説明

撮像装置

【課題】色収差に起因するケラレを考慮した焦点検出の精度を向上させる。
【解決手段】撮像光学系の射出瞳の異なる領域を通過した1対の光束により生成された光学像を受光する、1対の受光素子列の出力を用いてパッシブ方式の焦点検出を行う。まず撮像装置は、焦点検出を行う焦点検出領域を通過した光束に含まれる、予め定められた波長の光量の割合を取得する。また当該光束について撮像光学系に起因するケラレが発生している場合、予め定められた波長のそれぞれに予め定められたケラレの補正係数を、割合に応じて算出して得られた新たな補正係数を取得する。そして、当該新たな補正係数を用いて1対の受光素子列それぞれの出力を補正し、補正された1対の受光素子列の出力を用いて焦点検出を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点検出において、撮影光学系及び撮像装置の構造に起因する光束のケラレの影響を低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ等の撮像装置の中には、撮影シーンに合わせて撮像レンズや焦点レンズ等の光学系を自動で調整する機能を備えるものがある。自動調整機能は、例えば合焦位置を検出して制御する自動合焦機能や、被写体を測光して適正露出に調整する露出制御機能等があり、被写体像の状態を計測することで撮影シーンに合わせた撮影設定を自動的に選択でき、設定に係る撮影者の負担を軽減可能である。
【0003】
自動合焦機能で行われる焦点検出方式は、アクティブ方式とパッシブ方式に分かれる。アクティブ方式では被写体までの距離を、例えば超音波センサや赤外線センサを用いることにより測定し、当該距離と光学系の光学特性に従って合焦位置を算出する。一方、パッシブ方式には、実際に焦点レンズを駆動して検出するコントラスト検出方式と、瞳分割された2つの光学像の位相差を検出する位相差検出方式とがある。デジタル一眼レフカメラ等の撮像装置では後者の方式が多く用いられており、2つの光学像の位相差を表すデフォーカス量を算出し、当該デフォーカス量をなくすように光学系を制御することにより、被写体に合焦させることができる。
【0004】
なお、パッシブ方式の焦点検出を行う場合、比較する2つの光学像は、単に水平あるいは垂直方向にずれが生じた、同一形状の光学像である必要がある。しかしながら、光学系に含まれるレンズや絞り、あるいは撮像装置の構造等により、焦点検出に用いる光束の一部が遮られる、所謂「ケラレ」が発生することがある。焦点検出に用いる光束のケラレが発生した場合、焦点検出に用いる光学像の形状や輝度変化等が生じるため、瞳分割された光学像の位相差やコントラスト検出ができない、あるいは精度が低下する可能性がある。
【0005】
このため、パッシブ方式の焦点検出機能を実行する撮像装置の中には、ケラレが生じないように、撮影光学系の口径比や焦点検出可能領域を制限しているものもある。しかしながら、焦点検出に用いる光束についてのケラレが生じないように焦点検出ユニットを設計する場合は、次のような問題がある。例えば、焦点検出に用いるラインCCDに到達する光束が、撮像装置に装着される様々な撮影レンズの絞りの開口によって遮られないようにラインCCDを配置する場合、焦点検出が可能な領域の像高の範囲を狭めたり、ラインCCD規模を縮小する必要がある。即ち、焦点検出に用いる光束についてのケラレが生じないように設計することにより、焦点検出範囲の狭小化、基線長短縮による焦点検出の精度悪化、あるいは焦点検出の低輝度被写体に対する精度悪化を招いてしまう。
【0006】
一方、焦点検出に用いる光束についてのケラレを許容し、ケラレが生じる条件やケラレの程度を具体的に把握しておくことにより、焦点検出の精度の向上、あるいは焦点検出範囲の拡大を実現している撮像装置もある。例えば、撮影光学系の設定に応じてケラレが発生する焦点検出領域を把握して当該焦点検出領域における焦点検出を不可能にする方法、あるいはケラレによって生じる被写体像の光量の減衰を予め数式化しておくことで出力を補正する方法などがある。
【0007】
特許文献1には、光束のケラレの量(ケラレ量)を数値化し、当該ケラレ量が、ケラレの有無により動的に変化する、予め定められた閾値を超えるか否かにより、焦点検出で算出されたデフォーカス量の信頼性を判断する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭63−204236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般的に撮影レンズ等の光学系は、光束に含まれる光の波長ごとに屈折率が異なる、所謂色収差を有する。即ち、レンズを通過した光束は波長ごとに分光するため、焦点検出に用いる光学像は、光学像の結像面に至る光路が波長ごとに異なることになり、ケラレの有無やケラレの量等が波長ごとに異なる。しかしながら、上述した特許文献1では撮像光学系の色収差を考慮していないため、焦点検出において分光強度による誤差が生じる可能性があった。
【0010】
なお、複数の光学部品を用いることにより、色収差を低減することも可能であるが、完全に色収差をなくすことの困難性、光学部品を配置するスペースの拡大、あるいは光学部品の製造コスト等を考えると、現実的ではない。
【0011】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、色収差に起因するケラレを考慮した焦点検出の精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述の目的を達成するために、本発明の撮像装置は、以下の構成を備える。
