説明

撮像装置、その製造装置および製造方法、並びに情報コード読取装置

【課題】復元画が良好となるようなボカシを実現でき、また、光学系を簡単化でき、コスト低減を図ることができ、適切な画質の、ノイズの影響が小さく、特性の異なる情報コードを読み取る場合であっても良好な復元画像を得ることが可能な撮像装置、その製造装置および製造方法、並びに情報コード読取装置を提供する。
【解決手段】1次画像を形成する光波面変調素子を含む光学系210および撮像素子220と、1次画像を高精細な最終画像に形成する画像処理装置240と、読み込んだ情報コードの特性(種類)を判断してそれに合わせ光波面変調素子の配置位置から最適な状態に回転制御を行い、また、一つの光波面変調素子に対し複数の復元用フィルタを用い、情報コードの種類に対応した復元フィルタに切り換えるように制御する制御装置250と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子を用い、光学系を備えた撮像装置、その製造装置および製造方法、並びに情報コード読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年急峻に発展を遂げている情報のデジタル化に相俟って映像分野においてもその対応が著しい。
特に、デジタルカメラに象徴されるように撮像面は従来のフィルムに変わって固体撮像素子であるCCD(Charge Coupled Device),CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサが使用されているのが大半である。
【0003】
このように、撮像素子にCCDやCMOSセンサを使った撮像レンズ装置は、被写体の映像を光学系により光学的に取り込んで、撮像素子により電気信号として抽出するものであり、デジタルスチルカメラの他、ビデオカメラ、デジタルビデオユニット、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、携帯情報端末(PDA:Personal DigitalAssistant)、画像検査装置、自動制御用産業カメラ等に用いられている。
【0004】
図39は、一般的な撮像レンズ装置の構成および光束状態を模式的に示す図である。
この撮像レンズ装置1は、光学系2とCCDやCMOSセンサ等の撮像素子3とを有する。
光学系は、物体側レンズ21,22、絞り23、および結像レンズ24を物体側(OBJS)から撮像素子3側に向かって順に配置されている。
【0005】
撮像レンズ装置1においては、図39に示すように、ベストフォーカス面を撮像素子面上に合致させている。
図40(A)〜(C)は、撮像レンズ装置1の撮像素子3の受光面でのスポット像を示している。
【0006】
また、位相板により光束を規則的に分散し、デジタル処理により復元させ被写界深度の深い画像撮影を可能にする等の撮像装置が提案されている(たとえば非特許文献1,2、特許文献1〜5参照)。
また、伝達関数を用いたフィルタ処理を行うデジタルカメラの自動露出制御システムが提案されている(たとえば特許文献6参照)。
【非特許文献1】“Wavefront Coding;jointly optimized optical and digital imaging systems”,Edward R.Dowski,Jr.,Robert H.Cormack,Scott D.Sarama.
【非特許文献2】“Wavefront Coding;A modern method of achieving high performance and/or low cost imaging systems”,Edward R.Dowski,Jr.,Gregory E.Johnson.
【特許文献1】USP6,021,005
【特許文献2】USP6,642,504
【特許文献3】USP6,525,302
【特許文献4】USP6,069,738
【特許文献5】特開2003−235794号公報
【特許文献6】特開2004−153497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した各文献にて提案された撮像装置においては、その全ては通常光学系に上述の位相板を挿入した場合のPSF(Point−Spread−Function)が一定になっていることが前提であり、PSFが変化した場合は、その後のカーネルを用いたコンボリューションにより、被写界深度の深い画像を実現することは極めて難しい。
したがって、単焦点でのレンズではともかく、ズーム系やAF系などのレンズでは、その光学設計の精度の高さやそれに伴うコストアップが原因となり採用するには大きな問題を抱えている。
換言すれば、従来の撮像装置においては、適正なコンボリューション演算を行うことができず、ワイド(Wide)時やテレ(Tele)時のスポット(SPOT)像のズレを引き起こす非点収差、コマ収差、ズーム色収差等の各収差を無くす光学設計が要求される。
しかしながら、これらの収差を無くす光学設計は光学設計の難易度を増し、設計工数の増大、コスト増大、レンズの大型化の問題を引き起こす。
【0008】
また、上述した各文献に開示された装置においては、たとえば暗所における撮影で、信号処理によって画像を復元する際、ノイズも同時に増幅してしまう。
したがって、たとえば上述した位相板等の光波面変調素子とその後の信号処理を用いるような、光学系と信号処理を含めた光学システムでは、暗所での撮影を行う場合、ノイズが増幅してしまい、復元画像に影響を与えてしまうという不利益がある。
【0009】
さらに、上記技術では、たとえば明るい被写体の撮影で、絞りを絞った場合、位相変調素子が絞りで覆われるため、位相変化が小さくなり、画像復元処理を行うと復元画像に影響を与えてしまうという不利益がある。
【0010】
さらにまた、上記技術では、画像復元処理前の画像は物体距離によらず常に光学像がボケた状態になっているため、復元処理を行わなければ画質としての完成度が低い。
たとえ復元処理を行ってもボカして復元するという工程上、完全には復元することは困難である。そのため、復元画が良好となるようなボカシ方をする必要がある。
【0011】
また、上述した位相板により光束を規則的に分散し、デジタル処理により復元させ被写界深度の深い画像撮影を可能にする等の撮像装置をバーコード等の情報コード読取装置に適用することも可能である。
バーコードとしては、たとえばJANコードのような1次元のバーコードとQRコードのような2次元のバーコードが実用に供されている。
しかし、これら1次元と2次元のバーコードとは特性が異なっており、上記撮像装置を用いたバーコード読取装置では、両コードの特性に応じて的確に高精度で読み取ることは困難である。
【0012】
本発明は、復元画が良好となるようなボカシを実現でき、また、光学系を簡単化でき、コスト低減を図ることができ、適切な画質の、ノイズの影響が小さく、特性の異なる情報コードを読み取る場合であっても良好な復元画像を得ることが可能な撮像装置、その製造装置および製造方法、並びに情報コード読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の観点の撮像装置は、中心において回転非対称な点像強度分布(PSF)により形成され、光学的伝達関数(OTF)を変調させる光波面変調素子を含む光学系と、前記光学系を通過した被写体である情報コードの像を撮像する撮像素子と、前記撮像素子からの被写体の画像信号に対して所定の処理を施す画像処理部と、前記撮像した情報コードの種類および状態のうちの少なくとも一方を判定する判定する判定部と、前記判定部の判定結果に応じて、前記光学系を通過したPSFに係る出力信号が入力する画素数が異なるように前記光学系と前記撮像素子との相対的な位置関係を切り換える切換部とを有する。
【0014】
好適には、前記切換部は、前記光波面変調素子を前記光学系の光軸を中心に回転させる機能を有する。
【0015】
好適には、前記情報コードには、1次元的な情報を有する1次元コードと2次元的な情報を有する2次元コードを含み、前記切換部は、1次元コードの場合より2次元コードの場合の方が前記光学系を通過したPSFに係る出力信号が入力する画素数が多くなるように切り換える。
【0016】
好適には前記PSFは頂部を有し、前記切換部は、前記2次元コードの場合には、前記光学系を通過したPSFに係る出力信号が、前記PSFの頂部に対向する縁部において、直線的に配列される複数の画素にまで入力するように切り換える。
【0017】
好適には、前記PSFは前記頂部を通る中心線を中心に左右対称である。
【0018】
本発明の第2の観点は、中心において回転非対称な点像強度分布(PSF)により形成され、光学的伝達関数(OTF)を変調させる光波面変調素子を交換可能な状態で構成する光学系と、前記光学系を通過した被写体である情報コードの像を撮像する撮像素子と、前記撮像素子からの被写体の画像信号に対して所定の処理を施す画像処理部と、前記撮像した情報コードの種類および状態のうちの少なくとも一方を判定する判定部と、前記判定部の判定結果に応じて、前記光波面変調素子を可変する切換部とを有する。
【0019】
好適には、前記画像処理部は、撮像素子からの被写体分散画像信号より分散のない画像信号を生成する。
【0020】
好適には、前記光波面変調素子が、物体距離に応じたOTFの変化を、光波面変調素子を持たない光学系よりも小さくする作用を持つ。
【0021】
好適には、前記光波面変調素子が、前記光学系の光軸をz軸とし、互いに直交する2軸をx、yとしたとき、位相が下記式で表される。
【0022】
【数1】

【0023】
好適には、前記光波面変調素子を有する光学系のOTFが、前記光波面変調素子を含まない光学系の被写界深度よりも広い物体距離にわたって、前記撮像素子のナイキスト周波数まで0.1以上である。
【0024】
好適には、前記画像処理部は、ノイズ低減フィルタリングを施す手段を有する。
【0025】
好適には、前記画像処理部の演算係数を格納する記憶手段を有し、前記記憶手段には、情報コードの種類および状態のうちの少なくとも一に応じたノイズ低減処理のための演算係数が格納される。
【0026】
好適には、前記画像処理部の演算係数を格納する記憶手段を有し、前記記憶手段には、情報コードの種類および状態のうちの少なくとも一に応じた光学的伝達関数(OTF)復元のための演算係数が格納される。
【0027】
