説明

撮像装置

【課題】撮像素子を所定位置に精度良くロックして、落下および衝撃に対する強度が向上させることができる撮像装置を提供する。
【解決手段】被写体からの光束が結像される撮像素子4と、前記撮像素子4を光軸方向に移動する撮像素子移動手段10と、前記撮像素子4を光軸方向上で、基準面4aから所定の距離、離間した所定位置にロックするロック手段20と、を備え、前記ロック手段20は、前記基準面4aと前記撮像素子4との間に進退するスペーサ部材22と、前記撮像素子4を前記スペーサ部材22に押し付ける付勢部材26、27とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチルカメラやビデオカメラ等の撮像装置に関するものである。特に、撮像素子を光軸方向に移動させて撮像する撮像装置に用いられて好適である。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル一眼レフカメラにおいて静止画撮影に加えて動画撮影機能を追加したカメラが開発されている。このようなカメラには、動画中の被写体追従のために、ウォブリング動作も可能なレンズによるオートフォーカス機構を備えるものがある。オートフォーカス機構には、フォーカスレンズ駆動にはよらず、撮像素子を光軸方向に駆動することによってオートフォーカス機構を達成するカメラが提案されている(例えば、特許文献1参照)。その目的の一つは、交換レンズ式一眼レフカメラのため、既存のウォブリング動作のできない交換レンズを利用した場合も動画撮影を可能とする性能改善効果を享受できるようにすることである。
ウォブリング動作においては撮像素子を高速に起動、停止させるので、撮像素子の支持部材、駆動機構等はイナーシャを少なくするように部材の薄型化、軽量化されているのが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−32537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような構造では本体に撮像素子を固定した場合に比べて装置の落下、衝撃試験における撮像素子の強度や精度が低下しやすいという問題がある。
一方、落下、衝撃対策のため、駆動機構の剛性を高めようとすると、撮像素子の支持部材の大型化だけでなく、これを駆動するアクチュエーターの大型化等、カメラ全体が大型化してしまう可能性がある。更に、消費電力の増大等のデメリットも考えられる。
【0005】
本発明は、上述したような問題点に鑑みてなされたものであり、撮像素子を所定位置に精度良くロックして、落下および衝撃に対する強度を向上させることができる撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による撮像装置は、被写体からの光束が結像される撮像素子と、前記撮像素子を光軸方向に移動する撮像素子移動手段と、前記撮像素子を光軸方向上で基準面から所定の距離、離間した所定位置にロックするロック手段と、を備え、前記ロック手段は、前記基準面と前記撮像素子との間に進退するスペーサ部材と、前記撮像素子を前記スペーサ部材に押し付ける付勢部材とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、撮像素子を所定位置に精度良くロックして、落下および衝撃に対する強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】カメラの内部構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態のロック機構の構成を示す斜視図である。
【図3】スペーサ部材および解除部材が時間差でスライドする動作を説明するための図である。
【図4】ロック機構の動作を示すフローチャートである。
【図5】アンロック状態からロック状態に移行するロック機構の断面図である。
【図6】ロック状態からアンロック状態に移行するロック機構の断面図である。
【図7】第2の実施形態の撮像素子移動機構の構成を示す図である。
【図8】第3の実施形態の撮像素子の正面図および側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の撮像装置は、スペーサ部材と解除部材とを時間差で駆動するロック機構を備え、撮像素子を所定位置に精度良くロックして、落下および衝撃に対する強度を向上させることができる。
