撮像装置
【課題】良好な画像を撮影することが可能な撮像装置を提供する。
【解決手段】複数の画素が水平方向および垂直方向に配列され、垂直方向における画素の位置に応じて、各画素における電荷の蓄積開始時刻が異なるローリングシャッター方式の撮像素子22と、撮像素子22からの出力に基づいて、撮像画面内の焦点検出エリアにおける、撮影レンズの焦点状態を検出する焦点検出部21と、焦点調節用レンズ32の位置を検出するレンズ位置検出部21と、所定時刻における被写体の光軸方向の位置を予測する被写体位置予測部21と、焦点検出エリアに対応する画素の蓄積開始時刻を演算する蓄積開始時刻演算部21と、焦点検出エリアに対応する画素の蓄積開始時刻における被写体の光軸方向の位置を、被写体予測位置として演算する被写体位置演算部21と、被写体予測位置に基づいて、焦点調節用レンズを駆動させる駆動部36と、を備える。
【解決手段】複数の画素が水平方向および垂直方向に配列され、垂直方向における画素の位置に応じて、各画素における電荷の蓄積開始時刻が異なるローリングシャッター方式の撮像素子22と、撮像素子22からの出力に基づいて、撮像画面内の焦点検出エリアにおける、撮影レンズの焦点状態を検出する焦点検出部21と、焦点調節用レンズ32の位置を検出するレンズ位置検出部21と、所定時刻における被写体の光軸方向の位置を予測する被写体位置予測部21と、焦点検出エリアに対応する画素の蓄積開始時刻を演算する蓄積開始時刻演算部21と、焦点検出エリアに対応する画素の蓄積開始時刻における被写体の光軸方向の位置を、被写体予測位置として演算する被写体位置演算部21と、被写体予測位置に基づいて、焦点調節用レンズを駆動させる駆動部36と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、シャッターレリーズボタンを全押しされてから、露光が開始されるまでの間に、動体被写体が光軸方向に移動してまった場合でも、露光開始時に、動体被写体にピントが合うように、露光開始時の動体被写体の位置を予測し、該予測結果に基づいて、焦点調節用レンズの駆動を制御する撮像装置が知られている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−128611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ローリングシャッター方式の撮像素子を用いた場合、撮像素子内の垂直方向における画素の位置に応じて、各画素における電荷の蓄積開始時刻が異なるが、従来技術では、このような、垂直方向における画素の位置に応じた画素ごとの電荷の蓄積開始時刻のずれが考慮されていないため、焦点検出を行うための焦点検出エリアの位置によっては、動体被写体にピントの合った画像を撮影できない場合があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、良好な画像を撮影することが可能な撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の解決手段によって上記課題を解決する。なお、以下においては、本発明の実施形態を示す図面に対応する符号を付して説明するが、この符号は発明の理解を容易にするためだけのものであって発明を限定する趣旨ではない。
【0007】
[1]本発明に係る撮像装置は、複数の画素が水平方向および垂直方向に二次元状に配列されており、垂直方向における画素の位置に応じて、各画素における電荷の蓄積開始時刻が異なるローリングシャッター方式の撮像素子(22)と、前記撮像素子からの出力に基づいて、撮像画面内の焦点検出エリアにおける、焦点調節用レンズ(32)を含む撮影レンズの焦点状態を検出する焦点検出部(21)と、前記焦点調節用レンズの位置を検出するレンズ位置検出部(35)と、所定時刻における被写体の光軸方向の位置を予測する被写体位置予測部(21)と、前記焦点検出エリアに対応する画素の前記撮像素子内における垂直方向の位置を検出し、前記焦点検出エリアに対応する画素の前記蓄積開始時刻を演算する蓄積開始時刻演算部(21)と、前記被写体位置予測部による予測結果に基づいて、前記焦点検出エリアに対応する画素の前記蓄積開始時刻における被写体の光軸方向の位置を、被写体予測位置として演算する被写体位置演算部(21)と、前記被写体位置演算部により算出された前記被写体予測位置に基づいて、前記焦点調節用レンズを駆動させる駆動部(36)と、を備えることを特徴とする。
【0008】
[2]上記撮像装置に係る発明において、前記撮像素子(22)は、二次元状に配列された複数の撮像用画素(221)と、前記撮像用画素に混在して一次元状または二次元状に配列された複数の焦点検出用画素(222a,222b)とを有し、前記焦点検出部(21)は、前記焦点検出用画素の出力に基づいて、前記光学系による像面のずれ量を検出することで、前記光学系の焦点状態を検出する位相差検出方式の焦点検出、および、前記撮像用画素の出力に基づいて、前記光学系による像のコントラストに関する評価値を算出し、算出した評価値に基づいて、前記光学系の焦点状態を検出するコントラスト検出方式の焦点検出のうち、少なくともいずれか一方の方式で焦点検出を行うことが可能であるように構成することができる。
【0009】
[3]上記撮像装置に係る発明において、被写体が光軸方向において静止しているか否かを判定する判定部(21)をさらに備え、前記駆動部(36)は、前記判定部による判定の結果、被写体が光軸方向において静止していると判定された場合には、前記被写体予測位置に基づいた前記焦点調節用レンズの駆動処理を行わないように構成することができる。
【0010】
[4]上記撮像装置に係る発明において、前記被写体位置予測部(21)による予測結果に基づいて、被写体の光軸方向の移動速度を演算する移動速度演算部(21)をさらに備え、前記駆動部は、前記焦点検出エリアに対応する画素の前記蓄積開始時刻後、前記焦点検出エリアに対応する画素において電荷の蓄積が行われている間、前記焦点調節用レンズ(32)を、前記被写体の光軸方向の移動速度に応じて、等速で駆動させるように構成することができる。
【0011】
[5]上記撮像装置に係る発明において、前記被写体位置演算部(21)は、前記被写体位置予測部(21)による予測結果に加え、前記画素の露光時間に基づいて、前記焦点検出エリアに対応する画素において電荷の蓄積が行われている間の所定時刻における、前記被写体の光軸方向の位置を、前記被写体予測位置として演算するように構成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、良好な画像を撮影することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本実施形態に係るカメラを示すブロック図である。
【図2】図2は、図1に示す撮像素子の撮像面における焦点検出エリアを示す正面図である。
【図3】図3は、図2のIII部を拡大して焦点検出画素222a,222bの配列を模式的に示す正面図である。
【図4】図4は、撮像画素221の一つを拡大して示す正面図である。
【図5】図5(A)は、焦点検出画素222aの一つを拡大して示す正面図、図5(B)は、焦点検出画素222bの一つを拡大して示す正面図である。
【図6】図6は、撮像画素221の一つを拡大して示す断面図である。
【図7】図7(A)は、焦点検出画素222aの一つを拡大して示す断面図、図7(B)は、焦点検出画素222bの一つを拡大して示す断面図である。
【図8】図8は、図3のVIII-VIII線に沿う断面図である。
【図9】図9は、本実施形態に係るカメラの動作を示すフローチャートである。
【図10】図10は、蓄積開始時刻Tsにおける被写体の像面位置を予測する方法を説明するための図である。
【図11】図11は、本実施形態に係るカメラの動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
≪第1実施形態≫
図1は、本発明の実施形態に係るデジタルカメラ1を示す要部構成図である。本実施形態のデジタルカメラ1(以下、単にカメラ1という。)は、カメラ本体2とレンズ鏡筒3から構成され、これらカメラ本体2とレンズ鏡筒3はマウント部4により着脱可能に結合されている。
【0016】
レンズ鏡筒3は、カメラ本体2に着脱可能な交換レンズである。図1に示すように、レンズ鏡筒3には、レンズ31,32,33、および絞り34を含む撮影光学系が内蔵されている。
【0017】
レンズ32は、フォーカスレンズであり、光軸L1方向に移動することで、撮影光学系の焦点距離を調節可能となっている。フォーカスレンズ32は、レンズ鏡筒3の光軸L1に沿って移動可能に設けられ、エンコーダ35によってその位置が検出されつつフォーカスレンズ駆動モータ36によってその位置が調節される。
【0018】
このフォーカスレンズ32の光軸L1に沿う移動機構の具体的構成は特に限定されない。一例を挙げれば、レンズ鏡筒3に固定された固定筒に回転可能に回転筒を挿入し、この回転筒の内周面にヘリコイド溝(螺旋溝)を形成するとともに、フォーカスレンズ32を固定するレンズ枠の端部をヘリコイド溝に嵌合させる。そして、フォーカスレンズ駆動モータ36によって回転筒を回転させることで、レンズ枠に固定されたフォーカスレンズ32が光軸L1に沿って直進移動することになる。
【0019】
上述したようにレンズ鏡筒3に対して回転筒を回転させることによりレンズ枠に固定されたフォーカスレンズ32は光軸L1方向に直進移動するが、その駆動源としてのフォーカスレンズ駆動モータ36がレンズ鏡筒3に設けられている。フォーカスレンズ駆動モータ36と回転筒とは、たとえば複数の歯車からなる変速機で連結され、フォーカスレンズ駆動モータ36の駆動軸を何れか一方向へ回転駆動すると所定のギヤ比で回転筒に伝達され、そして、回転筒が何れか一方向へ回転することで、レンズ枠に固定されたフォーカスレンズ32が光軸L1の何れかの方向へ直進移動することになる。なお、フォーカスレンズ駆動モータ36の駆動軸が逆方向に回転駆動すると、変速機を構成する複数の歯車も逆方向に回転し、フォーカスレンズ32は光軸L1の逆方向へ直進移動することになる。
【0020】
フォーカスレンズ32の位置はエンコーダ35によって検出される。既述したとおり、フォーカスレンズ32の光軸L1方向の位置は回転筒の回転角に相関するので、たとえばレンズ鏡筒3に対する回転筒の相対的な回転角を検出すれば求めることができる。
【0021】
本実施形態のエンコーダ35としては、回転筒の回転駆動に連結された回転円板の回転をフォトインタラプタなどの光センサで検出して、回転数に応じたパルス信号を出力するものや、固定筒と回転筒の何れか一方に設けられたフレキシブルプリント配線板の表面のエンコーダパターンに、何れか他方に設けられたブラシ接点を接触させ、回転筒の移動量(回転方向でも光軸方向の何れでもよい)に応じた接触位置の変化を検出回路で検出するものなどを用いることができる。
【0022】
フォーカスレンズ32は、上述した回転筒の回転によってカメラボディ側の端部(至近端ともいう)から被写体側の端部(無限端ともいう)までの間を光軸L1方向に移動することができる。ちなみに、エンコーダ35で検出されたフォーカスレンズ32の現在位置情報は、レンズ制御部37を介して後述するカメラ制御部21へ送出され、フォーカスレンズ駆動モータ36は、この情報に基づいて演算されたフォーカスレンズ32の駆動位置が、カメラ制御部21からレンズ制御部37を介して送出されることにより駆動する。
