説明

撮像装置および表示装置

【課題】撮像素子または表示素子のロール角を調整することが可能な撮像装置および表示装置を提供する。
【解決手段】像光の電気信号への変換または電気信号に基づく画像生成を行う第1素子および第2素子を備え、第1素子は、第2素子に対して、前後方向の軸回りの回転角が調整可能である撮像装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、双眼鏡またはヘッドマウントディスプレイなど、ユーザが両眼で被写体を観察するための撮像装置および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
双眼鏡では、ユーザが両眼で被写体を観察するため、左眼および右眼のそれぞれに対応した光学系が設けられている。左右の光学系の光軸を調整する方法として、従来、左右の接眼ユニットのうち一方の接眼ユニットを、他方の接眼ユニットに対して傾き移動させることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−57563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、EVF(Elctronic View Finder;電子ビューファインダ)を用いた電子双眼鏡では、対物レンズから入った光をCMOSなどの撮像素子により画像データに変換し、この画像データを液晶表示パネルなどの表示素子に表示する。使用者は、表示素子に表示された画像を接眼レンズにより拡大して観察するようになっている。このような電子双眼鏡では、例えば、接眼レンズの光軸に対して表示素子のロール角(前後軸の回転角)を調整する必要が生じる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された従来の方法では、ピッチ角(左右軸の回転角)およびヨウ角(上下軸の回転角)のみの調整しかできなかったので、ロール角の調整が必要なEVFを備えた電子双眼鏡などの撮像装置または表示装置には十分ではなかった。
【0006】
本開示の目的は、撮像素子または表示素子のロール角を調整することが可能な撮像装置および表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示による撮像装置は、像光の電気信号への変換または電気信号に基づく画像生成を行う第1素子および第2素子を備え、第1素子は、第2素子に対して、前後方向の軸回りの回転角が調整可能であるものである。
【0008】
本開示の撮像装置では、第1素子および第2素子のそれぞれにおいて、像光が電気信号に変換され、または電気信号に基づいて画像が生成される。ここで、第1素子は、第2素子に対して、前後方向の軸回りの回転角が調整されている。よって、第1素子および第2素子に入射する像光、または第1素子および第2素子に表示される画像の平行度が一致し、像光または画像の重ね合わせが適切になされる。
【0009】
本開示による表示装置は、電気信号に基づく画像生成を行う第1素子および第2素子を備え、第1素子は、第2素子に対して、前後方向の軸回りの回転角が調整可能であるものである。
【0010】
本開示による表示装置では、第1素子および第2素子のそれぞれにおいて、電気信号に基づいて画像が生成される。ここで、第1素子は、第2素子に対して、前後方向の軸回りの回転角が調整されている。よって、第1素子および第2素子に表示される画像の平行度が一致し、画像の重ね合わせが適切になされる。
【発明の効果】
【0011】
本開示の撮像装置、または本開示の表示装置によれば、第1素子が、第2素子に対して、前後方向の軸回りの回転角を調整可能であるようにしたので、第1素子および第2素子のロール角を調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本開示の第1の実施の形態に係る撮像装置の構成を表す図である。
【図2】図1に示した接眼鏡筒の内部構成を表す図である。
【図3】図2に示した特定位置の例を説明するための図である。
【図4】図2に示した台座の構成を表す斜視図である。
【図5】図4のV−V線における簡略的な断面図である。
【図6】図2に示した台座の構成を表す斜視図である。
【図7】図6に示した台座を分解して表す斜視図である。
【図8】図6のVIII−VIII線における簡略的な断面図である。
