説明

撮像装置および撮像方法

【課題】ホワイトバランス処理において信号飽和が防止でき、また画像信号のSN比を向上できる撮像技術を提供する。
【解決手段】撮像装置は、画像信号のSN比を向上させるため、R(赤)、B(青)が高感度に設定される撮像センサを有している。2850Kの光源下では、撮像センサにおけるRチャンネル(Rch)の信号レベルが大きくなるため、AE制御により全(RGB)チャンネルの撮像動作点を下げる。これにより、Rchではホワイトバランス処理においてゲインダウンが生じないこととなる。同様に、10000Kの光源下でも、撮像センサにおけるBchの信号レベルが大きくなるため、AE制御により全(RGB)チャンネルの撮像動作点を下げる。その結果、ホワイトバランス処理において信号飽和が防止でき、また画像信号のSN比を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数色のフィルタが配列された単板の画素配列を有し、被写体に係る出力信号を生成する撮像手段を利用する撮像技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
デジタルカメラ(撮像装置)の小型化は著しく、また高感度化という市場の要求も大きい。このため、撮像センサの画素サイズは小さくなりダイナミックレンジが犠牲になる傾向が強くなっている。また、高感度を達成するために、画像処理回路等での感度アップ率が大きくSNの劣化も問題となっている。
【0003】
特に色に関しては、デジタルカメラの場合、色温度2850K〜10000K程度の照明光源に対応する必要があり、RGBのホワイトバランス補正用の増幅率が各光源で大きく異なる。例えば図10に示すように、色温度2850Kの光源下や色温度10000Kの光源下のように分光が偏った場合には、特定の色チャンネルについてWBゲインが高くなるため、画像信号のSN劣化が顕著になる。
【0004】
そこで、これらの光源を考慮し、画像信号のSN比を向上させる手法として、撮像センサにおけるR(赤)やB(青)の感度をアップする方法がある。
【0005】
また、例えば、特許文献1では、撮像センサから出力される信号をA/D変換器に入力する前に各色の信号レベルを調整することにより、ホワイトバランス処理において量子化ノイズに起因する画像劣化を抑える技術が開示されている。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−309393号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の撮像センサの感度をアップする方法では、RやBに対して高感度となっているため、例えば図11に示すように、2850Kや10000Kなど分光が偏った光源下において感度アップされたチャンネルで信号飽和が生じ、ハイライト部がクリップされた着色現象Q1、Q2が発生してしまう。
【0008】
また、特許文献1の技術を応用した場合には、上記の信号飽和が改善されるものの、A/D変換前に各色信号を取出す回路などが必要で、デジタルカメラの構成が複雑になる。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ホワイトバランス処理において信号飽和を防止でき、また画像信号のSN比を向上できる撮像技術を提供することを第1の目的とする。
【0010】
また、この発明の第2の目的は、そのような利点を持つ撮像装置を複雑な構成を用いずに実現することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、撮像装置であって、(a)複数色のフィルタが配列された単板の画素配列を有し、被写体に係る出力信号を生成する撮像手段と、(b)前記被写体に係るホワイトバランス情報を取得する取得手段と、(c)前記ホワイトバランス情報に応じて露出制御を変更し、前記出力信号の動作点を所定レベルに制御する動作点制御手段と、を備える。
