説明

撮像装置及び撮像システム

【課題】カバー部材が装着された状態での撮像画角やピント状態等を見込んだ撮像光学系の手動調節を容易に行えるようにする。
【解決手段】
光学アタッチメント80は、第1の撮像光学系20を有する撮像ユニット20,36と、第1の撮像光学系の焦点距離、焦点状態及び向きのうち少なくとも1つの手動操作による調節を可能とする調節機構26,35と、撮像ユニットを覆うように保持部材10に装着され、第1の撮像光学系とともに第2の撮像光学系を構成する第1の光学部11aを含むカバー部材11とを有する撮像装置に対して用いられる。光学アタッチメント80は、カバー部材が保持部材に装着されていない状態において撮像装置に取り外し可能に装着される。該光学アタッチメント80は、第1の光学部と光学的に等価な第2の光学部81を有し、かつ各調節機構の手動操作を可能とする空間を形成する形状を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、監視カメラ等に用いられる撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
監視カメラ等の撮像装置として、撮像光学系や撮像素子を含む撮像ユニットを保護したり監視カメラを目立たなくしたりするために、撮像ユニットを透明なカバー部材(半球形状のドーム部材)の内部に収納した、いわゆるドームカメラが広く用いられている。
これらドームカメラの多くでは、特許文献1にて開示されているように、焦点距離(撮像画角)や焦点状態(ピント)を手動で調節できるバリフォーカルレンズと呼ばれる撮像光学系が用いられている。
バリフォーカルレンズは、遠隔操作のための駆動系を持たない代わりに、手動による直接操作によって撮像画角やピントの調節を行うために、簡易に構成されており、信頼性が高い。このため、バリフォーカルレンズは、ドームカメラを含めて、頻繁な設定変更を必要としない定点監視用途の監視カメラに一般に利用されている。
さらに、同文献にて開示されているように、ドームカメラには、撮像光学系の向き(撮像方向)を変更する雲台が装備されているものも多い。
そして、このようなドームカメラにおいて、撮像画角、ピント及び撮像方向の調節は、ドーム部材を取り外した状態で行われ、該調節後にドーム部材によって撮像ユニットや撮像画角等の調節機構が覆われる。
【0003】
ただし、撮像光学系のピント調節後に該撮像ユニットをドーム部材で覆うことは、撮像光学系の前面にある程度の厚みを有する屈折率の高い部材を配置することになる。このことにより、ドーム部材で撮像ユニットを覆う前に比べて、被写体との間の空気換算距離が変化し、この結果、撮像ユニットのピントがずれる。ドーム部材で撮像ユニットを覆う前に、覆った後のピント変化を見込んでピント調節を行うことは、きわめて難しい。
ドーム部材の装着により発生するピント変化を補正するために、ドーム部材の装着後に、撮像光学系の光軸方向における撮像素子の位置を調節できるようにしたドームカメラが特許文献2にて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3363772号公報
【特許文献2】特開2008−17258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2にて開示されたドームカメラでは、撮像素子の位置を調節するために特別な駆動機構を備えている。このため、ドームカメラの構成が複雑化し、ドームカメラが大型化する可能性がある。
また、撮像光学系の前面に配置されたドーム部材はメニスカスレンズとしての光学作用を持つ。このため、撮像画角も変化する。これにより、ドーム部材が取り外された状態で調節された撮像画角とは異なる撮像画角で撮像が行われてしまう。例えば、撮像すべき被写体が撮像されなかったり、撮像すべきでない被写体が撮像されたりする可能性がある。
【0006】
本発明は、特別な駆動機構を設けることなく、カバー部材が装着された状態での撮像画角やピント状態等を見込んだ撮像光学系の手動調節を容易に行うことができるようにした光学アタッチメント、及びこれを備えた撮像システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としての光学アタッチメントは、 第1の撮像光学系を有する撮像ユニットと、該撮像ユニットを保持する保持部材と、第1の撮像光学系の焦点距離、焦点状態及び向きのうち少なくとも1つの手動操作による調節を可能とする調節機構と、撮像ユニットおよび調節機構を覆うように保持部材に装着され、第1の撮像光学系とともに第2の撮像光学系を構成する第1の光学部を含むカバー部材とを有する撮像装置に対して用いられる。