【図9】図7に示した第2回転部材を分解して表す斜視図である。
【図10】図6のX−X線における簡略的な断面図である。
【図11】図1に示したEVFの回転角の調整方法を表す図である。
【図12】図11に示したEVFの回転角の調整手順を説明するための図である。
【図13】図1に示した撮像装置の外観を表す正面図である。
【図14】撮像装置の外観を表す背面図である。
【図15】撮像装置の外観を表す右側面図である。
【図16】撮像装置の外観を表す左側面図である。
【図17】撮像装置の外観を表す上面図である。
【図18】撮像装置の外観を表す下面図である。
【図19】撮像装置を右下方向から見た外観を表す斜視図である。
【図20】撮像装置を左上方向から見た外観を表す斜視図である。
【図21】本開示の第2の実施の形態に係る表示装置の外観を表す斜視図である。
【図22】図21に示した表示装置の構成を表す図である。
【図23】本開示の第3の実施の形態に係る撮像装置の構成を表す図である。
【図24】図23に示した撮像素子の回転角の調整方法を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(電子双眼鏡:EVFの回転角の調整を行う例)
2.第2の実施の形態(ヘッドマウントディスプレイ:表示素子の回転角の調整を行う例)
3.第3の実施の形態(電子双眼鏡:撮像素子の回転角の調整を行う例)
【0014】
(第1の実施の形態)
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る撮像装置である電子双眼鏡の構成を概略的に表したものである。なお、図面においては、幅方向に平行な方向(左右方向)をP、高さ方向に平行な方向(上下方向)をY、前後方向をRとする。
【0015】
この電子双眼鏡は、ユーザが両眼で遠景などを拡大して見る際などに使用するものであり、例えば、被写体(図示せず)側からユーザの左眼EL,右眼ER側に向かって順に、対物レンズ11L,11Rと、撮像素子12L,12Rと、LSI(Large Scale Integrated Circuit;大規模集積回路)13L,13Rと、EVF21L,21Rと、接眼レンズ22L,22Rとを有している。対物レンズ11L,11Rと、撮像素子12L,12Rと、LSI13L,13Rとは、筐体14に収納されている。EVF21Lと接眼レンズ22Lとは、接眼鏡筒23Lに収納されている。EVF21Rと接眼レンズ22Rとは、接眼鏡筒23Rに収納されている。
【0016】
撮像素子12L,12Rは、対物レンズ11L,11Rから入った像光を電気信号に変換するものであり、CMOS(Complementary metal oxide semiconductor;相補性金属酸化膜半導体)などのイメージャにより構成されている。
【0017】
図2は、接眼鏡筒23L,23Rの内部構成を概略的に表したものである。接眼鏡筒23L内には、例えば、EVF21Lと、接眼レンズ22Lと、台座30Lとが配設されている。接眼鏡筒23R内は、例えば、EVF21Rと、接眼レンズ22Lと、台座30Rとが配設されている。
【0018】
EVF21Lは、撮像素子12Lで変換された電気信号に基づいて画像を生成するものであり、液晶表示パネルなどの表示素子により構成されている。ユーザは、EVF21Lに表示された画像を接眼レンズ22Lで拡大して観察することが可能となっている。接眼レンズ22Lは、視度調整のため、ガイド軸(図示せず)に沿って移動することによりEVF21Lとの距離を調節可能である。EVF21Lおよび接眼レンズ22Lは、外装部材(図示せず)に収納され、EVFレンズユニット24Lを構成している。台座30Lについては後述する。
【0019】
EVF21Rは、撮像素子12Rで変換された電気信号に基づいて画像を生成するものであり、液晶表示パネルなどの表示素子により構成されている。ユーザは、EVF21Rに表示された画像を接眼レンズ22Rで拡大して観察することが可能となっている。接眼レンズ22Rは、視度調整のため、ガイド軸(図示せず)に沿って移動することによりEVF21Rとの距離を調節可能である。EVF21Rおよび接眼レンズ22Rは、外装部材(図示せず)に収納され、EVFレンズユニット24Rを構成している。台座30Rについては後述する。
【0020】
