説明

撮像装置および画像処理情報生成プログラム

【課題】本発明は、光外乱の多い環境でも利用でき、構成が簡易な撮像装置を提供することを目的とする。
【解決手段】撮像装置1は、照明Lで照らされる被写体Aを撮像して、被写体Aの奥行き値を示す奥行き情報と、被写体Aの反射特性を示す反射特性情報と、照明Lの条件を示す照明情報とを画像処理情報として生成するものであって、ステレオ画像として扱える撮像画像を撮像するカメラCと、照明Lと、カメラCが撮像した撮像画像を用いて、画像処理情報を生成する画像処理情報生成装置100とを備え、カメラCが、偏光方向が互いに直交する2つの偏光フィルタを有するレンズと、偏光ビームスプリッタと、偏光ビームスプリッタで分光された光を撮像する2つの撮像素子とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体の奥行き値を示す奥行き情報、被写体表面の質感を示す反射特性情報、照明条件を示す光源情報などの画像処理情報を生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、画像認識、画像合成、映像制作、コンピュータグラフィックス(CG)、バーチャルリアリティ(VR)などの画像処理が、広く行われている。この画像処理を行う際、被写体の奥行き値を示す奥行き情報、被写体表面の質感を示す反射特性情報、照明条件(光源の条件)を示す光源情報などの画像処理情報は、重要なものである。そこで、これら画像処理情報を生成する手法が提案されている。
【0003】
画像処理情報を生成する手法として、ステレオカメラを用いて、奥行き値を推定する手法が提案されている(非特許文献1)。この非特許文献1に記載の手法は、同一の被写体を異なる視点で撮影した画像(画像には同一被写体の表面部位が存在する)のずれ量から、奥行き値を推定するものである。
【0004】
また、カメラコード化瞳を用いて、奥行き値を推定する手法が提案されている(非特許文献2)。この非特許文献2に記載の手法は、カメラコード化された特殊な瞳(フィルタ)をレンズ内に内蔵しており、カメラコードを奥行き値に応じて畳み込んだボケ画像を撮像する。そして、非特許文献2に記載の手法は、このボケ画像から、逆問題を解くことで奥行き値を推定するものである。
【0005】
そして、三角測量の原理により、奥行き値を推定する手法が提案されている(非特許文献3)。この非特許文献3に記載の手法は、光切断などの能動的手法により、レンジセンサスリット光やカメラコード化されたパターン光を被写体に照射して、三角測量の原理で奥行きを推定するものである。
【0006】
さらに、被写体表面の反射特性を計測する手法が提案されている(非特許文献4)。この非特許文献4に記載の手法は、拘束された照明条件を変えながら被写体に光を照射して、その反射光を測定するものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Heiko Hirschmuller (2008),Stereo Processing by Semi-Global Matching and Mutual Information,IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence,Volume 30(2),February 2008,pp.328-341.
【非特許文献2】Image and Depth from a Conventional Camera with a Coded Aperture,http://groups.csail.mit.edu/graphics/CodedAperture/CodedAperture-LevinEtAl-SIGGRAPH07.pdf
【非特許文献3】実用化が進む高速レンジファインダ 4.1光切断法,日本ロボット学会誌Vol.23 No.3,pp.278〜281,2005,http://www.space-vision.jp/japanese/pdf/R15.pdf
【非特許文献4】OGM:BRDF測定装置,http://www.dressingsim.com/new/product/LSC/OGM/index.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、非特許文献1〜3に記載の手法は、被写体表面の反射特性情報(つまり、被写体の質感)および光源情報を生成することができない。また、非特許文献3に記載の手法は、能動的手法によりパターン光を被写体に照射して、その反射光を計測する必要があるため、屋外などの光外乱の多い環境での利用が困難である。さらに、非特許文献4に記載の手法は、被写体の奥行き情報を取得することができず、被写体の形状または面法線をレンジセンサなどで予め計測しておく必要がある。
【0009】
以上のように、奥行き情報、反射特性情報および光源情報をまとめて生成できる従来技術は提案されていない。仮に、非特許文献1〜4に記載の手法を組み合わせれば、これら画像処理情報をまとめて生成する手法は、容易に実現できるとも思われる。しかし、以下で説明するように、非特許文献1〜4に記載の手法を組み合わせることは現実的でない。
【0010】
前記したように、非特許文献1に記載の手法はステレオカメラを必要とし、非特許文献2に記載の手法は特殊な瞳を内蔵したカメラを必要とし、非特許文献4に記載の手法はレンジセンサを必要とするというように、各手法で固有の装置を必要とする。従って、非特許文献1〜4に記載の手法を組み合わせると、撮像装置の構成が非常に大規模化、複雑化するため、現実的でない。このため、ユーザから、これら画像処理情報をまとめて生成する手法を簡易な構成で実現して欲しいという要望があり、特に、カメラ本体の小型化について強い要望がある。
【0011】
そこで、本発明は、前記した問題を解決し、光外乱の多い環境において、奥行き情報、反射特性情報および光源情報をまとめて生成できると共に、構成が簡易な撮像技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記した課題を解決するため、本願第1発明に係る撮像装置は、光源で照らされる被写体を撮像して、被写体の奥行き値を示す奥行き情報と、被写体の反射特性を示す反射特性情報と、光源の方向および光量を示す光源情報とを生成する撮像装置であって、撮像手段と、視差量算出部と、奥行き値換算部と、撮像手段位置算出部と、拡散反射光成分画像生成部と、鏡面反射光成分画像生成部と、光源方向算出部と、光源情報生成部と、反射係数算出部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
かかる構成によれば、撮像装置の撮像手段は、偏光方向が互いに直交する2つの偏光素子からなる光透過素子と、偏光素子の一方からの入射光を透過させ、かつ、偏光素子の他方からの入射光を反射させる分光素子と、分光素子を透過した入射光を撮像する第1撮像素子と、分光素子で反射された入射光を撮像する第2撮像素子とを備える。
【0014】
ここで、撮像手段の光学的条件に起因して、第1撮像素子および第2撮像素子が撮像した2つの撮像画像では、合焦位置に対する被写体位置がずれるためにボケが生じ、このボケの程度に応じて視差が生じる。つまり、両撮像画像は、ステレオ画像として取り扱うことが可能となる。
【0015】
また、撮像装置は、ステレオ画像を生成するステレオカメラと比べて、撮像手段の構成が簡素である。さらに、撮像装置は、撮像手段で撮像を行う際に、パターン光を被写体に照射する必要がない。
【0016】
また、撮像装置は、視差量算出部によって、第1撮像素子および第2撮像素子で被写体を撮像した2つの撮像画像から、例えば、マッチングによって、2つの撮像画像で対応する対応画素ごとの視差量を算出する。そして、撮像装置は、奥行き値換算部によって、視差量算出部が算出した視差量を、予め設定された換算式で対応画素ごとの奥行き値に換算して奥行き情報を生成する。ここで、奥行き情報は、撮像手段から被写体表面までの距離を示すことになる。言い換えるなら、注目画素の奥行き値が示す位置と、近傍画素の奥行き値が示す位置とを接続すると、被写体表面を示すことになる。従って、撮像装置は、奥行き値換算部によって、奥行き情報を用いて、注目画素と注目画素の近傍画素との奥行き値で表される被写体表面に直交する法線方向を算出する。
【0017】
また撮像装置は、撮像手段位置算出部によって、奥行き値換算部が算出した奥行き値に最適化処理を行って、撮像手段の位置を算出する。そして、撮像装置は、拡散反射光成分画像生成部によって、2つの撮像画像での対応画素のうちの輝度値が小さい方を最小輝度値として選択して、対応画素ごとの最小輝度値を示す拡散反射光成分画像を生成する。さらに、撮像装置は、鏡面反射光成分画像生成部によって、2つの撮像画像での対応画素のうちの輝度値が大きい方を最大輝度値として選択し、対応画素ごとの最大輝度値と最小輝度値との差分を示す鏡面反射光成分画像を生成する。
