、TVENTを含む患者の肺機能を示す値を発生した。ソフトウェアは一連のグラフとして肺パラメータマップを含むいくつかの方法でコンパートメントモデルにより発生された値を表示した。データ値、グラフ、肺パラメータマップは患者の肺機能を解析し患者の病気を診断するため医療の専門家により使用された。患者の肺の比較的小さい領域の機能に対するモデルの感度は医療の専門家が肺内の低い肺機能の局部的領域を診断し、したがって治療法を定めることを可能にした。コンパートメントモデル化ソフトウェアへ入力されるデータを発生するためのOE−MRIの使用は特に新しく、医療の専門家が酸素の換気、拡散、潅流に関する肺の機能を直接解析できる点で興味深い。この直接解析は本発明の以前には可能ではなかった。
【技術分野】
【0001】
本発明は肺の撮像に関し、特に酸素強化磁気共鳴映像(OE−MRI)(しかしそれに限定されない)に対するコンパートメントモデルの適用に関する。
【背景技術】
【0002】
核磁気共鳴(NMR)は分数スピン量子数を有する原子核に作用し、それらを分極する磁界の適用を含んでいる。測定期間中、所定の共鳴エネルギの無線周波数パルスが供給され、これは核スピンをフリップし配向分布を妨害する。核はその後時間依存指数関数的に初期状態に戻り(リラックスし)、それによって記録可能なデータへ電子的に処理されることができる信号を与える。信号が空間的に微分され、十分なレベルであるとき、データは組織されスクリーン上に画像として表示されることができる。例えば有機組織内の水の陽子により発生される信号の計算は磁気共鳴映像(MRI)を構成することを可能にし、生体中の内部器官の直接的な視覚化を可能にする。NMRはそれ故、診断、医学治療、手術において強力なツールである。
【0003】
臨床医は多くの理由で肺の機能を検査することを望んでいることが認識されよう。例により、肺の換気を特徴付けすることは有益であり、それはこのような換気が様々の閉塞性肺疾患により影響される可能性があるからである。現在、標準的な肺機能検査は肺の生理学を説明する広範囲の広域変数を評価できるが、局部的な病気を調査するために使用されていない。シンチグラフィーは機能撮像に使用されるが、この技術は放射性物質の吸入を必要とし、低い空間分解能により限定され、トモグラフィーではない。
【0004】
比較的最近まで、MRIはその本質的に低い陽子密度と大きな感受性差と呼吸器及び心臓運動のためにその応用が肺に限定されていた。3Heまたは129Xeを使用する過分極気体MRIは肺の機能の詳細な局部的評価の可能性を示しているが、関係する高価で特殊化された装置のために臨床状況における使用が限定されている。
【0005】
OE−MRIは健康なボランティアと肺疾患を有する患者との両者で肺換気を視覚化するための代替の間接的方法として実演されている。分子酸素は常磁性であり、したがってT1(T1はNMR技術の当業者にはスピン格子緩和時間という名称で知られ、z方向における時定数であり、Z方向は与えられた磁界と平行に取られる)における影響のために実質水で溶解されるときNMR造影剤として作用する。100%酸素の呼吸は肺組織で溶解された酸素の濃度の増加を生じ、これはT1において対応する減少を生じ、それはT1加重画像の局部的な信号強度の増加として検出される。画素毎の解析は呼吸による1つの画像から次の画像への肺の寸法と形状の変化によって困難になる。息止めが幾つかの研究で使用されているが、肺疾患を有する患者では、これは不快である可能性があり、結果として再生可能な方法で行うことが困難である。息止めは正常な呼吸拡散容量の誤った解釈になりかねない大きな静的吸入を要するので査定される現象に干渉することも論じられている。したがって呼吸運動を補正するための画像登録方法が開発されている(例えばNaish等(2005)のMagnetic Resonance in Medicine 54:464-469参照)。このような方法は肺の輪郭の登録を可能にし、その後の肺画像への登録の適用はT1における局部的な酸素誘発による変化と酸素の流入と流出期間中の局部的な信号強度の変化の時間的経過の決定において大きな改良になる。
【0006】
Naish等(上記)及びその他(Ohno Y等(2002) Magnetic Resonance Medicine, 47, 1139, Jakob PM等(2004)Magnetic Resonance Medicine, 51, 1009-1016)はOE−MRIが呼吸気と100%酸素との強化比を測定し、さらに増加された信号効果の飽和までの時間を測定することにより肺機能(即ち酸素の流入レートと酸素の流出レート)を査定するために使用されることができることを実証している。しかしながら、これらの定数は肺の換気、拡散および潅流についての特別ではない情報を与え、生理学的に関連されるプロセスに関して吸収特徴で生じる差の解釈を困難にする。それ故、通常のOE−MRIは、臨床医が道理的な診断又は予知を与えることを助ける限定された情報だけを提供できるという問題を残す。
【0007】
公開された米国特許出願第5,694,934A号明細書は放射線科医による直接的解釈のための肺の画像を捕捉する方法を記載している。この方法はMR映像装置により検出されるような肺組織のT1緩和時間における溶解された酸素の弱い常磁性効果を使用する。酸素が肺に換気されるとき、酸素の常磁性効果は酸素が溶解されている肺領域のT1加重されたMR走査の信号を強化する。それ故米国特許出願第5,694,934A号明細書によれば、第1のT1加重された画像は酸素が肺に吸収される前に発生され、第2のT1加重された画像は酸素が肺に吸収された後に発生される。2つの画像はその後医療の専門家により解釈され比較される。信号が強化されているようには見られない第2の酸素強化された領域の画像は医療の専門家により換気がなされていないと解釈され、これは肺のその領域の問題を示している。
【0008】
米国特許出願第5,694,934A号明細書に記載されている方法により発生される2つの画像は肺内の位置に溶解された酸素が存在するか存在しないかのみに関する。この情報は単独では限定された診断値であり、それは酸素が肺の各領域に溶解されているか否か及びその程度を示すだけであるからである。米国特許第5,694,934A号明細書に記載されているように、情報は単に肺の換気の明白なインジケータであり、肺の換気を示す他の検査の代わりに使用されることができる。
【0009】
公開された欧州特許出願第EP1588180A1号明細書は主体に分極された129Xeを吸入させることにより過分極化された129Xeを造影剤として導入することにより主体の肺のNMR分光走査からダイナミックなデータセットを得る方法を記載している。この方法は肺内の各気体状態、水で溶解された状態、血液で溶解された状態における過分極化された129Xeを直接検出することを含んでいる。3つのタイプの検出されたデータはダイナミックデータセットを生成するために解析され、このデータセットは例えば組織の厚さ、血液のコンパートメントの厚さ、潅流または肺胞半径についての情報を含むことができる。残念ながら、この方法は貴気体の吸入および息止めを含んでおり、これは患者、特に肺病理の疑いのある患者に対して潜在的な危険が確認されている。息止め技術は肺機能の測定における誤りの原因であることも知られており、それは肺はこれらが測定時に正常であるように機能していないためである。また、主体は通常過分極化された129Xeで呼吸しておらず、それによってこの種の走査からは正常に機能する状況下、即ち酸素を含む気体の混合で呼吸する状況の肺のダイナミックなデータセットを示さない。
【0010】
過分極化された気体の使用は気体の生成、転送、保存、患者への投与において費用を生じる。過分極化されていない129XeはNMR分光学走査で信号をほとんどまたは全く発生しない。129Xeを分極化するプロセスは共通して129Xeを生きた主体に損傷を与えるアルカリ蒸気に混合することを含んでいる。アルカリ蒸気はそれ故、安心と効率を犠牲にして、過分極化された129Xeが主体に投与される前に除去されなければならない。また、過分極化された129Xeは時間の経過と共に分極が減少するので、限定された保管寿命を有し、この寿命時間後には欧州特許出願第EP1588180A1号明細書に記載された目的では役に立たなくなる。分極のなくなった129Xeの再分極のような分極化期間を延長するための129Xeの保存も高価であり非効率である。
【発明の概要】
【0011】
それ故、本発明の目的は従来技術の走査方法(例えばOE−MRI方法)に関連される問題を克服し、健康および病理状態の肺の機能と生理学についての臨床的に重要な情報を与える技術を提供することである。
【0012】
本発明の第1の特徴によれば、このような特徴付けが必要な主体の肺の機能を特徴付ける方法が提供され、この方法は、
関係する肺空間内に規定されているボクセルで撮像技術を行い、
画像データは主体が常磁性気体の少なくとも2つの異なる部分圧力を有する気体を吸入する時間の期間にわたって発生され、
肺の換気、拡散および潅流についての情報を与えるためボクセルで発生された画像データに対してコンパートメントモデルアルゴリズムを適用するステップを含んでいる。
【0013】
撮像技術は当業者に知られている任意の適当な撮像技術でよい。例えばこれは任意の形態のMRI、CT走査、X線等であってもよい。しかしながら撮像技術はMRIであることが好ましい。
【0014】
常磁性気体は任意の適切な常磁性気体であってもよいが、常磁性気体は酸素であることが好ましい。
【0015】
撮像技術がMRIであるとき、常磁性気体は酸素であることが好ましい。代わりに、MRIが使用されるとき、常磁性気体はMRIで観察するとき肺実質で信号変化を生じるエアロゾルまたはガドリニウムベースのエアロゾルのような他の造影剤またはコントラスト媒体でもよい。
【0016】
撮像技術は酸素強化磁気共鳴映像技術(OE−MRI)であることが最も好ましい。
【0017】
画像データは換気、肺胞膜を横切る拡散、および、または肺の潅流に関する情報を提供することが好ましい。
