撮像装置、超音波アーク走査装置、及び超音波走査装置
本発明の実施形態は、液体の区画を分離する透過性および不透過性のバリアを備える画像システムの種々の態様に関する。前記区画の一方は撮像される対象を収容しており、他方は、超音波トランスデューサと、トランスデューサキャリッジとそのキャリッジを支持するガイドとの間における流体ベアリングと、キャリッジのためのリニアモーターと、キャリッジのための位置検出装置とを収容している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角膜および眼の天然水晶体のような生体物質の超音波撮像に関し、とりわけ、超音波アーク走査装置のための、走査ヘッド、トランスデューサ位置決め装置、およびアイピースのような構成部品に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波撮像は、例えば角膜のような、眼の構造の正確な測定に使用できることが分かっている。そのような測定は、眼科医に対して、眼科医が角膜上で行なわれる様々な外科的処置を導くために用いることができる有益な情報を提供する。外科的処置の主なものの一つは、屈折障害を治療するためのレーシック(LASIK)処置である。また、それらの測定は、レーシック瘢痕のような角膜の形状特徴の幾何学的位置を評定するために、手術が行なわれた後の診断情報を提供する。これは、外科医が、角膜が回復するにつれて、角膜の術後変化を評価し、発現し得る問題を解決する対策を講じることを可能にする。
【0003】
角膜の超音波撮像は、一般に他の種類の組織では遭遇しない問題を示す。角膜表面は、光線を焦点に集める光学的機能を行なうために、当然滑らかであり、球状に形成されている。角膜の構造は滑らかで規則的であるので、超音波エネルギーは特定方向にのみ反射される。具体的には、トランスデューサからの超音波ビームは、そのビームが角膜表面に直交するように整合されている場合、単にそのトランスデューサに直接反射されるであろう。この種の反射特性は鏡面反射(正反射)と呼ばれる。
【0004】
角膜表面の鏡面反射特性のために、部分的な像が形成されるべき各位置においてトランスデューサを角膜と整合させるためには、特別な注意を払う必要があることが認識されるであろう。角膜の大部分の超音波撮像は、常に角膜の曲率中心に向かって指向されるビームを提供するように、トランスデューサの整合を絶えず調節しながら、角膜表面に沿ってトランスデューサを走査させることによって行うことができる。
【0005】
角膜の撮像および角膜寸法の測定は、トランスデューサの走査運動が滑らかであり、かつ精密に整合されていることを必要とする。円形路からのトランスデューサ位置の逸脱または曲率中心からのビームの方向の逸脱は、5マイクロメートル程度であっても、結果として生じる画像を著しく劣化させ得る。必要とされる走査の整合を行なうための機構は、特許文献1および2に記載されている。前記特許文献は、参照によって本願に援用される。非特許文献1は、眼の超音波撮像の優れた歴史的および技術的概要を包含しており、この参照により本願に援用される。
【0006】
超音波撮像は眼科医によってレーザー屈折矯正手術の定量分析に用いられ得るが、超音波撮像はまた、角膜および有水晶体レンズの移植、眼内レンズの埋め込み、および緑内障および白内障治療のような特殊処置にも用いられ得る。
【0007】
オンアクシス測定を除いて、虹彩の背後の眼の構成要素の寸法は光学的方法によって測定することができない。調節可能レンズの移植のような新規の処置は、眼鏡またはコンタクトレンズなしで、ほとんど完璧な視力を提供し得る。調整可能レンズの移植は、例えば、好結果のレンズ移植のために、水晶体の幅の精密な測定を必要とする。超音波撮像は、特に、水晶体の必要とされる正確な画像を提供するために用いることができる。水晶体は、かなり軸外であり、かつ虹彩の後方に位置する毛様体筋に結合しており、よって光学的撮像を使用できない。
【0008】
超音波撮像は、撮像中の対象物とトランスデューサとの間に挟まれる液体媒体を必要とし、これは、次に、眼、トランスデューサおよびそれらの間の経路が常に液体媒体中に浸漬されていることを必要とすることが認識されるに違いない。角膜の安全に対する懸念は、液体媒体は純水または通常の生理食塩水溶液のいずれかであるという実用的要求を生じる。いずれの場合も、その機構全体または大部分は長期間にわたって水中に沈められなければならない。
【0009】
ジャーナルベアリング、ボールベアリングまたはローラーベアリングのようなトランスデューサの運動を案内および制御するための従来の機構部品は、水中作動には不適当である。ベアリング部品上には必然的に被膜が形成され、それらの部品の滑らかな動作を妨げる。たとえ、眼が、薄い超音波透過性バリアによって液体の本体から分離されるとしても、防汚溶液は患者の眼に対して容認できない損傷の危険を招くので、防汚溶液を水に添加することはできない。バリアフィルムを介した漏れ、またはバリアフィルムの偶発的な穿孔による漏れの可能性は、実用的な臨床装置において常に存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,491,637号明細書
【特許文献2】米国特許第5,331,962号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】コールマン(Coleman)外著、「眼と眼窩の超音波検査法(Ultrasonography of the Eye and Orbit)」、(米国)、第2版、リッピンコット・ウィリアムズ・アンド・ウィルキンス社(Lippincott Williams & Wilkins)、2006年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、用途の広い走査ヘッドおよびトランスデューサ位置決め装置、耐水性アーク走査モーター、正確なトランスデューサ位置探知方法、滑らかな走査動作を提供し得る流体ベアリング方法、使い捨てのアイピースの必要性が依然として存在する。それらの全ては眼科および検眼の用途のために精密な撮像を提供することができる、改善された超音波アーク走査装置に必要である。
【0013】
これらおよび他の要求は本発明によって対処される。本発明の様々な実施形態および構成は、概して、眼の角膜および水晶体のような生体物質の超音波撮像に関し、特に、走査ヘッド位置決め装置、耐水性アーク走査モーター、流体ベアリングおよびアイピースのような超音波アーク走査装置のための構成部品に関する。前記構成部品の全ては、超音波のアーク走査装置の正確さ、精密さ、および使い易さを改善する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一実施形態では、小型走査ヘッド位置決め装置が開示される。この装置の機能は、トランスデューサヘッドが、所望の位置でセントレーションされた(centrated)アークガイドに連続的に従うように、アーク走査アセンブリおよび超音波トランスデューサを位置決めすることである。アークガイドは、概ね走査されるべき眼の構成要素の曲率半径である曲率半径を有する。好結果の走査は、多くの場合、アークアセンブリの曲率中心が、対象となる眼の構成要素の曲率中心とほぼ一致すること、および、走査ヘッド位置決め装置が、高周波超音波パルスの精度を生かすために、良好に位置決めされていることを必要とする。走査ヘッド位置決め装置の一部は周囲空気中に設置される。一方、アーク走査ヘッドを備えた走査ヘッド位置決め装置の第2部分は、作動時、水で充填されたチャンバ内に設置される。したがって、走査ヘッド位置決め装置は、走査される患者の眼の構成要素に対するアーク走査ヘッドの所望の配置を行うために必要な距離および角度にわたって機能する並進シールおよび回転シールの双方を有さなければならない。
【0015】
別の実施形態では、流体ベアリング機構が開示される。ベアリングの機能は、上述した走査ヘッド位置決め装置によって配置されたアークガイドに沿ってトランスデューサキャリッジアセンブリの滑らかな動作を可能にすることである。好結果の走査は、通常、高周波超音波パルスの精度を生かすために、トランスデューサアセンブリがアークガイドに沿って滑らかに移動することを必要とする。
【0016】
一構成において、流体ベアリング機構は、一つ以上の弓状ガイドにある多数の流体流路によって定義される。液体は加圧されて、液体流路を通って流れ、ガイドアセンブリとキャリッジとの間の選択された界面に沿って流体膜を形成する。選択された界面におけるガイドとキャリッジとの間の距離は、加圧液体の不在下よりも大きい。
【0017】
さらに別の実施形態では、水中で安全に作動することができるモーターが開示される。モーターの機能は、眼の構成要素の超音波走査がなされることを可能にするように、通常は固定されているアークガイドに沿ってトランスデューサキャリッジアセンブリを素早く前後に移動させることである。
【0018】
一構成において、モーターは、キャリッジおよびガイドのうちの一方に位置する一つ以上の磁石と、キャリッジおよびガイドの他方に位置する一つ以上の電気コイルに包囲された鉄含有コアとを備える。好ましい実施において、第1磁石および第2磁石がキャリッジ内に位置し、電気コイルおよび鉄含有コアはガイド軌道内に位置する。第1磁石および第2磁石は、互いに対向するN−S極性を有して、隣り合わせに配置されている。電気コイルの長寸側(long dimension)は、推進力を実質的に最大にするように磁石の面に隣接している。特に好ましい実施において、キャリッジの質量は約0.1kg〜約0.3kgにわたる。電気コイルは多数のコイルセグメントによって形成され、多数のコイルセグメントのサブセットのうちの各々は、電気回路によって選択的に、かつ独立して電力を供給されている。コイルセグメントのサブセットにおける電流と、第1磁石および第2磁石の局所磁場B(local B-fields)とによってもたらされる力は共通の方向にある。
【0019】
別の実施形態では、キャリッジ位置検出装置はガイドアセンブリに対するキャリッジの位置を判定するために提供される。検出装置は多数の構成を有し得る。一構成において、位置検出装置は、キャリッジ上に取り付けられた位置エンコーダーを備える。エンコーダーは、ガイド軌道の長手方向の一部に沿って配置された磁気ストリップを読み取ることにより、キャリッジの位置を検出する。別の構成において、位置検出装置は、キャリッジ上に取り付けられた光学エンコーダーを備える。光学エンコーダーは、光によってガイド軌道の長手方向の一部を照明し、光の屈折、回折、拡散、および反射の分布のうちの一つ以上を検出することにより、キャリッジの位置を検出する。例えば、エンコーダーは、アークガイドの長手方向の一部に沿って配置されたバーコードを照明することができる。バーコードは、一定長のガイドに沿って任意の位置で反射光の特有の分布を生成するであろう。別の構成において、位置検出装置は磁場センサーを備える。検出された磁場は、ガイドに沿った位置に関連する。さらに別の構成では、位置検出装置は機械的計数器を備える。機械的計数器は、寸法単位およびガイドに沿った位置に関連する計数を生成する。
【0020】
キャリッジの位置を時間の関数として知ることは、利点を提供し得る。一つ以上の磁石および電気コイルセグメントに包囲された鉄含有コアを有するキャリッジモーターにおいて、制御装置は、選択された時点で、例えば、キャリッジの検出された位置に近接した電気コイルセグメントに選択的に通電することができる。制御装置は、これに加えて、またはこれに代わって、選択した時点において、検出されたキャリッジの位置に応答して、トランスデューサに選択的にエネルギーを与えて、超音波パルスの、非一様な、所望の物理的間隔を生じる。位置の追跡は、キャリッジがガイドに沿った非一様な速度や加速度を有する場合に、特に有用である。簡潔にいえば、前記検出装置は、アークガイドアセンブリに沿ったトランスデューサキャリッジの精密な位置を提供することができる。これは、今度は精密で正確な超音波の走査がなされることを可能にする。
【0021】
さらに別の実施形態では、アイピースの3つの構成が開示される。これらはすべて、超音波走査のための音響経路を提供し、患者の眼が浸漬されている水を、位置決めおよびアークガイドアセンブリが収容されているチャンバ内の水から分離する。これらの構成は、漏れ問題に悩まされることが比較的なく、患者にとって快適であり、またアイピースは新規の患者毎に交換されるべきであるので、低コストに製造することができる。異なる構成は異なる取り付け機構および封止機構を組み入れている。
【0022】
例として、撮像装置の第1構成は、
(a)患者の眼を受容するためのアイピースと、
(b)超音波トランスデューサに接触した第1液体チャンバと、
(c)超音波トランスデューサによって撮像される患者の眼に接触する第2液体チャンバと、
(d)第1チャンバと第2液体チャンバとを分離するバリアとを備え、
(D1)第2液体チャンバは、第1液体チャンバから液体を排出するための排出ポートを備えること、及び
(D2)前記バリアは液体に対して透過性であるが、選択された生物学的微生物に対しては不透過性であり、前記微生物はバクテリア、ウイルスおよび菌類のうちから選択されることのうちの少なくとも一方が当てはまる。
【0023】
別の実施形態において、撮像装置の第2構成は、別個のフェイスシールリングを有するアイピースを備える。フェイスシールリングは、より良好に患者の顔面に沿うように、液体で充填されている。以下の定義が本願に用いられる。
【0024】
A−スキャンは、時間の関数として超音波トランスデューサによって発せられる超音波パルスの反射振幅の表示である。
老眼用レンズまたはプレスビーレンズとして知られている調整可能レンズは、毛様体筋の収縮に応答して焦点距離を変化させる眼内レンズインプラントである。成功裡に埋め込まれた場合、調整可能レンズは老視、すなわち、遠くから近くへの焦点距離を変化させる眼の能力の低下を回復させる。
【0025】
整合とは、トランスデューサおよびトランスデューサキャリッジガイドを、関心がある眼の構成要素の形状特徴(角膜、レンズ、網膜、その他の曲率中心または境界など)に対して、空間的に、好ましくは正確に、かつ再現可能に、配置することを意味する。前房は、眼の前面から虹彩までの眼の領域を含む。
【0026】
前部は、眼の前面からちょうど水晶体の裏面を越えた眼の領域を含む。
アークスキャナは、センサーが、絶えず中心点を通って指向されるそのビームによって走査される領域の中央を中心としたほぼ正確な弧上を移動する走査装置である。
【0027】
アーク走査トランスデューサの曲率中心は、アーク走査ガイドの曲率中心と同一である。
自動センタリング手段は、典型的にはコンピューター制御下で、アーク走査トランスデューサの関心がある眼の構成要素とのセントレーションを自動的に行う。
【0028】
B−スキャンは、音速を用いたA−スキャンデータを、Aスキャン振幅に対応するグレイスケールを用いた眼の像に変換することによるものとしての、データの表示である。
眼角は、上眼瞼と下眼瞼とが接するところのどちらかの眼の角の眼瞼の角をなす接合部である。
【0029】
セントレーションとは、アーク走査トランスデューサの曲率中心を、関心がある眼の構成要素(角膜、レンズ、網膜など)の曲率中心と、トランスデューサからの光線が双方の曲率中心を通過するように、空間的にほぼ整合させることを意味する。特別な場合は、双方の曲率中心が一致するときである。
【0030】
毛様体は、毛様体筋と毛様体突起とから構成される眼内部の周囲組織である。眼内には、3組の毛様体筋、すなわち縦走筋、放射筋、および環状筋が存在する。それらの筋は、水晶体の上方および下方の眼の前面の近くに位置する。それらはチン小帯と呼ばれる結合組織によって水晶体に付着されており、網膜に焦光するために水晶体を形作るのに関与する。毛様体筋が緩む場合、毛様体筋は水晶体を平らにし、一般により遠い対象に対する焦点を改善する。毛様体筋が収縮する場合、水晶体はより凸状になり、一般により接近した対象に対する焦点を改善する。
【0031】
固視とは、眼の光軸が光学的目標と既知の空間的関係にあるように、患者に眼の焦点を光学的目標に合わせさせることを意味する。固視において、弧の中心からいずれの方向への移動も、中心からいずれの方向に離れても等しく減少する信号強度を生じるように、最大信号強度を得るために、光源は、光源が弧の中心に位置する状態で、弧平面において軸線方向に整合される。
【0032】
ガイドとは、別の装置の動作を導くための装置である。ハプティックとは、いくつかの種類の人工レンズの外径から延びる、わずかに湾曲した毛髪状の突出部である。これらのハプティックは、毛様溝内に突出することにより、これらのレンズが毛様体筋に取り付けられ、そのレンズが毛様体筋の作用に応答して遠近調節を行うことを可能にする。
【0033】
眼内レンズとは、天然水晶体の代わりをするために眼内に埋め込まれる人工レンズである。
レーシックとは、近視、遠視および乱視のような屈折障害を治療するために角膜上で行なわれる処置である。一般に、角膜の外形を新しい形にするために、エキシマー・レーザーは、薄層皮弁の切断により角膜を露出させた後に、角膜の内側から組織を選択的に除去する。
【0034】
経線とは、眼の角膜または天然水晶体のような三次元構成要素の一部を通って切断する平面であり、その角度は眼角によって定義される水平線に対して示される。
天然水晶体(水晶体とも呼ばれる)は、角膜と共に、光を屈折させて網膜上に焦点を合わせるのを助ける、眼内の透明な両凸構造体である。水晶体は、形状を変化させることによって、眼の焦点距離を変化させるように機能し、その結果、水晶体は、様々な距離で対象に焦点を合わせることができ、それにより、関心対象のくっきりした実像が網膜上に形成されることが可能となる。水晶体のこの調節は遠近調節として知られている。水晶体は虹彩の背後の眼の前部に位置する。水晶体は、小帯線維によって適所に懸垂されており、小帯線維はその赤道線近傍で水晶体に付着して、水晶体を毛様体に接続している。水晶体は楕円両凸形状を有し、その大きさおよび形状は、遠近調節のため、および経年の成長のために変化し得る。水晶体は3つの主要部分、すなわち、水晶体嚢、水晶体上皮および水晶体線維からなる。水晶体嚢は、水晶体の最外層を形成し、水晶体線維は、水晶体の内部の大部分を形成する。水晶体嚢と水晶体線維の最外層との間に位置する水晶体上皮の細胞は、一般に水晶体の前部側にのみ見られる。
【0035】
「眼の〜」とは、眼または眼球と関係することを意味する。
眼科とは、眼に対処する医学の分科を意味する。
本願に用いられる光学的とは、光線を用いるプロセスを指す。
【0036】
眼の光軸とは、屈折面(角膜および水晶体の前面および後面)の曲率中心を結ぶ最良適合の線である。
パキメトリーまたは角膜パキメトリーとは、技術的には時間分域反射率測定超音波と呼ばれる。超音波エネルギーのパルスが角膜に送出され、返ってくるエコーの時間間隔は角膜の厚さに達するために使われる。
【0037】
有水晶体眼内レンズ、または有水晶体レンズとは、人の眼鏡またはコンタクトレンズの必要性を低減するために、眼内に恒久的に埋め込まれるプラスチック製またはシリコーン製のレンズである。有水晶体とは、眼の天然水晶体を除去せずに、レンズが眼内に埋め込まれるという事実を指している。有水晶体レンズの移植手術中、通常、眼の前面に小さな切開口が形成される。該切開口を介して有水晶体レンズが挿入され、そのレンズは虹彩のすぐ前またはすぐ背後に配置される。