以下に、本発明の好ましい実施形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態の撮像装置について、図1から図6を参照して説明する。
図1は撮像装置(以下、カメラ1という)の内部構成を示す図である。
カメラ1は、本体2に着脱可能な撮像レンズ3が取り付けられている。撮像レンズ3は、撮像素子4に被写体からの光束を結像させるフォーカスレンズを備えている。撮影開始によって、撮像素子4が画像の電荷の蓄積を開始し、所定の時間後に蓄積を終了後、蓄積した画像の電荷の読み出し動作を行い、信号処理回路5に画像信号を伝達する。
信号処理回路5は、撮像素子4からのアナログの画像信号をデジタルの画像データに変換するA/D変換部、タイミング発生回路、画像処理部、メモリ制御部等によって構成されている。
【0011】
システム制御部6は、カメラ1の各部を制御することによって位相差検出機能、コントラスト検出機能、露光制御機能、撮像素子移動速度変更機能等を実現する。システム制御部6は、CPUを含むマイクロコンピュータユニットから構成されており、撮像素子4を制御して被写体の条件に応じた蓄積時間の演算および蓄積開始、終了、読み出しを行う。
記録媒体7は、撮影した画像等を格納するフラッシュメモリ等の不揮発性メモリによって構成されている。記録媒体7は、所定枚数の画像を格納するのに十分な記憶量を備え、カメラ1に着脱可能である。
【0012】
メモリ8は、システム制御部6の動作用の定数、変数、プログラム等を記憶する。メモリ8には、撮影条件により異なる情報、数値が記録されている。また、メモリ8には、その他、撮像処理を行うプログラム、画像処理を行うプログラム、作成した画像ファイルデータを記録媒体7に記録するプログラム、画像ファイルデータを記録媒体7から読み出すプログラム等の各種プログラムが記録されている。また、メモリ8には、上述したプログラムのマルチタスク構成を実現し実行するOS等の各種プログラムも記録されている。
【0013】
レリーズボタン9は、使用者によって操作され、システム制御部6に撮影準備および撮影開始の指示をするスイッチである。レリーズボタン9は、操作途中(半押し)でONになる第1シャッタースイッチ(SW1)と、操作完了(全押し)でONになる第2シャッタースイッチ(SW2)とを備えている。第1シャッタースイッチ(SW1)によって測光および測距が行われ、第2シャッタースイッチ(SW2)によって撮影が行われる。
【0014】
また、カメラ1は、撮像素子4を光軸方向(図1に示す軸O)に沿って移動させる撮像素子移動機構(撮像素子移動手段)10と、撮像素子4をロックするロック機構(ロック手段)20を備えている。ロック機構20は、後述するスペーサ部材22、解除部材25、ロックレバー28およびロック機構駆動モータ29等を備えている。
【0015】
次に、撮像素子移動機構10およびロック機構20の構成について図2を参照して説明する。図2は撮像素子移動機構10およびロック機構20を分解した構成をカメラ1の背面側から見た斜視図である。なお、図2を含めた以下に示す図では必要に応じて、カメラ1の前方を矢印Fで示し、後方(背面方向)を矢印Bで示し、右側をRで示し、左側をLで示す。
図2に示すように、撮像素子移動機構10およびロック機構20を構成する部材は、光軸方向である前後方向に沿って配設されている。
地板21は、支持部材であってロック機構20全体を支持する。地板21は、ステンレス等の金属板から形成され、板厚が精度高く仕上げられている。地板21の背面は、ロック機構20における基準面21aであって、図1に示す本体2の図示しないレンズマウントから所定のフランジバック距離になるように本体2に結合されている。
【0016】
地板21の中央には、後述する撮像素子4の外形と略同形状の開口21bが形成されている。開口21bは、光軸方向に移動する撮像素子4との干渉を防止する。地板21の開口21bを挟んだ左右両側にはガイド部材21cが光軸方向に沿って突設されている。更に、地板21の右側には、太さの異なる2段の回動軸21dがあり、その右側にはロックレバー28のカムピン28bの回動を邪魔しないように逃げた円弧孔21eとが形成されている。
【0017】