【0023】
絞り34は、上記撮影光学系を通過して撮像素子22に至る光束の光量を制限するとともにボケ量を調整するために、光軸L1を中心にした開口径が調節可能に構成されている。絞り34による開口径の調節は、たとえば自動露出モードにおいて演算された適切な開口径が、カメラ制御部21からレンズ制御部37を介して送出されることにより行われる。また、カメラ本体2に設けられた操作部28によるマニュアル操作により、設定された開口径がカメラ制御部21からレンズ制御部37に入力される。絞り34の開口径は図示しない絞り開口センサにより検出され、レンズ制御部37で現在の開口径が認識される。
【0024】
一方、カメラ本体2には、上記撮影光学系からの光束L1を受光する撮像素子22が、撮影光学系の予定焦点面に設けられ、その前面にシャッター23が設けられている。本実施形態に係る撮像素子22は、その撮像面に複数の画素が水平方向および垂直方向に二次元状に配列されており、水平方向に配列された画素列(走査ライン)ごとに、順次シャッターを切るローリングシャッター方式により駆動する。このような撮像素子22としては、たとえば、CMOSイメージセンサを用いることができる。また、撮像素子22は、被写体からの光束を受光し、受光した光信号を電気信号に変換してカメラ制御部21に送出する。カメラ制御部21に送出された撮影画像情報は、逐次、液晶駆動回路25に送出されて観察光学系の電子ビューファインダ(EVF)26に表示されるとともに、操作部28に備えられたレリーズボタン(不図示)が全押しされた場合には、その撮影画像情報が、記録媒体であるメモリ24に記録される。このようなメモリとしては着脱可能なカード型メモリや内蔵型メモリの何れをも用いることができる。なお、撮像素子22の撮像面の前方には、赤外光をカットするための赤外線カットフィルタ、および画像の折り返しノイズを防止するための光学的ローパスフィルタが配置されている。撮像素子22の構造の詳細は後述する。
【0025】
カメラ本体2にはカメラ制御部21が設けられている。カメラ制御部21は、マウント部4に設けられた電気信号接点部41によりレンズ制御部37と電気的に接続され、このレンズ制御部37からレンズ情報を受信するとともに、レンズ制御部37へデフォーカス量や絞り開口径などの情報を送信する。また、カメラ制御部21は、上述したように撮像素子22から画素出力を読み出すとともに、読み出した画素出力について、必要に応じて所定の情報処理を施すことにより画像情報を生成し、生成した画像情報を、電子ビューファインダ26の液晶駆動回路25や記録媒体であるメモリ(不図示)に出力する。また、カメラ制御部21は、撮像素子22からの画像情報の補正やレンズ鏡筒3の焦点調節状態、絞り調節状態などを検出するなど、カメラ1全体の制御を司る。
【0026】
また、カメラ制御部21は、上記に加えて、撮像素子22から読み出した画素データに基づき、位相検出方式による撮影光学系の焦点状態の検出、およびコントラスト検出方式による光学系の焦点状態の検出を行う。なお、焦点状態の検出方法については、後述する。
【0027】
操作部28は、シャッターレリーズボタン、および撮影者がカメラ1の各種動作モードを設定するための入力スイッチであり、オートフォーカスモード/マニュアルフォーカスモードの切換が行えるようになっている。操作部28により設定された各種モードはカメラ制御部21へ送出され、当該カメラ制御部21によりカメラ1全体の動作が制御される。また、シャッターレリーズボタンは、ボタンの半押しでONとなる第1スイッチSW1と、ボタンの全押しでONとなる第2スイッチSW2とを含む。
【0028】
次に、本実施形態に係る撮像素子22について説明する。
【0029】
図2は、撮像素子22の撮像面を示す正面図、図3は、図2のIII部を拡大して焦点検出画素222a,222bの配列を模式的に示す正面図である。なお、実際の撮像素子22には、オプティカルブラック画素領域が存在するが、説明を簡略化するため、図2については記載を省略する。
【0030】
本実施形態の撮像素子22は、図3に示すように、複数の撮像画素221が、撮像面の平面上に、水平方向および垂直方向に二次元的に配列され、緑色の波長領域を透過するカラーフィルタを有する緑画素Gと、赤色の波長領域を透過するカラーフィルタを有する赤画素Rと、青色の波長領域を透過するカラーフィルタを有する青画素Bがいわゆるベイヤー配列(Bayer Arrangement)されたものである。すなわち、隣接する4つの画素群223(稠密正方格子配列)において一方の対角線上に2つの緑画素が配列され、他方の対角線上に赤画素と青画素が1つずつ配列されている。このベイヤー配列された画素群223を単位として、当該画素群223を撮像素子22の撮像面に二次元状に繰り返し配列することで撮像素子22が構成されている。
【0031】
なお、単位画素群223の配列は、図示する稠密正方格子以外にも、たとえば稠密六方格子配列にすることもできる。また、カラーフィルタの構成や配列はこれに限定されることはなく、補色フィルタ(緑:G、イエロー:Ye、マゼンタ:Mg,シアン:Cy)の配列を採用することもできる。
【0032】
図4は、撮像画素221の一つを拡大して示す正面図、図6は断面図である。一つの撮像画素221は、マイクロレンズ2211と、光電変換部2212と、図示しないカラーフィルタから構成され、図6の断面図に示すように、撮像素子22の半導体回路基板2213の表面に光電変換部2212が造り込まれ、その表面にマイクロレンズ2211が形成されている。光電変換部2212は、マイクロレンズ2211により撮影光学系の射出瞳(たとえばF1.0)を通過する撮像光束を受光する形状とされ、撮像光束を受光する。
【0033】
また、撮像素子22の撮像面には、上述した撮像画素221に代えて焦点検出画素222a,222bが配列された焦点検出画素列22a〜22eが設けられている。図3に示すように、一つの焦点検出画素列は、複数の焦点検出画素222aおよび222bが、互いに隣接して交互に、水平方向に配列されて構成されている。本実施形態においては、焦点検出画素222aおよび222bは、ベイヤー配列された撮像画素221の緑画素Gと青画素Bとの位置にギャップを設けることなく密に配列されている。
【0034】
なお、図2に示す焦点検出画素列22a〜22eの位置は図示する位置にのみ限定されず、何れか一箇所、二箇所、三箇所、あるいは四箇所とすることもでき、また、六箇所以上の位置に配置することもできる。また、実際の焦点検出に際しては、撮影者が操作部28を手動操作することにより、複数配置された各焦点検出画素列22a〜22e、または各焦点検出画素列22a〜22eの一部に対応する焦点検出エリアの中から、所望の焦点検出エリアを選択することもできる。
【0035】
図5(A)は、焦点検出画素222aの一つを拡大して示す正面図、図7(A)は、焦点検出画素222aの断面図である。また、図5(B)は、焦点検出画素222bの一つを拡大して示す正面図、図7(B)は、焦点検出画素222bの断面図である。焦点検出画素222aは、図5(A)に示すように、マイクロレンズ2221aと、半円形状の光電変換部2222aとから構成され、図7(A)の断面図に示すように、撮像素子22の半導体回路基板2213の表面に光電変換部2222aが造り込まれ、その表面にマイクロレンズ2221aが形成されている。また、焦点検出画素222bは、図5(B)に示すように、マイクロレンズ2221bと、光電変換部2222bとから構成され、図7(B)の断面図に示すように、撮像素子22の半導体回路基板2213の表面に光電変換部2222bが造り込まれ、その表面にマイクロレンズ2221bが形成されている。そして、これら焦点検出画素222aおよび222bは、図3に示すように、互いに隣接して交互に、水平方向に配列されることにより、図2に示す焦点検出画素列22a〜22eを構成する。なお、図3においては、16個の焦点検出画素222a,222bにより、焦点検出画素列を構成する例を示しているが、焦点検出画素列を構成する焦点検出画素の数は特に限定されない。
【0036】
なお、焦点検出画素222a,222bの光電変換部2222a,2222bは、マイクロレンズ2221a,2221bにより撮影光学系の射出瞳の所定の領域(たとえばF2.8)を通過する光束を受光するような形状とされる。また、焦点検出画素222a,222bにはカラーフィルタは設けられておらず、その分光特性は、光電変換を行うフォトダイオードの分光特性と、図示しない赤外カットフィルタの分光特性を総合したものとなっている。ただし、撮像画素221と同じカラーフィルタのうちの一つ、たとえば緑フィルタを備えるように構成することもできる。
【0037】
また、図5(A)、図5(B)に示す焦点検出画素222a,222bの光電変換部2222a,2222bは半円形状としたが、光電変換部2222a,2222bの形状はこれに限定されず、他の形状、たとえば、楕円形状、矩形状、多角形状とすることもできる。
【0038】
ここで、上述した焦点検出画素222a,222bの画素出力に基づいて撮影光学系の焦点状態を検出する、いわゆる位相差検出方式について説明する。
【0039】
図8は、図3のVIII-VIII線に沿う断面図であり、撮影光軸L1近傍に配置され、互いに隣接する焦点検出画素222a−1,222b−1,222a−2,222b−2が、射出瞳34の測距瞳341,342から照射される光束AB1−1,AB2−1,AB1−2,AB2−2をそれぞれ受光していることを示している。なお、図8においては、複数の焦点検出画素222a,222bのうち、撮影光軸L1近傍に位置するもののみを例示して示したが、図8に示す焦点検出画素以外のその他の焦点検出画素についても、同様に、一対の測距瞳341,342から照射される光束をそれぞれ受光するように構成されている。
【0040】
ここで、射出瞳34とは、撮影光学系の予定焦点面に配置された焦点検出画素222a,222bのマイクロレンズ2221a,2221bの前方の距離Dの位置に設定された像である。距離Dは、マイクロレンズの曲率、屈折率、マイクロレンズと光電変換部との距離などに応じて一義的に決まる値であって、この距離Dを測距瞳距離と称する。また、測距瞳341,342とは、焦点検出画素222a,222bのマイクロレンズ2221a,2221bにより、それぞれ投影された光電変換部2222a,2222bの像をいう。
【0041】
なお、図8において焦点検出画素222a−1,222b−1,222a−2,222b−2の配列方向は一対の測距瞳341,342の並び方向と一致している。
【0042】
また、図8に示すように、焦点検出画素222a−1,222b−1,222a−2,222b−2のマイクロレンズ2221a−1,2221b−1,2221a−2,2221b−2は、撮影光学系の予定焦点面近傍に配置されている。そして、マイクロレンズ2221a−1,2221b−1,2221a−2,2221b−2の背後に配置された各光電変換部2222a−1,2222b−1,2222a−2,2222b−2の形状が、各マイクロレンズ2221a−1,2221b−1,2221a−2,2221b−2から測距距離Dだけ離れた射出瞳34上に投影され、その投影形状は測距瞳341,342を形成する。
【0043】