該光学アタッチメントは、カバー部材が保持部材に装着されていない状態において撮像装置に取り外し可能に装着される。該光学アタッチメントは、第1の光学部と光学的に等価な第2の光学部を有し、かつ調節機構の手動操作を可能とする空間を形成する形状を有することを特徴とする。
なお、上記光学アタッチメントと、該光学アタッチメントが用いられる撮像装置とを有する本発明の他の一側面を構成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、焦点距離、焦点状態及び撮像方向を調節するための特別な駆動機構を設けることなく、カバー部材を取り外した状態で、該カバー部材を装着した状態と等価な焦点距離、焦点状態及び撮像方向を確認しながら調節機構の手動調節を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例1である光学アタッチメントが用いられるドームカメラの構成を示す断面図。
【図2】実施例1の光学アタッチメントの構成を示す断面図。
【図3】実施例1の光学アタッチメントの光学作用を説明する図。
【図4】実施例1の光学アタッチメントを装着した状態でのドームカメラを示す側面図。
【図5】本発明の実施例2である光学アタッチメントを示す斜視図。
【図6】実施例2の光学アタッチメントを装着した状態でのドームカメラを示す断面図。
【図7】実施例2の光学アタッチメントを装着した状態でのドームカメラを示す断面図。
【図8】本発明の実施例3である光学アタッチメントを装着した状態でのドームカメラを示す断面図。
【図9】実施例1〜3の光学アタッチメントを用いた撮像画角、ピント調節及び撮像方向の調節工程を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0011】
図1には、本発明の実施例1である光学アタッチメントが用いられる撮像装置としてのドームカメラの構成を示している。ドームカメラと光学アタッチメントとにより、撮像システムが構成される。
図1において、透明部材で形成されているカバー部材としてのドーム部材(以下、単にドームという)11と、上ケース12及び下ケース13によって構成されるケーシング(保持部材)10は、それらの断面を示している。
ドーム11は、図中に示すX軸、Y軸及びZ軸の3軸の交点を中心とし、外径R1と内径R2(厚さ=R1−R2)を有する球面形状のドーム部(第1の光学部)11aと、該ドーム部11aの外周に形成されたフランジ部11bとを有する。ドーム11は、上ケース12に図中の下方向から組み込まれ、フランジ部11bが上ケース12の受け部と押え部材14とにより挟み付けられることによって上ケース12(ケーシング10)に装着(固定)される。押さえ部材は、ねじ15によって上ケース12に固定される。下ケース13は、図示しないねじにより、上ケース12と結合される。
【0012】
ケーシング10の内側には、第1の撮像光学系としてのバリフォーカルレンズ20と後述する撮像素子ホルダ36とを有する撮像ユニットと、該撮像ユニットを支持するレンズ雲台と、回路基板63,71とが収容されている。なお、図1では、撮像ユニット及びレンズ雲台の右半分の断面を示している。
バリフォーカルレンズ20は、フォーカスレンズユニット22と、ズーム(変倍)レンズユニット31とを有する。フォーカスレンズユニット22は、フォーカス鏡筒23によって保持されており、ズームレンズユニット31は、ズーム鏡筒32によって保持されている。
フォーカス鏡筒23は、外鏡筒21の内側に、バリフォーカルレンズ20の光軸方向に移動可能に配置されている。フォーカス鏡筒23には、内鏡筒21に光軸方向に延びるように形成された長穴部21aに係合するガイドピン24が取り付けられている。
外鏡筒21の外周には、フォーカス環25が光軸回りで回転可能に配置されている。フォーカス環25は、その内周面にカム溝部25aを有する。該カム溝部25aには、ガイドピン24が係合している。フォーカス環25は、外鏡筒21に対して、スプリングリング28により被写体側(図の上方)に付勢されている。この構造により、フォーカス環25は、外鏡筒21との間に適度な摩擦抵抗を発生させながら光軸回りで回転可能であり、かつ所望の回転位置で安定的に停止することができる。操作性の向上のため、フォーカス環25には、手動操作が可能なフォーカス調節レバー26が取り付けられている。