【0018】
ここで、例えば、斜め45度方向に偏光した鏡面反射光が入射した場合、第1撮像素子および第2撮像素子では、鏡面反射光が同じ光量となるために、最小輝度値を選択しても、鏡面反射光成分の抑制を行うことが困難である。すなわち、鏡面反射光成分の抑制は、45度からずれた状態となることで、その効果が生じる。この影響を光学系で低減するには、撮像手段の構成が大規模、複雑化し、現実的でない。このため、拡散反射光成分画像生成部は、最小輝度値を選択して拡散反射光成分を算出する。その後、鏡面反射光成分画像生成部は、この拡散反射光成分を用いて、鏡面反射光成分を算出する。
【0019】
なお、拡散反射光成分画像は、2つの撮像画像での対応画素のうち、輝度値が小さい方の画素で構成された画像であり、拡散反射光成分を示すものである。また、鏡面反射光成分画像は、最大輝度値と最小輝度値との差分が輝度値となる画素で構成された画像であり、鏡面反射光成分を示すものである。
【0020】
また、撮像装置は、光源方向算出部によって、奥行き値換算部が算出した法線方向および撮像手段の位置から、被写体での反射光の入射角を算出し、算出した入射角が示す方向を光源の方向として算出する。ここで、例えば、光源方向算出部は、反射の法則により、被写体表面の法線方向および撮像手段の位置から、光源の方向を算出する。
によって、
【0021】
また、撮像装置は、光源情報生成部によって、鏡面反射光成分画像生成部が生成した鏡面反射光成分画像および光源の方向に基づいて光源の光量を算出し、算出した光源の光量および方向を光源情報として生成する。ここで、光源情報生成部は、例えば、所定半径の仮想球を格子状に分割し、その格子頂点ごとに各光線の光源強度を求める。そして、光源情報生成部は、各光線の光源強度の中で最大値を算出して、仮想球に含まれる各格子頂点全体でゼロから最大光量までの間で正規化することで、光源の光量を算出する。
【0022】
また、撮像装置は、反射係数算出部によって、光源情報生成部が生成した光源情報と、鏡面反射光成分画像と、拡散反射光成分画像とに対して反射モデルを適用した最適化処理を行って、鏡面反射係数および拡散反射係数を反射特性情報として算出する。
【0023】
また、本願第2発明に係る撮像装置は、光源を点灯および消灯させる光源制御部をさらに備え、光源情報生成部が、光源点灯時および光源消灯時に光源の光量をそれぞれ算出し、光源点灯時および光源消灯時の光量から所定の算出式によって重みを算出し、算出した重みを光源消灯時の光量に乗算することで、絶対値で表された光源情報を算出することが好ましい。
【0024】
また、本願第3発明に係る撮像装置は、2つの撮像画像の一方から、対応画素の奥行き値が予め設定された奥行き抽出範囲に含まれる領域を被写体領域として抽出する被写体領域抽出部をさらに備えることが好ましい。
【0025】
また、本願第4発明に係る撮像装置は、2つの撮像画像の一方から顔領域検出処理により顔領域を検出し、検出した顔領域に含まれる全画素の奥行き値の平均値を算出し、算出した平均値に所定の値を加減算して奥行き抽出範囲を設定する奥行き抽出範囲算出部をさらに備えることが好ましい。
【0026】
なお、本願第1発明に係る撮像装置において、一般的なコンピュータを、視差量算出部、奥行き値換算部、撮像手段位置算出部、拡散反射光成分画像生成部、鏡面反射光成分画像生成部、光源方向算出部、光源情報生成部、および、反射係数算出部として機能させる画像処理情報生成プログラムによって実現することもできる。
【発明の効果】
【0027】
本願第1発明によれば、撮像手段の構成が簡素であると共に、この撮像手段が撮像した撮像画像だけを用いて、奥行き情報、反射特性情報および光源情報をまとめて生成できる。従って、本願第1発明によれば、奥行き情報、反射特性情報および光源情報ごとに、各情報を生成するための固有の装置を必要とせず、簡易な構成を実現することができる。さらに、本願第1発明によれば、撮像手段で撮像を行う際に、パターン光を被写体に照射する必要がないため、光外乱の多い環境でも利用することができる。
【0028】
本願第2発明によれば、光源情報が絶対値で表されているため、実際の光源の明るさを光源情報から知ることができる。さらに、本願第2発明によれば、この光源情報を用いて別の撮像環境で画像処理を行う際、この別の撮像環境用に光源情報を変換する必要がない。つまり、本願第2発明によれば、光源情報の整合性を容易に保つことができる。
【0029】
本願第3発明によれば、奥行き情報、反射特性情報および光源情報に加えて、被写体領域を抽出することができるため、撮像装置の利便性を向上させることができる。
本願第4発明によれば、奥行き抽出範囲を算出できるため、これを手動で設定する必要がなく、撮像装置の利便性をより向上させると共に、被写体の顔領域を正確に抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態に係る撮像装置の構成を示す概略図である。
【図2】(a)は図1のカメラの構成を示す図であり、(b)は図1のカメラが備えるレンズを説明する図である。
【図3】撮像画像1,2をステレオ画像として扱える理由を説明する図であり、(a)は第1撮像素子に着目した図であり、(b)は第2撮像素子に着目した図である。
【図4】図1の画像処理情報生成装置の構成を示すブロック図である。
【図5】(a)および(b)は図4の奥行き値換算部による換算を説明する図である。
【図6】図4の奥行き値換算部による換算を説明する図である。
【図7】図4の奥行き値換算部による法線方向の算出を説明する図である。
【図8】図4の奥行き値換算部による法線方向の算出を説明する図である。
【図9】図4の拡散反射光成分画像生成部による拡散反射光成分画像の生成を説明する図である。
【図10】図4の照明情報生成部による照明情報の生成を説明する図である。
【図11】図4の画像処理情報生成装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する手段及び同一の部材には同一の符号を付し、説明を省略した。
【0032】
[撮像装置の構成]
図1を参照して、本発明の実施形態に係る撮像装置1の構成について説明する。
撮像装置1は、照明(光源)Lで照らされる被写体Aを撮像して、奥行き情報と、反射特性情報と、照明情報(光源情報)とを画像処理情報として生成するものであって、カメラ(撮像手段)Cと、画像処理情報生成装置100とを備える。
【0033】
カメラ(撮像手段)Cは、被写体Aを撮像するものである。このカメラCは、信号ケーブル9を介して、画像処理情報生成装置100に接続されており、撮像した画像(動画)を画像処理情報生成装置100に出力する。
【0034】
被写体Aは、撮像装置1での撮像対象となるものである。図1では、被写体Aとして、円筒状の物体を図示したが、例えば、人物、動物、風景などであってもよい。また、撮像装置1における被写体は、1つに限定されず、2つ以上であってもよい。
【0035】
また、本実施形態では、光源の一例として照明Lをあげて説明する。
照明Lは、被写体Aを照らす光源であり、カメラCの周囲に配置されるものである。この照明Lは、例えば、高速(1フレーム秒単位)で点灯および消灯が可能な白色LED(Light Emitting Diode)である。また、照明Lは、信号ケーブル9を介して、画像処理情報生成装置100に接続されている。
なお、本実施形態では、光源が照明Lであることから、後記する画像処理情報生成装置100は、光源情報として照明情報を生成することとした。
【0036】
[カメラの構成]
ここで、図2を参照して、カメラCの構成について説明する。
カメラCは、図2(a)に示すように、レンズ(光透過素子)11と、偏光BS(分光素子)12と、第1撮像素子13と、第2撮像素子14とを備える。
この図2(a)では、入射光における縦方向の偏光成分と、横方向の偏光成分とを矢印で図示した。
【0037】
レンズ(光透過素子)11は、偏光方向が互いに直交する2つの偏光フィルタ(偏光素子)11a,11bを有するものである。このレンズ11は、例えば、図2(b)に示すように、カメラCの外側から見て、凸レンズのレンズ面の左側に偏光フィルタ11aを有し、レンズ面の右側に偏光フィルタ11bを有する。この場合、レンズ11は、例えば、一般的な凸レンズのレンズ面に、薄膜状の偏光フィルタを2枚接着して、形成することができる。
【0038】
また、レンズ11は、偏光フィルタ11a,11bの割合が1:1となっているが、これに限定されない。例えば、レンズ11は、偏光フィルタ11a,11bの割合を、第1撮像素子13や第2撮像素子14の感度およびレンズ11の性能を考慮して、後記する視差量算出部101でブロックマッチングの精度が保てる範囲内に変更可能である。
【0039】
図2(a)に示すように、偏光フィルタ11aは、被写体Aからの入射光のうち、縦方向の偏光成分のみ通過する。また、偏光フィルタ11bは、被写体Aからの入射光のうち、横方向の偏光成分のみ通過する。
