説明

撮像装置及びカメラ

【課題】操作性が損なわれることなく、消費電力を押さえながら、ISCを可能とする。
【解決手段】撮像素子6と、撮像素子6に設けられ、規則的な配列パターンを持って配置されたAF画素7と、撮像素子の光軸前方に配置された振動板8と、振動板に設けられ、AF画素の配列パターンと同じ方向の振動波を発生する振動子9とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置及びカメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の撮像装置は、撮像素子に付着したゴミが、AF画素への入射光の場所に存在している場合に、AF性能を損なう可能性があった。また、AF画素部分について画像補完を行う場合に、ゴミの写り込みのせいで、その補完結果が適切に得られなくなる可能性があった。
この問題を解決するために、AF画素が配置された撮像素子に、ISC(イメージセンサクリーニング)振動板を設けたものがあり、撮影者が所望する範囲に、塵埃等が写り込んでしまうことを防止できるものが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−074480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の撮像装置では、AF画素の配列パターンと90度異なる振動波を発生する構成の場合に、振動の節部ではゴミ落ち性能が低いため、この節部に対応するAF画素はゴミの影響を最も受けやすい。
また、ひとつの共振周波数で全てのAF画素位置に対応することができないため、いくつかの共振周波数を採用する必要がある。このように、いくつかの周波数を採用すると、ゴミ落としのためのISC駆動時間が長くなるという欠点があり、駆動時間が長いと操作性が損なわれる上、消費電力が増すため、電池の寿命にも影響するという課題があった。
【0005】
本発明の課題は、操作性が損なわれることなく、消費電力を押さえながら、ISCを可能とする撮像装置及びカメラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1の発明は、撮像素子(6)と、前記撮像素子に設けられ、規則的な配列パターンを持って配置されたAF画素(7)と、前記撮像素子の光軸前方に配置された振動板(8)と、前記振動板に設けられ、前記AF画素の配列パターンと同じ方向の振動波を発生する振動子(9)と、を含む撮像装置である。
請求項2の発明は、請求項1に記載の撮像装置において、前記振動子は、前記AF画素の配列パターンへの入射光が通過する、前記振動板の特定の位置が、振幅の腹となるように振動すること、を特徴とする撮像装置である。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の撮像装置において、前記AF画素は、等間隔の配列パターンで配置されており、前記振動子は、前記AF画素の配列パターンへの入射光が通過する、前記振動板の特定の位置が作る列の間隔と等距離に配置されていること、を特徴とする撮像装置である。
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の撮像装置を備えたカメラである。
以上、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明したが、これに限定されるものではない。なお、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成に代替してもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、操作性が損なわれることなく、消費電力を押さえながら、ISCを可能とする、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態による撮像装置を備えたカメラを示すブロック図である。
【図2】本実施形態に係る撮像装置の撮像素子の中にAF画素が配列状に配置されていることを示す図である。
【図3】本実施形態に係る撮像装置の振動板と振動子の配置及び振動波の発生方向を示す図である。
【図4】本実施形態に係る撮像装置のAF画素配列と振動の対応を示すイメージ図である。
【図5】本実施形態に係る撮像装置の共振周波数設計の場合のパラメータを説明する図である。
【図6】本発明の撮像装置の他の実施形態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面等を参照しながら、本発明の実施形態をあげて、さらに詳しく説明する。
図1は、本発明の実施形態による撮像装置を備えたカメラを示すブロック図である。
カメラ1は、デジタルコンパクトカメラであり、カメラ筐体にレンズ鏡筒が一体に設けられている。
CPU2は、フォーカスレンズ群3や不図示のズームレンズ群、ブレ補正レンズ群等(撮影レンズ)の移動量演算や、カメラ1の全体の制御を行う中央処理装置である。
【0010】
フォーカスレンズ群3は、光軸方向に移動して、焦点を合わせるレンズ群であり、CPU2内のAF制御部の制御信号より、ドライバ11を介して、超音波モータ等の駆動部4によって駆動される。
【0011】
撮像ユニット5は、撮像素子6と、AF画素7と、振動板8と、振動子9と、光学的LPF10などを備えており、機械的に密閉された空間を形成している。
撮像素子6は、撮影レンズにより形成された被写体像を撮像する素子であり、被写体光を電気的な画像信号に変換し、信号処理部13へ出力される。撮像素子4は、例えばCCD、CMOSなどの素子により構成されている。信号処理部13は、撮像素子6からの出力を受けて、ノイズ処理やA/D変換等の処理を行う回路である。
AF画素7は、撮像素子6に設けられ、位相差方式のAF検出が可能な画素であり、規則的な配列パターンを持って配置されており、信号処理部14を介して、CPU2内のAF制御部に出力される。
振動板8は、撮像素子6の光軸前方に配置され、振動することによりゴミ落としを目的とした透明な板である。
振動子9は、振動板8に設けられ、振動駆動のための部材であり、AF画素7の配列パターンと同じ方向の振動波を発生し、振動板8に付着したゴミを振るい落とす機能を有するものである。振動子9は、例えば、PZTなどに代表される圧電素子を用いることができる。この振動子9は、CPU2からの指示により、ドライバ12によって駆動される。
光学的LPF10は、撮影レンズを透過した被写体光から高周波成分等を取り除いて、その被写体光を撮像素子6に導くためのフィルタである。
