説明

撮像装置

【課題】被写体像に重畳表示させない場合において、撮影レンズユニットを通過した被写体光の輝度を低下させない撮像装置を提供する。
【解決手段】上記課題を解決するために、撮像装置は、被写体を観察する光学ファインダと、透過型表示素子と、透過型表示素子を、光学ファインダの光路に交差させる第1状態と、光路から退避させる第2状態に変位させる、すなわち光学ファインダの光路に交差する位置と、光学ファインダの光路に交差しない位置にずらす変位機構とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮影レンズユニットを通過した被写体光が結像する焦点板の上面に液晶型の表示素子を設け、当該被写体光学像に重畳させてAFエリア等を表示するカメラが知られている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2009−253899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、被写体光学像に表示素子を重畳させる場合、当該表示素子がたとえ透過型であっても透過光量は減少してしまうので、被写体光学像の視認性は低下していた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の撮像装置は、被写体を観察する光学ファインダと、透過型表示素子と、透過型表示素子を、光学ファインダの光路に交差させる第1状態と、光路から退避させる第2状態に変位させる変位機構とを備える。
【0005】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】一眼レフカメラの外観を示す背面斜視図である。
【図2】一眼レフカメラの要部断面図である。
【図3】一眼レフカメラのシステム構成を概略的に示すブロック図である。
【図4】ファインダ窓を介して視認される重畳表示を示した図である。
【図5】透過表示部をスライドさせる変位機構を示す模式図である。
【図6】透過表示部のスライド時の状態を示した図である。
【図7】他の一眼レフカメラの要部断面図である。
【図8】可撓性を有する透過表示部の構造を示した平面図である。
【図9】透過表示部を第1状態にした場合の模式図である。
【図10】可撓性を有する透過表示部を第2状態にした場合の模式図である。
【図11】近接センサを用いて透過表示部をスライドさせるフロー図である。
【図12】照度センサを用いて透過表示部をスライドさせるフロー図である。
【図13】光学像に画像データの一部を合成する過程を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0008】
図1は、本実施形態に係る一眼レフカメラ10の背面斜視図である。一眼レフカメラ10は、カメラ本体30に交換レンズ20が装着されて構成される。カメラ本体30には、焦点距離、開放F値等の異なる複数の交換レンズ20が交換可能に装着される。
【0009】
カメラ本体30の背面には、背面表示部61、決定ボタン62、十字キー63、ライブビューボタン64、スライドレバー65、ファインダ窓67、近接センサ68等が設けられている。また、カメラ本体30の側面には、視認窓66、照度センサ69等が設けられている。
【0010】
背面表示部61には、撮影された画像データが表示される他、一眼レフカメラ10の各種設定に関する様々な設定情報、メニュー項目等も表示される。ユーザは、十字キー63、決定ボタン62および他の操作部材を操作することにより、背面表示部61に画像データ、メニュー項目等を順次表示させて視認しながら、特定の項目を選択、実行する指示をカメラ本体30に与えることができる。例えば、ユーザは、十字キー63によりアクティブなメニュー項目を上下左右に移動させた後に、十字キー63の中心部に設けられた決定ボタン62を押下げることにより、アクティブにしたメニュー項目をカメラ本体30に設定、実行させることができる。
【0011】
ライブビューボタン64は、撮像素子の受光面に結像する被写体画像を逐次光電変換して表示用の画像データを生成し、これを背面表示部61に連続的に表示させるライブビューを開始させるボタンである。ユーザは、ライブビューボタン64を押し下げることにより、ファインダ窓67を介した被写体観察から、背面表示部61による被写体観察に切り替えることができる。さらに、再度ライブビューボタン64を押し下げれば、ファインダ窓67を介した被写体観察に戻すことができる。
【0012】
スライドレバー65は、ユーザがINの位置からOUTの位置またはOUTの位置からINの位置にスライド操作すると、後述する透過表示部を光学ファインダの光路に交差させる第1状態と、光路から退避させる第2状態に変位させる。本実施形態では、透過表示部を第2状態に変位させると、透過表示部がカメラ本体30の右肩部に設けられた視認窓66を介して視認される。
