撮像装置及びその制御方法、並びにプログラム
【課題】撮影者が複数の撮影パラメータを容易に調整可能な撮像装置及びその制御方法、並びにプログラムを提供する。
【解決手段】撮像装置は、被写体を光学系を介して撮像する撮像手段により撮像することによって得られた被写体を示す画像信号に対して信号処理を行う撮像装置であって、被写体に応じて予め定められており、信号処理で用いられる複数の撮影パラメータに対して主成分分析することにより、複数の主成分得点、及び複数の固有ベクトルを算出する算出手段と、算出手段により算出された複数の主成分得点のうちのいくつかの主成分得点に対応する軸で構成される直交座標空間において、撮影者により指定された座標値、及び固有ベクトルから、信号処理で用いられる複数の撮影パラメータを生成する生成手段とを備える。
【解決手段】撮像装置は、被写体を光学系を介して撮像する撮像手段により撮像することによって得られた被写体を示す画像信号に対して信号処理を行う撮像装置であって、被写体に応じて予め定められており、信号処理で用いられる複数の撮影パラメータに対して主成分分析することにより、複数の主成分得点、及び複数の固有ベクトルを算出する算出手段と、算出手段により算出された複数の主成分得点のうちのいくつかの主成分得点に対応する軸で構成される直交座標空間において、撮影者により指定された座標値、及び固有ベクトルから、信号処理で用いられる複数の撮影パラメータを生成する生成手段とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置及びその制御方法、並びにプログラムに関し、特に、撮影者が撮影パラメータを調整可能な撮像装置及びその制御方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルカメラに代表される撮像装置においては、ポートレイト、風景、夜景などの複数の撮影シーンに対応した撮影モードが設けられている。撮影者は被写体に対応する撮影モードを予め選択しておくことで、シャッタースピードや絞り、ホワイトバランス、γ係数、輪郭強調などの撮影パラメータを被写体に適した状態に設定出来る。
【0003】
一方で、テレビに代表される表示装置においては、解像感などの画質調整項目のうちの2つの項目を縦軸横軸として、2次元の空間で表現し、2つの項目を同時に調整出来るようにした技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この技術によれば、撮影者が簡単に画質の調整をすることが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−218413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術においては、選択出来る撮影モードには限りがあり、撮影シーンによっては、撮影者が望む撮影が実現できない課題がある。
【0006】
例えば、ウィンタースポーツの撮影においては「雪」と「スポーツ」、夕景をバックに人物を撮影する際においては、「夕景」と「ポートレイト」といったように、撮影シーンによっては、複数の撮影モードを組み合わせた撮影が必要となる。
【0007】
そこで、特許文献1に開示された技術を用いて、撮影シーンに合わせて、撮影モードの組合せの度合を調整することが考えられるが、特許文献1に開示された技術は、軸と調整される撮影パラメータが1対1の関係にある。そのため、撮影モード調整の対象となる複数の撮影パラメータを同時に調整することは困難である。
【0008】
本発明の目的は、撮影者が複数の撮影パラメータを容易に調整可能な撮像装置及びその制御方法、並びにプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1の撮像装置は、被写体を光学系を介して撮像する撮像手段により撮像することによって得られた前記被写体を示す画像信号に対して信号処理を行う撮像装置であって、前記被写体に応じて予め定められており、前記信号処理で用いられる複数の撮影パラメータに対して主成分分析することにより、前記複数の主成分得点、及び前記複数の固有ベクトルを算出する算出手段と、前記算出手段により算出された複数の主成分得点のうちのいくつかの主成分得点に対応する軸で構成される直交座標空間において、撮影者により指定された座標値、及び前記固有ベクトルから、前記信号処理で用いられる複数の撮影パラメータを生成する生成手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、撮影者が複数の撮影パラメータを容易に調整可能な撮像装置及びその制御方法、並びにプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る撮像装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1におけるモニタ110での表示内容を示す図であり、(a)は撮影モード選択画面を示し、(b)は撮影モード調整画面を示す。
【図3】図1におけるシステム制御部により実行される撮影モード調整処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】図1における撮影パラメータ生成部の概略構成を示す図である。
【図5】図4における演算パラメータデータベースに記憶されているテーブルの構造を示す図である。
【図6】ポートレイト、シネマ、夕景の各撮影モードで設定する撮影パラメータの値を示す図である。
【図7】図6に示される撮影パラメータに対して実施された各撮影モードの主成分得点を示す主成分分析結果を示す図である。
【図8】主成分毎の固有ベクトル値を示す主成分分析結果を示す図である。
【図9】第1主成分を横軸とし、第2主成分を縦軸とした2次元空間に、図7で示した夕景、ポートレイト、及びシネマの主成分得点をマッピングしたものである。
【図10】クラスが異なる撮影モード調整画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係る撮像装置100の概略構成を示す図である。
【0014】
図1において、光学系101は、撮影パラメータ生成部111からの制御情報より、光学系駆動部102によって、絞り・フォーカス・ズームなどを制御して、被写体像を撮像素子103上に結像させる。
【0015】
撮像素子103は、撮像素子駆動部104にて生成される駆動パルスで駆動され、被写体像を光電変換により電気信号に変換して画像信号として出力する。
【0016】
画像信号は、カメラ信号処理部105に入力され、ホワイトバランスや輪郭強調、γ補正などのカメラ信号処理にて、画像データが生成され、画像メモリ106に書き込まれる。
【0017】
記録部107は、画像メモリ106より画像データを読み出して、所定の圧縮方式で圧縮して、画像圧縮データを生成し、記録媒体108に記録する。なお、所定の圧縮方式とは、例えばJPEG方式などがあり、ここでの画像圧縮データとはJPEG画像のことを示す。
