説明

撮像装置

【課題】長期の信頼性を確保すると共に低振動を実現し、光学的シフト量の繰り返し再現性を確保する。
【解決手段】光学部材51及び当該光学部材51の外周側に設けられた支持リング52を有する回転体53を、不凍液からなる液体56が封入された光学カプセル55の内部に収容し、液体56以外と非接触状態で回転駆動することで、撮像素子の受光面上で結像する光像と前記撮像素子とを相対的に変位させる。回転体53は、光軸C方向の両面に凹部53a、53bを形成しており、支持リング52に、一端がその内周面に開口し、他端がその外周面に開口する貫通孔46を形成し、各凹部53a、53bに混入した気体57を外部へ排出するための気体排出路として機能させる。これにより、気体57が浮力で回転体53を傾斜させ、或いは気泡として画像に映り込むことを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸方向及び径方向に変位可能な回転体を、その軸方向位置及び径方向位置を制御しながら回転駆動することで、撮像素子の受光面上で結像する光像と撮像素子とを相対的に微小変位させながら撮像を行う、いわゆる画素ずらしによって取得した複数の原画像から超解像処理により高解像度画像を生成するのに適した撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置には画素がマトリクス状に配置された2次元イメージセンサが採用されており、この2次元イメージセンサでは、解像度が画素の大きさや画素数に依存する。一方、撮像素子の受光面上で結像する光像と撮像素子とを相対的に微小変位させながら撮像を行う、いわゆる画素ずらしによって取得した複数の原画像から、撮像素子の本来の解像度より高い解像度の画像を生成する手法が従来から知られている。
【0003】
このような画素ずらしによる高解像度化の手法においては、光像と撮像素子とを相対的に微小変位させるシフト機構(以下、「光学的シフト機構」という。なお、「光学的シフト」を「画素ずらし」と同義に用いる場合がある。)が必要であり、例えば、ピエゾ素子などからなるアクチュエータで撮像素子を微小変位させる技術が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
また、撮像光学系と撮像素子との間に撮像光学系の光軸に対して傾斜するように平行平板を配置し、この平行平板を光軸周りに回転させて、撮像素子の受光面上の光像の位置をずらす技術が存在する(特許文献2・3参照)。
【0005】
また、画素ずらしによって取得した複数の原画像から高解像度画像を生成する画像処理法として、低解像度画像の画素値を高解像度画像の画素にマッピングするイメージシフト処理や、ML(Maximum-likelihood)法、MAP(Maximum A Posterior)法や、POCS(Projection On to Convex Sets)法などを用いた超解像処理の技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−306492号公報
【特許文献2】特開2000−125170号公報
【特許文献3】特開2000−278614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、このような画素ずらしによる高解像度化の手法は、例えば監視カメラシステムに適用すると、交通事故の検証の用途等で高解像度画像の必要が生じた場合に、保存された低解像度画像から高解像度画像を得ることができるため、利便性を高めることができる。
【0008】
このような監視カメラの用途に撮像装置を用いる場合、例えば10年間といった長期にわたる連続稼動でも安定した動作が可能な長期の信頼性(長寿命化)が要求される。また、静寂な環境でも支障なく使用することができるように低騒音が望まれる。しかしながら、特許文献2・3に開示された従来技術のように、モータの駆動力をギア機構を用いて平行平板に伝達して平行平板を回転駆動させる構成では、長期の信頼性を十分に確保することができず、また低騒音を図るにも限界があった。
【0009】
また、長期の信頼性を確保すると共に低振動を実現するには、ベアリングレスモータの技術を応用することが考えられる。このベアリングレスモータは、例えば、特開2008−295206号公報に開示されるように、ブラシレスモータに磁気軸受の機能を一体化して機械的な軸受けを省略したものであるが、平行平板を光軸周りに回転させて光像の位置をずらす撮像装置にこの技術をそのまま適用すると、撮像装置が振動したときに、磁気浮上した状態で回転する回転体すなわち平行平板と撮像素子との相対位置が変化し易く、光学的シフト量(シフト位置)の繰り返し再現性を確保することができない。超解像処理においては、そのプロセスの1つである「位置合わせ」処理において、光学的シフト位置が既知であれば計算コストが大幅に低減できるが、これが不明であると繰り返し処理による計算コストが膨大になるという問題があった。
【0010】
そこで、平行平板を液体と共にカプセルに封入し、平行平板が液体中で磁気浮上するように構成することで、安定した光学的シフト量を実現することが考えられる。ところが、カプセル内に空気を全く混入させることなく密閉することは困難であり、例え、空気を混入させずにカプセルを製造できたとしても、カプセルの素材が透明な樹脂等に限定されることにより、長期使用の間に周辺温度の変化によって液体が体積変化を繰り返すことで、外部の空気が透過してカプセル内部に進入することがある。また、液体が凍結したときにカプセルが破壊しないように、カプセル製造時に意図的に空気を混入させることも考えられる。
【0011】
しかしながら、画素ずらしを行う平行平板は光軸に対して傾斜した状態で回転体に設けられるため、回転体には段差部が存在し、カプセル内に存在する空気がこの段差部に入り込むと、浮力によって平行平板の光軸に対する傾斜角度が所望の角度からずれる虞がある。このような事態は、光学的シフト量の精度を低下させることになり、位置合わせ処理の計算コストが膨大になるため好ましくない。また、空気が平行平板の表面に付着した場合には、画像に気泡が映り込むことになり、画質に悪影響を及ぼす。
【0012】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消するべく案出されたものであり、その主な目的は、長期の信頼性を確保すると共に低振動を実現し、装置の振動が光学的シフト量に与える影響を小さくするとともに、光学的シフト量の繰り返し再現性を確保することができる撮像装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の撮像装置は、被写体からの光を光電変換して画素信号を出力する撮像素子と、
前記被写体からの光を前記撮像素子に結像させるレンズユニットと、前記レンズユニットの光軸に対して所定角度傾斜する光学部材及び当該光学部材の外周側に設けられた支持リングを有する回転体と、前記回転体を回転させて前記光学部材の前記光軸に対する傾斜方向を変化させることにより、前記撮像素子の受光面上で結像する光像と前記撮像素子とを相対的に変位させる回転駆動装置とを備えた撮像装置であって、前記回転体は、前記光軸方向の両面に凹部が形成されるとともに、液体を封入したカプセル部材の内部に配置されて当該液体以外と非接触状態で回転駆動されるものであり、前記回転体には、前記各凹部に混入した気体を当該各凹部の外部へ排出するための気体排出路が形成された構成とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、回転体が液体以外と非接触状態で回転駆動されるため、機械的な軸受けが不要となり、長寿命でかつ低振動な回転駆動装置を実現することができる。また、回転体が液体中に浮遊した状態となることにより、撮像装置が振動した場合であっても回転体と撮像素子との相対位置が変化し難く、回転体の光軸に対する角度変化が小さくなるため、光学的シフト量に与える影響を小さくすることができる。また、回転体の凹部に気体が入り込んでも、気体排出路から気体を凹部の外部へ排出できるため、気体の浮力により回転体が傾斜することを防止でき、光学的シフト量の繰り返し再現性を確保することができる。また、気泡が画像に映り込んで画質を低下させることも防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明によるネットワークカメラシステムの全体構成図
【図2】図1に示した撮像装置及び画像処理装置の概略構成を示すブロック図
【図3】図1に示した撮像装置及び画像処理装置における処理状況を示す模式図
【図4】本発明の第1実施形態に係る撮像装置の撮像部を示す縦断面図
【図5】図4に示した撮像部の分解斜視図
【図6】図4に示した回転体を平面および断面について示す詳細図
【図7】図4に示した撮像部が姿勢変化した状況を示す模式図
【図8】図4に示した光学的シフト機構の平面図
【図9】図8に示した回転駆動装置の元になる従来構成の3相モータを適用した例を示す平面図
【図10】図2に示したシフト制御部の構成図
【図11】図10に示した演算処理部による回転駆動制御の処理手順を示すフロー図
【図12】図4に示した回転駆動装置の要部及びシフト制御部を示す図
【図13】図4に示した撮像素子への光の入射状況を示す断面図
【図14】光像に対する画素の相対的な円運動の状況を示す模式図
【図15】光像に対する画素の相対的な円運動の状況を示す模式図
【図16】撮像とこれにより生成する画像の状況を示す模式図
【図17】撮像周期と円運動周期との比率の一例での撮像基準位置の状況を示す模式図
【図18】本発明の第2実施形態に係る回転体を模式的に示す平面図
【図19】本発明の第3実施形態に係る回転体を平面および断面について示す詳細図
【図20】本発明の第4実施形態に係る撮像部の要部を模式的に示す縦断面図
【図21】図20に示した撮像部が姿勢変化した状況を模式的に示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
上記課題を解決するためになされた第1の発明は、被写体からの光を光電変換して画素信号を出力する撮像素子と、前記被写体からの光を前記撮像素子に結像させるレンズユニットと、前記レンズユニットの光軸に対して所定角度傾斜する光学部材及び当該光学部材の外周側に設けられた支持リングを有する回転体と、前記回転体を回転させて前記光学部材の前記光軸に対する傾斜方向を変化させることにより、前記撮像素子の受光面上で結像する光像と前記撮像素子とを相対的に変位させる回転駆動装置とを備えた撮像装置であって、前記回転体は、前記光軸方向の両面に凹部が形成されるとともに、液体を封入したカプセル部材の内部に配置されて当該液体以外と非接触状態で回転駆動されるものであり、前記回転体には、前記各凹部に混入した気体を当該各凹部の外部へ排出するための気体排出路が形成された構成とする。
【0017】
これによると、回転体が液体以外と非接触状態で回転駆動されるため、機械的な軸受けが不要となり、長寿命でかつ低振動な回転駆動装置を実現することができる。また、回転体が液体中に浮遊した状態となることにより、撮像装置が振動した場合であっても回転体と撮像素子との相対位置が変化し難く、回転体の光軸に対する角度変化が小さくなるため、光学的シフト量に与える影響を小さくすることができる。また、回転体の凹部に気体が入り込んでも、気体排出路から気体を凹部の外部へ排出できるため、気体の浮力により回転体が傾斜することを防止でき、光学的シフト量の繰り返し再現性を確保することができる。また、気泡が画像に映り込んで画質を低下させることも防止できる。