【0012】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る撮像装置において、(d)前記出力信号を増幅し、増幅信号を生成するアナログ増幅手段と、(e)前記増幅信号をデジタル変換して、デジタル信号を生成する変換手段と、(f)前記デジタル信号を前記複数色の各色ごとに増幅し、画像出力信号を生成するデジタル増幅手段と、をさらに備え、前記画像出力信号の動作点は、前記アナログ増幅手段の増幅率および/または前記デジタル増幅手段の増幅率を変更することで調整される。
【0013】
また、請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明に係る撮像装置において、(g)前記動作点制御手段が能動化される状態と、前記動作点制御手段が不能化される状態とを切替える切替手段、をさらに備える。
【0014】
また、請求項4の発明は、撮像装置であって、(a)複数色のフィルタが配列された単板の画素配列を有し、被写体に係る出力信号を生成する撮像手段と、(b)前記被写体に係るホワイトバランス情報を取得する取得手段と、(c)前記複数色の各色ごとに設定された重み付け係数を各色ごとの出力信号に乗算したものを加算して、輝度信号を生成する信号生成手段と、を備え、前記信号生成手段は、(c−1)前記ホワイトバランス情報に応じて、前記重付け係数を変更する変更手段、を有する。
【0015】
また、請求項5の発明は、複数色のフィルタが配列された単板の画素配列を有し、被写体に係る出力信号を生成する撮像手段と撮像光学系とを備える撮像装置を利用する撮像方法であって、(a)前記被写体に係るホワイトバランス情報を取得する取得工程と、(b)前記ホワイトバランス情報に応じて、前記撮像光学系に関する分光特性を変更する変更工程と、(c)前記ホワイトバランス情報に応じて露出制御を変更し、前記出力信号の動作点を所定レベルに制御する制御工程と、を備える。
【0016】
【発明の実施の形態】
<第1実施形態>
<撮像装置の要部構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係る撮像装置1Aの機能ブロックを示す図である。
【0017】
撮像装置1Aは、デジタルカメラとして構成されており、撮像センサ11と、撮像センサ11にデータ伝送可能に接続する信号処理部2と、信号処理部2に接続する画像処理部3と、画像処理部3に接続するカメラ制御部40とを備えてる。
【0018】
撮像センサ11は、R(赤)、G(緑)、B(青)の原色透過フィルターが市松状に配列された単板の画素配列を有するエリア撮像センサとして構成されており、全画素読み出しタイプとなっている。この撮像センサ11では、電荷の蓄積が完了すると光電変換された信号が遮光された転送路にシフトされ、ここからバッファを介して読み出されて、被写体に係る画像信号が出力される。
【0019】
図2は、撮像センサ11の分光感度特性を説明するための図である。図2の横軸は波長を示し、縦軸は感度を示している。
【0020】
撮像センサ11は、Rチャンネル(Rch)の感度SRとGチャンネル(Gch)の感度SGとBチャンネル(Bch)の感度SBとからなる分光感度特性を有している。ここで、Rchの感度SRおよびBchの感度SBは、図10の従来技術の撮像センサが有するRchの感度SRcおよびBchの感度SBcよりも高感度に設定されている。このように高感度に設定する手法としては、撮像センサ11の受光部におけるR画素およびB画素の不純物濃度を高くしたり、撮像センサ11の赤色、青色フィルターの特性を変更する方法がある。
【0021】
図1に戻って説明を続ける。
【0022】
信号処理部2は、CDS21とAGC22とA/D変換部23とを有している。
【0023】
撮像センサ11から出力された画像信号はCDS21でサンプリングされ撮像センサ11のノイズを除去した後、AGC22により感度補正が行われる。
【0024】
A/D変換部23は、14ビットAD変換器で構成されており、AGC22で正規化されたアナログ信号をデジタル化する。デジタル化された画像信号は、画像処理部3で所定の画像処理が施された画像ファイルが生成される。
【0025】
画像処理部3は、CPUおよびメモリを有しており、デジタル処理部30と画像圧縮部37とビデオエンコーダー36とメモリカードドライバ38とを備えている。
【0026】