フォーカス調節レバー26の手動操作によってフォーカス環25が回転すると、ガイドピン24が長穴部21aによって光軸回りでの回転を阻止されながらカム溝部25aのリフトによって光軸方向に移動し、フォーカスレンズユニット22が光軸方向に移動する。これにより、フォーカスレンズユニット22を移動させてバリフォーカルレンズ20の焦点状態(ピント)を手動調節するためのフォーカス調節機構が構成される。
ズーム鏡筒32は、外鏡筒21の内側に光軸方向に移動可能に配置されている。ズーム鏡筒32には、内鏡筒21に光軸方向に延びるように形成された長穴部21bに係合するガイドピン33が取り付けられている。
外鏡筒21の外周には、ズーム環34が光軸回りで回転可能に配置されている。ズーム環34は、その内周面にカム溝部34aを有する。該カム溝部34aには、ガイドピン33が係合している。ズーム環34は、外鏡筒21に対して、スプリングリング38により被写体側に付勢されている。この構造により、ズーム環34は、外鏡筒21との間に適度な摩擦抵抗を発生させながら光軸回りで回転可能であり、かつ所望の回転位置で安定的に停止することができる。操作性の向上のため、ズーム環34には、手動操作が可能なズーム調節レバー35が取り付けられている。
ズーム調節レバー35の手動操作によってズーム環34が回転すると、ガイドピン33が長穴部21bによって光軸回りでの回転を阻止されながらカム溝部34aのリフトによって光軸方向に移動し、ズームレンズユニット31が光軸方向に移動する。これにより、ズームレンズユニット31を移動させてバリフォーカルレンズ20の焦点距離(撮像画角)を手動調節するためのズーム調節機構が構成される。
外鏡筒21の像面側の端部には、撮像素子ホルダ36が固定されている。撮像素子ホルダ36はフランジ部と円筒部とを有し、該円筒部はチルト可動部材41の穴部41aに挿入されている。撮像素子ホルダ36は、スプリングリング37によってフランジ部がチルト可動部材41に被写体側から押圧された状態で、該チルト可動部材41に取り付けられている。
このような構造により、撮像ユニットは、チルト可動部材41との間に適度な摩擦抵抗を発生させながら、矢印27で示すように光軸回りでの回転(以下、レンズ回転という)が可能であり、かつ所望の回転位置で安定的に停止することができる。撮像ユニットを光軸回りで回転させることで、撮像画面の傾き調節を行うことができる。このように、本実施例のドームカメラは、レンズ回転調節機構を有する。
チルト可動部材41に設けられた一対のチルト軸42は、パン可動部材44に形成されたチルト軸穴部44aに挿入され、スプリングリング43によってチルト軸穴部44aからの抜けが防止される。このような構造により、チルト可動部材41は、矢印45で示すように、チルト軸(X軸)の回りでチルト回転可能である。チルト可動部材41を所望の回転位置で保持するためには、図示しないねじ止め構造を用いることができる。
パン可動部材44にはフランジ部44bが設けられており、該フランジ部44bは、雲台ベース部材51に形成されたリング状の凸部52の内周に配置されている。パン可動部材44は、凸部52にねじ47で固定されたスラスト保持部材46と雲台ベース部材51との間に保持されている。これにより、パン可動部材44は、矢印48にて示すように、雲台ベース部材51上でパン軸(Y軸:図ではパン軸がバリフォーカルレンズ20の光軸に一致している場合を示す)の回りでパン回転可能である。
雲台ベース部材51は、下部ケース13に設けられた受け部13aにねじ53により固定されている。
このように、撮像ユニットは、互いに直交する2軸であるチルト軸とパン軸の回りで回転可能であり、かつバリフォーカルレンズ20の光軸の回りでも回転が可能である。パン可動部材44を所望の回転位置で保持するためには、図示しないねじ止め構造を用いることができる。チルト可動部材41、パン可動部材44及び雲台ベース部材51により、方向調節機構としての雲台が構成される。
雲台上でのチルト回転及びパン回転によって、バリフォーカルレンズ20の被写体側の先端(以下、前端ともいう)とドーム部材11の内面との間の距離を変えることなく、バリフォーカルレンズ20の向き(撮像方向)を変更することができる。バリフォーカルレンズ20の向きの調節は、撮像画角及びピントの調節と同様に、手動操作によって行われる。