【0018】
また、第2の発明は、前記第1の発明において、前記気体排出路は、一端が内周面に開口し、他端が外周面に開口するように前記支持リングに形成された貫通孔である構成とする。
【0019】
回転体の回転に伴い、液体はその流体抵抗及び粘性によって回転体と同一方向へ回転流を起こし、回転体の表面に近いほど早い流速となった液体は遠心力によって外周側へ移動することとなり、カプセル部材内に旋回流が生じる。これによると、光学的シフト量及び画質に悪影響を及ぼし易い下側の凹部に入り込んだ気体を、光学部材の下面に沿って外周側へ移動する液体の流れに乗せ、支持リングの内周面側の開口から貫通孔を通して支持リングの外周側へ排出することができる。
【0020】
また、第3の発明は、前記第1の発明において、前記気体排出路は、前記両凹部を連通するように前記光学部材に形成された貫通孔である構成とする。
【0021】
これによると、光学的シフト量及び画質に悪影響を及ぼし易い下側の凹部に入り込んだ気体を、外部に排出され易い上側の凹部へ貫通孔を介して移動させることができる。また、光学部材に厚さ方向の貫通孔を設けるという簡単な構成であるため、製造が容易であり、また、貫通孔の延長を短くでき、回転体の質量バランスも崩れ難いため、気体の排出を確実に行うために貫通孔の断面積を大きくすることもできる。
【0022】
また、第4の発明は、前記第1から第3の発明において、前記カプセル部材は、中央に位置して前記光学部材を収容する円板状の空間中央部と、当該空間中央部の外周側に連なるとともに光軸方向に拡幅した円環状の空間外環部とからなる密閉空間を画成し、前記空間外環部が前記気体を滞留させる気体滞留部をなす構成とする。
【0023】
これによると、カプセル部材の内部に混入する気体は、上方へ移動して液層と分離した気層を空間外環部に構成することになる、すなわち空間外環部が気体滞留部をなすため、光学部材の両主面側に滞留することを防止できる。これにより、画像に気泡が映り込んで画質を低下させることを回避できる。
【0024】
また、第5の発明は、前記第1から第4の発明において、前記回転駆動装置は、前記回転体の回転速度を設定する演算処理部を備え、前記演算処理部は、前記回転体の回転始動時に、前記回転速度を一定期間にわたって所定の始動時用回転速度に設定する構成とする。
【0025】
撮像装置が作動を停止している間には、装置の設置や位置変更などのためにカプセル部材の姿勢が変化することが考えられ、回転体の回転始動時には、気体が回転体の凹部に入り込み、或いは光学部材の表面に付着している可能性があるが、これによると、回転体の回転始動時に一定期間にわたって専用の回転速度に設定するため、この一定期間中に回転体の凹部に入り込んだ気体や光学部材の表面に付着した気体を回転体から分離させ、回転体の浮力バランスを適正なものとするとともに、気体が気泡として画像へ映り込むのを防止することができる。
【0026】
また、第6の発明は、前記第5の発明において、前記光学カプセルの姿勢を検出する姿勢検出手段を更に備え、前記演算処理部は、前記姿勢検出手段の検出結果に基づいて、前記カプセル部材が前記気体を前記光軸方向について反対側へ移動させる姿勢反転を行ったと判定した場合、前記回転速度を一定期間にわたって所定の反転時用回転速度に設定する構成とする。
【0027】
回転体の回転駆動中であっても、光学カプセルが姿勢反転を行った場合には、気体が回転体の凹部に入り込み、或いは光学部材の表面に付着する可能性があるが、これによると、姿勢反転があったことを判定した場合に一定期間にわたって専用の回転速度に設定するため、この一定期間中に回転体の凹部に入り込んだ気体や光学部材の表面に付着した気体を回転体から分離させ、回転体の浮力バランスを適正なものとするとともに、気体が気泡として画像へ映り込むのを防止することができる。
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。以下の説明では、用語「軸方向」は光軸方向(図4中の上下方向に相当)を示すと共に、用語「径方向」は光軸と直交する方向(図4中の左右方向に相当)を示すものとする。径方向は、光軸を中心とした360゜内の任意の角度を取り得る。
【0029】
図1は、本発明によるネットワークカメラシステムの全体構成図である。図1に示すように、本発明が適用されるネットワークカメラシステムは、少なくとも1台の撮像装置(ネットワークカメラ)1と、画像処理装置(ホスト装置)2とで構成される。撮像装置1と画像処理装置2とは、インターネットを介して接続され、撮像装置1で生成した撮像データが、例えば遠隔地に存する画像処理装置2に送信されて、画像処理装置2で映像が表示される。また、撮像装置1を制御する各種のコマンド信号が画像処理装置2から撮像装置1に送信される。
【0030】
なお、撮像データは、例えばTCP(UDP)/IPといった、いわゆるインターネットプロトコルを利用して撮像装置1から画像処理装置2に送信されるが、撮像データを、例えば暗号化、カプセル化してVPN(Virtual Private Network)を利用して送信してもよく、専用回線によって撮像装置1と画像処理装置2が1対1の関係で接続される、いわゆるCCTV(Closed Circuit TV)と称されるネットワークカメラシステムとしてもよい。
【0031】
図2は、図1に示した撮像装置及び画像処理装置2の概略構成を示すブロック図である。図2に示すように、撮像装置1は、撮像部11と、画像処理部12と、データ圧縮送信部13と、シフト制御部14とを備えている。撮像部11は、被写体からの光を光電変換してアナログの画素信号を出力する撮像素子31を備えている。この撮像素子31は、2次元CMOSイメージセンサである。なお、これに替えて2次元CCDイメージセンサを撮像素子31に用いてもよい。
【0032】
撮像素子31から出力されるアナログ信号はA/D変換器32でディジタル信号に変換され、このディジタル信号は画像処理部12に入力され、ここで色補正、デモザイク処理、階調補正(γ補正)、YC分離処理等を施されて画像データに変換される。この画像データは、データ圧縮送信部13において例えばH.264やMPEG4等の圧縮処理を施された上で画像処理装置2に送信される。
【0033】
また、撮像部11は、撮像素子31の受光面上で結像する光像と撮像素子31とを相対的に微小変位させる光学的シフト機構35を備えており、この光学的シフト機構35の各部の動作がシフト制御部14により制御される。
【0034】
この光学的シフト機構35の構成及びシフト制御部14による制御については、後に詳述するが、概略を説明すると、光像を微小変位させる光学部材(図4中の符号51で示す)を備えた回転体(図4中の符号53で示す)が磁気回転駆動部64により回転駆動され、回転体の径方向及び軸方向の位置が第1及び第2の磁気センサ65、66で検出され、回転体の径方向及び軸方向の位置が第1及び第2の電磁石67、68で制御され、回転体の回転位置が原点センサ70で検出される。
【0035】
回転体には着磁部(図4中の符号61、62で示す)が設けられており、第1及び第2の磁気センサ65、66がその着磁部の磁気を検出してシフト制御部14に出力し、シフト制御部14は、磁気センサ65、66の出力が示す回転体の位置情報に基づいて磁気回転駆動部64を制御して光学部材を回転させると共に、第1及び第2の電磁石67、68を制御して光学部材を所定の位置に保持する。
【0036】
画像処理装置2は、データ受信復号部21と、表示部22と、記憶部23と、超解像処理部24と、周期設定部25と、入力部26とを備えている。なお、この画像処理装置2は、パソコンやワークステーション等の情報処理装置に所要のアプリケーションソフトウェアを導入することで構成される他、CCTVレコーダなど専用の装置であってもよい。
【0037】
画像処理装置2では、撮像装置1から送信された圧縮画像データが、データ受信復号部21にて受信されて復号された後、RGBの画像データに変換されて、リアルタイムにディスプレイ等からなる表示部22に表示される。さらに、RGBの画像データは、ハードディスクドライブ装置等からなる記憶部23に送られて、ここに一時的に蓄積され、必要に応じて記憶部23から読み出して表示部22で再生することができる。
【0038】
また、例えば交通事故の検証の用途等で高解像度画像の必要が生じた場合には、記憶部23から画像データを読み出して超解像処理部24にて超解像処理を施して高解像度画像(静止画像)を生成し、その高解像度画像を表示部22に表示させることができる。
【0039】
また、入力部26は、後に詳述するが、ユーザからの撮像周期の入力を受け付けて、これを周期設定部25に送る。周期設定部25は、入力部26から送られてきた撮像周期に基づいて円運動周期を決定し、円運動周期に関するコマンド信号を撮像装置1に送信する。撮像装置1のシフト制御部14は、円運動周期に関するコマンド信号に基づいて、光学的シフト機構35を動作させることにより、指定された円運動周期に対応する回転速度で光学部材を回転駆動する。
【0040】
図3は、撮像装置1及び画像処理装置2における処理状況を示す模式図である。図3に示すように、撮像素子31は駆動回路33によって駆動され、駆動回路33が生成するタイミング信号に応じて一定の周期(以下、撮像周期)で撮像(サンプリング)を行う。例えばフレームレートを30frame/secとして1秒あたり30枚のフレーム画像を生成する場合、撮像周期は30ms程度に設定される。
【0041】
画像処理装置2の超解像処理部24では、時間的に連続する複数のフレーム画像から高解像度画像を生成する超解像処理が行われる。この超解像処理では、まず、記憶部23に蓄積されたフレーム画像がコマ送りで静止画として表示される。そして、その中からユーザにより基準画像が指定されると、その基準画像となるフレーム画像とその前後の複数のフレーム画像が記憶部23から読み出されて超解像処理部24に送られて超解像処理が行われる。
【0042】
超解像処理としては、例えば、ML(Maximum-likelihood)法、MAP(Maximum A Posterior)法や、POCS(Projection On to Convex Sets)法などが採用され、アプリケーションソフトウェアをCPUで実行することで実現される。一般に超解像処理は演算量が多いため、処理の一部をGPU(Graphics Processing Unit)や、専用ハードウェアを用いて行うようにしてもよい。
【0043】
ここで、ML法とは、高解像度画像から推定された低解像度画像の画素値と、実際に観測された画素値との二乗誤差を評価関数とし、この評価関数を最小化するような高解像度画像を推定画像とする方法である。つまり、ML法とは、最尤推定の原理に基づく超解像処理方法である。また、MAP法とは、二乗誤差に高解像度画像の確率情報を付加した評価関数を最小化するような高解像度画像を推定する方法である。つまり、MAP法とは、高解像度画像に対するある先見情報を利用して、事後確率を最大化する最適化問題として高解像度画像を推定する超解像処理方法である。POCS法とは、高解像度画像と低解像度画像との画素値に関して連立方程式を作成し、その方程式を逐次的に解くことにより、高解像度画像を得る超解像処理方法である。