【0018】
また、画像記録を行わず、モニタ110に画像を表示させたい場合は、表示部109が画像メモリ106に書き込まれた画像データを読み出して、モニタ110用に画像変換を行うことでモニタ用画像信号を生成する。モニタ110は、入力されたモニタ用画像信号を表示する。
【0019】
ユーザインタフェース部113は、撮影者による操作内容をシステム制御部112に出力する。撮影者は、ユーザインタフェース部113を介して、撮像装置100の撮影モードの切り替えや調整、モニタ110への表示内容の変更、その他各種設定に関する変更を指示する。
【0020】
システム制御部112は、図示しないCPU、ROM、RAMなどで構成され、撮像装置100全体を制御する。ROMには、撮像装置100を制御するための各種プログラムが記憶されている。例えばシステム制御部112は、ユーザインタフェース部113から出力された情報により、カメラ信号処理部105や記録部107、表示部109、撮影パラメータ生成部111の動作制御や、データの流れの制御を行う。
【0021】
このように、本実施の形態に係る撮像装置100は、被写体を光学系を介して撮像する撮像素子103(撮像手段)により撮像することによって得られた被写体を示す画像信号に対して信号処理を行う。また、本実施の形態では、撮像及び撮影が用いられるが、いずれも同じ意味であり、一般的な用法に従って使い分けている。
【0022】
図2は、図1におけるモニタ110での表示内容を示す図であり、(a)は撮影モード選択画面を示し、(b)は撮影モード調整画面を示す。
【0023】
この図2を用いて、撮影モード選択時の制御について説明する。まず、撮影者が、ユーザインタフェース部113より、撮影モードの切り替えを指示する。この指示により、システム制御部112は、表示部109へ、図2(a)に示される撮影モード選択画面をモニタ110に表示するよう指示する。
【0024】
図2(a)に示されるように、撮影モード選択画面には選択できる撮影モードの一覧が表示される。撮影者は、撮影したいシーンにあった撮影モード、または撮影したいシーンに近いと思われる撮影モードを選択する。
【0025】
撮影者により撮影モードが選択されると、システム制御部112は、表示部109に撮影モード調整画面を表示するよう指示し、モニタ110には図2(b)の画面が表示される。図2(b)は、例として撮影モードに夕景を選択した場合の撮影モード調整画面である。
【0026】
図2(b)に示されるように、撮影モード調整画面は2次元の空間で表示され、横軸Xで画像の質感を調整することが可能であり、縦軸Yで被写体の有無を調整することが可能である。
【0027】
調整に用いる軸の詳細については、後ほど説明する。また、撮影モード調整画面では、夕景、ポートレイト、及びシネマの2軸上の値が、各々制御目標値202,203,204として、マッピングされている。
【0028】
そして、撮影パラメータ生成部111は、選択された撮影モードにおける撮影パラメータを光学系駆動部102、撮像素子駆動部104、カメラ信号処理部105に設定する。
【0029】
このようにして、撮影モード選択時の制御が行われた後、撮影モード調整時の制御が行われる。
【0030】
撮影者は、モニタ110に表示される図2(b)に示される撮影モード調整画面を見ながら、ユーザインタフェース部113より、撮影モードの調整を行う。この調整では、撮影者指示ポイント201と、各撮影モードの制御目標値202、203、204が表示され、制御目標値を基準として、撮影モードの調整を行うことができる。
【0031】
図3は、図1におけるシステム制御部112により実行される撮影モード調整処理の手順を示すフローチャートである。
【0032】
図3において、撮影者がユーザインタフェース部113において撮影モードの調整が終了すると(ステップS101でYES)、本処理を終了し、調整が終了しない限りは(ステップS101でNO)、ステップS102に処理に移行する。
【0033】
このときの調整方法としては、例えば、公知の技術であるタッチパネル方式にて、モニタ110に表示された2次元空間上に位置する、撮影者指示ポイント201に直接触れて、動かすような形で行われる。そして、撮影者より、ユーザインタフェース部113へ入力された調整値は、2次元空間の横軸Xの座標値UXと縦軸Yの座標値UYで表現される。この座標値UY,UXの値が撮影パラメータ生成部111に入力されることとなる。
【0034】
撮影者による撮影モードの調整がされないときは(ステップS102でNO)、ステップS101に処理に戻る。
【0035】
撮影者により撮影モードの調整が行われると(ステップS102でYES)、ユーザインタフェース部113からの調整値に基づいてモニタ110に表示されている撮影者指示ポイント201の表示位置を座標値UX、UYに合わせて更新する(ステップS103)。
【0036】
そして、撮影パラメータ生成部111に調整値である座標値UX、UYを入力する(ステップS104)。この調整値から撮影パラメータが撮影パラメータ生成部111により生成され、生成された撮影パラメータはカメラ信号処理部105に入力され(ステップS105)、ステップS101に戻る。
【0037】
図4は、図1における撮影パラメータ生成部111の概略構成を示す図である。
【0038】
図4に示されるように、撮影パラメータ生成部111は、撮影パラメータ再構築部401及び演算パラメータデータベース402で構成される。
【0039】
撮影パラメータ再構築部401は、演算パラメータデータベース402に記憶されている演算パラメータを読み出し、ユーザインタフェース部113から入力される座標値(UX,UY)との演算処理によって、4つの撮影パラメータを生成する。なお、同図に示されるクラスについては後述する。
【0040】
本実施の形態では、撮影パラメータの例として、アパーチャゲインAPC、γ係数GAM、γダイナミックレンジGDR、及び色差信号ゲインCLRを用いている。このうち、アパーチャゲインAPC(図ではアパーチャゲイン)は、画像信号の輪郭強調処理のパラメータである。γ係数GAM(図ではγ係数)、及びγダイナミックレンジGDR(図ではγダイナミックレンジ)は、画像信号のγ補正のパラメータである。色差信号ゲインCLR(図では色差ゲイン)は、色差信号を調整するパラメータである。
【0041】
なお、その他のカメラ信号処理の撮影パラメータ、及びシャッタースピードや絞りなどのカメラ信号処理以外の撮影パラメータも、同様の処理にて生成することが可能である。すなわち、撮影パラメータは、光学系101及び撮像素子103を制御するためのパラメータを含むようにしてもよい。
【0042】
撮影パラメータ再構築部401で行われる計算処理は、式1で示される。
【0043】
【数1】
【0044】