EVF21Lは、EVF21Rに対して、特定位置Pを通り前後方向の軸AR(以下、単に「前後軸AR」ともいう。)回り(矢印RR方向)の回転角(ロール角)が調整可能である。これにより、この電子双眼鏡では、EVF21L,EVF21Rのロール角を調整することが可能となっている。
【0021】
また、EVF21Rは、EVF21Lに対して、特定位置Pを通り幅方向に平行な軸AP(以下、単に「左右軸AP」ともいう。)回り(矢印RP方向)の回転角(ピッチ角)および特定位置Pを通り高さ方向に平行な軸AY(以下、単に「上下軸AY」ともいう。)回り(矢印RY方向)の回転角(ヨウ角)が調整可能であることが好ましい。その理由は以下の通りである。すなわち、ロール角,ピッチ角およびヨウ角の三つの調整構造を、EVF21L,21Rのいずれか一方にすべて備え、調整構造を持たない他方に対して調整する方法も可能である。しかしながら、ロール角,ピッチ角およびヨウ角の三つのうち一つをEVF21L,21Rの一方で、残り二つをEVF21L,21Rの他方で調整することにより、機器の大型化を回避し、内部領域を有効に使うことが可能となる。
【0022】
ここに「特定位置」とは、アイポイント、すなわち設計者が「眼で見る基準位置」として決定した位置であることが好ましい。より詳しくは、EVF21L,21Rと、接眼レンズ22L,22Rと、ユーザの左眼EL,右眼ERとの位置関係において、接眼レンズ22L,22Rよりも後方(ユーザの左眼EL,右眼ER側)の位置であって、かつ、ケラレが発生しない位置である。ケラレとは、構成部材によってレンズを通して覗いた像の隅が欠けたり、周辺の光量が低下して暗くなったりしてしまう現象である。
【0023】
なお、特定位置Pは、EVF21L,21R等を回転させることが可能であればどの位置でも原理的には調整可能である。例えば図3(A)は、特定位置PをEVF21L,21Rよりも前方(被写体側)の位置として、EVF21Rのピッチ角の調整を行う例を表している。ただし、この場合には、調整後に接眼レンズ22L,22RおよびEVF21L,21Rのユニット全体としての左右の位置がずれてしまい、双眼鏡として実使用に適さない状態で調整されてしまうおそれがある。製品状態での正しい眼の位置EL,ER(接眼鏡筒23L,23R)は、特定位置Pを通る軸24L1,24R1上にあるはずだが、図3(A)では、両者の間にずれdが生じる。そのため、図3(B)に示したように、接眼鏡筒23Rを覗くと接眼レンズ22Rの位置がずれてしまい、大きなケラレが発生する可能性がある。また、左右で眼EL,ERと接眼レンズ22L,22Rとの間の距離も変わってしまうので、左右のレンズ性能が保てないおそれがある。
【0024】
一方、図3(C)は、特定位置Pをアイポイントとして、EVF21Rのピッチ角の調整を行う例を表している。この場合には、製品状態での正しい眼の位置EL,ER(接眼鏡筒23L,23R)は特定位置Pを通る軸24L1,24R1上にある。よって、図3(D)に示したように、接眼鏡筒23Rを覗くと接眼レンズ22Rが中央に位置し、ケラレが小さくなる。以上の理由から、特定位置Pはアイポイントであることが好ましい。
【0025】
(ロール角調整機構)
以下、EVF21Lのロール角調整のための機構について説明する。図4は、図2に示した台座30Lの全体構成を表し、図5は、この台座30Lを、直径を含む平面で切断した断面構成を簡略的に表したものである。
【0026】
台座30Lは、EVFレンズユニット24Lの取付け、および、接眼鏡筒23Lと筐体14との連結のための部品であり、例えば、第1固定部材31Lと、第1回転部材32Lと、第1押え板ばね33Lと、第1押え部材34Lと、第1調整ばね35L(図4には図示せず、図5参照。)と、第1調整ねじ36Lとを有している。ただし、図5において第1調整ばね35Lは模式的に表している。
【0027】
第1固定部材31Lは、例えば、固定本体部31L1と、回転支持軸31L2とを有している。固定本体部31L1は、例えば、一端が開放された円筒状の部品である。回転支持軸31L2は、固定本体部31L1の底面の中心に設けられ、第1回転部材32Lを支持すると共に、第1回転部材32Lの回転中心軸となるものである。すなわち、回転支持軸31L2は、前後軸ARに一致すると共に接眼レンズ22Lの光軸に一致している。
【0028】