【0018】
本発明の第1の特徴の方法は、肺機能が評価されることを可能にし、診断を行い肺の損傷又は病気を有する主体(例えば肺の線維症を有する主体、閉塞性の肺状態を有する主体、喫煙者、喘息患者等)または(例えば環境的原因からまたは遺伝的理由で)このような損傷又は病気にかかりやすい人の予知を行うために有用である重要なデータを提供する。
【0019】
用語「ボクセル」は、肺の容積内の3次元空間により規定される格子中の体積要素を意味している。ボクセルの寸法は拡張可能であり、肺全体を含むことができる。しかしながら本発明では、各肺はそれぞれ典型的に数立方ミリメートルのボクセルのマトリックスに分割されることが好ましい。
【0020】
本発明は、MRI、特にOE−MRI及び画像処理の分野の発明者の知識に基づいている。彼らはOE−MRIが肺の視覚化に有用であることを認識しており、その理由は(例えば気管支または肺胞スペースで)HMR撮像を使用するとき、分子酸素は実効的に気体形態では非MRI可視であり、(例えば間質液、細胞内またはプラズマ中の)水性の環境にあるとき水中の陽子と相互作用し、それ故変更されたNMR信号を生じるからである。本発明は発明者が分子酸素のこれらのMRI特性がOE−MRIからの肺機能に関する有意義なデータを得ることを可能にするか否かを考慮したときに行われた。彼らは気体および水/液相の分子酸素間のMRI可視度の差によって、酵素が血管流を介して身体に取り入れられるとき、酸素が肺胞の気体腔から肺胞膜の流体、間質腔、肺胞毛細血管へ移動され、最後に肺胞毛細血管から除去される速度を測定するためにOE−MRIを使用することが可能になることを認識した。このようなデータは臨床医に主体の肺の健康状態に関する有益な情報データを提供するので大きな価値がある。臨床医は気道に沿った肺胞への換気、または肺胞における酸素の拡散或いは肺の潅流の効率のいずれか(又はこれらの任意の組合せ)が妥協され、任意のこれらの機能の特徴における機能障害を患っている肺領域を可視化するための技術が診断又は予知的な査定を行うのに非常に強力であることを認識するであろう。
【0021】
ボクセルサイズは非常に小さく設定されることができ、NMRはその肺又は一部のスペース全体を満たすボクセルのマトリックスからNMR信号を検出することにより肺全体を視覚化するために使用されたので、発明者はさらにOE−MRIが強力な技術であることを認識した。したがって本発明の方法は好ましくは肺スペース内でマトリックスを形成する“n”ボクセル上でOE−MRIを行うことを含んでいる。気体交換の効率は各ボックセルで測定されることができ、臨床医はその後肺のディスクリートな領域で換気、拡散さ、潅流についての特別な情報を与えられることができる。
【0022】
発明者は、気体供給が酸素の可変の部分的圧力の気体混合物間で切り換えられ、肺胞に到着する気体酸素の濃度の漸進的変化を生じながら、肺胞からのNMRデータを連続的にダイナミックに監視することによって、酸素転送速度の最良の計算方法が肺胞気体腔(第1のコンパートメント)から組織(第2のコンパートメント)への酸素の転送を解析することであることを認識した。原理的に、これは酸素の少なくとも2つの異なる濃度で主体が呼吸することを必要とすることによって実現されることができる。肺が酸素の異なる濃度で換気されるときに集められたMRIデータは以下詳細に説明するアルゴリズムを使用して、気道を通る酸素換気速度と肺胞膜を横切る転送を計算するために使用されることができる。
【0023】
本発明の実現に貢献するさらに重要な要因は発明者が肺胞壁を横切って転送される多量の酸素が肺から静脈網を介して最終的には肺静脈へ迅速に転送されることを認識することである。したがってこの効果は本発明により使用されるアルゴリズムへ織り込まれる。
【0024】
本発明の方法により検査される主体は肺機能の検査が所望される任意の主体であってもよい。主体は好ましくは哺乳類(方法は通常、鳥類、虫類、両生類のような肺を有する任意の有機体にも応用可能である)であり、その方法は特に獣医学的に重要な動物(例えば馬、牛、犬又は猫)または治療学的(薬理学を含むがそれに限定されない)開発事業に重要な動物(例えば鼠)の肺機能を検査するのに適している。しかしながら、主体は好ましくは人間である。
【0025】
方法は特に喘息、慢性の閉塞性肺疾患、線維性肺疾患、気腫、気管支炎、アルファ1抗トリプシン欠乏、気管支拡張症または、喫煙或いは環境要素によって生じる気道構造または肺胞の損傷の場合のような状態を有する人間の主体の検査に有用である。
【0026】
検査される主体はMRIマシンで典型的であるが限定ではない1.5テスラの磁界強度下に置かれるべきである。この方法はほとんど専門家の装置を必要としないので、人間又は動物の使用のために設計された任意のMRIマシンでOE−MRIを使用することが可能である。T1加重された撮像プロトコルは肺の撮影に適しており、即ち肺の低陽子密度により生じる問題と肺の多数の空気組織境界により誘発される均質性の磁界を克服し、例えば反転回復半フーリエ単発ターボスピン−エコー(IR−HASTE)シーケンスまたは反転回復スナップショット高速度低アングルショット(IRスナップショット FLASH)シーケンスのように、吸入された酸素濃度の変化により生じる信号変化に十分な感度があるように選択されるべきである。気体は典型的に10−15リットル/分の速度で転送される。最も好ましいNMRパラメータは例1の方法セクションで与えられている。
【0027】
常磁性気体の少なくとも2つの異なる部分圧力を有する気体を吸入する主体にはMRI走査が行われながら異なる気体が吸入されるように気体の転送のためのマスク又は呼吸装置が取付けられることができる。気体が酸素であるとき、大気は酸素の部分圧力の1つとして使用されることができ、この例では主体は何等の装置を使用せずに正常に呼吸する。
【0028】
主体は2つの気体を吸入し、第1の気体は比較的低濃度の酸素(例えば10%−35%)であり、他方の気体は比較的高い酸素濃度(例えば45%−100%)を含むことが好ましい。第1の気体は(約21%の酸素を有する)空気であり、他方は90%−100%の酸素内容を含む気体であることが最も好ましい。使用される気体の選択は主体の健康状態に依存することが認識されよう。
【0029】
主体は連続して空気で呼吸しているので、造影剤として溶解された酸素を使用する走査の開始前に生体の主体の肺内の溶解された酸素の濃度は常にゼロよりも大きい。これは過分極化された129Xeのような人工的な造影剤が使用される撮像技術とは異なっており、その理由は過分極化された129Xeが自然に発生する物質ではなく、したがって走査前の主体の肺中の129Xeの濃度はゼロであると仮定されることができるためである。第1の酸素濃度の第1の気体の提供により信号が肺内の溶解された酸素濃度で検出されることが可能になる。走査期間中に異なる濃度の別の気体を提供することにより、溶解された酸素濃度の変化は肺胞腔が他の気体で充填され他の気体内の酸素の増加した濃度が肺へ溶解される転移期間中に検出されることが可能になる。さらに別の測定がその後、この気体の呼吸期間中に行われることができる。
【0030】
主体は第1の気体の呼吸に戻ることができる。このとき、測定は好ましく行われ、このさらに別の転移期間中に肺内の溶解された酸素の濃度の変化を検出する。各気体間の転移は必要ならば反復されてもよい。この方法は単一の気体の溶解された酸素濃度を単に測定することにより得られるよりも正確な肺内の酸素の局部濃度の測定を行う。
【0031】
肺胞腔中の低から高への酸素濃度の転移にかかる時間は「流入」時間として知られている。肺胞腔中の高から低への酸素濃度の転移にかかる時間は「流出」時間として知られている。流入時間および流出時間の長さは単一の走査期間中の単一の主体でほぼ等しく、したがって単一の走査期間中の単一の主体の流入及び流出時間のおおよその秒による長さはここでは単一値(TVENT)により示される。
【0032】
OE−MRIデータは低濃度の酸素における主体で開始し、吸入された気体を時間期間に高い酸素濃度を有する気体と交換し、その後主体に低濃度の酸素気体を再度吸入するように戻すことにより各ボクセルに対して記録されることが好ましい。本発明の方法は最も好ましくは主体からOE−MRIデータを生成し、ここで個人が100%の酸素の吸入前と後に通常の空気(例えば医学的な空気は21%の酸素を含む)で呼吸しているとき100%の酸素が流入され流出される。造影剤として作用する酸素の異なる濃度は、陽子NMRが使用されているならば(主に肺組織中の水または液体からの)陽子から検出されたNMR信号に影響するが、陽子ではないMRIが使用されるならば潜在的に他のNMR可視核から検出された信号に影響し、このOE−MRIデータはその後本発明によるアルゴリズムの入力を生成するために使用される。最も好ましい管理を例で説明する。
【0033】
健康な肺機能を有する人では、肺の酸素強化されたMRI信号は約5分間以内で増加するか飽和に達する。気体が空気に切り換えられて戻されるとき信号がその標準的なベースライン値まで減少するための時間も約5分間の同じ時間フレーム内である。典型的に、主体は気体混合物または約10分間の最大期間に高い酸素濃度を有する混合物で呼吸することを要される。高い酸素濃度の呼吸からの悪影響は約24時間の露出後のみに感じられ、それ故この露出の長さは安全であり、大部分の主体には有害な影響はないと思われる。
【0034】
肺でNMRを使用する主な挑戦は呼吸期間中の肺の動きと膨張および心臓の鼓動により生じる動きによっても生じる問題である。これはMRI信号が時間にわたって単一のボクセルから測定される必要があるとき技術的課題を生じる。それ故、測定が同じ体積の組織から行われることができることを確実にするために画像登録技術が適用されることが好ましい。Naish等により開発された画像登録技術は本発明の方法により使用されることが好ましい(Naish等(2005) Magnetic Resonance in Medicine 54;464-469)。