好適には、前記撮像装置は、被写体までの距離に相当する情報を生成する被写体距離情報生成手段を含み、前記画像処理部は、前記被写体距離情報生成手段により生成される情報に基づいて前記分散画像信号より分散のない画像信号を生成する。
【0028】
好適には、前記撮像装置は、被写体距離に応じて少なくとも前記光波面変調素子または前記光学系に起因する分散に対応した変換係数を少なくとも2以上予め記憶する変換係数記憶手段と、前記被写体距離情報生成手段により生成された情報に基づき、前記変換係数記憶手段から被写体までの距離に応じた変換係数を選択する係数選択手段と、を含み、前記画像処理部は、前記係数選択手段で選択された変換係数によって、画像信号の変換を行う。
【0029】
好適には、前記撮像装置は、前記被写体距離情報生成手段により生成された情報に基づき変換係数を演算する変換係数演算手段を含み、前記画像処理部は、前記変換係数演算手段から得られた変換係数によって、画像信号の変換を行う。
【0030】
好適には、前記撮像装置は、被写体までの距離に相当する情報を生成する被写体距離情報生成手段と、前記被写体距離情報生成手段により生成された情報に基づき変換係数を演算する変換係数演算手段と、を含み、前記画像処理部は、前記変換係数演算手段から得られた変換係数によって、画像信号の変換を行い分散のない画像信号を生成する。
【0031】
好適には、前記変換係数演算手段は、前記被写体分散像のカーネルサイズを変数として含む。
【0032】
好適には、前記変換係数演算手段は、求めた変換係数を前記記憶手段に格納し、前記画像処理部は、前記記憶手段に格納された変換係数によって、画像信号の変換を行い分散のない画像信号を生成する。
【0033】
好適には、前記画像処理部は、前記変換係数に基づいてコンボリューション演算を行う。
【0034】
本発明の第3の観点は、光学系と撮像素子の相対的な取り付け位置を回転して調整可能なように撮像装置を製造するための撮像装置の製造装置であって、前記光学系を通過した中心において回転非対称な点像強度分布(PSF)PSFに係る出力信号が入力する画素数が異なるように前記光学系と前記撮像素子との相対的な位置関係を切り換える可能なように、基準位置への設定調整を行うための調整装置を有する。
【0035】
本発明の第4の観点は、交換可能な光変調素子を含む光学系と撮像素子の相対的な取り付け位置を回転して調整可能なように撮像装置を製造するための撮像装置の製造装置であって、前記光学系を通過した中心において回転非対称な点像強度分布(PSF)PSFに係る出力信号が入力する画素数が異なるように前記光学系の光変調素子と前記撮像素子との相対的な位置関係、並びに光変調素子を切り換え可能なように、基準位置への設定調整を行うための調整装置を有する。
【0036】
本発明の第5の観点は、光学系と撮像素子の相対的な取り付け位置を回転して調整可能なように撮像装置を製造するための撮像装置の製造方法であって、光学系と撮像素子を配置し、前記光学系を通過した中心において回転非対称な点像強度分布(PSF)PSFに係る出力信号が入力する画素数が基準数となる位置を第1の位置とする第1ステップと、前記光学系を通過した前記PSFに係る出力信号が、当該PSFの頂部に対向する縁部において、直線的に配列される複数の画素にまで入力する位置を第2の位置とする第2ステップと、前記第1の位置と前記第2の位置間で前記光波面変調素子を回転可能に形成する第3ステップとを有する。
【0037】
本発明の第6の観点は、交換可能な光変調素子を含む光学系と撮像素子の相対的な取り付け位置を回転して調整可能なように撮像装置を製造するための撮像装置の製造方法であって、光学系と撮像素子を配置し、前記光学系を通過した中心において回転非対称な点像強度分布(PSF)PSFに係る出力信号が入力する画素数が基準数となる光変調素子を選択する第1ステップと、前記光学系を通過した前記PSFに係る出力信号が、当該PSFの頂部に対向する縁部において、直線的に配列される複数の画素にまで入力する光変調素子を選択する第2ステップと、前記選択した複数の光波面変調素子を交換可能に形成する第3ステップとを有する。
【0038】
本発明の第7の観点は、情報コードを光学的に読み取る情報コード読取装置であって、中心において回転非対称な点像強度分布(PSF)により形成され、光学的伝達関数(OTF)を変調させる光波面変調素子を含む光学系と、前記光学系を通過した被写体である情報コードの像を撮像する撮像素子と、前記撮像素子からの被写体の画像信号に対して所定の処理を施す画像処理部と、前記撮像した情報コードの種類および状態のうちの少なくとも一方を判定する判定する判定部と、前記判定部の判定結果に応じて、前記光学系を通過したPSFに係る出力信号が入力する画素数が異なるように前記光学系と前記撮像素子との相対的な位置関係を切り換える切換部とを有する。
【0039】
本発明の第8の観点は、情報コードを光学的に読み取る情報コード読取装置であって、中心において回転非対称な点像強度分布(PSF)により形成され、光学的伝達関数(OTF)を変調させる光波面変調素子を交換可能な状態で構成する光学系と、前記光学系を通過した被写体である情報コードの像を撮像する撮像素子と、前記撮像素子からの被写体の画像信号に対して所定の処理を施す画像処理部と、前記撮像した情報コードの種類および状態のうちの少なくとも一方を判定する判定部と、前記判定部の判定結果に応じて、前記光波面変調素子を可変する切換部とを有する。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、復元画が良好となり、特性の異なるバーコードを読み取る場合であっても良好な復元画像を得ることができる。
また、光学系を簡単化でき、コスト低減を図ることができ、しかも適切な画質の、ノイズの影響が小さく、良好な復元画像を得ることができる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明の実施形態を添付図面に関連付けて説明する。
【0042】
図1は、本発明の実施形態に係る情報コード読取装置の一例を示す外観図である。
図2(A)〜(C)は、情報コードを例を示す図である。
図3は、図1の情報コード読取装置に適用される撮像装置の構成例を示すブロックである。
【0043】
本実施形態に係る情報コード読取装置100は、図1に示すように、本体110がケーブル111を介して図示しない電子レジスタ等の処理装置と接続され、たとえば読み取り対象物120に印刷された反射率の異なるシンボル、コード等の情報コード121を読み取り可能な装置である。
読み取り対象の情報コードとしては、たとえば図2(A)に示すような、JANコードのような1次元のバーコード122と、図2(B)および(C)に示すようなスタック式のCODE49、あるいはマトリックス方式のQRコードのような2次元のバーコード123が挙げられる。
【0044】
本実施形態に係る情報コード読取装置100は、本体110内に、図示しない照明光源と、図3に示すような撮像装置200とが配置されている。
撮像装置200は、後で詳述するように、光学系に光波面変調素子を適用し、光波面変調素子により光束を規則的に分散し、デジタル処理により復元させ被写界深度の深い画像撮影を可能にする波面収差制御光学系システム、あるいは深度拡張光学系システム(DEOS:Depth Expantion Optical system)というシステムを採用し、JANコードのような1次元のバーコードとQRコードのような2次元のバーコードのように特性(種類)が異なる情報コードを特性に応じて的確に高精度で読み取ることが可能に構成されている。
【0045】
情報コード読取装置100の撮像装置200は、図3に示すように、光学系210、撮像素子220、選択切換部230、画像処理装置240、判定部としての機能を含む制御装置250、およ外部とのびインタフェース部(I/F)260を有する。
【0046】
光学系210は、後で詳述する位相変調素子等の光波面変調素子を含み、被写体物体OBである情報コード121を撮影した像を撮像素子220に供給する。
【0047】
撮像素子220は、光学系210で取り込んだ像が結像され、結像1次画像情報を電気信号の1次画像信号FIMとして、図示しないアナログフロントエンド部(AFE)を介して画像処理装置240に出力するCCDやCMOSセンサからなる。
図3においては、撮像素子220を一例としてCCDとして記載している。
【0048】
図4は、本実施形態に係る光学系210の構成例を模式的に示す図である。
そして、図5は、本実施形態に係る光学系の広角側の像高中心のスポット形状を示す図であり、図6は、本実施形態に係る光学系の望遠側の像高中心のスポット形状を示す図である。
【0049】
図4の光学系210は、物体側OBJSに配置された物体側レンズ211と、撮像素子220に結像させるための結像レンズ212と、物体側レンズ211と結像レンズ212間に配置され、結像レンズ212による撮像素子220の受光面への結像の波面を変形させる、たとえば3次元的曲面を有する位相板からなる光波面変調素子(波面形成用光学素子)群213を有する。
【0050】
なお、本実施形態においては、位相板を用いた場合について説明したが、本発明の光波面変調素子としては、波面を変形させるものであればどのようなものでもよく、厚みが変化する光学素子(たとえば、上述の3次の位相板)、屈折率が変化する光学素子(たとえば屈折率分布型波面変調レンズ)、レンズ表面へのコーディング等により厚み、屈折率が変化する光学素子(たとえば、波面変調ハイブリッドレンズ、あるいはレンズ面上に形成される位相面として形成される状態)、光の位相分布を変調可能な液晶素子(たとえば、液晶空間位相変調素子)等の光波面変調素子であればよい。
また、本実施形態においては、光波面変調素子である位相板を用いて規則的に分散した画像を形成する場合について説明したが、通常の光学系として用いるレンズで光波面変調素子と同様に規則的に分散した画像を形成できるものを選択した場合には、光波面変調素子を用いずに光学系のみで実現することができる。この際は、後述する位相板に起因する分散に対応するのではなく、光学系に起因する分散に対応することとなる。
【0051】
図4の光学系210は、デジタルカメラに用いられる3倍ズームに光学位相板213aを挿入した例である。
図で示された位相板213aは、光学系により収束される光束を規則正しく分散する光学レンズである。この位相板を挿入することにより、撮像素子220上ではピントのどこにも合わない画像を実現する。
換言すれば、位相板213aによって深度の深い光束(像形成の中心的役割を成す)とフレアー(ボケ部分)を形成している。