すなわち、測距距離Dにある射出瞳34上で、各焦点検出画素の光電変換部の投影形状(測距瞳341,342)が一致するように、各焦点検出画素におけるマイクロレンズと光電変換部の相対的位置関係が定められ、それにより各焦点検出画素における光電変換部の投影方向が決定されている。
【0044】
図8に示すように、焦点検出画素222a−1の光電変換部2222a−1は、測距瞳341を通過し、マイクロレンズ2221a−1に向う光束AB1−1によりマイクロレンズ2221a−1上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。同様に、焦点検出画素222a−2の光電変換部2222a−2は測距瞳341を通過し、マイクロレンズ2221a−2に向う光束AB1−2によりマイクロレンズ2221a−2上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。
【0045】
また、焦点検出画素222b−1の光電変換部2222b−1は測距瞳342を通過し、マイクロレンズ2221b−1に向う光束AB2−1によりマイクロレンズ2221b−1上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。同様に、焦点検出画素222b−2の光電変換部2222b−2は測距瞳342を通過し、マイクロレンズ2221b−2に向う光束AB2−2によりマイクロレンズ2221b−2上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。
【0046】
そして、上述した2種類の焦点検出画素222a,222bを、図3に示すように直線状に複数配置し、各焦点検出画素222a,222bの光電変換部2222a,2222bの出力を、測距瞳341と測距瞳342とのそれぞれに対応した出力グループにまとめることにより、測距瞳341と測距瞳342とのそれぞれを通過する焦点検出光束が焦点検出画素列上に形成する一対の像の強度分布に関するデータが得られる。そして、この強度分布データに対し、相関演算処理または位相差検出処理などの像ズレ検出演算処理を施すことにより、いわゆる位相差検出方式による像ズレ量を検出することができる。
【0047】
そして、得られた像ズレ量に一対の測距瞳の重心間隔に応じた変換演算を施すことにより、予定焦点面に対する現在の焦点面(予定焦点面上のマイクロレンズアレイの位置に対応した焦点検出エリアにおける焦点面をいう。)の偏差、すなわちデフォーカス量を求めることができる。
【0048】
なお、これら位相差検出方式による像ズレ量の演算と、これに基づくデフォーカス量の演算は、カメラ制御部21により実行される。
【0049】
また、カメラ制御部21は、撮像素子22の撮像画素221の出力を読み出し、読み出した画素出力に基づき、焦点評価値の演算を行う。この焦点評価値は、たとえば撮像素子22の撮像画素221からの画像出力の高周波成分を、高周波透過フィルタを用いて抽出し、これを積算して焦点電圧を検出することで求めることができる。また、遮断周波数が異なる2つの高周波透過フィルタを用いて高周波成分を抽出し、それぞれを積算して焦点電圧を検出することでも求めることができる。
【0050】
そして、カメラ制御部21は、レンズ制御部37に制御信号を送出してフォーカスレンズ32を所定のサンプリング間隔(距離)で駆動させ、それぞれの位置における焦点評価値を求め、該焦点評価値が最大となるフォーカスレンズ32の位置を合焦位置として求める、コントラスト検出方式による焦点検出を実行する。なお、この合焦位置は、たとえば、フォーカスレンズ32を駆動させながら焦点評価値を算出した場合に、焦点評価値が、2回上昇した後、さらに、2回下降して推移した場合に、これらの焦点評価値を用いて、内挿法などの演算を行うことで求めることができる。
【0051】
次いで、本実施形態に係るカメラ1の動作例を説明する。図9は、第1実施形態に係るカメラ1の動作例を示すフローチャートである。
【0052】
ステップS101では、カメラ制御部21により、操作部28に備えられたシャッターレリーズボタンの半押し(第1スイッチSW1のオン)がされたかどうかの判断が行なわれる。シャッターレリーズボタンが半押しされた場合は、テップS102に進み、一方、シャッターレリーズボタンが半押しされていない場合は、ステップS101で待機する。
【0053】
ステップS102では、カメラ制御部21により、位相差検出方式によるデフォーカス量の算出処理が行われる。具体的には、まず、撮像素子22により、光学系からの光束の受光が行われ、カメラ制御部21により、撮像素子22の5つの焦点検出画素列22a〜22eを構成する各焦点検出画素222a,222bから一対の像に対応した一対の像データの読み出しが行われる。この場合、撮影者の手動操作により、特定の焦点検出エリアが選択されているときは、その焦点検出エリアに対応する焦点検出画素からのデータのみを読み出すような構成としてもよい。そして、カメラ制御部21は、読み出された一対の像データに基づいて像ズレ検出演算処理(相関演算処理)を実行し、5つの焦点検出画素列22a〜22eに対応する焦点検出エリアにおける像ズレ量を演算し、さらに像ズレ量をデフォーカス量に変換する。
【0054】
続くステップS103では、カメラ制御部21により、ステップS102で算出されたデフォーカス量と、エンコーダ35により検出されたフォーカスレンズ32の現在位置とに基づいて、デフォーカス量に応じてフォーカスレンズ32を駆動した場合の駆動後のフォーカスレンズ32のレンズ位置における像面位置が、被写体の像面位置として検出される。そして、カメラ制御部21は、検出した被写体の像面位置を、該被写体の像面位置を検出した時刻に関連付けて、カメラ制御部21のメモリに記憶する。ここで、図10は、被写体の像面位置の履歴の一例を示す図であり、被写体が無限遠側から至近側に移動している場面における、被写体の像面位置の履歴を例示している。図10に示す例では、時刻T1において、被写体の像面位置PT1が検出され、その後、時刻T2において、被写体の像面位置PT2が、時刻T1における被写体の像面位置PT1よりも至近側で検出される。同様に、時刻T3,T4において、被写体の像面位置PT3,PT4がそれぞれ検出される。そして、カメラ制御部21は、検出されたそれぞれの像面位置を、該像面位置を検出した時刻に関連付けて、カメラ制御部21のメモリに記憶することで、図10に示すように、時系列に沿った被写体の像面位置の履歴が、カメラ制御部21のメモリに記憶されることとなる。
【0055】
ステップS104では、カメラ制御部21により、ステップS102で算出されたデフォーカス量に基づいて、フォーカスレンズ32を合焦位置まで駆動するためのレンズ駆動量の算出が行われ、算出されたレンズ駆動量が、レンズ制御部37を介して、フォーカスレンズ駆動モータ36に送出される。これにより、フォーカスレンズ駆動モータ36により、算出されたレンズ駆動量に基づいて、フォーカスレンズ32が駆動される。
【0056】
そして、ステップS105では、カメラ制御部21により、シャッターレリーズボタンの全押し(第2スイッチSW2のオン)がされたか否か判断される。第2スイッチSW2がオンの場合には、ステップS106に進み、一方、第2スイッチSW2がオンではない場合には、ステップS101に戻る。
【0057】
ステップS106では、カメラ制御部21により、ステップS103で得られた被写体の像面位置の履歴に基づいて、被写体が光軸方向に移動しているか否かの判断が行われる。被写体が光軸方向に移動していると判断された場合は、ステップS107に進み、一方、被写体が光軸方向に移動しておらず、被写体が静止していると判断された場合は、ステップS111に進む。なお、本実施形態において、カメラ制御部21は、たとえば、図10に示すように、被写体の像面位置が一定の光軸方向(図10に示す例では至近側)に移動している場合には、被写体が光軸方向に移動しているものと判断することができ、被写体の像面位置が移動していない場合や、被写体の像面位置が光軸方向に沿って前後に移動しているが、被写体の像面位置が一定の光軸方向に移動していない場合には、被写体は静止していると判断することができる。
【0058】
ステップS107では、カメラ制御部21により、焦点検出エリアに対応する画素において、電荷の蓄積が開始される蓄積開始時刻Tsの算出が行われる。以下においては、図11を用いて、焦点検出エリアに対応する画素の蓄積開始時刻Tsの算出方法について説明する。
【0059】
図11は、カメラ1の動作を説明するための図であり、図11(A)に示す撮像素子22における、各画素における電荷の蓄積開始時刻のずれを、図11(B)に示している。なお、図11(A)に示す撮像素子22は、光学系の焦点状態を検出し、画像を撮像するための画素からなる有効画素領域と、有効画素領域の画素の出力から暗電流ノイズを除去するための画素からなるオプティカルブラック画素領域とを有している。図11に示す例では、時刻tS2において、シャッターレリーズボタンが全押しされ、時刻Tpにおいて、カメラ制御部21により垂直同期信号が発せられる。これにより、時刻Tpから、撮像素子22の露光が開始され、撮像素子22の上部に位置する画素から、撮像素子22の下部に位置する画素に向かって、順に、電荷の蓄積が開始される。具体的には、時刻Tpにおいて、撮像素子22の画素のうち垂直方向の最も上部に位置するオプティカルブラック画素領域の画素において、電荷の蓄積が開始され、その後、時刻Taにおいて、有効画素領域の画素のうち垂直方向の最も上部に位置する画素において、電荷の蓄積が開始される。そして、有効画素領域の画素において、順次、電荷の蓄積が開始されるとともに、電荷の蓄積の開始から一定の露光時間texpが経過した画素は、電荷の蓄積を終了する。時刻Tbになると、有効画素領域の画素のうち垂直方向の最も下部に位置する画素において、電荷の蓄積が終了し、さらに、時刻Tcになると、撮像素子22の画素のうち垂直方向の最も下部に位置するオプティカルブラック画素領域の画素においても、電荷の蓄積が終了し、これにより、撮像素子22による露光が終了する。
【0060】
焦点検出エリアに対応する画素の蓄積開始時刻Tsは、このように、撮像素子22の垂直方向の画素の位置に応じて異なる、各画素における電荷の蓄積開始時刻のうち、焦点検出エリアに対応する画素における電荷の蓄積開始時刻であり、本実施形態においては、図11に示すように、焦点検出エリアに対応する画素のうち、垂直方向の中央に位置する画素が、電荷の蓄積を開始する時刻とする。
【0061】
蓄積開始時刻Tsの算出方法は、特に限定されないが、本実施形態においては、下記式(1)に基づいて、蓄積開始時刻Tsを算出することができる。
Ts=Tp+tscan×(AFpos/Vsize) ・・・(1)
ここで、図11(B)に示すように、tscanは、垂直同期信号が発せられ、撮像素子22の画素のうち垂直方向の最も上部に位置する画素において、電荷の蓄積が開始される時刻Tpから、撮像素子22の画素のうち垂直方向の最も下部に位置する画素において、電荷の蓄積が開始される時刻までの時間である。また、Vsizeは、撮像素子22の垂直方向における画素数であり、AFposは、撮像素子22の画素のうち垂直方向において最も上部に位置する画素から、焦点検出エリアに対応する画素のうち垂直方向の中央に位置する画素までの画素数である。
【0062】
