説明

撮像装置

【課題】照明光照射方向が変更でき、且つ、収納が容易な発光部を備えた撮像装置。
【解決手段】照明光を発生する発光部と、発光部を回動可能に支持する支持部と、支持部を回動可能に支持する本体と、支持部が回動して本体に近づいた場合に、本体に収容される収容姿勢に向かって発光部を回動させる引き込み部とを備える。上記撮像装置において、引き込み部は、支持部が本体に最も接近する位置まで回動する前に、発光部を収容姿勢まで回動させてもよい。また、上記撮像装置において、引き込み部は、発光部を収容姿勢に向かって回動させるべく付勢する付勢部と、発光部に係合して、付勢部の付勢に抗して発光部の姿勢を維持する係止部と、支持部が回動して本体に近づいた場合に、係止部の発光部に対する係合を解く開放部とを有してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内蔵した照明装置を筐体から突出させて使用する撮像装置がある。また、突出させた照明装置の照明光照射方向を変化させることができる撮像装置もある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−061899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
撮像装置に格納する照明装置は、主に寸法の制約から、照明光照射方向の可変範囲が狭くなりがちになる。このため、間接光により撮像対象を照明して撮像するバウンス撮像において十分な効果が得られない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決すべく、本発明の一態様として、照明光を発生する発光部(220)と、発光部を回動可能に支持する支持部(210)と、支持部を回動可能に支持する本体(110)と、支持部が回動して本体に近づいた場合に、本体に収容される収容姿勢に向かって発光部を回動させる引き込み部(250、260)とを備える撮像装置(100)が提供される。
【0006】
上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションも発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】デジタルカメラ100の正面図である。
【図2】デジタルカメラ100の側面図である。
【図3】照明部200の断面図である。
【図4】照明部200の他の断面を示す断面図である。
【図5】照明部200の他の状態を示す断面図である。
【図6】照明部200の他の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
図1は、デジタルカメラ100の正面図である。デジタルカメラ100は、筐体110と、筐体110の前面に配された撮像レンズ120と、筐体110の上面に配されたシャッタレリーズボタン130および照明部200とを備える。
【0010】
筐体110は、図上の左側端部において紙面に垂直な方向に厚さを増してグリップ部112を形成する。シャッタレリーズボタン130は、グリップ部112の頂面に配される。撮像レンズ120は、グリップ部112を除く筐体110の略中央に配され、レンズ鏡筒122を介して筐体110の前面に支持される。
【0011】
照明部200は、撮像レンズ120の上方において、筐体110の上面に配される。図示の状態において、照明部200は、筐体110の格納部前壁114の後方に格納されている。格納された照明部200の背面(図示の状態では上面)は、筐体110の上面と連続した面をなす。これにより、使用しない場合の照明部200は筐体110の内側に格納されて外部から見えない。
【0012】
図2は、デジタルカメラ100の側面図である。図2は、図1中に矢印Aで示す方向からデジタルカメラ100を見た様子を示す。なお、図1と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する発明を省く。
【0013】
図示の状態では、照明部200が起立して、筐体110の上面から上方に突出する。照明部200は、照明光を発生する発光部220と、発光部220を支持する支柱部210とを有する。このため、筐体110の上面には格納部111が露出する。
【0014】
起立した発光部220は、支柱部210により筐体110から上方に離れた位置に保持される。これにより、発光部220は、レンズ鏡筒122から離れた位置で照明光を照射する。従って、照明光がレンズ鏡筒122に蹴られ難い。
【0015】
なお、図2には、筐体110の背面に配された表示部140およびファインダ150が見える。ファインダ150は、液晶表示板を内蔵して、デジタルカメラ100のイメージセンサが捕らえた光像の確認に使用される。表示部140は、撮像済み画像の再生、デジタルカメラ100の設定用インターフェイス等に使用される。
【0016】
図3は、照明部200の断面図である。照明部200は、支柱部210、発光部220およびラッチ部材270を有する。なお、図3は、照明部200が筐体110の格納部111に格納された状態を示す。
【0017】
支柱部210は、中空の内部に、固定カム260、プッシュロッド250、爪部材240および回動ギア230を有する。また、支柱部210は、格納部背面116に対して固定された支持軸262から軸支される。固定カム260は、支持軸262に対して固定されたカム面264を有する。従って、支柱部210が支持軸262の廻りに回転した場合、カム面264は、支柱部210に対して相対的に回転する。
【0018】
プッシュロッド250は、支柱部210の内側に配された一対のリブ212、214から、長手方向に摺動可能に支持される。プッシュロッド250の一端(図中の左端)は、円滑に仕上げられてカム面264に当接するカムフォロワ258をなす。プッシュロッド250の中程には、鍔部256が設けられる。
【0019】
鍔部256と、固定カム260から遠い側のリブ212との間には、圧縮されたコイルバネ254が配される。これにより、プッシュロッド250は固定カム260に向かって、図中に矢印Sで示す方向に付勢され、カムフォロワ258がカム面264に押し付けられる。