式1において、p11、p12、p13、p14は、UXと乗算する演算パラメータで順にAPC、GAM、GDR、CLRに対応している。p21、p22、p23、p24は、UYと乗算する演算パラメータで順にAPC、GAM、GDR、CLRに対応している。A1、A2、A3、A4はオフセット値で、上から順にAPC、GAM、GDR、CLRに対応している。
【0045】
演算パラメータデータベース402には、上記p11、p12、p13、p14、p21、p22、p23、p24、A1、A2、A3、A4を1つのテーブルとして記憶されている。
【0046】
図5は、図4における演算パラメータデータベースに記憶されているテーブルの構造を示す図である。
【0047】
図5において、テーブルに示される演算パラメータは例としてマッピング空間A〜Cの3つが示されているが、これに限らず複数の演算パラメータが記憶される。
【0048】
テーブルにおけるアドレスは、その右横に示されるデータの格納アドレスを示している。
【0049】
このテーブルを用いて、撮影パラメータ再構築部401は、システム制御部112から設定される撮影モードに応じて、演算パラメータデータベース402に記憶されている演算パラメータを切り替える。
【0050】
以上の手順によって、生成されたアパーチャゲインAPC、γ係数GAM、γダイナミックレンジGDR、色差信号ゲインCLRの4つの撮影パラメータが生成される。
【0051】
調整して生成された撮影パラメータによる画像データが、撮影者が撮影したいシーンに適した画となるまで調整処理は繰り返され、撮影者が調整終了を指示することで、撮影モードの調整は完了する。
【0052】
なお、表示部109は、撮影モード選択時や撮影モード調整時において、撮影モード選択画面または撮影モード調整画面と、画像メモリ106に記憶された撮影画像データを同時に表示させる。これにより、撮影モード選択や調整による画像データの変化の様子を表示させることも可能である。
【0053】
次に、ユーザインタフェース部113から入力された調整値にて、撮影パラメータを生成する手法について説明する。
【0054】
上述したように、撮影モードで設定する撮影パラメータは多いので、撮影者が簡単に撮影モードを調整するには、多くの撮影パラメータをまとめて調整する軸が必要となる。
【0055】
そこで、本実施の形態では、各撮影モードで設定する複数の撮影パラメータを入力として、多変量解析法の1つである主成分分析を実施し、複数の撮影パラメータの特性をまとめた合成パラメータである主成分を求める。そして、その主成分を軸として、複数の撮影パラメータをまとめて調整する。
【0056】
図6は、ポートレイト、シネマ、夕景の各撮影モードで設定する撮影パラメータの値を示す図である。
【0057】
図6において、撮影パラメータは、図4で説明したパラメータと同じである。これらの各値に対して、主成分分析を実施すると、第1主成分から第4主成分までの4つの主成分が求められる。そして、主成分毎で、固有ベクトルと、各撮影モードの主成分得点が求められる。
【0058】
図7は、図6に示される撮影パラメータに対して実施された各撮影モードの主成分得点を示す主成分分析結果を示す図である。
【0059】
図7に示されるように、第3主成分の主成分得点がほぼ0となっており、第4主成分の主成分得点が0となっている。
【0060】
図8は、主成分毎の固有ベクトル値を示す主成分分析結果を示す図である。
【0061】
上記図7に示された各撮影モードの主成分得点、及び図8に示された主成分毎の固有ベクトルから、各撮影モードでの撮影パラメータを再構築する計算式を式2に示す。
【0062】
【数2】
【0063】
式2において、SNは第N主成分の主成分得点を示し、vN1、vN2、vN3、vN4は第N主成分の固有ベクトルを示す。APCavg、GAMavg、GDRabg、CLRavgは、APC、GAM、GDR、CLRの各撮影モードにおける値の平均値を示す。
【0064】
主成分得点S1、S2、S3、S4に、夕景、ポートレイト、シネマといった撮影モードの主成分得点を設定することで、その撮影モードにおける撮影パラメータが再構築出来る。
【0065】
上述したように、図7の各撮影モードの主成分得点を見てみると、第3主成分は、ほぼ0であり、また第4主成分の主成分得点は0であるので、式2における、第3主成分や第4主成分の演算結果は、0と近似出来る。
【0066】
よって、第1主成分と第2主成分の主成分得点と固有ベクトルにて、夕景、ポートレイト、及びシネマの各撮影パラメータを近似することが可能である。
【0067】
図9は、第1主成分を横軸とし、第2主成分を縦軸とした2次元空間(直交座標空間)に、図7で示した夕景、ポートレイト、及びシネマの主成分得点をマッピングしたものである。
【0068】
図9において、第1主成分得点を示す横軸は、夕景とシネマの絶対値が大きく、正負の関係にあるため、画の質感を示す軸となっている。一方、第2主成分を示す横軸は、ポートレイトと、夕景及びシネマの値が正負の関係にあることから、被写体の有無を示す軸となっている。
【0069】
例えば、第1主成分の値をシネマの主成分得点に近づけるほど、シネマモードのように輪郭がぼやけ、フィルムのような質感が出る画となる。その一方で、夕景の主成分得点に近づけるほど輪郭がはっきりし、色鮮やかな画(指標としてデジタル的な画と定義)となる。また、第2主成分の値をポートレイトの主成分得点に近づけるほど、階調や色合いが人物などの被写体撮影に適した画となる。
【0070】
以上より、本実施の形態では、第1主成分、及び第2主成分が持つ特性と、各撮影モードとの主成分得点を基準として、第1主成分、及び第2主成分の各々の値(P1、P2)を調整することで、複数の撮影パラメータをまとめて調整することが出来る。
【0071】
なお、図2(b)の撮影モード調整画面において、上記(P1、P2)が撮影者指示ポイント201の位置を示す座標値(UX、UY)である。また、夕景、ポートレイト、及びシネマの主成分得点が、制御目標値202,203,204である。
【0072】
以上の説明から、結果として本実施の形態で用いられる撮影パラメータの生成式を式3に示す。
【0073】
【数3】
【0074】
式3において、演算パラメータデータベース402に記憶されるテーブルデータは、主成分分析結果であるv11、v12、v13、v14、v21、v22、v23、v24、APCavg、GAMavg、GDRavg、CLRavgである。なお、上述した式1とこの式3は、同じ計算式である。このように、本実施の形態に係る撮像装置100に実装する撮影モードとその撮影パラメータ値に対して、予め主成分分析を行っておく。その主成分分析結果を演算パラメータデータベース402に記憶させておく。
【0075】
このように、本実施の形態では、被写体に応じて予め定められており、信号処理で用いられる複数の撮影パラメータに対して主成分分析することにより、複数の主成分得点、及び前記複数の固有ベクトルを算出する。
【0076】