デジタル処理部30は、画素補間部31と解像度変換部32とホワイトバランス制御部33とガンマ補正部34とマトリクス演算部35とを有している。
【0027】
画像処理部3に入力された画像データは、撮像センサ11の読出しに同期し画像メモリ41に書込みまれる。以後、この画像メモリ41に格納される画像データにアクセスし、デジタル処理部30で各種の処理が行われる。
【0028】
画像メモリ41内の画像データは、画素補間部31でRGB各画素をそれぞれのフィルターパターンでマスキングした後、G画素については、メディアン(中間値)フィルタで周辺4画素の中間2値の平均値に置換する。また、R画素およびB画素に関しては平均補間する。
【0029】
画素補間された画像データは、ホワイトバランス(WB)制御部33によりRGB各画素が独立にゲイン補正され、RGBのホワイトバランス補正が行われる。このホワイトバランス補正では、撮影被写体から本来白色となる部分を輝度、彩度データ等から推測し、その部分のR、G、Bそれぞれの平均値と、G/R、G/B比とを求め、これらの情報(ホワイトバランス情報)に基づいてRおよびBの補正ゲインとして制御される。
【0030】
ホワイトバランス補正された画像データは、ガンマ補正部34で各出力機器に合った非線形変換が行われ、8ビットのデータへと変換される。その後、マトリクス演算部35でRGBからY、R−Y、B−Yデータが演算され、画像メモリ41に格納される。
【0031】
そして、画像メモリに格納されたY、R−Y、B−Yデータは、解像度変換部32で設定された画素数に水平垂直の縮小または間引きが行われ、画像圧縮部37で圧縮処理を行った後、メモリーカードドライバー38に装着されるメモリーカード9に記録される。
【0032】
また、解像度変換部32では、画像表示についても画素間引きを行って、LCDモニタ42および電子ビューファインダー43に表示するための低解像度画像を作成する。この低解像度画像については、プレビュー時は、画像メモリ41から読出された640*240画素の低解像度画像がビデオエンコーダ36でNTSC/PALにエンコードされ、これをフィールド画像としてLCDモニタ42または電子ビューファインダー43で画像再生が行われる。
【0033】
カメラ制御部40は、CPUおよびメモリを備え、シャッターボタンなどを有するカメラ操作スイッチ49に対して撮影者が行う操作入力を処理する。このカメラ操作スイッチ49への撮影者の操作入力により、被写体像をカラー画像で出力するカラー画像出力モードと、モノクロ画像で出力するモノクロ画像出力モードとを選択できる。
【0034】
撮像装置1Aは、本撮影前に被写体を動画的態様でLCDモニタ42などに表示するライブビュー表示時に、シャッター44の光学絞り値が絞りドライバー45によって開放固定となる。また、撮像センサ11の電荷蓄積時間に関しては、撮像センサ11で取得した画像のうち選択された測光エリアで測光された光量データに基づき、カメラ制御部40で露出制御データとして演算される。そして、カメラ制御部40で算出された露出制御データに基づいて予め設定されたプログラム線図により、タイミングジェネレーターセンサドライバー46で撮像センサ11の露光時間が適正となるようにフイードバック制御が行われる。
【0035】
<ホワイトバランス処理の信号動作点について>
図3は、ホワイトバランス処理における信号動作点を説明するための図である。本図は、撮像センサ11〜ホワイトバランス制御部33までの各部の信号の状況を示しており、グラフD1〜D10は、各部のダイナミツクレンジに対する濃度(輝度)信号の動作レベルを示している。また、グラフD1〜D10中の太線は、被写体中の白色部分に対応する動作点を示している。
【0036】
撮像センサ11で光電変換されCDS21でサンプリングされた画像信号は、アナログアンプのAGC21にて設定されたカメラ感度に応じてゲインアップが行われる。これにより、グラフD1、D2からグラフD3のように動作点(太線部)が上昇する。このとき、画像信号は撮像センサ11からのベイヤー信号で構成されるため、RGB一律にゲインがかけられることとなる。
【0037】
AGC22でゲインがかけられたアナログの画像信号は、AGC22出力のフルレンジに対して、A/D変換部23で14ビットのデジタル信号へと変換される。