撮像光学系の射出瞳の異なる領域を通過した1対の光束により生成された光学像を受光する、1対の受光素子列の出力を用いてパッシブ方式の焦点検出を行う検出手段を備える撮像装置であって、検出手段により焦点検出を行う焦点検出領域を通過した光束に含まれる、予め定められた波長の光量の割合を取得する取得手段と、光束について、撮像光学系に起因するケラレが発生しているか否かを判断する判断手段と、判断手段により光束についてケラレが発生していると判断された場合に、予め定められた波長のそれぞれに予め定められたケラレの補正係数を、割合に応じて算出して得られた新たな補正係数を用いて、1対の受光素子列それぞれの出力を補正する補正手段と、を備え、検出手段は、判断手段により光束についてケラレが発生していると判断された場合に、補正手段により補正された1対の受光素子列の出力を用いて焦点検出を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
このような構成により本発明によれば、色収差に起因するケラレを考慮した焦点検出の精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るデジタルカメラ100の構成を示した図
【図2】本発明の実施形態に係る焦点検出ユニット120の分解斜視図
【図3】本発明の実施形態に係る焦点検出ユニット120が有する絞り204の開口部211を示した平面図
【図4】本発明の実施形態に係る焦点検出ユニット120が有する2次結像レンズユニット205を示した平面図
【図5】本発明の実施形態に係る焦点検出ユニット120が有する受光部206の受光素子列214を示した平面図
【図6】本発明の実施形態に係る、焦点検出ユニット120が有する視野マスク201の面に受光素子列214を逆投影した図
【図7】本発明の実施形態に係る、撮影光学系101の光軸上を通り焦点検出ユニット120に到達する光路を直線に展開して示した上面図
【図8】本発明の実施形態に係る、撮影レンズ絞り304の面に、光束に係る各部材を投影した図
【図9】本発明の実施形態に係る、撮影光学系101の光軸上を通り焦点検出ユニット120に到達する光路を直線に展開して示した別の上面図
【図10】本発明の実施形態に係る、撮影レンズ絞り304の面に、光束に係る各部材を投影した別の図
【図11】本発明の実施形態に係る、受光素子列214の出力におけるケラレの影響を示した図
【図12】本発明の実施形態に係る、撮影光学系101の光軸上を通り焦点検出ユニット120に到達する光路を直線に展開して示したさらに別の上面図
【図13】本発明の実施形態に係る、撮影レンズ絞り304の面に、光束に係る各部材を投影したさらに別の図
【図14】本発明の実施形態に係るデジタルカメラ100の回路構成を示したブロック図
【図15】本発明の実施形態に係る測光回路1407の内部構成を示したブロック図
【図16】本発明の実施形態に係る被写体合焦処理のフローチャート
【図17】本発明の実施形態に係るケラレの発生の有無を示したテーブル
【図18】本発明の実施形態に係る焦点検出条件における受光素子列214の出力を補正する補正係数を示したテーブル
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する一実施形態は、撮像装置の一例としての、位相差検出方式の焦点検出機能を備えるデジタルカメラに、本発明を適用した例を説明する。しかし、本発明は、パッシブ方式の焦点検出機能を有する任意の機器に適用可能である。
【0016】
(デジタルカメラ100の構成)
図1は、本発明の実施形態に係る、レンズ交換可能な一眼レフタイプのデジタルカメラ100の中央断面図である。
【0017】
撮影光学系101は、撮影レンズや合焦レンズ等からなるレンズ群である。当該レンズ群は、図に示した撮影光学系101の光軸Lを光学中心としている。撮影光学系101の予定結像面付近には、光学ローパスフィルタや赤外カットフィルタ、及び撮像素子を含む撮像素子ユニット104が配置される。
【0018】
光軸上の撮影光学系101と撮像素子ユニット104との間には、撮影時には周知のクイックリターン機構により撮影光束外へ退避されるメインミラー102及びサブミラー103が配置されている。メインミラー102はハーフミラーであり、撮影光束は上方のファインダ光学系に導かれる反射光と、サブミラー103に入射する透過光とに分離される。
【0019】
メインミラー102で反射された反射光は、マット面とフレネル面とを備えるピント板105のマット面上に結像され、ペンタプリズム106、接眼レンズ群107を介して観察者の目に導かれる。また、ピント板105で拡散した光の一部は測光レンズ110を透過し、測光センサ111に到達する。測光センサ111は、複数の画素に分割されており、当該画素のそれぞれにはRGBのカラーフィルタが配置されており、被写体の分光強度を検出することができる。なお、本実施形態では測光センサ111は、RGBのカラーフィルタを有するものとして説明するが、本発明の実施はこれに限らず、予め定められた複数の波長のそれぞれを透過する光の中心波長とするカラーフィルタを有する構成であればよい。
【0020】
一方、メインミラー102を透過した透過光は、サブミラー103により光路が下方に向けて屈折され、焦点検出ユニット120に導かれる。即ち、撮影光学系101を通過した光束は、一部がメインミラー102により反射されて測光センサ111に到達し、残りはメインミラー102を通過して焦点検出ユニット120に到達する。焦点検出ユニット120は、位相差検出方式により焦点距離を検出する。なお、予めメインミラー102の分光反射率の情報を不図示の不揮発性メモリに記憶しておくことで、測光センサ111の出力を用いて焦点検出ユニット120に到達する光束の分光強度を検出することは可能である。
【0021】
(焦点検出ユニット120の構成)
ここで、焦点検出ユニット120の内部構成例について、以下に図を用いて詳細に説明する。
【0022】