【0020】
プッシュロッド250の他端(図中の右端)は、作用端として、爪部材240を保持する。爪部材240は、プッシュロッド250の作用端252に対して固定された固定部242と、固定部242から後述する回動ギア230に向かって延在するラチェット爪244とを有する。ただし、図示の状態では、ラチェット爪244は回動ギア230に噛み合っていない。
【0021】
回動ギア230は、回動軸232およびラチェット歯234を有する。回動軸232は、支柱部210に対して回動する。ラチェット歯234は、回動軸232と共に、支柱部210に対して回動する。
【0022】
更に、支柱部210は、下面に垂下したフック部216を有する。フック部216は、ラッチ部材270のラッチ面274と係合する。ラッチ部材270は、ラッチ面274と反対側の端部にボタン部272を有する。ボタン部272は、格納部背面116から、筐体110の外側に露出する。
【0023】
発光部220は、筐体224、放電管228、反射板226および拡散板222を有する。筐体224は、放電管228、反射板226および拡散板222を収容して、回動軸232から支持される。これにより、発光部220は、支柱部210に対して、回動軸232の廻りに回動する。
【0024】
放電管228は、筐体224の内部に収容されて外部から絶縁される。また、筐体224の内部において、放電管228は一端が開口する反射板226に包囲される。反射板226は放物線を描く断面形状を有する。
【0025】
反射板226が開口する側において、筐体224には透明な拡散板222が配される。これにより、放電管228が発生した閃光は、拡散板222から筐体224外部に照射される。なお、図示の状態では、拡散板222の直前は格納部前壁114に塞がれている。デジタルカメラ100の筐体110外部から見た場合、照明部200の背面は筐体110と連続した面をなす。
【0026】
なお、発光部220が格納された状態では、発光部220の直前に格納部前壁114が位置するので、発光部220を支柱部210に対して回動させることはできない。換言すれば、支柱部210に対して発光部220が回動した状態では、格納部111に発光部220を格納することはできない。従って、いったん起立した発光部220を格納部111に格納する場合は、支柱部210に対する発光部220の相対位置を、図示のような格納位置にした後に支柱部210を倒すことが求められる。
【0027】
図4は、照明部200の他の断面図である。図4は、図3に示した断面と平行ではあるが、支持軸262の延在方向にずれた位置の断面を示す。図3と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0028】
支柱部210は、回動ギア230の回動軸232に装着された捩じりバネ280と、支持軸262に装着された捩じりバネ290とを有する。捩じりバネ280、290は、一対の直線部282、286、292、296と、直線部282、286、292、296を結合するコイル部284、294とを含む。
【0029】
捩じりバネ280は、コイル部284に回動軸232を挿通される。捩じりバネ280一方の直線部286は、支柱部210の内壁とリブ212、214との間に挟まれ、支柱部210に対して固定される。他方の直線部282は、支柱部210に設けられたスリット218を通じて、発光部220の筐体224に設けられた貫通穴221に挿通される。これにより、直線部282は、発光部220の回動と共に回動する。
【0030】
捩じりバネ280は、支柱部210に対して発光部220が格納位置をとる方向に発光部220を付勢する。従って、他の部材に係止されない限り、発光部220は、支柱部210に対して自律的に格納位置に復帰する。ただし、支柱部210の当接面213と、発光部220の当接面223とが当接することにより、発光部220が、図示の状態を越えて時計廻りに回転することはない。
【0031】
捩じりバネ290は、コイル部294に支持軸262を挿通される。捩じりバネ290一方の直線部292は、支柱部210の内壁と一方のリブ214との間に挟まれ、支柱部210に対して固定される。他方の直線部296は、支柱部210に設けられたスリット215を通じて、格納部背面116の内側に当接する。これにより、直線部296は、発光部220が回動した場合も、格納部背面116に当接したまま固定される。
【0032】
捩じりバネ290は、支柱部210が、支持軸262を軸として反時計廻りに回動する方向に、支柱部210を付勢する。従って、ラッチ部材270のボタン部272が押されてフック部213とラッチ面274との係合がはずれた場合、支柱部210は、格納部111から起立して、デジタルカメラ100の上方に突出する。
【0033】
図5は、照明部200の他の状態を示す断面図である。図5は、照明部200が、格納部111から起立して発光部220を持ち上げた状態を示す。図5において、図3と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0034】
支柱部210は、捩じりバネ290により、図中に矢印Bで示す方向に付勢されている。これにより、ラッチ部材270のボタン部272を図中の矢印Pで示す方向に押した場合、ラッチ面274がフック部216からはずれて、支持軸262の廻りを回動する。これにより、支柱部210は、格納部111から起立して、発光部220を上方に持ち上げる。
【0035】
支柱部210が回動した場合、プッシュロッド250のカムフォロワ258は、支持軸262と共に固定されたカム面264に沿って移動して、支持軸262から離れる方向に移動する。従って、プッシュロッド250は、コイルバネ254の付勢に抗して長手方向に移動する。
【0036】
これにより、作用端252に保持された爪部材240も移動して、ラチェット爪244が、回動ギア230のラチェット歯234と噛み合う。こうして、爪部材240および回動ギア230は、回動軸232の廻りにラチェットを形成する。
【0037】