【0038】
A/D変換部23で生成されたデジタル信号は、RGBのベイヤー配列で構成される信号並びとなっているため、画素補間部31で、グラフD5〜D7に示すようにRGBの3チャンネルデータに分離補間する。
【0039】
画素補間部31で生成されたRGB3チャンネルの画像信号は、WB制御部33においてG信号に対してR信号およびB信号のレベルを正規化し、グラフD8〜D10に示すように白被写体に関するRGBの動作点を一致させる。
【0040】
以上のように、アナログ増幅手段として働くAGC22で増幅され、デジタル増幅手段として働くWB制御部33で増幅されることで画像信号の動作点の調整が行え、適切なホワイトバランス処理が行えることとなる。
【0041】
<撮像装置1Aの動作>
撮像装置1Aにおいてカラー画像出力モードが選択された場合には、RchおよびBchが高感度に設定される撮像センサ11が採用されているため、図11に示すハイライト着色を防止すべく、以下で説明する動作を行う。
【0042】
図4は、撮像装置1Aにおけるホワイトバランス処理を説明するための図である。図4(a)〜図4(i)において、左側のグラフGa〜Giは撮像センサ11の動作点つまり画素配列で光電変換された信号レベルを表し、右側のグラフHa〜HiはWB制御部33で制御された信号レベルを表しており、矩形内の数値はWBゲインを示している。また、グラフGa〜Gi、Ha〜Hiにおいては、下段が主被写体を含む反射被写体の信号分布を、上段が光源等の明るい被写体の信号分布を表している。
【0043】
図4(b)、(e)および(h)は、それぞれ常用光源である5000Kの光源下におけるRch、GchおよびBchの動作点分布を示しているが、Gを基準にR/G、B/Gで正規化する、つまりホワイトバランス制御を行うため、図4(b)および(h)に示すようにRchおよびBchに1dBのゲインをかけている。ここでは、RchおよびBchの感度アップによりRGBのバランスが改善されているため、RGBのゲイン比(WBゲイン)が小さくSN比の良い画像が生成できる。
【0044】
図4(a)、(d)および(g)は、それぞれ2850Kの光源下におけるRch、GchおよびBchの動作点分布を示しているが、光源分光が赤に偏っているため、図11(a)に示すようなデータクリップが発生しないように、全体の撮像動作点、すなわち撮像センサ11の全チャンネルの信号レベルを下げている。すなわち、AE制御の基準となるGchの目標値を通常より2dB低下させることにより、撮像センサ11における各チャンネルの動作点を下げている。これにより、WB制御部33において、Bchでは6dB、Gchでは2dBのゲインアップとなるが、Rchでは0dBでゲインダウンなしとなる。すなわち、AE制御(露出制御)によって撮像センサ11の出力信号の動作点を所定レベルに制御することによって、図11(a)に示すRchでのゲインダウンが不要となり、着色の不具合が解消されることとなる。
【0045】
図4(c)、(f)および(i)は、それぞれ10000Kの光源下におけるRch、GchおよびBchの動作点分布を示しているが、光源分光が青に偏っているため、図11(i)に示すようなデータクリップが発生しないように、上記の2850Kの光源下と同様に、全体の撮像動作点を下げている。これにより、WB制御部33において、Rchでは6dB、Gchでは2dBのゲインアップとなるが、Bchでは0dBでゲインダウンなしとなる。すなわち、図11(i)に示すBchでのゲインダウンが不要となり、着色の不具合が解消することとなる。
【0046】
撮像装置1Aにおいては、2850Kや10000Kの場合、すなわち光源分光が赤に偏ったり、青に偏る場合には、図5に示すように例えばISO100に設定された実効感度を変更する、つまり実効感度を下げるAE制御を行うが、この光源分光の推定は、WB制御部33での制御データ、つまりホワイトバランス情報に基づいて行われる。
【0047】