そして、ステップS108では、カメラ制御部21により、図11に示すように、シャッターレリーズボタンが全押しされた時刻tS2から、ステップS107で算出された蓄積開始時刻Tsまでの時間が、焦点検出エリアに対応する画素の蓄積遅れ時間TRとして算出される。
【0063】
ステップS109では、カメラ制御部21により、蓄積開始時刻Tsにおける被写体の像面位置の予測が行われる。具体的には、カメラ制御部21は、ステップS103で取得した被写体の像面位置の履歴に基づいて、被写体の像面移動速度を算出し、算出した被写体の像面移動速度と、ステップS108で算出した蓄積遅れ時間TRとに基づいて、蓄積遅れ時間TRにおいて被写体が移動する像面移動量を算出する。そして、カメラ制御部21は、算出した被写体の像面移動量に基づいて、蓄積開始時刻Tsにおける被写体の像面位置を予測することができる。たとえば、図10に示す例において、カメラ制御部21は、算出した蓄積遅れ時間TRにおける被写体の像面移動量と、ステップS103で検出した最新の像面位置P4とに基づいて、蓄積開始時刻Tsにおける被写体の像面位置PTsを予測することができる。
【0064】
ステップS110では、カメラ制御部21により、ステップS109で予測された蓄積開始時刻Tsにおける被写体の像面位置に対応するレンズ位置まで、フォーカスレンズ32を駆動するためのレンズ駆動量の算出が行われ、算出されたレンズ駆動量が、レンズ制御部37を介して、フォーカスレンズ駆動モータ36に送出される。これにより、フォーカスレンズ駆動モータ36により、算出されたレンズ駆動量に基づいて、蓄積開始時刻Tsにおける被写体の像面位置に対応するレンズ位置まで、フォーカスレンズ32が駆動されることとなる。
【0065】
そして、ステップS111では、撮像素子22により露光が開始され、画像の撮像が行われる。本実施形態では、図11に示すように、焦点検出エリアに対応する画素の露光が、蓄積開始時時刻Tsから開始され、蓄積開始時時刻Tsから所定の露光時間texpの間、電荷の蓄積が行われる。そして、カメラ制御部21により、蓄積された電荷に応じた画像データが、撮像素子22から読み出され、読み出された画像の画像データが、メモリ24に記憶される。
【0066】
以上のように、本実施形態では、焦点検出エリアに対応する画素の蓄積開始時刻Tsにおける被写体の像面位置を予測し、予測した被写体の像面位置に応じたレンズ位置まで、フォーカスレンズ32を駆動させて、画像の撮像を行う。これにより、本実施形態では、シャッターレリーズボタンが全押しされてから、焦点検出エリアに対応する画素の蓄積開始時刻Tsまでの蓄積遅れ時間TRの間に、被写体が光軸方向に移動し、被写体の像面位置が変化してしまった場合でも、被写体にピントの合った画像を撮像することができる。
【0067】
≪第2実施形態≫
次いで、本発明の第2実施形態を説明する。本発明の第2実施形態は、図1に示す第1実施形態のカメラ1において、焦点検出エリアに対応する画素の蓄積開始時刻Tsにおける被写体の像面位置を予測し、予測した被写体の像面位置に対応するレンズ位置まで、フォーカスレンズ32を駆動させた後に、蓄積開始時刻Tsから、焦点検出エリアに対応する画素において電荷の蓄積が行われている間に、被写体の像面移動速度に応じて、フォーカスレンズ32を等速で駆動させる構成となっていること以外は、第1実施形態と同様の構成となっている。
【0068】
すなわち、第2実施形態では、第1実施形態と同様に、焦点検出エリアに対応する画素の蓄積開始時刻Tsにおける被写体の像面位置を予測し(ステップS109)、予測した被写体の像面位置に対応するレンズ位置に、フォーカスレンズ32を駆動する(ステップS110)。そして、カメラ制御部21は、焦点検出エリアに対応する画素の蓄積開始時刻Tsから、焦点検出エリアに対応する画素において電荷の蓄積が行われている間に、被写体の像面移動速度に応じて、フォーカスレンズ32を等速で駆動させながら、画像の撮像を行う(ステップS111)。たとえば、図11に示す例において、カメラ制御部21は、蓄積開始時刻Tsにおける被写体の像面位置に応じたレンズ位置に、フォーカスレンズ32を駆動させた後に、フォーカスレンズ32を、焦点検出エリアに対応する画素の蓄積開始時刻Tsから、焦点検出エリアに対応する画素の蓄積終了時刻Tgまでの間において、被写体の像面移動速度で駆動させながら、画像の撮像を行う。
【0069】
このように、第2実施形態では、焦点検出エリアに対応する画素において電荷の蓄積が行われている間、被写体の像面移動速度に応じて、フォーカスレンズ32を等速で駆動させながら、画像の撮像を行う。これにより、第2実施形態では、第1実施形態の効果に加えて、焦点検出エリアに対応する画素において電荷の蓄積が行われている間における、被写体の像面位置の変化に追従して、画像を撮像することができるため、被写体にピントの合った画像をより適切に撮像することができる。
【0070】
≪第3実施形態≫
次いで、本発明の第3実施形態を説明する。本発明の第3実施形態は、図1に示す第1実施形態のカメラ1において、焦点検出エリアに対応する画素の露光時間内の所定時刻における被写体の像面位置を予測し、予測した被写体の像面位置に対応するレンズ位置まで、フォーカスレンズ32を駆動させる構成となっていること以外は、第1実施形態と同様の構成となっている。
【0071】
すなわち、第3実施形態では、カメラ制御部21により、焦点検出エリアに対応する画素の蓄積開始時刻Tsと、画素の露光時間texpとに基づいて、焦点検出エリアに対応する画素の露光時間texp内の所定時刻が算出され、算出された時刻における被写体の像面位置が予測される(ステップS109)。たとえば、図11に示す例において、カメラ制御部21は、焦点検出エリアに対応する画素の蓄積開始時刻Tsから、焦点検出エリアに対応する画素の露光時間texpのうちの半分の時間が経過した時刻Teを算出する。そして、カメラ制御部21は、図10に示すように、被写体の像面位置の履歴に基づいて、算出した露光時間内の時刻Teにおける被写体の像面位置PTeを予測する。そして、予測された被写体の像面位置PTeに対応するレンズ位置に、フォーカスレンズ32が駆動され(ステップS110)、予測された被写体の像面位置PTeに対応するレンズ位置で、画像の撮像が行われる(ステップS111)。
【0072】
このように、第3実施形態では、焦点検出エリアに対応する画素の露光時間内の所定時刻における被写体の像面位置を予測し、予測した被写体の像面位置に対応するレンズ位置に、フォーカスレンズ32を駆動させて、画像の撮像を行う。これにより、第3実施形態では、たとえば、焦点検出エリアに対応する画素の露光時間texp内に、被写体の像面位置が、図10に示す像面位置PTgまで移動した場合であっても、フォーカスレンズ32を、焦点検出エリアに対応する画素の露光時間texp内の時刻Teにおける被写体の像面位置PTeまで駆動させることで、被写体の像面位置PTgと、フォーカスレンズのレンズ位置に対応する像面位置PTeとの距離(PTg−PTe)を、第1実施形態よりも小さくすることができるため、被写体にピントの合った画像をより適切に撮影することができる。
【0073】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0074】
たとえば、上述した実施形態では、焦点検出エリアに対応する画素の蓄積開始時刻Tsにおける被写体の像面位置を予測し、予測した被写体の像面位置に基づいて、フォーカスレンズ32を駆動する構成を例示したが、この構成に限定されるものではなく、たとえば、焦点検出エリアに対応する画素の蓄積開始時刻Tsにおける被写体までの距離を予測し、予測した被写体までの距離に基づいて、フォーカスレンズ32を駆動する構成としてもよい。
【0075】
また、上述した実施形態では、デフォーカス量に基づいて、被写体の像面位置を検出し、検出した被写体の像面位置に基づいて、焦点検出エリアに対応する画素の蓄積開始時刻Tsにおける被写体の像面位置を予測する構成を例示したが、たとえば、コントラスト検出方式により算出した焦点評価値に基づいて、合焦位置を検出し、検出した合焦位置の履歴に基づいて、焦点検出エリアに対応する画素の蓄積開始時刻Tsにおける被写体の位置を予測する構成としてもよい。
【0076】
なお、上述した実施形態のカメラ1は特に限定されず、例えば、デジタルビデオカメラ、一眼レフデジタルカメラ、レンズ一体型のデジタルカメラ、携帯電話用のカメラなどのその他の光学機器に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0077】
1…デジタルカメラ
2…カメラ本体
21…カメラ制御部
22…撮像素子
221…撮像画素
222a,222b…焦点検出画素
28…操作部
3…レンズ鏡筒
32…フォーカスレンズ
36…フォーカスレンズ駆動モータ
37…レンズ制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、シャッターレリーズボタンを全押しされてから、露光が開始されるまでの間に、動体被写体が光軸方向に移動してまった場合でも、露光開始時に、動体被写体にピントが合うように、露光開始時の動体被写体の位置を予測し、該予測結果に基づいて、焦点調節用レンズの駆動を制御する撮像装置が知られている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−128611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ローリングシャッター方式の撮像素子を用いた場合、撮像素子内の垂直方向における画素の位置に応じて、各画素における電荷の蓄積開始時刻が異なるが、従来技術では、このような、垂直方向における画素の位置に応じた画素ごとの電荷の蓄積開始時刻のずれが考慮されていないため、焦点検出を行うための焦点検出エリアの位置によっては、動体被写体にピントの合った画像を撮影できない場合があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、良好な画像を撮影することが可能な撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の解決手段によって上記課題を解決する。なお、以下においては、本発明の実施形態を示す図面に対応する符号を付して説明するが、この符号は発明の理解を容易にするためだけのものであって発明を限定する趣旨ではない。
【0007】
[1]本発明に係る撮像装置は、複数の画素が水平方向および垂直方向に二次元状に配列されており、垂直方向における画素の位置に応じて、各画素における電荷の蓄積開始時刻が異なるローリングシャッター方式の撮像素子(22)と、前記撮像素子からの出力に基づいて、撮像画面内の焦点検出エリアにおける、焦点調節用レンズ(32)を含む撮影レンズの焦点状態を検出する焦点検出部(21)と、前記焦点調節用レンズの位置を検出するレンズ位置検出部(35)と、所定時刻における被写体の光軸方向の位置を予測する被写体位置予測部(21)と、前記焦点検出エリアに対応する画素の前記撮像素子内における垂直方向の位置を検出し、前記焦点検出エリアに対応する画素の前記蓄積開始時刻を演算する蓄積開始時刻演算部(21)と、前記被写体位置予測部による予測結果に基づいて、前記焦点検出エリアに対応する画素の前記蓄積開始時刻における被写体の光軸方向の位置を、被写体予測位置として演算する被写体位置演算部(21)と、前記被写体位置演算部により算出された前記被写体予測位置に基づいて、前記焦点調節用レンズを駆動させる駆動部(36)と、を備えることを特徴とする。
