説明

撮像装置

【課題】分解能を飛躍的に高めて高精細なカラー画像を取得することができる撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像装置は、レンズと、レンズを介して光を受けるイメージセンサ2と、レンズとイメージセンサ2との間に位置して重なるように設けられ、互いに異なる色の光を吸収してその余の光を透過させるように制御される複数の液晶フィルタ3〜5とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー画像を取得可能な撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の撮像装置としては、たとえば特許文献1に開示されたものがある。同文献に開示された撮像装置は、RGB系の色フィルタを備えたカラー撮像素子をマトリクス状に配置したものである。カラー撮像素子のそれぞれは、RGBいずれかの受光セル(ブロック)として割り当てられ、着目する一つの受光セルとその周辺の受光セルから一画素分のRGB色情報を補間処理によって生成するようにいわゆるベイヤ配列されている。
【0003】
しかしながら、上記従来の撮像装置では、一つの画素のRGB色情報を複数の受光セルから求めることで擬似的に解像度を引き上げ、受光セルの数に対して画素数を同数としている。つまり、実質的には画素数相当の解像度が得られず、取得されたカラー画像の色再現性に劣るため、分解能を飛躍的に高めて高精細なカラー画像を取得することが困難であった。
【0004】
【特許文献1】特開2000−316163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、分解能を飛躍的に高めて高精細なカラー画像を取得することができる撮像装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって提供される撮像装置は、レンズと、上記レンズを介して光を受けるイメージセンサと、上記レンズと上記イメージセンサとの間に位置して重なるように設けられ、互いに異なる色の光を非透過状態としてその余の光を透過させるように制御される複数の液晶フィルタと、を備えていることを特徴としている。
【0007】
本発明の好ましい実施の形態としては、上記複数の液晶フィルタは、赤色光の非透過状態と透過状態とが制御されるシアン系の液晶フィルタ、緑色光の非透過状態と透過状態とが制御されるマゼンタ系の液晶フィルタ、および青色光の非透過状態と透過状態とが制御されるイエロー系の液晶フィルタからなる。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態としては、上記シアン系、マゼンタ系、およびイエロー系の液晶フィルタのうち、いずれか一の液晶フィルタを透過状態とする際にその余の液晶フィルタを非透過状態とし、これら液晶フィルタの透過状態を順次切り替えるように制御する液晶駆動制御手段を有している。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態としては、上記シアン系、マゼンタ系、およびイエロー系の液晶フィルタのうち、いずれか一の液晶フィルタを非透過状態とする際にその余の液晶フィルタを透過状態とし、これら液晶フィルタの非透過状態を順次切り替えるように制御する液晶駆動制御手段を有している。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態としては、上記液晶フィルタの端部には、液晶駆動用の配線基板が接続されており、これら複数の液晶フィルタは、上記端部を互いにずらして重ねられている。
【0011】
このような構成によれば、複数の液晶フィルタを制御することにより、たとえばイメージセンサにおける一つひとつの撮像素子をRGBの受光セルとして切り替えることができ、一つの撮像素子によって一画素分に必要な全ての色情報を取得することができるので、実質的に画素数相当の解像度が得られることで分解能を飛躍的に高めることができ、ひいては高精細なカラー画像を取得することができる。
【0012】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0014】
図1〜5は、本発明にかかる撮像装置の一実施形態を示している。図1に示すように、撮像装置Aは、プリント配線板1、イメージセンサ2、複数の液晶フィルタ3〜5、レンズホルダ6、レンズ7、および液晶駆動制御部8を備えている。プリント配線板1は、レンズホルダ6の底部に固定されている。イメージセンサ2は、レンズ7からの光を受けるようにプリント配線板1に実装されている。複数の液晶フィルタ3〜5は、レンズホルダ6の内部においてレンズ7とイメージセンサ2との間に位置し、互いに重なるように設けられている。これらの液晶フィルタ3〜5は、液晶駆動制御部8によって制御される。