前述したように、この規則的に分散した画像をデジタル処理により、光学系210を移動させずにピントの合った画像に復元する手段を波面収差制御光学系システム、あるいは深度拡張光学系システム(DEOS:Depth Expantion Optical system)といい、この処理を画像処理装置240において行う。
【0052】
光学系210の光波面変調素子と撮像素子220の相対的な位置は、選択切換部230により、光学系210に含まれる光波面変調素子と撮像素子220を相対的に回転させて取り付け位置が設定される。本実施形態においては、後で説明するように、光波面変調素子を光学系210の光軸を中心に回転させてあるいはそのままの位置に保持して、第1の位置または第2の位置に設定される。
本実施形態において、第1の位置とは、光学系210を通過した点像強度分布(PSF)の係る出力信号が入力する画素数が第1の数N1となる基準位置を意味する。
第2の位置とは、第1の位置(基準位置)のPSFに係る出力信号の入力する第1の画素数N1より多くの第2の画素数N2とする位置を意味する。
光学系210の光波面変調素子と撮像素子220の相対的位置が第2の位置となるように設定された場合、後で説明するように、光学系を通過した中心において回転対称でないPSFに係る出力信号が、PSFの所定の頂部に対向する縁部において、直線的に配列される複数の画素にまで入力するようになる。
より具体的には、第2の位置は、アナログ信号からデジタル信号に変換する際に生じるサンプリング効果によりPSFの出力信号が、PSFの所定の頂部に対向する縁部において、直線的に配列される複数の画素にまで入力するように設定されている。
また、第2の位置の場合、後で図解するように、光学系210を通過して得られたPSFが、アナログ信号からデジタル信号への変換後の変調伝達関数(MTF)において、複数のアジマス方向(本実施形態においては全アジマス方向)において等しくなるように配置されている。
【0053】
選択切換部230は、制御装置250の制御信号CTL1に応じて光学系210の光波面変調素子を回転させて、あるいは、そのままの位置を保持して、上述した第1の位置または第2の位置となるように選択的に回転位置を切り換える。
選択切換部230は、制御装置250の制御信号CTL1により、たとえば、読み取った情報コードが1次元バーコードの場合は第1の位置を保持し、2次元バーコードの場合は第2の位置を保持するように制御される。
【0054】
図7は、本実施形態の選択切換部の構成例を示す図である。
【0055】
図7の選択切換部230Aは、光波面変調素子(たとえば位相板)213aを、回転中心を持った回転可動な部品231に光軸を一致させて配置し、部品231の縁部とモータ232の回転軸に取り付けた歯車233と噛合させて、制御装置250で生成された制御信号CTL1に応じて、光波面変調素子213aを光軸中心AXに所定角度、たとえば45度回転させ、あるいはそのままの位置に保持する。
【0056】
選択切換部230Aは、たとえば初期状態では、図7中、P1で示す部品231の位置に光波面変調素子213aの縁部の第1の位置部a1が一致する位置に保持される。
そして、選択切換部230Aは、制御装置250で読み取った情報コード121が2次元のバーコードであると判定された場合には制御信号CTL1を受けて部品231の位置P1に光波面変調素子210aの縁部の第2の位置部a2が一致するように部品231を図中反時計回りに所定角度、たとえば45度回転する。
また、この状態で、選択切換部230Aは、制御装置250で読み取った情報コード121が1次元のバーコードであると判定された場合には制御信号CTL1を受けて部品231の位置P1に光波面変調素子210aの縁部の第1の位置部a1が一致するように部品231を図中時計回りに45度回転する。
【0057】
画像処理装置240は、前段の不図示のAFEからくる撮像画像のデジタル信号を入力し、二次元のコンボリューション処理を施し、後段の制御装置250に出力する。
画像処理装置240は、制御装置250において情報コードの特性(種類)に応じて選択され、制御信号CTL2により指示されたフィルタを用いて、入力画像信号の光学的伝達関数(OTF)に対してフィルタ処理を行う。
画像処理装置240は、撮像素子220からの被写体分散画像信号より分散のない画像信号を生成する機能(ボケ復元機能)を有する。また、画像信号処理部は、最初のステップでノイズ低減フィルタリングを施す機能を有する。
画像処理装置240の処理については後でさらに詳述する。
【0058】
制御装置250は、選択切換部230、画像処理装置240、インタフェース部260を介した上位装置(たとえば電子レジスタ)等との通信等を制御し、システム全体の調停制御を司るものである。
制御装置250は、画像処理装置240においてボケ復元処理を受けた信号を受けて読み取った情報コードが、その読み取り情報の特徴から1次元のバーコードであるか2次元のバーコードであるかを判定し、選択切換部230に制御信号CTL1を出力して光波面変調素子の回転位置の制御を行い、画像処理装置240に制御信号CTL2を出力して光波面変調素子210aを通過したPSFの出力信号の復元処理に適した復元フィルタを選択して復元処理を行うように指示する。
そして、制御装置250は、情報コードの特性に応じた光波面変調素子の回転制御および復元フィルタの選択制御後に読み取った情報コードを解読し、その解読した情報をたとえばインタフェース部260を介して上位装置に送信する等の制御を行う。
【0059】
また、制御装置250は、情報コードの特性情報のみならず、後述する物体概略距離情報検出装置により取得された被写体である情報コードまでの距離情報や情報コードの大きさを加味して復元フィルタの選択制御を行う。
情報コード(シンボル、コード)の種類と別に被写体までの距離や大きさに応じて要求される復元レベルが変わってくる。たとえば、被写体までの距離が離れている場合や情報コードの表示が小さいような場合は復元レベルの強いものにする必要がある。これに対して、情報コードの状態として被写体までの距離が小さい場合や情報コードの表示が大きい場合は復元レベルを下げることもできる。
復元フィルタだけに着目した場合、復元レベルを変えることが復元画像の解像やノイズに関係してくる。すなわち、強い復元フィルタを用いた場合、解像が上がると同時にノイズも増加する。情報コードを判定する際にある程度のノイズは訂正処理等で回避できるが限界がある。同時に、解像に関してもある一定の解像を持っていれば判定することは可能である。
本実施形態においては、判定できる範囲を有効に使い被写界深度を拡張することが可能になっている。
【0060】
このように、本実施形態においては、情報コードを読み込み、その情報コードの特性(種類)を判断してそれに合わせ光波面変調素子の配置位置から最適な状態に回転制御を行い、また、一つの光波面変調素子に対し複数の復元用フィルタを持ち、情報コードの種類や距離等に対応した復元フィルタに切り換える。
これにより、情報コードの持っている特性を損なわずに深度の拡張を行うことが可能となる。
たとえば、読み取った情報コードがJANコードのような1次元のバーコードである場合には、2方向(縦方向と横方向)の要素であることから、その方向に合わせた回転制御を行って最適なPSFの出力信号を用いれば一つの光波面変調素子ですべての情報コードに対応してより復元後の品質が向上できる。併せて、被写界深度の調整も可能になる。
すなわち、読み取った情報コードがJANコードのような1次元のバーコードである場合には、2方向(縦方向と横方向)の復元に重点をおき、QRコードのような2次元のコードである場合は、斜め方向の復元に重点をおいた復元を行うことにより、情報コードに対応して、より復元後の品質が向上できる。
【0061】
以下、本実施形態のDEOSの原理、光学系、画像処理装置の構成および機能について具体的には説明する。
【0062】
まず、DEOSの基本原理について説明する。
図8に示すように、被写体の画像fがDEOS光学系Hに入ることにより、g画像が生成される。
これは、次のような式で表される。
【0063】
[数2]
g=H*f
ただし、*はコンボリューションを表す。
【0064】
生成された画像から被写体を求めるためには、次の処理を要する。
【0065】
[数3]
f=H-1*g
【0066】
ここで、Hに関するカーネルサイズと演算係数について説明する。
光学切り替え情報をKPn,KPn−1・・・とする。また、それぞれのH関数をHn,Hn−1、・・・・とする。
各々のスポット像が異なるため、各々のH関数は、次のようになる。
【0067】
【数4】

【0068】
この行列の行数および/または列数の違いをカーネルサイズ、各々の数字を演算係数とする。
ここで、各々のH関数はメモリに格納しておいても構わないし、PSFを物体距離の関数としておき、物体距離によって計算し、H関数を算出することによって任意の物体距離に対して最適なフィルタを作るように設定できるようにしても構わない。また、H関数を物体距離の関数として、物体距離によってH関数を直接求めても構わない。
【0069】
本実施形態においては、図3に示すように、光学系210からの像を撮像素子220で受像して、絞り開放時には画像処理装置240に入力させ、光学系に応じた変換係数を取得して、取得した変換係数をもって撮像素子220からの分散画像信号より分散のない画像信号を生成するように構成している。
【0070】
なお、本実施形態において、分散とは、上述したように、位相板213aを挿入することにより、撮像素子220上ではピントのどこにも合わない画像を形成し、位相板213aによって深度の深い光束(像形成の中心的役割を成す)とフレアー(ボケ部分)を形成する現象をいい、像が分散してボケ部分を形成する振る舞いから収差と同様の意味合いが含まれる。したがって、本実施形態においては、収差として説明する場合もある。
【0071】
本実施形態においては、DEOSを採用し、高精細な画質を得ることが可能で、しかも、光学系を簡単化でき、コスト低減を図ることが可能となっている。
以下、この特徴について説明する。
【0072】
図9(A)〜(C)は、撮像素子120の受光面でのスポット像を示している。
図9(A)は焦点が0.2mmずれた場合(Defocus=0.2mm)、図9(B)が合焦点の場合(Best focus)、図9(C)が焦点が−0.2mmずれた場合(Defocus=−0.2mm)の各スポット像を示している。
