説明

撮像素子の位置調整方法

【課題】高画素化された撮像素子においても、撮像素子を短時間で、且つ高精度に撮像光学系に対して最適な位置に配置することが可能な撮像素子の位置調整方法を提供する。
【解決手段】撮像光学系または撮像素子とを相対的に撮像光学系の光軸の方向に連続的に移動させながら、複数の所定の位置で光軸上に配置したチャートを撮像して画像情報を取得する工程と、該画像情報に基づいて、光軸に対する撮像素子の中心のずれ量およびあおり角またはその何れかを算出する工程と、該ずれ量およびあおり角またはその何れかに基づき、撮像素子を撮像光学系に対して所定の位置に配置する工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子の位置調整方法に関し、撮像光学系に対して撮像素子を最適な位置に配置する撮像素子の位置調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単一又は複数のレンズにより構成される撮像光学系と、CCD(Charge Coupled Device)等の撮像素子との互いの相対位置の調整は、これらが組み込まれる撮像装置の性能に大きく影響する為、重要な作業工程である。
【0003】
撮像素子の位置調整方法の代表的な方法としては、以下の方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
先ず、撮像光学系、及び撮像素子を仮配置した後に、撮像光学系又は撮像素子の何れか一方を光軸方向に移動させながら複数の所定の位置で停止させ、その都度光軸上に配置した調整用のチャートを撮像して画像情報を取得する。次に、取得した複数の画像の画像情報に基づいて、光軸に対する撮像素子の中心のずれ量や撮像素子のあおり角(傾き量)を算出する。そして、算出したずれ量やあおり角に基づいて、撮像素子の位置・姿勢(以下、位置と姿勢を併せて単に位置とも記す)を調整する調整機構部を駆動し、撮像光学系に対して撮像素子を最適な位置に配置する。
【0005】
ここで、このような位置調整方法において、通常行われている画像情報の取得方法を図4を用いて説明する。図4(a)は、CDDの移動方法を示す図、図4(b1)は、CCDの移動タイミングを示すタイムチャート、図4(b2)は、画像情報の取得タイミングを示すタイムチャートである。
【0006】
最初に、CCDを移動させ、CCDが所定の位置d1に到達すると移動を停止する(期間twd)。次に、CCDが停止すると、位置d1にてチャートを撮像し、撮像した第1フレームf1の画像情報を読み出す(期間tws)。そして、画像情報の読み出しが完了すると、再度CDDを移動させ、CCDが次の所定の位置d2に到達すると移動を停止する。次に、CCDが停止すると、位置d2にてチャートを撮像し、撮像した第2フレームf2の画像情報を読み出す。このような動作を繰返し実行し、ずれ量やあおり量を算出するのに必要な枚数(例えば、第1フレームf1〜第5フレームf5)の画像情報を取得する(期間Tw0)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−136743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、近年、CCDに代表される撮像素子の高画素化が急速に進展し、取り扱う情報量が加速的に増大している。この為、前述のような従来行われている画像情報の取得方法においては、撮像された画像情報を読み出すのに必要な時間(図4(b1):tws)が非常に長くなる。その結果、全体の調整時間に大きく影響を及ぼし、生産性を低下させるといった問題があった。
【0009】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたもので、高画素化された撮像素子においても、撮像素子を短時間で、且つ高精度に撮像光学系に対して最適な位置に配置することが可能な撮像素子の位置調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、下記の1から4の何れか1項に記載の発明によって達成される。
【0011】
1.撮像光学系または撮像素子とを相対的に前記撮像光学系の光軸の方向に連続的に移動させながら、複数の所定の位置で光軸上に配置したチャートを撮像して画像情報を取得する工程と、
前記画像情報に基づいて、前記光軸に対する前記撮像素子の中心のずれ量およびあおり角またはその何れかを算出する工程と、
前記ずれ量および前記あおり角またはその何れかに基づき、前記撮像素子を前記撮像光学系に対して所定の位置に配置する工程と、を有することを特徴とする撮像素子の位置調整方法。
【0012】
2.前記画像情報を取得する工程において、前記撮像素子から前記画像情報を読み出す際には、前記撮像素子の垂直方向に配列された画素に蓄積した画素信号を、複数種類設定可能な所定の画素数毎に等間隔に間引いて前記撮像素子の垂直転送ラインに転送する間引き読み出しを行うことを特徴とする前記1に記載の撮像素子の位置調整方法。