【0040】
偏光BS(分光素子)12は、偏光フィルタ11aからの入射光(縦方向の偏光成分)を透過させ、かつ、偏光フィルタ11bからの入射光(横方向の偏光成分)を反射させるビームスプリッタである。この偏光BS12を透過した光は、第1撮像素子13の撮像面に到達する。また、偏光BS12で反射された光は、第2撮像素子14の撮像面に到達する。
【0041】
第1撮像素子13は、偏光BS12を透過した光(縦方向の偏光成分)を撮像するものであり、例えば、CCDやCMOSセンサである。そして、第1撮像素子13は、被写体Aが撮像された画像を画像処理情報生成装置100に出力する。
【0042】
第2撮像素子14は、偏光BS12で反射された光(横方向の偏光成分)を撮像するものであり、例えば、CCDやCMOSセンサである。そして、第2撮像素子14は、被写体Aが撮像された画像を画像処理情報生成装置100に出力する。
【0043】
以後、第1撮像素子13が撮像した動画の各フレーム画像を「撮像画像1」と呼び、第2撮像素子14が撮像した各フレーム画像を「撮像画像2」と呼ぶ。これら撮像画像1,2は、ステレオ画像として扱うことができるため、その理由を説明する。
【0044】
<ステレオ画像として扱える理由>
被写体からの入射光のうち、少なくとも拡散反射光成分は、偏光方向が分散される。この結果、拡散反射光成分は、偏光フィルタ11aまたは偏光フィルタ11bのみがレンズ11の開口形状と同等の条件で撮像される。言い換えるなら、拡散反射光成分は、その偏光方向が偏らないため、偏光フィルタ11aおよび偏光フィルタ11bで略均等に遮蔽される。
【0045】
その一方、ある光源からの光線が被写体表面で反射された鏡面反射光成分については、入射角=反射角の条件を満たしつつ、カメラCに入射する(凹面鏡などの被写体条件が成立する場合を除く)。従って、鏡面反射光成分は、素材(被写体Aの屈折率)毎に異なるブリュースター角を中心として、P偏光およびS偏光の強度比が1:1でなくなる。(カメラCの位置=光源でない場合を除く)。このため、被写体Aの表面で鏡面反射を起こしているならば、第1撮像素子13および第2撮像素子14では、入射光の光量が異なることになる。
【0046】
以上の光学系の条件から、第1撮像素子13および第2撮像素子14では、合焦位置に対する被写体Aの位置ずれによって、撮像画像1,2にボケが生じる。そして、このボケに応じて視差が生じるため、撮像画像1,2は、ステレオ画像として扱うことができる。
【0047】
図3を参照して、より具体的に説明する(適宜図2参照)。
以後、レンズ11の焦点位置にある丸状の被写体を「○」とし、レンズ11の焦点位置より奥側にある三角状の被写体を「△」とし、レンズ11の焦点位置より手前側にある正方形状の被写体を「□」とする。
【0048】
図3(a)では、第1撮像素子13に着目しており、偏光フィルタ11bが第1撮像素子13に対するフィルタとなるため、偏光フィルタ11bをドットで図示した。また、図3(b)では、第2撮像素子14に着目しており、偏光フィルタ11aが第2撮像素子14に対するフィルタとなるため、偏光フィルタ11aをドットで図示した。
【0049】
仮に、レンズ11が一般的な凸レンズである場合を考える。被写体「○」は、レンズ11の焦点位置にあるため、第1撮像素子13の撮像面に結像する。また、被写体「△」は、レンズ11の焦点位置より奥側のため、第1撮像素子13の撮像面の手前側に結像する。さらに、被写体「□」は、レンズ11の焦点位置より手前側のため、第1撮像素子13の撮像面の奥側に結像する。
【0050】
次に、レンズ11が偏光フィルタ11a,11bを有し、偏光フィルタ11aが被写体「○」,「△」,「□」からの入射光を透過し、偏光フィルタ11bが被写体「○」,「△」,「□」からの入射光を遮蔽する場合を考える。
【0051】
この場合、図3(a)に示すように、被写体「△」では、偏光フィルタ11aを通過した入射光の光路が、第1撮像素子13の撮像面の手前で一旦交差して、第1撮像素子13の撮像面右側に到達する。また、被写体「□」では、偏光フィルタ11aを通過した入射光が、第1撮像素子13の撮像面左側に到達する。従って、第1撮像素子13は、被写体「□」,「○」,「△」が左側から順に並んだ撮像画像1を撮像する。
【0052】
また、図3(b)では、偏光フィルタ11bが被写体「○」,「△」,「□」からの入射光を透過し、偏光フィルタ11aが被写体「○」,「△」,「□」からの入射光を遮蔽する。
【0053】
このため、被写体「△」では、偏光フィルタ11bを通過した入射光の光路が、第2撮像素子14の撮像面の手前で一旦交差して、第2撮像素子14の撮像面左側に到達する。また、被写体「□」では、偏光フィルタ11bを通過した入射光が、第2撮像素子14の撮像面右側に到達する。従って、第2撮像素子14は、被写体「△」,「○」,「□」が左側から順に並んだ撮像画像2を撮像する。
【0054】
このように、撮像画像1,2では、レンズ11の焦点位置から手前側または奥側にずれる程、被写体「△」,「□」が画像中央から左右にずれて撮像される。このため、撮像画像1,2は、被写体「○」,「△」,「□」の位置に応じて視差が発生し、ステレオ画像として扱うことができる。
【0055】
[画像処理情報生成装置の構成]
図4を参照して、画像処理情報生成装置100の構成について説明する(適宜図1,図2参照)。
この図4では、図面を見やすくするため、カメラCの一部構成を省略した。
【0056】
図4に示すように、画像処理情報生成装置100は、画像処理情報を生成するものであり、視差量算出部101と、奥行き値換算部110と、カメラパラメータ算出部(撮像手段位置算出部)120と、奥行き情報記憶部130と、反射特性推定部140と、パラメータ設定部150と、奥行き抽出範囲算出部160と、被写体領域抽出部170と、照明制御部180とを備える。
【0057】
この画像処理情報生成装置100は、例えば、撮像画像1,2の画像入力用ボード、照明制御用の汎用I/Oボードを内蔵したコンピュータに実装されている。
なお、照明制御部180は、照明情報を絶対値で表すときに必要な構成であり、後記する変形例で説明する。
【0058】
視差量算出部101は、カメラCから撮像画像1,2が入力され、この撮像画像1,2で対応する対応画素ごとの視差量を算出するものである。この視差量算出部101は、例えば、ブロックマッチングによって、撮像画像1,2における各部位の小片ごとのずれ量として視差量を算出する。そして、視差量算出部101は、算出した視差量を奥行き値換算部110に出力する。
【0059】
ここで、視差量算出部101は、高域空間周波数成分を対象としたブロックマッチング、または、色情報を用いたブロックマッチングを行って、マッチングの精度を向上させることができる。
【0060】
なお、本実施形態では、視差量算出部101がブロックマッチングを用いることとしたが、本発明は、これに限定されない。つまり、視差量算出部101は、勾配法など、ステレオ画像のずれ量から視差量を算出する種々のマッチング手法を適用できる。
この勾配法は、例えば、文献「一般化勾配法によるオプティカルフローの検出:不均一照明下での物体運動の計測,社団法人情報処理学会,情報処理学会論文誌,コンピュータビジョンとイメージメディア49(SIG_6(CVIM_20)),1-12,2008-03-15,http://ci.nii.ac.jp/naid/110006684635」に記載されている。
【0061】
奥行き値換算部110は、視差量算出部101から視差量が入力され、この視差量を換算式で対応画素ごとの奥行き値に換算して奥行き情報を生成するものである。また、奥行き値換算部110は、注目画素と注目画素の近傍画素との奥行き値で表される被写体表面に直交する法線方向を算出する。そして、奥行き値換算部110は、生成した奥行き情報および被写体表面の法線方向を奥行き情報記憶部130に出力する。さらに、奥行き値換算部110は、生成した奥行き情報をカメラパラメータ算出部120に出力する。
【0062】
<奥行き値換算部による換算の具体例>
図5,図6を参照して、奥行き値換算部110による換算の具体例について説明する(適宜図4参照)。
被写体のボケ中心位置は、レンズ11における開口(つまり、偏光フィルタ11aまたは偏光フィルタ11b)の重心位置となる。ここでは、レンズ11における開口を半円として説明する。
【0063】
この場合、図5(a)に示すように、重心位置G(x,y)は、対象軸(y軸)上にあるから、x=0である。従って、x軸からの距離yを求める。高さyの位置にある細い帯(ハッチングで図示)において、そのx軸に関する面積モーメントは、(2x)yΔyである。そして、半円全体を細い帯に区切って考えると、半円のx軸に関する面積モーメントは、下記の式(1)で表すことができる。
【0064】
【数1】