第1回転部材32Lは、矢印RRに示したように、第1固定部材31Lの回転支持軸31L2の回りに回転することにより、EVFレンズユニット24を前後軸AR周りに回転(ロール回転)させるものである。第1回転部材32Lは、例えば、回転本体部32L1と、取付部32L2とを有している。回転本体部32L1は、第1固定部材31Lの回転支持軸31L2に嵌め込まれ、前後軸ARの回りに回転可能である。取付部32L2は、EVFレンズユニット24Lの取付けのための部分であり、回転本体部32L1の周囲にフランジ状に設けられている。
【0029】
第1押え板ばね33Lは、第1固定部材31Lとの間に第1回転部材32Lを挟み込んでがたつきを除去し、精確なロール角調整を可能とするものである。第1押え板ばね33Lは、例えば、三本の脚33L1,33L2,33L3で第1押え部材34Lおよび第1回転部材32Lを押さえている。一方、第1押え板ばね33Lは、二つの固定点33L4,33L5において第1固定部材31Lに固定されている。固定点33L4は、例えば、回転支持軸31L2の先端に設けられている。固定点33L5は、例えば、第1固定部材31Lの底面の周縁部に設けられている。
【0030】
第1押え部材34Lは、第1押え板ばね33Lと第1回転部材32Lとの間で摩擦を軽減し、第1回転部材32Lの回転をスムーズにするためのものである。第1押え部材34Lは、第1回転部材32Lと共に、第1固定部材31Lの回転支持軸31L2に嵌め込まれている。
【0031】
第1調整ばね35Lおよび第1調整ねじ36Lは、第1回転部材32LによるEVF21Lのロール回転角度を調整するためのものである。すなわち、第1調整ばね35Lは、第1回転部材32Lを特定の回転方向(例えば矢印RRに示した時計回り)に付勢することにより、第1回転部材32Lの回転方向を一方向に規制するものである。一方、第1調整ねじ36Lは、回転により、第1調整ばね35Lによる付勢力を押し戻す方向に直線移動し、第1回転部材32LおよびEVF21Rのロール角を調整するものである。
【0032】
第1調整ばね35Lは、例えば、固定側掛止部35L1と、回転側掛止部35L2との間に設けられている。固定側掛止部35L1は、例えば、第1固定部材31Lの底面に設けられた突起である。回転側掛止部35L2は、例えば、第1回転部材32Lの底面に設けられた突起である。
【0033】
第1調整ねじ36Lの軸は、例えば、第1固定部材31Lの側面または第1押え板ばね33Lに設けられた通し孔36L1に通されている。第1調整ねじ36Lのねじ先は、第1回転部材32Lの側面の突出面36L2に当接し、この突出面36L2を押している。
【0034】
(ピッチ角調整機構)
次いで、EVF21Lのピッチ角調整のための機構について説明する。図6は、図2に示した台座30Rの全体構成を表し、図7は、この台座30Rを分解して表したものである。また、図8は、図6のVIII−VIII線における断面構成を簡略的に表したものである。
【0035】
台座30Rは、EVFレンズユニット24Rの取付け、および、接眼鏡筒23Rと筐体14との連結のための部品であり、第2固定部材41Rと、第2回転部材42Rと、第2押え板ばね43Rと、第2押え部材44Rと、第2調整ばね45R(図8参照。)と、第2調整ねじ46Rとを有している。なお、第2回転部材42Rの上には、後述する第3回転部材52R(図10参照。)および保持部材25R(図10参照。)を間にして、EVFレンズユニット24Rを取り付けるための取付部材26Rが設けられている。また、図8において第2調整ばね45Rは模式的に表している。
【0036】
第2固定部材41Rは、例えば、一端が開放された円筒状の部品であり、底面の中央に矩形の開口41R1を有している。この開口41R1の対向する二辺には、回転ガイド41R2が設けられている。回転ガイド41R2は、第2回転部材42Rを支持すると共に、第2回転部材42Rを、左右軸AP回りに矢印RP方向にピッチ回転させるガイドとなる曲面であり、特定位置Pを中心とした円弧の断面形状を有している。
【0037】
第2回転部材42Rは、矢印RPに示したように、上述した左右軸APの回りに回転することにより、EVFレンズユニット24を左右軸AP周りに回転(ピッチ回転)させるものである。具体的には、第2回転部材42Rは、第2固定部材41Rの開口41R1に嵌り込む矩形の部品である。第2回転部材42Rの対向する二辺には、第2固定部材41Rの回転ガイド41R2に対応する曲面42R1が設けられている。