【0015】
図2に示すように、イメージセンサ2のベアチップ部は、基板20、撮像素子21、配線層22、およびマイクロレンズ23を有して構成されている。
【0016】
基板20は、たとえば半導体製造プロセスを経て製作されたSi基板からなる。
【0017】
撮像素子21は、たとえばフォトダイオードとして基板20の表面に造り込まれたものであり、その基板20の表面内でマトリクス状の配列パターンをなすように形成されている。
【0018】
配線層22は、たとえば基板20の表面上に形成された透光性および絶縁性をもつシリコン酸化層内に、撮像素子21の電荷転送電極としてAlの配線パターンを含む層である。配線パターンは、撮像素子21に対して光を遮ることがないように隣り合う撮像素子21と撮像素子21との間に形成されている。
【0019】
マイクロレンズ23は、撮像素子21に対する集光性を高めるものであり、各撮像素子21と対応するようにベアチップの上面全体に形成されている。
【0020】
複数の液晶フィルタ3〜5は、それぞれシアン系の液晶フィルタ3、マゼンタ系の液晶フィルタ4、イエロー系の液晶フィルタ5からなる。液晶フィルタ3〜5の両端部には、液晶駆動制御部8に通じるフレキシブル配線基板Fが接合されている。このような液晶フィルタ3〜5は、異方性導電フィルムを介してフレキシブル配線基板Fを接合するように端部が互いにずらされ、透光性の中間部材Mを介して重ねられている。
【0021】
シアン系の液晶フィルタ3は、たとえばホストとなる液晶に赤色光を吸収する二色性色素をゲストとして混入した液晶層30を有し、この液晶層30をたとえばITO電極が形成された透明基板31,32の間に封止した構造からなる。このようなシアン系の液晶フィルタ3によれば、液晶駆動制御部8によって液晶層30に電圧が印加されると、可視光の波長範囲となるほとんどの光が液晶層30を透過した状態となる。一方、液晶層30に電圧が印加されない場合、赤色光以外の波長範囲の光が液晶層30を透過しつつも、赤色光に相当する波長範囲の光が液晶層30において効率よく吸収された状態となる。
【0022】
マゼンタ系の液晶フィルタ4は、たとえばホストとなる液晶に緑色光を吸収する二色性色素をゲストとして混入した液晶層40を有し、この液晶層40をたとえばITO電極が形成された透明基板41,42の間に封止した構造からなる。このようなマゼンタ系の液晶フィルタ4も、液晶駆動制御部8によって液晶層40に電圧が印加されると、可視光の波長範囲となるほとんどの光が液晶層40を透過した状態となる。一方、液晶層40に電圧が印加されない場合、緑色光以外の波長範囲の光が液晶層40を透過しつつも、緑色光に相当する波長範囲の光が液晶層40において効率よく吸収された状態となる。
【0023】
イエロー系の液晶フィルタ5は、たとえばホストとなる液晶に青色光を吸収する二色性色素をゲストとして混入した液晶層50を有し、この液晶層50をたとえばITO電極が形成された透明基板51,52の間に封止した構造からなる。このようなイエロー系の液晶フィルタ5も、液晶駆動制御部8によって液晶層50に電圧が印加されると、可視光の波長範囲となるほとんどの光が液晶層50を透過した状態となる。一方、液晶層50に電圧が印加されない場合、青色光以外の波長範囲の光が液晶層50を透過しつつも、青色光に相当する波長範囲の光が液晶層50において効率よく吸収された状態となる。
【0024】
液晶駆動制御部8は、液晶フィルタ3〜5のうちのいずれか一のものを透過状態としつつその余を吸収状態とし、このような透過吸収状態を排他的に順次切り替えるように制御する。たとえば動画撮影時、液晶駆動制御部8は、たとえば色切り替えに7ms、一画面露光に15msといった時間制御によってシアン系の液晶フィルタ3、マゼンタ系の液晶フィルタ4、イエロー系の液晶フィルタ5の順に電圧を印加する。これにより、レンズ7を透過した光は、液晶フィルタ3〜5によって順次に赤色光、緑色光、青色光となり、これらの光が順に全ての撮像素子21において受光される。1フレーム分の画像は、一つの撮像素子21を1画素として3(色)×22ms=66ms程度の走査時間により得られ、各撮像素子21における赤、緑、青の露光量に応じた信号に基づいて図示しない画像処理部で加色混合の画像処理を行うことにより、各撮像素子21が1画素に対応した高精細なカラー画像が得られる。
【0025】
上記撮像装置Aは、次のような作用をもつ。
【0026】