【0065】
式(1)の積分の項に含まれるxをyの関数として表すと、下記の式(2)であるから、下記の式(3)が成立する。
【0066】
【数2】

【0067】
【数3】

【0068】
ここで、式(3)を式(1)に代入すると、下記の式(4)が得られる。そして、半円の面積は、πa/2であるから、距離yは、下記の式(5)で表すことができる。
【0069】
【数4】

【0070】
【数5】

【0071】
なお、図5(a)では、aがレンズ11における開口半径である。また、この重心計算は、例えば、文献「http://www.mech.kanagawau.ac.jp/lab/urata_lab/class/MathMachAna/2003/mach08txt.pdf」に記載されている。
【0072】
次に、図5(b)に示すように、カメラCの光学系において、偏光フィルタ11aを開口とした場合を考える。この場合、レンズ11の直径Φa=2aとなり、偏光フィルタ11aの重心位置G1は、ボケの中心位置から4a/3πの位置となる。また、第1撮像素子13の撮像面の直径Φb=2bとなり(但しbは第1撮像素子13の半径であり、後記する式(3)で定義される)、第1撮像素子13において、偏光フィルタ11aからの入射光が到達する領域の重心位置G2は、ボケの中心位置から4b/3πの位置となる。従って、ボケの半径をcとすると、4c/3πの位置となる撮像画像1,2では、視差量は、2×4c/3πと表すことができる。
【0073】
図6に示すように、レンズ11では、レンズの公式より、下記の式(6)が成立する。ここで、oがレンズ11の主点であり、fがレンズ11の焦点であり、pがレンズ11の端点であり、a’がaの像であり、b’がbの像であり、Fが焦点距離(主点と焦点との距離)であり、Aが物面(被写体表面)から主点までの距離(奥行き値)であり、Bが主点から像面までの距離であり、mが倍率である。
【0074】
【数6】

【0075】
ここで、第1撮像素子13の撮像面が右側fに位置する。従って、図6から、ボケの中心位置と、視差量Dpとの関係は、下記の式(7),式(8)で表すことができる。なお、式式(7),式(8)では、opがレンズ11の開口径(つまり、偏光フィルタ11aの径)であり、Dpが視差量である。
【0076】
【数7】

【0077】
【数8】

【0078】
ここで、式(6)の倍率mがレンズ11の仕様から既知であり、開口径opも既知であるので、視差量算出部101が視差量Dpを算出する。従って、奥行き値換算部110は、式(6)〜式(8)を用いて、視差量Dpを奥行き値Aに換算することができる。
なお、換算式は、視差量と、カメラCからの距離である絶対的な奥行き値との関係がカメラCの設計および設定により異なるため、奥行き値換算部110に予め設定しておく。
【0079】
なお、式(6)〜式(8)は、焦点位置が撮像面より後(撮像面の裏側)の場合であるが、焦点位置が撮像面より前の場合でも、同様に換算できる。このとき、撮像面の前後で換算式が異なるため、換算式を選択する必要がある。この場合、奥行き値換算部110は、例えば、視差0を境に視差の生じる方向が逆になるので、視差0を条件として換算式を選択すればよい。
【0080】
<奥行き値換算部による法線方向の算出>
続いて、図7,図8を参照して、奥行き値換算部110による法線方向の算出について説明する(適宜図4参照)。
【0081】
例えば、図7下段に示すように、注目画素Pと、注目画素Pの左側に隣接する近傍画素Pと、注目画素Pの右側に隣接する近傍画素Pとの奥行き値を求めたとする。このとき、図7上段に示すように、注目画素Pの奥行き値に対して、近傍画素Pの奥行き値が手前側を示しており、近傍画素Pの奥行き値が奥側を示しているとする。この場合、注目画素Pと近傍画素P,Pとの奥行き値が表す被写体表面αは、右側がカメラCに近く、左側がカメラCから遠くというように、カメラCに対して傾いている。このように、注目画素Pと近傍画素P,Pとの奥行き値から被写体表面αの向きがわかるため、被写体表面αの法線方向βを求めることができる。この被写体表面αの法線方向βは、カメラCの幾何学的位置を基準としている。
【0082】
このように、奥行き値換算部110は、注目画素Pを被写体の各部位に移動させながら、被写体の各部位ごとに表面の法線方向βを求めること繰り返す。この図7では、被写体の一部に注目しているが、被写体は、図8に示すように、3次元で撮像されることが多い。
【0083】
このため、多面体を被写体として、この被写体表面の法線方向を算出する場合を考える。図8では、多面体の底面である面1を被写体表面する。また、この多面体は、各面に頂点P1〜P8を有しており、凸多角形とする。これら頂点P1〜P8は、多面体外部から見て右回りに与えられている。また、視点はカメラCの位置を示す。また、視線ベクトルはカメラCの視線(レンズ11の光軸)を示すベクトルである。また、法線ベクトルは面1の法線を示すベクトルである。この場合、奥行き値換算部110は、面1の法線Nを、下記の式(9)に示すように2線分の外積で算出することができる。
【0084】
【数9】