【0035】
本発明は局部換気、拡散、潅流についてのより特別な情報を与える強化情報からパラメータの抽出を可能にするためにコンパートメントモデル化方法がOE−MRIに適用されることができる理解に基づいている。コンパートメントモデルは(MRIではない可視気体の酸素を含む)肺胞腔である第1のコンパートメントと、(肺胞膜と、膜と肺胞毛細血管との間の間質腔と、毛細血管内のプラズマ間を含めた)組合された酸素濃度に水で溶解された酸素を含む第2のコンパートメントとに基づき、これは肺胞を含むボクセルからNMR信号を決定する(図1)。
【0036】
データに適用されるモデルは優先的にはコンパートメントモデルであるが、分配されたパラメータモデルのような類似の方法も使用されることができることが認識される。したがって分配されたパラメータモデルのような類似の方法はここで使用されるように「コンパートメントモデルアルゴリズム」の定義内に入る。例えば本発明による方法は以下説明するコンパートメントモデルの代わりにJohnson JA、Wilson TA.A model for capillary exchange. Am J Physio1 1966;210(6):1299-1303に記載されている原理にしたがって分配されたパラメータモデルを使用できる。
【0037】
このようなモデルの開発が相当の技術的ハードルを表すことが認識されよう。それ故本発明は換気の効率、肺胞膜を横切る拡散速度、肺胞毛細血管を通る血流速度を示すパラメータの計算を可能にする肺のOE−MRIに対するコンパートメントモデルを開発するための相当の発明の努力を適用する。
【0038】
発明者の1つの特別な実施はコンパートメントモデルがコンパートメントの少なくとも1つにおける検出された信号値、即ち肺胞腔の濃度値(CA)が存在しないこのようなパラメータを計算するために使用されることができることである。これは個々のコンパートメントの値が読取られ、コンパートメントモデルの機能が各コンパートメントの値の変化に基づいてコンパートメント間の伝送パラメータを単に推測するという走査データを解釈するためのコンパートメントモデルの従来の使用とは正反対である。一般的に、この方法の利点は他のコンパートメントの内容からモデルのコンパートメントの内容を推察する能力である。特にOE−MRIの場合、肺胞で可視ではない気体酸素は呼吸マスクにより制御された方法で主体に転送される酸素から推測されることができ、肺胞腔に転送される酸素の遅延時間は組織に溶解する酸素と、肺胞腔を包囲する血液との値から推測されることができる。
【0039】
本発明による方法は好ましくは肺胞膜を横切る酸素拡散速度と肺の血流の既知の生理学的パラメータに基づいた2コンパートメントモデルである。このようなコンパートメントモデルは好ましくは変化するNMR信号値から得られる肺胞膜と、膜と肺胞毛細血管との間の間質腔と、毛細血管内のプラズマ(Cp)とを含んでいる第2のコンパートメントの組合された酸素濃度をモデル化する。これは信号変化を生じるT1スピン格子緩和時間を計算し、溶解された酸素濃度の変化に比例する既知の割合定数を通してT1時間の変化を変換することによって実現されることができる。
【0040】
コンパートメントモデルは以下のパラメータの1以上を考慮するか、このようなパラメータの計算を助けることも好ましく、パラメータはMRI可視組織当りの血液プラズマと組織水の分数モデル(Vp)と、肺胞膜の拡散容量(K0X)と、組織水と毛細血管からの酸素の抽出割合(E)と、毛細血管中の血流速度(Fb)と、さらに肺胞に到着する予測された酸素の濃度を規定する入力関数の形状を示すパラメータ(即ち上昇されたレベルの酸素の吸入と、肺胞内の最大の入力酸素濃度との間の時間遅延または換気時間)である。
【0041】
コンパートメントモデルは肺胞腔中の酸素量と、(撮像走査により検出された信号によって示される)肺領域中の溶解された酸素量と、肺内の組織及び血液に溶解される酸素の速度と、溶解された酸素が血液によって肺の領域から除去される速度を考慮することが特に好ましい。モデルは好ましくは肺胞腔中の酸素量の値が直接決定されることができないので、これを間接的に明らかにする。コンパートメントモデルのこの部分が撮像走査により検出される必要がないという認識は主な技術的ハードルであり、これは酸素強化されたMRIと共に使用するためのコンパートメントモデルの開発期間中に克服された。
【0042】
モデルはコンパートメントモデルCpにより示される機能形態(式II参照)が肺水中で変化するNMR信号から計算されたダイナミック酸素濃度のデータセットに適合することを可能にする(レベンバーグ マルカルトの非線形の最小二乗適合アルゴリズムのような)任意のアルゴリズムを使用してこれらのパラメータの計算を可能にする。
【0043】
本発明により使用されるモデルは第1のコンパートメントとして肺胞の気体スペースを再度割当てるがこのとき肺胞膜と間質流体が第2の別のコンパートメントを具備し肺胞毛細血管内のプラズマが第3の別のコンパートメントとして割当てられるような複数のコンパートメントモデルに基づくことができる。
【0044】
コンパートメントモデルは肺胞膜を横切り肺胞毛細血管の血液への気体拡散の速度を説明したKety(Kety, SS(1951) Pharmacological Reviews. 3:1-41)により開発された式の適合であることが好ましい。
【0045】
それ故本発明の第1の特徴の方法は好ましくはKetyの2コンパートメントモデルに基づいたコンパートメントモデルアルゴリズムを適用する。このアルゴリズムは酸素の少なくとも2つの異なる部分圧力を有する流入及び流出吸入される気体により得られるOE−MRIデータに適用される。好ましくはMRI測定は通常の空気(21%の酸素)で呼吸を開始する主体で行われ、100%の酸素がその後通常の空気(21%の酸素)での呼吸に戻すことにより流出される。造影剤として作用する酸素の異なる濃度は(主に肺組織中の水からの)陽子から検出されるNMR信号に影響し、このOE−MRIデータはその後本発明により2つのコンパートメントモデルにより適合される機能として使用される。
【0046】
多数の異なるアルゴリズムが本発明の第1の特徴の方法にしたがった使用のために開発されることができることが認識されよう。本発明の方法の進歩性の1理由は発明者が(このような技術に関連される問題にかかわらず)最初にコンパートメントモデルが肺からのOE−MREデータに適用されることができることを認識したことであることがさらに認識されよう。
【0047】
本発明の好ましい実施形態では、発明者は以下の条件を適用することによりアルゴリズムを開発した。
【0048】
第1のコンパートメントは肺胞腔であり、酸素濃度はCAにより示されることができ、第2のコンパートメントはCpにより示される組合された酸素濃度を有して肺胞膜と、膜と肺胞毛細血管との間の間質腔と、毛細血管内のプラズマを含むことができる(図1参照)。
【0049】
本発明者はその後、空気で呼吸する期間に動脈のヘモグロビン中の酸素のほぼ飽和状態は、100%の酸素の呼吸が生じるときに主にプラズマ中で過剰な酸素が伝播されると仮定することによってモデルを開発した。肺では、増加された信号が実質水および毛細血管の血液で生じ、それ故次式に等しい測定され増加された濃度が考慮されることができる。
【数1】
【0050】
これらの近似式を使用して発明者は以下の式(I)を展開した。
【数2】
【0051】
ここでVpはMRI可視組織当りの血液プラズマと組織水の体積割合であり、K0Xは肺胞膜の拡散容量を示す項であり、Eは組織水および毛細血管からの酸素の抽出割合であり、Fbは毛細血管における血流速度である。これらの計算に基づいて本発明者は式IIを使用してCp(即ち肺胞膜と、膜と肺胞毛細血管との間の間質腔と、毛細血管内のプラズマを具備する第2のコンパートメントの組合された酸素濃度)を解くことが可能であることを認識した。
【数3】
【0052】
臨床的に有意義な情報はEFbとK0Xの値に取り付けられることができ、気体の肺胞腔中の最大の酸素濃度への遅延時間及びデータは肺領域から存在し、さらに例中の肺の冠状断面からパラメータマップが存在する。
【0053】
本発明の方法は特に呼吸器官の状態の予知及び診断の両目的に有用である。しかしながら好ましい実施形態では、この方法は特に予知および開発と薬物治療の監視で使用される。予知的使用は所定の治療選択肢に多かれ少なかれ効き目をあらわす可能性のある患者の識別を含むこともできる。
【0054】
局部的な肺機能を測定するこの技術により、換気障害、肺胞膜又は構造の損傷の測定、肺潅流および、気腫、気管支炎、喘息、臨床的閉塞性肺疾患、気管支拡張症、線肺症、細気管支炎、石綿症、線維症、過敏症肺炎、喫煙による肺の損傷及び肺炎と、肺塞栓症のような肺血管状態とを含むがそれらに限定されない広範囲の病気及び状態の査定が可能になる。
【0055】
本発明の方法は従来技術よりも多くの利点を有することが認識されよう。本発明に先だって、米国特許第5,694,934 A号の発明者のような他の技術者は変化する酸素濃度で実現された信号変化の大きさ、および/または信号が最大の強化を実現するためにかかる時間または信号がベースラインまで低下する時間の単純化された比較によってOE−MRI信号を解析した。これらの単純化された方法は、測定された強化信号を生成するように組み合わされる肺換気、肺胞攪拌、肺潅流の複雑な根本的な相互作用を考慮していない。
【0056】
本発明の主要な利点は、時には非常に確実でも又は再生可能でもなく如何なる場合でも局部的情報を提供できないことが指摘されている肺活量測定または拡散容量(DLCO)検査のような肺機能に関するデータを得るための時間がかかる一般的な検査を臨床医が行う必要がない。この方法は検査を行う人が(主体が第1の気体とさらに異なる酸素濃度を含む別の気体の供給のためのマスクを着用する必要があっても)比較的標準的なMRIを迅速に行うことを可能にし、非常に迅速に肺機能の画像を生成することができる。
【0057】