【0008】
[2]上記撮像装置に係る発明において、前記撮像素子(22)は、二次元状に配列された複数の撮像用画素(221)と、前記撮像用画素に混在して一次元状または二次元状に配列された複数の焦点検出用画素(222a,222b)とを有し、前記焦点検出部(21)は、前記焦点検出用画素の出力に基づいて、前記光学系による像面のずれ量を検出することで、前記光学系の焦点状態を検出する位相差検出方式の焦点検出、および、前記撮像用画素の出力に基づいて、前記光学系による像のコントラストに関する評価値を算出し、算出した評価値に基づいて、前記光学系の焦点状態を検出するコントラスト検出方式の焦点検出のうち、少なくともいずれか一方の方式で焦点検出を行うことが可能であるように構成することができる。
【0009】
[3]上記撮像装置に係る発明において、被写体が光軸方向において静止しているか否かを判定する判定部(21)をさらに備え、前記駆動部(36)は、前記判定部による判定の結果、被写体が光軸方向において静止していると判定された場合には、前記被写体予測位置に基づいた前記焦点調節用レンズの駆動処理を行わないように構成することができる。
【0010】
[4]上記撮像装置に係る発明において、前記被写体位置予測部(21)による予測結果に基づいて、被写体の光軸方向の移動速度を演算する移動速度演算部(21)をさらに備え、前記駆動部は、前記焦点検出エリアに対応する画素の前記蓄積開始時刻後、前記焦点検出エリアに対応する画素において電荷の蓄積が行われている間、前記焦点調節用レンズ(32)を、前記被写体の光軸方向の移動速度に応じて、等速で駆動させるように構成することができる。
【0011】
[5]上記撮像装置に係る発明において、前記被写体位置演算部(21)は、前記被写体位置予測部(21)による予測結果に加え、前記画素の露光時間に基づいて、前記焦点検出エリアに対応する画素において電荷の蓄積が行われている間の所定時刻における、前記被写体の光軸方向の位置を、前記被写体予測位置として演算するように構成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、良好な画像を撮影することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本実施形態に係るカメラを示すブロック図である。
【図2】図2は、図1に示す撮像素子の撮像面における焦点検出エリアを示す正面図である。
【図3】図3は、図2のIII部を拡大して焦点検出画素222a,222bの配列を模式的に示す正面図である。
【図4】図4は、撮像画素221の一つを拡大して示す正面図である。
【図5】図5(A)は、焦点検出画素222aの一つを拡大して示す正面図、図5(B)は、焦点検出画素222bの一つを拡大して示す正面図である。
【図6】図6は、撮像画素221の一つを拡大して示す断面図である。
【図7】図7(A)は、焦点検出画素222aの一つを拡大して示す断面図、図7(B)は、焦点検出画素222bの一つを拡大して示す断面図である。
【図8】図8は、図3のVIII-VIII線に沿う断面図である。
【図9】図9は、本実施形態に係るカメラの動作を示すフローチャートである。
【図10】図10は、蓄積開始時刻Tsにおける被写体の像面位置を予測する方法を説明するための図である。
【図11】図11は、本実施形態に係るカメラの動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
≪第1実施形態≫
図1は、本発明の実施形態に係るデジタルカメラ1を示す要部構成図である。本実施形態のデジタルカメラ1(以下、単にカメラ1という。)は、カメラ本体2とレンズ鏡筒3から構成され、これらカメラ本体2とレンズ鏡筒3はマウント部4により着脱可能に結合されている。
【0016】
レンズ鏡筒3は、カメラ本体2に着脱可能な交換レンズである。図1に示すように、レンズ鏡筒3には、レンズ31,32,33、および絞り34を含む撮影光学系が内蔵されている。
【0017】
レンズ32は、フォーカスレンズであり、光軸L1方向に移動することで、撮影光学系の焦点距離を調節可能となっている。フォーカスレンズ32は、レンズ鏡筒3の光軸L1に沿って移動可能に設けられ、エンコーダ35によってその位置が検出されつつフォーカスレンズ駆動モータ36によってその位置が調節される。
【0018】
このフォーカスレンズ32の光軸L1に沿う移動機構の具体的構成は特に限定されない。一例を挙げれば、レンズ鏡筒3に固定された固定筒に回転可能に回転筒を挿入し、この回転筒の内周面にヘリコイド溝(螺旋溝)を形成するとともに、フォーカスレンズ32を固定するレンズ枠の端部をヘリコイド溝に嵌合させる。そして、フォーカスレンズ駆動モータ36によって回転筒を回転させることで、レンズ枠に固定されたフォーカスレンズ32が光軸L1に沿って直進移動することになる。
【0019】
上述したようにレンズ鏡筒3に対して回転筒を回転させることによりレンズ枠に固定されたフォーカスレンズ32は光軸L1方向に直進移動するが、その駆動源としてのフォーカスレンズ駆動モータ36がレンズ鏡筒3に設けられている。フォーカスレンズ駆動モータ36と回転筒とは、たとえば複数の歯車からなる変速機で連結され、フォーカスレンズ駆動モータ36の駆動軸を何れか一方向へ回転駆動すると所定のギヤ比で回転筒に伝達され、そして、回転筒が何れか一方向へ回転することで、レンズ枠に固定されたフォーカスレンズ32が光軸L1の何れかの方向へ直進移動することになる。なお、フォーカスレンズ駆動モータ36の駆動軸が逆方向に回転駆動すると、変速機を構成する複数の歯車も逆方向に回転し、フォーカスレンズ32は光軸L1の逆方向へ直進移動することになる。
【0020】
フォーカスレンズ32の位置はエンコーダ35によって検出される。既述したとおり、フォーカスレンズ32の光軸L1方向の位置は回転筒の回転角に相関するので、たとえばレンズ鏡筒3に対する回転筒の相対的な回転角を検出すれば求めることができる。
【0021】
本実施形態のエンコーダ35としては、回転筒の回転駆動に連結された回転円板の回転をフォトインタラプタなどの光センサで検出して、回転数に応じたパルス信号を出力するものや、固定筒と回転筒の何れか一方に設けられたフレキシブルプリント配線板の表面のエンコーダパターンに、何れか他方に設けられたブラシ接点を接触させ、回転筒の移動量(回転方向でも光軸方向の何れでもよい)に応じた接触位置の変化を検出回路で検出するものなどを用いることができる。
【0022】
フォーカスレンズ32は、上述した回転筒の回転によってカメラボディ側の端部(至近端ともいう)から被写体側の端部(無限端ともいう)までの間を光軸L1方向に移動することができる。ちなみに、エンコーダ35で検出されたフォーカスレンズ32の現在位置情報は、レンズ制御部37を介して後述するカメラ制御部21へ送出され、フォーカスレンズ駆動モータ36は、この情報に基づいて演算されたフォーカスレンズ32の駆動位置が、カメラ制御部21からレンズ制御部37を介して送出されることにより駆動する。
【0023】
絞り34は、上記撮影光学系を通過して撮像素子22に至る光束の光量を制限するとともにボケ量を調整するために、光軸L1を中心にした開口径が調節可能に構成されている。絞り34による開口径の調節は、たとえば自動露出モードにおいて演算された適切な開口径が、カメラ制御部21からレンズ制御部37を介して送出されることにより行われる。また、カメラ本体2に設けられた操作部28によるマニュアル操作により、設定された開口径がカメラ制御部21からレンズ制御部37に入力される。絞り34の開口径は図示しない絞り開口センサにより検出され、レンズ制御部37で現在の開口径が認識される。
【0024】
一方、カメラ本体2には、上記撮影光学系からの光束L1を受光する撮像素子22が、撮影光学系の予定焦点面に設けられ、その前面にシャッター23が設けられている。本実施形態に係る撮像素子22は、その撮像面に複数の画素が水平方向および垂直方向に二次元状に配列されており、水平方向に配列された画素列(走査ライン)ごとに、順次シャッターを切るローリングシャッター方式により駆動する。このような撮像素子22としては、たとえば、CMOSイメージセンサを用いることができる。また、撮像素子22は、被写体からの光束を受光し、受光した光信号を電気信号に変換してカメラ制御部21に送出する。カメラ制御部21に送出された撮影画像情報は、逐次、液晶駆動回路25に送出されて観察光学系の電子ビューファインダ(EVF)26に表示されるとともに、操作部28に備えられたレリーズボタン(不図示)が全押しされた場合には、その撮影画像情報が、記録媒体であるメモリ24に記録される。このようなメモリとしては着脱可能なカード型メモリや内蔵型メモリの何れをも用いることができる。なお、撮像素子22の撮像面の前方には、赤外光をカットするための赤外線カットフィルタ、および画像の折り返しノイズを防止するための光学的ローパスフィルタが配置されている。撮像素子22の構造の詳細は後述する。
【0025】
カメラ本体2にはカメラ制御部21が設けられている。カメラ制御部21は、マウント部4に設けられた電気信号接点部41によりレンズ制御部37と電気的に接続され、このレンズ制御部37からレンズ情報を受信するとともに、レンズ制御部37へデフォーカス量や絞り開口径などの情報を送信する。また、カメラ制御部21は、上述したように撮像素子22から画素出力を読み出すとともに、読み出した画素出力について、必要に応じて所定の情報処理を施すことにより画像情報を生成し、生成した画像情報を、電子ビューファインダ26の液晶駆動回路25や記録媒体であるメモリ(不図示)に出力する。また、カメラ制御部21は、撮像素子22からの画像情報の補正やレンズ鏡筒3の焦点調節状態、絞り調節状態などを検出するなど、カメラ1全体の制御を司る。
【0026】
また、カメラ制御部21は、上記に加えて、撮像素子22から読み出した画素データに基づき、位相検出方式による撮影光学系の焦点状態の検出、およびコントラスト検出方式による光学系の焦点状態の検出を行う。なお、焦点状態の検出方法については、後述する。
【0027】
操作部28は、シャッターレリーズボタン、および撮影者がカメラ1の各種動作モードを設定するための入力スイッチであり、オートフォーカスモード/マニュアルフォーカスモードの切換が行えるようになっている。操作部28により設定された各種モードはカメラ制御部21へ送出され、当該カメラ制御部21によりカメラ1全体の動作が制御される。また、シャッターレリーズボタンは、ボタンの半押しでONとなる第1スイッチSW1と、ボタンの全押しでONとなる第2スイッチSW2とを含む。
【0028】
次に、本実施形態に係る撮像素子22について説明する。
【0029】
図2は、撮像素子22の撮像面を示す正面図、図3は、図2のIII部を拡大して焦点検出画素222a,222bの配列を模式的に示す正面図である。なお、実際の撮像素子22には、オプティカルブラック画素領域が存在するが、説明を簡略化するため、図2については記載を省略する。
【0030】