【0085】
ここでは、P=(x,y,z)、P=(x,y,z)、P=(x,y,z)で定義されている。従って、この図8では、この法線Nの方向が、被写体表面の法線方向となる。
なお、この手法は、例えば、ホームページ「http://nis-lab.is.s.u-tokyo.ac.jp/nis/CG/cgtxt/furoku/fu1.htm#Appendix%EF%BC%91」に記載されている。
【0086】
図4に戻り、画像処理情報生成装置100の構成について説明を続ける。
カメラパラメータ算出部120は、奥行き値換算部110から奥行き情報が入力され、この奥行き情報が示す奥行き値に最適化処理を行って、カメラCの位置および方向を算出するものである。このカメラパラメータ算出部120は、例えば、最小二乗法などの最適化処理を行ってカメラCの位置および方向を、カメラパラメータとして算出する。そして、カメラパラメータ算出部120は、算出したカメラパラメータを、奥行き情報記憶部130および反射特性推定部140に出力する。
【0087】
なお、カメラパラメータの算出手法は、例えば、文献「画像から復元された3次元特徴点マップ群の世界座標系への統合,社団法人 電子情報通信学会,2010年電子情報通信学会総合大会,http://www.kameda-lab.org/research/publication/2010/201003_IEICE/201003IEICE-d_12_077-HayashiM.pdf」に記載されている。
また、カメラパラメータ算出部120は、例えば、ニュートン法、Powell法、共役勾配法などの最適化手法を用いることも可能である。
【0088】
奥行き情報記憶部130は、奥行き値換算部110から奥行き情報および被写体表面の法線方向が入力され、カメラパラメータ算出部120からカメラパラメータが入力され、この奥行き情報および法線方向を記憶するものである。このため、奥行き情報記憶部130は、記憶装置13aと、記憶装置制御部13bとを備える。この記憶装置13aは、奥行き情報を記憶する、例えば、メモリである。また、記憶装置制御部13bは、記憶装置13aへの書き込みおよび記憶装置13aからの読み出しを制御するものである。
【0089】
ここで、カメラパラメータ(カメラCの方向および位置)が入力されるため、記憶装置制御部13bは、奥行き情報、被写体表面の法線方向および撮像画像1,2の輝度値を、世界座標を基準に仮想空間内で位置合わせを行って記憶装置13aに記憶する。
【0090】
なお、本実施形態では、記憶装置13aに設けられたボクセル空間上で、奥行き情報、被写体表面の法線方向および撮像画像1,2の輝度値を記憶した。また、奥行き情報は、奥行き値が得られたボクセル座標に対して投票処理(+1の投票処理)を行って、被写体表面の存在有無のラベルおよびポリゴン化の補助情報として記憶される。
【0091】
反射特性推定部140は、カメラCから撮像画像1,2が入力され、カメラパラメータ算出部120からカメラパラメータが入力され、奥行き情報記憶部130が記憶する奥行き情報および被写体表面の法線方向を参照して、反射特性情報と、照明情報とを生成するものである。このため、反射特性推定部140は、拡散反射光成分画像生成部141と、鏡面反射光成分画像生成部142と、照明方向算出部(光源方向算出部)143と、照明情報生成部(光源情報生成部)144と、反射係数算出部145とを備える。
【0092】
拡散反射光成分画像生成部141は、撮像画像1,2での対応画素のうちの輝度値が小さい方を最小輝度値として選択して、対応画素ごとの最小輝度値を示す拡散反射光成分画像を生成するものである。
【0093】
ここで、撮像画像1には横方向の偏光成分が含まれておらず、撮像画像2には縦方向の偏光成分が含まれていない。また、前記したように、例えば、斜め45度方向に偏光した鏡面反射光が入射した場合、第1撮像素子13および第2撮像素子14では、鏡面反射光が同じ光量となるために、最小輝度値を選択しても、鏡面反射光成分の抑制を行うことが困難である。すなわち、鏡面反射光成分の抑制は、45度からずれた状態となることで、その効果が生じる。この影響を光学系で低減するには、構成が大規模、複雑化し、現実的でない。
【0094】
さらに、一定時間、様々な偏光方向の鏡面反射光成分による輝度値を求めると、その中で、確率的に偏光フィルタ11a,11bと直交する、または、直交に近い状態となる可能性がある。この場合、鏡面反射光成分は、偏光フィルタ11a,11bの一方で遮蔽されることになる。このため、拡散反射光成分画像生成部141は、撮像画像1,2での対応画素のうち、各対応座標の最小輝度値を選択して集めることで、鏡面反射光成分を抑制した拡散反射光成分画像を生成する。これによって、拡散反射光成分画像生成部141は、拡散反射光成分と、鏡面反射光成分との分離精度が従来技術より向上させ、鏡面反射光成分が含まれにくく、精度の高い拡散反射光成分を抽出可能となる。
【0095】
図9の例では、拡散反射光成分画像生成部141は、撮像画像1,2で左上に位置する画素を対応画素とする。また、拡散反射光成分画像生成部141は、2つの対応画素のうち、輝度値が小さい方を最小輝度値として選択する。そして、拡散反射光成分画像生成部141は、選択した最小輝度値を、対応画素と同一位置にある画素(例えば、左上の画素)の輝度値とする。このような処理を、拡散反射光成分画像生成部141は、撮像画像1,2内で対応画素を移動させながら、全ての対応画素に前記した処理を繰り返し行って、拡散反射光成分画像を生成する。つまり、拡散反射光成分画像は、撮像画像1,2での対応画素のうち、輝度値が小さい方の画素で構成された画像であり、拡散反射光成分を示す。
【0096】
鏡面反射光成分画像生成部142は、撮像画像1,2での対応画素のうちの輝度値が大きい方を最大輝度値として選択し、対応画素ごとの最大輝度値と最小輝度値との差分を示す鏡面反射光成分画像を生成するものである。
【0097】
この鏡面反射光成分画像生成部142は、拡散反射光成分画像生成部141と同様、撮像画像1,2で左上に位置する対応画素のうち、輝度値が大きい方を最大輝度値として選択する。また、拡散反射光成分画像生成部141は、拡散反射光成分画像生成部141が生成した拡散反射光成分画像を参照して、この対応画素の最小輝度値を取得する。そして、拡散反射光成分画像生成部141は、選択した最大輝度値と、拡散反射光成分画像から取得した最小輝度値との差分を、対応画素と同一位置にある画素(例えば、左上の画素)の輝度値とする。このような処理を、鏡面反射光成分画像生成部142は、撮像画像1,2内で対応画素を移動させながら、全ての対応画素に繰り返し行って、鏡面反射光成分画像を生成する。つまり、鏡面反射光成分画像は、最大輝度値と最小輝度値との差分が輝度値となる画素で構成された画像であり、鏡面反射光成分を示す。
【0098】
照明方向算出部(光源方向算出部)143は、被写体表面の法線方向およびカメラCの位置から、被写体Aでの反射光の入射角を算出し、算出した入射角の方向を照明の方向として算出するものである。
【0099】
ここで、カメラCの位置と、被写体表面の法線方向とから、反射の法則により、被写体Aで反射された反射光の出射角が算出できる。言い換えるなら、カメラCの視線が反射光の出射角から外れるほど、鏡面反射光の強度が極端に小さくなる。このことから、照明方向算出部143は、鏡面反射であれば、入射角=反射角となるので、反射光の入射角が示す方向を、この反射光の元となる光を照射した照明Lの方向として算出する。