【0038】
後眼房とは、虹彩の後部から水晶体の前面までの眼の領域を含む。
後上葉区は、水晶体の後部から、網膜および視神経を含む眼の裏面までの眼の領域を含む。
【0039】
老視とは、典型的には眼の内部の天然水晶体の弾性の喪失によって引き起こされる。これは老化過程の一部として生じ、老視は「治す」ことはできないが、眼鏡をかけることまたは人工レンズを埋め込むことにより、矯正することはできる。
【0040】
屈折は、眼の様々な構成要素による光線の集束に関係するものをすべて意味する。
レジストレーションとは整合させること意味する。
セクタースキャナはレーダーのような扇形区域(セクター)を掃引する超音波スキャナである。掃引領域は、典型的には超音波トランスデューサの表面の近くに位置する中心点を有するパイ形である。
【0041】
鏡面とは、光波または音響波を反射する鏡状の表面を意味する。例えば、トランスデューサから発出する超音波ビームは、該ビームを鏡面に直交して整合させた場合、単にそのトランスデューサに直接反射されるであろう。
【0042】
毛様体溝とは、虹彩と毛様体との間の溝である。強膜溝とは、強膜と角膜との合流地点にある軽微な溝である。
軌道とは、別の装置がそれに沿って移動する装置である。
【0043】
超音波とは、ヒトの耳の上限周波数よりも高い音を意味する。眼のような対象物の撮像のために用いられる場合、音は液体媒体を通過し、その周波数は、ヒト耳によって検知できるものよりも桁違いに大きい。眼における高解像度音響撮像については、周波数は、典型的には、約5〜約80MHzのおおよその範囲にある。
【0044】
眼の視軸は、関心対象と窩とを結ぶ線であり、その線は節点を通過する。
毛様小帯は、水晶体の外径付近から延びる張力をかけることができる靭帯である。毛様小帯は水晶体を毛様体に結合し、その毛様体は毛様体筋の作用に応じて水晶体が遠近の調節をすることを可能にする。
【0045】
本願に用いられる、「少なくとも一つ」、「一つ以上」および「少なくとも何れか一つ」は、作用において接続語および離接語の双方である制限がない表現である。例えば「A、BおよびCの少なくとも一つ」、「A、BまたはCの少なくとも一つ」、「A、BおよびCの一つ以上」、または「A、BまたはCの一つ以上」、および「A、B、およびCの少なくとも一つ」の表現の各々は、A単独、B単独、C単独、AおよびBともに、AおよびCともに、BおよびCともに、またはA、BおよびCともにということを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】ヒトの眼の主な要素の概略図。
【図2】超音波スキャナのための2つの異なる種類の走査方略を示す図。
【図3】アーク走査装置の概略図。
【図4】小型アーク走査ヘッド位置決め機構の等角図。
【図5】小型アーク走査ヘッド位置決め機構を示す図。
【図6】磁気測位システムを示す図。
【図7】固定アークアセンブリと可動トランスデューサアセンブリとの間で作用する流体ベアリングを示す図。
【図8】固定アークアセンブリに沿ってトランスデューサアセンブリを移動させるリニア誘導モーターの等角概略図。
【図9】アークガイド軌道に沿ってトランスデューサキャリッジを推進する電流および磁力の概略図。
【図10】アークスキャナのためのアイピースの実施形態を示す図。
【図11】アークスキャナのためのアイピースの代替の実施形態を示す図。
【図12】アークスキャナのためのアイピースの別の代替の実施形態を示す図。
【図13】図12のアイピースのための封止方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本願に記載する実施形態は、従来技術のアークスキャナに優れた設計を提供する。前記実施形態は、通常は、従来技術のアークスキャナよりも、水中環境に耐性を有する走査機構を開示する。特定の実施形態によれば、超音波トランスデューサは、円形に湾曲したガイドに沿って移動するトランスデューサキャリッジに取り付けられる。前記キャリッジは、典型的にはガイドによって案内される。前記ガイドは好ましくは、軌道として構成され、その結果、トランスデューサビーム軸線が、ガイドに沿ったキャリッジの位置にかかわらず、固定中心点に向かって常に指向される。ガイドアセンブリおよびキャリッジは、下記に述べるように、互いに対面し、それらの間に流体膜を支持する一つ以上の滑らかで、精密に一致する表面を有する。
【0048】
本願に記載する実施形態は、ガイドアセンブリが眼の角膜または水晶体前面の湾曲に近い弧の固定形状に形成されているアークスキャナによって例示される。前記ガイドはまた、例えば、2つ以上の弧または直線ガイドを含む任意の連続的に湾曲した形状のような可変形状を有してもよい。前記ガイドはまた、所望の形状に従うように制御することができるように、可撓性であり得る。この後者の実施形態は、眼内の任意の正反射性または非正反射性の構成要素をより良好に撮像するために、トランスデューサが所望の方向に向けられるように、トランスデューサキャリッジの位置決めを行うのに有用であろう。そのように撓めたり、向けたりすることは、撮像中の眼の構成要素の変化する形状に応答して行われる。
【0049】
超音波走査原理
図1はヒトの眼の主な要素の概略図である。主要な屈折構成要素は、角膜、虹彩および水晶体である。光学的に透明である角膜は、眼の前方に位置して、前眼房の前面を包囲している。虹彩は後眼房から前眼房を分離している。水晶体の前部は、後眼房の背面を包囲している。天然水晶体は、虹彩の背後に直接位置する。瞳孔の背後にある水晶体の中央部のみが、光学的に見られることができる。前眼房および後眼房は前眼部を構成する。主容積すなわち後眼部は水晶体の背後に存在し、後眼部の後部には網膜および視神経を有する。眼の房水および硝子体液の組成は、約1,000kg/m3の密度を有する水のそれに非常に近く、これは、眼が音響エネルギーの伝達に対して非常に良好な媒体となることを可能にする。
【0050】
光学手段は、前眼房の観察、および眼の全中心軸に沿った観察には適している。しかしながら、光学手段は、提靭帯(毛様小帯と呼ばれる)、毛様溝および毛様体を含む、虹彩のすぐ背後にある後眼房の部分を観察するために用いることはできない。しかしながら、光学的に観察することができない眼の構成要素は、高周波音響エネルギーによって観察することができる。よく知られているように、例えば、約10MHz〜約60MHzの超音波領域の音響周波数を用いて、角膜および水晶体の非常に高解像度の画像を提供することができる。
【0051】
図2は、眼の内部のほとんどの領域を撮像することができる超音波スキャナのための2つの異なる種類の走査方略を示す。図2aは、眼201の構成要素の超音波走査を生じるためのアーク走査法の原理を示す。例えば、米国特許第6,315,727号明細書、特許文献1、米国第6,887,203号明細書、および米国第7,048,690号明細書に記載されているこの種のスキャナにおいて、トランスデューサは、その中心が眼内の関心位置に設定されている弧(アーク)上で移動される。図2aにおいて、超音波トランスデューサ203は、概ね角膜の曲率中心202においてアークガイド206の曲率中心を有する一連の位置に示されている。トランスデューサ203は図示したように弧上を移動させられ、トランスデューサ203がアークガイドに沿って移動するにつれて、多数の音響エコー(光線205として表示)を生成する。それらの音響エコーは、次に、組み合わされて、関心がある眼の形状特徴の断面画像を形成する。
【0052】
図2bは、眼211による特定の位置の超音波画像を生成するためのセクター走査法の原理を示す。例えば米国特許第6,198,956号明細書に記載されているこの種の携帯型スキャナでは、超音波トランスデューサ213は、多数の音響エコー(放射線215として表示)を生成するように固定位置212を中心として振動することが示されている。その後、これらのエコーは、眼内の関心局所領域の形に組み合わされ得る。この図に示された走査原理はセクター走査法と呼ばれる。
【0053】
アーク超音波スキャナおよびセクター超音波スキャナの双方において、トランスデューサは音響信号の送信機および受信機の双方として作用する。トランスデューサは短い音響パルスを発し、次いで、反射された音響信号を受信する。この技術は、例えば、米国特許第5,293,871号明細書、および非特許文献1に記載されている。
【0054】
セクタースキャナは、例えば、光軸に沿った角膜の厚さまたは水晶体の厚さのような眼の構成要素の厚さを測定するために用いることができる。セクタースキャナは、例えばレーシック瘢痕の長さのような側方方向に延びる正反射性の形状特徴の長さを測定するために用いることができない。これは、音響ビームに直交し、音響エネルギーをトランスデューサに反射する角膜のその小部分のみしか、セクタースキャナに対して可視でないためである。セクタースキャナでは、患者は、典型的には背臥であることが必要とされる。
【0055】
他方では、アークスキャナは、例えば角膜の厚さまたは水晶体の厚さのような眼の構成要素の厚さを測定するため、並びに、例えば、レーシック瘢痕の長さまたは天然水晶体あるいは埋め込んだレンズの側方の長さのような側方方向に延びる正反射性の形状特徴の長さを測定するために用いることができる。アークスキャナでは、患者は典型的には水平から約45度下方を見ている。これは好ましい位置であり、図10〜図12に記載されたアイピースのデザインに関連がある。
【0056】
アークスキャナおよびセクタースキャナの双方は、非特許文献1の35ページにおいて検討されている。
図3は、アークガイドに沿ったトランスデューサの配置を示すアーク走査装置の主な要素を示す。前記アークガイドの曲率中心は、概ね関心がある眼の構成要素の曲率中心上に、中心が位置する。図3は、患者がスキャンの間に、患者の眼を安定した位置に維持するために眼を固定することを可能にする固視光321,322を示している。図3はまた、患者の眼の位置を監視し、かつ走査が開始される前に患者の眼が開いているかを判定するために、アークスキャナの操作者によって用いられ得る光学ビデオカメラ323を示している。トランスデューサおよびそのアークガイドアセンブリは、音響信号に伝搬路を提供する水302のチャンバ内に浸漬される。音響信号に対して伝搬路の連続性を提供するために、患者の眼は水中に浸漬されなければならない。図3は、トランスデューサ305およびアークガイドアセンブリ304が収容されている水チャンバ301を患者の眼が浸漬される水310から分離する衛生バリア306を示している。このバリア306は、トランスデューサ305およびアーク軌道アセンブリ304が収容されている水302と、患者の眼が浸漬される水310との分離をもたらす。アークガイドアセンブリおよび関連構成要素は、例えば、機構部品の摩滅による粒子によって汚染され得る。患者の眼が浸漬される水310は、患者からの細菌またはウイルス粒子によって汚染され得る。認識することができるように、患者の眼が浸漬される水310は、疾病伝播を防止するために患者毎に変更されなければならない。さらに認識することができるように、衛生膜306は、患者の眼と超音波トランスデューサとの間の明瞭な音響伝搬路を維持するために、超音波に対して実質的に透過性でなければならない。衛生膜306は、図10〜図12に記載したように、典型的には使い捨てのアイピースの一部として形成される。
【0057】
本願では、超音波の形態にある音響エネルギーを伝導するのに適した媒体に言及する。媒体が純水または生理的食塩水(通常の生理食塩水としても知られている)であることが好ましい理由はあるが、実施形態は超音波の形態にある音響エネルギーを伝導するのに適した他の媒体を除外するものではない。ほとんどの他の媒体は、眼と超音波トランスデューサとの間に介在するバリアを有するとしても、患者の眼に対して、危険性の増大を示す。バリアは漏れたり、または破れたりする可能性があり、両側の液体が混合することを可能にし、それにより、有害なおそれがある物質を眼に接触させる。
【0058】
しかしながら、有害でなく、腐食性が小さい媒体および漏れない不貫通性のバリアが開発または発見され得ることは認識されるべきである。これは、本発明において純水または生理食塩水とは異なる媒体が用いられることを可能にし得る。前述の危険以外、本願の実施形態について、トランスデューサを収容するチャンバ内に純水または生理食塩水が存在することを必要とするものはない。下記において水に対する言及はすべて、従って、任意の適当な液体への言及として理解されるべきである。
【0059】
図3は、水を介した音響伝搬路の連続性を示す。水302のチャンバ301は、位置決めアーム303と、超音波トランスデューサ305が取り付けられているアークガイドアセンブリ304とを有して示されている。超音波透過性バリア306は、チャンバ301をアイピース308の内部から分離する。アイピース308は、アイピース308の内部を充填し、患者の眼表面311と接触する、独立した容積の水310を収容している。アイピース308はアーク走査装置の主チャンバ301に接続されており、かつ主チャンバ301にシールされており、また患者の顔面312に対してもシールされる。見て分かるように、音響エネルギーの効率的な通過のために、トランスデューサ305から患者の眼表面311まで水中を通る連続的な経路が存在する。バリア306は、音響エネルギーを変化させることなく容易に通過させ、従って、トランスデューサ305と患者の眼表面311との間の連続経路の一部を形成する。患者の眼の音響インピーダンスはほぼ水のそれであるので、トランスデューサからの音響エネルギーは、効率的に眼の中に伝達され、例えば角膜の表面のような眼の構成要素からトランスデューサに反射し返され得る。また図3には、主チャンバ301のための給水管307およびアイピース308のための別個の給水管309も示されている。認識することができるように、アイピースにおいて用いられる水は蒸留されるか、または眼の塩分濃度に合わせるために若干塩性であり得る。また、アイピースにおいて用いられる水は、患者に快適な温度で導入され得る。
【0060】
本発明の構成要素
走査ヘッド位置決め装置
走査ヘッド位置決め装置の機能は、その曲率中心が走査される眼の構成要素のほぼ曲率中心に位置するように配置されるアークガイド上に、トランスデューサヘッドが常に位置するように、アーク走査ヘッドアセンブリおよび超音波トランスデューサを位置決めすることである。好結果の走査は、多くの場合、アークアセンブリの曲率半径が、関心がある眼の構成要素の曲率半径にほぼ一致し、走査ヘッド位置決め装置が高周波超音波パルスの精度を生かすために正確に位置決めされることを必要とする。
【0061】
図4は、小型走査ヘッド位置決め機構の等角図を示す。軸方向のキャリヤーフレーム402および取り付け板403は主要アークスキャナアセンブリに固定される。矢印413によって示すように、スキャナヘッド取り付けアーム401は軸線方向に前後に可動である。スキャナヘッド取り付けアーム401は、矢印414によって示すように、その軸線を中心として回転することができる。スキャナヘッド取り付けアーム401は矢印411によって示すように上下に、および矢印412によって示すように前後に可動である。スキャナヘッド取り付けアーム401に取り付けられる走査ヘッドは、この図では示されていない。
【0062】
図5はさらに小型走査ヘッド位置決め機構を示す。図5は、スキャナヘッド取り付けアーム510の端部上に取り付けられた超音波トランスデューサ508とアークスキャナヘッド509を示している。これらの構成要素(スキャナヘッド取り付けアーム510、スキャナヘッド509、および超音波トランスデューサ508)は、水中で作用し、並進シール506および回転シール507によって位置決め機構の後部からシールされている。いかなる封止機構が用いられてもよいが、並進シール506は、好ましくは、走査ヘッドポジショナによって必要とされる小さなxおよびy動作によって屈曲することができる大きなゴム膜によって形成される。z軸シールおよび回転シール507は、主要アークスキャナアセンブリに固着される固定板501に取り付けられている。いかなる封止機構が用いられてもよいが、z軸および回転シール507は、典型的には、水に対面する溝を有する周囲溝タイプの封止機構によって形成される。前記シールはシールサイエンス社(Seal Science)から市販されているシールであるモデル810Vが好適である。前記シールは、水密シールを維持しながら、中心管の回転および軸線方向の並進の双方を可能にする。前記シールの断面は、増大した水圧が、半径方向のシール力を増大する方法でシールに作用するようなものである。シール面には陽極酸化アルミニウムが好適である。固定板502もまた主要アークスキャナアセンブリに固着される。走査ヘッドは、アキシャルピストン503または別の適当な機構によって軸線方向において前後(z−方向)に移動させることができる。走査ヘッドは回転ステッピングモーター(図示せず)または別の適当な装置によってz軸のまわりを回転させることができる(ベータ方向)。走査ヘッドは、ピストン505または別の適当な機構によって上下(y−方向)に移動させることができる。走査ヘッドは、ピストン504または別の適当な機構によって左右(x−方向)に移動させることができる。固定板501の左側または後方の構成要素は、大気中に残存するが、固定板501の右側または前方の構成要素は、アークスキャナが動作しているときには、水中に浸漬される。
【0063】
磁気検出システム
キャリッジは多数の駆動方法のうちのいずれかを用いて、アークガイドに沿って移動させることができる。好ましい実施形態において、ガイド軌道は、キャリッジの磁石と一緒にリニアモーター(図8および図9に下記に記載)を形成することができるように配置された巻線を収容している。また、好ましい実施形態において、ガイド軌道およびキャリッジによって支持された、好ましくはインクリメンタル型で磁気式である位置エンコーダーが存在する。前記位置エンコーダーは、外部回路構成が前記軌道に沿ったキャリッジの位置を検出することを可能にする。その位置情報は、キャリッジが前記軌道に沿って移動するにつれて、どの巻線にエネルギーを与えるかを制御するために用いられる。また、前記位置情報は、例えば、超音波B−スキャン画像においてパルス−エコー軌道の均一な物理的間隔を提供するように、超音波パルスの送出を開始させるために用いられる。認識することができるように、前記位置情報は超音波B−スキャン画像において、パルス−エコー軌道の非一様だが所望の物理的間隔を提供するように、超音波パルスの送出を開始させるために用いることができる。
【0064】
図6は磁気測位システムを示す。この測位システムは、アークガイドアセンブリに沿ったトランスデューサキャリッジに対して精密な位置データを提供する。前記位置情報は、次に、精密で正確な超音波走査が行われることを可能にする。図6は、先に記載した走査ヘッド位置決めアセンブリ上に取り付けられた走査ヘッドを示す。走査ヘッドは、アークガイドアセンブリ602およびトランスデューサキャリッジアセンブリ601から成る。トランスデューサ603は先に記載した。OTS磁気エンコーダー(例えばシコ(Siko) MSK5000など)は、トランスデューサキャリッジアセンブリ602の側面に取り付けられたハウジング604に収容されている。磁気エンコーダーは、アークガイド軌道に取り付けられている磁気ストリップ605(ハウジング604の下にある黒色の細片として示されている)を読み取ることにより、その位置を検出する。磁気ストリップ605は、交互に位置するN極/S極を備え、かつエンコーダーに知られている極間距離を有する可撓性磁性材料である。エンコーダーは、次に、該エンコーダーが磁気ストリップに沿って移動するにつれて、標準的な直角位相エンコーダーパルスを出力する。推奨される磁気ストリップを備えたこのエンコーダーのモデルは、1マイクロメートルの分解能、またはアークスキャナの半径において約0.0005度を与える。