図2は、焦点検出ユニット120の構造を簡易的に示した斜視図である。なお、焦点検出ユニット120は、実際は反射ミラー等を用いて光路を折りたたむことで省スペース化がなされて構成されるが、図2では説明を簡単にするために光路上の当該反射ミラー等を省き、光路が直線となるように展開している。
【0023】
視野マスク201は、後述する焦点検出を行う受光素子列214に外乱光が入らないようにするためのマスクであり、撮影光学系101の予定結像面である撮像素子ユニット104の撮像面と、サブミラー103を介して光学的に等価な位置の近傍に配置される。視野マスク201は、本実施形態では図に示すような3つの十字開口部202有し、焦点検出ユニット120に到達した光束のうち、当該十字開口部を通過した光束のみが焦点検出の対象となる。
【0024】
なお、本実施形態の説明において、3つの十字開口部202については、図2の配置において中央に位置する十字開口部にa、右側に位置する十字開口部にb、及び左側に位置する十字開口部にcと符号を付して識別するものとする。また、焦点検出ユニット120を構成している、視野マスク201に後続する部材についても、それぞれに到達する光束が通過した十字開口部と同じ符号を付して識別するものとする。なお、撮影光学系101の光軸は十字開口部202aの中心を通過するものとする。
【0025】
フィールドレンズ203は、光学特性が異なるフィールドレンズ203a、203b、及び203cで構成されており、それぞれのレンズは互いに異なる光軸を有する。
【0026】
フィールドレンズ203a、203b、及び203cを通過した光束は、それぞれに対応する絞り204の複数の開口部を通過した後、2次結像レンズユニット205に到達する。なお、絞り204の前段には、焦点検出に不要な赤外波長分を光束から除去する赤外カットフィルタが配置されるが、簡略化のために省略している。
【0027】
絞り204は、図3に示すように十字開口部202a、202b、及び202cのそれぞれを通過した光束が通過する開口部211a、211b、及び211cを有する。本実施形態ではそれぞれの開口部は、垂直方向及び水平方向にそれぞれ1組ずつ、合計4つの開口部を有している。なお、本実施形態の説明において、それぞれの開口部は、図3の配置において垂直方向の上側に1、下側に2、水平方向の右側に3、左側に4を付すことにより識別する。即ち、十字開口部202cを通過した光束は、絞り204の開口部211c−1、211c−2、211c−3、及び211c−4を通過することになる。また、焦点検出ユニット120を構成している、絞り204に後続する部材についても、それぞれに到達する光束が通過した開口部と同じ符号を付して識別するものとする。
【0028】
2次結像レンズユニット205は、撮影光学系101によりサブミラー103を介して予定結像面に対応する視野マスク201に結像された光学像のうち、十字開口部202を通過した像を、後段に配置された受光部206上に再結像する。2次結像レンズユニット205は、図4(a)に示すようなプリズム部212、及び図4(b)に示すような球面レンズ部213で構成される。
【0029】
受光部206は、十字開口部202a、202b、及び202cごとに、図5に示すような垂直方向及び水平方向それぞれに配置された一対の受光素子列214を有する。それぞれの受光素子列は、例えばラインCCD等の光学素子であり、射出瞳の異なる領域を通過した光束、即ち対応する十字開口部202を通過した十字型の光学像がそれぞれの受光素子列上に結像される。
【0030】
撮影光学系101の予定結像面上に結像される光学像の焦点状態によって、垂直方向あるいは水平方向で対をなす受光素子列上に結像される光学像間の距離は変化する。焦点状態を示すデフォーカス量は、対をなす受光素子列214から出力された光学像の光量分布を相関演算することにより得られた当該光学像間の距離と、予め決められた合焦している場合の光学像間の距離との差(変化量)に基づいて算出される。具体的には、例えばデフォーカス量と当該距離の変化量との関係を、距離の変化量について予め多項式近似しておき、焦点検出ユニット120より得られた光学像間の距離の変化量を用いてデフォーカス量は算出される。このように得られたデフォーカス量により、被写体に合焦する焦点位置を取得可能であり、不図示の合焦レンズ駆動部によって合焦レンズを制御することにより、被写体に合焦することができる。
【0031】
なお、1つの方向に設けられた対をなす受光素子列は、当該方向にコントラスト成分を有する被写体像の焦点検出に適している。即ち、本実施形態のように垂直方向及び水平方向に受光素子列214を設けることで、被写体像のコントラス成分の方向に依存しない、所謂クロス型の焦点検出を行うことができる。
【0032】
撮影光学系101の予定結像面と光学的に等価な位置の付近に配置される、焦点検出ユニット120の視野マスク201の面に受光素子列214を逆投影した場合、図6(a)のようになる。なお、本実施形態の説明では、視野マスク201の面は予定結像面と等価であるものとして、予定結像面として説明する。
【0033】
図6(a)に示すように、垂直方向に対をなす受光素子列214及び水平方向に対をなす受光素子列214は、予定結像面においてそれぞれ1つの逆投影像216及び逆投影像217となる。即ち、撮影範囲218のうち、十字開口部202a、b、及びcの領域内の、逆投影像216a、b、及びcと逆投影像217a、b、及びcとで形成される逆投影像の領域が、所謂クロス型の焦点検出領域220となる。
【0034】
なお、本実施形態では測光センサ111は、測光範囲219を垂直方向に3分割、水平方向に5分割した15個の測光領域について測光を行うものとする。測光範囲219と焦点検出ユニット120の焦点検出領域220とは、図6(b)のような位置関係にあり、それぞれの焦点検出領域220は、1つの測光領域に対応する配置となっている。即ち、測光センサ111により、焦点検出領域220を通過する光束の分光強度は検出可能である。