地板21の後方には、スペーサ部材22が配設されている。スペーサ部材22は、ステンレス等の金属板から形成される板金であり、その板厚が精度高く仕上げられている。スペーサ部材22は、地板21と撮像素子4との間で左右方向にスライドする。スペーサ部材22には、中央に矩形状の開口22aと、開口22aの右側の上下に開口22bが形成されている。スペーサ部材22が左側に位置する後述するアンロック位置では、開口22a、22bによって、光軸方向に移動する撮像素子4との干渉を防止する。
【0018】
スペーサ部材22の開口22aを挟んだ左右両側にはガイド部材21cが挿入されるガイド長孔22cが形成されている。スペーサ部材22は、地板21のガイド部材21cにガイドされることで、地板21に対してスムーズにスライドする。また、スペーサ部材22が右側に位置する後述するロック位置では、スペーサ部材22の背面は撮像素子4と当接する当接面22dとして機能する。更に、スペーサ部材22の右側には、回動軸21dに接触しない大きさの長穴の孔22eと、ロックレバー28のカムピン28bが係合するカム溝22fとが形成されている。
【0019】
撮像素子4は、外装が保持部としてのセラミックパッケージで覆われて形成されている。撮像素子4の左端には当接部4aが左側に向かって延出され、右端の上下には当接部4bが右側に向かって延出されている。当接部4a、4bの前面は、スペーサ部材22が右側にスライドされたロック位置で、スペーサ部材22の当接面22dと当接する当接面4cとして機能する。また、撮像素子4の左右両側には、光軸方向に移動する撮像素子4をガイドするガイド軸23が貫通される孔4dが形成されている。また、右側の孔4dの下方には、雌ネジ部4eが形成されている。
【0020】
撮像素子移動モータ24は、撮像素子4を光軸方向に移動させる駆動部として機能する。撮像素子移動モータ24のリードスクリュー24aは、撮像素子4の雌ネジ部4eに螺合される。撮像素子移動モータ24は、本体2等に結合され、リードスクリュー24aを一方方向に回転させることで撮像素子4を前方に移動させ、逆回転させることで撮像素子4を後方に移動させる。すなわち、撮像素子移動モータ24は、撮像素子4を光軸方向上に移動させる。本実施形態の撮像素子移動機構10は、撮像素子移動モータ24、リードスクリュー24aおよび雌ネジ部4eを含んで構成される。
【0021】
撮像素子4の後方には、解除部材25が配設されている。解除部材25は、ステンレス等の金属板金から形成される板金である。解除部材25は、後述する付勢部材26、27による撮像素子4のスペーサ部材22への押し付けを許容したり解除したりする。解除部材25は、スペーサ部材22と同様、左右方向にスライドする。解除部材25には、中央に略矩形状の開口25aが形成されている。開口25aの左側には孔25bが形成され、開口25aの右側の上下には切欠25cが形成されている。解除部材25が右側に位置するロック位置では、孔25bおよび切欠25cを通して、付勢部材26による撮像素子4への押し付けを許容する。
【0022】
解除部材25の開口25aを挟んだ左右にはガイド長孔25dが形成されている。解除部材25は、地板21のガイド部材21cにガイドされることで、地板21に対してスムーズにスライドする。また、解除部材25が地板21に対して左側に位置するアンロック位置では、解除部材25の背面は、付勢部材26の押し付け力を受け止め、付勢部材26による撮像素子4への押し付けを解除する解除面25eとして機能する。更に、解除部材25の右側には、回動軸21dに接触しない大きさの長穴の孔25fと、ロックレバー28のカムピン28bが係合するカム溝25gとが形成されている。
【0023】
解除部材25の後方には、左右両側に付勢部材26、27が配設されている。付勢部材26、27は、板バネであり、それぞれ地板21の基準面21aに結合されている。左側の付勢部材26には、右側に向かって延出する付勢部26aが形成され、右側の付勢部材27には、左側に向かって延出する上下一対の付勢部27aが形成されている。各付勢部26a、27aは、先端に向かうにしたがって前方に傾斜し、最先端では後方に傾斜する傾斜面26b、27bが形成されている。
【0024】
ロックレバー28は、カム部材であって、その回動孔28aが地板21の回動軸21dの先端側の細い軸に嵌合され、これを中心に、解除部材25の上側で回転可能となる。解除部材25の孔25f、スペーサ部材22の孔22eは回動軸21dより大きいので解除部材25およびスペーサ部材22のスライド動作とロックレバー28の回動動作は互いに干渉しない。また、ロックレバー28は、カムピン28bが解除部材25のカム溝25gおよびスペーサ部材22のカム溝22fに係合する。ロックレバー28は、図1に示すロック機構駆動モータ29によって回転される。このとき、カムピン28bは解除部材25のカム溝25gおよびスペーサ部材22のカム溝22fに係合しているので、カム作用によって解除部材25およびスペーサ部材22を地板21に対して左右にスライドさせることができる。