【0013】
近接センサ68は、ユーザがファインダ窓67に近接したか否か、すなわちユーザがファインダ窓67を覗いているか否かを検出するセンサである。従って、近接センサ68はファインダ窓67の近傍に設けられている。近接センサ68は、例えば赤外線の投光部および受光部から構成される。カメラ本体30の左側部には照度センサ69が備えられている。照度センサ69は、一眼レフカメラ10の周辺環境の照度を検出するセンサである。
【0014】
図2は、一眼レフカメラ10の要部断面図である。一眼レフカメラ10は、交換レンズ20とカメラ本体30が組み合わされて撮像装置として機能する。
【0015】
交換レンズ20は、光軸11に沿って配列されたレンズ群21を備える。レンズ群21は、入射される被写体光束をカメラ本体30へ導く。レンズ群21には、フォーカスレンズ、ズームレンズ等が含まれ、焦点調整、画角調整の指示に応じて光軸方向に移動できるように構成されている。交換レンズ20は、カメラ本体30との接続部にレンズマウント29を備え、カメラ本体30が備えるカメラマウント31と係合して、カメラ本体30と一体化する。
【0016】
カメラ本体30は、交換レンズ20から入射される被写体光束を反射するメインミラー32と、メインミラー32で反射された被写体光束が一次結像するピント板55を備える。メインミラー32は、メインミラー回転軸34周りに回動して、光軸11を中心とする被写体光束中に斜設される斜設状態と、被写体光束から退避する退避状態を取り得る。
【0017】
ピント板55側へ被写体の光学像を導く場合は、メインミラー32は被写体光束中に斜設される。メインミラー32は、被写体光束中に斜設された状態で、ライブビューボタン64が押し下げられた場合またはレリーズボタンが最下部まで押し下げられた場合、破線で示した退避位置に移動する。メインミラー32は、ライブビューボタン64が押し下げられた場合、再度ライブビューボタン64が押し下げられるまで退避位置に留まる。一方、レリーズボタンが押し下げられた場合は、所定の撮像動作を終えると元の斜設状態の位置に戻される。
【0018】
ピント板55は、撮像素子36の受光面と共役の位置に配置されている。ピント板55で一次結像した被写体の光学像は、ペンタプリズム37で正立像に変換され、接眼光学系38、ファインダ窓67を介してユーザに観察される。ペンタプリズム37の射出面上方にはAEセンサ39が配置されており、AEセンサ39の受光面には、ピント板55に一次結像した被写体の光学像が、ペンタプリズム37を介して二次結像される。
【0019】
ピント板55とペンタプリズム37の間、すなわち被写体光束の一次結像面近傍には、透過表示部70が第1状態として配置され得る。本実施形態では、透過表示部70をピント板55の上面側に設けたが、透過表示部70を設ける位置は一次結像面の近傍であればよく、ピント板55の下面側に設けても良い。透過表示部70は、自発光型で透明基板および透明電極からなる有機ELディスプレイなどの透過型表示素子により構成される。ピント板55で一次結像した被写体光束は、透過表示部70が非表示の状態において透過する。また、表示状態であっても、発光条件によっては、表示部分を透過し得る。
【0020】
なお、透過表示部70は、メインミラー32が被写体光束から退避して被写体光束がファインダ窓67に導かれない場合に、ライブビュー画像、動画像等を表示させるようにしても良い。メインミラー32が退避した状態においては、被写体光束が入射しないのでファインダ内は暗く、自発光型表示素子を採用する透過表示部70の視認性が向上する。例えば、直射日光などの強い光が当たって背面表示部61が視認し難い状況であることが照度センサ69によって検出されると、ライブビュー画像等を背面表示部61から透過表示部70に切り換えて表示させることができる。また、メインミラー32が被写体光束から退避した状態において、ユーザがファインダ窓67を覗いていることが近接センサ68によって検出されると、ライブビュー画像等を背面表示部61から透過表示部70に切り換えて表示させることもできる。また、動画像撮影中にもファインダ窓67を使用することにより、ユーザは一眼レフカメラ10をしっかりと把持することができるので、手振れの軽減が期待できる。
【0021】
透過表示部70は、後述する変位機構71によって、光学ファインダの光路に交差させる第1状態から光路から退避させる第2状態に変位される。従って、透過表示部70が第1状態にあるときは、ピント板55で一次結像した被写体の光学像が透過表示部70を介してペンタプリズム37に入射する。一方、透過表示部70が第2状態にあるときは、ピント板55で一次結像した被写体の光学像が透過表示部70を介さずにペンタプリズム37に入射する。