そして、算出された複数の主成分得点のうちのいくつかの主成分得点に対応する軸で構成される直交座標空間において、撮影者により指定された座標値、及び固有ベクトルから、信号処理で用いられる複数の撮影パラメータを生成する。その結果、撮影者が複数の撮影パラメータを容易に調整可能となる。
【0077】
このことから、撮影パラメータ生成部111は、算出手段及び生成手段に対応している。また、本実施の形態では、直交座標空間を表示するモニタ110(表示手段)をさらに備えている。そして、撮影パラメータ生成部111は、モニタ110により表示された直交座標空間において撮影者により示された位置を示す座標値(P1、P2)を、撮影者により指定された座標値(UX、UY)として信号処理で用いられる複数の撮影パラメータを生成する。
【0078】
なお、撮影モードによっては、撮影パラメータの設定や種類が、異なるものも存在する。そこで全ての撮影モードを対象として主成分分析を実施すると、撮影パラメータを再構築するのに必要となる主成分数が増加することとなる。その場合、上記図9に示されるような2次元の空間にて、撮影モードを調整することが出来ない。
【0079】
そこで、本実施の形態では、主成分分析を行う際に、撮影パラメータの特性が近しい撮影モード群を1つのクラスとして、複数のクラスに分類する。そして、クラス毎に主成分分析を実施することで、撮影パラメータを近似するのに必要となる主成分数を削減しやすくした。
【0080】
図4における演算パラメータデータベース402には、クラス毎に主成分分析を行って得られたクラス毎の固有ベクトルと、各撮影パラメータの平均値を記憶しておく。そして、撮影パラメータ再構築部401は、選択された撮影モードが属するクラスの固有ベクトルと各撮影パラメータの平均値より、撮影パラメータの生成を行う。
【0081】
図10は、クラスが異なる撮影モード調整画面を示す図である。図10(a)は、夕景モード選択時のシーン調整画面を示し、(b)は、ビーチモード選択時のシーン調整画面を示している。
【0082】
図10に示されるように、撮影モード調整画面はクラス毎に用意される。表示部109は、選択された撮影モードが属するクラスの撮影モード調整画面をモニタ110に出力する。
【0083】
なお、分類するクラスを決定するには、例えば、撮影モードの組合せを変えて、主成分分析を実施する。そして、その分析結果により、2つの観点からクラスを決定する。まず1つ目の観点は、第1主成分及び第2主成分のみで撮影モード毎の撮影パラメータが近似可能であるか否かという観点である。2つ目の観点は、第1主成分及び第2主成分が示す特徴が撮影者が直感的に理解できる指標となっているか否かという観点である。
【0084】
以上の構成と制御によって、本実施の形態に係る撮像装置100は、複数の撮影パラメータを2次元に縮退させた撮影モード調整を実現する。このように、本実施の形態では、被写体に応じて予め定められた複数の撮影パラメータを1つのクラスとして、複数のクラス分の前記複数の撮影パラメータが予め定められている。そして、撮影パラメータ生成部111は、クラスごとに信号処理で用いられる複数の撮影パラメータを生成する。
【0085】
(他の実施の形態)
本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)をネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムコードを読み出して実行する処理である。この場合、そのプログラム、及び該プログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【符号の説明】
【0086】
100 撮像装置
102 光学系駆動部
103 撮像素子
104 撮像素子駆動部
105 カメラ信号処理部
106 画像メモリ
109 表示部
110 モニタ
111 撮影パラメータ生成部
112 システム制御部
113 ユーザインタフェース部
401 撮影パラメータ再構築部
402 演算パラメータデータベース
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置及びその制御方法、並びにプログラムに関し、特に、撮影者が撮影パラメータを調整可能な撮像装置及びその制御方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルカメラに代表される撮像装置においては、ポートレイト、風景、夜景などの複数の撮影シーンに対応した撮影モードが設けられている。撮影者は被写体に対応する撮影モードを予め選択しておくことで、シャッタースピードや絞り、ホワイトバランス、γ係数、輪郭強調などの撮影パラメータを被写体に適した状態に設定出来る。
【0003】
一方で、テレビに代表される表示装置においては、解像感などの画質調整項目のうちの2つの項目を縦軸横軸として、2次元の空間で表現し、2つの項目を同時に調整出来るようにした技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この技術によれば、撮影者が簡単に画質の調整をすることが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−218413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術においては、選択出来る撮影モードには限りがあり、撮影シーンによっては、撮影者が望む撮影が実現できない課題がある。
【0006】
例えば、ウィンタースポーツの撮影においては「雪」と「スポーツ」、夕景をバックに人物を撮影する際においては、「夕景」と「ポートレイト」といったように、撮影シーンによっては、複数の撮影モードを組み合わせた撮影が必要となる。
【0007】
そこで、特許文献1に開示された技術を用いて、撮影シーンに合わせて、撮影モードの組合せの度合を調整することが考えられるが、特許文献1に開示された技術は、軸と調整される撮影パラメータが1対1の関係にある。そのため、撮影モード調整の対象となる複数の撮影パラメータを同時に調整することは困難である。
【0008】
本発明の目的は、撮影者が複数の撮影パラメータを容易に調整可能な撮像装置及びその制御方法、並びにプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1の撮像装置は、被写体を光学系を介して撮像する撮像手段により撮像することによって得られた前記被写体を示す画像信号に対して信号処理を行う撮像装置であって、前記被写体に応じて予め定められており、前記信号処理で用いられる複数の撮影パラメータに対して主成分分析することにより、前記複数の主成分得点、及び前記複数の固有ベクトルを算出する算出手段と、前記算出手段により算出された複数の主成分得点のうちのいくつかの主成分得点に対応する軸で構成される直交座標空間において、撮影者により指定された座標値、及び前記固有ベクトルから、前記信号処理で用いられる複数の撮影パラメータを生成する生成手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、撮影者が複数の撮影パラメータを容易に調整可能な撮像装置及びその制御方法、並びにプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る撮像装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1におけるモニタ110での表示内容を示す図であり、(a)は撮影モード選択画面を示し、(b)は撮影モード調整画面を示す。