図9(A)〜(C)からもわかるように、本実施形態に係る撮像装置200においては、位相板213aを含む波面形成用光学素子群213によって深度の深い光束(像形成の中心的役割を成す)とフレアー(ボケ部分)が形成される。
【0073】
このように、本実施形態の撮像装置200において形成された1次画像FIMは、深度が非常に深い光束条件にしている。
【0074】
図10(A),(B)は、本実施形態に係る撮像レンズ装置により形成される1次画像の変調伝達関数(MTF:Modulation Transfer Function)について説明するための図であって、図10(A)は撮像レンズ装置の撮像素子の受光面でのスポット像を示す図で、図10(B)が空間周波数に対するMTF特性を示している。
本実施形態においては、高精細な最終画像は後段の、たとえばデジタルシグナルプロセッサ(Digital Signal Processor)からなる画像処理装置240の補正処理に任せるため、図10(A),(B)に示すように、1次画像のMTFは本質的に低い値になっている。
【0075】
そして、本実施形態においては、光学系210と撮像素子220の相対的な位置は、選択切換部230により、光学系210に含まれる光波面変調素子と撮像素子220を相対的に回転させて取り付け位置が設定される。本実施形態においては、前述したように、制御装置250に応じて光波面変調素子を光学系210の光軸を中心に回転させてあるいはそのままの位置に保持して、第1の位置または第2の位置に設定される。
光学系210の光波面変調素子と撮像素子220の相対的位置が第2の位置となるように設定された場合、光学系を通過した中心において回転対称でないPSFに係る出力信号が、PSFの所定の頂部に対向する縁部において、直線的に配列される複数の画素にまで入力するようになる。
このとき、光学系110に含まれる光波面変調素子と撮像素子120を相対的に回転させて取り付け位置が設定されている。
なお、たとえばPSFは頂部を通る中心線を中心に左右対称である。
【0076】
図11(A),(B)は、基準位置と所定角度回転後のアナログPSFを示す図である。
図12(A),(B)は、図11のアナログPSFのA/D変換後のデジタルPSFを示す図である。
図13(A),(B)は、図12(A),(B)のデジタルPSFのMTFを示す図である。
図14(A),(B)は基準位置の場合のアナログPSFと、デジタルPSFを模式的に示す図である。
また、図15(A),(B)は45度回転後のアナログPSFと、デジタルPSFを模式的に示す図である。
【0077】
本実施形態においては、図11(A)に示す基準位置にある、中心において回転非対称で頂部を有するアナログPSFを1次元の情報コードの場合に適用し、2次元の情報コードの場合には、図11(B)に示すように、所定角度(本例では45度)回転する。
図からもわかるように、アナログでは回転を加えても軸方向のMTFは変わらない。
そして、回転に伴い、アナログ信号からデジタル信号に変換する際のサンプリングする対象が変化するため、図12(A),(B)に示すように、デジタルPSFの形状が変化する。
【0078】
より具体的に説明すると、たとえば、図14(A)の例のように、基準位置においては、アナログPSFはa〜gの8個の画素にわたってかかる(またぐ)ことから、サンプリングした後のデジタルPSFは、図14(B)の例のように、8個の画素a〜hに入力することになる。
この形状は、アナログPSFの平面的に見た場合に、頂点部があり三角形に近いが、その頂部TXに対向する底辺部(縁部)BXは、図14(B)に示すように、図14(A)のオリジナルと略同様に、直線的にならず、頂部TX側に寄った弓なり状な形状となる。
この場合のPSFは前述したように、2方向(縦方向と横方向)の復元に重点をおく必要があるが、図13(A)にも示すように、縦方向(図面上下方向)と横方向(図面左右方向)のMTFは良好であるため、1次元の情報コードに適しているといえる。
【0079】
これに対して、所定角度回転(本例では45度回転)させて、図15(A)に示すように、アナログPSFがa〜lの12個の画素にわたってかかる(またぐ)ようにすると、サンプリングした後のデジタルPSFは、図15(B)に示すように、頂点部があり三角形に近いが、その頂部TXに対向する底辺部(縁部)BXにおいて、直線的に配列される複数の画素(a,b,c,d)にまで入力するように形成することが可能となる。
すなわち、PSFの回転に伴い、サンプリング対象が変化するため、より多くの画素に入力するデジタルPSFの形状に変化する。
そして、PSFは、頂部TXを通る中心線を中心に略左右対称である。
この場合のPSFは前述したように、斜め方向の復元に重点をおく必要があるが、図13(B)にも示すように、縦方向、横方向及び斜め方向のMTFが平均的に良好であるため、2次元の情報コードに適しているといえる。
【0080】
また、アナログの時点では回転に伴うMTFの変化はないが、デジタル変換された後は、図13(A),(B)に示すように、サンプリング効果によりMTFが変換する。
このサンプリング効果を利用して、光学系210を通過したPSFが、アナログ信号からデジタル信号への変換後のMTFにおいて、複数のアジマス方向(本実施形態においては全アジマス方向)において等しくなるように配置されている。
【0081】
これにより、本実施形態においては、撮像素子220と光波面変調素子としての位相変調素子(位相板)213aを復元に適した配置することができ、公差の緩い深度拡張光学系を実現している。
なお、本実施形態においては、45度回転させた場合について説明したが、図11(A)の状態から90度、180度、270度以外で回転させても図11(A)の状態よりも複数の画素にわたってかかる(またぐ)ようになり、本発明の効果を十分に発現することができる。
また、図11(A)に示すPSFの場合には45度回転させた場合がかかる(またぐ)画素が多くなるが、他のPSFの場合には45度以外の回転状態の場合がかかる(またぐ)画素が多い状態となるケースもある。
【0082】
本実施形態においては、調整装置にこの方法を採用して光学系210と撮像素子220の相対的な位置の最適な回転制御が行えるように、たとえば基準位置への設定調整を行う。
以下に、調整装置の基本的な構成を説明について説明する。
【0083】
図16は、本実施形態に係る調整装置200の構成例を示すブロック図である。
【0084】
調整装置300は、図16に示すように、レンズ調整駆動部310、図3の撮像素子220に相当するセンサ320、AFE(アナログフロントエンド部)330、RAWバッファメモリ340、画像信号処理部350、調整制御部360、および画像表示部370を有している。
【0085】
レンズ調整駆動部310には、たとえば小絞り311、光波面変調素子を含むレンズ系(光学系)312が配置される。そして、モータドライバ313によりレンズ312がその光軸方向に移動制御され、位相変調素子を含むレンズ光学系の位置が所望の位置に設定される。
また、レンズ調整駆動部310は、調整制御部360に指示に従って、レンズ系312を光軸を中心に所定角度回転可能に構成されている。
【0086】
AFE330は、A/Dコンバータ331、およびタイミングジェネレータ332を有する。
タイミングジェネレータ331では、調整制御部360の制御の下、センサ(撮像素子)220のCCDの駆動タイミングを生成しており、A/Dコンバータ332は、CCDから入力されるアナログ信号をデジタル信号に変換し、バッファメモリ340に可能する。
また、タイミングジェネレータ331は、調整制御部360の制御の下、センサ320に対するレンズ312の位置を調整し、ピント等を調整するための駆動信号をモータドライバ313に供給する。
【0087】
画像信号処理部360は、バッファメモリ340の格納データに対して、所定の画像処理を行って、たとえばPSF像を得、その処理情報を調整制御部370に供給するとともに、調整制御部360の制御の下、画像表示部370に表示する。
【0088】
調整制御部360は、画像信号処理部360による信号処理に伴う情報に基づいて、レンズ(光学系)312とセンサ(撮像素子)320の位置関係を調整するために、レンズ312の位置を変更制御等するための制御信号をAFE330のタイミングジェネレータ332に出力して、レンズ(光学系)312とセンサ(撮像素子)320の位置関係を調整制御する。
【0089】
また、レンズ(光学系)312とセンサ(撮像素子)320の位置調整処理は、図17に示すように、x軸、y軸を調整してレンズ312とセンサ320の位置を調整する。
【0090】
以上のような調整装置300を用いて、光学系と撮像素子を配置し、光学系を通過した中心において回転非対称な点像強度分布(PSF)PSFに係る出力信号が入力する画素数が基準数となる位置を第1の位置とする。
光学系を通過した前記PSFに係る出力信号が、PSFの頂部に対向する縁部において、直線的に配列される複数の画素にまで入力する位置を第2の位置とする。
そして、第1の位置と前記第2の位置間で前記光波面変調素子を回転可能に形成する。 このような製造プロセスを経て撮像装置200は調整され製造される。
以下、深度拡張光学系を採用した場合の各部構成および機能についてさらに説明する。
【0091】
図18は、本実施形態の光波面変調素子を含む光学系の光軸をz軸とし、互いに直交する2軸をx、yとしたとき、下記式で表される波面収差の形状である。
【0092】
【数5】

【0093】
波面収差が0.5λ以下の範囲では位相の変化が小さく、通常の光学系と変わらないOTFを持つ。したがって波面収差が0.5λ程度になるまで絞って取り付け位置の調整を行う。
図19は、前記波面収差の形状と0.5λ以下の範囲を太線で表したものである。
ただし、λはたとえば可視光領域、赤外領域の波長を用いる。
【0094】
なお、図18に示す形状は、一例であって、光波面変調素子が、光学系の光軸をz軸とし、互いに直交する2軸をx、yとしたとき、位相が下記式で表されるものであれば適用可能である。
【0095】
【数6】

【0096】
画像処理装置240は、上述したように、撮像素子220による1次画像FIMを受けて、1次画像の空間周波数におけるMTFをいわゆる持ち上げる所定の補正処理等を施して高精細な最終画像FNLIMを形成する。
【0097】
画像処理装置240のMTF補正処理は、たとえば図20の曲線Aで示すように、本質的に低い値になっている1次画像のMTFを、空間周波数をパラメータとしてエッジ強調、クロマ強調等の後処理にて、図20中曲線Bで示す特性に近づく(達する)ような補正を行う。