なお、本実施例では、バリフォーカルレンズ20の焦点距離、焦点状態及び向き(さらにはレンズ回転位置)を手動操作によって調節可能な場合について説明する。ただし、本発明では、焦点距離、焦点状態及び向き(さらにはレンズ回転位置)のうち少なくとも1つの手動操作による調節が可能であればよい。
次に、撮像素子ホルダ36及びその周辺の構造について説明する。撮像素子ホルダ36の内側には凹部が形成されており、該凹部内に、ローパスフィルタと赤外波長カットフィルタとが貼り合わせられて構成されたローパス/赤外カットフィルタ60と、CCDセンサやCOMSセンサ等の撮像素子62とが配置されている。ローパス/赤外カットフィルタ60と撮像素子62との間には、スペーサ61が挟み込まれている。
撮像素子62は、金属製の放熱板64を間に挟んで撮像回路基板63上に実装されている。撮像素子62の端子62aは、撮像回路基板63上に形成された回路パターンにハンダ接合されている。
撮像回路基板63は、撮像素子ホルダ36に図示しないねじによって固定されている。これにより、ローパス/赤外カットフィルタ60も固定される。撮像回路基板63にはコネクタ65が設けられており、該コネクタ65には、後述するメイン回路基板71に接続される電気ケーブル66が接続されている。
メイン回路基板71は、下部ケース13に設けられた受け部13bにねじ74により固定されている。メイン回路基板71にはコネクタ72が設けられており、該コネクタ72には前述した電気ケーブル66が接続されている。これにより、撮像素子62から出力された電気信号が、メイン回路基板71上の信号処理回路(図示せず)に入力される。信号処理回路は、撮像素子62からの電気信号に基づいて画像信号を生成する。生成された画像信号は、メイン回路基板71上に設けられたコネクタ73に接続された電気ケーブル74により、不図示の外部機器に出力される。外部機器は、画像信号に対応する画像(撮影画像)を表示する。
以上のように、本実施例のドームカメラでは、ドーム11が撮像ユニット及び各調節機構を覆うようにケーシング10に装着される。ドーム11のうち、ドーム部11aは、その肉厚がR1−R2である屈折率が高い部材である。このため、ドーム部11aは、バリフォーカルレンズ20とともに、第2の撮像光学系(ドーム部11aから撮像素子62に至るまでの撮像光学系)を構成する。
図2には、本実施例の光学アタッチメント80を示している。また、図3には、図1中のA部を拡大して示しており、2点鎖線で光学アタッチメント80を示している。
光学アタッチメント80は、ドーム11がケーシング10に装着されていない状態において、ドームカメラの一部である撮像ユニットに取り外し可能に装着される。具体的には、光学アタッチメント80は、ドーム11とともに上ケース12を下ケース13から取り外した状態で、撮像ユニットにおけるバリフォーカルレンズ20のフォーカス環25の外周に装着される。
光学アタッチメント80は、アタッチメント鏡筒82と、該アタッチメント鏡筒82の第1の内周部82aにより保持されたアッタチメントレンズ(第2の光学部)81とにより構成されている。アッタチメントレンズ81は、半径R1の第1面(外面)と半径R2の第2面(内面)とを有する球面形状に形成されている。言い換えれば、アッタチメントレンズ81は、ドーム部11aの球面形状と同一の半径(及び同一の厚さ)を有する球面形状を有する。
また、アタッチメントレンズ81は、ドーム11のドーム部11aを構成する部材(材料)、又はこれと等価な物性(屈折率等)及び形状を有する部材から、外形が円形の部分を切り出すことで製作される。
アタッチメント鏡筒82の第2の内周部82bには、フォーカス環25の外周部が挿入される。そして、第2の内周部82bから内周側に突出したリブ部(位置決め部)82cがフォーカス環25の上端と突き当たる。これにより、アタッチメントレンズ81は、該アタッチメントレンズ81とバリフォーカルレンズ20の前端との間の距離が、ドーム11のドーム部11aとバリフォーカルレンズ20の前端との間の距離と同じになるように位置決めされる。また、アッタチメントレンズ81は、その球面形状の中心が前述したX軸、Y軸及びZ軸の交点(チルト軸とパン軸の交点)に一致するように位置決めされる。
アタッチメントレンズ81がこのように位置決めされることで、アタッチメントレンズ81はドーム11のドーム部11aと光学的に等価となり、バリフォーカルレンズ20とともに前述した第2の撮像光学系と等価な光学系を構成する。なお、光学アタッチメント80は、フォーカス環25に対して、ビス又は軽圧入によって固定される。