すなわち、2850Kや10000Kでの既知の光源分光を基準情報として撮像装置1A内のメモリに記憶させておき、被写体について取得されたホワイトバランス情報を上記の基準情報と比較することによって、被写体の光源分光が2850Kや10000Kのような特定の色温度に相当しているかどうかを推定し、被写体の色温度がそのような特定の色温度付近に相当する場合には実効感度を下げることなどによって、上記の露光制御の動作を行う。そして、ホワイトバランス情報に基づくこのような露出制御を行うとともに、出力信号の動作点を、アナログ増幅手段(AGC22)の増幅率および/またはデジタル増幅手段(WB制御部33)の増幅率を変更することで所定レベルに調整することにより、信号飽和を防止しつつ出力信号のSN比を向上させることができる。この構成においては、特許文献1に記載されているような、A/D変換前に各色信号を取り出して処理する回路は不要である。
【0048】
以上のような撮像装置1Aの動作により、撮像センサ11の動作点をGchを基準に固定せず、光源分光に応じてAE制御により各チャンネルの動作点を全体的に低下させるため、赤や青に偏った光源下でのハイライト着色を防止できる。また、RchおよびBchの感度アップがなされている撮像センサ11を使用するため、特に常用光源下においてRGBのゲインバランスが略等しくなり、WBゲインによるノイズ劣化を抑えることが可能となる。
【0049】
また、撮像装置1Aにおいてモノクロ画像出力モードが選択された場合、通常視感度に近いY信号を利用して、モノクロ画像を生成する。このY信号(輝度信号)は、RGB各色ごとに設定された重み付け係数を各色ごとの撮像センサ11の出力信号に乗算したものを加算し生成されるが、グレーの濃度階調のみの信号となる。
【0050】
この場合、撮像装置1Aでは、RchおよびBchが高感度に設定される撮像センサ11を採用し、AE制御により光源分光に応じて全体の撮像動作点を変更するため、図4(d)や図4(f)に示すように、Y信号に支配的なGchの動作点が変更され、Gchのノイズ劣化も発生する。
【0051】
そこで、モノクロ撮影時におけるノイズ劣化を抑制するため、Y信号を生成する際のRGB加算係数を、ホワイトバランス制御部33で算出されるWBゲインから推定される光源分光に連動して変更することで、過剰なゲインアップを避けSNの良いモノクロ信号を得る。
【0052】
具体的には、光源分光が2850K、5000Kおよび10000Kの場合、次の式(1)〜(3)に示すようなRGB加算係数を持つY信号算出式(加重和)を使用する。
【0053】
▲1▼2850K;
Y=0.48*R+0.47*G+0.05*B・・・・・・(1):
▲2▼5000K;
Y= 0.3*R+0.59*G+0.11*B・・・・・・(2):
▲3▼10000K;
Y=0.15*R+0.47*G+0.38*B・・・・・・(3):
以上のような撮像装置1Aの動作により、光源分光に応じてY信号を算出式を変更しモノクロ画像を生成するため、Y信号の分光感度を大きく崩さない範囲で、ノイズ劣化の要因となる特定の色チャンネルの加算係数を抑制することで、モノクロ画像のSN比を適切にできることとなる。
【0054】
<第2実施形態>
<撮像装置の要部構成>
図6は、本発明の第2実施形態に係る撮像装置1Bの機能ブロックを示す図である。
【0055】
撮像装置1Bもまたデジタルカメラとして構成されており、第1実施形態に係る撮像装置1Aと類似した構成となっているが、撮像センサ11の前にフィルタ部5が設けられ、また撮影レンズに外付けフィルタFLが取付け可能となっている点が異なる。
【0056】
フィルタ部5は、2種類の赤外カットフィルタ(内蔵フィルタ)とフィルタ切替部とを備えている。
【0057】
2種類の赤外カットフィルタは、図7(a)に示す特性Faを持つ赤外光吸収型フィルタと、図7(b)に示す特性Fbを持つ蒸着型シャープカットフィルタとからなっており、これら2種類の内蔵フィルタはフィルタ切替部によって切替えられる。
【0058】
これにより、撮影センサ11の前方に赤外光吸収型フィルタがセットされる場合には、図7(b)に示すRchの感度PRaを有し、蒸着型シャープカットフィルタがセットされる場合には、図7(b)に示すRchの感度PRbを有することとなる。すなわち、特性Fbを有する蒸着型シャープカットフィルタに切替えられる場合には、Rchの感度アップが図れることとなる。
【0059】
<撮像装置1Bの動作>
