撮像装置
【課題】 焦点検出系ゴミを正確に検出する。
【解決手段】 焦点検出領域における焦点状態を検出する焦点検出手段(7,11)と、焦点検出手段より焦点検出領域での撮影画像を取得し、そのコントラストを検出する第1のコントラスト検出手段(7)と、焦点検出以外のために撮影画像を得る撮像手段(13,14)と、撮像手段より焦点検出領域に対応する領域での撮影画像を取得し、そのコントラストを検出する第2のコントラスト検出手段(7)と、第1のコントラスト検出手段による第1のコントラストと第2のコントラスト検出手段による第2のコントラストを比較し、第1のコントラストが第2のコントラストと異なることによって、焦点検出系ゴミを検出する焦点検出系ゴミ検出手段(7)とを有する。
【解決手段】 焦点検出領域における焦点状態を検出する焦点検出手段(7,11)と、焦点検出手段より焦点検出領域での撮影画像を取得し、そのコントラストを検出する第1のコントラスト検出手段(7)と、焦点検出以外のために撮影画像を得る撮像手段(13,14)と、撮像手段より焦点検出領域に対応する領域での撮影画像を取得し、そのコントラストを検出する第2のコントラスト検出手段(7)と、第1のコントラスト検出手段による第1のコントラストと第2のコントラスト検出手段による第2のコントラストを比較し、第1のコントラストが第2のコントラストと異なることによって、焦点検出系ゴミを検出する焦点検出系ゴミ検出手段(7)とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点検出光学系のゴミを検出する機能を有する撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的な交換レンズ式一眼レフカメラシステムの位相差AF方式の自動焦点調節装置では、交換レンズの2つの互いに異なる射出瞳領域を通過した被写体光束が形成する2つの像を、ラインセンサー対で受光して光電変換する。そして、その出力である像信号の相対位置変位を求めることにより、交換レンズの焦点はずれ量、いわゆるデフォーカス量を検出するという方式が一般的である。この場合、ラインセンサー対は被写体空間の特定領域の輝度分布のみを抽出するため、その領域に輝度分布を有しない被写体ではデフォーカス量を検出することができない。そこで、ラインセンサー対とそれに対応する焦点検出光学系を複数用意して、複数の被写体領域の輝度分布を抽出することによって、より多くの被写体に対して焦点検出を可能とする方法が提案されている。また、個々の焦点検出領域内において、ラインセンサー対が直交するように配置(以下、クロス位相差AF)する方法も提案されている。
【0003】
具体的に、図10においてクロス位相差AFの焦点検出光学系を説明する。この図では説明を簡単にするために、撮影画面上の中心のみの領域で焦点検出可能な構成であり、位相差AFの対となるラインセンサーは領域内において、撮影画面の垂直方向および水平方向に直交するように配置されている。よって、ラインセンサー対の総数は2対である。さらに、同一方向に複数のラインセンサー対を配置し、かつ複数のラインセンサー対の画素を1/2画素ずらして配置(以下、千鳥配列)とすることで検出精度を向上させる方法も提案されている。これは、第1に、複数のラインセンサー対の焦点検出結果を平均することで焦点検出の繰り返し誤差を軽減できる。第2に、ラインセンサーを構成する各画素内において、画素の中心は感度が高く、画素の端は低いという感度特性ムラがある。そのため、ラインセンサー上の被写体像が1画素範囲内の微小移動に対しても位相形状が変化し、焦点検出結果が変化するフェーズ・イン・アウトという現象を打ち消す(軽減する)ことができる。
【0004】
従来より、交換レンズ着脱の際に塵や埃等の空気中に浮遊するゴミがAFセンサーや焦点検出光学系の光路上にある主ミラーやサブミラーに付着し(以下、焦点検出系ゴミ)、焦点検出精度が著しく低下してしまうという課題があった。
【0005】
具体的には図11で示すように、縦軸にラインセンサー対の像信号出力、横軸にラインセンサー対の画素位置を取れば、焦点検出系ゴミによって、あるラインセンサー対の像信号出力が低下する。焦点検出系ゴミが焦点検出光学系に写り込んだ場合には、被写体のコントラストが全くない場合でも、偽のデフォーカス量が検出されてしまう。
【0006】
この課題に対して、特許文献1では、焦点検出系ゴミによって検出される偽のデフォーカス量は、撮影レンズのフォーカシングレンズをいくら駆動させても、偽のデフォーカス量が再び検出されることに着目している。つまり、この状態にあるとき焦点検出系ゴミが付着していると判定し、このラインセンサー対での焦点検出を禁止する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許2952215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の特許文献1に開示された従来技術では、次のような課題があった。
【0009】
第1に、カメラが実際にフォーカシングレンズを駆動させないと焦点検出系ゴミを検出できない。
【0010】
第2に、被写体がかなりの低コントラストもしくはノーコントラストの場合でないと焦点検出系ゴミを検出できないことがある。これは、被写体が高コントラストの場合には焦点検出系ゴミの影響が低下するためである。同様に、焦点検出系ゴミが写り込んでいる領域の画素の輝度分布が他の領域の画素より相対的に低い場合にも焦点検出系ゴミを検出できないことがある。これは、焦点検出系ゴミが写り込んでいる領域の画素の輝度分布が低い輝度分布の中に埋め込まれてしまうためである。
【0011】
第3に、図12で示すように、付着した位置によっては、焦点検出系ゴミの写り込みがラインセンサー対の片像だけに影響をおよぼすことがあり、この場合には焦点検出系ゴミが偽のデフォーカス量として検出できないことがある。
【0012】
第4に、移動する被写体に自動焦点調節を追従させるモードでは、焦点検出系ゴミによって検出される偽のデフォーカス量と被写体が移動することによって新たに発生したデフォーカス量との区別がつかないときがあり、焦点検出系ゴミを誤検出する可能性があった。
【0013】
(発明の目的)
本発明の目的は、焦点検出系ゴミを正確に検出することができる撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の撮像装置は、撮影画面内に設定された焦点検出領域における焦点状態を検出する焦点検出手段と、前記焦点検出手段より前記焦点検出領域での撮影画像を取得し、該撮影画像のコントラストを検出する第1のコントラスト検出手段と、焦点検出以外のために撮影画像を得る撮像手段と、前記撮像手段より前記焦点検出領域に対応する領域での撮影画像を取得し、該撮影画像のコントラストを検出する第2のコントラスト検出手段と、前記第1のコントラスト検出手段により検出された第1のコントラストと前記第2のコントラスト検出手段により検出された第2のコントラストを比較し、前記第1のコントラストが第2のコントラストと異なることによって、焦点検出系ゴミを検出する焦点検出系ゴミ検出手段とを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、焦点検出系ゴミを正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1である交換レンズ式デジタルカメラのブロック図である。