【0100】
照明情報生成部(光源情報生成部)144は、鏡面反射光成分画像生成部142が生成した鏡面反射光成分画像、および、照明方向算出部143が算出した照明Lの方向に基づいて照明Lの光量を算出し、算出した照明Lの光量および方向を照明情報として生成するものである。
【0101】
<照明情報生成部による照明情報の生成>
図10を参照して、照明情報生成部144による照明情報の生成について説明する(適宜図4参照)。
ここで、照明情報生成部144は、最小輝度値と最大輝度値との差(=鏡面反射光成分画像が示す鏡面反射光成分の強度)と、照明Lの方向との関係より、被写体表面と照明Lの方向のなす線上における照明Lの光量を取得できる。計算を簡略化するため、図10に示すように、ある半径の仮想球Vbを予め設定し、その仮想球面を格子状に予め分割した場合を考える。この場合、照明情報生成部144は、各格子頂点に、取得した照明Lの光量を対応付けて記憶する。
【0102】
このとき、各格子頂点には、被写体表面での反射により、複数の反射光が入射することがある。図10の例では、格子頂点Sp1に2本の反射光が入射している。このように、ある格子頂点に複数の反射光が入射した場合、これら反射光のうち、強度が最大となる反射光の入射角が示す方向に照明Lが存在する可能性が高くなる。従って、照明情報生成部144は、各格子頂点に入射した複数の反射光の中で強度が最大値となるものを、その格子頂点における照明Lの光量として選択する。そして、照明情報生成部144は、各格子位置における照明Lの光量を、ゼロから最大光量までの間で正規化して、照明Lの方向と共に照明情報として記憶する。つまり、照明情報は、正規化されることから、相対値で表されることになる。
【0103】
この照明情報は、ハイクオリティなCGをレンダリングする際、一般的に利用されるHDR全方位画像と同等なものである。従って、照明情報は、別途CG部品をレンダリングして撮影中に合成する際、リアリティを向上させる有効な情報となる。
なお、照明情報は、例えば、ホームページ「http://ict.debevec.org/~debevec/Research/HDR/」に詳細に記載されている。
【0104】
図4に戻り、画像処理情報生成装置100の構成について説明を続ける。
反射係数算出部145は、照明情報生成部144が生成した照明情報と、鏡面反射光成分画像と、拡散反射光成分画像とに対して反射モデルを適用した最適化処理を行って、鏡面反射係数および拡散反射係数を反射特性情報として算出するものである。
【0105】
ここで、照明情報生成部144までの処理によって、カメラCの位置(つまり、レンズ11の主点位置)と、仮想空間における被写体Aの位置と、被写体表面の法線と、被写体に対する入射光とが既知である。ここで、入射光については仮想球面上に格子状に配列された格子位置に対応している。また、照明Lは、指向性を持たず、その格子位置から、全方位に光線を出射していると仮定している。つまり、照明Lは、スポットライトなどのような配光特性に偏りがあるものではないと仮定している。
【0106】
以上の条件から、反射係数算出部145は、反射モデルを適用した最適化処理を行うことで反射特性情報を算出できる。ここで、反射係数算出部145は、例えば、Phongモデルを適用したマーカート法によって、鏡面反射係数、拡散反射係数およびCos関数の次数を反射特性情報として算出している。
【0107】
なお、反射係数算出部145は、反射モデルや最適化手法が制限されるものではない。例えば、反射係数算出部145は、BRDF(Bidirectional Reflectance Distribution Function)などの反射モデルや、ニュートン法、Powell法、共役勾配法などの最適化手法を用いることも可能である。
【0108】
パラメータ設定部150は、画像処理情報生成装置100に必要な設定パラメータが入力され、入力された設定パラメータを画像処理情報生成装置100の各手段に出力するものである。ここで、例えば、パラメータ設定部150は、後記する奥行き抽出範囲に加減算する所定の値が設定パラメータとして入力されるので、この所定の値を奥行き抽出範囲算出部160に出力する。
【0109】
奥行き抽出範囲算出部160は、カメラCから撮像画像2が入力され、パラメータ設定部150から所定の値が入力され、この撮像画像2から顔領域検出処理により顔領域を検出するものである。そして、奥行き抽出範囲算出部160は、検出した顔領域に含まれる全画素の奥行き値の平均値を算出し、算出した平均値に所定の値を加減算して奥行き抽出範囲を求める。より具体的には、奥行き抽出範囲算出部160は、算出した平均値に所定の値を加算した値を奥行き抽出範囲の上限とし、算出した平均値から所定の値を減算した値を奥行き抽出範囲の下限として算出する。その後、奥行き抽出範囲算出部160は、算出した奥行き抽出範囲を被写体領域抽出部170に出力する。
なお、奥行き抽出範囲算出部160は、例えば、顔領域検出処理として、肌色領域を抽出する手法を利用することができる。
【0110】
被写体領域抽出部170は、カメラCから撮像画像2が入力され、奥行き抽出範囲算出部160から奥行き抽出範囲が入力され、奥行き情報記憶部130が記憶する奥行き情報を参照して、この撮像画像2から、奥行き値が奥行き抽出範囲に含まれる領域を被写体領域として抽出するものである。
【0111】
つまり、被写体領域抽出部170は、撮像画像2のある画素に対応する奥行き値が、奥行き抽出範囲に含まれるか否かを判定する。そして、被写体領域抽出部170は、奥行き値が奥行き抽出範囲に含まれる場合、その画素を被写体領域の画素として抽出する。この処理を、被写体領域抽出部170は、撮像画像2の全ての画素に繰り返し行って被写体領域を抽出して出力する。
【0112】
以上のように、被写体領域抽出部170は、奥行き値から撮像画像2の中で奥行き抽出範囲の奥行き値の領域を選択することで、撮像画像2の特定位置に配置された被写体を切り出すことが可能である。この被写体領域の抽出は、映像制作、特に、映像合成でニーズが高い処理である。
【0113】
なお、被写体領域抽出部170は、被写体領域の抽出方法が特に制限されない。例えば、画像処理情報生成装置100は、奥行き値の上限、下限を入力する2つの可変抵抗つまみを備える(不図示)。そして、被写体領域抽出部170は、これら可変抵抗つまみが操作されることで、奥行き値の上限、下限を手動で設定してもよい。
【0114】
なお、奥行き抽出範囲算出部160および被写体領域抽出部170は、撮像画像2に対して処理を行ったが、撮像画像1に処理を行ってもよい。この場合、撮像画像1,2の何れを対象とするか、パラメータ設定部150にパラメータとして入力してもよい。
【0115】
なお、本実施形態では、光源として照明Lを説明したが、本発明は、これに限定されない。つまり、本発明では、照明L以外の自然光(例えば、太陽光)を光源として、その光源情報を求めてもよい。
【0116】
なお、本実施形態では、カメラCが動画で撮像を行い、画像処理情報生成装置100がこの動画の各フレーム画像を処理することとして説明したが、本発明は、これに限定されない。つまり、カメラCが静止画で撮像を行い、画像処理情報生成装置100がこの静止画を処理してもよい。
【0117】
[画像処理情報生成装置の動作]
図11を参照して、図4の画像処理情報生成装置100の動作について説明する(適宜図4参照)。