【0038】
第2押え板ばね43Rは、第2固定部材41Rの下面との間に第2回転部材42Rを挟み込んでがたつきを除去し、精確なロール角調整を可能とするものである。第2押え板ばね43Rは、例えば、複数(例えば四本)の脚43R1,43R2,43R3,43R4で第2押え部材44Rおよび第2回転部材42Rを押さえている。一方、第2押えばね43Rは、開口41R1の周囲の複数(例えば四つ)の固定点43R5,43R6,43R7,43R8で、第2固定部材41Rの底面に固定されている。
【0039】
第2押え部材44Rは、第2押え板ばね43Rと第2回転部材42Rとの間で摩擦を軽減し、第2回転部材42Rの回転をスムーズにするためのものである。第2押え部材44Rは、第2回転部材42Rと共に、第2固定部材41Rの開口41R1に嵌め込まれている。
【0040】
第2調整ばね45Rおよび第2調整ねじ46Rは、第2回転部材42RによるEVF21Rのピッチ回転角度を調整するためのものである。すなわち、第2調整ばね45Rは、第2回転部材42Rを特定の方向に(例えば図8で矢印AP1に示したように左方へ)付勢することにより、第2回転部材42Rの回転方向を一方向に規制するものである。一方、第2調整ねじ46Rは、回転により、第2調整ばね45Rによる付勢力を押し戻す方向に直線移動し、第2回転部材42RおよびEVF21Rのピッチ角を調整するものである。
【0041】
このような第2調整ばね45Rは、例えば、固定側掛止部45R1と、回転側掛止部45R2との間に設けられている。固定側掛止部45R1は、例えば、第2固定部材41Rの底面(または第2固定部材41Rに固定された第2押え板ばね43R)に設けられた突起である。回転側掛止部45R2は、例えば、第2回転部材42Rの底面に設けられた突起である。
【0042】
第2調整ねじ46Rの軸は、例えば、第2固定部材41Rの側面または第2押え板ばね43Rに設けられた通し孔46R1に通されている。第2調整ねじ46Rのねじ先は、第2回転部材42Rの側面に当接し、第2回転部材42Rを押している。
【0043】
(ヨウ角調整機構)
以下、EVF21Lのヨウ角調整のための機構について説明する。図9は、図7および図8に示した第2回転部材42Rを分解して表したものである。また、図10は図6のX−X線における断面構成を簡略的に表したものである。
【0044】
第2回転部材42Rの内部および周囲には、第3回転部材52Rと、第3押え板ばね53Rと、第3押え部材54Rと、第3調整ばね55R(図10参照。)と、第3調整ねじ56R(図6参照。)とが設けられている。なお、図10において第3調整ばね55Rは模式的に表している。
【0045】
第2回転部材42Rは、例えば、底面の中央に矩形の開口42R2を有している。この開口41R2の対向する二辺には、回転ガイド42R3が設けられている。回転ガイド42R3は、第3回転部材52Rを支持すると共に、第3回転部材52Rを、上下軸AY回りに回転させるガイドとなる曲面であり、特定位置Pを中心とした円弧の断面形状を有している。
【0046】
第3回転部材52Rは、矢印RYに示したように、上述した上下軸AYの回りに回転することにより、EVFレンズユニット24を上下軸AY周りに回転(ヨウ回転)させるものである。具体的には、第3回転部材52Rは、第2回転部材42Rの開口42R2に嵌り込む矩形の部品である。第3回転部材52Rの対向する二辺には、第2回転部材42Rの回転ガイド42R3に対応する曲面52R1が設けられている。第3回転部材52Rは、保持部材25Rを間にして取付部材26Rに固定されている。
【0047】
第3押え板ばね53Rは、第2回転部材42Rの下面との間に第3回転部材52Rを挟み込んでがたつきを除去し、精確なロール角調整を可能とするものである。第3押え板ばね53Rは、例えば、複数(例えば四本)の脚53R1,53R2,53R3,53R4で第3押え部材54Rおよび第3回転部材52Rを押さえている。一方、第3押えばね53Rは、開口42R2の周囲の複数(例えば三つ)の固定点53R5,53R6,53R7で、第2回転部材42Rの底面に固定されている。
【0048】
第3押え部材54Rは、第3押え板ばね53Rと第3回転部材52Rとの間で摩擦を軽減し、第3回転部材52Rの回転をスムーズにするためのものである。第3押え部材54Rは、第3回転部材52Rと共に、第2回転部材42Rの開口42R2に嵌め込まれている。