本実施形態の撮像素子22は、図3に示すように、複数の撮像画素221が、撮像面の平面上に、水平方向および垂直方向に二次元的に配列され、緑色の波長領域を透過するカラーフィルタを有する緑画素Gと、赤色の波長領域を透過するカラーフィルタを有する赤画素Rと、青色の波長領域を透過するカラーフィルタを有する青画素Bがいわゆるベイヤー配列(Bayer Arrangement)されたものである。すなわち、隣接する4つの画素群223(稠密正方格子配列)において一方の対角線上に2つの緑画素が配列され、他方の対角線上に赤画素と青画素が1つずつ配列されている。このベイヤー配列された画素群223を単位として、当該画素群223を撮像素子22の撮像面に二次元状に繰り返し配列することで撮像素子22が構成されている。
【0031】
なお、単位画素群223の配列は、図示する稠密正方格子以外にも、たとえば稠密六方格子配列にすることもできる。また、カラーフィルタの構成や配列はこれに限定されることはなく、補色フィルタ(緑:G、イエロー:Ye、マゼンタ:Mg,シアン:Cy)の配列を採用することもできる。
【0032】
図4は、撮像画素221の一つを拡大して示す正面図、図6は断面図である。一つの撮像画素221は、マイクロレンズ2211と、光電変換部2212と、図示しないカラーフィルタから構成され、図6の断面図に示すように、撮像素子22の半導体回路基板2213の表面に光電変換部2212が造り込まれ、その表面にマイクロレンズ2211が形成されている。光電変換部2212は、マイクロレンズ2211により撮影光学系の射出瞳(たとえばF1.0)を通過する撮像光束を受光する形状とされ、撮像光束を受光する。
【0033】
また、撮像素子22の撮像面には、上述した撮像画素221に代えて焦点検出画素222a,222bが配列された焦点検出画素列22a〜22eが設けられている。図3に示すように、一つの焦点検出画素列は、複数の焦点検出画素222aおよび222bが、互いに隣接して交互に、水平方向に配列されて構成されている。本実施形態においては、焦点検出画素222aおよび222bは、ベイヤー配列された撮像画素221の緑画素Gと青画素Bとの位置にギャップを設けることなく密に配列されている。
【0034】
なお、図2に示す焦点検出画素列22a〜22eの位置は図示する位置にのみ限定されず、何れか一箇所、二箇所、三箇所、あるいは四箇所とすることもでき、また、六箇所以上の位置に配置することもできる。また、実際の焦点検出に際しては、撮影者が操作部28を手動操作することにより、複数配置された各焦点検出画素列22a〜22e、または各焦点検出画素列22a〜22eの一部に対応する焦点検出エリアの中から、所望の焦点検出エリアを選択することもできる。
【0035】
図5(A)は、焦点検出画素222aの一つを拡大して示す正面図、図7(A)は、焦点検出画素222aの断面図である。また、図5(B)は、焦点検出画素222bの一つを拡大して示す正面図、図7(B)は、焦点検出画素222bの断面図である。焦点検出画素222aは、図5(A)に示すように、マイクロレンズ2221aと、半円形状の光電変換部2222aとから構成され、図7(A)の断面図に示すように、撮像素子22の半導体回路基板2213の表面に光電変換部2222aが造り込まれ、その表面にマイクロレンズ2221aが形成されている。また、焦点検出画素222bは、図5(B)に示すように、マイクロレンズ2221bと、光電変換部2222bとから構成され、図7(B)の断面図に示すように、撮像素子22の半導体回路基板2213の表面に光電変換部2222bが造り込まれ、その表面にマイクロレンズ2221bが形成されている。そして、これら焦点検出画素222aおよび222bは、図3に示すように、互いに隣接して交互に、水平方向に配列されることにより、図2に示す焦点検出画素列22a〜22eを構成する。なお、図3においては、16個の焦点検出画素222a,222bにより、焦点検出画素列を構成する例を示しているが、焦点検出画素列を構成する焦点検出画素の数は特に限定されない。
【0036】
なお、焦点検出画素222a,222bの光電変換部2222a,2222bは、マイクロレンズ2221a,2221bにより撮影光学系の射出瞳の所定の領域(たとえばF2.8)を通過する光束を受光するような形状とされる。また、焦点検出画素222a,222bにはカラーフィルタは設けられておらず、その分光特性は、光電変換を行うフォトダイオードの分光特性と、図示しない赤外カットフィルタの分光特性を総合したものとなっている。ただし、撮像画素221と同じカラーフィルタのうちの一つ、たとえば緑フィルタを備えるように構成することもできる。
【0037】
また、図5(A)、図5(B)に示す焦点検出画素222a,222bの光電変換部2222a,2222bは半円形状としたが、光電変換部2222a,2222bの形状はこれに限定されず、他の形状、たとえば、楕円形状、矩形状、多角形状とすることもできる。
【0038】
ここで、上述した焦点検出画素222a,222bの画素出力に基づいて撮影光学系の焦点状態を検出する、いわゆる位相差検出方式について説明する。
【0039】
図8は、図3のVIII-VIII線に沿う断面図であり、撮影光軸L1近傍に配置され、互いに隣接する焦点検出画素222a−1,222b−1,222a−2,222b−2が、射出瞳34の測距瞳341,342から照射される光束AB1−1,AB2−1,AB1−2,AB2−2をそれぞれ受光していることを示している。なお、図8においては、複数の焦点検出画素222a,222bのうち、撮影光軸L1近傍に位置するもののみを例示して示したが、図8に示す焦点検出画素以外のその他の焦点検出画素についても、同様に、一対の測距瞳341,342から照射される光束をそれぞれ受光するように構成されている。
【0040】
ここで、射出瞳34とは、撮影光学系の予定焦点面に配置された焦点検出画素222a,222bのマイクロレンズ2221a,2221bの前方の距離Dの位置に設定された像である。距離Dは、マイクロレンズの曲率、屈折率、マイクロレンズと光電変換部との距離などに応じて一義的に決まる値であって、この距離Dを測距瞳距離と称する。また、測距瞳341,342とは、焦点検出画素222a,222bのマイクロレンズ2221a,2221bにより、それぞれ投影された光電変換部2222a,2222bの像をいう。
【0041】
なお、図8において焦点検出画素222a−1,222b−1,222a−2,222b−2の配列方向は一対の測距瞳341,342の並び方向と一致している。
【0042】
また、図8に示すように、焦点検出画素222a−1,222b−1,222a−2,222b−2のマイクロレンズ2221a−1,2221b−1,2221a−2,2221b−2は、撮影光学系の予定焦点面近傍に配置されている。そして、マイクロレンズ2221a−1,2221b−1,2221a−2,2221b−2の背後に配置された各光電変換部2222a−1,2222b−1,2222a−2,2222b−2の形状が、各マイクロレンズ2221a−1,2221b−1,2221a−2,2221b−2から測距距離Dだけ離れた射出瞳34上に投影され、その投影形状は測距瞳341,342を形成する。
【0043】
すなわち、測距距離Dにある射出瞳34上で、各焦点検出画素の光電変換部の投影形状(測距瞳341,342)が一致するように、各焦点検出画素におけるマイクロレンズと光電変換部の相対的位置関係が定められ、それにより各焦点検出画素における光電変換部の投影方向が決定されている。
【0044】
図8に示すように、焦点検出画素222a−1の光電変換部2222a−1は、測距瞳341を通過し、マイクロレンズ2221a−1に向う光束AB1−1によりマイクロレンズ2221a−1上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。同様に、焦点検出画素222a−2の光電変換部2222a−2は測距瞳341を通過し、マイクロレンズ2221a−2に向う光束AB1−2によりマイクロレンズ2221a−2上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。
【0045】
また、焦点検出画素222b−1の光電変換部2222b−1は測距瞳342を通過し、マイクロレンズ2221b−1に向う光束AB2−1によりマイクロレンズ2221b−1上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。同様に、焦点検出画素222b−2の光電変換部2222b−2は測距瞳342を通過し、マイクロレンズ2221b−2に向う光束AB2−2によりマイクロレンズ2221b−2上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。
【0046】
そして、上述した2種類の焦点検出画素222a,222bを、図3に示すように直線状に複数配置し、各焦点検出画素222a,222bの光電変換部2222a,2222bの出力を、測距瞳341と測距瞳342とのそれぞれに対応した出力グループにまとめることにより、測距瞳341と測距瞳342とのそれぞれを通過する焦点検出光束が焦点検出画素列上に形成する一対の像の強度分布に関するデータが得られる。そして、この強度分布データに対し、相関演算処理または位相差検出処理などの像ズレ検出演算処理を施すことにより、いわゆる位相差検出方式による像ズレ量を検出することができる。
【0047】
そして、得られた像ズレ量に一対の測距瞳の重心間隔に応じた変換演算を施すことにより、予定焦点面に対する現在の焦点面(予定焦点面上のマイクロレンズアレイの位置に対応した焦点検出エリアにおける焦点面をいう。)の偏差、すなわちデフォーカス量を求めることができる。
【0048】
なお、これら位相差検出方式による像ズレ量の演算と、これに基づくデフォーカス量の演算は、カメラ制御部21により実行される。
【0049】
また、カメラ制御部21は、撮像素子22の撮像画素221の出力を読み出し、読み出した画素出力に基づき、焦点評価値の演算を行う。この焦点評価値は、たとえば撮像素子22の撮像画素221からの画像出力の高周波成分を、高周波透過フィルタを用いて抽出し、これを積算して焦点電圧を検出することで求めることができる。また、遮断周波数が異なる2つの高周波透過フィルタを用いて高周波成分を抽出し、それぞれを積算して焦点電圧を検出することでも求めることができる。
【0050】
そして、カメラ制御部21は、レンズ制御部37に制御信号を送出してフォーカスレンズ32を所定のサンプリング間隔(距離)で駆動させ、それぞれの位置における焦点評価値を求め、該焦点評価値が最大となるフォーカスレンズ32の位置を合焦位置として求める、コントラスト検出方式による焦点検出を実行する。なお、この合焦位置は、たとえば、フォーカスレンズ32を駆動させながら焦点評価値を算出した場合に、焦点評価値が、2回上昇した後、さらに、2回下降して推移した場合に、これらの焦点評価値を用いて、内挿法などの演算を行うことで求めることができる。
【0051】
次いで、本実施形態に係るカメラ1の動作例を説明する。図9は、第1実施形態に係るカメラ1の動作例を示すフローチャートである。
【0052】
ステップS101では、カメラ制御部21により、操作部28に備えられたシャッターレリーズボタンの半押し(第1スイッチSW1のオン)がされたかどうかの判断が行なわれる。シャッターレリーズボタンが半押しされた場合は、テップS102に進み、一方、シャッターレリーズボタンが半押しされていない場合は、ステップS101で待機する。
【0053】