【0065】
磁気測位システムは、アークキャリッジのためのアークガイド軌道上のホームポジションと、アークガイド軌道に沿って設置された、その間隔が正確に既知である一連の磁気櫛状部とに基づく。次に、アークキャリッジ内のコイルは、キャリッジが磁気櫛状部の上を通過するときに、電流パルスを計数し、アークガイド軌道に沿ったキャリッジの精密な位置を判定する。他の位置検出システムが可能である。これらは光学系(光学的バーが磁気櫛状部に置き代わる)、機械系および電気系(電位差計など)を備える。磁気検出システムは、周期的な清掃を必要とする光学系、および無機物および他の沈着物の蓄積を受ける機械系よりも好ましい。
【0066】
流体ベアリング
ベアリング機構はアークスキャナの別の構成要素である。ベアリングの機能は、図4および図5において上述したような走査ヘッド位置決め装置によって位置決めされたアークガイドアセンブリに沿ったトランスデューサアセンブリの滑らかな動作を可能にすることである。好結果の走査は、通常、高周波超音波パルスの精度を生かすために、トランスデューサアセンブリが、湾曲したアークガイドアセンブリに沿って、ジッタまたはジャーク(加加速度)がなく、滑らかに移動することを必要とする(物理学において、ジャークは加速度の変化率である。より正確には、加速度の時間微分、速度の二次微分または変位の三次微分)。
【0067】
キャリッジは、加圧下の液体の供給源と連通する1組の液体流路を有する。液体流路はまた、アークガイド軌道上の合わせ面に接して流体ベアリングを形成するキャリッジの滑らかに一致する面上に位置するポートと連通している。前記液体は、前記供給源から流路を通ってポートへと流れ、そしてそのポートを通って流れて、キャリッジとアークガイド軌道との間に流体膜を形成する。ポートからの圧力、および流体膜における圧力は、キャリッジとアークガイド軌道とを離れるように促すか、または強制して、キャリッジとアークガイド軌道とを分離させ、それらの間から流出する液体の薄膜との平衡状態に達する。流体ベアリングの既知の実施に続いて、流路の大きさは、流体ベアリングに安定性を提供するために、各ポートにおける圧力を他のポートを通る流れとはおおかた無関係とするように選択される。ポートが常に被覆されるように、流路および出口ポートは、アークガイド軌道ではなく、トランスデューサキャリッジに位置すること、すなわち液体物質流動要件を低減する配置が好ましい。
【0068】
下記に述べるように、リニアモーターは、トランスデューサキャリッジをアークガイドに沿って推進するために用いられる。トランスデューサキャリッジの永久磁石は、かなりの力でキャリッジをアークガイドに引きつける。これは、流体圧力によって発生する力を磁気吸引力とほぼ釣り合うようにさせることができるので、流体ベアリングシステムを用いることを可能にする。これは、アークガイドのトランスデューサキャリッジの任意の機械的抗力を最小限にし、該システムが滑らかにジッタを有することなく移動することを可能にする。
【0069】
図7は固定アークガイドアセンブリ704と、可動トランスデューサキャリッジアセンブリ702との間で作用する流体ベアリングを示す。アークガイドアセンブリ704が、一旦適所に移動され、図4および図5に記載した位置決め機構によって固定されると、トランスデューサキャリッジアセンブリ702の動作は、後の走査動作について、アークガイドアセンブリ704に沿うように束縛される。図7に示される図は、アークガイドアセンブリ704および可動トランスデューサキャリッジアセンブリ702を通る垂直断面であり、アークガイドアセンブリ704の残りの部分701は後の方で上方に湾曲している。アークガイドアセンブリ704は、図8および図9にさらに記載されているリニアモーターコイル要素706およびそれらの鉄心720を収容している。可動トランスデューサキャリッジアセンブリ702は、超音波トランスデューサ703、トランスデューサ台709および磁気センサーハウジング705を備える。水ホース(図示せず)は流体継手70によって接続される。トランスデューサ間で電子信号を送信し、位置検出手段間で電子信号を送信する電線用導管は図示されていないが、トランスデューサキャリッジアセンブリ702に取り付けられている。可動トランスデューサキャリッジアセンブリ702とアークガイドアセンブリ704との間における相対位置を判定するための位置検出手段は、例えば、図6に記載されているような、アークガイドアセンブリ704に沿った磁気的にコードされた細片および可動トランスデューサキャリッジアセンブリ702上に位置する磁気検出素子であり得る。
【0070】
可動トランスデューサキャリッジアセンブリ702とアークガイドアセンブリ704との間の相対位置を正確に検出する能力は、可動トランスデューサキャリッジアセンブリ702の非一様な動作に対応することができるので、重要になり得る。例えば、トランスデューサキャリッジアセンブリ702は、アークガイドの一端において休止状態から加速し、アークガイドの中心付近で一時的に維持され得る最高速度に達し、次いで、アークガイドの反対端で休止状態に減速し得る。アークガイドに沿ったトランスデューサキャリッジアセンブリ702位置を知ることの結果として、トランスデューサ703のパルシング周期および受信周期は、コヒーレント像が形成され得るように、アークガイドに沿ったトランスデューサ703の動作と関連するようにプログラムされ得る。非一様なトランスデューサキャリッジアセンブリ702の動作によって作動する能力は、流体ベアリングによって許容される滑らかな加速および減速によって可能となる。図7は、アークガイドアセンブリ704と可動トランスデューサキャリッジアセンブリ702との間に位置するベアリング表面711,712,713,714を示している。
【0071】
アーク走査ヘッドアセンブリ全体が水中にあるので、前記流体もまた水である流体ベアリングを用いることは自然なことである。前記流体は、トランスデューサキャリッジアセンブリ702上に取り付けられた小さなポンプによって加圧され、水は、トランスデューサキャリッジアセンブリ702のベアリング表面713,714に沿って一定間隔で位置する小さな孔を通って揚送される。主要アーク走査ヘッドチャンバの水は、一般に、約1バール(100000パスカル)または周囲圧力にある。ポンプは、典型的には周囲圧力より1/2〜2バール(50000〜200000パスカル)高い範囲の圧力で流体を搬送する。その後、加圧された流体は、トランスデューサキャリッジアセンブリ702をアークガイドアセンブリ704の表面から約5〜約10マイクロメートル持ち上げ、流体がトランスデューサキャリッジアセンブリ702のベアリング表面713,714に沿って位置する小さな孔を介して連続的に揚送されている間は、この分離を維持する。
【0072】
実験的に示したように、磁石707と鉄心720との間の強い引力のために、流体ベアリングが作動させられるまで、リニアモーターはトランスデューサキャリッジアセンブリ702を移動させることができない。一旦、流体がトランスデューサキャリッジアセンブリ702のベアリング表面713,714に沿って位置する小さな孔を介して揚送されると、トランスデューサキャリッジアセンブリ702は、上昇して数マイクロメートルの分離を達成し、アークガイド軌道に沿って、ジャークを生じることなく、自由に移動する。
【0073】
リニアモーター
モーターの機能は、眼の構成要素の超音波走査が行われるのを可能にするために、トランスデューサキャリッジアセンブリをアークガイドアセンブリに沿って移動させることである。アーク走査法ヘッド全体が水中に浸漬されているので、リニアモーターは水中で安全に作動させることができなければならない。
【0074】
以下の説明は、リニアモーターは、キャリッジ内に磁石を有し、かつ円形軌道内に巻線を有していると仮定する。これは、走査システムの基本的な動作を変更することなく、円形軌道の磁石およびキャリッジの巻線によって逆転させることができ得ることに注目すべきである。キャリッジに磁石を配置することは、本発明者に分かっている好ましい実施形態および最良の態様を表わす。
【0075】
トランスデューサキャリッジは該キャリッジに固着された一つ以上の磁石を有し、軌道は鉄のような磁性材料から製造されているか、磁性材料を含有している。前記磁石は、結果として生じる磁場がキャリッジを軌道に圧迫するか、または引き付けることができるように、キャリッジ内に配置される。軌道全体およびキャリッジが、通常動作中に水中に沈められなければならないので、磁性部品は、露出した鉄材料が磁気ステンレス鋼となるように選択すること、または水中浸漬からそれを保護するために、鉄をエポキシ樹脂のような材料中に封入することのいずれかによって、腐食から保護される。
【0076】
トランスデューサキャリッジアセンブリは、典型的には約0.1kg〜約0.3kgの範囲内の重量を有する。このキャリッジアセンブリ質量の範囲は、急速な加速および減速を可能にするには十分に軽いが、アークガイド軌道に沿ったトランスデューサキャリッジの動作における外来の機械的ジッタを除去するために十分な慣性を提供するには十分に重い。また、キャリッジがガイド軌道上で適切に平衡を保っていることが望まれるので、トランスデューサキャリッジの質量中心の位置も重要である。
【0077】
図8は、トランスデューサキャリッジアセンブリ803をアークガイドアセンブリ801に沿って移動させるためにリニア誘導モーターを含む装置の等角概略図である。図8は、超音波トランスデューサ804およびトランスデューサアセンブリ803を示している。超音波トランスデューサ804は、超音波トランスデューサ804が、アークガイドアセンブリ801の曲率半径によって定義される弧の曲率中心を常に指すように取り付けられている。トランスデューサキャリッジアセンブリ803は、リニア誘導モーター装置によって推進されて、アークガイドアセンブリ801に沿って移動する。トランスデューサキャリッジアセンブリ803の動作は一様でなくてもよい。例えば、トランスデューサキャリッジアセンブリ803は、アークガイドアセンブリ801の一端810において休止状態から加速し、アークガイドの中心811付近で一時的に維持され得る最高速度に達し、次いで、アークガイドアセンブリ801の反対端812で休止状態に減速し得る。好ましい実施形態において、永久磁石はトランスデューサキャリッジアセンブリ803内に設置され、電動界磁コイルは、固定アークアセンブリ801に形成された中心溝内に設置されている。そのような溝および界磁コイルの一例は、図7においてアークガイドアセンブリ704の溝内に配置された界磁コイル706によって見ることができる。
【0078】
図9は、アークガイドアセンブリ903に沿ってトランスデューサキャリッジを推進する電流および磁力の概略図を示している。トランスデューサキャリッジ902は、隣り合っているが、それらのN−S極性を反対の面上に有する2つの永久磁石904を有して示されている。2つの永久磁石904は好ましくは等しい大きさである。弧を形成するキャリッジ軌道903は、この側面図では同様に弧として形成されている鉄心906の周りに巻回された、いくつかの巻回伝導性コイル905を有して示されている。コイル905は、例えば図7に引出し線706によって示されるように、断面においてほぼ矩形である。矩形コイル巻線の長辺は、推進力(この力については下記で説明する)を最大限にするために、磁石の表面に隣接していることが好ましい。コイル905は、例えば銅、アルミニウムなどのような任意の導体材料で製造され得る。コイル905は、好ましくは、三個の隣接するコイルが、永久磁石904のいずれか一つとほぼ同一の幅を有するような大きさを有して離間されている。アークガイドのどちらかの端から出発して、三個の隣接するコイルの各組には三相電気回路によって電力を供給される。三相回路電圧はパルス幅変調(PWM)システムによって制御され、次いでパルス幅変調システムはトランスデューサキャリッジ902の位置によって制御される。アークガイド903に対するトランスデューサキャリッジ902の位置は、例えば、図6に記載されているような磁気ストリップセンサーシステムによって判定される。PWMの組み合わせ、正確な位置検出システム、アークガイドとトランスデューサキャリッジとの間の流体ベアリング(図7に記載)、およびトランスデューサキャリッジの質量は、鮮明で精密な高周波音響測定(約3MHz〜約60MHz)を行うために必須であるトランスデューサキャリッジ902の非常に滑らかな動作を提供する。
【0079】
本願では、永久磁石904を可動トランスデューサキャリッジ902に埋設し、コイル905をアークガイドアセンブリ903に埋設することが好ましい。永久磁石904の可動トランスデューサキャリッジ902内への埋設は、トランスデューサキャリッジアセンブリ902に質量を加える。これは、アークガイド軌道に沿ったその動作を滑らかに維持するのを助ける。走査ヘッドの位置決めに由来する動作は、トランスデューサキャリッジのアークガイド軌道に沿った前後の動作よりもはるかに小さいので、コイル905のアークガイドアセンブリ903内への埋設は、電源をコイルに接続する電線の水中における動きを低減する。すべてのコイルが三相電源によってエネルギーを与えられるので、これは、リニアモーターに対してわずかにエネルギー効率が劣る設計である。しかしながら、モーター効率は本願において主要な関心事ではない。
【0080】
図9の例で示されるトランスデューサキャリッジ位置によれば、三個のコイル905が各永久磁石904の下に中心が位置するように、永久磁石904間の間隙は、二個の隣接するコイル905間の間隙と整列させられる。電流は、各永久磁石の下に中心が位置する二個のコイルにおいて最大値にあるが、矢羽の端面図および矢じりの端面図によって表わされた電流の矢印によって示したように、反対方向にある。最大電流を伴うコイルに隣接するコイルにおいては、電流は、低いが、より小さな電流の矢印によって示されるように、同一方向である。この位置では、アーク903の同一方向に沿って磁石904の各々に及ぼされる力が存在する。磁石904はトランスデューサキャリッジ902に埋設され、取り付けられているので、トランスデューサキャリッジ902はアークガイドアセンブリに沿って推進される。
【0081】
この例では、コイル905は、形状がほぼ矩形である鉄心に巻回されている(例えば引出し線706によって図7に示したようにコイル線を切断しないようにするために丸い角を有するが)。推進力は、よく知られている方程式に従って、永久磁石の局所磁場と相互に作用する、永久磁石に隣接したコイル要素の電流から生じる。
【0082】
dF=I dl × B
前記式中、dFは差動力であり、
Iは、合計電流(各巻き線の電流×巻線の数)であり、
dlはコイル巻線の差動長さ(differential length)である。
【0083】
Xは、dlとBとの間のクロス積を表わし、
また、Bは永久磁石の局所磁場である。
図示されているように、前記力は、電流の方向および局所磁場B(local B-field)の方向の双方に直交しており、したがって、永久磁石上の力はアークガイドアセンブリに沿うものである。永久磁石に隣接したコイル巻線要素における電流によって力が生じることが注目される。永久磁石から離れているコイル巻線要素における電流によって生じる力は反対方向であるが、鉄心906によって効果的に遮蔽されるので非常に弱い。アーク軌道に直交するコイル巻線要素における電流によって引き起こされる力は、永久磁石の磁場と概して平行であり、よって、トランスデューサキャリッジ902上の推進力に寄与しない。
【0084】
永久磁石904は、その表面が永久磁石の磁極面と同一平面上にあるバックアイアン構成要素によって適所に保持される。2つの永久磁石904を備えたバックアイアンは、それにより本質的に、馬蹄形磁石を形成し、実際に適切に成形された馬蹄形磁石と置き換えることができる。それにより、バックアイアン、永久磁石904および鉄心906によって磁気回路が形成される。
【0085】
アイピース
アイピースは、超音波走査のための連続的な音響経路を完成する役目を果たし、その経路はトランスデューサから患者の眼の表面へと延びている。アイピースはまた患者の眼が浸漬される水と、アーク軌道アセンブリが収容されているチャンバ内の水とを分離する。最終的に、アイピースは患者に振れ止めを提供し、患者が走査の間に安定した状態でいることを支援する。実用的には、アイピースは頻繁な漏出問題を有してはならず、患者にとって快適であるべきであり、新規の患者毎に交換されなければならないので、その製造原価は低くなければならない。
【0086】
図10は、これらの要件を満たすアイピースの実施形態を示している。アイピースは、取り付けリング1001と、眼部シールリング1002とから成る。取り付けリング1001は主要アークスキャナアセンブリに取り付けられており、典型的には、主要アークスキャナアセンブリの恒久的な部分である。ここに示されているように、取り付けリング1001は、眼部シールリング1002上に位置する取り付け機構1007を受容し得るいくつかの取り付け溝1006を有する。この実施形態において、取り付け機構1007は取り付け溝1006内に押し下げられ(1012)、次いで、適所に回転されて(1011)、眼部シールリング1002を取り付け1001に対してシールする機械的接続を形成して、漏水を防止する。これはバイオネット型接続としても知られている。取り付け機構1007が適所に回転されると(1011)圧縮される封止リング1005が存在してもよい。眼部シールリング1002は、軟質ゴムまたは発泡体の成形フェイスシール1003を有しており、フェイスシール1003は、走査されるべき眼のまわりの典型的なヒト顔面に対して密封するように設計されている。眼部シールリング1002もまた、上部にその給水管1004と、下部に排水管1014とを有して示されている。密封された衛生バリア(図示せず)は、製造中に、眼部シールリング1002の一部として形成され、典型的には、成形フェイスシール1003が位置1008で眼部シールリング1002の本体に接続される場所に位置する。
【0087】