【図2】実施例1の焦点検出領域を示す図である。
【図3】実施例1の測光領域を示す図である。
【図4】実施例1の自動焦点調節および撮影シーケンスを説明するフローチャートである。
【図5】実施例1の焦点検出自動選択を説明するフローチャートである。
【図6】実施例1の焦点検出任意選択を説明するフローチャートである。
【図7】実施例2の焦点検出系ゴミ検出モードでの動作を説明するフローチャートである。
【図8】実施例2の焦点検出系ゴミ検出モード設定画面を示す図である。
【図9】実施例2の撮像系ゴミデータ取得モード設定画面およびホワイトバランス設定モード設定画面を示す図である。
【図10】一般的な焦点検出光学系を説明するための図である。
【図11】ラインセンサー対に焦点検出系ゴミが付着した場合の像信号出力を示す図である。
【図12】ラインセンサー対の片像に焦点検出系ゴミが写り込んだ場合の像信号出力を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態は、以下の実施例1および2に記載される通りである。
【実施例1】
【0018】
図1は本発明に係る撮像装置の一例である交換レンズ式デジタルカメラの構成を示すブロック図である。図1において、1はレンズMPU(マイクロプロセッシングユニット)であり、交換可能な撮影レンズ100に関わる制御を行う。2は撮影レンズ100のフォーカシングレンズ3を駆動するためのレンズ駆動ユニット、4は絞り5を駆動するための絞り駆動ユニットである。
【0019】
前記レンズMPU1、レンズ駆動ユニット2、絞り駆動ユニット4によって撮影レンズ100は構成される。また、撮影レンズ100は、図中の点線で示すようにマウント6を介して接続され、カメラ本体110と着脱可能となっている。
【0020】
7はカメラMPUであり、カメラ本体110に関わる制御を行う。8はミラー駆動ユニットであり、撮影時に光軸上に配置されたメインミラー9およびサブミラー10を退避させる。11はデフォーカス量検出ユニットである。自動焦点調節に必要となる焦点はずれ量であるデフォーカス量は、デフォーカス量検出ユニット11からの出力によって計算される。
【0021】
本実施例1でのデフォーカス量検出ユニット11は、図2(A)に示すように、1つのライセンサー対が対応するエリアを矩形で示すと、撮影画面内に中心を含む5つの焦点検出領域12が設定され、この5点で焦点状態を検出可能である。1つの焦点検出領域12内においては、撮影画面の垂直方向および水平方向それぞれに千鳥配列として2ラインセンサー対ずつ配置されている。すなわち、撮影画面内のラインセンサー対の総数は5×2×2=20である。また、1対のラインセンサーの画素数は100×2=200画素であり、デフォーカス量検出ユニット11の総画素数はモノクロで4000画素である。カメラMPU7およびデフォーカス量検出ユニット11が焦点検出手段を構成する。
【0022】
13は撮影ユニットであり、撮像素子21からRGBで4800×3200=約1500万画素の撮影画像を生成する。撮影ユニット13は、撮影のために撮影画面を得る撮像手段を構成する。14は測光ユニットであり、不図示の測光光学系によって導かれた被写体像を、図3に示すように、RGBで640×480=約30万画素の測光領域15に撮影画像を生成し、被写体色を加味した自動露出を決定する。測光ユニット14は、測光のために撮影画像を得る撮像手段を構成する。16は不揮発性メモリのEEPROMであり、カメラの諸設定を記憶する。17は記録ユニットであり、着脱可能なメモリカードへ撮影画像をファイルとして記録する。
【0023】
18はカメラの諸設定(焦点検出モード、シャッター速度、絞り数値、ISO感度等)を設定するためのダイヤル/SWユニットである。19は表示ユニットであり、カメラの諸設定や、撮影画像を表示パネル20に表示させる。
【0024】
メインSWをオンすることでカメラMPU7およびレンズMPU1が起動され、カメラシステムは機能する。SW1はレリーズボタンの第1ストローク操作(半押し)によりオンするスイッチ、SW2はレリーズボタンの第2ストローク操作(全押し)によりオンするスイッチである。SW1がオンされると自動焦点調節装置が動作する。
【0025】
20は表示パネル、21は撮像素子、22はピント板、23はペンタプリズム、24は光学ファインダである。
【0026】
より具体的に図4から図6のフローチャートを用いて説明する。
【0027】
SW1がオンされると、図4のステップ101へ進み、自動焦点調節装置および撮影シーケンスの処理が開始される。まず、ステップ102でSW1がオンされているかを判定する。SW1がオンでなければステップ113へ進み、自動焦点調節を終了する。また、SW1がオンであればステップ103へ進み、自動露出制御およびコントラスト計算を行う。図3に示すように測光ユニット14は、RGBで640×480=約30万画素の光電変換素子からなり、測光用の撮影画像を生成し、被写体色を加味した自動露出を決定する。このとき同時に、測光ユニット14の撮影画像から、図2(A)に示すように、撮影画面上の個々のライセンサー対が対応する焦点検出領域12に相当する画素のコントラストを計算する(以下、測光コントラスト=第2のコントラストとする)。ステップ103を実行するカメラMPU7は第2のコントラスト検出手段を構成する。
【0028】
続いて、ステップ104へ進み、カメラの焦点検出モードの設定が、「自動選択」か、「任意選択」かによって、ステップ105もしくはステップ106のいずれかへ進む。「自動選択」は図2(A)の5つの焦点検出領域12から最適な領域を自動的に選択するもの、「任意選択」は、ユーザが操作スイッチによって焦点検出領域12のうちの任意の1つを選択するものである。ステップ105およびステップ106についての詳細は後述する。
【0029】
ステップ105もしくはステップ106が終了すると、焦点検出が成功すればデフォーカス量が計算されているので、そのデフォーカス量が合焦とみなせる閾値(いわゆる合焦デフォーカス幅)以下か否かをステップ107で判定する。合焦でなければステップ108へ進み、デフォーカス量に応じたレンズ駆動を行い、以下合焦になるまでステップ102からステップ108までの処理を繰り返す。また、焦点検出に失敗したときも合焦でないと判定され、そのときのレンズ駆動量は0とし、すなわちレンズ駆動せずに、合焦になるまでステップ102からステップ108までの処理を繰り返す。
【0030】