【0035】
(焦点検出におけるケラレの原理)
まず、焦点検出領域220aにおいて焦点検出を行う場合の、焦点検出ユニット120が有する受光部206に到達する光束と、撮影光学系101を通過する光束との関係について図7を用いて説明する。
【0036】
図7は、撮影光学系101の光軸上を通り焦点検出ユニット120に到達する光路を直線に展開して示した上面図であり、撮影光学系101を通過する光束のうち、視野マスク201と光軸Lの交点を通過する光束が示されている。また図7には、当該光束が通過する絞り204の開口部211a、2次結像レンズユニット205のプリズム部212a及び球面レンズ部213a、及び受光部206の受光素子列214aのうち、水平方向に対をなす部材のみが示されている。
【0037】
図7に示されるように、撮影光学系101は、レンズ301、302、及び303に加え、撮影光学系101を通過する光束の径を調整する撮影レンズ絞り304、及び撮影光学系101を保持する前枠部材305及び後枠部材306で構成される。
【0038】
上述したように、視野マスク201と光軸Lの交点を通過する光束は、撮影レンズ絞り304の開口の径により決定される。当該光束のうち、絞り204の開口部211a−3及び211a−4がフィールドレンズ203によって撮影レンズ絞り304の面に逆投影された領域を通る光束のみが、焦点検出ユニット120の受光部206に到達する。
【0039】
具体的には視野マスク201と光軸Lの交点から見ると、図8に示すように撮影レンズ絞り304の面に逆投影された開口部211a−3及び211a−4は、逆投影像801a−3及び801a−4となる。即ち、撮影レンズ絞り304の開口領域で示される光束のうち、当該逆投影像801a−3及び801a−4を通過する光束のみが、受光部206に結像されることになる。つまり、視野マスク201と光軸Lの交点を通過する光束は、撮影レンズ絞り304の開口領域の内側に逆投影像801a−3及び801a−4がある限り、焦点検出に用いる光束においてケラレは生じないことになる。
【0040】
また、視野マスク201と光軸Lの交点を通過する光束は、前枠部材305及び後枠部材306の口径食によるケラレが生じない。図8に示すように、撮影レンズ絞り304の面に前枠部材305及び後枠部材306を投影すると、投影像802及び投影像803となる。即ち、逆投影像801a−3及び801a−4を通過する光束は、大きさが変化せず、逆投影像801a−3及び801a−4よりも外側にある投影像802及び投影像803によって遮られる口径食は発生しない。このため、視野マスク201と光軸Lの交点を通過する光束については、撮影レンズ絞り304の開口の径によってのみケラレの有無が判断される。
【0041】
一方、焦点検出領域220cにおいて焦点検出を行う場合、焦点検出ユニット120が有する受光部206に到達する光束のケラレの有無は、図9に示す上面図を参照して以下に説明するように異なる。
【0042】
図9には、撮影光学系101を通過する光束のうち、視野マスク201の面における受光素子列214c−3及び214c−4の逆投影像217cの、光軸Lから遠い側の端点を通過する光束が示されている。また図9には、当該光束が通過する絞り204の開口部211c、2次結像レンズユニット205のプリズム部212c及び球面レンズ部213c、及び受光部206の受光素子列214cのうち、水平方向に対をなす部材のみが示されている。なお、Hは逆投影像217cの、光軸Lから遠い側の端点と光軸Lとの距離、即ち像高を示している。
【0043】
逆投影像217cの光軸Lから遠い側の端点を通過する光束は、図9に示されるように、撮影レンズ絞り304の開口の径と、前枠部材305及び後枠部材306とによって決定される。この場合、逆投影像217cの光軸Lから遠い側の端点から見ると、撮影レンズ絞り304の面に投影された前枠部材305及び後枠部材306は、図10に示すような投影像1002及び投影像1003となる。図10のような位置関係にある場合、撮影レンズ絞り304の面に逆投影された開口部211c−4の逆投影像1001c−4は、後枠部材306の投影像1003によって遮られている(図の斜線部)。即ち、焦点検出に用いる光束は、撮影レンズ絞り304によるケラレが発生していない場合であっても、前枠部材305及び後枠部材306の口径食によるケラレが発生することになる。
【0044】
このようにケラレが発生すると、焦点検出領域220cに対応する受光素子列214c−3と214c−4との出力に差が生じる。例えば一様な輝度を示す被写体像であった場合、それぞれの受光素子列の出力は図11のようになり、ケラレの生じた逆投影像1001c−4に対応する受光素子列214c−4の出力は一部の領域で低下している。なお、図11は、被写体像の像高を横軸にとり、当該像高に対応する受光素子列であるラインセンサの各画素の出力を縦軸としている。図10からもわかるように、焦点検出領域の像高Hが小さいほど、焦点検出に用いる光束についての、撮影光学系101の口径食によるケラレの影響は小さくなる。
【0045】
なお、図11に示した各受光素子列214の出力は、所謂シェーディング補正が既になされているものとする。一般的に受光素子列214の出力は、被写体像の輝度が一様であった場合でも、撮影光学系101及び焦点検出光学系の周辺減光や受光素子列214の各画素の感度のばらつき等によって、出力は一様にならない。通常、このような出力の不均一性については、撮影光学系101による光束のケラレがない状態で均一な出力となるように、予め受光素子列214の出力に対する補正量が不揮発性メモリ等に記憶されており、当該補正量を用いてシェーディング補正を行う。
【0046】
(波長の違いによるケラレの差)