本実施形態のロック機構20は、地板21、スペーサ部材22、解除部材25、付勢部材26、ロックレバー28およびロック機構駆動モータ29を含んで構成される。
【0025】
なお、スペーサ部材22および解除部材25は、撮像素子4の長辺に対して平行に配置されている。また、本実施形態のカメラ1は、一般的なデジタル一眼レフカメラと同様に撮像素子4の光軸と平行な軸上の撮像素子4の真上に、図示しないファインダが配置される。したがって、スペーサ部材22および解除部材25が移動する方向は、光軸と直交方向であり、かつ撮像素子4とファインダを結ぶ線に対して直交する方向である。
【0026】
本実施形態では撮像素子4をロックする場合、ロックレバー28は、スペーサ部材22をロック位置である右側にスライドさせた後、所定時間後に解除部材25を付勢部材26、27の押し付け力を解除する方向である右側にスライドさせる。逆に、撮像素子4をアンロックする場合、ロックレバー28は、解除部材25を付勢部材26、27の押し付け力を許容する方向である左側にスライドさせた後、所定時間後にスペーサ部材22をアンロック位置である左側にスライドさせる。
【0027】
具体的に、ロックレバー28によってスペーサ部材22と解除部材25とを時間差でスライドさせる動作について図3を参照して説明する。なお、撮像素子4をロックおよびアンロックする動作については、後述する。
図3(a)、(b)、(c)は、ロックレバー28、解除部材25のカム溝25gおよびスペーサ部材22のカム溝22fを後方から見た図である。図3(a)は解除部材25およびスペーサ部材22が、地板21に対して左側に位置している状態である。図3(b)および図3(c)は、順にロックレバー28を回動させたときのカム溝25gおよびカム溝22fの位置を示す図である。
【0028】
図3に示すように、カム溝25gはカム空転溝25g1とカム作動溝25g2とが連続して形成されている。カム空転溝25g1は、解除部材25が左側に位置する状態で、ロックレバー28の回動孔28aを中心としてカムピン28bの回動軌道に沿った円弧状に形成されている。カム作動溝25g2は、カムピン28bの回動軌道とは異なる鉛直状に延びる直線状に形成されている。
一方、カム溝22fにも、カム作動溝22f1とカム空転溝22f2とが形成されている。カム作動溝22f1は、カムピン28bの回動軌道とは異なる鉛直状に延びる直線状に形成されている。カム空転溝22f2は、スペーサ部材22が右側に位置する状態で、カムピン28bの回動軌道に沿った円弧状に形成されている。スペーサ部材22のカム溝22fおよび解除部材25のカム溝25gはそれぞれ異なる形状に形成されている。
【0029】
まず、図3(a)に示すように、カムピン28bは、カム溝25gのカム空転溝25g1に位置すると共に、カム溝22fのカム作動溝22f1に位置する。次に、ロックレバー28が、図3(b)に示す矢印方向に略40°回動すると、スペーサ部材22はカムピン28bによってカム作動溝22f1を介し、距離X1分スライドし、ロック位置に移動する。一方、解除部材25は、カムピン28bがカム空転溝25g1内を移動するだけであり、移動しない。
【0030】
次に、ロックレバー28が、図3(c)に示す矢印方向に略50°回動すると、解除部材25はカムピン28bによってカム作動溝25g2を介して、距離X2分スライドし、ロック位置に移動する。一方、スペーサ部材22は、カムピン28bがカム空転溝22f2内を移動するだけであり、移動しない。
このように、撮像素子4をロックする場合、ロックレバー28はスペーサ部材22をスライドさせた後、所定時間後に時間差で解除部材25をスライドさせる。一方、撮像素子4をアンロックする場合、ロックレバー28は図3(c)、(b)、(a)のように回動し、解除部材25をスライドさせた後、所定時間後に時間差でスペーサ部材22をスライドさせる。
【0031】