ステップS102では、カメラ制御部21により、位相差検出方式によるデフォーカス量の算出処理が行われる。具体的には、まず、撮像素子22により、光学系からの光束の受光が行われ、カメラ制御部21により、撮像素子22の5つの焦点検出画素列22a〜22eを構成する各焦点検出画素222a,222bから一対の像に対応した一対の像データの読み出しが行われる。この場合、撮影者の手動操作により、特定の焦点検出エリアが選択されているときは、その焦点検出エリアに対応する焦点検出画素からのデータのみを読み出すような構成としてもよい。そして、カメラ制御部21は、読み出された一対の像データに基づいて像ズレ検出演算処理(相関演算処理)を実行し、5つの焦点検出画素列22a〜22eに対応する焦点検出エリアにおける像ズレ量を演算し、さらに像ズレ量をデフォーカス量に変換する。
【0054】
続くステップS103では、カメラ制御部21により、ステップS102で算出されたデフォーカス量と、エンコーダ35により検出されたフォーカスレンズ32の現在位置とに基づいて、デフォーカス量に応じてフォーカスレンズ32を駆動した場合の駆動後のフォーカスレンズ32のレンズ位置における像面位置が、被写体の像面位置として検出される。そして、カメラ制御部21は、検出した被写体の像面位置を、該被写体の像面位置を検出した時刻に関連付けて、カメラ制御部21のメモリに記憶する。ここで、図10は、被写体の像面位置の履歴の一例を示す図であり、被写体が無限遠側から至近側に移動している場面における、被写体の像面位置の履歴を例示している。図10に示す例では、時刻T1において、被写体の像面位置PT1が検出され、その後、時刻T2において、被写体の像面位置PT2が、時刻T1における被写体の像面位置PT1よりも至近側で検出される。同様に、時刻T3,T4において、被写体の像面位置PT3,PT4がそれぞれ検出される。そして、カメラ制御部21は、検出されたそれぞれの像面位置を、該像面位置を検出した時刻に関連付けて、カメラ制御部21のメモリに記憶することで、図10に示すように、時系列に沿った被写体の像面位置の履歴が、カメラ制御部21のメモリに記憶されることとなる。
【0055】
ステップS104では、カメラ制御部21により、ステップS102で算出されたデフォーカス量に基づいて、フォーカスレンズ32を合焦位置まで駆動するためのレンズ駆動量の算出が行われ、算出されたレンズ駆動量が、レンズ制御部37を介して、フォーカスレンズ駆動モータ36に送出される。これにより、フォーカスレンズ駆動モータ36により、算出されたレンズ駆動量に基づいて、フォーカスレンズ32が駆動される。
【0056】
そして、ステップS105では、カメラ制御部21により、シャッターレリーズボタンの全押し(第2スイッチSW2のオン)がされたか否か判断される。第2スイッチSW2がオンの場合には、ステップS106に進み、一方、第2スイッチSW2がオンではない場合には、ステップS101に戻る。
【0057】
ステップS106では、カメラ制御部21により、ステップS103で得られた被写体の像面位置の履歴に基づいて、被写体が光軸方向に移動しているか否かの判断が行われる。被写体が光軸方向に移動していると判断された場合は、ステップS107に進み、一方、被写体が光軸方向に移動しておらず、被写体が静止していると判断された場合は、ステップS111に進む。なお、本実施形態において、カメラ制御部21は、たとえば、図10に示すように、被写体の像面位置が一定の光軸方向(図10に示す例では至近側)に移動している場合には、被写体が光軸方向に移動しているものと判断することができ、被写体の像面位置が移動していない場合や、被写体の像面位置が光軸方向に沿って前後に移動しているが、被写体の像面位置が一定の光軸方向に移動していない場合には、被写体は静止していると判断することができる。
【0058】
ステップS107では、カメラ制御部21により、焦点検出エリアに対応する画素において、電荷の蓄積が開始される蓄積開始時刻Tsの算出が行われる。以下においては、図11を用いて、焦点検出エリアに対応する画素の蓄積開始時刻Tsの算出方法について説明する。
【0059】
図11は、カメラ1の動作を説明するための図であり、図11(A)に示す撮像素子22における、各画素における電荷の蓄積開始時刻のずれを、図11(B)に示している。なお、図11(A)に示す撮像素子22は、光学系の焦点状態を検出し、画像を撮像するための画素からなる有効画素領域と、有効画素領域の画素の出力から暗電流ノイズを除去するための画素からなるオプティカルブラック画素領域とを有している。図11に示す例では、時刻tS2において、シャッターレリーズボタンが全押しされ、時刻Tpにおいて、カメラ制御部21により垂直同期信号が発せられる。これにより、時刻Tpから、撮像素子22の露光が開始され、撮像素子22の上部に位置する画素から、撮像素子22の下部に位置する画素に向かって、順に、電荷の蓄積が開始される。具体的には、時刻Tpにおいて、撮像素子22の画素のうち垂直方向の最も上部に位置するオプティカルブラック画素領域の画素において、電荷の蓄積が開始され、その後、時刻Taにおいて、有効画素領域の画素のうち垂直方向の最も上部に位置する画素において、電荷の蓄積が開始される。そして、有効画素領域の画素において、順次、電荷の蓄積が開始されるとともに、電荷の蓄積の開始から一定の露光時間texpが経過した画素は、電荷の蓄積を終了する。時刻Tbになると、有効画素領域の画素のうち垂直方向の最も下部に位置する画素において、電荷の蓄積が終了し、さらに、時刻Tcになると、撮像素子22の画素のうち垂直方向の最も下部に位置するオプティカルブラック画素領域の画素においても、電荷の蓄積が終了し、これにより、撮像素子22による露光が終了する。
【0060】
焦点検出エリアに対応する画素の蓄積開始時刻Tsは、このように、撮像素子22の垂直方向の画素の位置に応じて異なる、各画素における電荷の蓄積開始時刻のうち、焦点検出エリアに対応する画素における電荷の蓄積開始時刻であり、本実施形態においては、図11に示すように、焦点検出エリアに対応する画素のうち、垂直方向の中央に位置する画素が、電荷の蓄積を開始する時刻とする。
【0061】
蓄積開始時刻Tsの算出方法は、特に限定されないが、本実施形態においては、下記式(1)に基づいて、蓄積開始時刻Tsを算出することができる。
Ts=Tp+tscan×(AFpos/Vsize) ・・・(1)
ここで、図11(B)に示すように、tscanは、垂直同期信号が発せられ、撮像素子22の画素のうち垂直方向の最も上部に位置する画素において、電荷の蓄積が開始される時刻Tpから、撮像素子22の画素のうち垂直方向の最も下部に位置する画素において、電荷の蓄積が開始される時刻までの時間である。また、Vsizeは、撮像素子22の垂直方向における画素数であり、AFposは、撮像素子22の画素のうち垂直方向において最も上部に位置する画素から、焦点検出エリアに対応する画素のうち垂直方向の中央に位置する画素までの画素数である。
【0062】
そして、ステップS108では、カメラ制御部21により、図11に示すように、シャッターレリーズボタンが全押しされた時刻tS2から、ステップS107で算出された蓄積開始時刻Tsまでの時間が、焦点検出エリアに対応する画素の蓄積遅れ時間TRとして算出される。
【0063】
ステップS109では、カメラ制御部21により、蓄積開始時刻Tsにおける被写体の像面位置の予測が行われる。具体的には、カメラ制御部21は、ステップS103で取得した被写体の像面位置の履歴に基づいて、被写体の像面移動速度を算出し、算出した被写体の像面移動速度と、ステップS108で算出した蓄積遅れ時間TRとに基づいて、蓄積遅れ時間TRにおいて被写体が移動する像面移動量を算出する。そして、カメラ制御部21は、算出した被写体の像面移動量に基づいて、蓄積開始時刻Tsにおける被写体の像面位置を予測することができる。たとえば、図10に示す例において、カメラ制御部21は、算出した蓄積遅れ時間TRにおける被写体の像面移動量と、ステップS103で検出した最新の像面位置P4とに基づいて、蓄積開始時刻Tsにおける被写体の像面位置PTsを予測することができる。
【0064】
ステップS110では、カメラ制御部21により、ステップS109で予測された蓄積開始時刻Tsにおける被写体の像面位置に対応するレンズ位置まで、フォーカスレンズ32を駆動するためのレンズ駆動量の算出が行われ、算出されたレンズ駆動量が、レンズ制御部37を介して、フォーカスレンズ駆動モータ36に送出される。これにより、フォーカスレンズ駆動モータ36により、算出されたレンズ駆動量に基づいて、蓄積開始時刻Tsにおける被写体の像面位置に対応するレンズ位置まで、フォーカスレンズ32が駆動されることとなる。
【0065】
そして、ステップS111では、撮像素子22により露光が開始され、画像の撮像が行われる。本実施形態では、図11に示すように、焦点検出エリアに対応する画素の露光が、蓄積開始時時刻Tsから開始され、蓄積開始時時刻Tsから所定の露光時間texpの間、電荷の蓄積が行われる。そして、カメラ制御部21により、蓄積された電荷に応じた画像データが、撮像素子22から読み出され、読み出された画像の画像データが、メモリ24に記憶される。
【0066】
以上のように、本実施形態では、焦点検出エリアに対応する画素の蓄積開始時刻Tsにおける被写体の像面位置を予測し、予測した被写体の像面位置に応じたレンズ位置まで、フォーカスレンズ32を駆動させて、画像の撮像を行う。これにより、本実施形態では、シャッターレリーズボタンが全押しされてから、焦点検出エリアに対応する画素の蓄積開始時刻Tsまでの蓄積遅れ時間TRの間に、被写体が光軸方向に移動し、被写体の像面位置が変化してしまった場合でも、被写体にピントの合った画像を撮像することができる。
【0067】
≪第2実施形態≫
次いで、本発明の第2実施形態を説明する。本発明の第2実施形態は、図1に示す第1実施形態のカメラ1において、焦点検出エリアに対応する画素の蓄積開始時刻Tsにおける被写体の像面位置を予測し、予測した被写体の像面位置に対応するレンズ位置まで、フォーカスレンズ32を駆動させた後に、蓄積開始時刻Tsから、焦点検出エリアに対応する画素において電荷の蓄積が行われている間に、被写体の像面移動速度に応じて、フォーカスレンズ32を等速で駆動させる構成となっていること以外は、第1実施形態と同様の構成となっている。
【0068】
すなわち、第2実施形態では、第1実施形態と同様に、焦点検出エリアに対応する画素の蓄積開始時刻Tsにおける被写体の像面位置を予測し(ステップS109)、予測した被写体の像面位置に対応するレンズ位置に、フォーカスレンズ32を駆動する(ステップS110)。そして、カメラ制御部21は、焦点検出エリアに対応する画素の蓄積開始時刻Tsから、焦点検出エリアに対応する画素において電荷の蓄積が行われている間に、被写体の像面移動速度に応じて、フォーカスレンズ32を等速で駆動させながら、画像の撮像を行う(ステップS111)。たとえば、図11に示す例において、カメラ制御部21は、蓄積開始時刻Tsにおける被写体の像面位置に応じたレンズ位置に、フォーカスレンズ32を駆動させた後に、フォーカスレンズ32を、焦点検出エリアに対応する画素の蓄積開始時刻Tsから、焦点検出エリアに対応する画素の蓄積終了時刻Tgまでの間において、被写体の像面移動速度で駆動させながら、画像の撮像を行う。
【0069】