しかしながら、被写体像は一般的に有色であり、様々な波長の光を含むため、実際は上述したように撮影光学系101、及びフィールドレンズ203を通過した光束は波長ごとに分光する。図9のように逆投影像217の光軸Lから遠い側の端点を通過する光束についての分光について、図12を参照して以下に説明する。一般に、撮影光学系101は、複数のレンズを用いることにより色収差を低減する工夫がなされている。一方で、フィールドレンズ203は、より少数の(本実施形態では、1枚の)レンズで構成されるため、波長による分光が発生する。
【0047】
図12では、光束のうち可視光において波長が短い青色光成分が一点鎖線で示され、波長が長い赤色光成分が破線で示されている。図示されるように、青色光成分の光束は前枠部材305によって遮られる口径食が生じており、赤色光成分の光束は後枠部材306によって遮られる口径食が生じている。この場合、逆投影像217cの光軸Lから遠い側の端点から、それぞれの成分の光束の中心方向に見ると、撮影レンズ絞り304の面に逆投影あるいは投影された各部材は、図13のようになる。
【0048】
図13(a)では、青色光成分の光束の中心方向に見た場合の撮影レンズ絞り304の面に逆投影された受光素子列214a−4の逆投影像1001a−4bの一部の領域が、前枠部材305の投影像1002の外にある。即ち、青色光成分の光束については、受光素子列214a−4において口径食による焦点検出に用いる光束のケラレが生じている。
【0049】
図13(b)では、赤色光成分の光束の中心方向に見た場合の撮影レンズ絞り304の面に逆投影された受光素子列214a−3の逆投影像1001a−3rの一部の領域が、前枠部材305の投影像1002の外にある。即ち、赤色光成分の光束については、受光素子列214a−3において口径食による焦点検出に用いる光束のケラレが生じている。図12では、前枠部材305により、受光素子列214a−4に到達する光束の青色光成分でケラレが生じ、後枠部材306により、受光素子列214a−3に到達する光束の赤色光成分でケラレが生じている。
【0050】
一般に、焦点検出に用いる対の光束のうち、どちらの光束の赤、青どちらの波長の光でケラレが生じるかは、像高とケラレの原因となる部材の位置と開口大きさによって決定する。図12に示す通り、ある大きさの開口を持つ枠部材が、光軸L方向に、視野マスク201から離れれば離れるほど、受光素子列214a−4に到達する光束の青色光成分でケラレが生じやすくなる。一方で、ある大きさの開口を持つ枠部材が、光軸L方向に、視野マスク201に近づけば近づくほど、受光素子列214a−3に到達する光束の赤色光成分でケラレが生じやすくなる。即ち、撮影レンズ絞り304、前枠部材305、及び後枠部材306の直径と光軸L方向の位置と像高Hがわかれば、図13のような撮影レンズ絞り304の面に投影された前枠部材305、後枠部材306の直径と偏心量が計算可能である。つまり、撮影レンズ絞り304の面上での焦点検出光束位置と各部材の位置関係がわかり、ケラレの有無や量を算出することが可能である。
【0051】
即ち、焦点検出に用いる光束の分光によってケラレが生じる受光素子列が異なる場合があるため、図9のように対をなす受光素子列のうちの一方の出力に対して、ケラレによる輝度低下を補正する処理を一概に適用すると、焦点検出精度の低下を招くことになる。
【0052】
(デジタルカメラ100の回路構成)
図14は、本発明の実施形態に係るデジタルカメラ100の回路構成を示すブロック図である。
【0053】
中央演算回路1401は、CPU、RAM、ROM及びADC(A/Dコンバータ)及び入出力ポート等で構成される1チップマイクロコンピュータである。中央演算回路1401のROMは不揮発性メモリであり、後述する被写体合焦処理のプログラムを含む、デジタルカメラ100の制御用プログラムや、デジタルカメラ100の設定等のパラメータ情報が格納されている。また、本実施形態では、撮影光学系101の状態についての、焦点検出に用いる光束においてケラレが生じているか否かを判断するための情報も、当該ROMに格納されているものとする。
【0054】
シャッタ制御回路1402は、中央演算回路1401より制御信号CSHTを受信している間、データバス(DBUS)を介して入力される情報に基づいて、不図示のシャッタ先幕及び後幕の走行制御を行う回路である。具体的には中央演算回路1401は、デジタルカメラ100が備えるユーザインタフェースが操作されることによりスイッチ信号を出力するSWSから、レリーズボタンの撮影指示に相当するSW2を受信すると、シャッタを駆動させるように制御信号を出力する。
【0055】
絞り制御回路1403は、中央演算回路1401より制御信号CAPRを受信している間、DBUSを介して入力される情報に基づいて、不図示の絞り駆動機構を制御することにより、撮影レンズ絞り304の駆動制御を行う回路である。
【0056】
投光回路1404は、焦点検出用の補助光を投光するための回路であり、中央演算回路1401からの制御信号ACT及び同期クロックCKに応じて、投光回路1404が備えるLEDを発行させる。
【0057】
レンズ通信回路1405は、中央演算回路1401より制御信号CLCOMを受信している間、DBUSを介して入力される情報に基づいて、レンズ制御回路1406とシリアル通信を行う回路である。レンズ通信回路1405は、クロック信号LCKに同期して撮影光学系101が有するレンズのレンズ駆動用データDCLをレンズ制御回路1406に出力するとともに、レンズの状態を示すレンズ情報DLCを受信する。なお、レンズ駆動用データDCLは、撮影光学系101が装着されたデジタルカメラ100本体の種別、焦点検出ユニット120の種別、及びレンズ駆動量等の情報を含む。
【0058】