次に、上述したように構成されるロック機構20の具体的な動作を図4〜図6を参照して説明する。図4は、ロック機構20の動作を示すフローチャートである。図5(a)〜(c)は、アンロック状態からロック状態に移行するロック機構20の要部の動作を上方から見た断面図である。図6(a)〜(c)は、ロック状態からアンロック状態に移行するロック機構20の要部の動作を上方から見た断面図である。
【0032】
まず、ステップS101では、システム制御部6は、静止画撮影および動画撮影の何れかであるかを判断する。システム制御部6は、使用者により例えばレリーズボタン9が半押しされることで静止画撮影であると判断する。
静止画撮影では、撮像素子4を安定させた状態で撮影するために、ロック機構20は撮像素子4をアンロック状態からロック状態に移行する。
【0033】
ここで、アンロック状態(アンロック時)とは、ロックレバー28が垂直に位置し(図3(a)を参照)、図5(a)に示すように、スペーサ部材22および解除部材25がそれぞれスライド範囲の左端に位置している。なお、図5(a)に示すように、アンロック状態では、スペーサ部材22の当接面22dが撮像素子4の当接部4a、4bに光軸方向上で重なり合わない位置であるため、撮像素子4は前後に移動が可能である。また、解除部材25の解除面25eが付勢部材26、27の付勢部26a、27aに隣接する傾斜面26b、27bに当接し、押し付け力を受け止めているので、撮像素子4は付勢部材26により付勢されていない。
【0034】
ステップS102では、システム制御部6は、図示しないロック状態検出部を介してロック機構20がロック状態か否かを判定する。アンロック状態の場合、ステップS103の処理に進み、ロック状態の場合、ステップS107の処理に進み、静止画撮影を行う。
ステップS103では、システム制御部6は、撮像素子移動モータ24を回転させて撮像素子4を地板21の基準面21aからスペーサ部材22の厚み分よりも僅かに離間した所定位置に移動させる。その後、システム制御部6は、撮像素子4をアンロック状態からロック状態に移行するために、ロック機構駆動モータ29を正転させ、ロックレバー28を時計方向に回転させる。
【0035】
ステップS104では、ロックレバー28の回転に応じて、カムピン28bがスペーサ部材22のカム溝22fのカム作動溝22f1を右側に押圧するので、図5(b)に示すように、スペーサ部材22が右側に移動する。スペーサ部材22は、撮像素子4の前面に移動し、地板21と撮像素子4の間に進入する。この状態では、撮像素子4の当接部4a、4bがスペーサ部材22の当接面22dと対向した状態となる。
【0036】
ロックレバー28が約40°回転すると、カムピン28bはカム作動溝22f1に係合している状態から、カム空転溝22f2に係合する。カム空転溝22f2は、ロックレバー28の回転半径と概略同一半径の円弧形状であるため、スペーサ部材22は距離X1分だけ移動した後、停止する。
【0037】
また、ロックレバー28が回転し始めたとき、カムピン28bは解除部材25のカム空転溝25g1内を移動する。カム空転溝25g1は、ロックレバー28の回転半径と概略同一半径の円弧形状であるため、解除部材25は、ロックレバー28が約40°になるまで移動しない。カムピン28bがカム空転溝25g1に係合している状態からカム作動溝25g2に係合することで、カム作動溝25g2を右側に押圧するので、図5(c)に示すように、解除部材25が右側に移動する(ステップS105)。
【0038】
ステップS106では、ロックレバー28が水平位置まで回転して停止すると、解除部材25がスライド範囲の右端に達する。この状態では、付勢部材26、27の付勢部26a、27aに隣接する傾斜面26b、27bが解除部材25の解除面25eから退避するので、付勢部材26、27の付勢部26a、27aが撮像素子4の背面を前方に向かって押し付ける。
したがって、撮像素子4の当接部4a、4bはスペーサ部材22の当接面22dを押し付け、更に、スペーサ部材22が地板21の基準面21aを押し付けるので、撮像素子4の前後方向の移動が固定され、撮像素子4のロックが完了する。なお、撮像素子4によって押し付けられるスペーサ部材22は精度が出し易い板金なので確実な位置決めが可能となる。
ステップS107では、システム制御部6は、使用者によるレリーズボタン9の全押しに応じて、静止画の撮影ルーチンを開始し、撮影を終了する。
【0039】
(動画撮影)
ステップS101において、システム制御部6は、使用者により例えば動画撮影開始部を用いて動画撮影が選択されることで動画撮影であると判断する。