【0022】
斜設状態におけるメインミラー32の光軸11の近傍領域は、ハーフミラーとして形成されており、入射される被写体光束の一部が透過する。透過した被写体光束は、メインミラー32と連動して回動するサブミラー40で反射されて、AF光学系41へ導かれる。AF光学系41を通過した被写体光束は、AFセンサ42へ入射される。
【0023】
AFセンサ42は、例えば、受光した被写体光束から位相差信号を出力する複数の光電変換素子列である。具体的には、光学像の特定の領域に対応して設けられる複数の焦点調整領域のそれぞれにおいて、合焦状態、前ピン状態、後ピン状態を検出でき、前ピン状態、後ピン状態の場合には、合焦状態からのずれ量も検出することができるように構成されている。なお、サブミラー40は、メインミラー32が被写体光束から退避する場合は、メインミラー32に連動して被写体光束から退避する。
【0024】
斜設されたメインミラー32の後方には、光軸11に沿って、フォーカルプレーンシャッタ43、撮像素子36が配列されている。フォーカルプレーンシャッタ43は、撮像素子36へ被写体光束を導くときに開放状態を取り、その他のときに遮蔽状態を取る。そして、撮像素子36は、例えばCMOSセンサなどの光電変換素子であり、受光面で結像した被写体の光学像を電気信号に変換する。
【0025】
撮像素子36で光電変換された電気信号は、メイン基板50に搭載されたDSPである画像処理部51で画像データに処理される。メイン基板50には、画像処理部51の他に、カメラ本体30のシステムを統合的に制御するMPUであるカメラシステム制御部52が搭載されている。カメラシステム制御部52は、カメラシーケンスを管理すると共に、各構成要素の入出力処理等を行う。例えば、AEセンサ39から出力される光学像の照度分布から露出値を演算し、AFセンサ42から出力される位相差信号から合焦制御を行う。また、カメラ本体30には、着脱可能な二次電池54が収容され、カメラ本体30に限らず、交換レンズ20にも電力を供給する。
【0026】
図3は、本実施形態に係る一眼レフカメラ10のシステム構成を概略的に示すブロック図である。一眼レフカメラ10は、交換レンズ20とカメラ本体30のそれぞれに対応して、レンズシステム制御部22を中心とするレンズ制御系と、カメラシステム制御部52を中心とするカメラ制御系により構成される。そして、レンズ制御系とカメラ制御系は、レンズマウント121とカメラマウント131によって接続される接続部を介して、相互に各種データ、制御信号の授受を行う。
【0027】
カメラ制御系に含まれる画像処理部51は、カメラシステム制御部52からの指令に則して、撮像素子36で光電変換された撮像信号を所定の画像フォーマットに従った画像データに処理する。例えば、静止画像としてJPEGファイルを生成する場合は、色変換処理、ガンマ処理、ホワイトバランス処理等の画像処理を行った後に適応離散コサイン変換等を施して圧縮処理をする。
【0028】
また、動画像としてMPEGファイルを生成する場合は、所定の画素数に縮小して生成した連続する静止画としてのフレーム画像に対して、フレーム内符号化、フレーム間符号化を施して圧縮処理をする。
【0029】
カメラメモリ132は、例えばフラッシュメモリなどの不揮発性メモリであり、一眼レフカメラ10を制御するプログラム、各種パラメータなどを記憶する役割を担う。ワークメモリ133は、例えばRAMなどの高速アクセスできるメモリであり、処理中の画像データを一時的に保管する役割などを担う。
【0030】
表示制御部134は、カメラシステム制御部52の指示に従って、表示画面を透過表示部70および背面表示部61のそれぞれに表示させるべく表示制御を実行する。例えば、画像処理部51によって生成された撮影画像表示データ、カメラメモリ132に記憶されているメニュー項目を、透過表示部70または背面表示部61に選択的に表示させる。
【0031】
近接センサ68は、ユーザがファインダ窓67を覗いたことを検出すると、検出信号をカメラシステム制御部52に出力する。カメラシステム制御部52は、近接センサ68から検出信号が入力されると、表示制御部134を制御して、背面表示部61を非表示状態に切り替える。また、後述するフローに従って透過表示部70を変位させる。
【0032】
照度センサ69は、検出した一眼レフカメラ10の周囲環境の照度値をカメラシステム制御部52に出力する。カメラシステム制御部52は、検出された照度値に従って、表示制御部134を介して、背面表示部61の明るさを制御する。また、後述するフローに従って透過表示部70を変位させる。