レンズ制御回路1406は、レンズ駆動部1502を用いて撮影光学系101が有する所定のレンズを移動させることによって被写体像の焦点状態を変更する回路であり、図15のような内部構成を有する。
【0059】
CPU1503は、レンズ制御回路1406の動作を制御する演算部であり、入力されたレンズ駆動用データのうちのレンズ駆動量の情報に応じた制御信号をレンズ駆動部1502に出力し、撮影光学系101が有する所定のレンズの位置を変更させる。なお、不図示の焦点調節用レンズが移動中である場合、CPU1503は信号BSYをレンズ通信回路1405に対して出力する。当該信号をレンズ通信回路1405が受信している場合、レンズ通信回路1405とレンズ制御回路1406との間でシリアル通信は行われないものとする。
【0060】
メモリ1501は、不揮発性メモリであり、例えば撮影光学系101の種別、距離環及びズーム環の位置、デフォーカス量に対する焦点調節レンズの繰り出し量を示した係数、及び撮影レンズの焦点距離に対応した射出瞳情報等が記憶されている。射出瞳情報とは、例えば、撮影レンズ絞り304、前枠部材305、及び後枠部材306等の、撮影光学系101を通過する光束の実効Fナンバを制限する部材の光軸L上の位置あるいは径の情報である。メモリ1501に記憶されている情報は、CPU1503により読み出されて所定の演算処理がなされ、レンズ情報DLCとしてレンズ通信回路1405を介して中央演算回路1401に伝送される。
【0061】
なお、撮影光学系101が、所謂ズームレンズ等の、複数の焦点距離を有する光学系である場合、焦点距離の情報は、連続的に変化する焦点距離を複数に分割した各範囲の代表値であるものとする。また、一般的に距離環の位置の情報は直接合焦演算に使用しないため、他の情報に比べて精度が要求されない。
【0062】
測光回路1407は、中央演算回路1401より制御信号CSPCを受信すると、測光センサ111の各測光領域の出力SSPCを中央演算回路1401に出力する。各測光領域の出力SSPCは、中央演算回路1401のADCでA/D変換され、シャッタ制御回路1402及び絞り制御回路1403を制御するためのデータとして用いられる。また中央演算回路1401は、各測光領域の出力を用いて、焦点検出領域を通過する光束に含まれる、予め定められた複数の波長光の割合を検出する。
【0063】
センサ駆動回路1408は、上述した焦点検出ユニット120の受光部206の各受光素子列214が接続された回路であり、選択された焦点検出領域220に対応する受光素子列214を駆動させ、得られた像信号SSNSを中央演算回路1401に出力する。具体的にはセンサ駆動回路1408は、中央演算回路1401より制御信号STR、CKをを受信し、当該信号に基づき、選択された焦点検出領域220に対応する受光素子214に対して制御信号φ1、φ2、CL、SHを送信して駆動制御する。
【0064】
(被写体合焦処理)
このような構成をもつ本実施形態のデジタルカメラ100の被写体合焦処理について、図16のフローチャートを用いて具体的な処理を説明する。当該フローチャートに対応する処理は、中央演算回路1401が有するCPUが、例えばROMに記憶されている対応する処理プログラムを読み出し、RAMに展開して実行することにより実現することができる。なお、本被写体合焦処理は、例えば撮影者が不図示のレリーズボタンを半押し状態にした際に開始されるものとして説明する。
【0065】
S1601で、CPUは、撮影画角内に含まれる予め定められた焦点検出領域220のうちから、焦点検出を行う焦点検出領域220を決定する。焦点検出領域220の決定は、撮影者による指示、あるいはデジタルカメラ100が備える主被写体検出アルゴリズム等の手法によってなされる。
【0066】
S1602で、CPUは、S1601で決定された焦点検出を行う焦点検出領域220に対応する受光素子列214を露光させるように、センサ駆動回路1408を制御する。受光素子列214の露光時間は、それぞれの受光素子において光量が飽和しないように決定されるものとする。受光素子列214の露光が終了すると、CPUはセンサ駆動回路1408より当該受光素子列214の像信号SSNSを受信する。
【0067】
S1603で、CPUは、S1601で決定された焦点検出を行う焦点検出領域220に対応する測光領域の測光を測光センサ111に行わせるように、測光回路1407を制御する。そしてCPUは、焦点検出を行う焦点検出領域220に対応する測光領域についての測光センサ111の出力値を測光回路1407より取得し、当該測光領域における焦点検出に用いる光束に含まれる予め定められた複数の波長光の割合を取得する。なお、測光センサ111の露光は、S1602の焦点検出動作と同期したタイミングで行われてもよい。また、焦点検出動作から遡って直前に出力された測光センサ111の出力のうち、焦点検出を行う焦点検出領域220に対応する測光領域についての測光センサ111の出力を以下の処理に用いてもよい。
【0068】
S1604で、CPUは、焦点検出を行う焦点検出領域220において、垂直方向あるいは水平方向の焦点検出に用いる光束のケラレが生じるか否かを判断する。上述したように、焦点検出に用いる光束においてケラレが生じるか否かは、当該光束の分光強度と、撮影光学系101及び焦点検出ユニット120の配置や構造等により異なる。このため、本実施形態ではCPUは、撮影光学系101より取得可能なレンズ種別及び焦点距離の情報と、焦点検出領域220とについて、予め垂直方向及び水平方向の少なくともいずれかの方向のケラレの発生の有無を示したテーブルを用いて判断するものとする。
【0069】
ケラレの発生の有無を示したテーブルは、例えば図17のように、ケラレが発生しない組み合わせについてはテーブルに含まないように構成されてもよい。当該テーブルでは、ケラレが発生する組み合わせについては焦点検出を行う焦点検出領域220に対応する受光素子列214のうち、ケラレが発生する方向の受光素子列214の出力を補正するための補正式を含んでいる。