図20中曲線Bで示す特性は、たとえば本実施形態のように、波面形成用光学素子を用いずに波面を変形させない場合に得られる特性である。
なお、本実施形態における全ての補正は、空間周波数のパラメータによる。
【0098】
本実施形態においては、図20に示すように、光学的に得られる空間周波数に対するMTF特性曲線Aに対して、最終的に実現したいMTF特性曲線Bを達成するためには、それぞれの空間周波数に対し、図21に示すようにエッジ強調等の強弱を付け、元の画像(1次画像)に対して補正をかける。
たとえば、図20のMTF特性の場合、空間周波数に対するエッジ強調の曲線は、図21に示すようになる。
【0099】
すなわち、空間周波数の所定帯域内における低周波数側および高周波数側でエッジ強調を弱くし、中間周波数領域においてエッジ強調を強くして補正を行うことにより、所望のMTF特性曲線Bを仮想的に実現する。
【0100】
このように、実施形態に係る撮像装置200は、基本的に、1次画像を形成する光学系210および撮像素子220と、1次画像を高精細な最終画像に形成する画像処理装置240からなり、光学系システムの中に、波面成形用の光学素子を新たに設けるか、またはガラス、プラスチックなどのような光学素子の面を波面成形用に成形したものを設けることにより、結像の波面を変形(変調)し、そのような波面をCCDやCMOSセンサからなる撮像素子220の撮像面(受光面)に結像させ、その結像1次画像を、画像処理装置240を通して高精細画像を得る画像形成システムである。
本実施形態では、撮像素子220による1次画像は深度が非常に深い光束条件にしている。そのために、1次画像のMTFは本質的に低い値になっており、そのMTFの補正を画像処理装置240で行う。
【0101】
ここで、本実施形態における撮像装置200における結像のプロセスを、波動光学的に考察する。
物点の1点から発散された球面波は結像光学系を通過後、収斂波となる。そのとき、結像光学系が理想光学系でなければ収差が発生する。波面は球面でなく複雑な形状となる。幾何光学と波動光学の間を取り持つのが波面光学であり、波面の現象を取り扱う場合に便利である。
結像面における波動光学的MTFを扱うとき、結像光学系の射出瞳位置における波面情報が重要となる。
MTFの計算は結像点における波動光学的強度分布のフーリエ変換で求まる。その波動光学的強度分布は波動光学的振幅分布を2乗して得られるが、その波動光学的振幅分布は射出瞳における瞳関数のフーリエ変換から求まる。
さらにその瞳関数はまさに射出瞳位置における波面情報(波面収差)そのものからであることから、その光学系210を通して波面収差が厳密に数値計算できればMTFが計算できることになる。
【0102】
したがって、所定の手法によって射出瞳位置での波面情報に手を加えれば、任意に結像面におけるMTF値は変更可能である。
本実施形態においても、波面の形状変化を波面形成用光学素子で行うのが主であるが、まさにphase(位相、光線に沿った光路長)に増減を設けて目的の波面形成を行っている。
そして、目的の波面形成を行えば、射出瞳からの射出光束は、図9(A)〜(C)に示す幾何光学的なスポット像からわかるように、光線の密な部分と疎の部分から形成される。
この光束状態のMTFは空間周波数の低いところでは低い値を示し、空間周波数の高いところまでは何とか解像力は維持している特徴を示している。
すなわち、この低いMTF値(または、幾何光学的にはこのようなスポット像の状態)であれば、エリアジングの現象を発生させないことになる。
つまり、ローパスフィルタが必要ないのである。
そして、後段のDSP等からなる画像処理装置240でMTF値を低くしている原因のフレアー的画像を除去すれば良いのである。それによってMTF値は著しく向上する。
【0103】
次に、本実施形態および従来光学系のMTFのレスポンスについて考察する。
【0104】
図22は、従来の光学系の場合において物体が焦点位置にあるときと焦点位置から外れたときのMTFのレスポンス(応答)を示す図である。
図23は、光波面変調素子を有する本実施形態の光学系の場合において物体が焦点位置にあるときと焦点位置から外れたときのMTFのレスポンスを示す図である。
また、図24は、本実施形態に係る撮像装置のデータ復元後のMTFのレスポンスを示す図である。
【0105】
図からもわかるように、光波面変調素子を有する光学系の場合、物体が焦点位置から外れた場合でもMTFのレスポンスの変化が光波面変調素子を挿入してない光学系よりも少なくなる。
この光学系によって結像された画像を、コンボリューションフィルタによる処理によって、MTFのレスポンスが向上する。
【0106】
図23に示した、位相板を持つ光学系のOTFの絶対値(MTF)はナイキスト周波数において0.1以上であることが好ましい。
なぜなら、図24に示した復元後のOTFを達成するためには復元フィルタでゲインを上げることになるが、センサのノイズも同時に上げることになる。そのため、ナイキスト周波数付近の高周波ではできるたけゲインを上げずに復元を行うことが好ましい。
通常の光学系の場合、ナイキスト周波数でのMTFが0.1以上あれば解像する。
したがって、復元前のMTFが0.1以上あれば復元フィルタでナイキスト周波数でのゲインを上げずに済む。復元前のMTFが0.1未満であると、復元画像がノイズの影響を大きく受けた画像になるため好ましくない。
【0107】
次に、画像処理装置240のボケ画像復元処理について説明する。
図25は、一般的な光学系のベストフォーカス(BestForcus)位置でのMTF(Modulation Transfer Function:振幅伝達関数)特性図である。
図26は、本実施形態の光学系のMTF特性を示す図である。
【0108】
本実施形態の光学系210を通過して撮像素子220で得られた撮像画像はボケているため中域〜高域にかけてMTFが低下している。このMTFを演算によって上昇させる。レンズ単体の振幅特性であるMTFに対し、画像処理を含めたトータルの振幅特性はSFR(Spatial Frequency Response)と呼ばれている。
ボケ画像を発生させるPSFの周波数特性がMTFであるので、これから所望のSFR特性まで引き上げるゲイン特性に設計してできたものがボケ復元フィルタである。どの程度のゲインにするかはノイズや偽像とのバランスで決めていく。
【0109】
このボケ復元フィルタを元画像にデジタルフィルタリングする方法は、画像をフーリエ変換し周波数領域でフィルタと周波数毎に積を取る方法と、空間領域でコンボリューション(Convolution)演算(畳み込み演算)を行なう方法がある。ここでは後者での実現方法を説明する。コンボリューション演算は下記の式で表される。
【0110】
【数7】

【0111】
ただし、fはフィルタ(filter)カーネルを示している(ここでは計算を容易にするために180度回転済みのものを使用している)。
また、Aは元画像、Bはフィルタリングされた画像(ボケ復元画像)を示している。
この式から分かる通り、fを画像に重ねて各タップ同士の積和した結果をその重ねた中心座標の値とすることである。
【0112】
次に、図27(A)〜(C)に関連付けて3*3のフィルタを例に挙げ具体的に説明する。
図27(A)の復元フィルタ(既に180度回転済み)を図27(B)に示すボケ画像のA(i,j)上にフィルタの中心f(0,0)を重ね、各タップ同士の積をとりこの9個の総和値を図27(C)に示すボケ復元画像のB(i,j)とする。
(i,j)を画像全体に渡ってスキャンすると新たなB画像が生成される。これがデジタルフィルタである。ここではフィルタがボケ復元目的であるので、この処理を行なうことでボケ復元処理を実施することができる。
【0113】
次に、画像処理装置240の構成および処理について説明する。
図28は、本実施形態に係る画像処理装置の構成例を示すブロック図である。
【0114】
画像処理装置240は、図28に示すように、生(RAW)バッファメモリ241、コンボリューション演算器242、記憶手段としてのカーネルデータ格納ROM243、およびコンボリューション制御部244を有する。
【0115】
コンボリューション制御部244は、コンボリューション処理のオンオフ、画面サイズ、カーネルデータの入れ替え等の制御を行い、制御装置250により制御される。
【0116】
また、カーネルデータ格納ROM243には、図29および図30に示すように予め用意されたそれぞれの光学系のPSFにより算出されたコンボリューション用のカーネルデータが格納されており、制御装置250によって情報コードおよび、または物体距離情報を取得し、コンボリューション制御部244を通じてカーネルデータを選択制御する。
【0117】
図29の例では、カーネルデータAは光学倍率(×1.5)、カーネルデータBは光学倍率(×5)、カーネルデータCは光学倍率(×10)に対応したデータとなっている。
【0118】
また、図30の例では、カーネルデータAは物体距離情報が100mm、カーネルデータBは物体距離が500mm、カーネルデータCは物体距離が4mに対応したデータとなっている。
【0119】
図31は、制御装置250の情報コードにより切り替え処理のフローチャートである。
まず、情報コードの種類(特性)が取得されコンボリューション制御部244に供給される(ST101)。
コンボリューション制御部244においては、供給された情報から、カーネルサイズ、数値演係数がレジスタにセットされる(ST102)。
そして、撮像素子220で撮像され、二次元コンボリューション演算部242に入力された画像データに対して、レジスタに格納されたデータに基づいてコンボリューション演算が行われ、演算され変換されたデータが制御粗プチ250に転送される(ST103)。
なお、本実施形態では、情報コードの種類に重点をおいたフローチャートであり、特性(種類)としているが、特性としては情報コードの種類だけでなく、上述した距離情報等の情報コードの状態も含めて特性としてもよい。
【0120】
以下に画像処理装置240の信号処理部とカーネルデータ格納ROMについてさらに具体的な例について説明する。
【0121】
図32は、信号処理部とカーネルデータ格納ROMについての第1の構成例を示す図である。
図32の例は取得情報に応じたフィルタカーネルを予め用意した場合のブロック図である。
【0122】
情報コードの種類(特性)を取得し、コンボリューション制御部244を通じてカーネルデータを選択制御する。2次元コンボリューション演算部242においては、カーネルデータを用いてコンボリューション処理を施す。