肺機能の撮像に適用されるコンパートメントモデルの概念は患者により呼吸されることができ、その後肺の実質で観察される信号に変化を生じる他の気体又はエアロゾルにも応用可能であることに注意すべきである。
【0058】
溶解された実質酸素の濃度の測定と入力関数を伴うコンパートメントモデルの使用は走査マシン又はデータ捕捉方法とは独立した値を有する生理学的パラメータの導出を可能にする(しかしこれらの要素は得られたパラメータの品質に影響する可能性があることが確認されている)ことが認識されよう。
【0059】
これはそれぞれフィールド強度、気体又はエアロゾルの特質、NMRデータ捕捉技術の選択肢に依存する可能性があるNMR信号またはT1値に基づいて酸素強化比または流入速度を測定しようとする方法よりも利点がある。
【0060】
造影剤として酸素を使用するさらに別の利点は、これが有害ではなく純粋な酸素の供給の準備以外の専門家の準備を必要としないことである。コンパートメントモデルで使用されることができる他の造影剤は通常専門家の特質(例えばガドリニウムベースのエアロゾル)であり、これは酸素よりも実用的選択肢を小さくする。さらに酸素は任意の実用又は生理的複雑さがなく数分以上快適に呼吸されることができる。他の可能な媒体(例えばガドリウムベースのエアロゾル)は通常ひと息の投与に限定されるので、それらの実用性は限定される。
【0061】
本発明の(前述の)第1の特徴による方法は呼吸可能な形態で肺に転送されることができ肺流体で溶解されるときのみ測定可能になり、その後肺血液供給により洗い流される任意の気体、エアロゾルまたは他の造影剤の量の査定を可能にする任意の撮像技術を使用して肺機能を評価するように適合されることができることが認識されよう。これはMRIで観察されるとき肺中に信号変化を生じるガドリウムベースのエアロゾルのような任意の他の常磁性気体、エアロゾル、他の造影剤を含むことができる。これは肺の水で溶解されるときのみ検出可能である適切な造影剤を有する撮像モダリティを含むこともできる。
【0062】
本発明の第2の特徴によれば、肺機能に関するデータを生成するためのコンピュータ装置が提供され、その装置は、
プロセッサの読取り可能な命令を記憶するメモリと、
そのメモリに記憶された命令を読取って実行するように構成されたプロセッサとを具備し、
そのプロセッサの読取り可能な命令は本発明の第1の特徴で規定されているアルゴリズムを肺の画像データへ適用するように前記プロセッサを制御する命令を含んでいる。
【0063】
本発明の第2の特徴による装置は、アルゴリズムの適用後に出力を計算してこれを表示するために必要な計算ハードウェアと表示装置を具備することができる。ハードウェア及び表示装置は方法で使用される走査装置に対して別のエンティティ(例えばMRIスキャナ)であるか、またはMRIスキャナのような多数の生物医学的デジタル撮像システムの場合のようにスキャナ内に統合されることができる。それ故、コンピュータ装置は走査装置の一部であってもよい。
【0064】
コンピュータソフトウェアはモデルを生(未加工)のOE−MRIデータに適合し、出力パラメータをヒストグラムまたは肺機能のマップに或いは局部的な平均値に変換するために必要なアルゴリズムを適用できることが認識されよう。このようなヒストグラムおよびマップはMRIで通常発生される(例えば図4又は5参照)。このようなソフトウェアによるOE−MRIデータの操作は肺全体またはその1領域を横切って機能の詳細な画像を提供するために多数のボクセルからのデータがユーザ入力なしに迅速に操作されることができるという利点を有する。
【0065】
本発明のアルゴリズムはコンピュータソフトウェア内で実施されることができ、撮像装置と別であるかそれに統合されている計算ハードウェアとディスプレイ装置を使用して実行されることができる。このようなソフトウェアは本発明のさらに別の特徴を表し、本発明の第3の特徴にしたがって、本発明の第1の特徴で規定されているようなアルゴリズムの適用方法をコンピュータに実行させるように構成されているコンピュータの読取り可能なプログラムコードを伝播するキャリア媒体が提供される。
【0066】
本発明を実施するコンピュータプログラムは任意の所望な方法で与えられることができることが認識されよう。任意の形態のこのようなコンピュータプログラムは本発明のさらに別の特徴を表し、本発明の第4の特徴によれば、本発明の第1の特徴で規定されているようなアルゴリズムの適用方法をコンピュータに実行させるように構成されているコンピュータプログラムが提供される。
【0067】
本発明の第4の特徴によるソフトウェアはJava(登録商標) TM(Sun Microsystems, Inc. 901 San Antonio Road Palo Alto, CA 94303, USA)と、C++(One Microsoft Way Redmond, WA 98052-6399, USA)またはMatlab(The MathWorks, Inc. P.O. Box 845428 Boston MA, USA)を含めた任意の所望のプログラミング言語で提供されることができる。
【0068】
本発明によるソフトウェアのユーザは好ましくはソフトウェアを獲得し、OE−MRIデータのような適切なMR画像データを受信するように構成されている適切なコンピュータシステムにそのソフトウェアをインストールする。
【0069】
本発明の実施形態を以下の例及び図面を参照して、例示によってのみさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】OE−MRIを使用する肺中の酸素の転送のための2コンパートメントモデルを示す図であり、第1のコンパートメントは気体の部分圧力濃度PAO2に比例する実効的な酸素濃度CAを有する肺胞であり、その内部では酸素はNMR信号において無視できる程度の影響を有し、定数K0Xは膜、間質腔、肺胞毛細血管内の血液パラズマを構成している第2のコンパートメントへまたはその第2のコンパートメントからの拡散速度を示し、その内部では酸素はNMR信号を変更し、酸素は抽出分画E×血流速度Fbにより規定される速度で第2のコンパートメントから抽出される。
【図2a】主体により呼吸される酸素の部分圧力(PO2)の所定の変化に対する予測された流入及び流出時間(TVENT)を表す図である。
【図2b】例1で説明されている主体の右肺の上部の問題の領域の評価された平均組織PO2(ベースラインの空気呼吸を超える差)へのコンパートメントモデルの適合を示す図であり、肺胞酸素入力関数も示されている。
【図3】例1で説明されているように一人の人の右肺で得られたコンパートメントモデルパラメータのマップを表す図であり、マップ(a)は血流により乗算される抽出分画を虹色のマップで示しており、肺の上部方向に及び周辺で値が低くなっている肺上の局部的な変化を示し、マップ(b)はグレースケールのカラーマップを使用するマップ(a)の結果を示しており、Eが1に等しいと仮定されるならば、Fb値は文献で報告されているものと一貫しており、マップ(c)は虹色のカラーマップを使用して肺の中心部のさらに高い換気の明白なクラスタから離れて主に均一であるK0Xの分布を示しており、マップ(d)はグレースケールのカラーマップを使用するマップ(c)の結果を示しており、マップ(e)は肺の周辺で2分間までの値が得られながら中心領域が1分間の予測される値に近い時間を実現している肺胞中において最大のPO2を実現するための時間の変化を示しており、マップ(f)はグレースケールのカラーマップを使用してマップ(e)の結果を示している。
【図4】例2で説明したような(a)非喫煙者と(b)喫煙者の右肺で得られたコンパートメントモデルパラメータのマップ及びヒストグラムを表す図である。
【図5】例2で説明するような(a)非喫煙者のグループと(b)喫煙者のグループの右肺で得られたコンパートメントモデルパラメータの平均データのヒストグラムを表す図である。
【図6】特に例示的な実施形態の第2のコンパートメントの酸素の濃度(Cp)のモデル化された値を示す図であり、酸素の濃度Ceの検出された信号値も示されている。
【図7】第3の例の複数の検査主体のK0Xの解析からの結果のボックスプロットを表す図である。
【図8】第3の例の複数の検査主体のEFbの解析の結果のボックスプロットを表す図である。
【図9】第3の例の複数の検査主体の肺の組織及び血液中の酸素の最大濃度に到達するための時間TVENTにおける流入の解析の結果のボックスプロットを表す図である。
【図10】健康な非喫煙主体の肺のa)K0X、b)EFb、c)TVENTの値の画像マップを表す図である。
【図11】健康な肺活量を有する喫煙主体の肺のa)K0X、b)EFb、c)TVENTの値の画像マップを表す図である。
【図12】不健康な喫煙主体の肺のa)K0X、b)EFb、c)TVENTの値の画像マップを表す図である。
【図13】本発明による方法によりモデル化されたK0Xの値と標準的なダイナミックコントラスト強化MRI(DCE−MRI)から発生されたPSとの間の相関プロットを表す図であり、各データ点は喫煙者(正方形の点)または非喫煙者(円形の点)に属するとして示されている。
【図14】本発明による方法によりモデル化されたEFbの値と標準的なDCE−MRIから発生されたPSとの間の相関プロットを表す図であり、各データ点は喫煙者(正方形の点)または非喫煙者(円形の点)に属するものとして示されている。
【発明を実施するための形態】
【0071】
[例1]
本発明の第1の特徴の方法が開発され正常な人のグループの肺機能の測定に適用された。
【0072】
1.1 方法
(a)画像捕捉