【0033】
操作入力部138は、十字キー63、決定ボタン62、スライドレバー65等の操作部材が操作されたことを検出して、カメラシステム制御部52へ出力する。モード切替部139は、ユーザによる撮影モードの設定を受け付けて、カメラシステム制御部52へ出力する。撮影モードとしては、動画撮影モードと静止画撮影モードを備える。
【0034】
駆動制御部140は、カメラシステム制御部52から入力される駆動制御信号に応じて、透過表示部70が第1状態と第2状態のいずれかの状態になるように、変位機構71を駆動する。変位機構71の具体的な構成は後述する。カメラシステム制御部52は、操作入力部138を介してスライドレバー65のスライド操作信号を検知した場合等において、駆動制御信号を駆動制御部140に出力する。
【0035】
図4は、ファインダ窓67を介して視認される重畳表示を示した図である。透過表示部70が光学ファインダの光路に交差させる第1状態にある場合、ユーザは、ファインダ窓67から、透過表示部70を介して光学像151を視認できる。透過表示部70のうち光学像151と重なる領域には、画像データを表示することができる。表示制御部134は、透過表示部70に表示する画像データの輝度を調整することにより、光学像151のうち重なる領域を不透明にしたり、半透過状態にすることができる。
【0036】
従って、透過表示部70に表示される画像データの表示領域は、交換レンズ20のレンズ群21を通過して到達する光学像151を透過させ得る。すなわち、表示制御部134は、透過表示部70が第1状態にある場合に、ピント板55に結像する被写体の光学像151に、半透過状態あるいは非透過状態で画像データを重畳させて表示することができる。
【0037】
画像データの重畳表示は、さまざまな表示態様において実行され得る。例えば図示するように、画像データに含まれる人物像152を抽出して、光学像151に対して部分的に重畳させることができる。
【0038】
具体的には、まず表示制御部134が画像データの全体を表示させた後に、ユーザによる操作部材の操作を受け付け、重畳範囲枠159を決定する。そして、画像処理部51は、顔検出機能を用いて、重畳範囲枠159内に人物像152が含まれるか否かを判断する。人物像152が存在すると判断した場合は、画像情報として含まれる被写体の距離情報等を用いて輪郭を確定し、人物像152の抽出を行う。画像処理部51は、重畳範囲枠159内で抽出された人物像152以外の抽出外領域160に対して非表示処理を行う。もちろん、ユーザによる輪郭を指定する操作を受け付けて、指定された輪郭の外側を抽出外領域160としても良い。
【0039】
また、表示制御部134は、ピント板55に結像する被写体の光学像151に、撮影情報等を重畳させて表示することができる。例えば図においては、二次電池54の残容量アイコン158などが、透過表示部70のうち光学像151が視認される表示領域内に表示されている。
【0040】
透過表示部70は、第1状態において、被写体の光学像151に重畳する表示領域と、その外側の重畳しない表示領域を有している。表示制御部134は、光学像151に重畳しない表示領域にも、各種情報等を表示させることができる。この領域には、例えば、シャッタースピード154、絞り値155、露出インジケーター156、記録可能撮影数157等が表示される。従って、ユーザは、画像データおよび撮影情報等を、ファインダ窓67を介して、ピント板55に結像する被写体の光学像151に重ねて観察することができる。
【0041】
図5は透過表示部70をスライドさせる変位機構71を示す模式図である。特に、図5(a)は変位機構71の上面図であり、図5(b)は側面図である。
【0042】
変位機構71は、駆動部としてリニアアクチュエータを備える。透過表示部70は、外周が保持枠161に囲まれて保持されている。保持枠161は、1つの長辺部に2つのガイド部162を有し、他の長辺部に1つ締結部165を有する。各ガイド部162は側面に貫通孔168が設けられている。貫通孔168には、光軸11と平行なZ軸方向と直交するX軸方向に沿って固定されているガイドバー164が遊嵌するように挿入される。ガイドバー164は、ベース部から延出する支持部172に支持されて固定されている。
【0043】
締結部165は、部分的に着磁されたシャフト166を貫通して一体的に形成されている。着磁されたシャフト166は可動子であり、ベース部に固定された固定子であるコイル部167に対してX軸方向に沿って移動する。シャフト166は、ガイドバー164と平行に設けられており、ベース部から延出する支持部171に遊嵌して支持されている。
【0044】