ステップ107で合焦と判定された場合には、ステップ109へ進み、再びSW1がオンされているかを判定する。SW1がオンでなければステップ113へ進み、自動焦点調節を終了する。また、SW1がオンであればステップ110へ進み、SW2がオンされているかを判定する。
【0031】
SW2がオンであればステップ111で撮影動作およびコントラスト計算を行う。撮影ユニット13は、RGBで4800×3200=約1500万画素の撮像素子21から撮影画像を生成する。記録ユニット17に装着された着脱可能なメモリカードへ撮影画像をファイルとして記録する。このとき同時に、撮影ユニット13の撮影画像から、図2(A)に示すように、撮影画面上の個々のライセンサー対が対応する焦点検出領域12に相当する画素のコントラストを計算する(以下、撮影コントラスト=第2のコントラストとする)。ステップ111を実行するカメラMPU7は第2のコントラスト検出手段を構成する。
【0032】
続いて、ステップ112の焦点検出系ゴミの検出へ進み、以下SW1がオンでなくなるまでステップ109からステップ112までの処理を繰り返す。
【0033】
ステップ112の焦点検出系ゴミ検出の説明をする前に、先述したステップ105の「焦点検出自動選択」およびステップ106の「焦点検出任意選択」をそれぞれ図5および図6のフローチャートを用いて説明する。
【0034】
まず、図5のステップ201で「焦点検出自動選択」の処理が開始されると、ステップ202で、デフォーカス量検出ユニット11の全てのラインセンサー対に対して蓄積制御を開始する。ステップ202で蓄積制御が開始されると、ステップ203へ進み、蓄積開始から所定時間のタイムアウト時間が経過されていないか判定を行う。本実施例1でのラインセンサー対はAGC(オートゲインコントロール)回路により、ラインセンサーの画素間で焦点検出に十分な被写体コントラストが形成されるか、いずれかの画素で電荷が飽和する前までに蓄積を停止させる。しかしながら、被写体のコントラストが小さく、かつ被写体輝度が低い場合には、いつまでも蓄積が完了しない。よって、実用上応答性が問題とならないタイムアウト時間を設け、この時間が経過した場合には、蓄積を強制終了してステップ209へ進む。
【0035】
一方、タイムアウト時間が経過していなければ、ステップ204へ進み、いずれかのラインセンサー対の蓄積が完了していないか判定を行う。蓄積が完了していなければステップ203へ戻り、蓄積が完了していればステップ205へ進み、該当するラインセンサー対の像信号を読み出す。続いて、ステップ206へ進み、像信号の相対位置変位量を相関演算によって求め、その相対位置変位量に適当な演算をすることでデフォーカス量を検出する。さらに、ステップ207へ進み、信頼判定およびコントラスト計算を行う。信頼性判定は、ラインセンサー対間での被写体像の一致度が所定の閾値以上か否かで判定する。焦点検出系にゴースト光が入射した場合などは被写体像が大きく崩れ、焦点検出精度が著しく低下してしまう。よって、被写体像の一致度が所定の閾値未満の場合には、たとえデフォーカス量が検出されても焦点検出不能とする。続いて、ラインセンサー対のコントラストを計算する(以下、焦点検出コントラスト=第1のコントラスト)。ステップ207を実行するカメラMPU7は第1のコントラスト検出手段を構成する。被写体が低コントラストあるいはノーコントラストの場合には焦点検出精度が著しく低下してしまうため、コントラストが所定の閾値未満の場合も焦点検出不能とする。また、焦点検出系ゴミが検出されているラインセンサー対も焦点検出不能とする。
【0036】
ステップ208へ進み、全ラインセンサー対の蓄積が完了したかを判定し、蓄積が完了していなければ、ステップ203からステップ208までの処理を繰り返す。一方、蓄積が完了していれば、ステップ209へ進み、5つの焦点検出領域12ごとに、どのラインセンサー対で算出されたデフォーカス量を用いてその焦点検出領域12での最終的なデフォーカス量にするか選択する。具体的には、焦点検出不能とならない限り、水平方向同士、垂直方向同士の2組のラインセンサー対はデフォーカス量を平均化し、水平方向のデフォーカス量および垂直方向のデフォーカス量をそれぞれ求める。次に、より至近方向のデフォーカス量が検出された方向のデフォーカス量を最終的なデフォーカス量とする。これは、背景などの影響(遠近競合)を最も受けないデフォーカス量がより至近方向のデフォーカス量となるからである。
【0037】
ステップ209で、5つの焦点検出領域12ごとのデフォーカス量が決定されれば、ステップ210へ進み、最終的な焦点検出領域の選択が行われる。本実施例1での選択方法は、最至近にある被写体が主被写体である可能性が高いという経験則により、焦点検出不能とならなかった焦点検出領域の中から、より至近方向のデフォーカス量を示す焦点検出領域を選択する。例えば図2(B)の作例では、人物は背景のビルより手前にあり、人物の顔はお腹より手前にある。よって、撮影レンズの距離環がどの位置にあっても、中心の焦点検出領域で検出されるデフォーカス量は、下や左の焦点検出領域と比較して、より至近のデフォーカス量が検出される。一方、上や右の焦点検出領域ではコントラストが無いため焦点検出不能となる。よって、中心の焦点検出領域のデフォーカス量が最終的なデフォーカス量となる。
【0038】
このようにして「焦点検出自動選択」のデフォーカス量が決定され、ステップ211でステップ107へ戻る。
【0039】
次に、ステップ106の「焦点検出任意選択」を図6のフローチャートを用いて説明する。多くの処理は、図5の「焦点検出自動選択」と同じであるため、相違点だけ説明する。第1にステップ302での蓄積設定で、デフォーカス量検出ユニット11のラインセンサー対のうち、ユーザが操作スイッチによって選択した焦点検出領域内に含まれるランセンサー対に対してのみ蓄積制御を開始する。第2に、ユーザが操作スイッチによって選択した焦点検出領域12は1つであるため、図5のステップ210の焦点検出領域選択に相当する処理が不要となる。
【0040】
以上が、自動焦点調節装置および撮影シーケンスの処理であるが、先述したステップ112の焦点検出系ゴミ検出について説明する。ステップ112の時点で、測光コントラスト、焦点検出コントラスト、撮影コントラストがそれぞれ計算されている。
【0041】
例えば図2(B)の作例では、先述したとおり、上や右の焦点検出領域ではコントラストが無いため、通常これら3つのコントラストはそれぞれ所定の閾値より小さくなる。よって、測光コントラストもしくは撮影コントラストのいずれかが所定の閾値より小さいにも関わらず、焦点検出コントラストが所定の閾値より大きい場合には、焦点検出系にゴミが付着していると検出、記憶し、次回以降の焦点検出ではそのラインセンサー対(焦点検出領域)での焦点検出は不能とする。
【0042】
当然のことながら、焦点検出ゴミは撮影動作やエアブラシ等によるユーザの清掃によって移動する可能性がある。よって、一度、焦点検出ゴミが検出されたラインセンサー対においても、測光コントラストもしくは撮影コントラストのいずれかが所定の閾値より小さく、かつ焦点検出コントラストも所定の閾値より小さい場合には、焦点検出ゴミがなくなったと記憶し、不能としていたそのラインセンサー対での焦点検出を再び可能とする。