【0044】
これらの超解像処理は、まず、高解像度画像を仮定し、そして仮定した高解像度画像から、カメラモデルから得られる点広がり関数(PSF関数)に基づき、全ての低解像度画像の画素について、その画素値を推定し、その推定値と観測された画素値(観測値)との差が小さくなるような高解像度画像を探索するという処理を有している。そのため、これらの超解像処理は、再構成型超解像処理と呼ばれている。
【0045】
ここで高解像度画像を探索する処理は、低解像度画像として得られた画素が高解像度画像においてどの位置に対応するのかを探索するものであり、いわゆる「位置合わせ」と呼ばれる処理である。一般に超解像処理では、複数の低解像度画像間の画素位置の変化が不明であっても高解像度化を可能とするため、着目画素の周囲に対して広範囲に位置合わせ処理を繰り返し実行する。このため計算コストが極めて大きくなることが知られている。一方、後に詳しく説明するように、本発明では光学的シフト機構35によってシフトされた画素の位置は既知であり、そして、その既知の位置で各フレーム画像、すなわち低解像度画像を撮像するようにしたため、少なくとも静止している被写体については、光学的シフトによって位置合わせ処理の多くを省略することが可能となり、計算コストを大幅に削減することができる。
【0046】
なお、時間的に連続する複数のフレーム間に及ぶ画像情報を利用する超解像処理は、特にフレーム間再構成型超解像処理と呼称されることもある。一方で、1つのフレーム内で再構成型超解像処理を行う場合は、フレーム内再構成型超解像と呼称される。本実施形態では、フレーム間再構成型超解像を採用している。
【0047】
ここでは、画像処理装置2において超解像処理によって高解像度化された静止画像を再生するものとしているが、画像処理装置2の処理能力が十分に高ければ、超解像処理で得られた高解像度画像をフレーム画像として動画を再生することも可能である。
【0048】
<第1実施形態>
図4は、本発明の第1実施形態に係る撮像装置1の撮像部11を示す縦断面図であり、図5は、図4に示した撮像部11の分解斜視図である。図4、図5に示すように、撮像装置1の撮像部11は、撮像素子31が設けられたセンサモジュール41と、被写体(図示せず)からの光を撮像素子31の受光面31a上で結像させるレンズユニット42と、撮像素子31の受光面31a上で結像される光像を変位させる光学的シフト機構35とを有している。
【0049】
光学的シフト機構35は、光学部材51及びこの外周側に設けられた支持リング52で構成される回転体53と、この回転体53を回転駆動する回転駆動装置54とを備えている。回転体53は、光学カプセル(カプセル部材)55内に収容され、この光学カプセル55の内部には液体56が封入されている。したがって、回転体53は、液体56中で軸方向及び径方向に変位可能な浮遊状態で、回転駆動装置54によって回転駆動される。回転駆動装置54の詳細については後述する。
【0050】
光学カプセル55は、下側に配置され、上面の中央に円形の上面凹部58aを形成する有底筒状部58A及び有底筒状部58Aの上縁に設けられた環状フランジ部58Bを有する下半ピース58と、上側に配置され、上面凹部58aを閉蓋する上半ピース59とから構成されている。下半ピース58の環状フランジ部58Bの上面には、上面凹部58aの外側において溝58bが円環状に形成されており、この溝58bにシール部材60が介装された状態で複数(ここでは6本)のねじで締結されることにより、下半ピース58と上半ピース59とが一体とされ、その内部に密閉空間Sを有する光学カプセル55が構成される。
【0051】
光学カプセル55が形成するこの密閉空間Sは、中央がくびれた断面を呈しており、光軸Cを中心とした円板状の空間をなす空間中央部Saと、この空間中央部Saの外周側に連なると共に、上下方向に拡幅されて略矩形断面を呈する空間をなす空間外環部Sb(気体滞留部)とを有している。光学カプセル55の密閉空間Sには、空間中央部Saに平行平板43が収容される一方、空間外環部Sbに支持リング52等が収容されている。
【0052】
光学カプセル55の下半ピース58の下面には、有底筒状部58Aの底壁の中央に配置された下面凹部58c(図4参照)、有底筒状部58Aの底壁の周縁において下方へ突設する環状凸部58d、及び環状フランジ部58Bの適所に配置された複数の凸部58e(図5参照)がそれぞれ形成されており、下面凹部58cにはセンサモジュール41が、環状凸部58d内及び凸部58e間には光学的シフト機構35の構成部品がそれぞれ装着されている。
【0053】
一方、光学カプセル55の上半ピース59の上面には、中央に配置された中央凹部59a、中央凹部59aの周辺に等間隔に配置された複数の外側凹部59bがそれぞれ形成されており、中央凹部59aにはレンズユニット42が、外側凹部59bには光学的シフト機構35の構成部品がそれぞれ装着されている。
【0054】
光学カプセル55は、例えば樹脂あるいは硝材など、透明で透磁率が比較的高い材料から形成され、樹脂であればポリカーボネート、アクリル、シクロオレフィン・コポリマー(COC)、シクロオレフィンポリマー(COP)等を用いることができる。
【0055】
この光学カプセル55は、全体を透明な材料で形成する必要はなく、レンズユニット42からの入射光が通過する光路に対応する部分が上述のような透明材料で形成されていればよい。また、光学カプセル55の光路に対応する部分以外を不透明(例えば、黒色)としてもよい。これにより撮像素子31に不要な光が入る、いわゆる迷光を遮断することができる。
【0056】
光学部材51は、略円板状を呈しており、その中央部にはレンズユニット42の光軸Cに対して所定角度傾斜した平行平板43が設けられている。この平行平板43が回転することで、撮像素子31の受光面31a上で結像する光像を撮像素子31に対して相対的に微小変位させることができる。なお、光学部材51の材料としては、光学ガラスのみならず、例えばアクリル樹脂等を使用することもできる。
【0057】
光学カプセル55内に封入される液体56には、空気の屈折率よりも高く、かつ平行平板43の屈折率よりも小さい屈折率を有するものを採用するとよい。これにより、平行平板43によるシフト幅が、平行平板43が空気中に置かれた場合より実質的に小さくなる。このため、光学カプセル55内の光学部材51の揺動等によって平行平板43の中心軸が傾くことで生じる光学的シフト量の変化を小さく抑えることができる。
【0058】
光学カプセル55内に封入される液体56には、ここでは不凍液(例えば、プロピレングリコールやエチレングリコールと水との混合物)を用いている。これにより、撮像装置1を使用可能な温度範囲(例えば−20℃まで)を拡大することができ、さらに液体56の粘度が増大するため、外部からの衝撃に対する緩衝作用が向上し、撮像装置1の振動に対する光学的シフト量の変化を抑制できるとともに、光学部材51の破損を防止することができる。また、不凍液の濃度を調整するだけで液体56の屈折率を容易に調整することが可能となり、所望の光学的シフト量を容易に得ることが可能となる。
【0059】
支持リング52は、円環状をなしており、軸方向の中央部分に配置されてその内周側に光学部材51を保持する第1のリング部材52aと、第1のリング部材52aの上側の端面に接着剤により固着された第2のリング部材52bと、第1のリング部材52aの下側の端面に接着剤により固着された第3のリング部材52cとから構成されている。第1のリング部材52aは矩形断面を有し、第2及び第3のリング部材52b、52cはそれぞれ、第1のリング部材52aと同一の外径を有する矩形断面を有し、且つ第1のリング部材52aと同心状に配置されている。
【0060】
支持リング52がこのように構成されることにより、回転体53は、軸方向の両側に凹部53a、53b(図6参照)が形成されたH字状断面を呈している。
【0061】
第1乃至第3のリング部材52a、52b、52cはそれぞれ、微小な磁性体粒子を分散混合したポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)によって形成された、いわゆるプラスチックマグネットであり、これにより、水を含む液体56中にあっても吸水及び膨潤が低減される。また、同一の樹脂材料をバインダーに用いたプラスチックマグネットを用いることにより、両接着対象部材に対する接着性の高い接着剤を用いて第2及び第3のリング部材52b、52cを第1のリング部材52aに接着させることができ、長期の使用に対する信頼性が向上している。
【0062】
第1乃至第3のリング部材52a、52b、52cの磁性体粒子として、ここではネオジムを採用している。ネオジム磁石は磁力が極めて大きく、大きな駆動トルクを得ることができるため、低温時に液体56の粘性が大きくなった場合等に有効である。一方、ネオジムは水によって酸化されて錆を生じ得るため、支持リング52は、その表面が樹脂材料でコーティングされ、液体56との接触が防止されている。なお、樹脂材料によるコーティングは、第2及び第3のリング部材52b、52cが第1のリング部材52aに固着される前に施してもよく、第1のリング部材52aに固着された後に施してもよい。
【0063】
また、光学カプセル55内に封入される液体56は、不凍液に限定されるものではなく、例えば水を用いるようにしてもよい。また、不凍液は水系である必要性はなく、例えば透明なシリコーンオイルを採用してもよい。この場合、支持リング52等に錆が生じるおそれがないため、樹脂コーティング等といった防錆処理が不要となる。
【0064】
また、第1乃至第3のリング部材52a、52b、52cに用いるバインダーとしては、PPSに限らず、例えば、6ナイロン等のポリアミド樹脂を用いることもできる。さらに、第1乃至第3のリング部材52a、52b、52cのバインダーとして異なる樹脂を用いてもよい。他方、第1乃至第3のリング部材52a、52b、52cに用いる磁性体粒子としては、ネオジムに限らず、例えば、フェライトやサマリウムコバルト等を用いることもできる。さらに、第1乃至第3のリング部材52a、52b、52cに異なる磁性体粒子を用いてもよい。なお、磁性体粒子としてフェライトを用いた場合は、錆が発生しないため、上述した樹脂コーティングを省略することができる。
【0065】
回転駆動装置54は、支持リング52の径方向の外周面に臨むように第1のリング部材52aの軸方向中央部に設けられた第1の着磁部61と、支持リング52の軸方向の上端側に臨むように第2のリング部材52bに設けられた第2の着磁部62と、支持リング52の軸方向の下端側に臨むように第3のリング部材52cに設けられた第3の着磁部63と、第1の着磁部61に回転方向の磁力を作用させることによって回転体53を回転させる磁気回転駆動部64と、第1の着磁部61に径方向の磁力を作用させることによって回転体53の径方向位置を制御する第1の電磁石67と、第2の着磁部62に軸方向の磁力を作用させることによって回転体53の軸方向位置を制御する第2の電磁石68と、回転体53を所定の軸方向位置に保持するために第3の着磁部63に第2の電磁石68と同じ向きの磁力を作用させる永久磁石69とを備えている。
【0066】