図示の状態では、発光部220は、支柱部210に対して格納位置を維持している。このため、拡散板222は垂直に起立して、放電管228が発生した照明光は、図中に矢印Lで示す前方に照射される。従って、照明光は、デジタルカメラ100の撮像対象を直接光で照明する。
【0038】
図6は、照明部200の他の状態を示す断面図である。図6は、支柱部210が格納部111に対して起立した状態で、更に、照明部200が支柱部210に対して回動させた状態を示す。図6において、図3および図5と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0039】
支柱部210において、回動ギア230のラチェット歯234は時計廻りに傾斜している。これにより、捩じりバネ280の付勢に抗して、発光部220を図中に矢印Cで示す反時計廻りに回動させた場合、回動ギア230も発光部220と共に円滑に回動する。これにより、発光部220の位置は、格納部111から更に離れた位置に移動する。
【0040】
回動した発光部220の位置は、回動ギア230および爪部材240が形成されるラチェットにより、捩じりバネ280の付勢に抗して保持される。従って、後述する操作をするまで、発光部220の位置と発光方向が維持される。
【0041】
図示の状態では、発光部220は略90°回動して、拡散板222が略水平になっている。これにより、放電管228が発生した照明光は、図中に矢印Lで示すように上方に向かって照射される。従って、照明光は、デジタルカメラ100の撮像対象に直接光として照射されることはない。
【0042】
図6では、照射方向が上方になるまで発光部220を回動させたが、回動ギア230および爪部材が形成するラチェットは、ラチェット歯234がラチェット爪244と噛み合う位置であればどの位置でも発光部220の位置を保持できる。従って、デジタルカメラ100のユーザは、撮像意図に応じて、照明光の照射方向に任意に設定できる。
【0043】
再び図3を参照する。図5に示した状態から、支柱部210を格納部111に向かって押し倒した場合、コイルバネ254の付勢されたプッシュロッド250のカムフォロワ258は、カム面264に沿って支持軸262に近づく方向に移動する。これにより、プッシュロッド250は長手方向に移動するので、作用端252に保持された爪部材240も、回動ギア230から遠ざかる方向に移動する。
【0044】
爪部材240の移動によりラチェット爪244およびラチェット歯234の噛み合いがはずれると捩じりバネ280の付勢に抗するものがなくなり、発光部220は格納位置に復帰する。従って、カム面264のプロファイルを調整することにより、支柱部210が倒れ切る前に発光部220を格納位置に復帰させることができる。なお、支柱部210をある程度倒すと発光部220が格納位置に復帰する機能は、発光部220をバウンス照明から直接照明に切り替える場合にも利用できる。
【0045】
発光部220が支柱部210に対する格納位置に復帰すれば、発光部220は格納部前壁114に沿って格納部111内に収容できる。また、支柱部210を格納部111の内部まで倒し込んだ場合、支柱部210のフック部216とラッチ部材270のラッチ面274とが支柱部210を係止する。これにより、照明部200全体が格納部111に格納される。
【0046】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0047】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を、後の処理で用いる場合でない限り、任意の順序で実現しうることに留意されたい。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0048】
100 デジタルカメラ、110、224 筐体、111 格納部、112 グリップ部、114 格納部前壁、116 格納部背面、120 撮像レンズ、122 レンズ鏡筒、130 シャッタレリーズボタン、140 表示部、150 ファインダ、200 照明部、210 支柱部、212、214 リブ、213、223 当接面、215、218 スリット、216 フック部、220 発光部、221 貫通穴、222 拡散板、226 反射板、228 放電管、230 回動ギア、232 回動軸、234 ラチェット歯、240 爪部材、242 固定部、244 ラチェット爪、250 プッシュロッド、252 作用端、254 コイルバネ、256 鍔部、258 カムフォロワ、260 固定カム、262 支持軸、264 カム面、270 ラッチ部材、272 ボタン部、274 ラッチ面、280、290 捩じりバネ、282、286、292、296 直線部、284 コイル部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光を発生する発光部と、
前記発光部を回動可能に支持する支持部と、
前記支持部を回動可能に支持する本体と、
前記支持部が回動して前記本体に近づいた場合に、前記本体に収容される収容姿勢に向かって前記発光部を回動させる引き込み部と
を備える撮像装置。
【請求項2】
前記引き込み部は、前記支持部が前記本体に最も接近する位置まで回動する前に、前記発光部を前記収容姿勢まで回動させる請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記引き込み部は、
前記発光部を前記収容姿勢に向かって回動させるべく付勢する付勢部と、
前記発光部に係合して、前記付勢部の付勢に抗して前記発光部の姿勢を維持する係止部と、
前記支持部が回動して前記本体に近づいた場合に、前記係止部の前記発光部に対する係合を解く開放部と
を有する請求項1または請求項2に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−76005(P2011−76005A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229899(P2009−229899)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】