図3において、フォーカスレンズユニット22の外周から延びる一点鎖線は、バリフォーカルレンズ20が広角端にある状態でフォーカスレンズユニット22に入射する最も外側の光線(最大画角光線)85を示している。最大画角光線85よりも広い角度範囲をカバーするようにアッタチメントレンズ81の外径を設定することで、広角端でも光学アタッチメント80による光線のケラレ(画像の欠け)は生じない。
【0013】
図4には、ドーム11及び上ケース12を下ケース13から取り外して、バリフォーカルレンズ20に光学アタッチメント80を装着した状態を示している。パン可動部材44を2点鎖線で示し、バリフォーカルレンズ20と光学アタッチメント80とが重なった部分は両者を実線で示している。
図4に示すように、光学アタッチメント80は、バリフォーカルレンズ20(フォーカス環25)の前端部に装着され、フォーカス及びズーム調節機構の手動操作部であるフォーカス調節レバー26及びズーム調節レバー35を露出させる(覆わない)。さらに、光学アタッチメント80を装着した状態でも、撮像方向やレンズ回転位置の手動調節(方向調節機構やレンズ回転調節機構の手動操作)が可能である。つまり、光学アタッチメント80は、バリフォーカルレンズ20に装着された状態において各調節機構の手動操作を可能とする空間を形成する形状を有する。
このため、光学アタッチメント80を用いて、ドーム11を装着した状態と等価な撮影画像を確認しながら、撮像画角、ピント、撮像方向及び画面の傾きを調節することができる。これらの調節が終了した後、光学アタッチメント80をバリフォーカルレンズ20から取り外し、ドーム11とともに上ケース12を下ケース13に取り付けても、調節された撮像画角、ピント、撮像方向及び画面の傾きが維持される。
なお、光学アタッチメント80は、これを取り外さなければ、物理的にドーム11をケーシング10に装着することができない寸法及び形状(構造)を有している。これは、光学アタッチメント80を装着したままドーム11を装着すると、バリフォーカルレンズ20の前に互いに等価な光学系が二重に配置されることになってしまい、バリフォーカルレンズ20の上記各調節を行うことができなくなるためである。このことは、後述する他の実施例でも同じである。
【実施例2】
【0014】
図5には、本発明の実施例2である光学アタッチメント90を示している。なお、本実施例において、実施例1と共通する構成要素には実施例1と同符号を付してその説明を省略する。
光学アタッチメント90は、ドーム11のドーム部11aのうち中央部を残してその両側の部分を削除することで球面形状を有するように形成された光学部(第2の光学部)90aを有する。また、フランジ部90bは、ドーム11のフランジ部11bを流用している。このため、光学アタッチメント90は上ケース12に取り外し可能に装着され、上ケース12とともに下ケース13(つまりはケーシング10)に取り付けられる。
図6には、光学アタッチメント90をケーシング10に装着した状態を示している。光学アタッチメント90のフランジ部90bが、上ケース12の受け部と押さえ部材14とによって挟み込まれる。押さえ部材14は、ゴムやばねワッシャ等の弾性部材94を介して段付きねじ95によって上ケース12に固定される。フランジ部90bは、押さえ部材14を介して弾性部材94の付勢力により上ケース12の受け部に押し付けられる。これにより、光学アタッチメント90は、上ケース12の受け部及び押さえ部材14との間に適度な摩擦抵抗を発生させながら、矢印91で示すようにパン軸回りでの回転が可能であり、かつ所望の回転位置で安定的に停止することができる。
光学アタッチメント90をケーシング10に装着すると、前述したように形成された光学部90aはその球面形状の中心がX軸、Y軸及びZ軸の交点(チルト軸とパン軸の交点)に一致するように位置決めされる。また、光学部90aは、該光学部90aとバリフォーカルレンズ20の前端との間の距離が、ドーム11のドーム部11aとバリフォーカルレンズ20の前端との間の距離と同じになるように位置決めされる。
光学部90aがこのように位置決めされることで、光学部90aはドーム11のドーム部11aと光学的に等価となり、バリフォーカルレンズ20とともに実施例1で説明した第2の撮像光学系と等価な光学系を構成する。
また、光学部90aをフランジ部90bによって保持することで、光学アタッチメント90を装着した状態での光学特性を構造的に安定化させることができる。