【0043】
ここで、測光コントラストもしくは撮影コントラストの「いずれか」としているのは、測光ユニット14や撮影ユニット13自身もゴミが付着する可能性があるためである。どちらかのユニットのコントラストがゴミの付着により所定の閾値を越えても、残りのユニットで焦点検出系ゴミを正しく検出できる。
【0044】
実施例1では、撮影画像の特定領域において、焦点検出以外のために撮影画像を得る複数の撮像手段(測光ユニット14、撮影ユニット13)のコントラストの有無を比較することによって、カメラが実際にフォーカシングレンズを駆動させなくても焦点検出系ゴミを正確に検出できる。また、焦点検出系ゴミの写り込みがラインセンサー対の片像だけに影響をおよぼしても、焦点検出系ゴミを正確に検出できる。さらには、被写体が移動しているか否かに関わらず、焦点検出系ゴミを正確に検出できる。
【0045】
また、複数のデフォーカス量検出手段の中から、焦点検出系ゴミが検出されたラインセンサー対の焦点検出結果を用いた焦点調節動作を禁止とすることで、残っているラインセンサー対を用いて正確な焦点検出ができる。
【0046】
また、一度、焦点検出ゴミが検出されたラインセンサー対においても、焦点検出ゴミがなくなれば、不能としていたラインセンサー対での焦点検出を再び可能とすることで、より正確な焦点検出ができる。
【0047】
(変形例)
実施例1では撮影画面内に複数設定された焦点検出領域において、複数の撮像手段(測光手段、焦点検出手段、撮影手段)におけるコントラストの有無によって焦点検出系ゴミを検出しているが、例えば複数の撮像手段の撮影画像を解析し、複数の撮像手段における撮影画像のコントラストの類似性を比較することで焦点検出系ゴミを検出しても、本発明は同様に適用可能である。
【実施例2】
【0048】
実施例1ではユーザが通常の撮影動作を行ったときに、撮影画像の特定領域においてコントラストが無いことを判定し、そのときに焦点検出系ゴミを検出している。
【0049】
実施例2では、ユーザ(撮影者)が意図的にコントラストの無い画像(青空、無地の看板、グレーの反射板等)を撮影することによって焦点検出系ゴミを検出する。
【0050】
より具体的に図7のフローチャートを用いて説明する。ユーザが操作スイッチを操作することで、表示ユニット19は図8に示すように「焦点検出系ゴミ検出モード」へ入り、ユーザがOKボタンを押すことで、ステップ401へ進む。続いて、ステップ402で自動露出制御およびコントラスト計算、ステップ403で焦点検出自動選択、ステップ404で撮影動作およびコントラスト計算、ステップ405で焦点検出系ゴミ検出を行って終了する。ステップ402は図4のステップ103、ステップ403は図4のステップ105、ステップ404は図4のステップ111、ステップ405は図4のステップ112と同様の処理である。
【0051】
実施例2では、ユーザが意図的にコントラストの無い画像を撮影する機会に合わせて、焦点検出系ゴミを検出する。実施例1では、撮影動作を行っているときに、ラインセンサー対に対応する領域のコントラストの有無を判定しているため、ある1回の撮影動作で焦点検出系ゴミを検出できるか否かに確実性はない。これに対して、実施例2では、全てのラインセンサー対に対応する撮影画像の特定領域において、コントラストがないことが予め期待できるため、より確実に焦点検出系ゴミを検出することができる。
【0052】
(変形例)
実施例2では、焦点検出系ゴミ検出するための専用のモードを設けたが、より一般的にコントラストの無い画像撮影する別の機能と兼用してもよい。具体的には、図9(A)に示すような撮像系ゴミデータ取得モードや、図9(B)に示すようなホワイトバランス設定モードでもユーザはコントラストの無い画像撮影を意図的に撮影するので、これらの機能を動作させるときに焦点検出系ゴミを検出しても、本発明は同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0053】
7 カメラMPU
11 デフォーカス量検出ユニット
13 撮影ユニット
14 測光ユニット
18 ダイヤル/SWユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点検出光学系のゴミを検出する機能を有する撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的な交換レンズ式一眼レフカメラシステムの位相差AF方式の自動焦点調節装置では、交換レンズの2つの互いに異なる射出瞳領域を通過した被写体光束が形成する2つの像を、ラインセンサー対で受光して光電変換する。そして、その出力である像信号の相対位置変位を求めることにより、交換レンズの焦点はずれ量、いわゆるデフォーカス量を検出するという方式が一般的である。この場合、ラインセンサー対は被写体空間の特定領域の輝度分布のみを抽出するため、その領域に輝度分布を有しない被写体ではデフォーカス量を検出することができない。そこで、ラインセンサー対とそれに対応する焦点検出光学系を複数用意して、複数の被写体領域の輝度分布を抽出することによって、より多くの被写体に対して焦点検出を可能とする方法が提案されている。また、個々の焦点検出領域内において、ラインセンサー対が直交するように配置(以下、クロス位相差AF)する方法も提案されている。
【0003】
具体的に、図10においてクロス位相差AFの焦点検出光学系を説明する。この図では説明を簡単にするために、撮影画面上の中心のみの領域で焦点検出可能な構成であり、位相差AFの対となるラインセンサーは領域内において、撮影画面の垂直方向および水平方向に直交するように配置されている。よって、ラインセンサー対の総数は2対である。さらに、同一方向に複数のラインセンサー対を配置し、かつ複数のラインセンサー対の画素を1/2画素ずらして配置(以下、千鳥配列)とすることで検出精度を向上させる方法も提案されている。これは、第1に、複数のラインセンサー対の焦点検出結果を平均することで焦点検出の繰り返し誤差を軽減できる。第2に、ラインセンサーを構成する各画素内において、画素の中心は感度が高く、画素の端は低いという感度特性ムラがある。そのため、ラインセンサー上の被写体像が1画素範囲内の微小移動に対しても位相形状が変化し、焦点検出結果が変化するフェーズ・イン・アウトという現象を打ち消す(軽減する)ことができる。
【0004】
従来より、交換レンズ着脱の際に塵や埃等の空気中に浮遊するゴミがAFセンサーや焦点検出光学系の光路上にある主ミラーやサブミラーに付着し(以下、焦点検出系ゴミ)、焦点検出精度が著しく低下してしまうという課題があった。
【0005】
具体的には図11で示すように、縦軸にラインセンサー対の像信号出力、横軸にラインセンサー対の画素位置を取れば、焦点検出系ゴミによって、あるラインセンサー対の像信号出力が低下する。焦点検出系ゴミが焦点検出光学系に写り込んだ場合には、被写体のコントラストが全くない場合でも、偽のデフォーカス量が検出されてしまう。