衛生バリアまたは膜は、それが細菌、ウイルス、菌類および他の有害な可能性がある生物学的および化学的不純物に対して不透過性であるかぎり、透水性であってもよいし、または半透水性であってもよい。前記膜は、水中に溶解または保持され得る生物学的および非生物学的不純物からの優れた分離を提供するために、好ましくは不透水性である。前記膜は、ビデオカメラが前記膜を介して眼(図3を参照)を観察することを可能にするために、好ましくは光学的に透明である。前記膜は、好ましくは、有意なエネルギー吸収または反射を行うことなく、音響パルスを通過させる。これらの条件は、音響パルス波長よりも薄い膜によって実質的に満たすことができる。アイピース膜は、例えばポリエチレン、マイラー、ポリプロピレン;塩化ビニリデン;ポリ塩化ビニリデン;またはポリエチレン系であり、接着剤を含まないデュラシール(DuraSeal)(ダイバーシファイド・バイオテク(Diversified Biotech)社製)のような材料から製造されている。好ましい材料は、水のそれより若干だけ高い音響インピーダンスを有する医療用等級ポリエチレンである(水の154万kg/m2−sと比較して、約233万kg/m2−s)。前記膜の厚さは、好ましくは約10〜約30マイクロメートルの範囲にある。この厚さは、10MHzで約150マイクロメートル、80MHzで約20マイクロメートルである水中における音響波長の一部である。
【0088】
図11は、また上述した実用要件を満たすアイピースの代替の実施形態を示す。アイピースは、取り付けリング1101と、眼部シールリング1102とから成る。取り付けリング1101は主要アークスキャナアセンブリに取り付けられており、典型的には、主要アークスキャナアセンブリの恒久的な部分である。ここに示されているように、取り付けリング11001は、眼部シールリング1102上に位置する取り付け機構11004を受容し得るいくつかの取り付け溝1106を有する。この実施形態において、取り付け機構1104は取り付け溝1106内に押し下げられ(1111)、次いで、適所にスナップ留めされて、眼部シールリング1102を取り付けリング1101に対してシールする機械的接続を形成して、漏水を防止する。これはまたスナップ式型接続としても知られている。取り付けリング1101上にはシール面1105が存在し、眼部シールリング1102上には、対応するシール面(図示せず)が存在し得る。前記対応するシール面は、取り付け機構1104が適所にスナップ留めされると、押し付けられる。眼部シールリング1102は、軟質ゴムまたは発泡体の成形フェイスシール1103を有しており、フェイスシール1103は、走査されるべき眼のまわりの典型的なヒト顔面に対して密封するように設計されている。眼部シールリング1102もまた、上部にその給水管1104と、下部に排水管1114とを有して示されている。密封された衛生バリア(図示せず)は、製造中に、眼部シールリング1102の一部として形成され、典型的には、成形フェイスシール1103が位置1108で眼部シールリングの本体802に接続される場所に位置する。
【0089】
図12はアークスキャナのためのアイピースのさらに別の実施形態を示す。アイピースは、取り付けリング1202と、眼部シールリング1201とから成る。取り付けリング1202は主要アークスキャナアセンブリに取り付けられており、典型的には、主要アークスキャナアセンブリの恒久的な部分である。ここに示されているように、取り付けリング1201は、眼部シールリング1201上に位置する取り付け機構を受容し得る、図10に記載したような、いくつかの取り付け溝を有する。この実施形態において、取り付け機構は取り付け溝内に押し下げられ、次いで、図10に記載したように、適所に回転されて、眼部シールリングを取り付けリングに対してシールする機械的接続を形成して、漏水を防止する。これはバイオネット型接続としても知られている。図12に開示された実施形態において、眼部シールリング1201の一部として成形された溝1203と、取り付けリング1202の一部として成形された対応する舌状部1204とからなる付加的な密封形状特徴が存在する。眼部シールリング1201が取り付けリング1202によって適所に回転されると、前記舌状部と溝とが図13に記載したようなねじ接続部を形成し、該ねじ接続はそれらの部分が適所に回転されるにつれて圧縮する。これは、密封作用においてねじ山付きキャップを有するペットボトルに類似している。眼部シールリング1201および取り付けリング1202の双方は、典型的には、プラスチック製であり、プラスチックのコンプライアンスは水密シールの形成をさらに支援する。眼部シールリング1201は、軟質ゴムまたは発泡体のフェイスシール(図示せず)を有しており、そのフェイスシールは、走査されるべき眼のまわりの典型的なヒト顔面に対して密封するように設計されている。密封された衛生バリア(図示せず)は、製造中に、眼部シールリング1201の一部として形成され、典型的には、成形フェイスシールが眼部シールリング1201の本体に接続される場所に位置する。
【0090】
図13は、図12のアイピースのための密封方法の舌状部および溝を示す側断面図を示している。図13aは、取り付けリング1302と眼部シールリング1301とから成るアイピースを示す。前記アイピースは、引出し線1303によって示される舌状部および溝の密封システムを有する断面図において示されている。
【0091】
図13bは、図13aのアイピースのための密封方法の舌状部および溝部分についての近接図を示している。アイピース取り付けリング1312は、アイピース取り付けリング1312に成形された舌状部1314を有する。眼部シールリング1311は、眼部シールリング1311に成形された対応する溝1313を有する。眼部シールリング1311が取り付けリング1312によって適所に回転されると、舌状部1314および溝1313は、それらの部分が適所に回転されるにつれて、押し付け、必要に応じて変形し、密封を形成する。
【0092】
前述したように、眼部シールリングは、典型的には、軟質ゴムまたは発泡体の成形フェイスシールを備え、フェイスシールは、走査されるべき眼のまわりの典型的なヒト顔面に対してシールするように設計されている。成形フェイスシールはまた、眼のまわりの典型的なヒト顔面に対する優れた密封作用を提供するために、例えば鉱油を含浸させた発泡材料から製造され得る。取り外し可能な眼部シールリングに成形された、中空の軟質ゴムまたは柔軟なプラスチックリングによって、代替の外部シール機構も提供することができる。前記中空のプラスチックリングは、患者がアイピースにその顔面を押しつけた後、水で充填され得る。これは、アークスキャナの第3の独立した水で充填された構成要素となり、眼のまわりに不規則な顔の形状特徴を有する患者の眼のまわりの顔面に対するより良好なシールに役立つであろう。
【0093】
本発明の多数の変化例および変更例は用いることができる。認識されるように、他のものを提供することなく、本発明の一部の特徴を提供することは可能であろう。例えば、実施形態はアーク走査装置に関して検討されているが、様々な実施形態がセクター走査装置のような他の種類の走査装置と共に用いられ得ることは理解されるべきである。
【0094】
本発明は、様々な実施形態において、本願において描写され記載された構成要素、方法、工程、システムおよび装置の少なくとも何れか一つを、それらの様々な実施形態、下位の組み合わせ、および部分集合を含めて、実質的に包含する。当業者は、本開示を理解した後に、本発明を製造し用いる方法を理解するであろう。本発明は、様々な実施形態において、例えば、性能を向上させるため、容易にするためや実施費用を低減するために、従来の装置またはプロセスにおいて用いられてきた可能性がある品目が不在であることを含む、本願またはその様々な実施形態において描写や記載されていない品目が不在である装置およびプロセスを提供することを包含する。
【0095】
本発明の上記の検討は例証および説明のために示されている。上記は、本発明を本願において開示した形態に限定するものではない。前述の詳細な説明において、例えば、本発明の様々な特徴は、開示を簡素化する目的で、一つ以上の実施形態にグループ化されている。本開示のこの方法は、権利請求する発明が、各請求項において明白に述べられているよりも多くの特徴を必要とするという意図を表すものと解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が表すように、決して先に開示した単一の実施形態のすべての特徴に発明的要素が存在するわけではない。したがって、以下の特許請求の範囲は、これによりこの詳細な説明に組み入れられ、各請求項は、本発明の別個の好ましい実施形態として自立している。
【0096】
さらに本発明の説明は、一つ以上の実施形態および特定の別例および改変例の説明を含んでいるが、例えば、本開示を理解した後に当業者の技能および知識の範囲内にあり得るような、他の別例および改変例は、本発明の範囲内である。権利請求されるものに対する、代替の、交換可能な、および/または均等な構造、機能、範囲、または工程を含めて、許される範囲内で別の実施形態を含む権利を得るように意図される。上記は、そのような代替の、交換可能なおよび/または均等な構造、機能、範囲、または工程が本願に開示されているか否かに係わらない。また、いかなる特許可能な主題も公に供する意図はない。
【技術分野】
【0001】
本発明は、角膜および眼の天然水晶体のような生体物質の超音波撮像に関し、とりわけ、超音波アーク走査装置のための、走査ヘッド、トランスデューサ位置決め装置、およびアイピースのような構成部品に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波撮像は、例えば角膜のような、眼の構造の正確な測定に使用できることが分かっている。そのような測定は、眼科医に対して、眼科医が角膜上で行なわれる様々な外科的処置を導くために用いることができる有益な情報を提供する。外科的処置の主なものの一つは、屈折障害を治療するためのレーシック(LASIK)処置である。また、それらの測定は、レーシック瘢痕のような角膜の形状特徴の幾何学的位置を評定するために、手術が行なわれた後の診断情報を提供する。これは、外科医が、角膜が回復するにつれて、角膜の術後変化を評価し、発現し得る問題を解決する対策を講じることを可能にする。
【0003】
角膜の超音波撮像は、一般に他の種類の組織では遭遇しない問題を示す。角膜表面は、光線を焦点に集める光学的機能を行なうために、当然滑らかであり、球状に形成されている。角膜の構造は滑らかで規則的であるので、超音波エネルギーは特定方向にのみ反射される。具体的には、トランスデューサからの超音波ビームは、そのビームが角膜表面に直交するように整合されている場合、単にそのトランスデューサに直接反射されるであろう。この種の反射特性は鏡面反射(正反射)と呼ばれる。
【0004】
角膜表面の鏡面反射特性のために、部分的な像が形成されるべき各位置においてトランスデューサを角膜と整合させるためには、特別な注意を払う必要があることが認識されるであろう。角膜の大部分の超音波撮像は、常に角膜の曲率中心に向かって指向されるビームを提供するように、トランスデューサの整合を絶えず調節しながら、角膜表面に沿ってトランスデューサを走査させることによって行うことができる。
【0005】
角膜の撮像および角膜寸法の測定は、トランスデューサの走査運動が滑らかであり、かつ精密に整合されていることを必要とする。円形路からのトランスデューサ位置の逸脱または曲率中心からのビームの方向の逸脱は、5マイクロメートル程度であっても、結果として生じる画像を著しく劣化させ得る。必要とされる走査の整合を行なうための機構は、特許文献1および2に記載されている。前記特許文献は、参照によって本願に援用される。非特許文献1は、眼の超音波撮像の優れた歴史的および技術的概要を包含しており、この参照により本願に援用される。
【0006】
超音波撮像は眼科医によってレーザー屈折矯正手術の定量分析に用いられ得るが、超音波撮像はまた、角膜および有水晶体レンズの移植、眼内レンズの埋め込み、および緑内障および白内障治療のような特殊処置にも用いられ得る。
【0007】
オンアクシス測定を除いて、虹彩の背後の眼の構成要素の寸法は光学的方法によって測定することができない。調節可能レンズの移植のような新規の処置は、眼鏡またはコンタクトレンズなしで、ほとんど完璧な視力を提供し得る。調整可能レンズの移植は、例えば、好結果のレンズ移植のために、水晶体の幅の精密な測定を必要とする。超音波撮像は、特に、水晶体の必要とされる正確な画像を提供するために用いることができる。水晶体は、かなり軸外であり、かつ虹彩の後方に位置する毛様体筋に結合しており、よって光学的撮像を使用できない。
【0008】
超音波撮像は、撮像中の対象物とトランスデューサとの間に挟まれる液体媒体を必要とし、これは、次に、眼、トランスデューサおよびそれらの間の経路が常に液体媒体中に浸漬されていることを必要とすることが認識されるに違いない。角膜の安全に対する懸念は、液体媒体は純水または通常の生理食塩水溶液のいずれかであるという実用的要求を生じる。いずれの場合も、その機構全体または大部分は長期間にわたって水中に沈められなければならない。
【0009】
ジャーナルベアリング、ボールベアリングまたはローラーベアリングのようなトランスデューサの運動を案内および制御するための従来の機構部品は、水中作動には不適当である。ベアリング部品上には必然的に被膜が形成され、それらの部品の滑らかな動作を妨げる。たとえ、眼が、薄い超音波透過性バリアによって液体の本体から分離されるとしても、防汚溶液は患者の眼に対して容認できない損傷の危険を招くので、防汚溶液を水に添加することはできない。バリアフィルムを介した漏れ、またはバリアフィルムの偶発的な穿孔による漏れの可能性は、実用的な臨床装置において常に存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,491,637号明細書
【特許文献2】米国特許第5,331,962号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】コールマン(Coleman)外著、「眼と眼窩の超音波検査法(Ultrasonography of the Eye and Orbit)」、(米国)、第2版、リッピンコット・ウィリアムズ・アンド・ウィルキンス社(Lippincott Williams & Wilkins)、2006年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、用途の広い走査ヘッドおよびトランスデューサ位置決め装置、耐水性アーク走査モーター、正確なトランスデューサ位置探知方法、滑らかな走査動作を提供し得る流体ベアリング方法、使い捨てのアイピースの必要性が依然として存在する。それらの全ては眼科および検眼の用途のために精密な撮像を提供することができる、改善された超音波アーク走査装置に必要である。
【0013】
これらおよび他の要求は本発明によって対処される。本発明の様々な実施形態および構成は、概して、眼の角膜および水晶体のような生体物質の超音波撮像に関し、特に、走査ヘッド位置決め装置、耐水性アーク走査モーター、流体ベアリングおよびアイピースのような超音波アーク走査装置のための構成部品に関する。前記構成部品の全ては、超音波のアーク走査装置の正確さ、精密さ、および使い易さを改善する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一実施形態では、小型走査ヘッド位置決め装置が開示される。この装置の機能は、トランスデューサヘッドが、所望の位置でセントレーションされた(centrated)アークガイドに連続的に従うように、アーク走査アセンブリおよび超音波トランスデューサを位置決めすることである。アークガイドは、概ね走査されるべき眼の構成要素の曲率半径である曲率半径を有する。好結果の走査は、多くの場合、アークアセンブリの曲率中心が、対象となる眼の構成要素の曲率中心とほぼ一致すること、および、走査ヘッド位置決め装置が、高周波超音波パルスの精度を生かすために、良好に位置決めされていることを必要とする。走査ヘッド位置決め装置の一部は周囲空気中に設置される。一方、アーク走査ヘッドを備えた走査ヘッド位置決め装置の第2部分は、作動時、水で充填されたチャンバ内に設置される。したがって、走査ヘッド位置決め装置は、走査される患者の眼の構成要素に対するアーク走査ヘッドの所望の配置を行うために必要な距離および角度にわたって機能する並進シールおよび回転シールの双方を有さなければならない。
【0015】
別の実施形態では、流体ベアリング機構が開示される。ベアリングの機能は、上述した走査ヘッド位置決め装置によって配置されたアークガイドに沿ってトランスデューサキャリッジアセンブリの滑らかな動作を可能にすることである。好結果の走査は、通常、高周波超音波パルスの精度を生かすために、トランスデューサアセンブリがアークガイドに沿って滑らかに移動することを必要とする。
【0016】
一構成において、流体ベアリング機構は、一つ以上の弓状ガイドにある多数の流体流路によって定義される。液体は加圧されて、液体流路を通って流れ、ガイドアセンブリとキャリッジとの間の選択された界面に沿って流体膜を形成する。選択された界面におけるガイドとキャリッジとの間の距離は、加圧液体の不在下よりも大きい。
【0017】
さらに別の実施形態では、水中で安全に作動することができるモーターが開示される。モーターの機能は、眼の構成要素の超音波走査がなされることを可能にするように、通常は固定されているアークガイドに沿ってトランスデューサキャリッジアセンブリを素早く前後に移動させることである。
【0018】
一構成において、モーターは、キャリッジおよびガイドのうちの一方に位置する一つ以上の磁石と、キャリッジおよびガイドの他方に位置する一つ以上の電気コイルに包囲された鉄含有コアとを備える。好ましい実施において、第1磁石および第2磁石がキャリッジ内に位置し、電気コイルおよび鉄含有コアはガイド軌道内に位置する。第1磁石および第2磁石は、互いに対向するN−S極性を有して、隣り合わせに配置されている。電気コイルの長寸側(long dimension)は、推進力を実質的に最大にするように磁石の面に隣接している。特に好ましい実施において、キャリッジの質量は約0.1kg〜約0.3kgにわたる。電気コイルは多数のコイルセグメントによって形成され、多数のコイルセグメントのサブセットのうちの各々は、電気回路によって選択的に、かつ独立して電力を供給されている。コイルセグメントのサブセットにおける電流と、第1磁石および第2磁石の局所磁場B(local B-fields)とによってもたらされる力は共通の方向にある。
【0019】
別の実施形態では、キャリッジ位置検出装置はガイドアセンブリに対するキャリッジの位置を判定するために提供される。検出装置は多数の構成を有し得る。一構成において、位置検出装置は、キャリッジ上に取り付けられた位置エンコーダーを備える。エンコーダーは、ガイド軌道の長手方向の一部に沿って配置された磁気ストリップを読み取ることにより、キャリッジの位置を検出する。別の構成において、位置検出装置は、キャリッジ上に取り付けられた光学エンコーダーを備える。光学エンコーダーは、光によってガイド軌道の長手方向の一部を照明し、光の屈折、回折、拡散、および反射の分布のうちの一つ以上を検出することにより、キャリッジの位置を検出する。例えば、エンコーダーは、アークガイドの長手方向の一部に沿って配置されたバーコードを照明することができる。バーコードは、一定長のガイドに沿って任意の位置で反射光の特有の分布を生成するであろう。別の構成において、位置検出装置は磁場センサーを備える。検出された磁場は、ガイドに沿った位置に関連する。さらに別の構成では、位置検出装置は機械的計数器を備える。機械的計数器は、寸法単位およびガイドに沿った位置に関連する計数を生成する。
【0020】