撮像装置1Bは、フィルタ部5で2種類の内蔵フィルタを切替えることによってRchの感度が変更可能な構成となっているが、内蔵フィルタが切替えられた場合の撮像装置1Bの動作を説明する。
【0060】
撮影者がカメラ操作スイッチ49に対する操作を行い、フィルタ部5で特性Fbを有する蒸着型シャープカットフィルタが選択された場合には、撮像センサ11が図7(b)に示すRchの感度PRbを持つことになるため、図4のように全体の撮像動作点を下げることでハイライト着色を防止する動作点変更モードに設定する。すなわち、動作点制御手段を能動化して、適切なホワイトバランス処理が行われることとなる。
【0061】
また、撮影者が図7(b)に示すRchの感度PRaに切替えて赤外光吸収型フィルタを選択した場合には、上記の動作点制御手段を不能化し、図10に示すように全体の撮像動作点を変更しない動作点不変モードによって、ホワイトバランス処理が行われる。
【0062】
以上のような撮像装置1Bの動作により、Rchの感度アップが図れるため第1実施形態と同様の効果を奏する。また、フィルタ切替に伴い動作点変更モードと動作点不変モードとを切替えるため、撮影者が意図するホワイトバランス処理が可能となる。
【0063】
さらに、撮像装置1Bでは、フィルタ部5において2種類の内蔵フィルタを切替えるだけでなく、図8に示すように外付けフィルタの種類FrをLCDモニタ42に表示し、適切な外付けフィルタFLの装着を撮影者に促すようにしても良い。
【0064】
この場合には、図9に示す色温度と装着すべき外付けフィルタの種類との関係に基づき、推奨される外付けフィルタの種類をLCDモニタ42に表示するのが好ましい。すなわち、ホワイトバランス情報から推定される色温度に応じて撮像光学系に関する分光特性を変更する。ここで、外付けフィルタが装着される場合には、上記の動作点変更モードによる制御が行われることとなる。これにより、複数種類(図示例では4種類)のフィルタの切替えを適切に行え、各色温度において適切にSN比の向上が図れることとなる。
【0065】
<変形例>
◎上述した具体的実施形態には、以下の構成を有する発明が含まれている。
【0066】
(1)表示手段と、ホワイトバランス情報に基づき装着すべきカラーフィルタの情報を前記表示手段に表示する表示制御手段とを備えることを特徴とする撮像装置。
【0067】
これにより、画像信号のSN比を適切に向上できる。
【0068】
(2)実効感度の設定を変更する変更手段を備えることを特徴とする撮像装置。
【0069】
これにより、信号飽和を簡易に防止できる。
【0070】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1ないし請求項3の発明によれば、ホワイトバランス情報に応じて露出制御を変更し、撮像手段の出力信号の動作点を所定レベルに制御するため、ホワイトバランス処理において信号飽和が防止でき、また画像信号のSN比を向上できる。また、A/D変換前に各色信号を取り出して処理する回路は不要であるため、回路構成も複雑化しない。
【0071】
特に、請求項2の発明においては、画像出力信号の動作点はアナログ増幅手段の増幅率および/またはデジタル増幅手段の増幅率を変更することで調整されるため、ホワイトバランス処理を適切に行える。
【0072】
また、請求項3の発明においては、動作点制御手段が能動化される状態と動作点制御手段が不能化される状態とを切替えるため、撮影者の意図に応じた設定が可能となる。
【0073】
また、請求項4の発明によれば、ホワイトバランス情報に応じて複数色の各色ごとに設定された重付け係数を変更して輝度信号を生成するため、輝度信号のSN比を向上できる。
【0074】
また、請求項5の発明によれば、ホワイトバランス情報に応じて、撮像光学系に関する分光特性を変更するとともに、露出制御を変更して出力信号の動作点を所定レベルに制御する。その結果、ホワイトバランス処理において信号飽和が防止でき、また画像信号のSN比を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る撮像装置1Aの機能ブロックを示す図である。
【図2】撮像センサ11の分光感度特性を説明するための図である。