【0070】
即ち、S1604ではCPUは、装着されている撮影光学系101より取得したレンズ種別及び焦点距離と、焦点検出を行う焦点検出領域220との組み合わせ(焦点検出条件)が、上述のケラレの発生の有無を示したテーブルに含まれるか否かを判断する。そしてCPUは、焦点検出条件がケラレの発生の有無を示したテーブルに含まれる場合は、焦点検出に用いる光束においてケラレが生じると判断して処理をS1605に移す。またCPUは、焦点検出条件がケラレの発生の有無を示したテーブルに含まれない場合は、焦点検出に用いる光束においてケラレは発生しないと判断して処理をS1606に移す。
【0071】
S1605で、CPUは、焦点検出を行う焦点検出領域220に対応する受光素子列214の出力を、ケラレの発生の有無を示したテーブルから取得した、焦点検出条件に対応する補正式を用いて補正する。
【0072】
補正式の基本形は、入力する受光素子列214の画素gの画素値をIN(g)、補正後の出力する画素値をOUT(g)とすると、
OUT(g)
=IN(g)×(K(g)×T+K(g)×T+・・・+K(g)×T
となる。補正式は画素ごとにi(=1、2、・・・、n)個の波長それぞれについてケラレの補正係数K(g)を定めており、当該補正係数をi個の波長光それぞれが光束に含まれる割合Tに応じて加算して、画素値を補正する新たな補正係数を得ることができる。このようにして得られた新たな補正係数を画素値に乗じることにより、分光強度を考慮してケラレの影響を補正した出力を得ることができる。即ち、ケラレの発生の有無を示したテーブルに示される焦点検出条件ごとの補正式は、予め定められた複数の波長ごとに異なるケラレの補正係数を、焦点検出領域に対応する受光素子列214ごとに定めている。なお、波長ごとに異なるケラレの補正係数は数値に限らず、例えば画素位置を変数とするような多項式であってもよい。
【0073】
例えば、装着されている撮影光学系101が「レンズ3」、現在設定されている焦点距離が「焦点距離3−3」であり、「焦点検出領域220b」が選択されている場合、ケラレが発生する方向は垂直方向で、焦点検出に用いる補正式は「補正式C」となる。例えば補正式Cでは、焦点検出領域220bに対応する受光素子列214bのうち、垂直方向の受光素子列214b−1及びb−2について、図18のように測光センサ111で分光強度を検出する複数の波長ごとに補正係数が定められていればよい。CPUは、このように得られた補正式を用いて、焦点検出を行う焦点検出領域220の各受光素子列214について出力を補正する。
【0074】
S1606で、CPUは、焦点検出する焦点検出領域220に対応する受光素子列214の、垂直方向及び水平方向に対をなす受光素子列それぞれについて出力を相関演算して位相差を検出することにより、デフォーカスの方向を含めたデフォーカス量を算出する。なお、デフォーカス量の算出については、例えば特公平5−88445号公報に開示されるような公知の方法を用いればよい。また、S1605で受光素子列214の出力を補正した場合は、本ステップにおいてCPUは補正後の受光素子列の出力についてデフォーカス量を算出すればよい。
【0075】
S1607で、CPUは、S1606で算出したデフォーカス量に基づいて、現在の焦点状態が被写体に合焦している状態であるか否かを判断する。CPUは、現在の焦点状態が被写体に合焦している状態であると判断した場合は本被写体合焦処理を完了し、合焦していないと判断した場合は処理をS1608に移す。そしてS1608でCPUは、デフォーカス量に応じて、撮影光学系101が備える所定のレンズを移動させた後、処理をS1602に戻す。
【0076】
このように被写体に合焦した状態となった後、デジタルカメラ100は撮影可能な状態となり、撮影者によってレリーズボタンが全押し状態にされると、撮影処理を行う。なお、被写体に合焦した状態となった後、撮影者によって撮影指示がなされないまま一定時間待機状態が続く場合は、焦点検出状態が変化する可能性があるため、CPUは再び本被写体合焦処理を実行してもよい。
【0077】
なお、本実施形態では測光センサ111を用いて焦点検出に用いる光束の分光強度の測定を行うものとして説明したが、本発明の実施はこれに限らず、例えば受光素子列214上において、分光強度を測定する構成であってもよい。また、焦点検出の方法は本実施形態に示した方法に限らず、パッシブ方式の他の焦点検出の方法が用いられても、本発明は実施可能である。例えば、特開2000−156823号公報に開示されているような撮影レンズの予定結像面210に配された対の画素により、撮影レンズの異なる部分を通る光束を用いて位相差方式焦点検出を行う場合も有効である。
【0078】
また、上述した実施形態ではデジタルカメラの本体側の記憶領域に、各焦点検出条件に応じたケラレの発生の有無の情報を格納するものとして説明したが、当該情報はレンズ鏡筒が備える記憶領域に格納されていてもよい。このようにすることで、デジタルカメラの本体製造後に開発されたレンズ鏡筒であっても対応することが可能となる。
【0079】
また、上述した実施形態ではケラレの発生の有無を示すテーブルにおいて、ケラレが発生する全ての焦点検出領域について含めるものとして説明したが、光学系の光軸について対称的な位置に存在する焦点検出領域については、一方の情報のみが含まれていればよい。またケラレの発生の有無を判断する方法は、上述のテーブルを参照する方法に限らず、レンズ鏡筒から取得した、射出瞳、前枠部材及び後枠部材の位置及び直径等の情報を用いて都度ケラレの判断を行う構成であってもよい。
【0080】