【図3】図1におけるシステム制御部により実行される撮影モード調整処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】図1における撮影パラメータ生成部の概略構成を示す図である。
【図5】図4における演算パラメータデータベースに記憶されているテーブルの構造を示す図である。
【図6】ポートレイト、シネマ、夕景の各撮影モードで設定する撮影パラメータの値を示す図である。
【図7】図6に示される撮影パラメータに対して実施された各撮影モードの主成分得点を示す主成分分析結果を示す図である。
【図8】主成分毎の固有ベクトル値を示す主成分分析結果を示す図である。
【図9】第1主成分を横軸とし、第2主成分を縦軸とした2次元空間に、図7で示した夕景、ポートレイト、及びシネマの主成分得点をマッピングしたものである。
【図10】クラスが異なる撮影モード調整画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係る撮像装置100の概略構成を示す図である。
【0014】
図1において、光学系101は、撮影パラメータ生成部111からの制御情報より、光学系駆動部102によって、絞り・フォーカス・ズームなどを制御して、被写体像を撮像素子103上に結像させる。
【0015】
撮像素子103は、撮像素子駆動部104にて生成される駆動パルスで駆動され、被写体像を光電変換により電気信号に変換して画像信号として出力する。
【0016】
画像信号は、カメラ信号処理部105に入力され、ホワイトバランスや輪郭強調、γ補正などのカメラ信号処理にて、画像データが生成され、画像メモリ106に書き込まれる。
【0017】
記録部107は、画像メモリ106より画像データを読み出して、所定の圧縮方式で圧縮して、画像圧縮データを生成し、記録媒体108に記録する。なお、所定の圧縮方式とは、例えばJPEG方式などがあり、ここでの画像圧縮データとはJPEG画像のことを示す。
【0018】
また、画像記録を行わず、モニタ110に画像を表示させたい場合は、表示部109が画像メモリ106に書き込まれた画像データを読み出して、モニタ110用に画像変換を行うことでモニタ用画像信号を生成する。モニタ110は、入力されたモニタ用画像信号を表示する。
【0019】
ユーザインタフェース部113は、撮影者による操作内容をシステム制御部112に出力する。撮影者は、ユーザインタフェース部113を介して、撮像装置100の撮影モードの切り替えや調整、モニタ110への表示内容の変更、その他各種設定に関する変更を指示する。
【0020】
システム制御部112は、図示しないCPU、ROM、RAMなどで構成され、撮像装置100全体を制御する。ROMには、撮像装置100を制御するための各種プログラムが記憶されている。例えばシステム制御部112は、ユーザインタフェース部113から出力された情報により、カメラ信号処理部105や記録部107、表示部109、撮影パラメータ生成部111の動作制御や、データの流れの制御を行う。
【0021】
このように、本実施の形態に係る撮像装置100は、被写体を光学系を介して撮像する撮像素子103(撮像手段)により撮像することによって得られた被写体を示す画像信号に対して信号処理を行う。また、本実施の形態では、撮像及び撮影が用いられるが、いずれも同じ意味であり、一般的な用法に従って使い分けている。
【0022】
図2は、図1におけるモニタ110での表示内容を示す図であり、(a)は撮影モード選択画面を示し、(b)は撮影モード調整画面を示す。
【0023】
この図2を用いて、撮影モード選択時の制御について説明する。まず、撮影者が、ユーザインタフェース部113より、撮影モードの切り替えを指示する。この指示により、システム制御部112は、表示部109へ、図2(a)に示される撮影モード選択画面をモニタ110に表示するよう指示する。
【0024】
図2(a)に示されるように、撮影モード選択画面には選択できる撮影モードの一覧が表示される。撮影者は、撮影したいシーンにあった撮影モード、または撮影したいシーンに近いと思われる撮影モードを選択する。
【0025】
撮影者により撮影モードが選択されると、システム制御部112は、表示部109に撮影モード調整画面を表示するよう指示し、モニタ110には図2(b)の画面が表示される。図2(b)は、例として撮影モードに夕景を選択した場合の撮影モード調整画面である。
【0026】
図2(b)に示されるように、撮影モード調整画面は2次元の空間で表示され、横軸Xで画像の質感を調整することが可能であり、縦軸Yで被写体の有無を調整することが可能である。
【0027】
調整に用いる軸の詳細については、後ほど説明する。また、撮影モード調整画面では、夕景、ポートレイト、及びシネマの2軸上の値が、各々制御目標値202,203,204として、マッピングされている。
【0028】
そして、撮影パラメータ生成部111は、選択された撮影モードにおける撮影パラメータを光学系駆動部102、撮像素子駆動部104、カメラ信号処理部105に設定する。
【0029】
このようにして、撮影モード選択時の制御が行われた後、撮影モード調整時の制御が行われる。
【0030】
撮影者は、モニタ110に表示される図2(b)に示される撮影モード調整画面を見ながら、ユーザインタフェース部113より、撮影モードの調整を行う。この調整では、撮影者指示ポイント201と、各撮影モードの制御目標値202、203、204が表示され、制御目標値を基準として、撮影モードの調整を行うことができる。
【0031】
図3は、図1におけるシステム制御部112により実行される撮影モード調整処理の手順を示すフローチャートである。
【0032】
図3において、撮影者がユーザインタフェース部113において撮影モードの調整が終了すると(ステップS101でYES)、本処理を終了し、調整が終了しない限りは(ステップS101でNO)、ステップS102に処理に移行する。
【0033】
このときの調整方法としては、例えば、公知の技術であるタッチパネル方式にて、モニタ110に表示された2次元空間上に位置する、撮影者指示ポイント201に直接触れて、動かすような形で行われる。そして、撮影者より、ユーザインタフェース部113へ入力された調整値は、2次元空間の横軸Xの座標値UXと縦軸Yの座標値UYで表現される。この座標値UY,UXの値が撮影パラメータ生成部111に入力されることとなる。