【図3】ホワイトバランス処理における信号動作点を説明するための図である。
【図4】撮像装置1Aにおけるホワイトバランス処理を説明するための図である。
【図5】色温度と実効感度との関係を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る撮像装置1Bの機能ブロックを示す図である。
【図7】撮像装置1Bに関する分光感度特性を説明するための図である。
【図8】LCDモニタ42にフィルタの種類を表示する様子を示す図である。
【図9】色温度と装着すべきフィルタとの関係を示す図である。
【図10】本発明の従来技術に係るホワイトバランス処理を説明するための図である。
【図11】本発明の従来技術に係るホワイトバランス処理を説明するための図である。
【符号の説明】
1A、1B 撮像装置
3 画像処理部
11 撮像センサ
31 画素補間部
33 ホワイトバランス制御部
40 カメラ制御部
42 LCDモニタ
PRa、PRb、SR Rチャンネル(Rch)の感度
PG、SG Gチャンネル(Gch)の感度
PB、SB Bチャンネル(Bch)の感度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置であって、
(a)複数色のフィルタが配列された単板の画素配列を有し、被写体に係る出力信号を生成する撮像手段と、
(b)前記被写体に係るホワイトバランス情報を取得する取得手段と、
(c)前記ホワイトバランス情報に応じて露出制御を変更し、前記出力信号の動作点を所定レベルに制御する動作点制御手段と、
を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像装置において、
(d)前記出力信号を増幅し、増幅信号を生成するアナログ増幅手段と、
(e)前記増幅信号をデジタル変換して、デジタル信号を生成する変換手段と、
(f)前記デジタル信号を前記複数色の各色ごとに増幅し、画像出力信号を生成するデジタル増幅手段と、
をさらに備え、
前記画像出力信号の動作点は、前記アナログ増幅手段の増幅率および/または前記デジタル増幅手段の増幅率を変更することで調整されることを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の撮像装置において、
(g)前記動作点制御手段が能動化される状態と、前記動作点制御手段が不能化される状態とを切替える切替手段、
をさらに備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
撮像装置であって、
(a)複数色のフィルタが配列された単板の画素配列を有し、被写体に係る出力信号を生成する撮像手段と、
(b)前記被写体に係るホワイトバランス情報を取得する取得手段と、
(c)前記複数色の各色ごとに設定された重み付け係数を各色ごとの出力信号に乗算したものを加算して、輝度信号を生成する信号生成手段と、
を備え、
前記信号生成手段は、
(c−1)前記ホワイトバランス情報に応じて、前記重付け係数を変更する変更手段、
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項5】
複数色のフィルタが配列された単板の画素配列を有し、被写体に係る出力信号を生成する撮像手段と撮像光学系とを備える撮像装置を利用する撮像方法であって、
(a)前記被写体に係るホワイトバランス情報を取得する取得工程と、
(b)前記ホワイトバランス情報に応じて、前記撮像光学系に関する分光特性を変更する変更工程と、
(c)前記ホワイトバランス情報に応じて露出制御を変更し、前記出力信号の動作点を所定レベルに制御する制御工程と、
を備えることを特徴とする撮像方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2004−96633(P2004−96633A)
【公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−257990(P2002−257990)
【出願日】平成14年9月3日(2002.9.3)
【出願人】(000006079)ミノルタ株式会社 (155)
【Fターム(参考)】