【0013】
3.前記画像情報を取得する工程において、前記撮像光学系または前記撮像素子の何れか一方を前記光軸の方向に移動させる速度は可変であることを特徴とする前記1または2に記載の撮像素子の位置調整方法。
【0014】
4.前記画像情報を取得する工程において、前記複数の所定の位置は可変であることを特徴とする前記1から3の何れか1項に記載の撮像素子の位置調整方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、画像情報を取得する際、撮像光学系または撮像素子の何れか一方を光軸の方向に連続して移動させながら、複数の所定の位置で光軸上に配置したチャートを撮像して画像情報を取得するようにした。すなわち、複数の所定の位置で撮像素子(または撮像光学系)を停止させることなく、連続して移動させながら、チャートを撮影し画像情報を取得するようにした。これにより、撮像素子の中心のずれ量やあおり角を算出するのに必要な枚数の画像情報を取得するのに要する時間を大きく短縮することができる。その結果、高画素化された撮像素子においても、撮像素子を短時間で、且つ高精度に撮像光学系に対して最適な位置に配置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係わる撮像素子の位置調整方法を実行する為の位置調整システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係わる画像情報を取得する際のCCDの移動方法を示す図である。
【図3】粗調整時、及び微調整時にそれぞれ画像情報を取得する際のCCDの移動方法を示す図である。
【図4】従来の画像情報を取得する際のCCDの移動方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下図面に基づいて、本発明に係わる撮像素子の位置調整方法の実施の形態を説明する。尚、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明するが、本発明は該実施の形態に限られない。
【0018】
最初に、本発明に係る撮像素子の位置調整方法を実行する為の位置調整システムの概略構成を図1を用いて説明する。図1は、位置調整システム1の概略構成を示すブロック図である。
【0019】
位置調整システム1は、図1に示すように、撮像光学系2、CCD(撮像素子)3等を備えた調整対象である撮像ユニット4、及び制御ユニット5、調整機構部6、チャート7等を備えた調整装置等から構成される。
【0020】
チャート7は、撮像光学系2とCCD3との相対位置調整を行う為のものであり、撮像光学系2の光軸K上に配置されている。チャート7には、撮像光学系2とCCD3の相対位置調整用の平面的な図形として、例えば、その四隅、及び中央の位置に、コントラスト、エッヂ、及び解像度等を測定する為の調整用図形が描かれている。尚、チャート7としては、例えば、特開2005−136743号公報に開示されているチャート等を用いることができるので、その詳細な説明は省略する。
【0021】
調整機構部6は、CCD3を保持することができるようになっており、CCD3は、撮像光学系2を通してチャート7を撮像することができるようになっている。調整機構部6は、後述の制御ユニット5に設けられた調整機構駆動部504から出力される信号に基づいて、CCD3を撮像光学系2の光軸K方向、及びこの光軸Kと直角な任意の方向に移動させることにより、その位置を調整することができるとともに、撮像光学系2の光軸Kに対するあおり角θx、あおり角θyを調整することができるように、回動可能に構成されている。ここで、X軸、Z軸を含む面内の角度で生じるあおり角をθx、またY軸、Z軸を含む面内の角度で生じるあおり角をθyとする。
【0022】
尚、本実施形態では、このようにCCD3を光軸K方向に移動させる構成としているが、本実施の形態とは異なる別の実施の形態として、撮像光学系2をその光軸K方向に移動させる構成としてもよい。
【0023】
制御ユニット5は、画像処理部501、画像メモリ502、CCD駆動部503、調整機構駆動部504、及び制御部505等から構成される。
【0024】
画像処理部501は、CCD3から読み出された画素信号をデジタル信号に変換し画像データ(以下、画像情報とも記す)を生成し、生成した画像データを画像メモリ502に格納する。
【0025】
画像メモリ502は、制御部505により画像データに対する各種処理を行う為の作業領域として用いられる一時メモリである。
【0026】