また、回転駆動装置54は、第1の着磁部61の磁気に基づいて回転体53の径方向位置を検出する第1の磁気センサ65と、第2の着磁部62の磁気に基づいて回転体53の軸方向位置を検出する第2の磁気センサ66と、光軸Cに沿って光学カプセル55に取り付けられ、水平方向(重力直角方向)に対する光学カプセル55の向きを検出する姿勢検出装置86(姿勢検出手段)とを備えている。
【0067】
第1の電磁石67は、第1の磁気センサ65の検出結果に基づいて回転体53の径方向位置を制御する。一方、第2の電磁石68は、第2の磁気センサ66の検出結果に基づいて回転体53の軸方向位置を制御する。また、磁気回転駆動部64は、詳細を後述する回転駆動制御処理手順に則り、周期設定部25(図2参照)によって指定された円運動周期に対応する回転速度で回転体53を回転駆動するとともに、姿勢検出装置86の検出結果に基づいて所定の始動時回転速度および反転時回転速度で回転体53を回転駆動する。
【0068】
第1の着磁部61は、第1のリング部材52aの外周面における軸方向の両端部を除いた中央部位に臨むように、第1のリング部材52aの外周側に極異方性配向に着磁され、永久磁石を構成している。これにより、第1の着磁部61が発生させる磁力の殆どを第1の電磁石67に作用させることができるため、ラジアル異方性配向のものに比べて、第1の電磁石67の磁力を大きくして回転体53の径方向制御の精度を高めることが可能になっている。また、第1の着磁部61の外周面における表面磁束密度が、周方向への変位に対して正弦波的に変化するため、回転体53の回転角度の検知を高精度に行うことができるとともに、回転体53の回転駆動制御を高精度に行うことができる。
【0069】
なお、第1のリング部材52aの内径を光学部材51の外径よりも小さくし、第1のリング部材52aを成形する際に光学部材51を金型にセットして一体成形するようにしてもよい。このようにすることにより、接着剤の劣化等によって光学部材51と支持リング52とが分離する心配を排除することができ、長期の使用に対する信頼性を更に高めることができる。
【0070】
また、回転体53には、第1乃至第3のリング部材52a、52b、52cが光学部材51に取り付けられるのみであるため、光学カプセル55の密閉性を高めることができる。また、光学カプセル55の部材としての独立性を高めることとなり、製造工程上有利となる。
【0071】
ところで、光学カプセル55の内部には、液体56に混ざって気体57が封入されている。これは、回転体53の位置制御の観点からは光学カプセル55内に気体57を全く存在させないことが理想的であるが、製造工程で空気の混入を完全に排除して光学カプセル55を組み立てることが困難であることに加え、液体56に不凍液を用いたとしても、非常に過酷な環境下では液体56が凍結する虞があるため、凍結時の液体56の体積膨張によって光学カプセル55が破損するのを防止するためには、凍結による液体56の体積膨張を許容できる程度の割合で光学カプセル55内に空気を混入させた方が品質面で好ましいことによるものである。
【0072】
そのため、光学カプセル55は、回転体53が回転駆動装置54によって適正な位置に制御され、液体56中に浮遊した状態において、回転体53を液体56中に浸漬させることができるように、言い換えれば、回転体53を滞留した気体57に触れさせないようにするために、気体57を滞留させるための空間を形成するべく、支持リング52に対して径方向外側及び軸方向の両側において所定の間隙を作る大きさに形成されている。これにより、光学カプセル55が画成する密閉空間Sの空間外環部Sbが気体57を滞留させる気体滞留部として機能する。
【0073】
なお、光学カプセル55の内部には、製造時に気体57が混入する他、密閉後においても、長期の使用により液体56中の水分が光学カプセル55を透過して外部へ流出し、代わりに気体57が光学カプセル55を透過して内部に流入することで、カプセル内の液量が低下する。この水分の透過量は、光学カプセル55の素材の種類や厚み、光学カプセル55のシール方法によって異なるため、その都度測定することが必要であり、単位時間当たりの透過量に使用時間を乗算することで透過水分量を求めることができる。
【0074】
以上のように、製造工程で意図的に混入させた気体と水分透過により水分が減少することで混入する気体とが光学カプセル55内に存在する状態において、密閉空間Sの空間外環部Sbが気体滞留部として機能し得るように、支持リング52の大きさを基準にして光学カプセル55の大きさが決定されている。
【0075】
図6は、図4に示した回転体53を示す詳細図であり、図6(A)は、回転体53の平面図を示し、図6(B)は、図6(A)中のB−B線に沿う回転体53の断面図である。なお、図6(B)においては、回転体53が液体56中にあるものとして、気体57を示している。図6に示すように、光学部材51は、光軸Cに対して所定角度傾斜した平行平板43を中央部に帯状に備えるとともに、平行平板43の両側方に平行平板43よりも厚く且つ互いに同じ厚みをもって同一平面上に配置された基部44を備えている。平行平板43は、一方の基部44に対して軸方向の一側の面が連続するように接続し、他方の基部44に対して軸方向の他側の面が連続するように接続しており、これにより、平行平板43が基部44に対して所定角度傾斜している。
【0076】
光学部材51がこのように構成されたことにより、光軸Cに対して直交する向きに位置制御される支持リング52に対し、基部44が平行となるように光学部材51を取り付けるだけで、平行平板43を光軸Cに対して所定角度傾斜させることができ、回転体53を高精度に組み立てることができる。また、平行平板43と基部44との接続部には、一方の面に段差が生じ得るが、各基部44の段差側の面には、平坦な底面を有する溝45がそれぞれ光学部材51の周縁すなわち支持リング52との接続部に至るように形成されており、これにより、平行平板43と基部44との接続部に段差の無い部分が形成されている。
【0077】
支持リング52には、それぞれ一端が内周面に開口し、他端が外周面に開口するように、4つの貫通孔46(気体排出路)が形成されている。貫通孔46の2つは、光学部材51の基部44に設けられた溝45の端面に開口するようにそれぞれ放射状に設けられている。残りの2つは、先の2つに対してそれぞれ平行に且つ光学部材51の反対側の面に沿って開口するように放射状に設けられている。
【0078】
上記したように、回転体53は断面H字状を呈し、軸方向の両側に凹部53a、53bが形成されているため、撮像装置1の使用を開始した時、或いは使用の途中で撮像装置1を反転させた時には、下側となった凹部53a、53b(図6(B)では凹部53a)に気体57が入り込むことがある。他方、回転体53が回転すると、液体56はその流体抵抗及び粘性によって回転体53の表面に近いほど早い流速で回転体53と同一方向への回転流を起こし、遠心力によって外周側へ移動する。これにより、光学カプセル55内には、回転体53を固定して見た場合に回転体53に対する相対的な方向が図6(A)に矢印のようになる旋回流が生じる。
【0079】
一方、支持リング52には貫通孔46が形成されているため、下側の凹部53aに入り込んだ気体57は、光学部材51の下面に沿って外周側へ移動する液体56の流れに乗って、支持リング52の内周面側の開口から貫通孔46を通って支持リング52の外周側へ排出される。なお、回転体53の回転速度が速いほど、遠心力が大きくなるために貫通孔46を流れる液体56の流速が速くなり、気体57が排出され易くなる。
【0080】
支持リング52の外周側へ排出された気体57は、浮力によって上方へ移動し、回転体53を気体57に露出させない状態で空間外環部Sb(図4参照)の上部に滞留する。そのため、気体57の浮力により回転体53が傾斜することが防止され、光学的シフト量の繰り返し再現性が確保されるようになっている。また、気体57が気泡として画像に映り込み、画質を低下させることも防止されている。
【0081】
図7は、図4に示した撮像部11が姿勢変化した状況を示す模式図である。図7に示すように、撮像部11が姿勢変化し、光軸Cが略水平となる角度に光学カプセル55が配置されると、回転体53の凹部53a、53bに入り込んだ気体57は、貫通孔46を通って或いは支持リング52の内周面および光軸C側の面に沿って支持リング52の外周側へ排出され、回転体53を気体57に露出させない状態で空間外環部Sbの上部に滞留する。そのため、撮像部11が姿勢変化しても、気体57の浮力により回転体53が傾斜することが防止され、光学的シフト量の繰り返し再現性が確保されるようになっている。また、気体57が気泡として画像に映り込み、画質を低下させることも防止されている。
【0082】
図8は、図4に示した光学的シフト機構35の平面図である。図9は、図8に示した回転駆動装置54の元になる従来構成の3相モータを適用した例を示す平面図である。図4、図8に示すように、磁気回転駆動部64は、電磁鋼帯を複数積層してなるステータコア71と、このステータコア71に巻回されたコイル72とで構成されている。ステータコア71は、光学カプセル55を介して第1の着磁部61に対向配置されており、第1の着磁部61に対向する対向面71aが光学カプセル55の周壁外面に沿う曲面に形成されるとともに、この対向面71aが光学カプセル55の周壁外面に当接した状態で光学カプセル55に設けられている。
【0083】
なお、ここで言う当接とは、物理的な接触を意味するものではなく、熱伝達を効果的に行わせるための熱力学的な接続を意味する。つまり、ステータコア71と光学カプセル55とを熱力学的に接続された状態とするために、両者の間に伝熱手段(図示省略)を介装させ、これにより、ステータコア71を光学カプセル55に密着させ、磁気回転駆動部64を液体56の加熱手段として利用している。なお、ここでは伝熱手段としてシリコーングリスを採用し、対向面71aにシリコーングリスを塗布したうえで対向面71aを光学カプセル55の周壁外面に密着させることでステータコア71を光学カプセル55に熱力学的に接続させている。
【0084】
ステータコア71がこのように設けられたことにより、通電により発熱するコイル72の熱、及びコイル72が磁界を発生したときにステータコア71の磁気抵抗成分が発した熱が、ステータコア71の対向面71a全域を伝熱経路として光学カプセル55側へ伝達するようになり、磁気回転駆動部64が液体56の加熱手段として機能している。これにより、専用の加熱手段を設けることなく、低温時の液体56の粘性上昇及び凍結を防止でき、低温環境下においても回転体53を安定的に回転させることができる。
【0085】
回転駆動装置54は、いわゆるインナロータ型の3相モータであり、界磁を作り出す第1の着磁部61は、図8に示すように、周方向に沿って交互にN極及びS極に着磁された8個の磁極を備えている。一方、磁気回転駆動部64は、等間隔に3つ設けられており、各ステータコア71は3つのティース73を備えている。この回転駆動装置54は、図9に示すように、12ステート8ポールの従来構成の3相モータから、1ティース構成のステータコアを3つ等間隔に取り除いた、9ステート8ポールの構成となっている。
【0086】