たとえば動画撮影時、撮像装置Aに対して外部からの光は、レンズ7、シアン系の液晶フィルタ3、マゼンタ系の液晶フィルタ4、イエロー系の液晶フィルタ5を順に透過し、さらにマイクロレンズ23、配線層22を通って撮像素子21に達する。撮像素子21では、露光量に応じた電荷がRGB画素信号として出力される。
【0027】
このとき、液晶フィルタ3〜5は、先述したように極めて短い時間間隔で排他的に透過状態となるように駆動制御される。たとえば図3に示すように、シアン系の液晶フィルタ3のみが電圧印加によってオン状態の場合、可視光の波長範囲となるほとんどの光がシアン系の液晶フィルタ3を透過する一方、それ以外のマゼンタ系およびイエロー系の液晶フィルタ4,5によって緑色光および青色光が吸収される。すなわち、イメージセンサ2には、赤色光が入射する。これにより、全ての撮像素子21は、赤色光の露光状態となり、その露光量に応じたR画素信号が得られる。
【0028】
図4に示すように、マゼンタ系の液晶フィルタ4のみが電圧印加によってオン状態の場合、可視光の波長範囲となる光は、シアン系の液晶フィルタ3によって赤色光が吸収された後、マゼンタ系の液晶フィルタ4をほとんど透過する。さらにその後、マゼンタ系の液晶フィルタ4を透過した光は、シアン系の液晶フィルタ5によって青色光が吸収される。すなわち、イメージセンサ2には、緑色光が入射する。これにより、全ての撮像素子21は、緑色光の露光状態となり、その露光量に応じたG画素信号が得られる。
【0029】
図5に示すように、イエロー系の液晶フィルタ5のみが電圧印加によってオン状態の場合、可視光の波長範囲となる光は、シアン系の液晶フィルタ3およびマゼンタ系の液晶フィルタ4によって赤色光および緑色光が吸収された後、イエロー系の液晶フィルタ5をほとんど透過する。すなわち、イメージセンサ2には、青色光が入射する。これにより、全ての撮像素子21は、青色光の露光状態となり、その露光量に応じたB画素信号が得られる。
【0030】
以上のようにしてR画素信号、G画素信号、B画素信号が得られると、これらの画素信号が加色混合の画像処理によって各画素のRGB画素信号となり、1フレーム分の画像が生成される。液晶フィルタ3〜5を排他的かつ高速に駆動する制御をたとえば1色につき22msの時間間隔で行った場合、全ての液晶フィルタ3〜5を一巡する時間が66msとなり、動画像を取得する際のフレームレートとしては、略15fpsとなる。これにより、撮像素子21一つ当たり1画素となる高精細なカラーの動画像が高速に得られる。もちろん、静止画像を撮影する場合においても、撮像素子21一つ当たり1画素となる高精細なカラー画像を得ることができる。
【0031】
したがって、本実施形態の撮像装置Aによれば、一つひとつの撮像素子21によって一画素分に必要な全てのRGB画素信号を取得することができるので、実質的に画素数相当の解像度が得られることで分解能を飛躍的に高めることができ、ひいては高精細なカラー画像を取得することができる。
【0032】
図6〜8は、本発明にかかる撮像装置の他の実施形態を示している。なお、本実施形態の撮像装置は、先述した実施形態によるものと制御が異なるだけであるため、その制御に係る要点に絞って説明する。
【0033】
本実施形態では、複数の液晶フィルタ3〜5のうちのいずれか一つのものが排他的に吸収状態となるように駆動制御される。たとえば図6に示すように、マゼンタ系とイエロー系の液晶フィルタ4,5が電圧印加によってオン状態の場合、シアン系の液晶フィルタ3が吸収状態となる。これにより、イメージセンサ2には、赤色光以外となる緑色光と青色光の混合した光が入射する。このような緑色光と青色光が混合した光は、シアン系の光となり、全ての撮像素子21においては、露光量に応じたC画素信号が得られる。
【0034】
図7に示すように、シアン系とイエロー系の液晶フィルタ3,5が電圧印加によってオン状態の場合、マゼンタ系の液晶フィルタ4が吸収状態となる。これにより、イメージセンサ2には、緑色光以外となる赤色光と青色光の混合した光が入射する。このような赤色光と青色光が混合した光は、マゼンタ系の光となり、全ての撮像素子21においては、露光量に応じたM画素信号が得られる。
【0035】
図8に示すように、シアン系と、マゼンタ系の液晶フィルタ3,4が電圧印加によってオン状態の場合、イエロー系の液晶フィルタ5が吸収状態となる。これにより、イメージセンサ2には、青色光以外となる赤色光と緑色光の混合した光が入射する。このような赤色光と緑色光が混合した光は、イエロー系の光となり、全ての撮像素子21においては、露光量に応じたY画素信号が得られる。
【0036】