動画撮影では、撮像素子4のウォブリング動作を可能にするために、ロック機構20は撮像素子4のロック状態からアンロック状態に移行する。
【0040】
ここで、ロック状態(ロック時)とは、ロックレバー28が水平に位置し(図3(c)を参照)、図6(a)に示すように、スペーサ部材22および解除部材25がそれぞれスライド範囲の右端に位置している。なお、図6(a)に示すように、ロック状態では、スペーサ部材22の当接面22dが撮像素子4の当接部4a、4bに光軸方向上で重なり合うように配置されている。また、解除部材25の解除面25eが付勢部材26、27の付勢部26a、27aに隣接する傾斜面26b、27bから離間しているので、付勢部材26、27の付勢部26a、27aが撮像素子4の背面を前方に付勢している。この状態では、撮像素子4は、落下、衝撃等に耐えられるようにスペーサ部材22と共に基準面21aに押し付けられている。
【0041】
ステップS108では、システム制御部6は、図示しないロック状態検出部を介してロック機構20がロック状態か否かを判定する。ロック状態の場合、ステップS109の処理に進み、アンロック状態の場合、ステップS113の処理に進み、動画撮影を行う。
ステップS109では、システム制御部6は、撮像素子4をロック状態からアンロック状態に移行するために、ロック機構駆動モータ29を逆転させ、ロックレバー28を反時計方向に回転させる。
【0042】
ステップS110では、ロックレバー28の回転に応じて、カムピン28bが解除部材25のカム溝25gのカム作動溝25g2を左側に押圧するので、図6(b)に示すように、解除部材25が左側に移動する。この状態では、解除部材25の解除面25eが、付勢部材26、27の傾斜面26b、27bを後方に押し上げることにより、付勢部26a、27aを撮像素子4の背面から退避させ、撮像素子4への押し付け力を解除する。
【0043】
ロックレバー28が約50°回転すると、カムピン28bはカム作動溝25g2に係合している状態から、カム空転溝25g1に係合する。カム空転溝25g1は、ロックレバー28の回転半径と概略同一半径の円弧形状であるため、解除部材25は距離X2分だけ移動した後、停止する。
【0044】
また、ロックレバー28が回転し始めたとき、カムピン28bはスペーサ部材22のカム空転溝22f2内を移動する。カム空転溝22f2は、ロックレバー28の回転半径と概略同一半径の円弧形状であるため、スペーサ部材22は、ロックレバー28が約50°になるまで移動しない。カムピン28bがカム空転溝22f2に係合している状態からカム作動溝22f1に係合することで、カム作動溝22f1を左側に押圧するので、図6(c)に示すように、スペーサ部材22が左側に移動する(ステップS111)。
【0045】
ステップS112では、ロックレバー28が鉛直位置まで回転して停止すると、スペーサ部材22がスライド範囲の左端に達する。このとき、スペーサ部材22が撮像素子4の前面から移動し、地板21と撮像素子4との間から退避する。この状態では、撮像素子4の前方および背面に接触するものはないので撮像素子移動モータ24の回転によるリードスクリュー24aの回転により、撮像素子4はウォブリング動作である前後方向に移動することが可能となる。
【0046】
ステップS113では、システム制御部6は、使用者によるレリーズボタン9の全押しに応じて、動画の撮影ルーチンを開始し、撮影を終了する。
このように、本実施形態は、撮像素子4と、撮像素子4を光軸方向に移動する撮像素子移動機構10と、付勢部材26、27および地板21と撮像素子4との間に進退するスペーサ部材22を含むロック機構20とを備えている。したがって、撮像素子4を付勢部材26、27によってスペーサ部材22に押し付けるシンプルな構成で所定位置に精度良くロックでき、落下および衝撃等に対する強度を向上させることができる。
【0047】
また、スペーサ部材22および解除部材25は、ロックレバー28と、スペーサ部材22および解除部材25に形成されたカム空転溝22f2、25g1およびカム作動溝22f1、25g2とによって時間差でスライドする。つまり、付勢力による摩擦力が発生しないうちにスペーサ部材22の挿入が行われるのでモータの負荷も過大にならず、ロック状態への移行およびアンロック状態への移行を円滑に行うことができる。
【0048】