磁気回転駆動部64のコイル72は、スター結線されており(図10参照)、各ステータコア71の3つのコイル72はu相、v相及びw相にそれぞれ設定されている。これにより、各ステータコア71にu相、v相及びw相のすべてが存在するため、ブレーキとなるタイミングが存在せず、高いモータ効率が実現されている。また、ステータコア71の外径を拡大することなくティース73間の隙間を確保することができるため、コイル72の巻回作業が容易であり、省スペース化を図りつつ、製造歩留の向上も実現することができる。
【0087】
磁気回転駆動部64のコイル72に通電して磁気回転駆動部64が励磁されると、第1の着磁部61との間に引力及び斥力が生じ、これにより、光学カプセル55内の回転体53に接触することなく、その回転体53を回転させることができる。この磁力を利用した構成は、いわゆるベアリングレスモータの構成に準ずるものであり、摺動部が全く存在せず、回転駆動装置54は極めて低振動で駆動され、かつ長寿命を達成することができる。
【0088】
図10は、図2に示したシフト制御部14の構成図である。磁気回転駆動部64のコイル72は、図10に示すように、シフト制御部14に設けられた3相ドライバ74により駆動される。シフト制御部14では、演算処理部77から速度指令値がパルス幅変調器(PWM)78に送出され、パルス幅変調器78では、この速度指令値に基づいてONデューティ比を算出し、このデューティ比に基づきパルス幅変調されたPWM信号が3相ドライバ74に出力される。また、演算処理部77には、光学カプセル55に設けられた姿勢検出装置86の出力が入力している。
【0089】
3相ドライバ74は、3系統のプッシュプル型のトランジスタ回路75と、各トランジスタ回路75に接続されるとともに、スター結線の中性点に接続された内部ロジック部76とを内部に備えている。スター結線されたコイル72の中性点からは、3相に設定されたコイル72に流れる電流の向きを示すコモン信号(電流信号)が内部ロジック部76に入力しており、内部ロジック部76は、入力したコモン信号を参照しながらPWM信号に基づく電流の向きを切り替えるべく各トランジスタ回路75を制御している。これにより演算処理部77で設定された回転速度で回転体53が回転駆動される。
【0090】
図4に示したように、第1の電磁石67は、第1の着磁部61に対向して配置された第1の磁性体81と、この第1の磁性体81に巻回されたコイル82とで構成されている。第1の磁性体81は、渦電流の抑制のために電磁鋼帯を複数積層して構成され、凸部58e(図5参照)間に挿入されて光学カプセル55の周壁外面に当接した状態に設けられている。ここでも、磁気回転駆動部64のステータコア71と同様に、第1の電磁石67の第1の磁性体81は、第1の着磁部61に対向する対向面81aが光学カプセル55の周壁外面に沿う曲面に形成されるとともに、この対向面71aにシリコーングリスを塗布されることで光学カプセル55の周壁外面に密着し、対向面71aの全面で光学カプセル55に対し熱力学的に接続した状態となっている。
【0091】
第1の電磁石67のコイル82に通電することで第1の電磁石67が励磁されると、第1の着磁部61との間に斥力及び引力が生じる。第1の電磁石67は、光学カプセル55の周囲に等間隔に3つ配置されており(図8参照)、第1の電磁石67の各コイル82の通電量を個別に制御することで、回転体53に作用させる径方向の磁力を調整し、回転体53を任意の径方向に変位させることができる。これにより、回転体53が所定の径方向位置、すなわち光学部材51の中心軸が光軸Cと概ね一致する径方向位置に保持される。
【0092】
第2の電磁石68は、第2の着磁部62に対向して配置された第2の磁性体83と、この第2の磁性体83に巻回されたコイル84とで構成されている。第2の磁性体83は、渦電流の抑制のために電磁鋼帯を複数積層して構成され、外側凹部59bに挿入されて光学カプセル55の上壁外面に当接した状態、すなわち第2の磁性体83における第2の着磁部62に対向する対向面83aが光学カプセル55の上壁外面に沿う平面に形成されるとともに、この対向面83aにシリコーングリスが塗布されることで光学カプセル55の上壁外面に密着し、対向面83aの全面で光学カプセル55に対し熱力学的に接続した状態となっている。これにより、第1及び第2の電磁石67、68が液体56の加熱手段として機能している。
【0093】
永久磁石69は、円環状をなしており、光学カプセル55を挟んで第2の電磁石68と相反する側に設けられている。この永久磁石69は、環状凸部58d内に挿入されて光学カプセル55の下壁外面に当接した状態に設けられ、光学カプセル55を介して第3の着磁部63に対向配置されている。
【0094】
永久磁石69と第3の着磁部63とは、互いに対向する側が同一磁極(ここではN極)となるように設定されており(図12参照)、永久磁石69と第3の着磁部63との間に斥力が生じ、回転体53が光学カプセル55の底壁内面から浮いた状態に保持される。
【0095】
第2の電磁石68と第2の着磁部62とは、互いに対向する側が同一磁極(ここではS極)となるように設定されており(図12参照)、第2の電磁石68のコイル84に通電することで第2の電磁石68が励磁されると、第2の電磁石68と第2の着磁部62との間に斥力が生じる。
【0096】
第2の電磁石68は、光学カプセル55の一の主面において等間隔に3つ配置され(図8参照)、永久磁石69も、光学カプセル55の他面において第2の電磁石68と同じ周方向位置に(光軸方向にみて重畳するように)等間隔に3つ配置されており、第2の電磁石68の各コイル84の通電量を制御することで、第2の電磁石68と第2の着磁部62との間に生じる斥力の大きさを、永久磁石69と第3の着磁部63との間に生じる斥力と釣り合わせることにより、回転体53が所定の軸方向位置に保持される。
【0097】
このように第2の電磁石68と永久磁石69とを協働させて回転体53の軸方向位置を制御するため、回転体53の軸方向の位置を簡易かつ高精度に制御することができる。ここで、第2の電磁石68の各コイル84の通電量を均等に制御することで、第2の電磁石68の斥力と永久磁石69の斥力とが釣り合う軸方向位置に回転体53を変位させることができるが、第2の電磁石68の各コイル84の通電量を個別に制御して、回転体53の中心線が光軸Cに対して傾いた振れ回り運動を抑制するような制御も可能である。このような構成とすることで、例えばレンズユニット42をいわゆるズームレンズ系として構成した場合でも、光学的シフト量を適切に管理することが可能となる。
【0098】
なお、第2の電磁石68と第2の着磁部62との間、ならびに永久磁石69と第3の着磁部63との間にそれぞれ引力を生じさせて、それらを釣り合わせる構成も可能である。特に上述のように斥力を生じさせる構成では、第2の電磁石68が励磁されていない状態でも、永久磁石69の磁力で回転体53が光学カプセル55の底壁内面から浮いた状態となるため、起動時等に回転体53の回転を円滑に開始することができる利点が得られる。
【0099】
また、永久磁石69にはネオジム磁石を採用するとよいが、上方の第2の電磁石68による磁力とのバランスを考慮して、他の磁石(例えば、フェライト磁石等)を用いてもよい。
【0100】
第1の磁気センサ65は、例えばホール素子からなる。この第1の磁気センサ65は、第1の電磁石67を構成する第1の磁性体81における第1の着磁部61側の端部下面に配置されており、第1の磁気センサ65を第1の磁性体81の表面に固着することで、第1の磁気センサ65と第1の電磁石67とが一体化されている。このように第1の磁気センサ65を配置すると、第1の電磁石67のコイル82と光学カプセル55との間のスペースを有効利用できるため、装置の小型化を図ることができる。
【0101】
第2の磁気センサ66は、例えばホール素子からなる。この第2の磁気センサ66は、光学カプセル55の上面における第2の電磁石68を構成する第2の磁性体83の外周側近傍に配置されており、第2の磁気センサ66を光学カプセル55の表面に固着することで、第2の磁気センサ66と光学カプセル55とが一体化されている。このように第2の磁気センサ66を配置すると、第2の電磁石68のコイル84と光学カプセル55との間のスペースを有効利用できるため、装置の小型化を図ることができる。
【0102】
姿勢検出装置86は、光学カプセル55の軸方向に移動自在に設けられ、永久磁石を有する可動部87と、可動部87の移動に応じて変化する永久磁石による磁界を検出するホール素子からなる第3の磁気センサ88とからなる。
【0103】
第1及び第2の電磁石67、68をそれぞれ構成する第1及び第2の磁性体81、83、第1の磁気センサ65、及び第2の磁気センサ66は、光学カプセル55の中心を通る同一放射線上に配置され、位置検出制御ユニット85を構成している。
【0104】
位置検出制御ユニット85は、図8に示すように、周方向に等間隔に配置された磁気回転駆動部64の間の空間に配置されている。ここでは、磁気回転駆動部64が、光学カプセル55の中心、すなわち正規の位置にある回転体53の中心に対して120度の角度をおいて3つ配置され、位置検出制御ユニット85も、光学カプセル55の中心に対して120度の角度をおいて3つ配置されている。これは、図9に示したように、12ステート8ポールの従来構成の3相モータから、1ティース構成のステータコアを3つ等間隔に取り除くことでできた空間に、位置検出制御ユニット85を配置したことになる。
【0105】
このように第1及び第2の磁気センサ65、66と、第1及び第2の電磁石67、68と、永久磁石69とを、周方向の同一位置に配置し、磁気回転駆動部64の間の空間に配置したため、光学カプセル55の外側のスペースを有効利用して省スペース化が図られている。
【0106】
また、磁気回転駆動部64を構成するステータコア71と、第1及び第2の電磁石67、68を構成する第1及び第2の磁性体81、83と、永久磁石69とが、光学カプセル55の外面に当接した状態で設けられているため、光学カプセル55自体の寸法精度を良好に管理すれば、各構成要素の位置関係を極めて高精度に定めることが可能となり、高い制御性能を実現することができる。
【0107】
なお、姿勢検出装置86は、永久磁石を有する可動部87と第3の磁気センサ88とから構成されるものに限定されず、光学カプセル55の軸線(光軸C)の水平面に対する傾斜角度を把握することができるものであれば、例えば、遮光ボールの移動に応じて適所に配置したフォトトランジスタのON/OFF状態から重力方向を検出する光学式センサ(例えば、ローム社製「RPI−1040」など)を用いることもできる。
【0108】
図11は、図10に示した演算処理部77による回転駆動制御の処理手順を示すフロー図である。演算処理部77は、電源がONにされると、図10に示す回転駆動制御を開始する。まず、演算処理部77は、撮像の開始を指示する撮像ON信号が入力されたか否かを判定し(ステップST1)、撮像ON信号が入力されてない場合(No)、ステップST1の判定を繰り返す。ステップST1で撮像ON信号が入力されている場合(Yes)、演算処理部77は、カウンタを始動させるとともに、回転体53の回転速度を、凹部53a、53bに入り込んだ気体57を支持リング52の外部へ排出し得る回転速度として予め設定された始動時用回転速度(ここでは、2000r/min)に設定し、回転体53の回転駆動を開始する(ステップST2)。
【0109】