CCD駆動部503は、制御ユニット5に設けられた図示しない基準クロック発生部から送信される基準クロックに基づいて、CCD3を駆動する駆動制御信号を生成するタイミングジェネレータである。CCD駆動部503で生成される駆動制御信号には、例えば、CCD3における露出開始及び終了タイミングを制御する積分開始/終了のタイミング信号、各画素で生成された画素信号の読出し制御信号(水平同期信号、垂直同期信号、転送信号等)等のクロック信号が挙げられ、これらのクロック信号がCCD3に供給されるとCCD3では各クロック信号に対応した駆動制御が行われる。
【0027】
また、CCD駆動部503は、画素信号の読出し動作モードとして、CCD3の各画素で生成された全ての画素信号を読み出す全画素読出しモード、及びCCD3の垂直方向に配列された画素に蓄積した画素信号を、所定の画素数毎に等間隔に間引いてCCD3の垂直転送ラインに転送する間引き読み出しモード等を有している。尚、間引き読出しモードは、例えば、特開平10−304250号公報に開示されている動作モード等の周知の方法を用いることができるので、その詳細な説明は省略する。
【0028】
調整機構駆動部504は、制御部505から出力される信号に基づいて、調整機構部6を駆動する駆動制御信号を生成する。
【0029】
制御部5は、図示しない各制御プログラム等を記憶するROM(Read Only Memory)、演算処理や制御処理等のデータを一時的に格納するRAM(Random Access Memory)、及び制御プログラム等をROMから読み出して実行するCPU(中央演算処理装置)等から構成される。制御部5は、図示しない電源スイッチや各種操作スイッチ等からの信号を受けて、位置調整システム1で行われる位置調整動作や画像信号処理動作等を統括的に制御するものである。
【0030】
また、制御部505は、CCD3が光軸K方向の複数の所定の位置でチャート7を撮像したときの撮像情報、すなわち画像メモリ502に格納されている画像情報に基づき、撮像光学系2の光軸Kに対する撮像素子4のX軸方向のずれ量、Y軸方向のずれ量、あおり角θx及びあおり角θyを算出する。そして、算出したずれ量やあおり角に基づき、調整機構駆動部504、調整機構部6を介して、CCD3の位置・姿勢を調整し、撮像光学系2に対してCCD3を最適な位置に配置する。尚、制御部5で行われるずれ量やあおり角の算出方法は、例えば、特開2005−136743号公報に開示されている方法等の周知の算出方法を用いることができるので、その説明は省略する。
【0031】
次に、このような位置調整システム1で行われるCCD2の位置調整方法の概要を説明する。
【0032】
先ず、撮像光学系2、及びCCD3を仮配置した後に、CCD3を停止させることなく光軸K方向に連続的に移動させながら、複数の所定の位置でチャート7を撮像して画像情報を取得する(画像情報取得工程)。次に、取得した複数の画像の画像情報に基づいて、光軸Kに対するCCD3のX軸方向のずれ量、Y軸方向のずれ量、あおり角θx及びあおり角θyを算出する(ずれ量・あおり角算出工程)。そして、算出したずれ量やあおり角に基づいて、CCD3の位置・姿勢を調整し、撮像光学系3に対してCCD3を最適な位置に配置する(配置工程)。
【0033】
このようなCCD3の位置調整方法において、本発明は、CCD3を短時間で、且つ高精度に撮像光学系2に対して最適な位置に配置できるようにする為に、画像情報を取得する際(画像情報取得工程)、CCD3を光軸Kの方向に連続して移動させながら、複数の所定の位置で光軸K上に配置したチャート7を撮像して画像情報を取得するようにした。すなわち、複数の所定の位置で、CCD3を停止させることなく連続して移動させながら、チャート7を撮影し画像情報を取得するものである。以下、本発明に係わる画像情報の取得方法の詳細を図2を用いて説明する。図2(a)は、CDD3の移動方法を示す図、図2(b1)は、CCD3の移動タイミングを示すタイムチャート、図2(b2)は、画像情報の取得タイミングを示すタイムチャート、図2(b3)は、間引き読み出しによる画像情報の取得タイミングを示すタイムチャートである。
【0034】
最初に、CCD3の移動を開始し所定の位置d5に到達するまで連続して移動させる。このような状態で、CCD3が所定の位置d1を通過する時点で、位置d1にてチャート7を撮像し、撮像した第1フレームf1の画像情報を読み出す(期間twa)。次に、CCD3が次の所定の位置d2を通過する時点で、位置d2にてチャート7を撮像し、撮像した第2フレームf2の画像情報を読み出す。このような動作を繰返し実行し、ずれ量やあおり量を算出するのに必要な枚数(例えば、第1フレームf1〜第5フレームf5)の画像情報を取得する(期間Tw)。
【0035】
尚、1つのフレーム(画像)が複数のフィールドで構成されている場合、CCD3を停止させることなく連続して移動させながらチャート7を撮像することにより、フィールド毎に撮像タイミング、すなわちCCD3の位置が異なる為、画像ぶれが発生する場合がある。しかしながら、この場合は、間引き読み出しを行うことで、フィールド間の時間差を短縮することができ、図2(b3)に示すように、1つのフレームの画像情報を読み出す時間(期間twb)を短くすることができる。その結果、画像ぶれを抑えることができ、精度よく画像情報を取得することができる。