なお、本実施形態では、撮像素子4を移動する撮像素子移動機構10として、撮像素子移動モータ24、リードスクリュー24aおよび雌ネジ部4eによって構成される場合について説明したが、この場合に限られない。撮像素子移動機構10としては、例えば、マグネットとコイルによる電磁駆動方式や、圧電素子を駆動源としてもよい。
【0049】
(第2の実施形態)
次に、撮像素子4の位置決めに関連する、第1の実施形態と異なる実施形態について説明する。
ロック機構20により地板21と撮像素子4との間に、スペーサ部材22を進入させる場合、撮像素子4の停止位置が所定位置から大きくずれていると、スペーサ部材22の進入に影響を及ぼす場合がある。この場合、例えばステッピングモータのパルスカウントを記憶したり、位置センサを追加する等によって、撮像素子4の停止位置を補正することが考えられる。しかし、例えば落下、衝撃等で予期しないタイミングで撮像素子4の位置がずれる場合があり、この場合、ロック機構20に以下の構成を追加することができる。
【0050】
図7は、撮像素子移動機構40の要部を上方から見た拡大図である。
本実施形態の撮像素子移動機構40は、撮像素子4と、撮像素子移動モータ24と、ナット41と、弾性部材としてのコイルスプリング42、43を備えている。撮像素子4の端部には、撮像素子4の移動をリードスクリュー24aの軸方向に案内するガイド部4fが、撮像素子4と一体的に設けられている。ガイド部4fは、リードスクリュー24aの軸方向に離間して2つ配設され、それぞれリードスクリュー24aが挿通される挿通孔4gが形成されている。
【0051】
ガイド部4f間には、2つの挿通孔4gに挿通したリードスクリュー24aにナット41が螺合されている。ナット41と各ガイド部4fとの間には、コイルスプリング42、43がリードスクリュー24aと同軸上に配置されている。コイルスプリング42、43は、撮像素子4を光軸方向に移動させるための摩擦負荷等に対して圧縮変形することはないようなバネ定数にしている。このときのバネ定数をkとする。
【0052】
一方、上述した付勢部材26、27のバネ定数Kは、上述したバネ定数kに対し、K>kの関係となっている。したがって、撮像素子4のロック時に、撮像素子4の停止位置が所定位置からずれていても、付勢部材26、27の付勢力Fがコイルスプリング42、43の付勢力fよりも大きいため、撮像素子4を地板21の基準面21aに向かって押し付けが可能である。
【0053】
このように、本実施形態によれば、撮像素子4と撮像素子移動機構40とをコイルスプリング42、43を介して連結している。また、撮像素子4のロック時の付勢部材26、27による撮像素子4の付勢力をFとして、コイルスプリング42、43の付勢力をfとすると、F>fになるように構成している。
したがって、落下および衝撃等で撮像素子4が所定位置に停止できない場合であっても、ロック機構20は、撮像素子4を所定位置に精度良くロックすることができる。
【0054】
(第3の実施形態)
次に、撮像素子の異なる実施形態について説明する。
図8は、本実施形態に係る撮像素子50の側面図および正面図である。
図8に示すように、撮像素子50は、セラミック或いはレジンと呼ばれる樹脂にパッケージされている。撮像素子50には、アウトサートされた金属板であるリードフレーム51の一部がパッケージの外周縁から延出されている。リードフレーム51は、撮像素子50の端子部と同じ板金をプレス加工して形成され、撮像素子50のチップ自体が実装されている。リードフレーム51は、付勢部材26、27の押し付けに使用することによって高精度な光軸方向の位置決め部として機能する。
【0055】
第1の実施形態では、撮像素子4の所定位置へのロックの際、撮像素子4の外形の一部をスペーサ部材22に押し付けるように構成した。本実施形態では、撮像素子50がリードフレーム51とアウトサート成形され、リードフレーム51を介してスペーサ部材22に押し付けることで、落下および衝撃に対する強度が十分で、より高精度に光軸方向の位置決めができる。
【0056】
なお、リードフレーム51は、撮像素子50の端子部と同じ板金で製作されている金属板を用いたが、リードフレームとは別に追加されたステンレス等の板金であっても同様の効果がある。
このように、本実施形態によれば、撮像素子50はリードフレーム51とアウトサート成形され、付勢部材26、27によりリードフレーム51を介してスペーサ部材22に押し付けられることで、撮像素子50を所定位置にロックすることができる。したがって、撮像素子50を所定位置に精度良くロックして、落下および衝撃等に対する強度を向上させることができる。