次いで、演算処理部77は、ステップST2で始動させたカウンタが予め設定された始動時用回転速度の継続時間(ここでは、10sec)を経過したか否かを判定し(ステップST3)、所定の継続時間が経過していない場合(No)、ステップST3の判定処理を繰り返す。一方、ステップST3で10secが経過したと判定された場合(Yes)、演算処理部77は、回転体53の回転速度を、周期設定部25(図2参照)によって決定された円運動周期に対応する回転速度(ここでは、120r/min)に設定し、回転体53の回転駆動を継続する(ステップST4)。
【0110】
続いて、演算処理部77は、姿勢検出装置86の検出結果に基づいて、光学カプセル55の軸線の水平方向に対する傾きが反転したか否か、すなわち、光学カプセル55が気体57を光軸C方向について反対側へ移動させる姿勢反転が行われたか否かを判定する(ステップST5)。
【0111】
ステップST5で姿勢反転が行われていないと判定された場合(No)、演算処理部77は、回転体53を120r/minで回転駆動しつつ、撮像の停止を指示する撮像OFF信号が入力されたか否かを判定する(ステップST6)。ステップST6で撮像OFF信号が入力されてないと判定された場合(No)、演算処理部77は、ステップST5及びステップST6の判定を繰り返す。一方、ステップST6で撮像OFF信号が入力されたと判定された場合(Yes)、演算処理部77は、回転体53の回転速度を0r/minに設定し、回転駆動を停止する(ステップST7)。
【0112】
他方、ステップST5で姿勢反転が行われたと判定された場合(Yes)、演算処理部77は、カウンタを始動させるとともに、回転体53の回転速度を、凹部53a、53bに入り込んだ気体57を支持リング52の外部へ排出し得る回転速度として予め設定された反転時用回転速度(ここでは、2000r/min)に設定し、回転体53の回転駆動を継続する(ステップST8)。
【0113】
その後、演算処理部77は、ステップST8で始動させたカウンタが予め設定された反転時用回転速度の継続時間(ここでは、10sec)を経過したか否かを判定し(ステップST9)、所定の継続時間が経過していない場合(No)、ステップST9の判定処理を繰り返す。一方、ステップST9で10secが経過したと判定された場合(Yes)、演算処理部77は、回転体53の回転速度を、周期設定部25(図2参照)によって決定された円運動周期に対応する回転速度(ここでは、120r/min)に設定し、回転体53の回転駆動を継続し(ステップST10)、ステップST5の処理へ戻る。
【0114】
このように、ステップST2、ST3において、演算処理部77が始動直後の回転体53の回転速度を一定期間にわたって所定の始動時用回転速度に設定することにより、撮像装置1が作動を停止している間に気体57が回転体53の凹部53a、53bに入り込み、或いは光学部材51の表面に付着していたとしても、この一定期間中に回転体53の凹部53a、53bに入り込んだ気体57や光学部材51の表面に付着した気体57を支持リング52の外部へ排出して回転体53から離反させ、回転体53の浮力バランスを適正なものとするとともに、気体57が気泡として画像へ映り込むのを防止することができる。
【0115】
また、ステップST5の判定がYesであった場合に、ステップST8、ST9において、演算処理部77が回転体53の回転速度を一定期間にわたって所定の反転時用回転速度に設定することにより、光学カプセル55が姿勢反転を行った際に気体57が回転体53の凹部53a、53bに入り込み、或いは光学部材51の表面に付着したとしても、この一定期間中に回転体53の凹部53a、53bに入り込んだ気体57や光学部材51の表面に付着した気体57を支持リング52の外部へ排出して回転体53から離反させ、回転体53の浮力バランスを適正なものとするとともに、気体57が気泡として画像へ映り込むのを防止することができる。
【0116】
図12は、図4に示した回転駆動装置54の要部及びシフト制御部14を示す図である。図12に示すように、シフト制御部14は、第1及び第2の磁気センサ65、66の出力信号に基づいて回転体53の径方向及び軸方向の位置を判定する位置判定部91と、この位置判定部91の判定結果に従って、第1及び第2の電磁石67、68に設けられたコイル82、84の通電量を制御する通電制御部92とを有している。位置判定部91及び通電制御部92は、図10に示した演算処理部77のCPUで所定のプログラムを実行することで実現される。
【0117】
位置判定部91では、第1の磁気センサ65により検出される第1の着磁部61の磁気の大きさに基づいて回転体53の径方向の位置を判定し、また、第2の磁気センサ66により検出される第2の着磁部62の磁気の大きさに基づいて回転体53の軸方向の位置を判定する。
【0118】
通電制御部92では、位置判定部91で取得した回転体53の実際の位置と正規の位置とを比較し、正規の位置に対する回転体53のずれを修正する修正値を、径方向及び軸方向について算出する。この修正値は、図10に示したように、演算処理部77からD/A変換器(DAC)を介して第1及び第2の電磁石駆動用ドライバ93、94に送信され、修正値に対応する電流を第1及び第2の電磁石67、68のコイル82、84に流す。このようなフィードバック制御により、回転体53が正規の径方向位置及び軸方向位置に保持される。
【0119】
ここで、第1の磁気センサ65と第1の電磁石67は、互いに周方向の同一位置に配置されており、第1の磁気センサ65により検出される回転体53の径方向位置と、第1の電磁石67により回転体53に径方向力を作用させる位置とが同一となる。また第2の磁気センサ66と第2の電磁石68も、互いに周方向の同一位置に配置されており、第2の磁気センサ66により検出される回転体53の軸方向位置と、第2の電磁石68により回転体53に軸方向力を作用させる位置とが同一となる。このため、位置制御のための演算処理を簡略化することができ、回転体53の位置制御を容易に且つ高精度に行うことが可能となっている。
【0120】
また、シフト制御部14では、位置判定部91による位置判定動作と、通電制御部92による位置制御動作とが時分割で交互に行なわれる。すなわち、第1及び第2の電磁石67、68のコイル82、84に通電する位置制御が行われる間は、第1及び第2の磁気センサ65、66の出力信号に基づく位置判定が行われず、逆に位置判定が行われる間は、位置制御が行われない。
【0121】
これにより、第1及び第2の電磁石67、68のコイル82、84に通電することで発生する磁界の影響で、第1及び第2の磁気センサ65、66が第1及び第2の着磁部61、62の磁気を正確に検出することができなくなることを避けることができる。
【0122】
ところで、図2に示した超解像処理部24にて実施される超解像処理では、元になるフレーム画像の撮像位置が既知であれば、位置合わせ処理の演算コストを大幅に削減することができる。このとき、例えば120万画素の撮像素子31を1/3インチサイズで構成すると画素ピッチは3.75μm程度となるが、これを超解像処理で4×4倍に拡大する場合、新たに生成される画像の画素ピッチは3.75/4=0.93μmとなり、撮像位置をサブミクロンオーダで高精度に把握することが望まれる。
【0123】
このようにフレーム画像の撮像位置を高精度に把握するには、まず光学部材51の位置を高精度に制御する必要があり、これは、前記のように第1及び第2の磁気センサ65、66と第1及び第2の電磁石67、68とにより実現される。さらに、フレーム画像の撮像位置を高精度に把握するには、平行平板43による光のシフト方向を規定する回転体53の回転位置を高精度に検出する必要がある。
【0124】
そこで、回転駆動装置54は、図4、図8に示したように、光学部材51の回転位置の基準となる原点位置を検出する原点センサ70を備えている。この原点センサ70の出力信号に基づいて、駆動回路33が生成するタイミング信号に応じて撮像素子31で撮像が行われたときの光像のシフト位置が決定される。これにより、フレーム画像の撮像位置を高精度に把握することができ、超解像処理の演算コストを低減することができる。
【0125】
原点センサ70は、反射型フォトセンサ(フォトリフレクタ)からなり、光学部材51の支持リング52上に設けられた図示しないマーキング部を検出する。なお、マーキング部は、所要の色(例えば支持リング52が黒色であれば白色)の塗料を印刷工法などを用いて支持リング52の表面に形成すればよい。また、原点センサ70は、反射型フォトセンサに限定されるものではなく、他の光学センサを含む周知のセンサを用いることができる。
【0126】
さらに、フレーム画像の撮像位置を高精度に把握するには、光学部材51の回転速度を高精度に制御する必要がある。これには、まず、回転体53の回転速度を高精度に検出する必要があり、ここでは、回転体53の回転速度を第1の磁気センサ65の出力信号から求めるようにしている。第1の着磁部61が回転体53と連動回転すると、第1の磁気センサ65に対向する磁極(N極及びS極)が交互に切り替わり、第1の磁気センサ65から出力される信号は、第1の着磁部61のN極及びS極の1組が相対移動する期間を1周期とする正弦波を呈し、その出力信号の周期に基づいて回転体53の回転速度を求めることができる。
【0127】
これを図10を参照して具体的に説明すると、第1の磁気センサ65の出力信号が、コンパレータ(CMP)で2値化されて3系統のFGパルスとして出力され、このFGパルスのパルス間隔が、図示しない高速カウンタによって計数される。演算処理部77では、第1の着磁部61の既知である磁極間距離を高速カウンタの計数値で除算する演算が行われ、これにより速度実測値Vnが得られる。
【0128】
なお、このような回転速度の検出方法に加えて、例えば、光学部材51や第1の着磁部61等にマーキングを施し、これを光学式センサ(フォトリフレクタ)で検出するようにしてもよい。その場合、白黒のマーキングとすれば、比較的狭ピッチで描けるため、より高いサンプリングレートで回転角速度の検出が可能となる。
【0129】
また、光学部材51を等速度で回転させるため、ここでは光学部材51の回転速度に基づくPI制御(比例積分制御)を行っている。具体的には、周期設定部25(図2参照)から指示された円運動周期に対応して速度目標値Vrを設定して、この速度目標値Vrに対する速度実測値Vnの誤差δV(=Vr−Vn)を算出する。ついで、誤差δVに適切なゲインGpを乗じて比例項(P=Gp×δV)を算出する。また、速度オフセットを生じることから、誤差δVを積分し、これに適切なゲインGiを乗じて積分項(I=Gi×Σ(δV))を算出する。そして、得られた比例項(P)と積分項(I)とを加算して速度指令値を求める。この速度指令値は、上述のように、パルス幅変調器(PWM)78に送られて、3相ドライバ74を動作させるPWM信号が出力される。これにより光学部材51を高い精度で等速度回転させることができる。
【0130】
図13は、撮像素子31への光の入射状況を示す断面図であり、図13(A)は入射した光の光路が最も右側にシフトした状態を示し、図13(B)は図13(A)の状態から平行平板43が180゜回転した状態を示している。なお、図13(B)の状態から、平行平板43がさらに180゜回転すると、図13(A)の状態に復帰する。
【0131】