【0034】
撮影者による撮影モードの調整がされないときは(ステップS102でNO)、ステップS101に処理に戻る。
【0035】
撮影者により撮影モードの調整が行われると(ステップS102でYES)、ユーザインタフェース部113からの調整値に基づいてモニタ110に表示されている撮影者指示ポイント201の表示位置を座標値UX、UYに合わせて更新する(ステップS103)。
【0036】
そして、撮影パラメータ生成部111に調整値である座標値UX、UYを入力する(ステップS104)。この調整値から撮影パラメータが撮影パラメータ生成部111により生成され、生成された撮影パラメータはカメラ信号処理部105に入力され(ステップS105)、ステップS101に戻る。
【0037】
図4は、図1における撮影パラメータ生成部111の概略構成を示す図である。
【0038】
図4に示されるように、撮影パラメータ生成部111は、撮影パラメータ再構築部401及び演算パラメータデータベース402で構成される。
【0039】
撮影パラメータ再構築部401は、演算パラメータデータベース402に記憶されている演算パラメータを読み出し、ユーザインタフェース部113から入力される座標値(UX,UY)との演算処理によって、4つの撮影パラメータを生成する。なお、同図に示されるクラスについては後述する。
【0040】
本実施の形態では、撮影パラメータの例として、アパーチャゲインAPC、γ係数GAM、γダイナミックレンジGDR、及び色差信号ゲインCLRを用いている。このうち、アパーチャゲインAPC(図ではアパーチャゲイン)は、画像信号の輪郭強調処理のパラメータである。γ係数GAM(図ではγ係数)、及びγダイナミックレンジGDR(図ではγダイナミックレンジ)は、画像信号のγ補正のパラメータである。色差信号ゲインCLR(図では色差ゲイン)は、色差信号を調整するパラメータである。
【0041】
なお、その他のカメラ信号処理の撮影パラメータ、及びシャッタースピードや絞りなどのカメラ信号処理以外の撮影パラメータも、同様の処理にて生成することが可能である。すなわち、撮影パラメータは、光学系101及び撮像素子103を制御するためのパラメータを含むようにしてもよい。
【0042】
撮影パラメータ再構築部401で行われる計算処理は、式1で示される。
【0043】
【数1】
【0044】
式1において、p11、p12、p13、p14は、UXと乗算する演算パラメータで順にAPC、GAM、GDR、CLRに対応している。p21、p22、p23、p24は、UYと乗算する演算パラメータで順にAPC、GAM、GDR、CLRに対応している。A1、A2、A3、A4はオフセット値で、上から順にAPC、GAM、GDR、CLRに対応している。
【0045】
演算パラメータデータベース402には、上記p11、p12、p13、p14、p21、p22、p23、p24、A1、A2、A3、A4を1つのテーブルとして記憶されている。
【0046】
図5は、図4における演算パラメータデータベースに記憶されているテーブルの構造を示す図である。
【0047】
図5において、テーブルに示される演算パラメータは例としてマッピング空間A〜Cの3つが示されているが、これに限らず複数の演算パラメータが記憶される。
【0048】
テーブルにおけるアドレスは、その右横に示されるデータの格納アドレスを示している。
【0049】
このテーブルを用いて、撮影パラメータ再構築部401は、システム制御部112から設定される撮影モードに応じて、演算パラメータデータベース402に記憶されている演算パラメータを切り替える。
【0050】
以上の手順によって、生成されたアパーチャゲインAPC、γ係数GAM、γダイナミックレンジGDR、色差信号ゲインCLRの4つの撮影パラメータが生成される。
【0051】
調整して生成された撮影パラメータによる画像データが、撮影者が撮影したいシーンに適した画となるまで調整処理は繰り返され、撮影者が調整終了を指示することで、撮影モードの調整は完了する。
【0052】
なお、表示部109は、撮影モード選択時や撮影モード調整時において、撮影モード選択画面または撮影モード調整画面と、画像メモリ106に記憶された撮影画像データを同時に表示させる。これにより、撮影モード選択や調整による画像データの変化の様子を表示させることも可能である。
【0053】
次に、ユーザインタフェース部113から入力された調整値にて、撮影パラメータを生成する手法について説明する。
【0054】
上述したように、撮影モードで設定する撮影パラメータは多いので、撮影者が簡単に撮影モードを調整するには、多くの撮影パラメータをまとめて調整する軸が必要となる。
【0055】
そこで、本実施の形態では、各撮影モードで設定する複数の撮影パラメータを入力として、多変量解析法の1つである主成分分析を実施し、複数の撮影パラメータの特性をまとめた合成パラメータである主成分を求める。そして、その主成分を軸として、複数の撮影パラメータをまとめて調整する。
【0056】
図6は、ポートレイト、シネマ、夕景の各撮影モードで設定する撮影パラメータの値を示す図である。
【0057】
図6において、撮影パラメータは、図4で説明したパラメータと同じである。これらの各値に対して、主成分分析を実施すると、第1主成分から第4主成分までの4つの主成分が求められる。そして、主成分毎で、固有ベクトルと、各撮影モードの主成分得点が求められる。
【0058】
図7は、図6に示される撮影パラメータに対して実施された各撮影モードの主成分得点を示す主成分分析結果を示す図である。
【0059】
図7に示されるように、第3主成分の主成分得点がほぼ0となっており、第4主成分の主成分得点が0となっている。
【0060】
図8は、主成分毎の固有ベクトル値を示す主成分分析結果を示す図である。
【0061】
上記図7に示された各撮影モードの主成分得点、及び図8に示された主成分毎の固有ベクトルから、各撮影モードでの撮影パラメータを再構築する計算式を式2に示す。
【0062】
【数2】
【0063】
式2において、SNは第N主成分の主成分得点を示し、vN1、vN2、vN3、vN4は第N主成分の固有ベクトルを示す。APCavg、GAMavg、GDRabg、CLRavgは、APC、GAM、GDR、CLRの各撮影モードにおける値の平均値を示す。
【0064】
主成分得点S1、S2、S3、S4に、夕景、ポートレイト、シネマといった撮影モードの主成分得点を設定することで、その撮影モードにおける撮影パラメータが再構築出来る。
【0065】
上述したように、図7の各撮影モードの主成分得点を見てみると、第3主成分は、ほぼ0であり、また第4主成分の主成分得点は0であるので、式2における、第3主成分や第4主成分の演算結果は、0と近似出来る。
【0066】
よって、第1主成分と第2主成分の主成分得点と固有ベクトルにて、夕景、ポートレイト、及びシネマの各撮影パラメータを近似することが可能である。