【0123】
図33は、信号処理部とカーネルデータ格納ROMについての第2の構成例を示す図である。
図33の例は、信号処理部の最初にノイズ低減フィルタ処理のステップを有し、フィルタカーネルデータとして露出情報に応じたノイズ低減フィルタ処理ST1を予め用意した場合のブロック図である。
【0124】
情報コードの種類(特性)を取得し、コンボリューション制御部244を通じてカーネルデータを選択制御する。
2次元コンボリューション演算部242においては、前記ノイズ低減フィルタST1を施した後、カラーコンバージョン処理ST2によって色空間を変換、その後カーネルデータを用いてコンボリューション処理ST3を施す。
再度ノイズ処理ST4を行い、カラーコンバージョン処理ST5によって元の色空間に戻す。カラーコンバージョン処理は、たとえばYCbCr変換が挙げられるが、他の変換でも構わない。
なお、再度のノイズ処理ST4は省略することも可能である。
【0125】
図34は、信号処理部とカーネルデータ格納ROMについての第3の構成例を示す図である。
図34の例は、露出情報に応じたOTF復元フィルタを予め用意した場合のブロック図である。
【0126】
情報コードの種類(特性)を取得し、コンボリューション制御部244を通じてカーネルデータを選択制御する。
2次元コンボリューション演算部242は、ノイズ低減処理ST11、カラーコンバージョン処理ST12の後に、前記OTF復元フィルタを用いてコンボリューション処理ST13を施す。
再度ノイズ処理ST14を行い、カラーコンバージョン処理ST15によって元の色空間に戻す。カラーコンバージョン処理は、たとえばYCbCr変換が挙げられるが、他の変換でも構わない。
なお、ノイズ低減処理ST11、ST14は、いずれか一方のみでもよい。
【0127】
図35は、信号処理部とカーネルデータ格納ROMについての第4の構成例を示す図である。なお、簡単化のためにAFE等は省略している。
図35の例は、ノイズ低減フィルタ処理のステップを有し、フィルタカーネルデータとして露出情報に応じたノイズ低減フィルタを予め用意した場合のブロック図である。
なお、再度のノイズ処理ST4は省略することも可能である。
情報コードの種類(特性)を取得し、コンボリューション制御部244を通じてカーネルデータを選択制御する。
2次元コンボリューション演算部242においては、ノイズ低減フィルタ処理ST21を施した後、カラーコンバージョン処理ST22によって色空間を変換、その後カーネルデータを用いてコンボリューション処理ST23を施す。
再度、露出情報に応じたノイズ処理ST24を行い、カラーコンバージョン処理ST25によって元の色空間に戻す。カラーコンバージョン処理は、たとえばYCbCr変換が挙げられるが、他の変換でも構わない。
なお、ノイズ低減処理ST21は省略することも可能である。
【0128】
以上は情報コードの種類(特性)情報に応じて2次元コンボリューション演算部142においてフィルタ処理を行う例を説明したが、たとえば情報コードおよび被写体距離情報により、より適した演算係数の抽出、あるいは演算を行うことが可能となる。
【0129】
図36は、被写体距離情報と情報コードの種類(特性)情報とを組み合わせる画像処理装置の構成例を示す図である。
図36は、撮像素子220からの被写体分散画像信号より分散のない画像信号を生成するが画像処理装置240Aの構成例を示している。
【0130】
画像処理装置240Aは、図36に示すように、コンボリューション装置2401、カーネル・数値演算係数格納レジスタ2402、および画像処理演算プロセッサ2403を有する。
【0131】
この画像処理装置240Aにおいては、物体概略距離情報検出装置400から読み出した被写体の物体距離の概略距離に関する情報および露出情報を得た画像処理演算プロセッサ2403では、その物体離位置に対して適正な演算で用いる、カーネルサイズやその演算係数をカーネル、数値算係数格納レジスタ2402に格納し、その値を用いて演算するコンボリューション装置2401にて適正な演算を行い、画像を復元する。
【0132】
上述のように、光波面変調素子としての位相板(Wavefront Coding optical element)を備えた撮像装置の場合、所定の焦点距離範囲内であればその範囲内に関し画像処理によって適正な収差のない画像信号を生成できるが、所定の焦点距離範囲外の場合には、画像処理の補正に限度があるため、前記範囲外の被写体のみ収差のある画像信号となってしまう。
また一方、所定の狭い範囲内に収差が生じない画像処理を施すことにより、所定の狭い範囲外の画像にぼけ味を出すことも可能になる。
本例においては、主被写体までの距離を、距離検出センサを含む物体概略距離情報検出装置400により検出し、検出した距離に応じて異なる画像補正の処理を行うことにように構成されている。
【0133】
上記の画像処理はコンボリューション演算により行うが、これを実現するには、たとえばコンボリューション演算の演算係数を共通で1種類記憶しておき、焦点距離に応じて補正係数を予め記憶しておき、この補正係数を用いて演算係数を補正し、補正した演算係数で適性なコンボリューション演算を行う構成をとることができる。
この構成の他にも、以下の構成を採用することが可能である。
【0134】
焦点距離に応じて、カーネルサイズやコンボリューションの演算係数自体を予め記憶しておき、これら記憶したカーネルサイズや演算係数でコンボリューション演算を行う構成、焦点距離に応じた演算係数を関数として予め記憶しておき、焦点距離によりこの関数より演算係数を求め、計算した演算係数でコンボリューション演算を行う構成等、を採用することが可能である。
【0135】
図36の構成に対応付けると次のような構成をとることができる。
【0136】
変換係数記憶手段としてのレジスタ2402に被写体距離に応じて少なくとも位相板213aに起因する収差に対応した変換係数を少なくとも2以上予め記憶する。画像処理演算プロセッサ2403が、被写体距離情報生成手段としての物体概略距離情報検出装置400により生成された情報に基づき、レジスタ2402から被写体までの距離に応じた変換係数を選択する係数選択手段として機能する。
そして、変換手段としてのコンボリューション装置2401が、係数選択手段としての画像処理演算プロセッサ2403で選択された変換係数によって、画像信号の変換を行う。
【0137】
または、前述したように、変換係数演算手段としての画像処理演算プロセッサ2403が、被写体距離情報生成手段としての物体概略距離情報検出装置400により生成された情報に基づき変換係数を演算し、レジスタ2402に格納する。
そして、変換手段としてのコンボリューション装置2401が、変換係数演算手段としての画像処理演算プロセッサ2403で得られレジスタ2402に格納された変換係数によって、画像信号の変換を行う。
【0138】
なお、上述のように、光波面変調素子としての位相板を備えた撮像装置の場合、所定の焦点距離範囲内であればその範囲内に関し画像処理によって適正な収差のない画像信号を生成できるが、所定の焦点距離範囲外の場合には、画像処理の補正に限度があるため、前記範囲外の被写体のみ収差のある画像信号となってしまう。
また一方、所定の狭い範囲内に収差が生じない画像処理を施すことにより、所定の狭い範囲外の画像にぼけ味を出すことも可能になる。
【0139】
以上説明したように、本実施形態によれば、1次画像を形成する光波面変調素子を含む光学系210および撮像素子220と、1次画像を高精細な最終画像に形成する画像処理装置240と、読み込んだ情報コードの特性(種類)を判断してそれに合わせ光波面変調素子の配置位置から最適な状態に回転制御を行い、また、一つの光波面変調素子に対し複数の復元用フィルタを用い、情報コードの種類に対応した復元フィルタに切り換えるように制御する制御装置250と、を有することから、特性の異なる情報コードを読み取る場合であっても良好な復元画像を得ることができ、実用に即した情報コード読取装置を実現することができる利点がある。
たとえば、読み取った情報コードがJANコードのような1次元のバーコードである場合には、2方向(縦方向と横方向)の要素であることから、その方向に合わせた回転制御を行って最適なPSFの出力信号を用いれば一つの光波面変調素子ですべての情報コードに対応してより復元後の品質が向上できる。併せて、被写界深度の調整も可能になる。
すなわち、読み取った情報コードがJANコードのような1次元のバーコードである場合には、2方向(縦方向と横方向)の復元に重点をおき、QRコードのような2次元のコードである場合は、斜め方向の復元に重点をおいた復元を行うことにより、情報コードに対応して、より復元後の品質が向上できる。
【0140】
また、2次元の情報コードの場合の光学系210と撮像素子220の取り付け位置は、光学系を通過した中心において回転非対称で頂部を有する点像強度分布(PSF)に係る出力信号が、PSFの頂部に対向する縁部において、直線的に配列される複数の画素にまで入力するように設定されていることから、撮像素子220と光波面変調素子としての位相変調素子(位相板)213aを復元に適した配置することができ、公差の緩い深度拡張光学系を実現できる。
その結果、復元画が良好となるようなボカシを実現でき、適切な画質の、ノイズの影響が小さく、良好な復元画像を得ることができる利点がある。
また、光学系を簡単化でき、コスト低減を図ることができ、しかも適切な画質の、ノイズの影響が小さい復元画像を得ることができる利点がある。
また、コンボリューション演算時に用いるカーネルサイズやその数値演算で用いられる係数を可変とし、操作部等の入力により知り、適性となるカーネルサイズや上述した係数を対応させることにより、倍率やデフォーカス範囲を気にすることなくレンズ設計ができ、かつ精度の高いコンボリュ−ションによる画像復元が可能となる利点がある。
【0141】
また、本実施形態においては、結像レンズ212による撮像素子220の受光面への結像の波面を変形させる波面形成用光学素子を有する撮像レンズ系と、撮像素子220による1次画像FIMを受けて、1次画像の空間周波数におけるMTFをいわゆる持ち上げる所定の補正処理等を施して高精細な最終画像FNLIMを形成する画像処理装置240とを有することから、高精細な画質を得ることが可能となるという利点がある。
また、光学系210の構成を簡単化でき、製造が容易となり、コスト低減を図ることができる。
【0142】