光学部材51の平行平板43は、レンズユニット42の光軸Cに対して傾斜しているため、レンズユニット42を経て入射する光を屈折させ、撮像素子31の受光面31aに入射する光の位置が平行平板43の回転位置に応じて変化し、光学的シフト機構35により光学部材51を回転させると、撮像素子31の受光面31a上で結像する光像が、光学部材51の回転速度に応じた周期(円運動周期)で円を描くように移動し、これにより撮像素子31に対して光像を相対的に微小変位させることができる。
【0132】
このように、平行平板43はレンズユニット42を通過した入射光を光軸Cと垂直な方向にシフトさせる機能のみを持つ。またレンズユニット42と撮像素子31の位置関係は固定されているから、撮像素子31側の画角も確定される。これらのことから明白なように、平行平板43は光軸Cの方向に平行移動しても、光軸Cと垂直な方向に平行移動しても、光学的シフト量は不変である。一方、平行平板43と光軸Cの角度が変化すると、光学的シフト量は大きな影響を受ける。すなわち、平行平板43を含む光学部材51の位置制御にとって重要なのは光軸Cに対する光学部材51の角度変動であり、光学部材51の光軸C方向及び光軸Cと垂直な方向(径方向)における平行移動については、極論すれば光学部材51が光学カプセル55の内壁に当接しないように制御すればよい。
【0133】
図14及び図15は、光像に対する画素の相対的な円運動の状況を示す模式図である。撮像素子31は、入射光のうちR(Red)成分を受光するR画素と、B(Blue)成分を受光するB画素と、G(Green)成分を受光するG画素の各画素がいわゆるベイヤ配列に基づいて配列された、いわゆる単板式の撮像素子である。このベイヤ配列では、G画素が全画素数の1/2の画素数で千鳥状(チェッカフラッグ状)に配置され、R画素及びB画素が各全画素数の1/4ずつの画素数でG画素の配置位置を除く位置に分散配置されている。なお、図中のX軸は主走査方向、Y軸は副走査方向をそれぞれ示す。以下、同様である。
【0134】
なお、ここでは、図13に示したように、固定された撮像素子31の画素に対して光像が変位するものであるが、以下の説明では、便宜上、光像に対する画素の相対的な移動を、静止した光像に対して画素が移動するように図示する。また、各画素は、概ね光学サイズとして示される範囲の光を受光するが、以下の説明では、便宜上、各画素の中心位置のみを図示する。
【0135】
ここで、図14(B)に示すように、例えば円運動の直径を画素ピッチの√2倍の長さに設定すると、R画素の移動範囲から外れてRの色情報が完全に欠落する領域が発生する。また、これと同様にB画素の移動範囲から外れてBの色情報が完全に欠落する領域が発生する。ちなみに、従来のように、円運動の直径を、画素ピッチの√2/2倍の長さに設定すると、Rの色情報が完全に欠落する領域がさらに大きくなり、ベイヤ配列を持つ一般的な単板式カラーイメージセンサで撮像した低解像度画像を超解像処理に供しても高精細な高解像度画像の再現を行うことはできない。
【0136】
これに対して、図14(A)に示すように、円運動の直径を画素ピッチの2倍の長さに設定すると、図15(A)、(C)に示すように、R画素及びB画素のない領域にもR画素及びB画素を移動させることができるため、撮像位置に偏りがなくなり、超解像処理で得られる高解像度画像を高品質なものとすることができる。さらに図15(B)に示すように、G画素については、もともと画素数が多い(全体の1/2)ことに加え、千鳥配置されたG画素が周辺領域を走査する状態となるため、光像を網羅的にサンプリングすることが可能となる。
【0137】
逆に、円運動の直径を画素ピッチの2倍より大きくした場合、R画素やB画素が撮像できない領域が帯状に発生することはない。しかしながら、円運動の角速度を一定としたとき円運動の直径を大きくすると、光像の変位速度(すなわち周速度)が増大する。この場合は同一の撮像期間(撮像素子31で電荷蓄積が行なわれる期間)が与えられた場合に、より大きな距離だけ光像が移動することとなり積分効果が大きくなる、つまり画像がブレてしまう(いわゆるモーションブラーと同じ状態が発生する)ため、画素積分によって高周波成分が失われ、超解像処理の効果を抑制する要因となる。
【0138】
次に、撮像(サンプリング)について説明する。図16は、撮像と撮像により生成する画像の状況を示す模式図である。
【0139】
ここでは、光像に対する画素の相対的な円運動を1方向に一定速度で連続して行わせながら撮像が行われ、撮像位置が少しずつずれたフレーム画像F1・F2・・・が順次生成される。図示する撮像基準位置P1・P2・・・は、撮像のタイミングを示すものであり、各々で1枚のフレーム画像が生成される。特にここでは、撮像開始時の画素の中心位置を撮像基準位置として示しており、各撮像基準位置で電荷蓄積が開始され、直後の撮像基準位置の手前で電荷蓄積が完了して画素信号が出力される。
【0140】
この円運動の回転速度は上述したPI制御によって安定して保たれ、平行平板43(図4参照)の回転位置の基準は上述した原点センサ70(図8参照)によって管理され、また平行平板43の傾斜角変動に伴うシフト幅(シフト位置)に対する影響は小さく抑えられているから、各タイミングで撮像されるフレーム画像の撮像位置は極めて高精度に把握されることとなる。
【0141】
この撮像位置に関する情報は、図2に示したように、第1の磁気センサ65及び原点センサ70の出力に基づきシフト制御部14(より具体的には図10に示した演算処理部77)で逐次生成され、撮像装置1から画像処理装置2に送信されて、撮像部11から出力されたフレーム単位の画像データと関連づけて記憶部23に記憶される。そして超解像処理の過程で、撮像位置に関する情報が超解像処理部24で参照され、この際に位置合わせ処理が簡略化される。
【0142】
なお、超解像処理で適切な高解像化を行うには、全ての画素において均一に変位した状態とすることが望ましく、各画素ライン間で電荷蓄積タイミングに時間差が生じるのは妥当でないため、ここでは全ての画素のシャッタ動作を同じタイミングで行わせるグローバルシャッタ方式が採用される。
【0143】
また、画素が1回の円運動を行う間に数多くの撮像(サンプリング)を行うことで、超解像処理で得られる高解像度画像の品質を高めることができ、特にここでは、円運動周期を撮像周期の非整数倍に設定する。このようにすると、円運動を繰り返すことで、多数の異なる位置での撮像が可能となるため、撮像位置が微小に異なる画像を多数生成することができるので、超解像処理で得られる高解像度画像の品質を向上させることができる。これに対して、円運動周期を撮像周期の整数倍とすると、円運動を繰り返しても撮像基準位置に変化がなく、1回の円運動で設定可能な撮像基準位置の数に限定される。
【0144】
以下、円運動周期と撮像周期との比率を具体的に定めて、撮像基準位置の例について説明する。図17は、撮像周期と円運動周期との比率の一例での撮像基準位置の状況を示す模式図である。なお、図17では、画素ピッチを1として図示している。
【0145】
この例では、円運動周期を撮像周期の7.5倍に設定している。ここで、撮像周期を例えば30ms(約30frame/s)とすると、円運動周期は225msとなる(=30ms×7.5)。この場合、円運動の2回目で撮像基準位置が原位置に復帰し、円運動が2回行われる間に15回の撮像(サンプリング)が行われる。各撮像基準位置は48deg(=360deg/7.5)の相対角度をもって離間している。
【0146】
円運動の1回目では、図17(A)に示すように、撮像基準位置P1〜P8で撮像が行われ、円運動の2回目では、図17(B)に示すように、撮像基準位置P9〜P15で撮像が行われ、各撮像基準位置P9〜P15は、円運動の1回目における隣り合う撮像基準位置(例えばP1とP2)の中間位置となる。円運動の1回目と2回目とを合わせると、図17(C)に示すように、各撮像基準位置P1〜P15が24degの相対角度をもって離間する。
【0147】
ここで、円運動の1回目の撮像基準位置P1〜P8での撮像で得られた8枚の画像に基づいて超解像処理を行う第1の処理モードと、円運動の1回目と2回目とを合わせた撮像基準位置P1〜P15での撮像で得られた15枚の画像に基づいて超解像処理を行う第2の処理モードとの2つの処理モードを選択することができる。
【0148】
第1の処理モードでは、本来の1画素の範囲内に、X軸・Y軸の両方向で位置の異なる2つの撮像基準位置が設定されるため、X軸・Y軸のそれぞれの方向について撮像素子31の本来の解像度のほぼ2倍の解像度で高解像度化を行うことができる。一方、第2の処理モードでは、本来の1画素の範囲内に、X軸・Y軸の両方向で位置の異なる4つの撮像基準位置が設定されるため、X軸・Y軸のそれぞれの方向について撮像素子31の本来の解像度のほぼ4倍の解像度で高解像度化を行うことができる。
【0149】
特に、この第2の処理モードでは、円運動の2回目で設定される撮像基準位置P9〜P15の各々が、円運動の1回目で設定される撮像基準位置P1〜P8の互いに隣り合うもの同士の中心位置になり、撮像基準位置が偏ることなく均等に分散された状態となるため、超解像処理との適合性に優れた画像を生成することができる。
【0150】
また、撮像装置1で撮像が行われている最中に撮像装置1で超解像処理を行うことも可能であり、この場合、第2の処理モードでは、円運動が2回行われて15枚の画像が揃う度に1回の超解像処理を行えばよい。
【0151】
一方、第1の処理モードでは、撮像基準位置を順次シフトさせながら8枚の画像が揃う度に超解像処理を行うとよい。具体的には、1回目で、撮像基準位置P1〜P8での撮像で得られた8枚の画像を用いて超解像処理を行い、2回目で、撮像基準位置P9〜P15・P1での撮像で得られた8枚の画像を用いて超解像処理を行い、以降、3回目では撮像基準位置P2〜P9、4回目では撮像基準位置P10〜P15・P1・P2というように撮像基準位置を1つずつずらすようにする。
【0152】
このように2つの処理モードを設定することができ、両モードでは、円運動周期(光学的シフト機構35の回転速度)や撮像周期を変化させる必要がないため、制御が容易である。
【0153】
なお、各モードでの超解像処理に用いる最初の画像は原位置である撮像基準位置P1の撮像で得られた画像に限定する必要がなく、第1の処理モードでは、任意の位置から1回の円運動が行われる間に撮像された8枚の画像を用いて超解像処理を行い、第2の処理モードでは、任意の位置から2回の円運動が行われる間に撮像された15枚の画像を用いて超解像処理を行うようにしてもよい。
【0154】
このような処理は、図3に示したように、画像処理装置2の記憶部23に蓄積されたフレーム画像を用いて超解像処理を行う場合にも、また撮像装置1での撮像の最中に超解像処理を行う場合にも適用することができ、特に後者の場合には、処理モードの切り替えに伴って撮像開始位置を撮像基準位置P1に戻す操作が必要でないため、直ちに処理モードを切り替えて解像度が異なる高解像度画像を生成することが可能になる。
【0155】
図2に示したように、撮像周期は、画像処理装置2において入力部26を用いてユーザにより指定され、周期設定部25にて、指定された撮像周期に基づいて円運動周期が決定され、ここで決定された円運動周期に関するコマンド信号が撮像装置1に送信される。撮像装置1のシフト制御部14では、画像処理装置2から取得した円運動周期に関するコマンド信号に基づいて、指定された円運動周期に対応する回転速度で光学的シフト機構35を動作させる。
