説明

撮像装置及びその制御方法、プログラム、並びに記憶媒体

【課題】撮影前にカメラの動きや操作に応じて単一画像または合成画像を表示するように切り替えることで、撮影失敗のリスクを回避できる制御技術を実現する。
【解決手段】撮像装置は、被写体の画像を撮像する撮像手段と、第1の露光期間に撮像された第1の画像と、前記第1の露光期間より短い第2の露光期間に撮像された第2の画像を合成した合成画像のいずれかを表示するように表示手段を切り替える切り替え手段と、装置の動きを検出する検出手段と、前記検出手段により所定の動きが検出された場合、前記第1の画像を表示し、前記所定の動きが検出されない場合、前記合成画像を表示するように前記切り替え手段を制御する制御手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルー画像と、露光時間の短い画像を合成した合成画像を切り替えて表示する撮像装置の制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラなどの撮像装置において、複数の画像を合成して1枚の合成画像を作成し、ユーザに提供するものが提案されている。合成画像を作成する第1の目的は、ダイナミックレンジを拡張するためである。すなわち、複数枚の画像を撮像する際に露出を変え、露出が異なる画像を合成することで白飛び(露出過多)や、黒つぶれ(露出不足)の少ない幅広いダイナミックレンジを持つ画像を生成することができるからである。第2の目的は、高感度化である。複数枚の画像を合成することで、画像に含まれる(ランダムな)ノイズ成分が抑圧し、合成画像のSN比を向上することができるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−088927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記合成画像を作成する際の注意点として、被写体や撮像条件によっては、合成画像が視覚的に違和感(不自然さ)を感じさせることがある。また、画像を合成する際、複数枚の画像の間に生ずる位置ずれを補正した上で合成する必要があるが、被写体や撮像条件によってはその位置ずれが十分に補正できず、ぶれた画像が生成されることがある。このように、合成画像が、ユーザが意図したものとは異なる画像となってしまう場合がある。
【0005】
例えば特許文献1は、通常撮影モード(画像合成しない)と合成画撮影モードそれぞれに対し、内部的に最適な設定を持ち、それぞれのモードで最適な画質を提供している。
【0006】
しかし、最適な設定であったとしても、ユーザの好みと合っているとはかぎらず、この場合、ユーザは、通常撮影モードと合成画像撮影を2回試すことになる。あるいは、製品によっては、一度のシャッタレリーズで、通常撮影モードと画像合成とを、自動的に撮像し、後からユーザに選択させる形態も考えられる。
【0007】
いずれにせよ撮影後(シャッタレリーズ後)でないと合成画像の確認ができないため、ユーザとっては、実際の撮像前に、表示部で合成画像を容易に確認できることが望ましい。
【0008】
ただし、撮影前に常に合成画像を表示するようにした場合も不都合が生じる。例えば図3のように、パンやズーム時の合成画像は、条件によってはその一部が暗くなったり、ぶれたりすることがある。よって、撮影前にユーザが構図や画角を調整している間は、ズームやパンが多くなるので、合成画像を表示せずに、単一画像を表示した方が動きに対する、表示画像の追従性が良く、構図や画角の調整といった目的のためには望ましい。
【0009】
一方で、ユーザがパンやズームを終了し撮影する直前には、合成画像を表示し、撮影前に合成画像の出来上がりイメージを確認できることが望ましい。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、その目的は、撮影前にカメラの動きや操作に応じて単一画像または合成画像を表示するように切り替えることで、撮影失敗のリスクを回避できる制御技術を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明の撮像装置は、被写体の画像を撮像する撮像手段と、第1の露光期間に撮像された第1の画像と、前記第1の露光期間より短い第2の露光期間に撮像された第2の画像を合成した合成画像のいずれかを表示するように表示手段を切り替える切り替え手段と、装置の動きを検出する検出手段と、前記検出手段により所定の動きが検出された場合、前記第1の画像を表示し、前記所定の動きが検出されない場合、前記合成画像を表示するように前記切り替え手段を制御する制御手段と、を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、撮影前にカメラの動きや操作に応じて単一画像または合成画像を表示するように切り替えることで、撮影失敗のリスクを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る実施形態の撮像装置のブロック図。
【図2】本実施形態の撮像装置の表示切り替え処理を説明する図。
【図3】画像合成処理を説明する図。
【図4】本実施形態の変形例の表示切り替え処理を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、本発明を実現するための一例であり、本発明が適用される装置の構成や各種条件によって適宜修正又は変更されるべきものであり、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0015】
<撮像装置の構成>図1を参照して、本発明に係る実施形態の撮像装置の構成について説明する。なお、以下の説明では、複数枚の画像を合成して作成された1枚の画像を合成画像、撮像された1枚の画像を単一画像と呼ぶ。
【0016】
本実施形態の撮像装置は、例えば、複数枚の画像から1枚の画像を合成する機能を有するデジタルカメラである。そして、本実施形態では、装置の状態変化に応じて、第1の露光期間(フレーム)に撮像された第1の画像(単一画像)と、第1の露光期間より短い第2の露光期間に撮像された第2の画像を合成した合成画像のいずれかを表示するように表示部を切り替える。