ここで、画像処理情報生成装置100には、撮像画像1,2が入力されていることとする。
【0118】
画像処理情報生成装置100は、視差量算出部101によって、対応画素ごとの視差量を算出する(ステップS1)。また、画像処理情報生成装置100は、奥行き値換算部110によって、視差量を換算式で対応画素ごとの奥行き値に換算し、被写体表面の法線方向を算出する(ステップS2)。
【0119】
画像処理情報生成装置100は、カメラパラメータ算出部120によって、最小二乗法などの最適化処理を行ってカメラCの位置および方向を、カメラパラメータとして算出する(ステップS3)。
【0120】
画像処理情報生成装置100は、拡散反射光成分画像生成部141によって、撮像画像1,2での対応画素のうちの輝度値が小さい方を最小輝度値として選択して、対応画素ごとの最小輝度値を示す拡散反射光成分画像を生成する(ステップS4)。
【0121】
画像処理情報生成装置100は、鏡面反射光成分画像生成部142によって、撮像画像1,2での対応画素のうちの輝度値が大きい方を最大輝度値として選択し、対応画素ごとの最大輝度値と最小輝度値との差分を示す鏡面反射光成分画像を生成する(ステップS5)。
【0122】
画像処理情報生成装置100は、照明方向算出部143によって、被写体表面の法線方向およびカメラCの位置から、被写体での反射光の入射角を算出し、算出した入射角の方向を照明の方向として算出する(ステップS6)。
【0123】
画像処理情報生成装置100は、照明情報生成部144によって、鏡面反射光成分画像および照明Lの方向に基づいて照明Lの光量を算出し、算出した照明Lの光量および方向を照明情報として生成する(ステップS7)。
【0124】
画像処理情報生成装置100は、反射係数算出部145によって、照明情報と、鏡面反射光成分画像と、拡散反射光成分画像とに対して反射モデルを適用した最適化処理を行って、鏡面反射係数および拡散反射係数を算出する(ステップS8)。
【0125】
画像処理情報生成装置100は、奥行き抽出範囲算出部160によって、撮像画像2から顔領域検出処理により顔領域を検出し、検出した顔領域に含まれる全画素の奥行き値の平均値を算出し、算出した平均値に所定の値を加減算して奥行き抽出範囲を求める(ステップS9)。
【0126】
画像処理情報生成装置100は、被写体領域抽出部170によって、奥行き情報記憶部130が記憶する奥行き情報を参照して、撮像画像2から、奥行き値が奥行き抽出範囲に含まれる領域を被写体領域として抽出する(ステップS10)。
【0127】
以上のように、本発明の実施形態に係る撮像装置1は、カメラCが簡素であると共に、このカメラCが撮像した撮像画像1,2を用いて、奥行き情報、反射特性情報および照明情報をまとめて生成できる。従って、撮像装置1は、奥行き情報、反射特性情報および光源情報ごとに、各情報を生成するための固有の装置を必要とせず、カメラCの構成を簡易にすることができる。さらに、撮像装置1は、カメラCで撮像を行う際に、パターン光を被写体に照射する必要がないため、光外乱の多い環境でも利用することができる。
【0128】
従来技術では、奥行き情報や反射特性情報を取得するには、大型の計測装置を用いる必要があった。しかし、撮像装置1は、カメラCを家庭用ハンディカメラ程度に小型化することができる。また、高精度で欠落のない奥行き情報の取得が困難な場合でも、撮像装置1は、画像処理情報生成装置100によって、映像制作に求められる品質で、被写体領域の切り出すことができる。さらに、撮像装置1は、カメラC自体が簡易な構成で動画撮像が可能なため、テレビ番組や映画などの映像制作に適している。
【0129】
また、従来技術では、撮像後に、映像合成や照明条件の変更などの映像制作を行うには、多大な労力と、高いスキルとが要求される。これらは、撮像時に映像制作を想定して撮像を行っても、ある程度の労力の低減しか望めない。このため、利用者が映像制作を行うことは稀であり、映像制作のニーズはあるものの、また多大な労力や専門知識の必要性から、映像制作の動機付けが困難な状況である。しかし、撮像装置1は、通常のカメラ撮像と同程度の労力で画像処理情報の生成処理を格段に省力化して、かつ、映像制作の自由度を高めることができる。これによって、撮像装置1は、利用者が、映像制作の専門知識や多大な労力を要することなく、所望の映像制作を行うことができる。言い換えるなら、撮像装置1は、利用者のスキルやセンスに依存することなく、映像制作を可能とする。
【0130】
本発明の実施形態に係る撮像装置1について説明したが、本発明は、前記した実施形態に限定されず、種々の変更を加えることができる。以下、本発明の変形例に係る撮像装置1について、第1実施形態と異なる点について説明する。
【0131】
(変形例:絶対値で表された照明情報)
図1に示すように、撮像装置1は、撮像のタイミングに合わせて、照明Lの点灯および消灯を繰り返す制御を行い、照明点灯時および照明消灯時の照明情報を用いて、相対値で表された照明情報を絶対値に変換する。
【0132】
ここで、照明Lは、信号ケーブル9を介して、画像処理情報生成装置100に接続されている。そして、照明Lは、後記する照明制御部180から入力される同期信号に応じて、カメラCの撮像タイミングに同期させて、点灯と消灯とを繰り返す。
【0133】
図4の照明制御部(光源制御部)180は、照明Lを点灯および消灯させるものである。この照明制御部180は、照明Lの点灯および消灯と、カメラCの撮像とを同期させる同期信号を一定間隔(例えば、1フレーム秒)で照明LおよびカメラCに出力する。
【0134】
つまり、この同期信号が入力されたタイミングで、カメラCは、撮像を行う。また、この同期信号が入力されたタイミングで、照明Lは、点灯していれば消灯し、消灯していれば点灯する。
【0135】
反射特性推定部140は、カメラパラメータの他、カメラCから、照明点灯時の撮像画像1,2と、照明消灯時の撮像画像1,2とが入力される。そして、反射特性推定部140の各手段は、照明点灯時および照明消灯時の撮像画像1,2のそれぞれに対して、第1実施形態と同様の処理を施す。
【0136】
照明情報生成部144は、第1実施形態と同様、照明点灯時の照明情報(照明点灯時における照明Lの光量および方向)と、照明消灯時の照明情報(照明消灯時における照明Lの光量および方向)とを生成する。そして、照明情報生成部144は、照明点灯時および照明消灯時の光量から所定の算出式によってスケール(重み)を算出し、算出したスケールを照明消灯時の光量に乗算する。
【0137】
<照明情報生成部による照明情報の変換>
以下、照明情報生成部144による照明情報の変換について、具体的に説明する。
ここで、予め測定した照明Lの光量実測値をIとし、照明Lから被写体Aまでの距離をLgとし、被写体表面の法線に対する反射光の入射角をθとし、被写体表面で反射光を反射した反射部分の反射係数をKdとする。この入射角θは、照明方向算出部143が算出済みのため、既知である。
【0138】
また、カメラCから被写体Aまでの距離(奥行き情報)が既知である。従って、撮像装置1は、照明Lを被写体として撮像して、カメラCから照明Lまでの距離(奥行き情報)を生成することで、カメラCと被写体Aと照明Lとの位置関係が明らかになり、距離Lgを求めることができる。
【0139】
この場合、反射光量Irは、照明点灯時の輝度と、照明消灯時の輝度との差であり、下記の式(10)で表すことができる。
【0140】
【数10】