【0006】
この課題に対して、特許文献1では、焦点検出系ゴミによって検出される偽のデフォーカス量は、撮影レンズのフォーカシングレンズをいくら駆動させても、偽のデフォーカス量が再び検出されることに着目している。つまり、この状態にあるとき焦点検出系ゴミが付着していると判定し、このラインセンサー対での焦点検出を禁止する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許2952215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の特許文献1に開示された従来技術では、次のような課題があった。
【0009】
第1に、カメラが実際にフォーカシングレンズを駆動させないと焦点検出系ゴミを検出できない。
【0010】
第2に、被写体がかなりの低コントラストもしくはノーコントラストの場合でないと焦点検出系ゴミを検出できないことがある。これは、被写体が高コントラストの場合には焦点検出系ゴミの影響が低下するためである。同様に、焦点検出系ゴミが写り込んでいる領域の画素の輝度分布が他の領域の画素より相対的に低い場合にも焦点検出系ゴミを検出できないことがある。これは、焦点検出系ゴミが写り込んでいる領域の画素の輝度分布が低い輝度分布の中に埋め込まれてしまうためである。
【0011】
第3に、図12で示すように、付着した位置によっては、焦点検出系ゴミの写り込みがラインセンサー対の片像だけに影響をおよぼすことがあり、この場合には焦点検出系ゴミが偽のデフォーカス量として検出できないことがある。
【0012】
第4に、移動する被写体に自動焦点調節を追従させるモードでは、焦点検出系ゴミによって検出される偽のデフォーカス量と被写体が移動することによって新たに発生したデフォーカス量との区別がつかないときがあり、焦点検出系ゴミを誤検出する可能性があった。
【0013】
(発明の目的)
本発明の目的は、焦点検出系ゴミを正確に検出することができる撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の撮像装置は、撮影画面内に設定された焦点検出領域における焦点状態を検出する焦点検出手段と、前記焦点検出手段より前記焦点検出領域での撮影画像を取得し、該撮影画像のコントラストを検出する第1のコントラスト検出手段と、焦点検出以外のために撮影画像を得る撮像手段と、前記撮像手段より前記焦点検出領域に対応する領域での撮影画像を取得し、該撮影画像のコントラストを検出する第2のコントラスト検出手段と、前記第1のコントラスト検出手段により検出された第1のコントラストと前記第2のコントラスト検出手段により検出された第2のコントラストを比較し、前記第1のコントラストが第2のコントラストと異なることによって、焦点検出系ゴミを検出する焦点検出系ゴミ検出手段とを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、焦点検出系ゴミを正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1である交換レンズ式デジタルカメラのブロック図である。
【図2】実施例1の焦点検出領域を示す図である。
【図3】実施例1の測光領域を示す図である。
【図4】実施例1の自動焦点調節および撮影シーケンスを説明するフローチャートである。
【図5】実施例1の焦点検出自動選択を説明するフローチャートである。
【図6】実施例1の焦点検出任意選択を説明するフローチャートである。
【図7】実施例2の焦点検出系ゴミ検出モードでの動作を説明するフローチャートである。
【図8】実施例2の焦点検出系ゴミ検出モード設定画面を示す図である。
【図9】実施例2の撮像系ゴミデータ取得モード設定画面およびホワイトバランス設定モード設定画面を示す図である。
【図10】一般的な焦点検出光学系を説明するための図である。
【図11】ラインセンサー対に焦点検出系ゴミが付着した場合の像信号出力を示す図である。
【図12】ラインセンサー対の片像に焦点検出系ゴミが写り込んだ場合の像信号出力を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態は、以下の実施例1および2に記載される通りである。
【実施例1】
【0018】
図1は本発明に係る撮像装置の一例である交換レンズ式デジタルカメラの構成を示すブロック図である。図1において、1はレンズMPU(マイクロプロセッシングユニット)であり、交換可能な撮影レンズ100に関わる制御を行う。2は撮影レンズ100のフォーカシングレンズ3を駆動するためのレンズ駆動ユニット、4は絞り5を駆動するための絞り駆動ユニットである。
【0019】
前記レンズMPU1、レンズ駆動ユニット2、絞り駆動ユニット4によって撮影レンズ100は構成される。また、撮影レンズ100は、図中の点線で示すようにマウント6を介して接続され、カメラ本体110と着脱可能となっている。
【0020】
7はカメラMPUであり、カメラ本体110に関わる制御を行う。8はミラー駆動ユニットであり、撮影時に光軸上に配置されたメインミラー9およびサブミラー10を退避させる。11はデフォーカス量検出ユニットである。自動焦点調節に必要となる焦点はずれ量であるデフォーカス量は、デフォーカス量検出ユニット11からの出力によって計算される。
【0021】
本実施例1でのデフォーカス量検出ユニット11は、図2(A)に示すように、1つのライセンサー対が対応するエリアを矩形で示すと、撮影画面内に中心を含む5つの焦点検出領域12が設定され、この5点で焦点状態を検出可能である。1つの焦点検出領域12内においては、撮影画面の垂直方向および水平方向それぞれに千鳥配列として2ラインセンサー対ずつ配置されている。すなわち、撮影画面内のラインセンサー対の総数は5×2×2=20である。また、1対のラインセンサーの画素数は100×2=200画素であり、デフォーカス量検出ユニット11の総画素数はモノクロで4000画素である。カメラMPU7およびデフォーカス量検出ユニット11が焦点検出手段を構成する。
【0022】
13は撮影ユニットであり、撮像素子21からRGBで4800×3200=約1500万画素の撮影画像を生成する。撮影ユニット13は、撮影のために撮影画面を得る撮像手段を構成する。14は測光ユニットであり、不図示の測光光学系によって導かれた被写体像を、図3に示すように、RGBで640×480=約30万画素の測光領域15に撮影画像を生成し、被写体色を加味した自動露出を決定する。測光ユニット14は、測光のために撮影画像を得る撮像手段を構成する。16は不揮発性メモリのEEPROMであり、カメラの諸設定を記憶する。17は記録ユニットであり、着脱可能なメモリカードへ撮影画像をファイルとして記録する。
【0023】
18はカメラの諸設定(焦点検出モード、シャッター速度、絞り数値、ISO感度等)を設定するためのダイヤル/SWユニットである。19は表示ユニットであり、カメラの諸設定や、撮影画像を表示パネル20に表示させる。