【0017】
図1において、本発明を実現する撮像装置は主として、制御部101、撮像部102、画像縮小部103、画像合成部104、切り替え器105、表示部106、操作部107、動き検出器108、を含む。
【0018】
制御部101は、例えばマイクロコンピュータであり、上記各部102〜108へ制御信号を出力すると共に、各部102〜108から動作状態などを示す信号を受ける。
【0019】
操作部107は、例えば操作キーやタッチパネル、ズームボタンやシャッタボタンに代表される、撮像装置の制御に係るユーザインターフェイスを含む。撮像装置に対するユーザ操作が、操作部107を通じて制御部101へ入力され、制御部101からの制御信号を受けて各部102〜108の動作が決定される。
【0020】
撮像部102は、例えばCMOSイメージセンサであり、通常の撮影時においては、例えば毎秒60フレームの画像を撮像する。以下では、撮像時のフレームレートは1/60秒であるとして説明するが、本発明はこのフレームレートに限定されるものではない。
【0021】
通常、本撮影(実際にシャッタをレリーズする操作)の前に、ユーザは、表示部106の画像を見て、画角や露出の設定などを行う。この期間を撮影前期間と呼ぶ。
【0022】
撮像部102は、電子シャッタ機能により、1/60秒の中で、自由に露光時間を変えることができる。また、フレーム単位でその露光時間が可変である。なお、電子シャッタとは、CMOSイメージセンサのフォトダイオードにおいて、一度電荷をすべて吐き出した後、電荷の蓄積時間を電気的に変更することでシャッタレリーズと同等の動作を実現する機能を意味する。
【0023】
撮影前期間において、撮像部102の駆動は、例えば図2のように行う。
【0024】
1フレームは最大1/60秒の電荷蓄積が可能であるとし、2フレーム単位で見た場合、一方のフレーム(Aフレーム)は最大1/60秒の電荷蓄積が可能で、電子シャッタとして撮像部102を駆動して、一定時間、電荷蓄積を行う。他方のフレーム(Bフレーム)は電子シャッタを用いた電荷蓄積量(露出量)がフレーム間で異なる。Bフレームの電荷蓄積量は、後処理である画像合成処理において、ダイナミックレンジ拡張やSN比向上などの目的に応じて決められる。
【0025】
Aフレームは最終的に単一画像を作成するために利用される。Bフレームは最終的に合成画像を作成するために利用される。
【0026】
AフレームおよびBフレームはいずれも、画像縮小部103によりデータサイズが縮小される。これは撮像部102から得られる画像データは、表示部106の画素サイズに比べて非常に大きいためである。
【0027】
Bフレームは、画像縮小部103での縮小処理後、画像合成部104に出力される。画像合成部104はBフレームのフレームごとの画像データを合成する。
【0028】
画像合成部104は、実際のシャッターレリーズ時において撮像部102から得られる大きな画素数の画像データを合成できる機能を持った信号処理回路である。なお、画像縮小部103からの縮小画像データはデータ量が小さいことから、画像合成に要する処理負荷は大きくはなく、画像合成処理に要する時間も短くなる。Bフレームの画像データを画像合成部104において合成した画像データをB’フレームと呼ぶ。
【0029】
切り替え器105は、画像縮小部103からのAフレームと、画像合成部104からのB’フレームとを入力し、表示部106へ出力するフレームの画像データを切り替える。AフレームとB’フレームのどちらの画像データを出力すべきかは、制御部101が決定する。
【0030】
動き検出器108は、例えば撮像装置内部に設けられた3軸(X,Y,Z)方向の角速度を検出するセンサであり、撮影者による手ぶれやパンの動作を検出できる。また、動き検出器108は、画像縮小部103により生成される縮小画像データから、被写体の動きベクトルの検出を行い、被写体の移動速度や移動方向を算出し、算出結果を制御部101に出力する。
【0031】
制御部101は切り替え器105を以下のように制御する。
【0032】
例えば撮影者がパンやズームを行っている場合に、パンの状態は動き検出器108から、ズームの情報は操作部107からそれぞれ取得することができる。ここで、切り替え器105は、Aフレームの画像データを出力する。これはパンやズーム時に、合成画像データを出力すると、図3に示すように、一部の画像が暗くなったり、画像にぶれが発生する可能性があるからである。
【0033】
また、切り替え器105は、動き検出器108により検出された手ぶれが大きい場合にも、Aフレームの画像データを出力する。手ぶれが大きい場合には、画像を合成する際にフレーム間の画像の位置合わせがうまくいかず、合成画像にぶれが発生する可能性があるからである。
【0034】
また、切り替え器105は、動き検出器108により検出された被写体の移動量が大きい場合にも、Aフレームの画像データを出力する。これは被写体の動きが大きい場合、先に述べた場合と同じで、一部の画像が暗くなる場合や、画像にぶれが発生する可能性があるからである。
【0035】
切り替え器105は、上記のように、ズーム、パン、手ぶれ、被写体の移動量がある範囲内に収まった場合に、B’フレームの画像データを出力する。
【0036】
上記のようなフレームごとに画像の表示を切り替えることにより、撮影者がズームやパンを行う際に、被写体の動きが速いときなどは、表示部106にAフレームの画像データが表示される。ユーザはその画像を見ながら、撮影に関わる操作を行うことで構図や画角などを容易に決定することができる。
【0037】
一方、上記以外の状況、すなわち、ズームやパンを止め、撮影者の所望の構図や画角が決まった場合や、被写体の動きが止まった場合など、撮影条件が整った状況においては、表示部106にB’フレームの画像データを表示する。これにより、ユーザは撮影前に合成画像を確認することができ、撮影後に合成画像を見て失敗と判断するような事態を回避できる。
【0038】