ところで、CCDやCMOSセンサを撮像素子として用いた場合、画素ピッチから決まる解像力限界が存在し、光学系の解像力がその限界解像力以上であるとエリアジングのような現象が発生し、最終画像に悪影響を及ぼすことは周知の事実である。
画質向上のため、可能な限りコントラストを上げることが望ましいが、そのことは高性能なレンズ系を必要とする。
【0143】
しかし、上述したように、CCDやCMOSセンサを撮像素子として用いた場合、エリアジングが発生する。
現在、エリアジングの発生を避けるため、撮像レンズ装置では、一軸結晶系からなるローパスフィルタを併用し、エリアジングの現象の発生を避けている。
このようにローパスフィルタを併用することは、原理的に正しいが、ローパスフィルタそのものが結晶でできているため、高価であり、管理が大変である。また、光学系に使用することは光学系をより複雑にしているという不利益がある。
【0144】
以上のように、時代の趨勢でますます高精細の画質が求められているにもかかわらず、高精細な画像を形成するためには、従来の撮像レンズ装置では光学系を複雑にしなければならない。複雑にすれば、製造が困難になったりし、また高価なローパスフィルタを利用したりするとコストアップにつながる。
しかし、本実施形態によれば、ローパスフィルタを用いなくとも、エリアジングの現象の発生を避けることができ、高精細な画質を得ることができる。
【0145】
なお、本実施形態において、光学系の波面形成用光学素子を絞りより物体側レンズよりに配置した例を示したが、絞りと同一あるいは絞りより結像レンズ側に配置しても前記と同様の作用効果を得ることができる。
【0146】
なお、上述した実施形態においては、読み込んだ情報コードの特性(種類)を判断してそれに合わせ光波面変調素子の配置位置から最適な状態に回転制御を行い、また、一つの光波面変調素子に対し複数の復元用フィルタを用い、情報コードの種類に対応した復元フィルタに切り換えるように制御するように構成したが、本発明はこれに限定されるものではい。
たとえば、特性の異なる複数の光波面変調素子と複数の復元用フィルタを、情報コードおよび、または物体距離情報に応じて選択切換部230により最適な状態に切り換えるように構成することも可能である。この場合も、特性の異なる情報コードを読み取る場合であっても良好な復元画像を得ることができる。
【0147】
図37および図38は、複数の光波面変調素子を用いる場合の選択切換部の構成例を示す図である。
【0148】
図37の選択切換部230Bは、変調特性の異なる複数(本例では3または4)の位相板213a−1〜213a−4を、回転中心を持った回転可動な部品231Bに同心円上の軌跡に沿って配置し、部品231Bの縁部とモータ232Bの回転軸に取り付けた歯車233Bと噛合させて、制御装置250の制御信号CTL1に応じて、所望の位相板213a−1(〜−4)を光軸中心AXを含む光路に挿入(位置させ)あるいは退避させる。これにより、撮影情報に応じて光波面変調を実現している。
【0149】
図38の選択切換部230Cは、変調特性の異なる複数(本例では1または2)の位相板213a−1,213a−2を、板状の部品234に光軸中心と直交する方向に並列に配置し、同心円上の軌跡に沿って配置し、部品234の一縁部とモータ235の回転軸に取り付けた歯車236と噛合させて、制御装置250の制御信号CTL1に応じて、所望の位相板213a−1(,−2)を光軸中心AXを含む光路に挿入(位置させ)あるいは退避させる。これにより、撮影情報に応じて光波面変調を実現している。
【0150】
なお、図37および図38の例では、部品231B,234の位相板の配置位置すべてに位相板を配置しているが、たとえば、位相板を配置しない部分を設け、情報に応じて光波面変調を施さないで撮像素子220に入射させるように構成することも可能である。
このような構成を採用すると、絞りを所定値以上(図18では0.5λ以下)絞った場合は、位相面の影響を受けないため、位相板を配置する必要が無い状態でも良い場合には位相板を退避させておくことができる。
【0151】
また、単純にひとつの位相板等の光波面変調素子を光路に挿入あるいは退避させて、光路に光波面変調素子を配置するあるいは光波面変調処理を施さないように構成することも可能である。
さらに、ひとつの位相板当の光波面変調素子を光路上に固定させ、別の位相板等の光波面変調素子を光路に挿入あるいは退避させるように構成することも可能である。
【0152】
以上、制御の簡易性やスペースの有効性の高いと考えられる複数の位相板を一部品化したもののみを例示したが、一部品に構成せず各々複数個の光波面変調素子(位相板等)を出し入れする方法も採用することも可能である。
【0153】
なお、図4の光学系は一例であり、本発明は図4の光学系に対して用いられるものとは限らない。また、スポット形状についても図5および図6は一例であり、本実施形態のスポット形状は、図5および図6に示すものとは限らない。
また、図29、および図30のカーネルデータ格納ROMに関しても、光学倍率、Fナンバやそれぞれのカーネルのサイズ、値に対して用いられるものとは限らない。また用意するカーネルデータの数についても3個とは限らない。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】本発明の実施形態に係る情報コード読取装置の一例を示す外観図である。
【図2】情報コードを例を示す図である。
【図3】図1の情報コード読取装置に適用される撮像装置の構成例を示すブロックである。
【図4】本実施形態に係る光学系の構成例を模式的に示す図である。
【図5】広角側の像高中心のスポット形状を示す図である。
【図6】望遠側の像高中心のスポット形状を示す図である。
【図7】本実施形態に係る選択切換部の構成例を示す図である。
【図8】DEOSの原理を説明するための図である。
【図9】本実施形態に係る撮像素子の受光面でのスポット像を示す図であって、(A)は焦点が0.2mmずれた場合(Defocus=0.2mm)、(B)が合焦点の場合(Best focus)、(C)が焦点が−0.2mmずれた場合(Defocus=−0.2mm)の各スポット像を示す図である。
【図10】本実施形態に係る撮像素子により形成される1次画像のMTFについて説明するための図であって、(A)は撮像レンズ装置の撮像素子の受光面でのスポット像を示す図で、(B)が空間周波数に対するMTF特性を示している。
【図11】基準位置と所定角度回転後のアナログPSFを示す図である。
【図12】図11のアナログPSFのA/D変換後のデジタルPSFを示す図である。
【図13】図12のデジタルPSFのMTFを示す図である。
【図14】基準位置の場合のアナログPSFと、デジタルPSFを模式的に示す図である。
【図15】45度回転後のアナログPSFと、デジタルPSFを模式的に示す図である。
【図16】本実施形態に係る調整装置の構成例を示すブロック図である。
【図17】光学系と撮像素子の位置調整処理を説明するための図である。
【図18】本実施形態の光波面変調素子を含む光学系の光軸をz軸とし、互いに直交する2軸をx、yとしたとき、式で表される波面収差の形状を示す図である。
【図19】波面収差の形状と0.5λ以下の範囲を太線で表した図である。
【図20】本実施形態に係る画像処理装置におけるMTF補正処理を説明するための図である。
【図21】本実施形態に係る画像処理装置におけるMTF補正処理を具体的に説明するための図である。
【図22】従来の光学系の場合において物体が焦点位置にあるときと焦点位置から外れたときのMTFのレスポンス(応答)を示す図である。
【図23】光波面変調素子を有する本実施形態の光学系の場合において物体が焦点位置にあるときと焦点位置から外れたときのMTFのレスポンスを示す図である。
【図24】本実施形態に係る撮像装置のデータ復元後のMTFのレスポンスを示す図である。
【図25】一般的な光学系のベストフォーカス(BestForcus)位置でのMTF(Modulation Transfer Function 振幅伝達関数)特性図である。
【図26】本実施形態の光学系のMTF特性を示す図である。
【図27】本実施形態におけるボケ復元処理の説明図である。
【図28】本実施形態に係る画像処理装置の構成例を示すブロック図である。
【図29】カーネルデータROMの格納データの一例を示す図である。
【図30】カーネルデータROMの格納データの他例を示す図である。
【図31】情報コードの特性(種類)に応じた画像処理の概要を示すフローチャートである。
【図32】信号処理部とカーネルデータ格納ROMについての第1の構成例を示す図である。
【図33】信号処理部とカーネルデータ格納ROMについての第2の構成例を示す図である。
【図34】信号処理部とカーネルデータ格納ROMについての第3の構成例を示す図である。
【図35】信号処理部とカーネルデータ格納ROMについての第4の構成例を示す図である。
【図36】被写体距離情報と露出情報とを組み合わせる画像処理装置の構成例を示す図である。
【図37】複数の光波面変調素子を用いる場合の選択切換部の構成例を示す図である。
【図38】複数の光波面変調素子を用いる場合の選択切換部の他の構成例を示す図である。
【図39】一般的な撮像レンズ装置の構成および光束状態を模式的に示す図である。
【図40】図39の撮像レンズ装置の撮像素子の受光面でのスポット像を示す図であって、(A)は焦点が0.2mmずれた場合(Defocus=0.2mm)、(B)が合焦点の場合(Best focus)、(C)が焦点が−0.2mmずれた場合(Defocus=−0.2mm)の各スポット像を示す図である。
【符号の説明】
【0155】
100・・・情報コード読取装置、121・・・情報コード、200・・・撮像装置、210・・・光学系、220・・・撮像素子、230・・・選択切換部、240・・・画像処理装置、250・・・制御装置、211・・・物体側レンズ、212・・・結像レンズ、213・・・波面形成用光学素子、213a・・・位相板(光波面変調素子)、242・・・コンボリューション演算器、243・・・カーネルデータROM、244・・・コンボリューション制御部、300・・・調整装置、310・・・レンズ調整駆動部、311・・・小絞り、312・・・レンズ(光学系)、313・・・モータドライバ、320・・・センサ(撮像素子)、330・・・AFE(アナログフロントエンド部)、340・・・RAWバッファメモリ、350・・・画像信号処理部、360・・・調整制御部、370・・・画像表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心において回転非対称な点像強度分布(PSF)により形成され、光学的伝達関数(OTF)を変調させる光波面変調素子を含む光学系と、