【0024】
メインSWをオンすることでカメラMPU7およびレンズMPU1が起動され、カメラシステムは機能する。SW1はレリーズボタンの第1ストローク操作(半押し)によりオンするスイッチ、SW2はレリーズボタンの第2ストローク操作(全押し)によりオンするスイッチである。SW1がオンされると自動焦点調節装置が動作する。
【0025】
20は表示パネル、21は撮像素子、22はピント板、23はペンタプリズム、24は光学ファインダである。
【0026】
より具体的に図4から図6のフローチャートを用いて説明する。
【0027】
SW1がオンされると、図4のステップ101へ進み、自動焦点調節装置および撮影シーケンスの処理が開始される。まず、ステップ102でSW1がオンされているかを判定する。SW1がオンでなければステップ113へ進み、自動焦点調節を終了する。また、SW1がオンであればステップ103へ進み、自動露出制御およびコントラスト計算を行う。図3に示すように測光ユニット14は、RGBで640×480=約30万画素の光電変換素子からなり、測光用の撮影画像を生成し、被写体色を加味した自動露出を決定する。このとき同時に、測光ユニット14の撮影画像から、図2(A)に示すように、撮影画面上の個々のライセンサー対が対応する焦点検出領域12に相当する画素のコントラストを計算する(以下、測光コントラスト=第2のコントラストとする)。ステップ103を実行するカメラMPU7は第2のコントラスト検出手段を構成する。
【0028】
続いて、ステップ104へ進み、カメラの焦点検出モードの設定が、「自動選択」か、「任意選択」かによって、ステップ105もしくはステップ106のいずれかへ進む。「自動選択」は図2(A)の5つの焦点検出領域12から最適な領域を自動的に選択するもの、「任意選択」は、ユーザが操作スイッチによって焦点検出領域12のうちの任意の1つを選択するものである。ステップ105およびステップ106についての詳細は後述する。
【0029】
ステップ105もしくはステップ106が終了すると、焦点検出が成功すればデフォーカス量が計算されているので、そのデフォーカス量が合焦とみなせる閾値(いわゆる合焦デフォーカス幅)以下か否かをステップ107で判定する。合焦でなければステップ108へ進み、デフォーカス量に応じたレンズ駆動を行い、以下合焦になるまでステップ102からステップ108までの処理を繰り返す。また、焦点検出に失敗したときも合焦でないと判定され、そのときのレンズ駆動量は0とし、すなわちレンズ駆動せずに、合焦になるまでステップ102からステップ108までの処理を繰り返す。
【0030】
ステップ107で合焦と判定された場合には、ステップ109へ進み、再びSW1がオンされているかを判定する。SW1がオンでなければステップ113へ進み、自動焦点調節を終了する。また、SW1がオンであればステップ110へ進み、SW2がオンされているかを判定する。
【0031】
SW2がオンであればステップ111で撮影動作およびコントラスト計算を行う。撮影ユニット13は、RGBで4800×3200=約1500万画素の撮像素子21から撮影画像を生成する。記録ユニット17に装着された着脱可能なメモリカードへ撮影画像をファイルとして記録する。このとき同時に、撮影ユニット13の撮影画像から、図2(A)に示すように、撮影画面上の個々のライセンサー対が対応する焦点検出領域12に相当する画素のコントラストを計算する(以下、撮影コントラスト=第2のコントラストとする)。ステップ111を実行するカメラMPU7は第2のコントラスト検出手段を構成する。
【0032】
続いて、ステップ112の焦点検出系ゴミの検出へ進み、以下SW1がオンでなくなるまでステップ109からステップ112までの処理を繰り返す。
【0033】
ステップ112の焦点検出系ゴミ検出の説明をする前に、先述したステップ105の「焦点検出自動選択」およびステップ106の「焦点検出任意選択」をそれぞれ図5および図6のフローチャートを用いて説明する。
【0034】
まず、図5のステップ201で「焦点検出自動選択」の処理が開始されると、ステップ202で、デフォーカス量検出ユニット11の全てのラインセンサー対に対して蓄積制御を開始する。ステップ202で蓄積制御が開始されると、ステップ203へ進み、蓄積開始から所定時間のタイムアウト時間が経過されていないか判定を行う。本実施例1でのラインセンサー対はAGC(オートゲインコントロール)回路により、ラインセンサーの画素間で焦点検出に十分な被写体コントラストが形成されるか、いずれかの画素で電荷が飽和する前までに蓄積を停止させる。しかしながら、被写体のコントラストが小さく、かつ被写体輝度が低い場合には、いつまでも蓄積が完了しない。よって、実用上応答性が問題とならないタイムアウト時間を設け、この時間が経過した場合には、蓄積を強制終了してステップ209へ進む。
【0035】
一方、タイムアウト時間が経過していなければ、ステップ204へ進み、いずれかのラインセンサー対の蓄積が完了していないか判定を行う。蓄積が完了していなければステップ203へ戻り、蓄積が完了していればステップ205へ進み、該当するラインセンサー対の像信号を読み出す。続いて、ステップ206へ進み、像信号の相対位置変位量を相関演算によって求め、その相対位置変位量に適当な演算をすることでデフォーカス量を検出する。さらに、ステップ207へ進み、信頼判定およびコントラスト計算を行う。信頼性判定は、ラインセンサー対間での被写体像の一致度が所定の閾値以上か否かで判定する。焦点検出系にゴースト光が入射した場合などは被写体像が大きく崩れ、焦点検出精度が著しく低下してしまう。よって、被写体像の一致度が所定の閾値未満の場合には、たとえデフォーカス量が検出されても焦点検出不能とする。続いて、ラインセンサー対のコントラストを計算する(以下、焦点検出コントラスト=第1のコントラスト)。ステップ207を実行するカメラMPU7は第1のコントラスト検出手段を構成する。被写体が低コントラストあるいはノーコントラストの場合には焦点検出精度が著しく低下してしまうため、コントラストが所定の閾値未満の場合も焦点検出不能とする。また、焦点検出系ゴミが検出されているラインセンサー対も焦点検出不能とする。
【0036】
ステップ208へ進み、全ラインセンサー対の蓄積が完了したかを判定し、蓄積が完了していなければ、ステップ203からステップ208までの処理を繰り返す。一方、蓄積が完了していれば、ステップ209へ進み、5つの焦点検出領域12ごとに、どのラインセンサー対で算出されたデフォーカス量を用いてその焦点検出領域12での最終的なデフォーカス量にするか選択する。具体的には、焦点検出不能とならない限り、水平方向同士、垂直方向同士の2組のラインセンサー対はデフォーカス量を平均化し、水平方向のデフォーカス量および垂直方向のデフォーカス量をそれぞれ求める。次に、より至近方向のデフォーカス量が検出された方向のデフォーカス量を最終的なデフォーカス量とする。これは、背景などの影響(遠近競合)を最も受けないデフォーカス量がより至近方向のデフォーカス量となるからである。