【0141】
ここで、照明消灯時の照明情報より、反射部分への照明消灯時の光量をIomniとする。また、照明点灯時の照明情報より、反射部分への照明点灯時の光量をItotalとする。この場合、拡散反射光成分については、照明点灯時の輝度Ionと、照明消灯時の輝度Ioffとを、下記の式(11)で表すことができる。
【0142】
【数11】

【0143】
式(11)に式(10)を代入して、各項を反射係数Kdで除算すると、下記の式(12)となる。
【0144】
【数12】

【0145】
ここで、被写体表面に直交する法線のベクトルVAを(ax,ay,az)とし、レンズ11の中心から反射部分への直線のベクトルVBを(bx,by,bz)とすると、入射角θは、ベクトルVA,VBの内積である式(13)より、下記の式(14)で表すことができる。なお、sqrは、平方根を返す関数である。
【0146】
【数13】

【0147】
【数14】

【0148】
前記したように、照明情報生成部144は、相対値で表された照明情報を生成している。このため、式(11)の光量Iomni,Itotalには、何らかのスケール(重み)sが掛けられていることになる。つまり、式(12)は、下記の算出式(15)で表される。
【0149】
【数15】

【0150】
ここで、光量Iomni,Itotalと、光量実測値Iと、入射角θと、距離Lgとは、既知である。従って、照明情報生成部144は、算出式(15)を解いて、スケールsの値を求めることができる。そして、照明情報生成部144は、このスケールsを光量Iomniに乗算することで、相対値で表された照明情報を絶対値に変換できる。
【0151】
このとき、照明Lの点灯と消灯との間に時間差があるため、照明点灯時の撮像画像1,2と、照明消灯時の撮像画像1,2との間に位置ずれが生じることがある。従って、照明情報生成部144は、照明点灯時の撮像画像1,2と、照明消灯時の撮像画像1,2に対して、ブロックマッチングまたはオプティカルフローを行って、この位置ずれを修正することが好ましい。
なお、本変形例では、例えば、1フレーム秒(つまり、1/30秒)程度と、その時間差が極めて小さいため、この位置ずれが無いと仮定している。
【0152】
また、相対値の照明情報を利用する場合、照明Lおよび照明制御部180が必要ないため、照明Lの着脱や、照明情報生成部144による処理の有無を選択可能な構成とすることが好ましい。
なお、照明情報生成部144および照明制御部180以外、第1実施形態と同様のため、詳細な説明を省略した。
【0153】
以上のように、本発明の変形例に係る撮像装置1は、照明情報を絶対値に変換できる。これによって、撮像装置1は、前記した実施形態と同様、光外乱の多い環境でも利用可能で、簡易な構成を実現できる。さらに、撮像装置1は、照明情報が絶対値で表されているため、実際の照明Lの明るさを照明情報から知ることができる。さらに、撮像装置1では、この照明情報を用いて別の撮像環境で画像処理を行う際、この別の撮像環境用に照明情報を変換する必要がない。つまり、撮像装置1は、異なる撮影環境間で照明情報を共用する場合でも、この照明情報の整合性を容易に保つことができる。
【0154】
なお、実施形態では、本発明に係る撮像装置の画像処理情報生成装置を独立した装置として説明したが、本発明では、一般的なコンピュータを、画像処理情報生成装置の各手段として機能させるプログラムによって動作させることもできる。このプログラムは、通信回線を介して配布しても良く、CD−ROMやフラッシュメモリ等の記録媒体に書き込んで配布しても良い。
【符号の説明】
【0155】
1 撮像装置
11 レンズ(光透過素子)
11a,11b 偏光フィルタ(偏光素子)
12 偏光BS(分光素子)
13 第1撮像素子
14 第2撮像素子
100 画像処理情報生成装置
101 視差量算出部
110 奥行き値換算部
120 カメラパラメータ算出部(撮像手段位置算出部)
130 奥行き情報記憶部
140 反射特性推定部
141 拡散反射光成分画像生成部
142 鏡面反射光成分画像生成部
143 照明方向算出部(光源方向算出部)
144 照明情報生成部(光源情報生成部)
145 反射係数算出部
150 パラメータ設定部
160 奥行き抽出範囲算出部
170 被写体領域抽出部
180 照明制御部
C カメラ(撮像手段)
L 照明(光源)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源で照らされる被写体を撮像して、前記被写体の奥行き値を示す奥行き情報と、前記被写体の反射特性を示す反射特性情報と、前記光源の方向および光量を示す光源情報とを生成する撮像装置であって、
偏光方向が互いに直交する2つの偏光素子からなる光透過素子と、前記偏光素子の一方からの入射光を透過させ、かつ、前記偏光素子の他方からの入射光を反射させる分光素子と、前記分光素子を透過した入射光を撮像する第1撮像素子と、前記分光素子で反射された入射光を撮像する第2撮像素子とを備える撮像手段と、
前記第1撮像素子および前記第2撮像素子で前記被写体を撮像した2つの撮像画像から、前記2つの撮像画像で対応する対応画素ごとの視差量を算出する視差量算出部と、
前記視差量算出部が算出した視差量を、予め設定された換算式で前記対応画素ごとの奥行き値に換算して前記奥行き情報を生成し、注目画素と当該注目画素の近傍画素との奥行き値で表される被写体表面に直交する法線方向を算出する奥行き値換算部と、
前記奥行き値換算部が算出した奥行き値に最適化処理を行って、前記撮像手段の位置を算出する撮像手段位置算出部と、
前記2つの撮像画像での対応画素のうちの輝度値が小さい方を最小輝度値として選択して、前記対応画素ごとの前記最小輝度値を示す拡散反射光成分画像を生成する拡散反射光成分画像生成部と、
前記2つの撮像画像での対応画素のうちの輝度値が大きい方を最大輝度値として選択し、前記対応画素ごとの前記最大輝度値と前記最小輝度値との差分を示す鏡面反射光成分画像を生成する鏡面反射光成分画像生成部と、
前記奥行き値換算部が算出した法線方向および前記撮像手段の位置から、前記被写体での反射光の入射角を算出し、算出した当該入射角が示す方向を前記光源の方向として算出する光源方向算出部と、
前記鏡面反射光成分画像生成部が生成した鏡面反射光成分画像および前記光源の方向に基づいて前記光源の光量を算出し、算出した前記光源の光量および方向を前記光源情報として生成する光源情報生成部と、
前記光源情報生成部が生成した光源情報と、前記鏡面反射光成分画像と、前記拡散反射光成分画像とに対して反射モデルを適用した最適化処理を行って、鏡面反射係数および拡散反射係数を前記反射特性情報として算出する反射係数算出部と、
を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記光源を点灯および消灯させる光源制御部をさらに備え、
前記光源情報生成部は、
光源点灯時および光源消灯時に前記光源の光量をそれぞれ算出し、当該光源点灯時および光源消灯時の光量から所定の算出式によって重みを算出し、算出した当該重みを前記光源消灯時の光量に乗算することで、絶対値で表された前記光源情報を算出することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記2つの撮像画像の一方から、前記対応画素の奥行き値が予め設定された奥行き抽出範囲に含まれる領域を被写体領域として抽出する被写体領域抽出部をさらに備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記2つの撮像画像の一方から顔領域検出処理により顔領域を検出し、検出した当該顔領域に含まれる全画素の奥行き値の平均値を算出し、算出した当該平均値に所定の値を加減算して前記奥行き抽出範囲を設定する奥行き抽出範囲算出部をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
偏光方向が互いに直交する2つの偏光素子からなる光透過素子と、前記偏光素子の一方からの入射光を透過させ、かつ、前記偏光素子の他方からの入射光を反射させる分光素子と、前記分光素子を透過した入射光を撮像する第1撮像素子と、前記分光素子で反射された入射光を撮像する第2撮像素子とを備える撮像手段により、光源で照らされる被写体を撮像して、前記被写体の奥行き値を示す奥行き情報と、前記被写体の反射特性を示す反射特性情報と、前記光源の方向および光量を示す光源情報とを生成するために、コンピュータを、
前記第1撮像素子および前記第2撮像素子で前記被写体を撮像した2つの撮像画像から、前記2つの撮像画像で対応する対応画素ごとの視差量を算出する視差量算出部、
前記視差量算出部が算出した視差量を、予め設定された換算式で前記対応画素ごとの奥行き値に換算して前記奥行き情報を生成し、注目画素と当該注目画素の近傍画素との奥行き値で表される被写体表面に直交する法線方向を算出する奥行き値換算部、
前記奥行き値換算部が算出した奥行き値に最適化処理を行って、前記撮像手段の位置を算出する撮像手段位置算出部、
前記2つの撮像画像での対応画素のうちの輝度値が小さい方を最小輝度値として選択して、前記対応画素ごとの前記最小輝度値を示す拡散反射光成分画像を生成する拡散反射光成分画像生成部、
前記2つの撮像画像での対応画素のうちの輝度値が大きい方を最大輝度値として選択し、前記対応画素ごとの前記最大輝度値と前記最小輝度値との差分を示す鏡面反射光成分画像を生成する鏡面反射光成分画像生成部、
前記奥行き値換算部が算出した法線方向および前記撮像手段の位置から、前記被写体での反射光の入射角を算出し、算出した当該入射角が示す方向を前記光源の方向として算出する光源方向算出部、
前記鏡面反射光成分画像生成部が生成した鏡面反射光成分画像および前記光源の方向に基づいて前記光源の光量を算出し、算出した前記光源の光量および方向を前記光源情報として生成する光源情報生成部、
前記光源情報生成部が生成した光源情報と、前記鏡面反射光成分画像と、前記拡散反射光成分画像とに対して反射モデルを適用した最適化処理を行って、鏡面反射係数および拡散反射係数を前記反射特性情報として算出する反射係数算出部、
として機能させるための画像処理情報生成プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−173916(P2012−173916A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34309(P2011−34309)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】