光学部90aの幅は、図3に示したバリフォーカルレンズ20の広角端での最大画角光線85よりも広い角度範囲をカバーするように設定されている。
【0015】
光学アタッチメント90は、光学部90aの幅方向の両端とフランジ部90bとの間に開口部90cを有する。これにより、光学アタッチメント90は、ケーシング10に装着された状態で、フォーカス調節レバー26及びズーム調節レバー35を露出させる(覆わない)。さらに、該開口部90cを通して、撮像方向やレンズ回転位置の手動調節が可能である。つまり、光学アタッチメント90は、ケーシング10に装着された状態において各調節機構の手動操作を可能とする空間を形成する形状を有する。
したがって、光学アタッチメント90を用いて、ドーム11を装着した状態と等価な撮影画像を確認しながら、撮像画角、ピント、撮像方向及び画面の傾きを調節することができる。調節が終了した後、光学アタッチメント90を上ケース12とともに下ケース13から取り外し、光学アタッチメント90をドーム11に交換した上ケース12を下ケース13に取り付ければ、調節された撮像画角、ピント、撮像方向及び画面の傾きが維持される。
図7に示すように、バリフォーカルレンズ20の向きを変えても、光学アタッチメント90はパン軸回りで回転自在であるので、光学部90aをバリフォーカルレンズ20の前(被写体側)に配置することができる。つまり、光学アタッチメント90を、ケーシング10に対して、バリフォーカルレンズ20の向きの変化に合わせて回転させることができる。
また、光学アタッチメント90の回転とともに、開口部90cも回転方向に移動するので、撮像画角、ピント、撮像方向及び画面の傾きを、該開口部90cを通して調節することができる。
【0016】
本実施例の光学アタッチメント90は、光学部90aがドーム11のドーム部11aと同じ球面長さを有する。このため、光学アタッチメント90を装着した状態で、ドーム11を装着したときのドーム部11aの端による撮像画角のケラレを事前に把握することができる。
【0017】
なお、光学アタッチメント90の上ケース12への装着を、磁石を用いて行ってもよい。
【0018】
また、バリフォーカルレンズ20の向きが変更されることによりバリフォーカルレンズ20の前端とドーム11のドーム部11aとの間の距離が変化するドームカメラにも、本実施例の光学アタッチメント90を使用することができる。
【実施例3】
【0019】
上述した実施例2においては、光学アタッチメント90が上ケース12にパン軸回りで回転自在に装着される場合について説明したが、図8に示すように、光学アタッチメント90がパン可動部材44に装着されるようにしてもよい。
図8では、光学アタッチメント90のフランジ部90bに取り付け金具96をねじ97aにより取り付けている。そして、取り付け金具96をパン可動部材44にねじ97bで取り付ける。
これにより、光学アタッチメント90は、撮像ユニットのパン回転とともに回転する。このため、光学部90aは、常にバリフォーカルレンズ20の前に配置されることになり、バリフォーカルレンズ20の各調節を実施例2に比べてより容易に行うことができる。
【実施例4】
【0020】
図9には、実施例1〜3に示した光学アタッチメントを使用して行われる、ドームカメラの撮像画角、ピント及び撮像方向の調節工程(調節方法)の流れを示している。
ステップ101で調節工程を開始すると、ステップ102では、ドーム11をドームカメラから取り外して撮像ユニットを露出させる。
ステップ103では、光学アタッチメントをドームカメラ(バリフォーカルレンズ20、ケーシング10又はパン可動部材44)に装着する。また、ステップ104では、ドームカメラに、該ドームカメラから出力される撮影画像を表示するモニターを接続する。ステップ105では、モニターでの撮影画像の表示を開始する。
そして、ステップ106では、表示された撮影画像を確認しながら、撮像ユニットを手動操作して雲台をパン回転させたりチルト回転させたりすることで撮像方向を調節し、さらに必要に応じてレンズ回転位置を調節する。
次に、ステップ107では、表示された撮影画像を確認しながら、ズーム調節レバー35を手動操作して撮像画角を調節する。さらに、ステップ108では、表示された撮影画像を確認しながら、フォーカス調節レバー26を手動操作して、ピント調節を行う。なお、ステップ107とステップ108は、いずれを先に行ってもよいし、同時に行ってもよい。