なお、撮像素子6、AF画素7、振動板8及び振動子9の関係については、後で詳細に説明する。
【0012】
表示部15は、カメラ1のカメラ筐体の背面に設けられ、撮像素子6で撮影した被写体像(再生画像、ライブビュー画像)や操作に関連した情報(メニュー)などを表示するカラー液晶ディスプレイである。
操作部16は、振動子9の振動の開始や終了を指示するスイッチであり、CPU2に出力される。また、操作部16は、振動子9の振動の開始を指示し、所定時間経過後にオフするようにしてもよい。
【0013】
次に、本実施形態による撮像装置をさらに詳しく説明する。
図2は、本実施形態に係る撮像装置の撮像素子の中にAF画素が配列状に配置されていることを示す図である。
AF画素7は、撮像素子6上に規則的なパターンを持って配置されている。振動板8は、そのAF画素7の配列パターンと同じ方向の振動波を発生するように配置されている。この振動板8は、AF画素7の配列パターンへの入射光が通過する特定の位置8aが、振幅の腹となるような共振周波数が駆動周波数の一つとして設定される。
【0014】
図3は、本実施形態に係る撮像装置の振動板と振動子の配置及び振動波の発生方向を示す図である。
振動板8には、共振状態での振動波Wが配置した振動子9と同じ方向に発生する。つまり、振動板8は、AF画素7の配列部分のゴミ落としに有効な振動波Wを発生するために、AF画素7の配列と同じ方向に振動子9を配置するようにしてある。
【0015】
図4は、本実施形態に係る撮像装置のAF画素配列と振動の対応を示すイメージ図である。
振動子9が波長λで振動する場合に、入射光が通過する特定の位置が作る列の間隔xoとλ/2とが等しく、また、位相がそろっているときに、AF画素7の位置に対応した位置8aが振動の腹となり、その周波数は、全てのAF画素7に対して、有効なゴミ落ち効果を発揮する。
また、振動子9は、一番上側のAF画素7の配列パターンへの入射光が通過する特定の位置8aから、配列の間隔xo(又はその倍数)だけ、上に配置すれば最も効率がよい。
【0016】
図5は、本実施形態に係る撮像装置の共振周波数設計の場合のパラメータを説明する図である。
AF画素7の配置パターンに合わせて、振動板8の共振周波数を決定する場合に、振動板8の寸法(x×y),板厚(t),振動子9の貼り付け位置(y`),振動子9の幅(yp)が共振周波数に対して支配的な設計パラメータとなる。特に、振動子9の幅(yp)と振動板8の板厚(t)を設計のパラメータとして実験的に変化させると、振動の腹がどこに現れるかを、任意に設定できる。
また、振動板8の共振周波数と、その振動の腹に合わせてAF画素7の配列を決定しても、同様の効果が得られる。
【0017】
以上詳しく説明したように、本実施形態によれば、振動板8に、AF画素7の配列パターンと同じ方向の振動波Wを発生する振動子9を配置してので、AF画素7の配列部分のゴミ落としに有効な振動波Wを発生することができる。
また、振動子9は、AF画素7の配列パターンへの入射光が通過する、振動板8の特定の位置8aが、振幅の腹となるように振動するようにしたので、有効なゴミ落ち効果を発揮することができる。
さらに、AF画素7の配列パターンへの入射光が通過する特定の位置8aが、等間隔xoの配列パターンで配置されるときに、振動子9は、特定の位置8aの間隔xoと等距離に配置されるようにしたので、振動の腹がどこに現れるかを、容易に設定することができる。
【0018】
(他の実施形態)
図6は、本発明の撮像装置の他の実施形態を示した図である。
図6(a)に示すように、振動子9Aは、振動板8の短辺に沿って、縦方向に配置してもよい。波W1は、AF画素7の配列と、90度異なる方向に発生する。
【0019】
AF画素7が十字配列の場合には、図6(b)に示すように、横方向に振動子9を、縦方向に振動子9Aをそれぞれ配置するようにしてもよい。
【0020】
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1) 本実施形態では、デジタルコンパクトカメラについて説明したが、本発明はこれに限定されず、デジタル一眼レフカメラ、ビデオカメラ、携帯電話などにも適用可能である。
(2) 振動子は、圧電素子の例で説明したが、電歪素子、磁歪素子等のほか駆動素子であってもよい。
【0021】
(3) 振動板8は、専用に設けた例で説明したが、光学的LPF10を振動板として用いて、振動子9を取り付けるようにしてもよい。
(4) 操作部16によって、振動子9に振動操作をする例で説明したが、電源スイッチのオン又はオフ信号により、振動子9を所定時間振動させるようにしてもよい。
(5) 振動子9は、振動板8の上側、左側に配置した例で説明したが、下側、右側であってもよい。
【符号の説明】
【0022】
1;カメラ,2;CPU,3;フォーカスレンズ群,4;駆動部,5;撮像ユニット,6;撮像素子,7;AF画素,8;振動板,9;振動子,10;光学的LPF,11,12;ドライバ,13,14;信号処理部,15;表示部,16;操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子と、
前記撮像素子に設けられ、規則的な配列パターンを持って配置されたAF画素と、
前記撮像素子の光軸前方に配置された振動板と、
前記振動板に設けられ、前記AF画素の配列パターンと同じ方向の振動波を発生する振動子と、
を含む撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像装置において、
前記振動子は、前記AF画素の配列パターンへの入射光が通過する、前記振動板の特定の位置が、振幅の腹となるように振動すること、
を特徴とする撮像装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の撮像装置において、
前記AF画素は、等間隔の配列パターンで配置されており、
前記振動子は、前記AF画素への入射光が通過する特定の位置列の間隔と等距離に配置されていること、
を特徴とする撮像装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の撮像装置を備えたカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−227597(P2012−227597A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91058(P2011−91058)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】