この研究で使用される画像は1.5 T Philips Gyroscan NT Intera MR system(Philips Medical Systems, Best, Netherland)を使用して、5人の正常の同意が得られたボランティアから得られたものである(2人の男性と3人の女性、年齢30−39歳)。主体は医療的空気または100%酸素をMRコンパチブルベイン呼吸システム(Intersurgical Ltd,, Wokingham, UK)と緊密に適合するマスクを通して呼吸した。標準的な麻酔トロリー(10 l/分の性能)が使用された。画像の第1のセットは空気の呼吸期間中にT1を測定するために捕捉された。半フーリエ単発ターボスピン−エコー(HASTE)シーケンスは68相の符合化ステップと4msの内部エコー空間と、16msの実効エコー時間と、450×450mm2の視界を有する128×128マトリックスと、10mmのスライスの厚さを有する冠状断面で使用された。T1測定は100、200、400、800、1200、1700、2300、3000、3500msの飽和時間(TSAT)で飽和回復HASTEシーケンスを使用して行われた。5つの画像が心臓周期にわたる平均化を可能にするために各飽和時間で集められた。飽和回復(SR)はここではさらに短い総撮像時間を与えるために選択された。次に、(空気で呼吸している間の肺からの信号をほぼ無効にするように選択された)720msの反転時間を有するIR HASTEシーケンスを使用してダイナミック画像捕捉が行われた。気体供給は一連の第10の画像後に医療空気から100%酸素へ切り換えられた。主体が100%の酸素で呼吸し続けている間にT1測定SR画像のセットが捕捉された。最後にダイナミック画像の第2のシリーズが第10番目の画像後に医療空気に切り換えられている気体供給で捕捉された。
【0073】
(b)コンパートメントモデル
第1のコンパートメントは肺胞腔であり、酸素濃度はCAにより示され、第2のコンパートメントは肺胞膜と、膜と肺胞毛細血管の間の間質腔と、毛細血管内のプラズマを含んでおり、Cpにより示される組み合わされた酸素濃度を有する(図1参照)。
【0074】
発明者はその後、空気で呼吸する期間に動脈のヘモグロビン中の酸素のほぼ飽和状態が100%の酸素の呼吸が生じるとき主にプラズマで過剰な酸素が伝播されることを仮定することによってモデルを開発した。肺中では、増加された信号が実質水および毛細血管の血液で生じ、それ故次式、即ち
【数4】
【0075】
に等しい測定され増加された濃度が考慮されることができる。これらの概算を使用して、発明者は次式(I)を展開した。
【数5】
【0076】
ここでVpはMRI可視組織当りの血液プラズマと組織水の分数体積であり、K0Xは肺胞膜の拡散容量を示す項であり、Eは組織水および毛細血管からの組織の抽出分画であり、Fbは毛細血管における血流速度である。これらの計算に基づいて発明者は式IIを使用してCp(即ち肺胞膜と、膜と肺胞毛細血管との間の間質腔と、前述したように計算された毛細血管内のプラズマを具備する第2のコンパートメントの組合された酸素濃度)を解くことが可能であることを認識した。
【数6】
【0077】
臨床的に有意義な情報はEFbとK0Xの値に取り付けられることができ、データは肺領域から存在し、図中の肺全体からのパラメータマップが存在する。
【0078】
(c)コンパートメントモデルの画像登録及び応用
登録において、アクチブ形状モデル(Cootes 等(1995) Computer Vision and Image Understanding, 61:38)は正常な呼吸運動を特徴付けし、肺の輪郭の自動化された識別を可能にするために使用された。肺の形状はその後、線形の再サンプリングを使用して平均形状に変形された。T1マップはレベンバーグ−マルカルトの適合アルゴリズムを使用して飽和回復画像を式IIIへ当てはめることにより空気と酸素の呼吸で計算された。
【数7】
【0079】
溶解される酸素濃度を空気の呼吸よりも増加するようにダイナミック信号強度データを変換するため、値はT1マップからのブックエンディングを使用して最初にT1値へ変換された(Cron等(1999) Magnetic Resonance in Medicine. 42 4:746-53)。これらはその後反転によりR1に変換され、ベースライン空気呼吸R1は減算され、最後に値は既知の緩和定数r1=4×10−4s−1mmHg−1による割算でPO2(mmHg)に変換された(Jacob等(2004) Magnetic Resonance in Medicine. 51:1009-1016)。
【0080】
酸素入力関数は肺胞気体部分圧力の既知の比から評価された(Martin, L(1999): All you really need to know to interpret Arterial Blood Gases. Lippincott Williams & Wilkins 2nd ed.)。空気呼吸中の肺胞のPO2(PAO2)は典型的に104mmHgであり、760mmHgの気圧下での100%酸素の呼吸期間中では673mmHgで評価されることができる。空気呼吸におけるPAO2の差は569mmHgとして概算されることができる。肺中の空気の置換率は典型的に1呼吸当り7.5%として見積もられる。安静時には、5秒間当りの1呼吸の平均を取り、それ故全ての空気が置換されるには平均約1分間かかる。これは評価されたPAO2の入力関数の勾配のエッジで示されている(図2a参照)。100%の酸素で空気を置換する期間中、肺は肺胞で空気を未知の変数レートで置換する。(指数関数又は他のさらに複雑な関数よりもむしろ(これらの選択肢は容易に方法に組み込まれることができる))線形関数はそれ故、真の形態に対する最も簡単な近似として入力関数のエッジを説明するように選択される。変化する人の肺容量と肺内の位置にしたがって、最大のPAO2に対する遅延時間、即ちTVENTの値は最適化を必要とすることが発見された。レベンバーグ−マルカルトの適合アルゴリズムを使用し、1のVp分数を仮定すると、式IIは各肺の上部の問題の領域にわたる平均でEFbとK0Xについて解かれる(表1参照)。TVENTは適合の第3の自由パラメータであった(図2b参照)。ボクセル×ボクセルパラメータマップも計算された(図3参照)。EFbの値は肺の周辺近くの肺密度0.15g/mlを想定して標準的な単位(ml/min/ml)に変換された(Hatabu等(1999). Magnetic Resonance in Medicine. 42:1033-1038)。
【0081】
(d)肺活量測定
本発明の第1の特徴による方法は、肺機能に関連する方法の診断能力を確認するためには肺活量測定と比較されることができる。肺活量測定は共通して行われる臨床状態である肺機能検査である。現在の肺活量測定は不規則な肺機能を診察するために使用される主要な検査である。肺活量測定はチューブを素尾しての主体の吸入又は吐き出しから取られる測定を含んでいる。主体はチューブを通して吹き、1分間で吐き出された総体積(FEV1)と吐き出された総体積(FVC)が測定される。これらの値から、FEV1%PREDの値が集団内で知られている正常範囲と比較してFEV1とFVCの比の関数により計算される。FEV1%PREDは主体の肺活量測定の健全さのよく知られた測定値であり、健康な値は0.75よりも大きい。
【0082】
(e)ボックスプロット
図7乃至9に示されている結果はボックスプロットとして示されている。ボックスプロットは技術で知られている。ボックスプロット表示はデータのグループ当り1つのグリフを含んでおり、各グリフはグリフの上および下に水平線を含み、これはそれぞれグループの最大及び最小の観察された値を示している。グリフ中のボックス形状は上、中間、下の水平線を有し、これは上の四分位範囲と、中の四分位範囲と、下の四分位範囲を示している。
【0083】
1.2 結果
1の抽出分画を仮定すると、表1で与えられているFb値は肺の潅流について文献で引用された値と一貫している(前述のHatabu等)。拡散測定はかなりの個人差があるがそれぞれの人において主に両肺の間で主に一貫されたK0Xで得られた。パラメータEFb(図3)は右肺のスライスにわたる変化を示し、肺のエッジ又は上方向で潅流が少なく、主肺血管に対応する値は中心で大きい。K0Xパラメータマップは中心の肺でさらに強力な換気−拡散を示すが、周辺値は肺のエッジに対してEFbマップよりも均一である。CAを最大にするための時間遅延TVENTのマップは中心の肺で短い時間を示し、周辺で長い時間を示す。
【表1】
【0084】
1.3 結論
これらのデータは肺への酸素転送のコンパートメントモデルを示し、これはOE−MRIを使用して肺潅流、拡散、換気の直接的な査定を可能にする。これは患者のグループに適用されるとき障害のある換気、拡散または潅流の領域を検出するために使用されることができる。
【0085】
この作業は第1の時間において、肺の潅流がOE−MRIを使用して如何にして評価されるかを実演している。この技術は、実行が容易であり、酸素造影剤に関連する危険性がなく、即ちDCE−MRIで使用されるガドリウムベースの造影剤はアレルギー反応の危険性と腎臓機能障害を有する患者において高まる危険性を最小にとどめることを含めて、潅流を測定するための他の方法よりも優れた利点を有する。
【0086】
酸素の転送機構の理解に関して、このモデル化方法は通常の気道の健康に関連される情報(またはTVENT、即ち最大値CAを実現するためにかかる時間)を膜を横切る拡散速度(K0X)から分離する新しい手段も提供する。
【0087】
例2
例1で説明されている方法は肺機能がこれらの2つのグループ間で如何にして変化するかを示すために本発明の方法が使用されることができる態様を示すために非喫煙者のグループと喫煙者のグループに適用された。
【0088】
図4は(a)非喫煙者と(b)喫煙者の右肺の(それぞれの)K0X、EFbと換気時間のマップとヒストグラムを表している。
【0089】
図5は(a)非喫煙者グループと(b)喫煙者グループの右肺の(それぞれの)K0X、EFbと換気時間の平均化されたデータのヒストグラムを表している。
【0090】