【0067】
図9は、第1主成分を横軸とし、第2主成分を縦軸とした2次元空間(直交座標空間)に、図7で示した夕景、ポートレイト、及びシネマの主成分得点をマッピングしたものである。
【0068】
図9において、第1主成分得点を示す横軸は、夕景とシネマの絶対値が大きく、正負の関係にあるため、画の質感を示す軸となっている。一方、第2主成分を示す横軸は、ポートレイトと、夕景及びシネマの値が正負の関係にあることから、被写体の有無を示す軸となっている。
【0069】
例えば、第1主成分の値をシネマの主成分得点に近づけるほど、シネマモードのように輪郭がぼやけ、フィルムのような質感が出る画となる。その一方で、夕景の主成分得点に近づけるほど輪郭がはっきりし、色鮮やかな画(指標としてデジタル的な画と定義)となる。また、第2主成分の値をポートレイトの主成分得点に近づけるほど、階調や色合いが人物などの被写体撮影に適した画となる。
【0070】
以上より、本実施の形態では、第1主成分、及び第2主成分が持つ特性と、各撮影モードとの主成分得点を基準として、第1主成分、及び第2主成分の各々の値(P1、P2)を調整することで、複数の撮影パラメータをまとめて調整することが出来る。
【0071】
なお、図2(b)の撮影モード調整画面において、上記(P1、P2)が撮影者指示ポイント201の位置を示す座標値(UX、UY)である。また、夕景、ポートレイト、及びシネマの主成分得点が、制御目標値202,203,204である。
【0072】
以上の説明から、結果として本実施の形態で用いられる撮影パラメータの生成式を式3に示す。
【0073】
【数3】
【0074】
式3において、演算パラメータデータベース402に記憶されるテーブルデータは、主成分分析結果であるv11、v12、v13、v14、v21、v22、v23、v24、APCavg、GAMavg、GDRavg、CLRavgである。なお、上述した式1とこの式3は、同じ計算式である。このように、本実施の形態に係る撮像装置100に実装する撮影モードとその撮影パラメータ値に対して、予め主成分分析を行っておく。その主成分分析結果を演算パラメータデータベース402に記憶させておく。
【0075】
このように、本実施の形態では、被写体に応じて予め定められており、信号処理で用いられる複数の撮影パラメータに対して主成分分析することにより、複数の主成分得点、及び前記複数の固有ベクトルを算出する。
【0076】
そして、算出された複数の主成分得点のうちのいくつかの主成分得点に対応する軸で構成される直交座標空間において、撮影者により指定された座標値、及び固有ベクトルから、信号処理で用いられる複数の撮影パラメータを生成する。その結果、撮影者が複数の撮影パラメータを容易に調整可能となる。
【0077】
このことから、撮影パラメータ生成部111は、算出手段及び生成手段に対応している。また、本実施の形態では、直交座標空間を表示するモニタ110(表示手段)をさらに備えている。そして、撮影パラメータ生成部111は、モニタ110により表示された直交座標空間において撮影者により示された位置を示す座標値(P1、P2)を、撮影者により指定された座標値(UX、UY)として信号処理で用いられる複数の撮影パラメータを生成する。
【0078】
なお、撮影モードによっては、撮影パラメータの設定や種類が、異なるものも存在する。そこで全ての撮影モードを対象として主成分分析を実施すると、撮影パラメータを再構築するのに必要となる主成分数が増加することとなる。その場合、上記図9に示されるような2次元の空間にて、撮影モードを調整することが出来ない。
【0079】
そこで、本実施の形態では、主成分分析を行う際に、撮影パラメータの特性が近しい撮影モード群を1つのクラスとして、複数のクラスに分類する。そして、クラス毎に主成分分析を実施することで、撮影パラメータを近似するのに必要となる主成分数を削減しやすくした。
【0080】
図4における演算パラメータデータベース402には、クラス毎に主成分分析を行って得られたクラス毎の固有ベクトルと、各撮影パラメータの平均値を記憶しておく。そして、撮影パラメータ再構築部401は、選択された撮影モードが属するクラスの固有ベクトルと各撮影パラメータの平均値より、撮影パラメータの生成を行う。
【0081】
図10は、クラスが異なる撮影モード調整画面を示す図である。図10(a)は、夕景モード選択時のシーン調整画面を示し、(b)は、ビーチモード選択時のシーン調整画面を示している。
【0082】
図10に示されるように、撮影モード調整画面はクラス毎に用意される。表示部109は、選択された撮影モードが属するクラスの撮影モード調整画面をモニタ110に出力する。
【0083】
なお、分類するクラスを決定するには、例えば、撮影モードの組合せを変えて、主成分分析を実施する。そして、その分析結果により、2つの観点からクラスを決定する。まず1つ目の観点は、第1主成分及び第2主成分のみで撮影モード毎の撮影パラメータが近似可能であるか否かという観点である。2つ目の観点は、第1主成分及び第2主成分が示す特徴が撮影者が直感的に理解できる指標となっているか否かという観点である。
【0084】
以上の構成と制御によって、本実施の形態に係る撮像装置100は、複数の撮影パラメータを2次元に縮退させた撮影モード調整を実現する。このように、本実施の形態では、被写体に応じて予め定められた複数の撮影パラメータを1つのクラスとして、複数のクラス分の前記複数の撮影パラメータが予め定められている。そして、撮影パラメータ生成部111は、クラスごとに信号処理で用いられる複数の撮影パラメータを生成する。
【0085】
(他の実施の形態)
本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)をネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムコードを読み出して実行する処理である。この場合、そのプログラム、及び該プログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【符号の説明】
【0086】
100 撮像装置
102 光学系駆動部
103 撮像素子
104 撮像素子駆動部
105 カメラ信号処理部
106 画像メモリ
109 表示部
110 モニタ
111 撮影パラメータ生成部
112 システム制御部
113 ユーザインタフェース部
401 撮影パラメータ再構築部
402 演算パラメータデータベース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を光学系を介して撮像する撮像手段により撮像することによって得られた前記被写体を示す画像信号に対して信号処理を行う撮像装置であって、