【0049】
第3調整ばね55Rおよび第3調整ねじ56Rは、第3回転部材52RによるEVF21Rのヨウ回転角度を調整するためのものである。すなわち、第3調整ばね55Rは、第3回転部材52Rを特定の方向に(例えば図10で矢印AY1に示したように左方へ)付勢することにより、第3回転部材52Rの回転方向を一方向に規制するものである。一方、第3調整ねじ56Rは、回転により、第3調整ばね55Rによる付勢力を押し戻す方向に直線移動し、第3回転部材52RおよびEVF21Rのヨウ角を調整するものである。
【0050】
このような第3調整ばね55Rは、例えば、固定側掛止部55R1と、回転側掛止部55R2との間に設けられている。固定側掛止部55R1は、例えば、第2回転部材42Rの底面(または第2回転部材42Rに固定された第3押え板ばね53R)に設けられた突起である。回転側掛止部55R2は、例えば、第3回転部材52Rの底面に設けられた突起である。
【0051】
第3調整ねじ56Rの軸は、例えば、第2回転部材42Rの側面または第3押え板ばね53Rに設けられた通し孔56R1(図6参照。)に通されている。第3調整ねじ56Rのねじ先は、第3回転部材52Rの側面に当接し、第3回転部材52Rを押している。
【0052】
この電子双眼鏡におけるEVF21L,21Rの回転角の調整は、例えば次のようにして行うことができる。
【0053】
図11に示したように、組立完了した接眼鏡筒23L,23RのEVF21L,21Rにチャート画像を表示し、そのチャート画像を、光軸61L,61Rを平行調整した二つの冶具カメラ62L,62Rで撮影し、相互に比較しながら調整する。その際、ピントは無限遠とする。また、接眼レンズ22L,22Rの視度は0Diop(ディオプター)に合わせておく。
【0054】
図12(A)および図12(B)は、冶具カメラ62L,62Rで撮影されたチャート画像63L,63Rの初期位置を表したものである。右のEVF21Rでは、ロール角は組立完了時に決定されるが、ヨウ角およびピッチ角は調整可能な状態である。そのため、チャート画像63Rの初期位置では、ピッチ角およびヨウ角は、チャート画像63Rの中心点63RCの上下左右の移動となって観察されるが、ロール角は組立精度を高めることにより所望の傾き(例えば水平)に限りなく近づけることが可能である。
【0055】
一方、左のEVF21Lでは、ピッチ角およびヨウ角は組立完了時に決定されるが、ロール角は調整可能な状態である。そのため、チャート画像63Lの初期位置では、ロール角は所望の角度(例えば水平)から回転した状態となるが、ピッチ角およびヨウ角は組立精度を高めることにより所望の角度に限りなく近づけることが可能である。すなわち、チャート画像63Lの中心点63LCは所望の位置(例えば画面中央)にすることが可能であり、ここをピッチ・ヨウ基準点63PYとする。
【0056】
次いで、図12(C)に示したように、右の接眼鏡筒23Rにおいて第2調整ねじ46Rを用いてピッチ角を調整する。また、第3調整ねじ56Rを用いてヨウ角を調整する。これにより、右のEVF21Rで観察されるチャート画像63Rの中心点63RCを、左のEVF21Lのピッチ・ヨウ基準点63PYに合わせる。この状態で、チャート水平線をロール基準線63Rとする。
【0057】
続いて、図12(D)に示したように、左の接眼鏡筒23Lにおいて第1調整ねじ36Lを用いてロール角を調整し、左のEVF21Lで観察されるチャート画像63Lの水平線63LHを、右のEVF21Rのロール基準線63Rと平行に合わせる。以上により、EVF21L,21Rの回転角の調整が完了する。
【0058】
この電子双眼鏡では、対物レンズ11L,11Rから入った像光が、撮像素子12L,12Rにより、電気信号に変換される。EVF21L,21Rにおいては、撮像素子12L,12Rにより変換された電気信号に基づいて画像が生成される。この画像は、接眼レンズ22L,22Rにより拡大され、ユーザに観察される。
【0059】
ここでは、EVF21Lが、EVF21Rに対して、前後方向の軸AR(前後軸AR)回りの回転角(ロール角)が調整されているので、両目で覗いたそれぞれの像の平行度が一致することで像の重ね合わせが適切に行われる。
【0060】