【0156】
また、ユーザは処理モード(第1の処理モードと第2の処理モード)を指定することができ、図3に示したように、画像処理装置2の記憶部23に蓄積されたフレーム画像を用いて超解像処理を行う場合には、基準画像と共に処理モードをユーザに指定させ、ここで指定された処理モードに応じた数のフレーム画像を、基準画像として指定されたフレーム画像を基準にして読み出して超解像処理を行わせればよい。
【0157】
なお、上記円運動周期は、適宜変更することが可能である。例えば、円運動周期を撮像周期の7.2倍に設定することにより、円運動の5回目で撮像基準位置が原位置に復帰し、円運動が5回行われる間に36回の撮像(サンプリング)が行われる構成も可能である。その場合、各撮像基準位置は50deg(=360deg/7.2)の相対角度をもって離間する。
【0158】
<第2実施形態>
図18は、本発明の第2実施形態に係る回転体53を模式的に示す平面図である。なお、ここでは第1実施形態と異なる点にのみ言及し、第1実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付してその説明は省略する。以下の実施形態についても同様とする。
【0159】
第1実施形態では、図6(A)に示したように、貫通孔46が回転体53の放射方向に形成されているのに対し、本実施形態の回転体53では、図18に示すように、回転体53の放射方向に対し、径方向外側へ行くにつれて回転方向と反対側に傾斜するように貫通孔146(気体排出路)が形成されている。
【0160】
上記したように、液体56は、回転体53の回転に伴い、回転体53と同一方向へ回転しつつ遠心力で外周側へ移動する旋回流を生じるが、貫通孔146がこのように形成されたことにより、貫通孔146の向きが液体56の流れ方向に近似するため、液体56が貫通孔146へ導入され易くなり、且つ回転体53の回転力が貫通孔146内の液体56を外周側へ押し出す方向に作用するため、同一断面であっても貫通孔146を流れる液体56の流量が大きくなる。したがって、下側となった回転体53の凹部53a、53bに入り込んだ気体57を凹部53a、53bの外部へ排出し易くなる。これにより、始動時用回転速度及び反転時用回転速度の継続時間を短く設定し、早期に指定された回転速度で回転体53を回転させることができる。
【0161】
<第3実施形態>
図19は、本発明の第3実施形態に係る回転体を示す詳細図であり、図19(A)は回転体53の平面図を示し、図19(B)は図19(A)中のB−B線に沿う回転体53の断面図を示している。第1実施形態では、図6に示したように、貫通孔46が支持リング52に対し内周面及び外周面に開口するように形成されていたが、本実施形態では、図19に示すように、貫通孔246(気体排出路)が、光学部材51に対し、回転体53の両凹部53a、53bを連通するように形成されている。なお、貫通孔246は、光学部材51の基部44にそれぞれ1つずつ、合計2つが、支持リング52の内周面に沿うように光学部材51の外縁に設けられている。
【0162】
貫通孔246がこのように設けられたことにより、図19(B)に示すように、回転体53が軸を鉛直にして回転駆動される場合には、光学的シフト量及び画質に悪影響を及ぼし易い下側の凹部53bに入り込んだ気体57は、回転体53の回転に伴う旋回流に乗って光学部材51の外縁に集まり、より早く回転する貫通孔246が上方を通過する際に、浮力によって貫通孔246へ流れ込み、外部に排出され易い上側の凹部53aへ移動する。その後、気体57は浮力によって上方へ移動し、上記した空間外環部Sb(図4参照)に滞留する。同様に、回転体53の軸が傾斜している場合でも、下側の凹部53bに入り込んだ気体57は、浮力によって貫通孔246を通過して上側の凹部53aに移動し、その後、空間外環部Sbに滞留する。
【0163】
一方、回転体53が軸を水平にして回転駆動される場合には、左右(軸方向の両側)の凹部53a、53bに気体57が入り込んだとしても、気体57は、浮力により上方へ移動し、回転体53の表面に沿って生じる旋回流によって貫通孔246を通過することなく支持リング52の内周面に沿って外部へ排出される。
【0164】
このように、貫通孔246が比較的比重の小さな光学部材51に形成され、且つ光学部材51の厚さ方向に設けられることにより、貫通孔246の延長を短くでき、回転体53の質量バランスを崩すことなく気体排出路を形成することができるとともに、製造も容易になる。また、気体57の排出を確実に行うために貫通孔246の断面積を大きくすることも可能であり、特に、図19(A)に示すように、周方向に長い断面形状にすることにより、気体57の排出を確実にすることができる。
【0165】
<第4実施形態>
図20は、本発明の第4実施形態に係る撮像部11の要部を模式的に示す縦断面図であり、図21は、図20に示した撮像部11が姿勢変化した状況を模式的に示す縦断面図である。第1実施形態の撮像部11では、図4に示すように、光学カプセル55が気体滞留部を形成するべく支持リング52に対して径方向外側及び軸方向の両側において所定の間隙を作る大きさに形成されていたのに対し、本実施形態の撮像部11では、図20に示すように、光学カプセル55が支持リング52に対して径方向外側及び軸方向の両側において近接するように形成される一方、軸方向の両端に、気体57を滞留させるために軸方向及び径方向についてそれぞれ膨出して大円環状をなす専用の気体滞留空間Scを画成している。
【0166】
光学カプセル55がこのように形成されたことにより、図20に示すように、回転体53が軸を鉛直にして回転駆動される場合には、光学カプセル55内の気体57は、上側の気体滞留空間Scに滞留する。一方、回転体53が軸を水平にして回転駆動される場合には、図21に示すように、気体57は、両気体滞留空間Scの上部に滞留する。つまり、撮像部11が姿勢を変化させても、気体57が回転体53の凹部53a、53bに入り込み難くなっている。そのため、姿勢検出装置86を省略し、演算処理部77による回転駆動制御において(図11参照)、光学カプセル55の反転判定(ステップST5)及び反転時用回転速度の設定処理(ステップST8〜ST10)を省略することができる。或いは、光学カプセル55の反転判定(ステップST5)の判定基準を、例えば、反転後の傾斜角度が一定角度以上であることや、反転時の各速度が一定速度以上であることを条件に加えるなどにより厳しくすることにより、反転時用回転速度の設定処理(ステップST8〜ST10)の頻度を少なくすることができる。
【0167】
本発明について実施例を含む特定の実施形態に基づいて説明したが、これらの実施形態はあくまでも例示であって、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。例えば、上記第1及び第2実施形態では、支持リング52を貫通する貫通孔46、146を気体排出路として設けているが、H字状断面を有する回転体53の段差が小さい場合には、底面が光学部材51の表面に沿うように支持リング52に溝を設け、この溝を気体排出路とすることもできる。なお、上記実施形態に示した本発明に係る撮像装置の各構成要素は、必ずしも全てが必須ではなく、少なくとも本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0168】
本発明にかかる撮像装置は、長期の信頼性を確保すると共に低振動を実現し、装置の振動が光学的シフト量に与える影響を小さくするとともに、光学的シフト量の繰り返し再現性を確保することができる効果を有し、画素ずらしによって取得した複数の原画像から超解像処理により高解像度画像を生成するのに適した撮像装置として有用である。
【符号の説明】
【0169】
1 撮像装置
2 画像処理装置
11 撮像部
14 シフト制御部
31 撮像素子、31a 受光面
35 光学的シフト機構
42 レンズユニット
43 平行平板
46、146、246 貫通孔(気体排出路)
51 光学部材
52 支持リング
53 回転体
53a、53b 凹部
54 回転駆動装置
55 光学カプセル(カプセル部材)
56 液体
57 気体
77 演算処理部
86 姿勢検出装置(姿勢検出手段)
C 光軸
S 密閉空間
Sa 空間中央部
Sb 空間外環部(気体滞留部)
Sc 気体滞留空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体からの光を光電変換して画素信号を出力する撮像素子と、
前記被写体からの光を前記撮像素子に結像させるレンズユニットと、
前記レンズユニットの光軸に対して所定角度傾斜する光学部材及び当該光学部材の外周側に設けられた支持リングを有する回転体と、
前記回転体を回転させて前記光学部材の前記光軸に対する傾斜方向を変化させることにより、前記撮像素子の受光面上で結像する光像と前記撮像素子とを相対的に変位させる回転駆動装置とを備えた撮像装置であって、
前記回転体は、前記光軸方向の両面に凹部が形成されるとともに、液体を封入したカプセル部材の内部に配置されて当該液体以外と非接触状態で回転駆動されるものであり、
前記回転体には、前記各凹部に混入した気体を当該各凹部の外部へ排出するための気体排出路が形成されたことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記気体排出路は、一端が内周面に開口し、他端が外周面に開口するように前記支持リングに形成された貫通孔であることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記気体排出路は、前記両凹部を連通するように前記光学部材に形成された貫通孔であることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記カプセル部材は、中央に位置して前記光学部材を収容する円板状の空間中央部と、当該空間中央部の外周側に連なるとともに光軸方向に拡幅した円環状の空間外環部とからなる密閉空間を画成し、
前記空間外環部が前記気体を滞留させる気体滞留部をなすことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項5】
前記回転駆動装置は、前記回転体の回転速度を設定する演算処理部を備え、
前記演算処理部は、前記回転体の回転始動時に、前記回転速度を一定期間にわたって所定の始動時用回転速度に設定することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項6】
前記光学カプセルの姿勢を検出する姿勢検出手段を更に備え、
前記演算処理部は、前記姿勢検出手段の検出結果に基づいて、前記カプセル部材が前記気体を前記光軸方向の反対側へ移動させる姿勢反転を行ったと判定した場合、前記回転速度を一定期間にわたって所定の反転時用回転速度に設定することを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−65169(P2012−65169A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208092(P2010−208092)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】