【0036】
これらにより、CCD3の中心のずれ量やあおり角を算出するのに必要な枚数の画像情報を取得するのに要する時間を大きく短縮することができる。その結果、高画素化されたCCD3においても、CCD3を短時間で、且つ高精度に撮像光学系2に対して最適な位置に配置することが可能となる。
【0037】
また、本発明に係わるCCD3の位置調整方法においては、要求される調整時間、調整精度に応じて、CCD3の移動速度や取得する画像情報の枚数(フレーム数)、間引き読み出しモードの間引き率等を任意に変更することができる。具体的には、図3を用いて説明する。図3(a)は、粗調モードM1、微調モードM2におけるそれぞれのCDD3の移動方法を示す図、図3(b1)は、粗調モードM1でのCCD3の移動タイミングを示すタイムチャート、図3(b2)は、粗調モードM1での画像情報の取得タイミングを示すタイムチャート、図3(c1)は、微調モードM2でのCCD3の移動タイミングを示すタイムチャート、図3(c2)は、微調モードM2での画像情報の取得タイミングを示すタイムチャートである。
【0038】
粗調モードM1は、図3(a)、図3(b1)、図3(b2)に示すように、CCD3を高速に移動させ、所定の位置d11〜d15において、粗い間隔でチャート7を撮像し、ずれ量やあおり量を概ね算出するのに必要な枚数(例えば、第1フレームf1〜第5フレームf5)の画像情報を短い期間Tw1で取得する。そして、取得した画像情報に基づいて、撮像光学系3に対してCCD3を概ね適した位置に配置する。
【0039】
微調モードM2は、図3(a)、図3(c1)、図3(c2)に示すように、CCD3を粗調モードM1の場合よりも低速で移動させ、所定の位置d21〜d28において、細かい間隔でチャート7を撮像し、ずれ量やあおり量を高い精度で算出するのに必要な枚数(例えば、第1フレームf1〜第5フレームf8)の画像情報を粗調モードM1の場合よりも長い期間Tw2で取得する。そして、取得した画像情報に基づいて、撮像光学系3に対してCCD3を最適な位置に配置する。尚、微調モードM2における、CCD3の移動速度、移動量、及び取得する画像情報の枚数(フレーム数)等は、粗調モードM1で取得した画像情報に基づいて設定するとよい。
【0040】
このように、要求される調整時間、調整精度に応じて、粗調モードM1と微調モードM2を組み合わせて位置調整を行うことにより、CCD3を効率的、且つ高精度に撮像光学系2に対して最適な位置に配置することが可能となる。
【符号の説明】
【0041】
1 位置調整システム
2 撮像光学系
3 CCD(撮像素子)
4 撮像ユニット
5 制御ユニット
501 画像処理部
502 画像メモリ
503 CCD駆動部
504 調整機構駆動部
505 制御部
6 調整機構部
7 チャート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像光学系または撮像素子とを相対的に前記撮像光学系の光軸の方向に連続的に移動させながら、複数の所定の位置で光軸上に配置したチャートを撮像して画像情報を取得する工程と、
前記画像情報に基づいて、前記光軸に対する前記撮像素子の中心のずれ量およびあおり角またはその何れかを算出する工程と、
前記ずれ量および前記あおり角またはその何れかに基づき、前記撮像素子を前記撮像光学系に対して所定の位置に配置する工程と、を有することを特徴とする撮像素子の位置調整方法。
【請求項2】
前記画像情報を取得する工程において、前記撮像素子から前記画像情報を読み出す際には、前記撮像素子の垂直方向に配列された画素に蓄積した画素信号を、複数種類設定可能な所定の画素数毎に等間隔に間引いて前記撮像素子の垂直転送ラインに転送する間引き読み出しを行うことを特徴とする請求項1に記載の撮像素子の位置調整方法。
【請求項3】
前記画像情報を取得する工程において、前記撮像光学系または前記撮像素子の何れか一方を前記光軸の方向に移動させる速度は可変であることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像素子の位置調整方法。
【請求項4】
前記画像情報を取得する工程において、前記複数の所定の位置は可変であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の撮像素子の位置調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−263290(P2010−263290A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110727(P2009−110727)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】