更に、EVF21Rが、EVF21Lに対して、左右軸AP回りの回転角(ピッチ角)および上下軸AY回りの回転角(ヨウ角)が調整されているので、両目で覗いたそれぞれの像の左右方向および上下方向の位置が一致する。よって、像の重ね合わせが更に適切に行われ、両目で快適に観察できる。
【0061】
このように本実施の形態では、EVF21Lが、EVF21Rに対して、前後方向の軸AR(前後軸AR)回りの回転角(ロール角)が調整可能であるようにしたので、EVF21L,21Rのロール角を調整することが可能となる。
【0062】
また、EVF21Rが、EVF21Lに対して、特定位置Pを通り幅方向に平行な軸AP(左右軸AP)回りの回転角(ピッチ角)および特定位置Pを通り高さ方向に平行な軸AY(上下軸AY)回りの回転角(ヨウ角)が調整可能であるようにしたので、機器の大型化を回避し、内部領域を有効に使うことが可能となる。
【0063】
図13ないし図20は、上記実施の形態に係る電子双眼鏡の外観の一例を表したものである。図13は正面図、図14は背面図、図15は右側面図、図16は左側面図、図17は上面図、図18は下面図である。図19は、この電子双眼鏡を右下方向から見た外観を表した斜視図であり、図20は、この電子双眼鏡を左上方向から見た外観を表した斜視図である。
【0064】
(第2の実施の形態)
図21は、本開示の第2の実施の形態に係る表示装置であるヘッドマウントディスプレイの外観を表したものである。このヘッドマウントディスプレイは、例えば、眼鏡形の表示部71の両側に、ユーザの頭部に装着するための耳掛け部72を有している。
【0065】
図22は、図21に示した表示部71の構成を表したものである。表示部71は、例えば、ユーザの左眼EL,右眼ERから遠い側から順に、第1の実施の形態と同様の台座30L,30Rと、表示素子81L,81Rと、接眼レンズ82L,82Rとを有している。
【0066】
表示素子81L,81Rは、電気信号に基づいて画像を生成するものであり、液晶表示パネルまたは有機EL(Electroluminescence)表示パネルなどにより構成されている。ユーザは、表示素子81L,81Rに表示された画像を接眼レンズ82L,82Rで拡大して観察することが可能となっている。
【0067】
表示素子81Lは、表示素子81Rに対して、前後方向の軸AR(前後軸AR)回りの回転角(ロール角)が調整可能である。これにより、このヘッドマウントディスプレイでは、表示素子81L,81Rのロール角を調整することが可能となっている。
【0068】
また、表示素子81Rは、表示素子81Lに対して、特定位置Pを通り幅方向に平行な軸AP(左右軸AP)回りの回転角(ピッチ角)および特定位置Pを通り高さ方向に平行な軸AY(上下軸AY)回りの回転角(ヨウ角)が調整可能であることが好ましい。確かに、ロール角,ピッチ角およびヨウ角の三つの調整構造を、表示素子81L,81Rのいずれか一方にすべて備え、調整構造を持たない他方に対して調整する方法も可能である。しかしながら、ロール角,ピッチ角およびヨウ角の三つのうち一つを表示素子81L,81Rの一方で、残り二つを表示素子81L,81Rの他方で調整することにより、機器の大型化を回避し、内部領域を有効に使うことが可能となる。
【0069】
ここに「特定位置」とは、第1の実施の形態と同様に、アイポイント、すなわち設計者が「眼で見る基準位置」として決定した位置であることが好ましい。
【0070】
台座30L,30Rは、第1の実施の形態と同様に構成されている。
【0071】
(第3の実施の形態)
図23は、本開示の第3の実施の形態に係る撮像装置である電子双眼鏡の構成を概略的に表したものである。この電子双眼鏡は、撮像素子12L,12Rに、第1の実施の形態と同様の台座30L,30Rを設けることにより、撮像素子12L,12Rのロール角,ピッチ角およびヨウ角を調整可能としたものである。このことを除いては、この電子双眼鏡の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0072】
すなわち、撮像素子12Lは、撮像素子12Rに対して、前後方向の軸AR(前後軸AR)回りの回転角(ロール角)が調整可能である。これにより、この電子双眼鏡では、撮像12L,12Rのロール角を調整することが可能となっている。
【0073】