これらのデータは本発明の方法がこれらの2つのグループの肺機能が異なることを例証するために使用されることができることを示している。喫煙者では、K0Xヒストグラムは右にシフトされている。これは(他の発見と一貫して、Mason等(2001) Clinical Science, 100:231-236)恐らく増加された肺胞膜の透過性のために、または喫煙者中の血液酸素が低いことが知られているので喫煙者の膜を横切る酸素濃度の初期勾配が大きいことにより、或いは両者の組合せにより、組織への酸素の拡散速度が高いことを示唆している。さらに喫煙者のEFbヒストグラムは左へシフトされ、これは肺組織からの血流が低いことを示唆し、このことは既知の喫煙者の血液循環に障害があることに一貫している。最後に換気時間ヒストグラムは喫煙者では右にシフトされ、喫煙の既知の気道の狭窄効果のために、刺激された酸素が肺胞に到達するためにさらに長くかかることを示している。
【0091】
全てのこれらのデータは臨床医が喫煙者において見られると予測している妥協された肺機能と一致しており、本発明の方法が肺機能に関する重要なデータを得るために使用されることができることを示している。2つのグループ間の差は予測可能であり、方法は複数の獣医学または診察使用に適用されることができることを示している。
【0092】
例3
第3の例では、さらに本発明の第1の特徴による方法を確認するために例1のコンパートメントモデルアルゴリズムのさらに別の評価が喫煙者と非喫煙者のグループを使用して実行されている。
【0093】
3.1 方法
例1に示されている方法はさらに別の11人の非喫煙者と12人の喫煙者のグループに適用され、肺機能がどの程度これらの2つのグループ間で変化するかおよび主体の健康ではない部分的な肺機能が肺全体の平均として考慮したとき、特に肺活量測定に対して検査されるときにどの程度健康に見えるかを解析するために本発明の方法が使用されることができる態様をさらに示す。
【0094】
(a)OE−MRI走査およびコンパートメントモデル
12人の喫煙者と11人の非喫煙者はそれぞれ第1の例で説明された方法によりOE−MRI走査を受けた。各主体の走査からのデータは前述され式(II)及び例1に説明されているコンパートメントモデルにしたがってコンパートメントモデルに与えられた。K0X、EFb、TVENTのような肺機能に関するデータはコンパートメントモデルから得られ、データは解析された。解析結果を以下に示す。
【0095】
3.2 結果
本発明による各サブジェクトからOE−MRIデータへの適合コンパートメントモデルの結果は以下の種々の形態で示されている。
【0096】
(a)健康な非喫煙者の平均結果
図6は(P1O2とラベル付けされる)酸素の2つの異なる部分圧力を有する気体で呼吸する健康な非喫煙主体についてのコンパートメントモデルの第2のコンパートメントCp(組織及び血液)への(PAO2とラベル付けされる)平均右肺の酸素吸収に2コンパートメントモデルを適合した結果を示している。モデルが右肺全体の平均値に適合されたとき、K0X、EFb、TVENTの結果的な値は右肺全体の平均値を表す。
【0097】
図6に示されている値は主体により呼吸される酸素の2つの異なる部分的圧力に付いて各コンパートメント中のPO2の差(ΔPO2)を表しており、第1の圧力は大気(21%のO2)に近似しており、第2の圧力は純粋な酸素(100%のO2)である。約200秒で、主体により呼吸されている気体混合物中の酸素の濃度は増加された。図6に示されているように、第1のコンパートメント中の酸素濃度CAが増加すると、第2のコンパートメント中の酸素濃度Cpは第1のコンパートメント中の変化に比例して増加する。これは両コンパートメントの酸素の濃度が一定になる飽和点に両コンパートメントが到達するまで継続する。第1のコンパートメントの最大の酸素濃度に到達するためにかかる時間はTVENTとラベル付けされ、健康な非喫煙者では60秒である。約700秒では、主体により呼吸される酸素濃度が検査開始時のその初期濃度に戻されるとき、2つのコンパートメント中の酸素濃度は時間にわたってその前の状態まで減少する。
【0098】
(b)喫煙者と非喫煙者のグループの平均結果
図6を参照して前述された検査は喫煙者と非喫煙者の両者を含む検査グループの各メンバーで反復された。K0X、EFb、TVENTの値は各主体で行われたコンパートメントモデル適合から生成された。主体は彼らの喫煙習慣と通常の健康状態にしたがってグループに分けられた。喫煙者は「全喫煙者」と「>20PYの喫煙者」に分けられ、ここでのPYはパック年数であり、これは複数年間、一日当りに喫煙した煙草の箱数であり、これまでに吸われた箱数である。例えば20PYの人は20年間一日当り1箱喫煙しており、恐らく10年間では一日当り2箱喫煙している。非喫煙者は「健康な」非喫煙者と「全非喫煙者」に分けられる。健康な喫煙者は健康な肺活量検査と0PYとを有し、自然喫煙に対する規則的な露出がない人として規定される。各グループの結果は図7乃至9に示されているボックスプロットに示されている。
【0099】
図7は12人の喫煙者と11人の非喫煙者のグループ間のK0Xの比較結果のボックスプロットを示している。図7から喫煙者と火喫煙者との間の平均値K0Xが非常に異なることが明白である。これは各サブジェクトの平均K0X値を単に計算することによって喫煙者と非喫煙者を弁別することが可能であることを示している。主体のK0X値は肺胞膜を横切る酸素の拡散レートを示している。
【0100】
図8は主体の各グループのコンパートメントモデルから抽出されたEFbの値の比較結果を示している。前述したように、EFbは酸素が血液により肺組織から除去されるレートの測定値である。身体を廻って転送するため肺組織から酸素が除去されるレートは主体の健康な呼吸機能に臨界的であるので、この値は呼吸システムに対する損傷の重要な測定値である。これらの結果から、健康、不健康な非喫煙者におけるEFbが喫煙グループのいずれかよりも高いことが明白である。この減少された呼吸機能は主体の健康に重要な要素であり、129Xe撮像のような方法により直接検出されることができず、それはこのような技術により発生されるデータが酸素ではなく129Xeが肺組織から除去されるレートに関連するからである。
【0101】
図9は主体グループ間の流入及び流出値TVENTの比較結果を示している。コンパートメントモデルのコンパートメントの最大の酸素濃度に到達するのにかかる時間(TVENT)は肺から古い気体を出し、肺へ新しい気体を導入する人の各呼吸の効率を示している。TVENTの値は肺中の新しい空気が肺組織に溶解されるのにかかる時間の良好な指示である。これらの結果から、非喫煙グループは通常喫煙グループよりも非常に低いTVENT値を有することが明白である。これは患者の減少された肺機能を示す。
【0102】
図7、8、9に示されている各測定では、本発明のコンパートメントモデルから抽出されることができる値は喫煙者と非喫煙者の肺機能の種々の特徴間の検出可能な差を測定することができることが明らかである。特に、値は図7、8、9に示されている4つの各グループ間の差を示すことができる。
【0103】
(c)例示的な肺機能マップ
前述のセクション(b)で与えられた結果は各個人の右肺全体を横切る平均値として生成された。しかしながら、本発明によるコンパートメントモデルは肺全体を横切る広い測定値を単に生成するのではなく、肺組織又は血液を含むOE−MRIにより発生されたデータ中の各ボクセルに対してK0X、EFb、TVENTのような測定値の個人の値を示す肺パラメータマップを生成することができる。図10、11、12に示されている以下の結果は本発明の例で説明される検査に参加した主体で発生されたこのような肺パラメータマップの例である。本発明のコンパートメントモデルの結果を既存の診察方法と比較するため、主体は各主体のFEV%PREDの値を決定する肺活量検査も受けた。
【0104】
図の10の(a)、(b)、(c)は健康で非喫煙の23歳の女性である主体についてK0X、EFb、TVENTの肺パラメータマップをそれぞれ示している。マップ中の明るい画素は各測定値の高値を示し、マップ中の暗い画素は低値を示している。主体はFEV%PRED=93%の肺活量値を有し、これはこの主体が健康な肺機能を有することを示している。図7乃至9に示された統計的結果に貢献し、この主体のコンパートメントモデルから抽出された中間結果を次に示す。
中間K0X=3.19ml/分/g
中間EFb=19.4ml/分/g
中間TVENT=24秒
図12の(a)に示されているK0Xに対する肺機能マップのグレーレベルは各肺を横切って均一であり、肺の異なる領域間の肺胞膜を横切る拡散レートの差が小さいことを示している。類似の結果が図12の(b)に示され、これは溶解された酸素が肺組織から除去されるレートが各肺を横切って均一に高いことを示している。最後に、図12の(c)は各肺の流入および流出時間が通常肺の範囲を横切って同等に低いが、高いTVENTの幾らかの領域は右に示されている肺で明白であることを示している。これはこの主体の肺の全領域が良好に機能しており、主体の呼吸に貢献していることを示している。大きく明確で黒い領域は各画像の各肺で可視であるが、これらは空気を各肺に送入し各肺から送出する気管支または気道の大きな領域に対応する。領域に組織及び血液が無いために第2のコンパートメント測定は存在しないので、これらの領域はK0X、EFb、TVENTの低い値を有する。
【0105】
図11の(a)、(b)、(c)は明白に健康な喫煙の54歳の女性である第2の主体についてK0X、EFb、TVENTの画像結果をそれぞれ示している。この主体はFEV%PRED=92%の肺活量値を有し、これは健康範囲内の肺機能を示している。この主体のコンパートメントモデルから抽出され、図7乃至9に示されている統計結果に貢献する中間結果を次に示す。
中間K0X=3.7ml/分/g
中間EFb=16.6ml/分/g
中間TVENT=90秒