【0037】
ステップ209で、5つの焦点検出領域12ごとのデフォーカス量が決定されれば、ステップ210へ進み、最終的な焦点検出領域の選択が行われる。本実施例1での選択方法は、最至近にある被写体が主被写体である可能性が高いという経験則により、焦点検出不能とならなかった焦点検出領域の中から、より至近方向のデフォーカス量を示す焦点検出領域を選択する。例えば図2(B)の作例では、人物は背景のビルより手前にあり、人物の顔はお腹より手前にある。よって、撮影レンズの距離環がどの位置にあっても、中心の焦点検出領域で検出されるデフォーカス量は、下や左の焦点検出領域と比較して、より至近のデフォーカス量が検出される。一方、上や右の焦点検出領域ではコントラストが無いため焦点検出不能となる。よって、中心の焦点検出領域のデフォーカス量が最終的なデフォーカス量となる。
【0038】
このようにして「焦点検出自動選択」のデフォーカス量が決定され、ステップ211でステップ107へ戻る。
【0039】
次に、ステップ106の「焦点検出任意選択」を図6のフローチャートを用いて説明する。多くの処理は、図5の「焦点検出自動選択」と同じであるため、相違点だけ説明する。第1にステップ302での蓄積設定で、デフォーカス量検出ユニット11のラインセンサー対のうち、ユーザが操作スイッチによって選択した焦点検出領域内に含まれるランセンサー対に対してのみ蓄積制御を開始する。第2に、ユーザが操作スイッチによって選択した焦点検出領域12は1つであるため、図5のステップ210の焦点検出領域選択に相当する処理が不要となる。
【0040】
以上が、自動焦点調節装置および撮影シーケンスの処理であるが、先述したステップ112の焦点検出系ゴミ検出について説明する。ステップ112の時点で、測光コントラスト、焦点検出コントラスト、撮影コントラストがそれぞれ計算されている。
【0041】
例えば図2(B)の作例では、先述したとおり、上や右の焦点検出領域ではコントラストが無いため、通常これら3つのコントラストはそれぞれ所定の閾値より小さくなる。よって、測光コントラストもしくは撮影コントラストのいずれかが所定の閾値より小さいにも関わらず、焦点検出コントラストが所定の閾値より大きい場合には、焦点検出系にゴミが付着していると検出、記憶し、次回以降の焦点検出ではそのラインセンサー対(焦点検出領域)での焦点検出は不能とする。
【0042】
当然のことながら、焦点検出ゴミは撮影動作やエアブラシ等によるユーザの清掃によって移動する可能性がある。よって、一度、焦点検出ゴミが検出されたラインセンサー対においても、測光コントラストもしくは撮影コントラストのいずれかが所定の閾値より小さく、かつ焦点検出コントラストも所定の閾値より小さい場合には、焦点検出ゴミがなくなったと記憶し、不能としていたそのラインセンサー対での焦点検出を再び可能とする。
【0043】
ここで、測光コントラストもしくは撮影コントラストの「いずれか」としているのは、測光ユニット14や撮影ユニット13自身もゴミが付着する可能性があるためである。どちらかのユニットのコントラストがゴミの付着により所定の閾値を越えても、残りのユニットで焦点検出系ゴミを正しく検出できる。
【0044】
実施例1では、撮影画像の特定領域において、焦点検出以外のために撮影画像を得る複数の撮像手段(測光ユニット14、撮影ユニット13)のコントラストの有無を比較することによって、カメラが実際にフォーカシングレンズを駆動させなくても焦点検出系ゴミを正確に検出できる。また、焦点検出系ゴミの写り込みがラインセンサー対の片像だけに影響をおよぼしても、焦点検出系ゴミを正確に検出できる。さらには、被写体が移動しているか否かに関わらず、焦点検出系ゴミを正確に検出できる。
【0045】
また、複数のデフォーカス量検出手段の中から、焦点検出系ゴミが検出されたラインセンサー対の焦点検出結果を用いた焦点調節動作を禁止とすることで、残っているラインセンサー対を用いて正確な焦点検出ができる。
【0046】
また、一度、焦点検出ゴミが検出されたラインセンサー対においても、焦点検出ゴミがなくなれば、不能としていたラインセンサー対での焦点検出を再び可能とすることで、より正確な焦点検出ができる。
【0047】
(変形例)
実施例1では撮影画面内に複数設定された焦点検出領域において、複数の撮像手段(測光手段、焦点検出手段、撮影手段)におけるコントラストの有無によって焦点検出系ゴミを検出しているが、例えば複数の撮像手段の撮影画像を解析し、複数の撮像手段における撮影画像のコントラストの類似性を比較することで焦点検出系ゴミを検出しても、本発明は同様に適用可能である。
【実施例2】
【0048】
実施例1ではユーザが通常の撮影動作を行ったときに、撮影画像の特定領域においてコントラストが無いことを判定し、そのときに焦点検出系ゴミを検出している。
【0049】
実施例2では、ユーザ(撮影者)が意図的にコントラストの無い画像(青空、無地の看板、グレーの反射板等)を撮影することによって焦点検出系ゴミを検出する。
【0050】
より具体的に図7のフローチャートを用いて説明する。ユーザが操作スイッチを操作することで、表示ユニット19は図8に示すように「焦点検出系ゴミ検出モード」へ入り、ユーザがOKボタンを押すことで、ステップ401へ進む。続いて、ステップ402で自動露出制御およびコントラスト計算、ステップ403で焦点検出自動選択、ステップ404で撮影動作およびコントラスト計算、ステップ405で焦点検出系ゴミ検出を行って終了する。ステップ402は図4のステップ103、ステップ403は図4のステップ105、ステップ404は図4のステップ111、ステップ405は図4のステップ112と同様の処理である。
【0051】
実施例2では、ユーザが意図的にコントラストの無い画像を撮影する機会に合わせて、焦点検出系ゴミを検出する。実施例1では、撮影動作を行っているときに、ラインセンサー対に対応する領域のコントラストの有無を判定しているため、ある1回の撮影動作で焦点検出系ゴミを検出できるか否かに確実性はない。これに対して、実施例2では、全てのラインセンサー対に対応する撮影画像の特定領域において、コントラストがないことが予め期待できるため、より確実に焦点検出系ゴミを検出することができる。
【0052】
(変形例)
実施例2では、焦点検出系ゴミ検出するための専用のモードを設けたが、より一般的にコントラストの無い画像撮影する別の機能と兼用してもよい。具体的には、図9(A)に示すような撮像系ゴミデータ取得モードや、図9(B)に示すようなホワイトバランス設定モードでもユーザはコントラストの無い画像撮影を意図的に撮影するので、これらの機能を動作させるときに焦点検出系ゴミを検出しても、本発明は同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0053】
7 カメラMPU
11 デフォーカス量検出ユニット