キャリッジの位置を時間の関数として知ることは、利点を提供し得る。一つ以上の磁石および電気コイルセグメントに包囲された鉄含有コアを有するキャリッジモーターにおいて、制御装置は、選択された時点で、例えば、キャリッジの検出された位置に近接した電気コイルセグメントに選択的に通電することができる。制御装置は、これに加えて、またはこれに代わって、選択した時点において、検出されたキャリッジの位置に応答して、トランスデューサに選択的にエネルギーを与えて、超音波パルスの、非一様な、所望の物理的間隔を生じる。位置の追跡は、キャリッジがガイドに沿った非一様な速度や加速度を有する場合に、特に有用である。簡潔にいえば、前記検出装置は、アークガイドアセンブリに沿ったトランスデューサキャリッジの精密な位置を提供することができる。これは、今度は精密で正確な超音波の走査がなされることを可能にする。
【0021】
さらに別の実施形態では、アイピースの3つの構成が開示される。これらはすべて、超音波走査のための音響経路を提供し、患者の眼が浸漬されている水を、位置決めおよびアークガイドアセンブリが収容されているチャンバ内の水から分離する。これらの構成は、漏れ問題に悩まされることが比較的なく、患者にとって快適であり、またアイピースは新規の患者毎に交換されるべきであるので、低コストに製造することができる。異なる構成は異なる取り付け機構および封止機構を組み入れている。
【0022】
例として、撮像装置の第1構成は、
(a)患者の眼を受容するためのアイピースと、
(b)超音波トランスデューサに接触した第1液体チャンバと、
(c)超音波トランスデューサによって撮像される患者の眼に接触する第2液体チャンバと、
(d)第1チャンバと第2液体チャンバとを分離するバリアとを備え、
(D1)第2液体チャンバは、第1液体チャンバから液体を排出するための排出ポートを備えること、及び
(D2)前記バリアは液体に対して透過性であるが、選択された生物学的微生物に対しては不透過性であり、前記微生物はバクテリア、ウイルスおよび菌類のうちから選択されることのうちの少なくとも一方が当てはまる。
【0023】
別の実施形態において、撮像装置の第2構成は、別個のフェイスシールリングを有するアイピースを備える。フェイスシールリングは、より良好に患者の顔面に沿うように、液体で充填されている。以下の定義が本願に用いられる。
【0024】
A−スキャンは、時間の関数として超音波トランスデューサによって発せられる超音波パルスの反射振幅の表示である。
老眼用レンズまたはプレスビーレンズとして知られている調整可能レンズは、毛様体筋の収縮に応答して焦点距離を変化させる眼内レンズインプラントである。成功裡に埋め込まれた場合、調整可能レンズは老視、すなわち、遠くから近くへの焦点距離を変化させる眼の能力の低下を回復させる。
【0025】
整合とは、トランスデューサおよびトランスデューサキャリッジガイドを、関心がある眼の構成要素の形状特徴(角膜、レンズ、網膜、その他の曲率中心または境界など)に対して、空間的に、好ましくは正確に、かつ再現可能に、配置することを意味する。前房は、眼の前面から虹彩までの眼の領域を含む。
【0026】
前部は、眼の前面からちょうど水晶体の裏面を越えた眼の領域を含む。
アークスキャナは、センサーが、絶えず中心点を通って指向されるそのビームによって走査される領域の中央を中心としたほぼ正確な弧上を移動する走査装置である。
【0027】
アーク走査トランスデューサの曲率中心は、アーク走査ガイドの曲率中心と同一である。
自動センタリング手段は、典型的にはコンピューター制御下で、アーク走査トランスデューサの関心がある眼の構成要素とのセントレーションを自動的に行う。
【0028】
B−スキャンは、音速を用いたA−スキャンデータを、Aスキャン振幅に対応するグレイスケールを用いた眼の像に変換することによるものとしての、データの表示である。
眼角は、上眼瞼と下眼瞼とが接するところのどちらかの眼の角の眼瞼の角をなす接合部である。
【0029】
セントレーションとは、アーク走査トランスデューサの曲率中心を、関心がある眼の構成要素(角膜、レンズ、網膜など)の曲率中心と、トランスデューサからの光線が双方の曲率中心を通過するように、空間的にほぼ整合させることを意味する。特別な場合は、双方の曲率中心が一致するときである。
【0030】
毛様体は、毛様体筋と毛様体突起とから構成される眼内部の周囲組織である。眼内には、3組の毛様体筋、すなわち縦走筋、放射筋、および環状筋が存在する。それらの筋は、水晶体の上方および下方の眼の前面の近くに位置する。それらはチン小帯と呼ばれる結合組織によって水晶体に付着されており、網膜に焦光するために水晶体を形作るのに関与する。毛様体筋が緩む場合、毛様体筋は水晶体を平らにし、一般により遠い対象に対する焦点を改善する。毛様体筋が収縮する場合、水晶体はより凸状になり、一般により接近した対象に対する焦点を改善する。
【0031】
固視とは、眼の光軸が光学的目標と既知の空間的関係にあるように、患者に眼の焦点を光学的目標に合わせさせることを意味する。固視において、弧の中心からいずれの方向への移動も、中心からいずれの方向に離れても等しく減少する信号強度を生じるように、最大信号強度を得るために、光源は、光源が弧の中心に位置する状態で、弧平面において軸線方向に整合される。
【0032】
ガイドとは、別の装置の動作を導くための装置である。ハプティックとは、いくつかの種類の人工レンズの外径から延びる、わずかに湾曲した毛髪状の突出部である。これらのハプティックは、毛様溝内に突出することにより、これらのレンズが毛様体筋に取り付けられ、そのレンズが毛様体筋の作用に応答して遠近調節を行うことを可能にする。
【0033】
眼内レンズとは、天然水晶体の代わりをするために眼内に埋め込まれる人工レンズである。
レーシックとは、近視、遠視および乱視のような屈折障害を治療するために角膜上で行なわれる処置である。一般に、角膜の外形を新しい形にするために、エキシマー・レーザーは、薄層皮弁の切断により角膜を露出させた後に、角膜の内側から組織を選択的に除去する。
【0034】
経線とは、眼の角膜または天然水晶体のような三次元構成要素の一部を通って切断する平面であり、その角度は眼角によって定義される水平線に対して示される。
天然水晶体(水晶体とも呼ばれる)は、角膜と共に、光を屈折させて網膜上に焦点を合わせるのを助ける、眼内の透明な両凸構造体である。水晶体は、形状を変化させることによって、眼の焦点距離を変化させるように機能し、その結果、水晶体は、様々な距離で対象に焦点を合わせることができ、それにより、関心対象のくっきりした実像が網膜上に形成されることが可能となる。水晶体のこの調節は遠近調節として知られている。水晶体は虹彩の背後の眼の前部に位置する。水晶体は、小帯線維によって適所に懸垂されており、小帯線維はその赤道線近傍で水晶体に付着して、水晶体を毛様体に接続している。水晶体は楕円両凸形状を有し、その大きさおよび形状は、遠近調節のため、および経年の成長のために変化し得る。水晶体は3つの主要部分、すなわち、水晶体嚢、水晶体上皮および水晶体線維からなる。水晶体嚢は、水晶体の最外層を形成し、水晶体線維は、水晶体の内部の大部分を形成する。水晶体嚢と水晶体線維の最外層との間に位置する水晶体上皮の細胞は、一般に水晶体の前部側にのみ見られる。
【0035】
「眼の〜」とは、眼または眼球と関係することを意味する。
眼科とは、眼に対処する医学の分科を意味する。
本願に用いられる光学的とは、光線を用いるプロセスを指す。
【0036】
眼の光軸とは、屈折面(角膜および水晶体の前面および後面)の曲率中心を結ぶ最良適合の線である。
パキメトリーまたは角膜パキメトリーとは、技術的には時間分域反射率測定超音波と呼ばれる。超音波エネルギーのパルスが角膜に送出され、返ってくるエコーの時間間隔は角膜の厚さに達するために使われる。
【0037】
有水晶体眼内レンズ、または有水晶体レンズとは、人の眼鏡またはコンタクトレンズの必要性を低減するために、眼内に恒久的に埋め込まれるプラスチック製またはシリコーン製のレンズである。有水晶体とは、眼の天然水晶体を除去せずに、レンズが眼内に埋め込まれるという事実を指している。有水晶体レンズの移植手術中、通常、眼の前面に小さな切開口が形成される。該切開口を介して有水晶体レンズが挿入され、そのレンズは虹彩のすぐ前またはすぐ背後に配置される。
【0038】
後眼房とは、虹彩の後部から水晶体の前面までの眼の領域を含む。
後上葉区は、水晶体の後部から、網膜および視神経を含む眼の裏面までの眼の領域を含む。
【0039】
老視とは、典型的には眼の内部の天然水晶体の弾性の喪失によって引き起こされる。これは老化過程の一部として生じ、老視は「治す」ことはできないが、眼鏡をかけることまたは人工レンズを埋め込むことにより、矯正することはできる。
【0040】
屈折は、眼の様々な構成要素による光線の集束に関係するものをすべて意味する。
レジストレーションとは整合させること意味する。
セクタースキャナはレーダーのような扇形区域(セクター)を掃引する超音波スキャナである。掃引領域は、典型的には超音波トランスデューサの表面の近くに位置する中心点を有するパイ形である。
【0041】
鏡面とは、光波または音響波を反射する鏡状の表面を意味する。例えば、トランスデューサから発出する超音波ビームは、該ビームを鏡面に直交して整合させた場合、単にそのトランスデューサに直接反射されるであろう。
【0042】
毛様体溝とは、虹彩と毛様体との間の溝である。強膜溝とは、強膜と角膜との合流地点にある軽微な溝である。
軌道とは、別の装置がそれに沿って移動する装置である。
【0043】
超音波とは、ヒトの耳の上限周波数よりも高い音を意味する。眼のような対象物の撮像のために用いられる場合、音は液体媒体を通過し、その周波数は、ヒト耳によって検知できるものよりも桁違いに大きい。眼における高解像度音響撮像については、周波数は、典型的には、約5〜約80MHzのおおよその範囲にある。
【0044】
眼の視軸は、関心対象と窩とを結ぶ線であり、その線は節点を通過する。
毛様小帯は、水晶体の外径付近から延びる張力をかけることができる靭帯である。毛様小帯は水晶体を毛様体に結合し、その毛様体は毛様体筋の作用に応じて水晶体が遠近の調節をすることを可能にする。
【0045】
本願に用いられる、「少なくとも一つ」、「一つ以上」および「少なくとも何れか一つ」は、作用において接続語および離接語の双方である制限がない表現である。例えば「A、BおよびCの少なくとも一つ」、「A、BまたはCの少なくとも一つ」、「A、BおよびCの一つ以上」、または「A、BまたはCの一つ以上」、および「A、B、およびCの少なくとも一つ」の表現の各々は、A単独、B単独、C単独、AおよびBともに、AおよびCともに、BおよびCともに、またはA、BおよびCともにということを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】ヒトの眼の主な要素の概略図。
【図2】超音波スキャナのための2つの異なる種類の走査方略を示す図。
【図3】アーク走査装置の概略図。
【図4】小型アーク走査ヘッド位置決め機構の等角図。
【図5】小型アーク走査ヘッド位置決め機構を示す図。
【図6】磁気測位システムを示す図。
【図7】固定アークアセンブリと可動トランスデューサアセンブリとの間で作用する流体ベアリングを示す図。
【図8】固定アークアセンブリに沿ってトランスデューサアセンブリを移動させるリニア誘導モーターの等角概略図。
【図9】アークガイド軌道に沿ってトランスデューサキャリッジを推進する電流および磁力の概略図。
【図10】アークスキャナのためのアイピースの実施形態を示す図。
【図11】アークスキャナのためのアイピースの代替の実施形態を示す図。
【図12】アークスキャナのためのアイピースの別の代替の実施形態を示す図。
【図13】図12のアイピースのための封止方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本願に記載する実施形態は、従来技術のアークスキャナに優れた設計を提供する。前記実施形態は、通常は、従来技術のアークスキャナよりも、水中環境に耐性を有する走査機構を開示する。特定の実施形態によれば、超音波トランスデューサは、円形に湾曲したガイドに沿って移動するトランスデューサキャリッジに取り付けられる。前記キャリッジは、典型的にはガイドによって案内される。前記ガイドは好ましくは、軌道として構成され、その結果、トランスデューサビーム軸線が、ガイドに沿ったキャリッジの位置にかかわらず、固定中心点に向かって常に指向される。ガイドアセンブリおよびキャリッジは、下記に述べるように、互いに対面し、それらの間に流体膜を支持する一つ以上の滑らかで、精密に一致する表面を有する。
【0048】
本願に記載する実施形態は、ガイドアセンブリが眼の角膜または水晶体前面の湾曲に近い弧の固定形状に形成されているアークスキャナによって例示される。前記ガイドはまた、例えば、2つ以上の弧または直線ガイドを含む任意の連続的に湾曲した形状のような可変形状を有してもよい。前記ガイドはまた、所望の形状に従うように制御することができるように、可撓性であり得る。この後者の実施形態は、眼内の任意の正反射性または非正反射性の構成要素をより良好に撮像するために、トランスデューサが所望の方向に向けられるように、トランスデューサキャリッジの位置決めを行うのに有用であろう。そのように撓めたり、向けたりすることは、撮像中の眼の構成要素の変化する形状に応答して行われる。
【0049】
超音波走査原理
図1はヒトの眼の主な要素の概略図である。主要な屈折構成要素は、角膜、虹彩および水晶体である。光学的に透明である角膜は、眼の前方に位置して、前眼房の前面を包囲している。虹彩は後眼房から前眼房を分離している。水晶体の前部は、後眼房の背面を包囲している。天然水晶体は、虹彩の背後に直接位置する。瞳孔の背後にある水晶体の中央部のみが、光学的に見られることができる。前眼房および後眼房は前眼部を構成する。主容積すなわち後眼部は水晶体の背後に存在し、後眼部の後部には網膜および視神経を有する。眼の房水および硝子体液の組成は、約1,000kg/m3の密度を有する水のそれに非常に近く、これは、眼が音響エネルギーの伝達に対して非常に良好な媒体となることを可能にする。
【0050】
光学手段は、前眼房の観察、および眼の全中心軸に沿った観察には適している。しかしながら、光学手段は、提靭帯(毛様小帯と呼ばれる)、毛様溝および毛様体を含む、虹彩のすぐ背後にある後眼房の部分を観察するために用いることはできない。しかしながら、光学的に観察することができない眼の構成要素は、高周波音響エネルギーによって観察することができる。よく知られているように、例えば、約10MHz〜約60MHzの超音波領域の音響周波数を用いて、角膜および水晶体の非常に高解像度の画像を提供することができる。
【0051】
図2は、眼の内部のほとんどの領域を撮像することができる超音波スキャナのための2つの異なる種類の走査方略を示す。図2aは、眼201の構成要素の超音波走査を生じるためのアーク走査法の原理を示す。例えば、米国特許第6,315,727号明細書、特許文献1、米国第6,887,203号明細書、および米国第7,048,690号明細書に記載されているこの種のスキャナにおいて、トランスデューサは、その中心が眼内の関心位置に設定されている弧(アーク)上で移動される。図2aにおいて、超音波トランスデューサ203は、概ね角膜の曲率中心202においてアークガイド206の曲率中心を有する一連の位置に示されている。トランスデューサ203は図示したように弧上を移動させられ、トランスデューサ203がアークガイドに沿って移動するにつれて、多数の音響エコー(光線205として表示)を生成する。それらの音響エコーは、次に、組み合わされて、関心がある眼の形状特徴の断面画像を形成する。
【0052】
図2bは、眼211による特定の位置の超音波画像を生成するためのセクター走査法の原理を示す。例えば米国特許第6,198,956号明細書に記載されているこの種の携帯型スキャナでは、超音波トランスデューサ213は、多数の音響エコー(放射線215として表示)を生成するように固定位置212を中心として振動することが示されている。その後、これらのエコーは、眼内の関心局所領域の形に組み合わされ得る。この図に示された走査原理はセクター走査法と呼ばれる。
【0053】
アーク超音波スキャナおよびセクター超音波スキャナの双方において、トランスデューサは音響信号の送信機および受信機の双方として作用する。トランスデューサは短い音響パルスを発し、次いで、反射された音響信号を受信する。この技術は、例えば、米国特許第5,293,871号明細書、および非特許文献1に記載されている。
【0054】
セクタースキャナは、例えば、光軸に沿った角膜の厚さまたは水晶体の厚さのような眼の構成要素の厚さを測定するために用いることができる。セクタースキャナは、例えばレーシック瘢痕の長さのような側方方向に延びる正反射性の形状特徴の長さを測定するために用いることができない。これは、音響ビームに直交し、音響エネルギーをトランスデューサに反射する角膜のその小部分のみしか、セクタースキャナに対して可視でないためである。セクタースキャナでは、患者は、典型的には背臥であることが必要とされる。
【0055】
他方では、アークスキャナは、例えば角膜の厚さまたは水晶体の厚さのような眼の構成要素の厚さを測定するため、並びに、例えば、レーシック瘢痕の長さまたは天然水晶体あるいは埋め込んだレンズの側方の長さのような側方方向に延びる正反射性の形状特徴の長さを測定するために用いることができる。アークスキャナでは、患者は典型的には水平から約45度下方を見ている。これは好ましい位置であり、図10〜図12に記載されたアイピースのデザインに関連がある。
【0056】
アークスキャナおよびセクタースキャナの双方は、非特許文献1の35ページにおいて検討されている。
図3は、アークガイドに沿ったトランスデューサの配置を示すアーク走査装置の主な要素を示す。前記アークガイドの曲率中心は、概ね関心がある眼の構成要素の曲率中心上に、中心が位置する。図3は、患者がスキャンの間に、患者の眼を安定した位置に維持するために眼を固定することを可能にする固視光321,322を示している。図3はまた、患者の眼の位置を監視し、かつ走査が開始される前に患者の眼が開いているかを判定するために、アークスキャナの操作者によって用いられ得る光学ビデオカメラ323を示している。トランスデューサおよびそのアークガイドアセンブリは、音響信号に伝搬路を提供する水302のチャンバ内に浸漬される。音響信号に対して伝搬路の連続性を提供するために、患者の眼は水中に浸漬されなければならない。図3は、トランスデューサ305およびアークガイドアセンブリ304が収容されている水チャンバ301を患者の眼が浸漬される水310から分離する衛生バリア306を示している。このバリア306は、トランスデューサ305およびアーク軌道アセンブリ304が収容されている水302と、患者の眼が浸漬される水310との分離をもたらす。アークガイドアセンブリおよび関連構成要素は、例えば、機構部品の摩滅による粒子によって汚染され得る。患者の眼が浸漬される水310は、患者からの細菌またはウイルス粒子によって汚染され得る。認識することができるように、患者の眼が浸漬される水310は、疾病伝播を防止するために患者毎に変更されなければならない。さらに認識することができるように、衛生膜306は、患者の眼と超音波トランスデューサとの間の明瞭な音響伝搬路を維持するために、超音波に対して実質的に透過性でなければならない。衛生膜306は、図10〜図12に記載したように、典型的には使い捨てのアイピースの一部として形成される。