【0057】
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1:カメラ 2:本体 3:撮像レンズ 4:撮像素子 4a、4b:当接部 4c:当接面 10:撮像素子移動機構 21:地板 21a:基準面 22:スペーサ部材 22d:当接面 22f:カム溝 22f1:カム作動溝 22f2:カム空転溝 24:撮像素子移動モータ 24a:リードスクリュー 25:解除部材 25g:カム溝 25g1:カム空転溝 25g2:カム作動溝 26:付勢部材 26a:付勢部 27:付勢部材 27a:付勢部 28:ロックレバー 28b:カムピン 40:撮像素子移動機構 41:ナット 42、43:コイルスプリング 50:撮像素子 51:金属板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体からの光束が結像される撮像素子と、
前記撮像素子を光軸方向に移動する撮像素子移動手段と、
前記撮像素子を光軸方向上で基準面から所定の距離、離間した所定位置にロックするロック手段と、を備え、
前記ロック手段は、前記基準面と前記撮像素子との間に進退するスペーサ部材と、
前記撮像素子を前記スペーサ部材に押し付ける付勢部材とを有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記ロック手段は、前記撮像素子と前記付勢部材との間に進退することによって前記付勢部材による前記撮像素子の前記スペーサ部材への押し付けを許容および解除する解除部材を更に有することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記撮像素子のロック時において、前記解除部材は、前記スペーサ部材が前記基準面と前記撮像素子との間に進入した後、所定時間後に前記付勢部材による前記撮像素子の前記スペーサ部材への押し付けを許容することを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記撮像素子のアンロック時において、前記スペーサ部材は、前記解除部材が前記付勢部材による前記撮像素子の前記スペーサ部材への押し付けを解除した後、所定時間後に前記基準面と前記撮像素子との間から退避することを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記ロック手段は、前記スペーサ部材および前記解除部材を前記光軸方向に対して直交する方向に進退させるカム部材を更に有することを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記スペーサ部材および前記解除部材は、それぞれ前記カム部材が係合するカム溝を有し、
前記スペーサ部材の前記カム溝および前記解除部材の前記カム溝には、それぞれカム空転溝とカム作動溝とが連続して形成され、
前記スペーサ部材の前記カム空転溝および前記カム作動溝と、前記解除部材の前記カム空転溝および前記カム作動溝とは、異なる形状であることを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記スペーサ部材および前記解除部材は板金で構成されていることを特徴とする請求項2乃至6の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記撮像素子と前記撮像素子移動手段とは、前記撮像素子を前記光軸方向に沿って付勢する弾性部材を介して連結され、
前記撮像素子のロック時における前記付勢部材による前記撮像素子への付勢力をFとし、前記弾性部材の付勢力をfとしたとき、
F>fであることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記撮像素子は金属板とアウトサート成形され、
前記撮像素子のロック時において、前記付勢部材は、前記金属板を前記スペーサ部材に押し付けることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−156705(P2012−156705A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13224(P2011−13224)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】