前記光学系を通過した被写体である情報コードの像を撮像する撮像素子と、
前記撮像素子からの被写体の画像信号に対して所定の処理を施す画像処理部と、
前記撮像した情報コードの種類および状態のうちの少なくとも一方を判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に応じて、前記光学系を通過したPSFに係る出力信号が入力する画素数が異なるように前記光学系と前記撮像素子との相対的な位置関係を切り換える切換部と
を有する撮像装置。
【請求項2】
前記切換部は、前記光波面変調素子を前記光学系の光軸を中心に回転させる
請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記情報コードには、1次元的な情報を有する1次元コードと2次元的な情報を有する2次元コードを含み、
前記切換部は、1次元コードの場合より2次元コードの場合の方が前記光学系を通過したPSFに係る出力信号が入力する画素数が多くなるように切り換える
請求項1または2記載の撮像装置。
【請求項4】
前記PSFは頂部を有し、
前記切換部は、前記2次元コードの場合には、前記光学系を通過したPSFに係る出力信号が、前記PSFの頂部に対向する縁部において、直線的に配列される複数の画素にまで入力するように切り換える
請求項3記載の撮像装置。
【請求項5】
前記PSFは前記頂部を通る中心線を中心に左右対称である
請求項1から4にいずれか一に記載の記載の撮像装置。
【請求項6】
中心において回転非対称な点像強度分布(PSF)により形成され、光学的伝達関数(OTF)を変調させる光波面変調素子を交換可能に構成する光学系と、
前記光学系を通過した被写体である情報コードの像を撮像する撮像素子と、
前記撮像素子からの被写体の画像信号に対して所定の処理を施す画像処理部と、
前記撮像した情報コードの種類および状態のうちの少なくとも一方を判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に応じて、前記光波面変調素子を可変する切換部と
を有する撮像装置。
【請求項7】
前記画像処理部は、撮像素子からの被写体分散画像信号より分散のない画像信号を生成する
請求項1から6のいずれか一に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記光波面変調素子が、物体距離に応じたOTFの変化を、光波面変調素子を持たない光学系よりも小さくする作用を持つ
請求項1から7のいずれか一に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記光波面変調素子が、前記光学系の光軸をz軸とし、互いに直交する2軸をx、yとしたとき、位相が下記式で表される
請求項7または8記載の撮像装置。
【数1】

【請求項10】
前記光波面変調素子を有する光学系のOTFが、前記光波面変調素子を含まない光学系の被写界深度よりも広い物体距離にわたって、前記撮像素子のナイキスト周波数まで0.1以上である
請求項7から9のいずれか一に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記画像処理部は、ノイズ低減フィルタリングを施す手段を有する
請求項1から10のいずれか一に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記画像処理部の演算係数を格納する記憶手段を有し、
前記記憶手段には、情報コードの種類および状態のうちの少なくとも一に応じたノイズ低減処理のための演算係数が格納される
請求項1から11のいずれか一に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記画像処理部の演算係数を格納する記憶手段を有し、
前記記憶手段には、情報コードの種類および状態のうちの少なくとも一に応じた光学的伝達関数(OTF)復元のための演算係数が格納される
請求項1から12のいずれか一に記載の撮像装置。
【請求項14】
前記撮像装置は、
被写体までの距離に相当する情報を生成する被写体距離情報生成手段を含み、
前記画像処理部は、前記被写体距離情報生成手段により生成される情報に基づいて前記分散画像信号より分散のない画像信号を生成する
請求項7から13のいずれか一に記載の撮像装置。
【請求項15】
前記撮像装置は、
被写体距離に応じて少なくとも前記光波面変調素子または前記光学系に起因する分散に対応した変換係数を少なくとも2以上予め記憶する変換係数記憶手段と、
前記被写体距離情報生成手段により生成された情報に基づき、前記変換係数記憶手段から被写体までの距離に応じた変換係数を選択する係数選択手段と、を含み、
前記画像処理部は、前記係数選択手段で選択された変換係数によって、画像信号の変換を行う
請求項14記載の撮像装置。
【請求項16】
前記撮像装置は、
前記被写体距離情報生成手段により生成された情報に基づき変換係数を演算する変換係数演算手段を含み、
前記画像処理部は、前記変換係数演算手段から得られた変換係数によって、画像信号の変換を行う
請求項15載の撮像装置。
【請求項17】
前記撮像装置は、
被写体までの距離に相当する情報を生成する被写体距離情報生成手段と、
前記被写体距離情報生成手段により生成された情報に基づき変換係数を演算する変換係数演算手段と、を含み、
前記画像処理部は、前記変換係数演算手段から得られた変換係数によって、画像信号の変換を行い分散のない画像信号を生成する
請求項7から13のいずれか一に記載の撮像装置。
【請求項18】
前記変換係数演算手段は、前記被写体分散像のカーネルサイズを変数として含む
請求項17記載の撮像装置。
【請求項19】
前記変換係数演算手段は、求めた変換係数を前記記憶手段に格納し、
前記画像処理部は、前記記憶手段に格納された変換係数によって、画像信号の変換を行い分散のない画像信号を生成する
請求項17または18に記載の撮像装置。
【請求項20】
前記画像処理部は、前記変換係数に基づいてコンボリューション演算を行う
請求項18から19のいずれか一に記載の撮像装置。
【請求項21】
光学系と撮像素子の相対的な取り付け位置を回転して調整可能なように撮像装置を製造するための撮像装置の製造装置であって、
前記光学系を通過した中心において回転非対称な点像強度分布(PSF)PSFに係る出力信号が入力する画素数が異なるように前記光学系と前記撮像素子との相対的な位置関係を切り換え可能なように、基準位置への設定調整を行うための調整装置を有する
撮像装置の製造装置。
【請求項22】
交換可能な光変調素子を含む光学系と撮像素子の相対的な取り付け位置を回転して調整可能なように撮像装置を製造するための撮像装置の製造装置であって、
前記光学系を通過した中心において回転非対称な点像強度分布(PSF)PSFに係る出力信号が入力する画素数が異なるように前記光学系の光変調素子と前記撮像素子との相対的な位置関係、並びに光変調素子を切り換え可能なように、基準位置への設定調整を行うための調整装置を有する
撮像装置の製造装置。
【請求項23】
光学系と撮像素子の相対的な取り付け位置を回転して調整可能なように撮像装置を製造するための撮像装置の製造方法であって、
光学系と撮像素子を配置し、前記光学系を通過した中心において回転非対称な点像強度分布(PSF)PSFに係る出力信号が入力する画素数が基準数となる位置を第1の位置とする第1ステップと、
前記光学系を通過した前記PSFに係る出力信号が、当該PSFの頂部に対向する縁部において、直線的に配列される複数の画素にまで入力する位置を第2の位置とする第2ステップと、
前記第1の位置と前記第2の位置間で前記光波面変調素子を回転可能に形成する第3ステップと
を有する撮像装置の製造方法。
【請求項24】
交換可能な光変調素子を含む光学系と撮像素子の相対的な取り付け位置を回転して調整可能なように撮像装置を製造するための撮像装置の製造方法であって、
光学系と撮像素子を配置し、前記光学系を通過した中心において回転非対称な点像強度分布(PSF)PSFに係る出力信号が入力する画素数が基準数となる光変調素子を選択する第1ステップと、
前記光学系を通過した前記PSFに係る出力信号が、当該PSFの頂部に対向する縁部において、直線的に配列される複数の画素にまで入力する光変調素子を選択する第2ステップと、
前記選択した複数の光波面変調素子を交換可能に形成する第3ステップと
を有する撮像装置の製造方法。
【請求項25】
情報コードを光学的に読み取る情報コード読取装置であって、
中心において回転非対称な点像強度分布(PSF)により形成され、光学的伝達関数(OTF)を変調させる光波面変調素子を含む光学系と、
前記光学系を通過した被写体である情報コードの像を撮像する撮像素子と、
前記撮像素子からの被写体の画像信号に対して所定の処理を施す画像処理部と、
前記撮像した情報コードの種類および状態のうちの少なくとも一方を判定する判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に応じて、前記光学系を通過したPSFに係る出力信号が入力する画素数が異なるように前記光学系と前記撮像素子との相対的な位置関係を切り換える切換部と
を有する情報コード読取装置。
【請求項26】
情報コードを光学的に読み取る情報コード読取装置であって、
中心において回転非対称な点像強度分布(PSF)により形成され、光学的伝達関数(OTF)を変調させる光波面変調素子を交換可能な状態で構成する光学系と、
前記光学系を通過した被写体である情報コードの像を撮像する撮像素子と、
前記撮像素子からの被写体の画像信号に対して所定の処理を施す画像処理部と、
前記撮像した情報コードの種類および状態のうちの少なくとも一方を判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に応じて、前記光波面変調素子を可変する切換部と
を有する情報コード読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−167040(P2008−167040A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−352917(P2006−352917)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】