【0057】
本願では、超音波の形態にある音響エネルギーを伝導するのに適した媒体に言及する。媒体が純水または生理的食塩水(通常の生理食塩水としても知られている)であることが好ましい理由はあるが、実施形態は超音波の形態にある音響エネルギーを伝導するのに適した他の媒体を除外するものではない。ほとんどの他の媒体は、眼と超音波トランスデューサとの間に介在するバリアを有するとしても、患者の眼に対して、危険性の増大を示す。バリアは漏れたり、または破れたりする可能性があり、両側の液体が混合することを可能にし、それにより、有害なおそれがある物質を眼に接触させる。
【0058】
しかしながら、有害でなく、腐食性が小さい媒体および漏れない不貫通性のバリアが開発または発見され得ることは認識されるべきである。これは、本発明において純水または生理食塩水とは異なる媒体が用いられることを可能にし得る。前述の危険以外、本願の実施形態について、トランスデューサを収容するチャンバ内に純水または生理食塩水が存在することを必要とするものはない。下記において水に対する言及はすべて、従って、任意の適当な液体への言及として理解されるべきである。
【0059】
図3は、水を介した音響伝搬路の連続性を示す。水302のチャンバ301は、位置決めアーム303と、超音波トランスデューサ305が取り付けられているアークガイドアセンブリ304とを有して示されている。超音波透過性バリア306は、チャンバ301をアイピース308の内部から分離する。アイピース308は、アイピース308の内部を充填し、患者の眼表面311と接触する、独立した容積の水310を収容している。アイピース308はアーク走査装置の主チャンバ301に接続されており、かつ主チャンバ301にシールされており、また患者の顔面312に対してもシールされる。見て分かるように、音響エネルギーの効率的な通過のために、トランスデューサ305から患者の眼表面311まで水中を通る連続的な経路が存在する。バリア306は、音響エネルギーを変化させることなく容易に通過させ、従って、トランスデューサ305と患者の眼表面311との間の連続経路の一部を形成する。患者の眼の音響インピーダンスはほぼ水のそれであるので、トランスデューサからの音響エネルギーは、効率的に眼の中に伝達され、例えば角膜の表面のような眼の構成要素からトランスデューサに反射し返され得る。また図3には、主チャンバ301のための給水管307およびアイピース308のための別個の給水管309も示されている。認識することができるように、アイピースにおいて用いられる水は蒸留されるか、または眼の塩分濃度に合わせるために若干塩性であり得る。また、アイピースにおいて用いられる水は、患者に快適な温度で導入され得る。
【0060】
本発明の構成要素
走査ヘッド位置決め装置
走査ヘッド位置決め装置の機能は、その曲率中心が走査される眼の構成要素のほぼ曲率中心に位置するように配置されるアークガイド上に、トランスデューサヘッドが常に位置するように、アーク走査ヘッドアセンブリおよび超音波トランスデューサを位置決めすることである。好結果の走査は、多くの場合、アークアセンブリの曲率半径が、関心がある眼の構成要素の曲率半径にほぼ一致し、走査ヘッド位置決め装置が高周波超音波パルスの精度を生かすために正確に位置決めされることを必要とする。
【0061】
図4は、小型走査ヘッド位置決め機構の等角図を示す。軸方向のキャリヤーフレーム402および取り付け板403は主要アークスキャナアセンブリに固定される。矢印413によって示すように、スキャナヘッド取り付けアーム401は軸線方向に前後に可動である。スキャナヘッド取り付けアーム401は、矢印414によって示すように、その軸線を中心として回転することができる。スキャナヘッド取り付けアーム401は矢印411によって示すように上下に、および矢印412によって示すように前後に可動である。スキャナヘッド取り付けアーム401に取り付けられる走査ヘッドは、この図では示されていない。
【0062】
図5はさらに小型走査ヘッド位置決め機構を示す。図5は、スキャナヘッド取り付けアーム510の端部上に取り付けられた超音波トランスデューサ508とアークスキャナヘッド509を示している。これらの構成要素(スキャナヘッド取り付けアーム510、スキャナヘッド509、および超音波トランスデューサ508)は、水中で作用し、並進シール506および回転シール507によって位置決め機構の後部からシールされている。いかなる封止機構が用いられてもよいが、並進シール506は、好ましくは、走査ヘッドポジショナによって必要とされる小さなxおよびy動作によって屈曲することができる大きなゴム膜によって形成される。z軸シールおよび回転シール507は、主要アークスキャナアセンブリに固着される固定板501に取り付けられている。いかなる封止機構が用いられてもよいが、z軸および回転シール507は、典型的には、水に対面する溝を有する周囲溝タイプの封止機構によって形成される。前記シールはシールサイエンス社(Seal Science)から市販されているシールであるモデル810Vが好適である。前記シールは、水密シールを維持しながら、中心管の回転および軸線方向の並進の双方を可能にする。前記シールの断面は、増大した水圧が、半径方向のシール力を増大する方法でシールに作用するようなものである。シール面には陽極酸化アルミニウムが好適である。固定板502もまた主要アークスキャナアセンブリに固着される。走査ヘッドは、アキシャルピストン503または別の適当な機構によって軸線方向において前後(z−方向)に移動させることができる。走査ヘッドは回転ステッピングモーター(図示せず)または別の適当な装置によってz軸のまわりを回転させることができる(ベータ方向)。走査ヘッドは、ピストン505または別の適当な機構によって上下(y−方向)に移動させることができる。走査ヘッドは、ピストン504または別の適当な機構によって左右(x−方向)に移動させることができる。固定板501の左側または後方の構成要素は、大気中に残存するが、固定板501の右側または前方の構成要素は、アークスキャナが動作しているときには、水中に浸漬される。
【0063】
磁気検出システム
キャリッジは多数の駆動方法のうちのいずれかを用いて、アークガイドに沿って移動させることができる。好ましい実施形態において、ガイド軌道は、キャリッジの磁石と一緒にリニアモーター(図8および図9に下記に記載)を形成することができるように配置された巻線を収容している。また、好ましい実施形態において、ガイド軌道およびキャリッジによって支持された、好ましくはインクリメンタル型で磁気式である位置エンコーダーが存在する。前記位置エンコーダーは、外部回路構成が前記軌道に沿ったキャリッジの位置を検出することを可能にする。その位置情報は、キャリッジが前記軌道に沿って移動するにつれて、どの巻線にエネルギーを与えるかを制御するために用いられる。また、前記位置情報は、例えば、超音波B−スキャン画像においてパルス−エコー軌道の均一な物理的間隔を提供するように、超音波パルスの送出を開始させるために用いられる。認識することができるように、前記位置情報は超音波B−スキャン画像において、パルス−エコー軌道の非一様だが所望の物理的間隔を提供するように、超音波パルスの送出を開始させるために用いることができる。
【0064】
図6は磁気測位システムを示す。この測位システムは、アークガイドアセンブリに沿ったトランスデューサキャリッジに対して精密な位置データを提供する。前記位置情報は、次に、精密で正確な超音波走査が行われることを可能にする。図6は、先に記載した走査ヘッド位置決めアセンブリ上に取り付けられた走査ヘッドを示す。走査ヘッドは、アークガイドアセンブリ602およびトランスデューサキャリッジアセンブリ601から成る。トランスデューサ603は先に記載した。OTS磁気エンコーダー(例えばシコ(Siko) MSK5000など)は、トランスデューサキャリッジアセンブリ602の側面に取り付けられたハウジング604に収容されている。磁気エンコーダーは、アークガイド軌道に取り付けられている磁気ストリップ605(ハウジング604の下にある黒色の細片として示されている)を読み取ることにより、その位置を検出する。磁気ストリップ605は、交互に位置するN極/S極を備え、かつエンコーダーに知られている極間距離を有する可撓性磁性材料である。エンコーダーは、次に、該エンコーダーが磁気ストリップに沿って移動するにつれて、標準的な直角位相エンコーダーパルスを出力する。推奨される磁気ストリップを備えたこのエンコーダーのモデルは、1マイクロメートルの分解能、またはアークスキャナの半径において約0.0005度を与える。
【0065】
磁気測位システムは、アークキャリッジのためのアークガイド軌道上のホームポジションと、アークガイド軌道に沿って設置された、その間隔が正確に既知である一連の磁気櫛状部とに基づく。次に、アークキャリッジ内のコイルは、キャリッジが磁気櫛状部の上を通過するときに、電流パルスを計数し、アークガイド軌道に沿ったキャリッジの精密な位置を判定する。他の位置検出システムが可能である。これらは光学系(光学的バーが磁気櫛状部に置き代わる)、機械系および電気系(電位差計など)を備える。磁気検出システムは、周期的な清掃を必要とする光学系、および無機物および他の沈着物の蓄積を受ける機械系よりも好ましい。
【0066】
流体ベアリング
ベアリング機構はアークスキャナの別の構成要素である。ベアリングの機能は、図4および図5において上述したような走査ヘッド位置決め装置によって位置決めされたアークガイドアセンブリに沿ったトランスデューサアセンブリの滑らかな動作を可能にすることである。好結果の走査は、通常、高周波超音波パルスの精度を生かすために、トランスデューサアセンブリが、湾曲したアークガイドアセンブリに沿って、ジッタまたはジャーク(加加速度)がなく、滑らかに移動することを必要とする(物理学において、ジャークは加速度の変化率である。より正確には、加速度の時間微分、速度の二次微分または変位の三次微分)。
【0067】
キャリッジは、加圧下の液体の供給源と連通する1組の液体流路を有する。液体流路はまた、アークガイド軌道上の合わせ面に接して流体ベアリングを形成するキャリッジの滑らかに一致する面上に位置するポートと連通している。前記液体は、前記供給源から流路を通ってポートへと流れ、そしてそのポートを通って流れて、キャリッジとアークガイド軌道との間に流体膜を形成する。ポートからの圧力、および流体膜における圧力は、キャリッジとアークガイド軌道とを離れるように促すか、または強制して、キャリッジとアークガイド軌道とを分離させ、それらの間から流出する液体の薄膜との平衡状態に達する。流体ベアリングの既知の実施に続いて、流路の大きさは、流体ベアリングに安定性を提供するために、各ポートにおける圧力を他のポートを通る流れとはおおかた無関係とするように選択される。ポートが常に被覆されるように、流路および出口ポートは、アークガイド軌道ではなく、トランスデューサキャリッジに位置すること、すなわち液体物質流動要件を低減する配置が好ましい。
【0068】
下記に述べるように、リニアモーターは、トランスデューサキャリッジをアークガイドに沿って推進するために用いられる。トランスデューサキャリッジの永久磁石は、かなりの力でキャリッジをアークガイドに引きつける。これは、流体圧力によって発生する力を磁気吸引力とほぼ釣り合うようにさせることができるので、流体ベアリングシステムを用いることを可能にする。これは、アークガイドのトランスデューサキャリッジの任意の機械的抗力を最小限にし、該システムが滑らかにジッタを有することなく移動することを可能にする。
【0069】
図7は固定アークガイドアセンブリ704と、可動トランスデューサキャリッジアセンブリ702との間で作用する流体ベアリングを示す。アークガイドアセンブリ704が、一旦適所に移動され、図4および図5に記載した位置決め機構によって固定されると、トランスデューサキャリッジアセンブリ702の動作は、後の走査動作について、アークガイドアセンブリ704に沿うように束縛される。図7に示される図は、アークガイドアセンブリ704および可動トランスデューサキャリッジアセンブリ702を通る垂直断面であり、アークガイドアセンブリ704の残りの部分701は後の方で上方に湾曲している。アークガイドアセンブリ704は、図8および図9にさらに記載されているリニアモーターコイル要素706およびそれらの鉄心720を収容している。可動トランスデューサキャリッジアセンブリ702は、超音波トランスデューサ703、トランスデューサ台709および磁気センサーハウジング705を備える。水ホース(図示せず)は流体継手70によって接続される。トランスデューサ間で電子信号を送信し、位置検出手段間で電子信号を送信する電線用導管は図示されていないが、トランスデューサキャリッジアセンブリ702に取り付けられている。可動トランスデューサキャリッジアセンブリ702とアークガイドアセンブリ704との間における相対位置を判定するための位置検出手段は、例えば、図6に記載されているような、アークガイドアセンブリ704に沿った磁気的にコードされた細片および可動トランスデューサキャリッジアセンブリ702上に位置する磁気検出素子であり得る。
【0070】
可動トランスデューサキャリッジアセンブリ702とアークガイドアセンブリ704との間の相対位置を正確に検出する能力は、可動トランスデューサキャリッジアセンブリ702の非一様な動作に対応することができるので、重要になり得る。例えば、トランスデューサキャリッジアセンブリ702は、アークガイドの一端において休止状態から加速し、アークガイドの中心付近で一時的に維持され得る最高速度に達し、次いで、アークガイドの反対端で休止状態に減速し得る。アークガイドに沿ったトランスデューサキャリッジアセンブリ702位置を知ることの結果として、トランスデューサ703のパルシング周期および受信周期は、コヒーレント像が形成され得るように、アークガイドに沿ったトランスデューサ703の動作と関連するようにプログラムされ得る。非一様なトランスデューサキャリッジアセンブリ702の動作によって作動する能力は、流体ベアリングによって許容される滑らかな加速および減速によって可能となる。図7は、アークガイドアセンブリ704と可動トランスデューサキャリッジアセンブリ702との間に位置するベアリング表面711,712,713,714を示している。
【0071】
アーク走査ヘッドアセンブリ全体が水中にあるので、前記流体もまた水である流体ベアリングを用いることは自然なことである。前記流体は、トランスデューサキャリッジアセンブリ702上に取り付けられた小さなポンプによって加圧され、水は、トランスデューサキャリッジアセンブリ702のベアリング表面713,714に沿って一定間隔で位置する小さな孔を通って揚送される。主要アーク走査ヘッドチャンバの水は、一般に、約1バール(100000パスカル)または周囲圧力にある。ポンプは、典型的には周囲圧力より1/2〜2バール(50000〜200000パスカル)高い範囲の圧力で流体を搬送する。その後、加圧された流体は、トランスデューサキャリッジアセンブリ702をアークガイドアセンブリ704の表面から約5〜約10マイクロメートル持ち上げ、流体がトランスデューサキャリッジアセンブリ702のベアリング表面713,714に沿って位置する小さな孔を介して連続的に揚送されている間は、この分離を維持する。
【0072】
実験的に示したように、磁石707と鉄心720との間の強い引力のために、流体ベアリングが作動させられるまで、リニアモーターはトランスデューサキャリッジアセンブリ702を移動させることができない。一旦、流体がトランスデューサキャリッジアセンブリ702のベアリング表面713,714に沿って位置する小さな孔を介して揚送されると、トランスデューサキャリッジアセンブリ702は、上昇して数マイクロメートルの分離を達成し、アークガイド軌道に沿って、ジャークを生じることなく、自由に移動する。
【0073】
リニアモーター
モーターの機能は、眼の構成要素の超音波走査が行われるのを可能にするために、トランスデューサキャリッジアセンブリをアークガイドアセンブリに沿って移動させることである。アーク走査法ヘッド全体が水中に浸漬されているので、リニアモーターは水中で安全に作動させることができなければならない。
【0074】
以下の説明は、リニアモーターは、キャリッジ内に磁石を有し、かつ円形軌道内に巻線を有していると仮定する。これは、走査システムの基本的な動作を変更することなく、円形軌道の磁石およびキャリッジの巻線によって逆転させることができ得ることに注目すべきである。キャリッジに磁石を配置することは、本発明者に分かっている好ましい実施形態および最良の態様を表わす。
【0075】
トランスデューサキャリッジは該キャリッジに固着された一つ以上の磁石を有し、軌道は鉄のような磁性材料から製造されているか、磁性材料を含有している。前記磁石は、結果として生じる磁場がキャリッジを軌道に圧迫するか、または引き付けることができるように、キャリッジ内に配置される。軌道全体およびキャリッジが、通常動作中に水中に沈められなければならないので、磁性部品は、露出した鉄材料が磁気ステンレス鋼となるように選択すること、または水中浸漬からそれを保護するために、鉄をエポキシ樹脂のような材料中に封入することのいずれかによって、腐食から保護される。
【0076】
トランスデューサキャリッジアセンブリは、典型的には約0.1kg〜約0.3kgの範囲内の重量を有する。このキャリッジアセンブリ質量の範囲は、急速な加速および減速を可能にするには十分に軽いが、アークガイド軌道に沿ったトランスデューサキャリッジの動作における外来の機械的ジッタを除去するために十分な慣性を提供するには十分に重い。また、キャリッジがガイド軌道上で適切に平衡を保っていることが望まれるので、トランスデューサキャリッジの質量中心の位置も重要である。
【0077】
図8は、トランスデューサキャリッジアセンブリ803をアークガイドアセンブリ801に沿って移動させるためにリニア誘導モーターを含む装置の等角概略図である。図8は、超音波トランスデューサ804およびトランスデューサアセンブリ803を示している。超音波トランスデューサ804は、超音波トランスデューサ804が、アークガイドアセンブリ801の曲率半径によって定義される弧の曲率中心を常に指すように取り付けられている。トランスデューサキャリッジアセンブリ803は、リニア誘導モーター装置によって推進されて、アークガイドアセンブリ801に沿って移動する。トランスデューサキャリッジアセンブリ803の動作は一様でなくてもよい。例えば、トランスデューサキャリッジアセンブリ803は、アークガイドアセンブリ801の一端810において休止状態から加速し、アークガイドの中心811付近で一時的に維持され得る最高速度に達し、次いで、アークガイドアセンブリ801の反対端812で休止状態に減速し得る。好ましい実施形態において、永久磁石はトランスデューサキャリッジアセンブリ803内に設置され、電動界磁コイルは、固定アークアセンブリ801に形成された中心溝内に設置されている。そのような溝および界磁コイルの一例は、図7においてアークガイドアセンブリ704の溝内に配置された界磁コイル706によって見ることができる。
【0078】