また、撮像素子12Rは、撮像素子12Lに対して、幅方向に平行な軸AP(左右軸AP)回りの回転角(ピッチ角)および高さ方向に平行な軸AY(上下軸AY)回りの回転角(ヨウ角)が調整可能であることが好ましい。
【0074】
図24は、このような撮像素子12L,12Rの回転角の調整方法を表したものである。対物レンズ11Lおよび撮像素子12Lを台座30Lに配設して撮像ユニット15Lを構成する。また、対物レンズ11Rおよび撮像素子12Rを台座30Rに配設して撮像ユニット15Rを構成する。撮像ユニット15L,15Rを、第1の実施の形態と同様にして冶具カメラ62L,62Rで撮影し、撮像素子12Lのロール角を調整すると共に撮像素子12Rのピッチ角およびヨウ角を調整することが可能である。
【0075】
なお、第1の実施の形態と第3の実施の形態とを組み合わせて、EVF21L,21Rと撮像素子12L,12Rとの両方に、第1の実施の形態と同様の台座30L,30Rを設けることも可能である。
【0076】
以上、実施の形態を挙げて本開示を説明したが、本開示は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、左の台座30Lでロール角の調整を行い、右の台座30Rでピッチ角およびヨウ角の調整を行う場合について説明したが、右の台座30Rでロール角の調整を行い、左の台座30Lでピッチ角およびヨウ角の調整を行うことも可能である。
【0077】
また、ロール・ピッチ・ヨウの三つの角度調整機構は、そのうちの一つが台座30L(または台座30R)に、残りの二つが台座30R(または台座30L)に設けられていれば、その組合せは限定されない。例えば、台座30Lでピッチ角を調整し、台座30Rでロール角およびヨウ角を調整してもよい。更に、台座30Rがピッチ角を調整し、台座30Lでロール角およびヨウ角を調整してもよい。あるいは、台座30Lでヨウ角を調整し、台座30Rでロール角およびピッチ角を調整してもよい。また、台座30Rでヨウ角を調整し、台座30Lでロール角およびピッチ角を調整してもよい。
【0078】
更に、例えば、上記実施の形態では、電子双眼鏡またはヘッドマウントディスプレイの構成を具体的に挙げて説明したが、全ての構成要素を備える必要はなく、また、他の構成要素を更に備えていてもよい。
【0079】
加えて、例えば、上記実施の形態では、撮像装置の例として電子双眼鏡、表示装置の例としてヘッドマウントディスプレイについてそれぞれ説明したが、本技術は電子双眼鏡またはヘッドマウントディスプレイ以外の他の二眼の撮像装置または表示装置に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0080】
11L,11R…対物レンズ、12L,12R…撮像素子、13L,13R…LSI、21L,21R…EVF、22L,22R…接眼レンズ、23L,23R…接眼鏡筒、24L,24R…EVFレンズユニット、30L,30R…台座、71…表示部、72…耳掛け部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像光の電気信号への変換または電気信号に基づく画像生成を行う第1素子および第2素子を備え、前記第1素子は、前記第2素子に対して、前後方向の軸回りの回転角が調整可能である
撮像装置。
【請求項2】
前記第2素子は、前記第1素子に対して、特定位置を通り幅方向に平行な軸回りの回転角および前記特定位置を通り高さ方向に平行な軸回りの回転角が調整可能である
請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記特定位置は、アイポイントである
請求項2記載の撮像装置。
【請求項4】
電気信号に基づく画像生成を行う第1素子および第2素子を備え、前記第1素子は、前記第2素子に対して、前後方向の軸回りの回転角が調整可能である
表示装置。
【請求項5】
前記第2素子は、前記第1素子に対して、特定位置を通り幅方向に平行な軸回りの回転角および前記特定位置を通り高さ方向に平行な軸回りの回転角が調整可能である
請求項4記載の表示装置。
【請求項6】
前記特定位置は、アイポイントである
請求項5記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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