以上の説明では、切り替え器105がAフレームまたはB’フレームを出力する条件として、動き検出器108による検出結果を利用しているが、操作部107からの入力信号の状態変化を判定し、その判定の結果に応じて切り替えることもできる。具体的には、操作部107はシャッタボタンを有し、ユーザがシャッタボタンを反押し(所定の操作)するまでは、常にAフレームを出力し、シャッタボタンが反押しされたときにB’フレームを出力することもできる。
【0039】
また、撮像部102において、一定時間内、例えば1秒間に、AフレームとBフレームの撮像フレーム数が動き検出器108の検出結果に応じて可変とされる場合も想定される。これは、動き検出器108の検出結果により、切り替え器105の出力としてAフレームが優先的に選ばれる場合、Bフレームに比べて、Aフレームを多く撮像するように撮像部102を制御する。これにより、表示部106におけるAフレームの表示更新レートが上がり、カメラや被写体の動きに対して表示部106の追従性が良くなる。
【0040】
図4(a)は通常時、図4(b)はAフレームが優先的に選ばれた場合の切り替え制御の例である。図4(b)において、Bフレームは複数枚の画像を合成するため、時間的にあまり離れない方がよい。これは、時間的に離れない方が、画像間の被写体の位置ずれが小さいためである。
【0041】
反対に、動き検出器108の検出結果により、切り替え器105の出力としてB’フレームが優先的に選ばれる場合、Bフレームを多く撮像するように、またはBフレームのみを撮像するように撮像部102を制御する。これにより、表示部106におけるBフレームの表示更新レートが上がり、合成画像の更新レートが上がるため、カメラや被写体の動きに対して表示部106の追従性が良くなる。
【0042】
[他の実施形態]本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上記実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)をネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムコードを読み出して実行する処理である。この場合、そのプログラム、及び該プログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体の画像を撮像する撮像手段と、
第1の露光期間に撮像された第1の画像と、前記第1の露光期間より短い第2の露光期間に撮像された第2の画像を合成した合成画像のいずれかを表示するように表示手段を切り替える切り替え手段と、
装置の動きを検出する検出手段と、
前記検出手段により所定の動きが検出された場合、前記第1の画像を表示し、前記所定の動きが検出されない場合、前記合成画像を表示するように前記切り替え手段を制御する制御手段と、を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記撮像手段により撮像された前記第1および第2の画像のデータサイズを縮小する画像縮小手段と、
前記画像縮小手段により縮小された複数の前記第2の画像を合成する画像合成手段と、をさらに有し、
前記切り替え手段は、前記画像縮小手段により縮小された第1の画像と、前記画像合成手段により生成された合成画像のいずれかを表示することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記装置の動きに代えて前記装置に対する所定の操作が検出されるまでは、前記第1の画像を表示し、
前記所定の操作が検出された場合、前記合成画像を表示するように前記切り替え手段を制御することを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記装置の動きとして前記装置のパンやズームが検出された場合、前記第1の画像を表示し、
前記装置のパンやズームが検出されない場合、前記合成画像を表示するように前記切り替え手段を制御することを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記装置の動きとして前記装置のぶれが検出された場合、前記第1の画像を表示し、
前記装置のぶれが検出されない場合、前記合成画像を表示するように前記切り替え手段を制御することを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記装置の動きに応じて前記撮像手段を制御して、前記第1の露光期間と前記第2の露光期間を可変とすることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
被写体の画像を撮像する撮像手段と、装置の動きを検出する検出手段と、を有する撮像装置の制御方法であって、
第1の露光期間に撮像された第1の画像と、前記第1の露光期間より短い第2の露光期間に撮像された第2の画像を合成した合成画像のいずれかを表示するように表示手段を切り替える切り替え工程と、
前記検出手段により所定の動きが検出された場合、前記第1の画像を表示し、前記所定の動きが検出されない場合、前記合成画像を表示するように前記切り替え工程における前記表示の切り替えを制御する制御工程と、を有することを特徴とする制御方法。
【請求項8】
コンピュータを、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の撮像装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項9】
コンピュータを、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の撮像装置の各手段として機能させるためのプログラムを記憶したコンピュータによる読み取りが可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−238975(P2012−238975A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105655(P2011−105655)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】