また、上述した実施形態では、焦点検出を行う焦点検出領域に対応する受光素子列におけるケラレの影響を補正する方法について説明したが、ケラレの度合いによって焦点検出に当該焦点検出領域を使用可能であるか否かを判断してもよい。即ち、受光素子列の出力においてケラレの影響が大きく、補正を行ったとしても焦点検出の精度を向上できないと判断した場合は、当該焦点検出領域を焦点検出の対象から外すことで、精度の低い焦点検出を回避することができる。
【0081】
(まとめ)
以上説明したように、本実施形態の撮像装置は、分光強度に起因するケラレを考慮した焦点検出の精度を向上させることができる。具体的には撮像装置は、撮像光学系の射出瞳の異なる領域を通過した1対の光束により生成された光学像を受光する、1対の受光素子列の出力を用いてパッシブ方式の焦点検出を行う。まず撮像装置は、焦点検出を行う焦点検出領域を通過した光束に含まれる、予め定められた波長の光量の割合を取得する。また当該光束について撮像光学系に起因するケラレが発生している場合、予め定められた波長のそれぞれに予め定められたケラレの補正係数を、割合に応じて算出して得られた新たな補正係数を取得する。そして、当該新たな補正係数を用いて1対の受光素子列それぞれの出力を補正し、補正された1対の受光素子列の出力を用いて焦点検出を行う。
【0082】
このようにすることで、被写体の色や撮影環境の光源の影響を受けずに、撮影光学系による焦点検出に用いる光束のケラレ量の算出を正確に行ってケラレ補正を精度よく行うことができ、精度の高い焦点検出を行うことが可能である。
【0083】
(その他の実施形態)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影光学系の射出瞳の異なる領域を通過した1対の光束により生成された光学像を受光する、1対の受光素子列の出力を用いてパッシブ方式の焦点検出を行う検出手段を備える撮像装置であって、
前記検出手段により焦点検出を行う焦点検出領域を通過した光束に含まれる、予め定められた波長の光量の割合を取得する取得手段と、
前記光束について、前記撮像光学系に起因するケラレが発生しているか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段により前記光束についてケラレが発生していると判断された場合に、前記予め定められた波長のそれぞれに予め定められたケラレの補正係数を、前記割合に応じて算出して得られた新たな補正係数を用いて、前記1対の受光素子列それぞれの出力を補正する補正手段と、を備え、
前記検出手段は、前記判断手段により前記光束についてケラレが発生していると判断された場合に、前記補正手段により補正された前記1対の受光素子列の出力を用いて前記焦点検出を行うことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記補正手段は、前記撮像光学系の種別と、前記撮像光学系に現在設定されている焦点距離と、前記焦点検出を行う焦点検出領域との組み合わせについて予め定められた前記ケラレの補正係数を用いて、前記新たな補正係数を得ることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記取得手段は、前記予め定められた複数の波長のそれぞれを透過する光の中心波長とするカラーフィルタを有する受光素子を用いて、前記光束に含まれる前記複数の波長光の割合を取得することを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記判断手段は、前記撮像光学系の種別と、前記撮像光学系に現在設定されている焦点距離と、前記焦点検出を行う焦点検出領域との組み合わせについてケラレが発生するか否かが予め定められた情報に従い、前記光束についてケラレが発生しているか否かを判断することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記判断手段は、前記撮像光学系の射出瞳と、前記撮像光学系が有する前枠部材及び後枠部材の光軸上の位置及び直径とを用いて、前記光束についてケラレが発生しているか否かを判断することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
撮像光学系の射出瞳の異なる領域を通過した1対の光束により生成された光学像を受ける、1対の受光素子列の出力を用いてパッシブ方式の焦点検出を行う検出手段を備える撮像装置の制御方法であって、
取得手段が、前記検出手段により焦点検出を行う焦点検出領域を通過した光束に含まれる、予め定められた波長の光量の割合を取得する取得工程と、
判断手段が、前記光束について、前記撮像光学系に起因するケラレが発生しているか否かを判断する判断工程と、
補正手段が、前記判断工程において前記光束についてケラレが発生していると判断された場合に、前記予め定められた波長のそれぞれに予め定められたケラレの補正係数を、前記割合に応じて算出して得られた新たな補正係数を用いて、前記1対の受光素子列それぞれの出力を補正する補正工程と、を備え、
前記検出手段は、前記判断工程において前記光束についてケラレが発生していると判断された場合に、前記補正工程において補正された前記1対の受光素子列の出力を用いて焦点検出を行うことを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項7】
撮像装置が備えるコンピュータを、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の撮像装置の各手段として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−211945(P2012−211945A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76393(P2011−76393)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】