このように、第2実施形態では、焦点検出エリアに対応する画素において電荷の蓄積が行われている間、被写体の像面移動速度に応じて、フォーカスレンズ32を等速で駆動させながら、画像の撮像を行う。これにより、第2実施形態では、第1実施形態の効果に加えて、焦点検出エリアに対応する画素において電荷の蓄積が行われている間における、被写体の像面位置の変化に追従して、画像を撮像することができるため、被写体にピントの合った画像をより適切に撮像することができる。
【0070】
≪第3実施形態≫
次いで、本発明の第3実施形態を説明する。本発明の第3実施形態は、図1に示す第1実施形態のカメラ1において、焦点検出エリアに対応する画素の露光時間内の所定時刻における被写体の像面位置を予測し、予測した被写体の像面位置に対応するレンズ位置まで、フォーカスレンズ32を駆動させる構成となっていること以外は、第1実施形態と同様の構成となっている。
【0071】
すなわち、第3実施形態では、カメラ制御部21により、焦点検出エリアに対応する画素の蓄積開始時刻Tsと、画素の露光時間texpとに基づいて、焦点検出エリアに対応する画素の露光時間texp内の所定時刻が算出され、算出された時刻における被写体の像面位置が予測される(ステップS109)。たとえば、図11に示す例において、カメラ制御部21は、焦点検出エリアに対応する画素の蓄積開始時刻Tsから、焦点検出エリアに対応する画素の露光時間texpのうちの半分の時間が経過した時刻Teを算出する。そして、カメラ制御部21は、図10に示すように、被写体の像面位置の履歴に基づいて、算出した露光時間内の時刻Teにおける被写体の像面位置PTeを予測する。そして、予測された被写体の像面位置PTeに対応するレンズ位置に、フォーカスレンズ32が駆動され(ステップS110)、予測された被写体の像面位置PTeに対応するレンズ位置で、画像の撮像が行われる(ステップS111)。
【0072】
このように、第3実施形態では、焦点検出エリアに対応する画素の露光時間内の所定時刻における被写体の像面位置を予測し、予測した被写体の像面位置に対応するレンズ位置に、フォーカスレンズ32を駆動させて、画像の撮像を行う。これにより、第3実施形態では、たとえば、焦点検出エリアに対応する画素の露光時間texp内に、被写体の像面位置が、図10に示す像面位置PTgまで移動した場合であっても、フォーカスレンズ32を、焦点検出エリアに対応する画素の露光時間texp内の時刻Teにおける被写体の像面位置PTeまで駆動させることで、被写体の像面位置PTgと、フォーカスレンズのレンズ位置に対応する像面位置PTeとの距離(PTg−PTe)を、第1実施形態よりも小さくすることができるため、被写体にピントの合った画像をより適切に撮影することができる。
【0073】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0074】
たとえば、上述した実施形態では、焦点検出エリアに対応する画素の蓄積開始時刻Tsにおける被写体の像面位置を予測し、予測した被写体の像面位置に基づいて、フォーカスレンズ32を駆動する構成を例示したが、この構成に限定されるものではなく、たとえば、焦点検出エリアに対応する画素の蓄積開始時刻Tsにおける被写体までの距離を予測し、予測した被写体までの距離に基づいて、フォーカスレンズ32を駆動する構成としてもよい。
【0075】
また、上述した実施形態では、デフォーカス量に基づいて、被写体の像面位置を検出し、検出した被写体の像面位置に基づいて、焦点検出エリアに対応する画素の蓄積開始時刻Tsにおける被写体の像面位置を予測する構成を例示したが、たとえば、コントラスト検出方式により算出した焦点評価値に基づいて、合焦位置を検出し、検出した合焦位置の履歴に基づいて、焦点検出エリアに対応する画素の蓄積開始時刻Tsにおける被写体の位置を予測する構成としてもよい。
【0076】
なお、上述した実施形態のカメラ1は特に限定されず、例えば、デジタルビデオカメラ、一眼レフデジタルカメラ、レンズ一体型のデジタルカメラ、携帯電話用のカメラなどのその他の光学機器に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0077】
1…デジタルカメラ
2…カメラ本体
21…カメラ制御部
22…撮像素子
221…撮像画素
222a,222b…焦点検出画素
28…操作部
3…レンズ鏡筒
32…フォーカスレンズ
36…フォーカスレンズ駆動モータ
37…レンズ制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素が水平方向および垂直方向に二次元状に配列されており、垂直方向における画素の位置に応じて、各画素における電荷の蓄積開始時刻が異なるローリングシャッター方式の撮像素子と、
前記撮像素子からの出力に基づいて、撮像画面内の焦点検出エリアにおける、焦点調節用レンズを含む撮影レンズの焦点状態を検出する焦点検出部と、
前記焦点調節用レンズの位置を検出するレンズ位置検出部と、
所定時刻における被写体の光軸方向の位置を予測する被写体位置予測部と、
前記焦点検出エリアに対応する画素の前記撮像素子内における垂直方向の位置を検出し、前記焦点検出エリアに対応する画素の前記蓄積開始時刻を演算する蓄積開始時刻演算部と、
前記被写体位置予測部による予測結果に基づいて、前記焦点検出エリアに対応する画素の前記蓄積開始時刻における被写体の光軸方向の位置を、被写体予測位置として演算する被写体位置演算部と、
前記被写体位置演算部により算出された前記被写体予測位置に基づいて、前記焦点調節用レンズを駆動させる駆動部と、を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像装置であって、
前記撮像素子は、二次元状に配列された複数の撮像用画素と、前記撮像用画素に混在して一次元状または二次元状に配列された複数の焦点検出用画素とを有し、
前記焦点検出部は、前記焦点検出用画素の出力に基づいて、前記光学系による像面のずれ量を検出することで、前記光学系の焦点状態を検出する位相差検出方式の焦点検出、および、前記撮像用画素の出力に基づいて、前記光学系による像のコントラストに関する評価値を算出し、算出した評価値に基づいて、前記光学系の焦点状態を検出するコントラスト検出方式の焦点検出のうち、少なくともいずれか一方の方式で焦点検出を行うことが可能であることを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の撮像装置であって、
被写体が光軸方向において静止しているか否かを判定する判定部をさらに備え、
前記駆動部は、前記判定部による判定の結果、被写体が光軸方向において静止していると判定された場合には、前記被写体予測位置に基づいた前記焦点調節用レンズの駆動処理を行わないことを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の撮像装置であって、
前記被写体位置予測部による予測結果に基づいて、被写体の光軸方向の移動速度を演算する移動速度演算部をさらに備え、
前記駆動部は、前記焦点検出エリアに対応する画素の前記蓄積開始時刻後、前記焦点検出エリアに対応する画素において電荷の蓄積が行われている間、前記焦点調節用レンズを、前記被写体の光軸方向の移動速度に応じて、等速で駆動させることを特徴とする撮像装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の撮像装置であって、
前記被写体位置演算部は、前記被写体位置予測部による予測結果に加え、前記画素の露光時間に基づいて、前記焦点検出エリアに対応する画素において電荷の蓄積が行われている間の所定時刻における、前記被写体の光軸方向の位置を、前記被写体予測位置として演算することを特徴とする撮像装置。
【請求項1】
複数の画素が水平方向および垂直方向に二次元状に配列されており、垂直方向における画素の位置に応じて、各画素における電荷の蓄積開始時刻が異なるローリングシャッター方式の撮像素子と、
前記撮像素子からの出力に基づいて、撮像画面内の焦点検出エリアにおける、焦点調節用レンズを含む撮影レンズの焦点状態を検出する焦点検出部と、
前記焦点調節用レンズの位置を検出するレンズ位置検出部と、
所定時刻における被写体の光軸方向の位置を予測する被写体位置予測部と、
前記焦点検出エリアに対応する画素の前記撮像素子内における垂直方向の位置を検出し、前記焦点検出エリアに対応する画素の前記蓄積開始時刻を演算する蓄積開始時刻演算部と、
前記被写体位置予測部による予測結果に基づいて、前記焦点検出エリアに対応する画素の前記蓄積開始時刻における被写体の光軸方向の位置を、被写体予測位置として演算する被写体位置演算部と、
前記被写体位置演算部により算出された前記被写体予測位置に基づいて、前記焦点調節用レンズを駆動させる駆動部と、を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像装置であって、
前記撮像素子は、二次元状に配列された複数の撮像用画素と、前記撮像用画素に混在して一次元状または二次元状に配列された複数の焦点検出用画素とを有し、
前記焦点検出部は、前記焦点検出用画素の出力に基づいて、前記光学系による像面のずれ量を検出することで、前記光学系の焦点状態を検出する位相差検出方式の焦点検出、および、前記撮像用画素の出力に基づいて、前記光学系による像のコントラストに関する評価値を算出し、算出した評価値に基づいて、前記光学系の焦点状態を検出するコントラスト検出方式の焦点検出のうち、少なくともいずれか一方の方式で焦点検出を行うことが可能であることを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の撮像装置であって、
被写体が光軸方向において静止しているか否かを判定する判定部をさらに備え、
前記駆動部は、前記判定部による判定の結果、被写体が光軸方向において静止していると判定された場合には、前記被写体予測位置に基づいた前記焦点調節用レンズの駆動処理を行わないことを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の撮像装置であって、
前記被写体位置予測部による予測結果に基づいて、被写体の光軸方向の移動速度を演算する移動速度演算部をさらに備え、
前記駆動部は、前記焦点検出エリアに対応する画素の前記蓄積開始時刻後、前記焦点検出エリアに対応する画素において電荷の蓄積が行われている間、前記焦点調節用レンズを、前記被写体の光軸方向の移動速度に応じて、等速で駆動させることを特徴とする撮像装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の撮像装置であって、
前記被写体位置演算部は、前記被写体位置予測部による予測結果に加え、前記画素の露光時間に基づいて、前記焦点検出エリアに対応する画素において電荷の蓄積が行われている間の所定時刻における、前記被写体の光軸方向の位置を、前記被写体予測位置として演算することを特徴とする撮像装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−247724(P2012−247724A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121339(P2011−121339)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]