図9は、アークガイドアセンブリ903に沿ってトランスデューサキャリッジを推進する電流および磁力の概略図を示している。トランスデューサキャリッジ902は、隣り合っているが、それらのN−S極性を反対の面上に有する2つの永久磁石904を有して示されている。2つの永久磁石904は好ましくは等しい大きさである。弧を形成するキャリッジ軌道903は、この側面図では同様に弧として形成されている鉄心906の周りに巻回された、いくつかの巻回伝導性コイル905を有して示されている。コイル905は、例えば図7に引出し線706によって示されるように、断面においてほぼ矩形である。矩形コイル巻線の長辺は、推進力(この力については下記で説明する)を最大限にするために、磁石の表面に隣接していることが好ましい。コイル905は、例えば銅、アルミニウムなどのような任意の導体材料で製造され得る。コイル905は、好ましくは、三個の隣接するコイルが、永久磁石904のいずれか一つとほぼ同一の幅を有するような大きさを有して離間されている。アークガイドのどちらかの端から出発して、三個の隣接するコイルの各組には三相電気回路によって電力を供給される。三相回路電圧はパルス幅変調(PWM)システムによって制御され、次いでパルス幅変調システムはトランスデューサキャリッジ902の位置によって制御される。アークガイド903に対するトランスデューサキャリッジ902の位置は、例えば、図6に記載されているような磁気ストリップセンサーシステムによって判定される。PWMの組み合わせ、正確な位置検出システム、アークガイドとトランスデューサキャリッジとの間の流体ベアリング(図7に記載)、およびトランスデューサキャリッジの質量は、鮮明で精密な高周波音響測定(約3MHz〜約60MHz)を行うために必須であるトランスデューサキャリッジ902の非常に滑らかな動作を提供する。
【0079】
本願では、永久磁石904を可動トランスデューサキャリッジ902に埋設し、コイル905をアークガイドアセンブリ903に埋設することが好ましい。永久磁石904の可動トランスデューサキャリッジ902内への埋設は、トランスデューサキャリッジアセンブリ902に質量を加える。これは、アークガイド軌道に沿ったその動作を滑らかに維持するのを助ける。走査ヘッドの位置決めに由来する動作は、トランスデューサキャリッジのアークガイド軌道に沿った前後の動作よりもはるかに小さいので、コイル905のアークガイドアセンブリ903内への埋設は、電源をコイルに接続する電線の水中における動きを低減する。すべてのコイルが三相電源によってエネルギーを与えられるので、これは、リニアモーターに対してわずかにエネルギー効率が劣る設計である。しかしながら、モーター効率は本願において主要な関心事ではない。
【0080】
図9の例で示されるトランスデューサキャリッジ位置によれば、三個のコイル905が各永久磁石904の下に中心が位置するように、永久磁石904間の間隙は、二個の隣接するコイル905間の間隙と整列させられる。電流は、各永久磁石の下に中心が位置する二個のコイルにおいて最大値にあるが、矢羽の端面図および矢じりの端面図によって表わされた電流の矢印によって示したように、反対方向にある。最大電流を伴うコイルに隣接するコイルにおいては、電流は、低いが、より小さな電流の矢印によって示されるように、同一方向である。この位置では、アーク903の同一方向に沿って磁石904の各々に及ぼされる力が存在する。磁石904はトランスデューサキャリッジ902に埋設され、取り付けられているので、トランスデューサキャリッジ902はアークガイドアセンブリに沿って推進される。
【0081】
この例では、コイル905は、形状がほぼ矩形である鉄心に巻回されている(例えば引出し線706によって図7に示したようにコイル線を切断しないようにするために丸い角を有するが)。推進力は、よく知られている方程式に従って、永久磁石の局所磁場と相互に作用する、永久磁石に隣接したコイル要素の電流から生じる。
【0082】
dF=I dl × B
前記式中、dFは差動力であり、
Iは、合計電流(各巻き線の電流×巻線の数)であり、
dlはコイル巻線の差動長さ(differential length)である。
【0083】
Xは、dlとBとの間のクロス積を表わし、
また、Bは永久磁石の局所磁場である。
図示されているように、前記力は、電流の方向および局所磁場B(local B-field)の方向の双方に直交しており、したがって、永久磁石上の力はアークガイドアセンブリに沿うものである。永久磁石に隣接したコイル巻線要素における電流によって力が生じることが注目される。永久磁石から離れているコイル巻線要素における電流によって生じる力は反対方向であるが、鉄心906によって効果的に遮蔽されるので非常に弱い。アーク軌道に直交するコイル巻線要素における電流によって引き起こされる力は、永久磁石の磁場と概して平行であり、よって、トランスデューサキャリッジ902上の推進力に寄与しない。
【0084】
永久磁石904は、その表面が永久磁石の磁極面と同一平面上にあるバックアイアン構成要素によって適所に保持される。2つの永久磁石904を備えたバックアイアンは、それにより本質的に、馬蹄形磁石を形成し、実際に適切に成形された馬蹄形磁石と置き換えることができる。それにより、バックアイアン、永久磁石904および鉄心906によって磁気回路が形成される。
【0085】
アイピース
アイピースは、超音波走査のための連続的な音響経路を完成する役目を果たし、その経路はトランスデューサから患者の眼の表面へと延びている。アイピースはまた患者の眼が浸漬される水と、アーク軌道アセンブリが収容されているチャンバ内の水とを分離する。最終的に、アイピースは患者に振れ止めを提供し、患者が走査の間に安定した状態でいることを支援する。実用的には、アイピースは頻繁な漏出問題を有してはならず、患者にとって快適であるべきであり、新規の患者毎に交換されなければならないので、その製造原価は低くなければならない。
【0086】
図10は、これらの要件を満たすアイピースの実施形態を示している。アイピースは、取り付けリング1001と、眼部シールリング1002とから成る。取り付けリング1001は主要アークスキャナアセンブリに取り付けられており、典型的には、主要アークスキャナアセンブリの恒久的な部分である。ここに示されているように、取り付けリング1001は、眼部シールリング1002上に位置する取り付け機構1007を受容し得るいくつかの取り付け溝1006を有する。この実施形態において、取り付け機構1007は取り付け溝1006内に押し下げられ(1012)、次いで、適所に回転されて(1011)、眼部シールリング1002を取り付け1001に対してシールする機械的接続を形成して、漏水を防止する。これはバイオネット型接続としても知られている。取り付け機構1007が適所に回転されると(1011)圧縮される封止リング1005が存在してもよい。眼部シールリング1002は、軟質ゴムまたは発泡体の成形フェイスシール1003を有しており、フェイスシール1003は、走査されるべき眼のまわりの典型的なヒト顔面に対して密封するように設計されている。眼部シールリング1002もまた、上部にその給水管1004と、下部に排水管1014とを有して示されている。密封された衛生バリア(図示せず)は、製造中に、眼部シールリング1002の一部として形成され、典型的には、成形フェイスシール1003が位置1008で眼部シールリング1002の本体に接続される場所に位置する。
【0087】
衛生バリアまたは膜は、それが細菌、ウイルス、菌類および他の有害な可能性がある生物学的および化学的不純物に対して不透過性であるかぎり、透水性であってもよいし、または半透水性であってもよい。前記膜は、水中に溶解または保持され得る生物学的および非生物学的不純物からの優れた分離を提供するために、好ましくは不透水性である。前記膜は、ビデオカメラが前記膜を介して眼(図3を参照)を観察することを可能にするために、好ましくは光学的に透明である。前記膜は、好ましくは、有意なエネルギー吸収または反射を行うことなく、音響パルスを通過させる。これらの条件は、音響パルス波長よりも薄い膜によって実質的に満たすことができる。アイピース膜は、例えばポリエチレン、マイラー、ポリプロピレン;塩化ビニリデン;ポリ塩化ビニリデン;またはポリエチレン系であり、接着剤を含まないデュラシール(DuraSeal)(ダイバーシファイド・バイオテク(Diversified Biotech)社製)のような材料から製造されている。好ましい材料は、水のそれより若干だけ高い音響インピーダンスを有する医療用等級ポリエチレンである(水の154万kg/m2−sと比較して、約233万kg/m2−s)。前記膜の厚さは、好ましくは約10〜約30マイクロメートルの範囲にある。この厚さは、10MHzで約150マイクロメートル、80MHzで約20マイクロメートルである水中における音響波長の一部である。
【0088】
図11は、また上述した実用要件を満たすアイピースの代替の実施形態を示す。アイピースは、取り付けリング1101と、眼部シールリング1102とから成る。取り付けリング1101は主要アークスキャナアセンブリに取り付けられており、典型的には、主要アークスキャナアセンブリの恒久的な部分である。ここに示されているように、取り付けリング11001は、眼部シールリング1102上に位置する取り付け機構11004を受容し得るいくつかの取り付け溝1106を有する。この実施形態において、取り付け機構1104は取り付け溝1106内に押し下げられ(1111)、次いで、適所にスナップ留めされて、眼部シールリング1102を取り付けリング1101に対してシールする機械的接続を形成して、漏水を防止する。これはまたスナップ式型接続としても知られている。取り付けリング1101上にはシール面1105が存在し、眼部シールリング1102上には、対応するシール面(図示せず)が存在し得る。前記対応するシール面は、取り付け機構1104が適所にスナップ留めされると、押し付けられる。眼部シールリング1102は、軟質ゴムまたは発泡体の成形フェイスシール1103を有しており、フェイスシール1103は、走査されるべき眼のまわりの典型的なヒト顔面に対して密封するように設計されている。眼部シールリング1102もまた、上部にその給水管1104と、下部に排水管1114とを有して示されている。密封された衛生バリア(図示せず)は、製造中に、眼部シールリング1102の一部として形成され、典型的には、成形フェイスシール1103が位置1108で眼部シールリングの本体802に接続される場所に位置する。
【0089】
図12はアークスキャナのためのアイピースのさらに別の実施形態を示す。アイピースは、取り付けリング1202と、眼部シールリング1201とから成る。取り付けリング1202は主要アークスキャナアセンブリに取り付けられており、典型的には、主要アークスキャナアセンブリの恒久的な部分である。ここに示されているように、取り付けリング1201は、眼部シールリング1201上に位置する取り付け機構を受容し得る、図10に記載したような、いくつかの取り付け溝を有する。この実施形態において、取り付け機構は取り付け溝内に押し下げられ、次いで、図10に記載したように、適所に回転されて、眼部シールリングを取り付けリングに対してシールする機械的接続を形成して、漏水を防止する。これはバイオネット型接続としても知られている。図12に開示された実施形態において、眼部シールリング1201の一部として成形された溝1203と、取り付けリング1202の一部として成形された対応する舌状部1204とからなる付加的な密封形状特徴が存在する。眼部シールリング1201が取り付けリング1202によって適所に回転されると、前記舌状部と溝とが図13に記載したようなねじ接続部を形成し、該ねじ接続はそれらの部分が適所に回転されるにつれて圧縮する。これは、密封作用においてねじ山付きキャップを有するペットボトルに類似している。眼部シールリング1201および取り付けリング1202の双方は、典型的には、プラスチック製であり、プラスチックのコンプライアンスは水密シールの形成をさらに支援する。眼部シールリング1201は、軟質ゴムまたは発泡体のフェイスシール(図示せず)を有しており、そのフェイスシールは、走査されるべき眼のまわりの典型的なヒト顔面に対して密封するように設計されている。密封された衛生バリア(図示せず)は、製造中に、眼部シールリング1201の一部として形成され、典型的には、成形フェイスシールが眼部シールリング1201の本体に接続される場所に位置する。
【0090】
図13は、図12のアイピースのための密封方法の舌状部および溝を示す側断面図を示している。図13aは、取り付けリング1302と眼部シールリング1301とから成るアイピースを示す。前記アイピースは、引出し線1303によって示される舌状部および溝の密封システムを有する断面図において示されている。
【0091】
図13bは、図13aのアイピースのための密封方法の舌状部および溝部分についての近接図を示している。アイピース取り付けリング1312は、アイピース取り付けリング1312に成形された舌状部1314を有する。眼部シールリング1311は、眼部シールリング1311に成形された対応する溝1313を有する。眼部シールリング1311が取り付けリング1312によって適所に回転されると、舌状部1314および溝1313は、それらの部分が適所に回転されるにつれて、押し付け、必要に応じて変形し、密封を形成する。
【0092】
前述したように、眼部シールリングは、典型的には、軟質ゴムまたは発泡体の成形フェイスシールを備え、フェイスシールは、走査されるべき眼のまわりの典型的なヒト顔面に対してシールするように設計されている。成形フェイスシールはまた、眼のまわりの典型的なヒト顔面に対する優れた密封作用を提供するために、例えば鉱油を含浸させた発泡材料から製造され得る。取り外し可能な眼部シールリングに成形された、中空の軟質ゴムまたは柔軟なプラスチックリングによって、代替の外部シール機構も提供することができる。前記中空のプラスチックリングは、患者がアイピースにその顔面を押しつけた後、水で充填され得る。これは、アークスキャナの第3の独立した水で充填された構成要素となり、眼のまわりに不規則な顔の形状特徴を有する患者の眼のまわりの顔面に対するより良好なシールに役立つであろう。
【0093】
本発明の多数の変化例および変更例は用いることができる。認識されるように、他のものを提供することなく、本発明の一部の特徴を提供することは可能であろう。例えば、実施形態はアーク走査装置に関して検討されているが、様々な実施形態がセクター走査装置のような他の種類の走査装置と共に用いられ得ることは理解されるべきである。
【0094】
本発明は、様々な実施形態において、本願において描写され記載された構成要素、方法、工程、システムおよび装置の少なくとも何れか一つを、それらの様々な実施形態、下位の組み合わせ、および部分集合を含めて、実質的に包含する。当業者は、本開示を理解した後に、本発明を製造し用いる方法を理解するであろう。本発明は、様々な実施形態において、例えば、性能を向上させるため、容易にするためや実施費用を低減するために、従来の装置またはプロセスにおいて用いられてきた可能性がある品目が不在であることを含む、本願またはその様々な実施形態において描写や記載されていない品目が不在である装置およびプロセスを提供することを包含する。
【0095】
本発明の上記の検討は例証および説明のために示されている。上記は、本発明を本願において開示した形態に限定するものではない。前述の詳細な説明において、例えば、本発明の様々な特徴は、開示を簡素化する目的で、一つ以上の実施形態にグループ化されている。本開示のこの方法は、権利請求する発明が、各請求項において明白に述べられているよりも多くの特徴を必要とするという意図を表すものと解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が表すように、決して先に開示した単一の実施形態のすべての特徴に発明的要素が存在するわけではない。したがって、以下の特許請求の範囲は、これによりこの詳細な説明に組み入れられ、各請求項は、本発明の別個の好ましい実施形態として自立している。
【0096】
さらに本発明の説明は、一つ以上の実施形態および特定の別例および改変例の説明を含んでいるが、例えば、本開示を理解した後に当業者の技能および知識の範囲内にあり得るような、他の別例および改変例は、本発明の範囲内である。権利請求されるものに対する、代替の、交換可能な、および/または均等な構造、機能、範囲、または工程を含めて、許される範囲内で別の実施形態を含む権利を得るように意図される。上記は、そのような代替の、交換可能なおよび/または均等な構造、機能、範囲、または工程が本願に開示されているか否かに係わらない。また、いかなる特許可能な主題も公に供する意図はない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)患者の眼を受容するためのアイピースと、
(b)超音波トランスデューサに接触した第1液体チャンバと、
(c)前記超音波トランスデューサによって撮像される患者の眼に接触した第2液体チャンバと、
(d)前記第1チャンバと前記第2液体チャンバとを分離するバリアとを備える撮像装置において、
(D1)前記第2液体チャンバは、前記第1液体チャンバから液体を排出するための排出ポートを備えること、及び
(D2)前記バリアは前記液体に対して透過性であるが、選択された生物学的微生物に対しては不透過性であり、前記微生物はバクテリア、ウイルスおよび菌類のうちから選択されることのうちの少なくとも一方が当てはまる、撮像装置。
【請求項2】
(D1)が当てはまり、かつ前記液体は水である、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
(D2)が当てはまり、かつ前記液体は水である、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記バリアは、ポリマー及びオリゴマーのうち少なくとも何れか一つを含み、前記オリゴマーが、エチレン、マイラー、プロピレン、塩化ビニリデンおよびそれらの混合物のうちの少なくとも一種からなる、請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記バリアは実質的なインピーダンスを有することなく音響エネルギーを通過させ、前記バリアの厚さは水中での音響波長未満であり、前記バリアの厚さは約10〜約30マイクロメートルの範囲内である、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項6】
超音波トランスデューサ、前記超音波トランスデューサを係合する可動キャリッジ、および前記キャリッジが沿って移動するガイド備え、前記キャリッジ、前記超音波トランスデューサ、および前記ガイドが液体中に配置されている超音波アーク走査装置において、
前記ガイドおよび前記キャリッジのうちの少なくとも一方において複数の液体流路を備え、前記液体が、加圧されて前記液体流路を通って流れ、かつ前記ガイドと前記キャリッジとの間の選択された界面に沿って流体膜を形成することにより、前記選択された界面における前記ガイドと前記キャリッジとの間の距離が、前記加圧された液体の不在時よりも、前記加圧された液体の存在時におけるほうが大きいことを特徴とする、超音波アーク走査装置。
【請求項7】