ステップ109では、各調節後の撮影画像をモニター上で確認し、必要であれば再調節を行い、再調節の必要がなければ、ステップ110にて調節を終了する。
ステップ111では、光学アタッチメントを取り外す。そして、ステップ112では、先に取り外したドーム11をドームカメラに取り付け、ステップ113にて調節工程を終了する。
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
例えば、上記各実施例では、カバー部材及び光学アタッチメントの光学部が球面形状を有する場合について説明したが、球面形状とは異なる曲面形状の光学部を有するカバー部材及び光学アタッチメントにも、本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
特別な駆動機構を設けることなく、カバー部材が装着された状態での撮像画角やピント状態等を見込んだ撮像光学系の手動調節を容易に行うことができる光学アタッチメントを実現することができる。
【符号の説明】
【0022】
10 ケーシング
20 バリフォーカルレンズ
25 フォーカス環
26 フォーカス調節レバー
34 ズーム環
35 ズーム調節レバー
36 撮像素子ホルダ
41 チルト可動部材
44 パン可動部材
80,90 光学アタッチメント


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の撮像光学系を有する撮像ユニットと、該撮像ユニットを保持する保持部材と、前記第1の撮像光学系の焦点距離、焦点状態及び向きのうち少なくとも1つの手動操作による調節を可能とする調節機構と、前記撮像ユニットおよび前記調節機構を覆うように前記保持部材に装着され、前記第1の撮像光学系とともに第2の撮像光学系を構成する第1の光学部を含むカバー部材とを有する撮像装置に対して用いられ、
前記カバー部材が前記保持部材に装着されていない状態において前記撮像装置に取り外し可能に装着される光学アタッチメントであって、
前記第1の光学部と光学的に等価な第2の光学部を有し、かつ前記調節機構の手動操作を可能とする空間を形成する形状を有することを特徴とする光学アタッチメント。
【請求項2】
前記第2の光学部と、前記空間を形成するための開口部とを有することを特徴とする請求項1に記載の光学アタッチメント。
【請求項3】
前記第2の光学部を、該第2の光学部と前記第1の撮像光学系との間の距離が前記第1の光学部と前記第1の撮像光学系との間の距離と同じになるように位置決めする位置決め部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の光学アタッチメント。
【請求項4】
前記撮像ユニットは互いに直交する2軸の回りで回転可能であり、前記第1の光学部は前記2軸の交点を中心とする球面形状を有しており、
前記第2の光学部は、前記第1の光学部の球面形状と同一の半径を有する球面形状を有し、
該光学アタッチメントは、前記第2の光学部の球面形状の中心を前記交点に位置決めする位置決め部を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の光学アタッチメント。
【請求項5】
前記撮像ユニットは、前記第1の撮像光学系の向きが変化するように回転が可能であり、
該光学アタッチメントは、前記撮像装置に、前記第1の撮像光学系の向きの変化に合わせて回転可能に装着されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の光学アタッチメント。
【請求項6】
第1の撮像光学系を有する撮像ユニットと、該撮像ユニットを保持する保持部材と、前記第1の撮像光学系の焦点距離、焦点状態及び向きのうち少なくとも1つの手動操作による調節を可能とする調節機構と、前記撮像ユニットおよび前記調節機構を覆うように前記保持部材に装着され、前記第1の撮像光学系とともに第2の撮像光学系を構成する第1の光学部を含むカバー部材とを有する撮像装置、及び
請求項1から5のいずれか1つに記載の光学アタッチメントを有することを特徴とする撮像システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−278869(P2010−278869A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130521(P2009−130521)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】