主体のK0X、EFb、TVENTの中間値は健康で非喫煙の主体の値よりも低く、これはこの主体の肺機能全体が僅かに減少されていることを示す。図11の(a)と(b)に示されているK0XとEFbの肺パラメータマップのグレーレベルは、肺全体を通して小さく暗い領域が存在する点で、領域図10の(a)と(b)に示されている画像とは異なることが認められる。これは血液による肺胞膜を横切る酸素の拡散と、肺組織からの酸素の除去とにおいてレートが減少されていることを示している。2つの画像は単独で肺の多数の領域における主体の減少された肺機能を示している。図11の(a)と(b)に加えて、11の(c)は肺の各領域が酸素の最大濃度に到達するのにかかる時間(TVENT)を示している。図10の(c)に示されている健康で非喫煙の主体のTVENTの肺パラメータマップと比較するとき、図11の(c)に示されている明白に健康な喫煙主体のTVENTの肺パラメータマップは明白に多くの領域で明るい。これはその主体の酸素の最大飽和に到達する時間が長く、それ故肺機能は健康な非喫煙者程には効率的ではないことを示している。
【0106】
このことはこの主体は標準的な肺活量検査の結果を示しているが、それらは実際に肺の幾つかの領域において減少された肺機能を有することを意味している。任意の他の手段によりこの機能の不規則性を直接診断することは可能ではない。これは本発明の方法の診断能力が肺活量が通常の性能を示す状況で肺の異常を検出でき、従来の方法よりも大きな利点を提示することを示している。
【0107】
図12の(a)、(b)、(c)は不健康な喫煙の57歳の男性についてK0X、EFb、TVENTの肺パラメータマップをそれぞれ示している。主体はタイプIIB慢性の閉塞性肺疾患(CORP)で診断されている。喫煙者はFEV%PRED=39%を有し、これは実質的に減少された肺機能を示している。コンパートメントモデルから抽出されたこの主体の右肺全体の主体の中間結果を以下示す。
中間K0X=3.34ml/分/g
中間EFb=16.9ml/分/g
中間TVENT=123秒
K0X、EFb、TVENTの中間値、特にTVENTの値の中間値から、主体の肺の機能が2つの主体のいずれかと比較して減少されていることが明らかであり、その結果が図10および11に示されている。図12の(a)と(b)に示されているK0X、EFbの肺パラメータマップの黒い領域はこれらの領域の肺組織が機能していないことを示している。TVENTの肺のパラメータマップ中の白色領域はこれらの肺領域が最大の酸素濃度に到達するまでに非常に長い時間がかかっていることを示している。図12の(c)の完全に黒い領域は肺の領域が最大の酸素濃度に非常に迅速に到達することを示しているが、図12の(a)と(b)の低値から、最大の酸素濃度がこの主体ではこれらの図面に結果が示されている主体よりも実質的に低いことが明らかである。
【0108】
(d)DCE−MRIでの独立した測定値との相関
発明者は本発明の例のコンパートメントモデルアルゴリズムを同じ主体の肺の浸透性と表面積の積(PS)の測定値と比較し、それは標準的なDCE−MRIにより生成された。PSの測定値は肺の浸透性の査定のための現在の標準であるが、酸素自体ではなく非酸素の造影剤に対する肺の毛細血管壁の浸透性の測定値であることに注意すべきである。それ故、DCE−MRIからの酸素に対する肺の浸透性の任意の測定値はコントラストの直接の測定値から計算される間接的な測定値である。この場合、DCE−MRIで使用されるコントラスト造影剤はガドリニウムベースの低分子量の造影剤であった。
【0109】
図13は本発明のK0X測定値とDCE−MRIのPS(浸透性×表面積)測定値との間の相関を示している。図14は本発明のEFb測定値とDCE−MRIのPS測定値との間の相関を示している。これは本発明による方法が造影剤を生成し、保存し、転送し、および生体の主体中にこのような造影剤を導入することに関連する多くの問題を改善するために、DCE−MRIの代わりに使用されることができることを示している。
【0110】
3.3 結論
この例は喫煙者と非喫煙者のOE−MRI画像データに適用される本発明による方法が喫煙者と非喫煙者の肺の局部機能を区別することができ、幾つかのケースでは肺機能のグローバル査定が肺活量によって臨界的に正常であるように見えるとき局部的な肺機能の減少を診断できることが示されている。DCE−MRIとの比較によって、本発明による方法は病的な肺機能の診断のためにDCE−MRIに加えて又はその代わりに使用されることができることが示されている。
【0111】
例4
この例では、発明者は本発明の特徴によるコンパートメントモデルアルゴリズムを実行した。このアルゴリズムはマトラブスクリプトのソフトウェアとして実行された。本発明はマトラブスクリプトをパッケージし、これはコンパクトディスクに分配するためにコンパートメントモデルアルゴリズムを実行する。
【0112】
ソフトウェアを含んでいるコンパクトディスクは1.5 T Philips Gyroscan NT Intera MR
スキャナを所有する技師に対して自信をもって与えられた。技師は第1の例に記載されている方法にしたがって人間の患者でOE−MRI走査を行うため医療環境で広く入手可能な酸素呼吸装置と共にスキャナを使用した。技師はその後、本発明の特徴にしたがって患者の肺機能を特徴付けするために患者のOE−MRI走査により発生されるデータを解析するためコンパクトディスク上のソフトウェアを使用した。
【0113】
コンパートメントモデルはK0X、EFb、TVENTを含む患者の肺機能を示す値を発生した。ソフトウェアは一連のグラフとして肺パラメータマップを含むいくつかの方法でコンパートメントモデルにより発生された値を表示した。データ値、グラフ、肺パラメータマップは患者の肺機能を解析し患者の病気を診断するため医療の専門家により使用された。患者の肺の比較的小さい領域の機能に対するモデルの感度は医療の専門家が肺内の低い肺機能の局部的領域を診断し、したがって治療法を定めることを可能にした。コンパートメントモデル化ソフトウェアへ入力されるデータを発生するためのOE−MRIの使用は特に新しく、医療の専門家が酸素の換気、拡散、潅流に関する肺の機能を直接解析できる点で興味深い。この直接解析は本発明の以前には可能ではなかった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特徴付けを必要とする主体中の肺機能を特徴付けする方法において、
関心のある肺領域内で規定されているボクセルで撮像技術を行い、
それにおいて画像データは常磁性気体の少なくとも2つの異なる部分圧力を有する気体を主体が吸入する時間の期間にわたって生成され、
コンパートメントモデルアルゴリズムを、肺の換気、拡散、潅流についての情報を提供するためボクセルで発生された画像データに適用する肺機能を特徴付ける方法。
【請求項2】
撮像技術は酸素強化された磁気共鳴映像(OE−MRI)であり、常磁性気体は酸素である請求項1記載の方法。
【請求項3】
肺のスペースはボクセルのマトリックスに分割され、OE−MRIデータは各ボクセルに対して発生される請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
OE−MRIデータは、主体が最初に0%と35%の間の酸素の部分圧力を有する第1の気体を吸入し、それから45%と100%の間の酸素の部分圧力を有する第2の気体で呼吸し、最後に第1の気体を再度吸入する間に発生される請求項2又は3記載の方法。
【請求項5】
第1の気体は空気であり、第2の気体は100%の酸素である請求項4記載の方法。
【請求項6】
撮像技術が時間にわたって同じボクセルで行われることを確実にするために画像登録を改良するための技術が適用される請求項1乃至5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
コンパートメントモデルアルゴリズムは肺の換気のルート、肺胞を横切る酸素の拡散および肺の血流の速度の生理学的パラメータに基づいた2コンパートメントモデルである請求項1乃至6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
コンパートメントモデルアルゴリズムによって肺胞膜、膜と肺胞毛細血管との間の間質腔と、毛細血管内のプラズマ(Cp)とを有する第2のコンパートメントの組合された酸素濃度を計算する請求項7記載の方法。
【請求項9】
コンパートメントモデルアルゴリズムによってMRI可視組織当りの血液プラズマと組織水の部分容積(Vp)を計算する請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
コンパートメントモデルアルゴリズムによって肺胞膜の拡散容量(K0X)を計算する請求項7乃至9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
コンパートメントモデルアルゴリズムによって組織水と毛細血管からの酸素の抽出割合(E)と、毛細血管中の血流速度Fbとを計算する請求項1乃至10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
コンパートメントモデルアルゴリズムによって肺胞中の酸素の最大濃度を実現するための時間と、酸素入力関数のパラメータCAとを計算する請求項7乃至11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記アルゴリズムはKetyにより開発され、Kety, SS(1951) Pharmacological Reviews. 3:1-41で出版された式に基づいている請求項7乃至12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記アルゴリズムはここで規定されているように、
【数1】
である請求項7乃至13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
コンパートメントモデル又はアルゴリズムはKetyにより開発され、Kety, SS(1951) Pharmacological Reviews. 3:1-41で出版された式に基づいて自由に拡散するトレーサのコンパートメントモデル化の使用に基づく基本原理を依然として保持しながら別の用語又は異なる数のコンパートメントを構成するように変更される請求項7乃至14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