13 撮影ユニット
14 測光ユニット
18 ダイヤル/SWユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影画面内に設定された焦点検出領域における焦点状態を検出する焦点検出手段と、
前記焦点検出手段より前記焦点検出領域での撮影画像を取得し、該撮影画像のコントラストを検出する第1のコントラスト検出手段と、
焦点検出以外のために撮影画像を得る撮像手段と、
前記撮像手段より前記焦点検出領域に対応する領域での撮影画像を取得し、該撮影画像のコントラストを検出する第2のコントラスト検出手段と、
前記第1のコントラスト検出手段により検出された第1のコントラストと前記第2のコントラスト検出手段により検出された第2のコントラストを比較し、前記第1のコントラストが第2のコントラストと異なることによって、焦点検出系ゴミを検出する焦点検出系ゴミ検出手段とを有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記撮像手段として、測光のために撮影画像を得る測光手段を有し、
前記焦点検出系ゴミ検出手段は、前記焦点検出領域に対応する領域での前記測光手段の撮影画像のコントラストである前記第2のコントラストが所定の閾値より小さく、前記第1のコントラストが所定の閾値より大きいことによって、焦点検出系ゴミを検出することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記撮像手段として、撮影のために撮影画像を得る撮影手段を有し、
前記焦点検出系ゴミ検出手段は、前記焦点検出領域に対応する領域での前記撮影手段の撮影画像のコントラストである前記第2のコントラストが所定の閾値より小さく、前記第1のコントラストが所定の閾値より大きいことによって、焦点検出系ゴミを検出することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記焦点検出領域は、撮影画面内に複数設定され、
前記焦点検出系ゴミ検出手段は、前記複数の焦点検出領域ごとに焦点検出系ゴミを検出し、焦点検出系ゴミが検出された焦点検出領域での焦点検出結果を用いた焦点調節動作を禁止させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
撮影者がコントラストの無い撮影画像を撮影することによって焦点検出系ゴミを検出する焦点検出系ゴミ検出モードを設定する設定手段を有し、
前記撮像手段は、前記焦点検出系ゴミ検出モードにおいてコントラストの無い撮影画像を得ることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
撮影者がコントラストの無い撮影画像を撮影することによってホワイトバランス設定モードを設定する設定手段を有し、
前記撮像手段は、前記ホワイトバランス設定モードにおいてコントラストの無い撮影画像を得ることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
撮影者がコントラストの無い画像を撮影することによって撮像系に付着しているゴミを検出する撮像系ゴミデータ取得モードを設定する設定手段を有し、
前記撮像手段は、前記撮像系ゴミデータ取得モードにおいてコントラストの無い撮影画像を得ることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項1】
撮影画面内に設定された焦点検出領域における焦点状態を検出する焦点検出手段と、
前記焦点検出手段より前記焦点検出領域での撮影画像を取得し、該撮影画像のコントラストを検出する第1のコントラスト検出手段と、
焦点検出以外のために撮影画像を得る撮像手段と、
前記撮像手段より前記焦点検出領域に対応する領域での撮影画像を取得し、該撮影画像のコントラストを検出する第2のコントラスト検出手段と、
前記第1のコントラスト検出手段により検出された第1のコントラストと前記第2のコントラスト検出手段により検出された第2のコントラストを比較し、前記第1のコントラストが第2のコントラストと異なることによって、焦点検出系ゴミを検出する焦点検出系ゴミ検出手段とを有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記撮像手段として、測光のために撮影画像を得る測光手段を有し、
前記焦点検出系ゴミ検出手段は、前記焦点検出領域に対応する領域での前記測光手段の撮影画像のコントラストである前記第2のコントラストが所定の閾値より小さく、前記第1のコントラストが所定の閾値より大きいことによって、焦点検出系ゴミを検出することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記撮像手段として、撮影のために撮影画像を得る撮影手段を有し、
前記焦点検出系ゴミ検出手段は、前記焦点検出領域に対応する領域での前記撮影手段の撮影画像のコントラストである前記第2のコントラストが所定の閾値より小さく、前記第1のコントラストが所定の閾値より大きいことによって、焦点検出系ゴミを検出することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記焦点検出領域は、撮影画面内に複数設定され、
前記焦点検出系ゴミ検出手段は、前記複数の焦点検出領域ごとに焦点検出系ゴミを検出し、焦点検出系ゴミが検出された焦点検出領域での焦点検出結果を用いた焦点調節動作を禁止させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
撮影者がコントラストの無い撮影画像を撮影することによって焦点検出系ゴミを検出する焦点検出系ゴミ検出モードを設定する設定手段を有し、
前記撮像手段は、前記焦点検出系ゴミ検出モードにおいてコントラストの無い撮影画像を得ることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
撮影者がコントラストの無い撮影画像を撮影することによってホワイトバランス設定モードを設定する設定手段を有し、
前記撮像手段は、前記ホワイトバランス設定モードにおいてコントラストの無い撮影画像を得ることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
撮影者がコントラストの無い画像を撮影することによって撮像系に付着しているゴミを検出する撮像系ゴミデータ取得モードを設定する設定手段を有し、
前記撮像手段は、前記撮像系ゴミデータ取得モードにおいてコントラストの無い撮影画像を得ることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−168399(P2012−168399A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30012(P2011−30012)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]