前記被写体に応じて予め定められており、前記信号処理で用いられる複数の撮影パラメータに対して主成分分析することにより、前記複数の主成分得点、及び前記複数の固有ベクトルを算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された複数の主成分得点のうちのいくつかの主成分得点に対応する軸で構成される直交座標空間において、撮影者により指定された座標値、及び前記固有ベクトルから、前記信号処理で用いられる複数の撮影パラメータを生成する生成手段と
を備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記被写体に応じて予め定められた複数の撮影パラメータを1つのクラスとして、複数のクラス分の前記複数の撮影パラメータが予め定められており、
前記生成手段は、前記クラスごとに前記信号処理で用いられる前記複数の撮影パラメータを生成することを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記直交座標空間を表示する表示手段をさらに備え、
前記生成手段は、前記表示手段により表示された直交座標空間において前記撮影者により示された位置を示す座標値を、前記撮影者により指定された前記座標値として前記信号処理で用いられる前記複数の撮影パラメータを生成することを特徴とする請求項1又は2記載の撮像装置。
【請求項4】
前記複数の撮影パラメータは、前記光学系及び前記撮像手段を制御するためのパラメータを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
被写体を光学系を介して撮像する撮像手段により撮像することによって得られた前記被写体を示す画像信号に対して信号処理を行う撮像装置の制御方法であって、
前記被写体に応じて予め定められており、前記信号処理で用いられる複数の撮影パラメータに対して主成分分析することにより、前記複数の主成分得点、及び前記複数の固有ベクトルを算出する算出ステップと、
前記算出ステップにより算出された複数の主成分得点のうちのいくつかの主成分得点に対応する軸で構成される直交座標空間において、撮影者により指定された座標値、及び前記固有ベクトルから、前記信号処理で用いられる複数の撮影パラメータを生成する生成ステップと
を備えたことを特徴とする制御方法。
【請求項6】
被写体を光学系を介して撮像する撮像手段により撮像することによって得られた前記被写体を示す画像信号に対して信号処理を行う撮像装置の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記制御方法は、
前記被写体に応じて予め定められており、前記信号処理で用いられる複数の撮影パラメータに対して主成分分析することにより、前記複数の主成分得点、及び前記複数の固有ベクトルを算出する算出ステップと、
前記算出ステップにより算出された複数の主成分得点のうちのいくつかの主成分得点に対応する軸で構成される直交座標空間において、撮影者により指定された座標値、及び前記固有ベクトルから、前記信号処理で用いられる複数の撮影パラメータを生成する生成ステップと
を備えたことを特徴とするプログラム。
【請求項1】
被写体を光学系を介して撮像する撮像手段により撮像することによって得られた前記被写体を示す画像信号に対して信号処理を行う撮像装置であって、
前記被写体に応じて予め定められており、前記信号処理で用いられる複数の撮影パラメータに対して主成分分析することにより、前記複数の主成分得点、及び前記複数の固有ベクトルを算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された複数の主成分得点のうちのいくつかの主成分得点に対応する軸で構成される直交座標空間において、撮影者により指定された座標値、及び前記固有ベクトルから、前記信号処理で用いられる複数の撮影パラメータを生成する生成手段と
を備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記被写体に応じて予め定められた複数の撮影パラメータを1つのクラスとして、複数のクラス分の前記複数の撮影パラメータが予め定められており、
前記生成手段は、前記クラスごとに前記信号処理で用いられる前記複数の撮影パラメータを生成することを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記直交座標空間を表示する表示手段をさらに備え、
前記生成手段は、前記表示手段により表示された直交座標空間において前記撮影者により示された位置を示す座標値を、前記撮影者により指定された前記座標値として前記信号処理で用いられる前記複数の撮影パラメータを生成することを特徴とする請求項1又は2記載の撮像装置。
【請求項4】
前記複数の撮影パラメータは、前記光学系及び前記撮像手段を制御するためのパラメータを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
被写体を光学系を介して撮像する撮像手段により撮像することによって得られた前記被写体を示す画像信号に対して信号処理を行う撮像装置の制御方法であって、
前記被写体に応じて予め定められており、前記信号処理で用いられる複数の撮影パラメータに対して主成分分析することにより、前記複数の主成分得点、及び前記複数の固有ベクトルを算出する算出ステップと、
前記算出ステップにより算出された複数の主成分得点のうちのいくつかの主成分得点に対応する軸で構成される直交座標空間において、撮影者により指定された座標値、及び前記固有ベクトルから、前記信号処理で用いられる複数の撮影パラメータを生成する生成ステップと
を備えたことを特徴とする制御方法。
【請求項6】
被写体を光学系を介して撮像する撮像手段により撮像することによって得られた前記被写体を示す画像信号に対して信号処理を行う撮像装置の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記制御方法は、
前記被写体に応じて予め定められており、前記信号処理で用いられる複数の撮影パラメータに対して主成分分析することにより、前記複数の主成分得点、及び前記複数の固有ベクトルを算出する算出ステップと、
前記算出ステップにより算出された複数の主成分得点のうちのいくつかの主成分得点に対応する軸で構成される直交座標空間において、撮影者により指定された座標値、及び前記固有ベクトルから、前記信号処理で用いられる複数の撮影パラメータを生成する生成ステップと
を備えたことを特徴とするプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−5223(P2013−5223A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134301(P2011−134301)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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