アルゴリズムはJohnson JA、Wilson TAのA model for capillary exchange. Am J Physiol 1966;210(6):1299-1303に記載されている原理にしたがって分配されるパラメータモデルである請求項1乃至6のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
例及び図面を参照してここで規定されているように主体の肺機能を特徴付けする方法。
【請求項18】
診断、又は獣医学的目的、あるいは治療開発のために人間或いは動物の肺機能を評価するための請求項1乃至17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
肺機能に関するデータを発生するためのコンピュータ装置において、
プロセッサの読取り可能な命令を記憶するメモリと、
前記メモリ中に記憶された命令を読取って実行するように構成されたプロセッサとを具備し、
前記プロセッサの読取り可能な命令は請求項7乃至16のいずれか1項に記載されているアルゴリズムを請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像データに適用するように前記プロセッサを制御する命令を含んでいるコンピュータ装置。
【請求項20】
コンピュータに請求項7乃至16のいずれか1項に記載されているアルゴリズムを請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像データに適用する方法を実行させるように構成されているコンピュータの読取り可能なプログラムコードを有するキャリア媒体。
【請求項21】
コンピュータに請求項7乃至16のいずれか1項に記載されているアルゴリズムを請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像データに適用する方法を実行させるように構成されているコンピュータプログラム。
【請求項1】
特徴付けを必要とする主体中の肺機能を特徴付けする方法において、
関心のある肺領域内で規定されているボクセルで撮像技術を行い、
それにおいて画像データは常磁性気体の少なくとも2つの異なる部分圧力を有する気体を主体が吸入する時間の期間にわたって生成され、
コンパートメントモデルアルゴリズムを、肺の換気、拡散、潅流についての情報を提供するためボクセルで発生された画像データに適用する肺機能を特徴付ける方法。
【請求項2】
撮像技術は酸素強化された磁気共鳴映像(OE−MRI)であり、常磁性気体は酸素である請求項1記載の方法。
【請求項3】
肺のスペースはボクセルのマトリックスに分割され、OE−MRIデータは各ボクセルに対して発生される請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
OE−MRIデータは、主体が最初に0%と35%の間の酸素の部分圧力を有する第1の気体を吸入し、それから45%と100%の間の酸素の部分圧力を有する第2の気体で呼吸し、最後に第1の気体を再度吸入する間に発生される請求項2又は3記載の方法。
【請求項5】
第1の気体は空気であり、第2の気体は100%の酸素である請求項4記載の方法。
【請求項6】
撮像技術が時間にわたって同じボクセルで行われることを確実にするために画像登録を改良するための技術が適用される請求項1乃至5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
コンパートメントモデルアルゴリズムは肺の換気のルート、肺胞を横切る酸素の拡散および肺の血流の速度の生理学的パラメータに基づいた2コンパートメントモデルである請求項1乃至6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
コンパートメントモデルアルゴリズムによって肺胞膜、膜と肺胞毛細血管との間の間質腔と、毛細血管内のプラズマ(Cp)とを有する第2のコンパートメントの組合された酸素濃度を計算する請求項7記載の方法。
【請求項9】
コンパートメントモデルアルゴリズムによってMRI可視組織当りの血液プラズマと組織水の部分容積(Vp)を計算する請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
コンパートメントモデルアルゴリズムによって肺胞膜の拡散容量(K0X)を計算する請求項7乃至9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
コンパートメントモデルアルゴリズムによって組織水と毛細血管からの酸素の抽出割合(E)と、毛細血管中の血流速度Fbとを計算する請求項1乃至10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
コンパートメントモデルアルゴリズムによって肺胞中の酸素の最大濃度を実現するための時間と、酸素入力関数のパラメータCAとを計算する請求項7乃至11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記アルゴリズムはKetyにより開発され、Kety, SS(1951) Pharmacological Reviews. 3:1-41で出版された式に基づいている請求項7乃至12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記アルゴリズムはここで規定されているように、
【数1】
である請求項7乃至13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
コンパートメントモデル又はアルゴリズムはKetyにより開発され、Kety, SS(1951) Pharmacological Reviews. 3:1-41で出版された式に基づいて自由に拡散するトレーサのコンパートメントモデル化の使用に基づく基本原理を依然として保持しながら別の用語又は異なる数のコンパートメントを構成するように変更される請求項7乃至14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
アルゴリズムはJohnson JA、Wilson TAのA model for capillary exchange. Am J Physiol 1966;210(6):1299-1303に記載されている原理にしたがって分配されるパラメータモデルである請求項1乃至6のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
例及び図面を参照してここで規定されているように主体の肺機能を特徴付けする方法。
【請求項18】
診断、又は獣医学的目的、あるいは治療開発のために人間或いは動物の肺機能を評価するための請求項1乃至17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
肺機能に関するデータを発生するためのコンピュータ装置において、
プロセッサの読取り可能な命令を記憶するメモリと、
前記メモリ中に記憶された命令を読取って実行するように構成されたプロセッサとを具備し、
前記プロセッサの読取り可能な命令は請求項7乃至16のいずれか1項に記載されているアルゴリズムを請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像データに適用するように前記プロセッサを制御する命令を含んでいるコンピュータ装置。
【請求項20】
コンピュータに請求項7乃至16のいずれか1項に記載されているアルゴリズムを請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像データに適用する方法を実行させるように構成されているコンピュータの読取り可能なプログラムコードを有するキャリア媒体。
【請求項21】
コンピュータに請求項7乃至16のいずれか1項に記載されているアルゴリズムを請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像データに適用する方法を実行させるように構成されているコンピュータプログラム。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2010−525911(P2010−525911A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506989(P2010−506989)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【国際出願番号】PCT/GB2008/001390
【国際公開番号】WO2008/135712
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(505395858)ザ・ユニバーシティ・オブ・マンチェスター (18)
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF MANCHESTER
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【国際出願番号】PCT/GB2008/001390
【国際公開番号】WO2008/135712
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(505395858)ザ・ユニバーシティ・オブ・マンチェスター (18)
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF MANCHESTER
【Fターム(参考)】
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