以上のようにしてC画素信号、M画素信号、Y画素信号が得られると、これらの画素信号が減色混合の画像処理によって各画素のCMY画素信号となり、1フレーム分の画像が生成される。液晶フィルタ3〜5を排他的かつ高速に駆動することにより、先述した実施形態と同様に撮像素子21一つ当たり1画素となる高精細なカラーの動画像が高速に得られる。なお、一旦得られたCMY画素信号は、色空間変換によってRGB画素信号に変換することもできる。
【0037】
したがって、本実施形態のような液晶制御によっても、一つひとつの撮像素子21によって一画素分に必要な全てのCMY画素信号を取得することができ、先述した実施形態によるものと同様に分解能を飛躍的に高めて高精細なカラー画像を取得することができる。イメージセンサ2は、混合した光を受光することで露光量が多くなるので、取得したカラー画像をより高輝度とすることができる。
【0038】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明にかかる撮像装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。たとえば、液晶フィルタは、中間部材を介在させることなく直に積層させた構造でもよい。
【0039】
液晶フィルタとしては、液晶層に特定色の選択反射が可能なコレステリック液晶を封入したものでもよい。このような液晶フィルタでも、反射状態と透過状態とを切り替えることで先述した実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明にかかる撮像装置の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示す撮像装置の要部断面図である。
【図3】図1に示す撮像装置の作用を説明するための要部断面図である。
【図4】図1に示す撮像装置の作用を説明するための要部断面図である。
【図5】図1に示す撮像装置の作用を説明するための要部断面図である。
【図6】本発明にかかる撮像装置の他の実施形態を示す要部断面図である。
【図7】図6に示す撮像装置の作用を説明するための要部断面図である。
【図8】図6に示す撮像装置の作用を説明するための要部断面図である。
【符号の説明】
【0041】
A 撮像装置
F フレキシブル配線基板
2 イメージセンサ
3 シアン系の液晶フィルタ
4 マゼンタ系の液晶フィルタ
5 イエロー系の液晶フィルタ
7 レンズ
8 液晶駆動制御部(液晶駆動制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズと、
上記レンズを介して光を受けるイメージセンサと、
上記レンズと上記イメージセンサとの間に位置して重なるように設けられ、互いに異なる色の光を非透過状態としてその余の光を透過させるように制御される複数の液晶フィルタと、
を備えていることを特徴とする、撮像装置。
【請求項2】
上記複数の液晶フィルタは、赤色光の非透過状態と透過状態とが制御されるシアン系の液晶フィルタ、緑色光の非透過状態と透過状態とが制御されるマゼンタ系の液晶フィルタ、および青色光の非透過状態と透過状態とが制御されるイエロー系の液晶フィルタからなる、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
上記シアン系、マゼンタ系、およびイエロー系の液晶フィルタのうち、いずれか一の液晶フィルタを透過状態とする際にその余の液晶フィルタを非透過状態とし、これら液晶フィルタの透過状態を順次切り替えるように制御する液晶駆動制御手段を有している、請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
上記シアン系、マゼンタ系、およびイエロー系の液晶フィルタのうち、いずれか一の液晶フィルタを非透過状態とする際にその余の液晶フィルタを透過状態とし、これら液晶フィルタの非透過状態を順次切り替えるように制御する液晶駆動制御手段を有している、請求項2に記載の撮像装置。
【請求項5】
上記液晶フィルタの端部には、液晶駆動用の配線基板が接続されており、これら複数の液晶フィルタは、上記端部を互いにずらして重ねられている、請求項1ないし4のいずれかに記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−11138(P2010−11138A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168706(P2008−168706)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】