前記液体流路および前記加圧された液体が、前記キャリッジと前記ガイドとの間に流体ベアリングを形成し、前記液体は水である、請求項6に記載の超音波アーク走査装置。
【請求項8】
前記流体ベアリングに安定性を提供するために、各液体流路における圧力を、他の液体流路を介した液体の流れから実質的に独立させるように、各液体流路の大きさが選択されている、請求項7に記載の超音波アーク走査装置。
【請求項9】
前記液体流路は前記キャリッジ内に配置されている、請求項6に記載の超音波アーク走査装置。
【請求項10】
前記液体は前記ガイド上に取り付けられたポンプによって加圧され、前記ポンプは、周囲の液体の周囲圧力より約0.5〜約2バール(約50000〜約200000パスカル)高い圧力で液体を送出する、請求項6に記載の超音波アーク走査装置。
【請求項11】
前記距離は約5〜約10マイクロメートルの範囲にある、請求項6に記載の超音波アーク走査装置。
【請求項12】
前記キャリッジはリニアモーターによって移動され、前記リニアモーターは、前記キャリッジおよび前記ガイドの一方に配置された磁石と、前記キャリッジおよび前記ガイドの他方に位置するコイルによって包囲された鉄心とを備える、請求項6に記載の超音波アーク走査装置。
【請求項13】
超音波トランスデューサ、その超音波トランスデューサと係合する可動キャリッジ、および前記キャリッジが沿って移動するガイドを備え、前記キャリッジ、前記超音波トランスデューサ、および前記ガイドは液体中に配置されている超音波アーク走査装置において、
前記ガイドに沿ってキャリッジを移動させるためのモーターを備え、前記モーターは、前記キャリッジおよび前記ガイドのうちの少なくとも一方に配置された少なくとも一つの磁石と、前記キャリッジおよび前記ガイドのうちの他方に配置された少なくとも一つの電気コイルに包囲された鉄含有コアとを備えることを特徴とする、超音波アーク走査装置。
【請求項14】
前記少なくとも一つの磁石は前記キャリッジ内に配置され、前記電気コイルおよび前記鉄含有コアは前記ガイド内に配置され、前記少なくとも一つの磁石は、互いに反対になっているN−S極性を有して、隣り合って配置されている第1磁石および第2磁石を含み、前記少なくとも一つの電気コイルの長寸側は、推進力を実質的に最大にするように、前記磁石の一面に隣接している、請求項13に記載の超音波アーク走査装置。
【請求項15】
前記キャリッジの質量は約0.1〜約0.3kgの範囲にあり、前記少なくとも一つの電気コイルは複数のコイルセグメントを備え、前記コイルセグメントの複数のサブセットの各々は、電気回路によって選択的に、かつ独立して、電力が供給されており、前記コイルセグメントのサブセットにおける電流と、前記第1磁石および前記第2磁石の局所磁場Bとによってもたらされる力は、共通の方向にあり、前記第1磁石および前記第2磁石は、バックアイアンによって接続されて、蹄鉄型形状の磁性アセンブリを形成する、請求項14に記載の超音波アーク走査装置。
【請求項16】
前記ガイドの支持体に沿った水の進入を抑制する並進シールをさらに備え、前記支持体は、前記超音波トランスデューサを患者の眼からの選択された距離に配置するために、その長さに沿って並進可能である、請求項13に記載の超音波アーク走査装置。
【請求項17】
前記ガイドの支持体に沿った水の進入を抑制する回転シールをさらに備え、前記支持は、前記超音波トランスデューサを体患者の眼に対して選択された向きに配置するために回転可能である、請求項13に記載の超音波アーク走査装置。
【請求項18】
前記回転シールは固定板に取り付けられている、請求項17に記載の超音波アーク走査装置。
【請求項19】
超音波トランスデューサ、前記超音波トランスデューサと係合する可動キャリッジ、および前記キャリッジが沿って移動するガイド備え、前記キャリッジ、前記超音波トランスデューサ、および前記ガイドは液体中に配置されている超音波アーク走査装置であって、
前記ガイドに関する前記キャリッジの位置を判定するキャリッジ位置検出装置を備えることを特徴とする、超音波アーク走査装置。
【請求項20】
前記位置検出装置は、前記キャリッジ上に取り付けられた位置エンコーダーを備え、前記位置エンコーダーは、前記ガイドの長手方向の一部に沿って配置された磁気ストリップを読み取ることにより、前記キャリッジの位置を検出する請求項19に記載の超音波アーク走査装置。
【請求項21】
前記位置検出装置は、前記キャリッジ上に取り付けられた光学エンコーダーを備え、前記光学エンコーダーは、前記ガイドの長手方向の一部を光によって照明し、光の屈折、回折、および反射の分布のうちの一つ以上を検出することにより、前記キャリッジの位置を検出する、請求項19に記載の超音波アーク走査装置。
【請求項22】
前記光学エンコーダーは一定長のガイドに沿って配置されたバーコードを照明し、前記バーコードは、前記ガイドの長手方向の一部に沿った任意の位置で反射光の特有の分布を生成する、請求項21に記載の超音波アーク走査装置。
【請求項23】
前記位置検出装置は、磁場センサーを備え、検出された磁場は、前記ガイドに沿った位置に関連する、請求項19に記載の超音波アーク走査装置。
【請求項24】
前記位置検出装置は機械的計数器を備え、前記機械的計数器は計数を生成し、その計数は前記ガイドに沿った位置に関連する、請求項19に記載の超音波アーク走査装置。
【請求項25】
ガイドに沿ってキャリッジを移動させるためのモーターであって、前記モーターは、前記キャリッジおよび前記ガイドのうちの少なくとも一方に配置された少なくとも一つの磁石と、前記キャリッジおよび前記ガイドのうちの他方に配置された複数の電気コイルセグメントに包囲された鉄含有コアとを備える、モーターと、
選択された時点において、検出された前記キャリッジの位置に近接した前記電気コイルセグメントに選択的にエネルギーを与えるように動作可能である制御装置とをさらに備える、請求項19に記載の超音波アーク走査装置。
【請求項26】
選択した時点において、検出された前記キャリッジの位置に応答して、前記超音波トランスデューサに選択的にエネルギーを与えて、超音波パルスの、非一様な所望の物理的間隔を生じる制御装置をさらに備える、請求項19に記載の超音波アーク走査装置。
【請求項27】
速度および加速度の少なくとも一方が、前記ガイドに沿って非一様である、請求項19に記載の超音波アーク走査装置。
【請求項28】
超音波トランスデューサを備え、前記超音波トランスデューサは液体中に配置されている超音波走査装置において、
アイピースシールリングを有するアイピースを備え、前記アイピースシールリングはフェイスシールリングを有し、そのフェイスシールリングは患者の顔面に適合するように液体で充填されていることを特徴とする、超音波走査装置。
【請求項29】
前記フェイスシールリングは、該フェイスシールリングを液体で充填するための供給管を備え、前記液体は水である、請求項28に記載の超音波走査装置。
【請求項30】
前記アイピースシールリングは、前記アイピースの取り付けリングに取り外し可能に接続されており、前記アイピースシールリングは衛生バリアを備え、前記衛生バリアは液体に対して透過性であるが、選択された生物学的微生物に対しては不透過性であり、前記微生物はバクテリア、ウイルスおよび菌類のうちから選択される、請求項28に記載の超音波走査装置。
【請求項31】
前記アイピースシールリングと前記取り付けリングとの間には変形可能な封止リングが配置されており、前記アイピースシールリングが前記取り付けリングに取り付けられると、前記封止リングは、液体の漏出に対して不透過性シールを提供するように変形される、請求項30に記載の超音波走査装置。
【請求項1】
(a)患者の眼を受容するためのアイピースと、
(b)超音波トランスデューサに接触した第1液体チャンバと、
(c)前記超音波トランスデューサによって撮像される患者の眼に接触した第2液体チャンバと、
(d)前記第1チャンバと前記第2液体チャンバとを分離するバリアとを備える撮像装置において、
(D1)前記第2液体チャンバは、前記第1液体チャンバから液体を排出するための排出ポートを備えること、及び
(D2)前記バリアは前記液体に対して透過性であるが、選択された生物学的微生物に対しては不透過性であり、前記微生物はバクテリア、ウイルスおよび菌類のうちから選択されることのうちの少なくとも一方が当てはまる、撮像装置。
【請求項2】
(D1)が当てはまり、かつ前記液体は水である、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
(D2)が当てはまり、かつ前記液体は水である、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記バリアは、ポリマー及びオリゴマーのうち少なくとも何れか一つを含み、前記オリゴマーが、エチレン、マイラー、プロピレン、塩化ビニリデンおよびそれらの混合物のうちの少なくとも一種からなる、請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記バリアは実質的なインピーダンスを有することなく音響エネルギーを通過させ、前記バリアの厚さは水中での音響波長未満であり、前記バリアの厚さは約10〜約30マイクロメートルの範囲内である、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項6】
超音波トランスデューサ、前記超音波トランスデューサを係合する可動キャリッジ、および前記キャリッジが沿って移動するガイド備え、前記キャリッジ、前記超音波トランスデューサ、および前記ガイドが液体中に配置されている超音波アーク走査装置において、
前記ガイドおよび前記キャリッジのうちの少なくとも一方において複数の液体流路を備え、前記液体が、加圧されて前記液体流路を通って流れ、かつ前記ガイドと前記キャリッジとの間の選択された界面に沿って流体膜を形成することにより、前記選択された界面における前記ガイドと前記キャリッジとの間の距離が、前記加圧された液体の不在時よりも、前記加圧された液体の存在時におけるほうが大きいことを特徴とする、超音波アーク走査装置。
【請求項7】
前記液体流路および前記加圧された液体が、前記キャリッジと前記ガイドとの間に流体ベアリングを形成し、前記液体は水である、請求項6に記載の超音波アーク走査装置。
【請求項8】
前記流体ベアリングに安定性を提供するために、各液体流路における圧力を、他の液体流路を介した液体の流れから実質的に独立させるように、各液体流路の大きさが選択されている、請求項7に記載の超音波アーク走査装置。
【請求項9】
前記液体流路は前記キャリッジ内に配置されている、請求項6に記載の超音波アーク走査装置。
【請求項10】
前記液体は前記ガイド上に取り付けられたポンプによって加圧され、前記ポンプは、周囲の液体の周囲圧力より約0.5〜約2バール(約50000〜約200000パスカル)高い圧力で液体を送出する、請求項6に記載の超音波アーク走査装置。
【請求項11】
前記距離は約5〜約10マイクロメートルの範囲にある、請求項6に記載の超音波アーク走査装置。
【請求項12】
前記キャリッジはリニアモーターによって移動され、前記リニアモーターは、前記キャリッジおよび前記ガイドの一方に配置された磁石と、前記キャリッジおよび前記ガイドの他方に位置するコイルによって包囲された鉄心とを備える、請求項6に記載の超音波アーク走査装置。
【請求項13】
超音波トランスデューサ、その超音波トランスデューサと係合する可動キャリッジ、および前記キャリッジが沿って移動するガイドを備え、前記キャリッジ、前記超音波トランスデューサ、および前記ガイドは液体中に配置されている超音波アーク走査装置において、
前記ガイドに沿ってキャリッジを移動させるためのモーターを備え、前記モーターは、前記キャリッジおよび前記ガイドのうちの少なくとも一方に配置された少なくとも一つの磁石と、前記キャリッジおよび前記ガイドのうちの他方に配置された少なくとも一つの電気コイルに包囲された鉄含有コアとを備えることを特徴とする、超音波アーク走査装置。
【請求項14】
前記少なくとも一つの磁石は前記キャリッジ内に配置され、前記電気コイルおよび前記鉄含有コアは前記ガイド内に配置され、前記少なくとも一つの磁石は、互いに反対になっているN−S極性を有して、隣り合って配置されている第1磁石および第2磁石を含み、前記少なくとも一つの電気コイルの長寸側は、推進力を実質的に最大にするように、前記磁石の一面に隣接している、請求項13に記載の超音波アーク走査装置。
【請求項15】
前記キャリッジの質量は約0.1〜約0.3kgの範囲にあり、前記少なくとも一つの電気コイルは複数のコイルセグメントを備え、前記コイルセグメントの複数のサブセットの各々は、電気回路によって選択的に、かつ独立して、電力が供給されており、前記コイルセグメントのサブセットにおける電流と、前記第1磁石および前記第2磁石の局所磁場Bとによってもたらされる力は、共通の方向にあり、前記第1磁石および前記第2磁石は、バックアイアンによって接続されて、蹄鉄型形状の磁性アセンブリを形成する、請求項14に記載の超音波アーク走査装置。
【請求項16】
前記ガイドの支持体に沿った水の進入を抑制する並進シールをさらに備え、前記支持体は、前記超音波トランスデューサを患者の眼からの選択された距離に配置するために、その長さに沿って並進可能である、請求項13に記載の超音波アーク走査装置。
【請求項17】
前記ガイドの支持体に沿った水の進入を抑制する回転シールをさらに備え、前記支持は、前記超音波トランスデューサを体患者の眼に対して選択された向きに配置するために回転可能である、請求項13に記載の超音波アーク走査装置。
【請求項18】
前記回転シールは固定板に取り付けられている、請求項17に記載の超音波アーク走査装置。
【請求項19】
超音波トランスデューサ、前記超音波トランスデューサと係合する可動キャリッジ、および前記キャリッジが沿って移動するガイド備え、前記キャリッジ、前記超音波トランスデューサ、および前記ガイドは液体中に配置されている超音波アーク走査装置であって、
前記ガイドに関する前記キャリッジの位置を判定するキャリッジ位置検出装置を備えることを特徴とする、超音波アーク走査装置。
【請求項20】
前記位置検出装置は、前記キャリッジ上に取り付けられた位置エンコーダーを備え、前記位置エンコーダーは、前記ガイドの長手方向の一部に沿って配置された磁気ストリップを読み取ることにより、前記キャリッジの位置を検出する請求項19に記載の超音波アーク走査装置。
【請求項21】
前記位置検出装置は、前記キャリッジ上に取り付けられた光学エンコーダーを備え、前記光学エンコーダーは、前記ガイドの長手方向の一部を光によって照明し、光の屈折、回折、および反射の分布のうちの一つ以上を検出することにより、前記キャリッジの位置を検出する、請求項19に記載の超音波アーク走査装置。
【請求項22】
前記光学エンコーダーは一定長のガイドに沿って配置されたバーコードを照明し、前記バーコードは、前記ガイドの長手方向の一部に沿った任意の位置で反射光の特有の分布を生成する、請求項21に記載の超音波アーク走査装置。
【請求項23】
前記位置検出装置は、磁場センサーを備え、検出された磁場は、前記ガイドに沿った位置に関連する、請求項19に記載の超音波アーク走査装置。
【請求項24】
前記位置検出装置は機械的計数器を備え、前記機械的計数器は計数を生成し、その計数は前記ガイドに沿った位置に関連する、請求項19に記載の超音波アーク走査装置。
【請求項25】
ガイドに沿ってキャリッジを移動させるためのモーターであって、前記モーターは、前記キャリッジおよび前記ガイドのうちの少なくとも一方に配置された少なくとも一つの磁石と、前記キャリッジおよび前記ガイドのうちの他方に配置された複数の電気コイルセグメントに包囲された鉄含有コアとを備える、モーターと、
選択された時点において、検出された前記キャリッジの位置に近接した前記電気コイルセグメントに選択的にエネルギーを与えるように動作可能である制御装置とをさらに備える、請求項19に記載の超音波アーク走査装置。
【請求項26】
選択した時点において、検出された前記キャリッジの位置に応答して、前記超音波トランスデューサに選択的にエネルギーを与えて、超音波パルスの、非一様な所望の物理的間隔を生じる制御装置をさらに備える、請求項19に記載の超音波アーク走査装置。
【請求項27】
速度および加速度の少なくとも一方が、前記ガイドに沿って非一様である、請求項19に記載の超音波アーク走査装置。
【請求項28】
超音波トランスデューサを備え、前記超音波トランスデューサは液体中に配置されている超音波走査装置において、
アイピースシールリングを有するアイピースを備え、前記アイピースシールリングはフェイスシールリングを有し、そのフェイスシールリングは患者の顔面に適合するように液体で充填されていることを特徴とする、超音波走査装置。
【請求項29】
前記フェイスシールリングは、該フェイスシールリングを液体で充填するための供給管を備え、前記液体は水である、請求項28に記載の超音波走査装置。
【請求項30】
前記アイピースシールリングは、前記アイピースの取り付けリングに取り外し可能に接続されており、前記アイピースシールリングは衛生バリアを備え、前記衛生バリアは液体に対して透過性であるが、選択された生物学的微生物に対しては不透過性であり、前記微生物はバクテリア、ウイルスおよび菌類のうちから選択される、請求項28に記載の超音波走査装置。
【請求項31】
前記アイピースシールリングと前記取り付けリングとの間には変形可能な封止リングが配置されており、前記アイピースシールリングが前記取り付けリングに取り付けられると、前記封止リングは、液体の漏出に対して不透過性シールを提供するように変形される、請求項30に記載の超音波走査装置。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13a】
【図13b】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13a】
【図13b】
【公表番号】特表2011−508651(P2011−508651A)
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541542(P2010−541542)
【出願日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/088671
【国際公開番号】WO2009/088947
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(510183383)アークスキャン インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】ARCSCAN,INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/088671
【国際公開番号】WO2009/088947
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(510183383)アークスキャン インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】ARCSCAN,INC.
【Fターム(参考)】
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