シャフト166はコイル部167に挿入されており、駆動制御部140は、コイル部167に交流電流を流すことによってシャフト166をX軸方向に進退させる。従って、透過表示部70は、シャフト166の動きに連動し、ガイドバー164に沿って矢印で示すX軸方向にスライド移動する。
【0045】
図6は、透過表示部70のスライド中の状態を示した図である。他の図と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0046】
透過表示部70は、第2状態において、視認窓66を介して視認されるように配置されている。従って、第1状態にある透過表示部70が変位機構71によってスライドさせられると、図6に示すように、透過表示部70は視認窓66の左端部から右端部に向かう。
【0047】
透過表示部70が第2状態に変位し終えると、黒塗りされた底面部180は、透過表示部70の表示領域で覆われる。すなわち、透過表示部70が第1状態にある場合は、視認窓66を介して黒塗りされた底面部180が視認され、透過表示部70が第2状態にある場合は、視認窓66を介して透過表示部70の表示領域が視認される。なお、透過表示部70が第1状態にある場合、視認窓66を介して視認される黒塗りされた底面部180を設けたが、黒塗りされた底面部180に替えて一眼レフカメラ10の動作状態を表示する液晶表示装置を別途設けても良い。追加される液晶表示装置は、例えば、透過表示部70が第1状態にある場合に表示がオンにされ、透過表示部70が第2状態にある場合に表示がオフにされる。このとき、透過表示部70が第2状態である場合に、表示面が黒色である液晶表示装置が好ましい。
【0048】
なお、図においては、透過表示部70のスライド中において透過表示部70の表示領域に画像データを表示させているが、透過表示部70のスライド中は画像データを表示させず、第2状態に変位し終えた後に表示を再開させるようにしても良い。
【0049】
また、上記においては、変位機構71をリニアアクチュエータにより構成した場合を説明したが、スライドレバー65と保持枠161を連結バーなどで連結し、スライドレバー65のスライド操作に応じて透過表示部70を機械的にスライドさせるようにしても良い。
【0050】
図7は、他の変位機構81を備えた一眼レフカメラ10の要部断面図である。図2と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0051】
一眼レフカメラ10は、ピント板55とペンタプリズム37の間、すなわち被写体光束の一次結像面近傍に、可撓性を有する透過表示部80が配置される。本実施形態では、透過表示部80をピント板55の上面側に配置したが、透過表示部80を配置する場所は透過表示部70と同様、一次結像面の近傍であればよく、ピント板55の下面側に配置しても良い。後述する巻取り式の変位機構81に取り付けられた透過表示部80は、自発光型で透明基板および透明電極からなる有機ELディスプレイなどの透過型表示素子により構成される。ピント板55で一次結像した被写体光束は、透過表示部80が非表示の状態において透過する。また、表示状態であっても、発光条件によっては、表示部分を透過し得る。
【0052】
図8は、可撓性を有する透過表示部80の構造を示した平面図である。透過表示部80は、破線枠で示した被写体の光学像と重畳する表示領域82、および被写体の光学像と重畳させない開口部83を有する。透過表示部80の両端部には、透過表示部80を後述する巻取り軸85および巻取り軸89に接着させる接着領域84が設けられている。
【0053】
図9は、透過表示部80を第1状態にした場合の模式図である。巻取り式の変位機構81は、透過表示部80を巻き取る巻取り軸85、89と、巻取り軸85、89に回転力を伝達するスパーギヤ86、90を有する。
【0054】
巻取り軸85、89の中央部には、透過表示部80の接着領域84が接着剤によって接着される。巻取り軸85一端側にはスパーギヤ86が固着され、巻取り軸89の一端側にはスパーギヤ90が固着される。
【0055】
巻取り軸85と巻取り軸89は、ベース部に支持される高さが異なっている。巻取り軸85は、ピント板55の面と表示領域82の面とが平行となるように、透過表示部80を巻取ることによって生じる厚みの分だけ巻取り軸89よりも低くベース部に支持されている。
【0056】
スパーギヤ86はモータ軸88に固着されたピニオンギヤ87と噛み合わさり、スパーギヤ90はモータ軸92に固着されたピニオンギヤ91と噛み合わさる。図9に示すように、透過表示部80を第1状態に保った状態では、表示領域82が撓まないように各モータの回転力が、ピニオンギヤ91とスパーギヤ90とを介して巻取り軸89に伝達されると共に、ピニオンギヤ87とスパーギヤ86とを介して巻取り軸85にも伝達される。それぞれのモータは、駆動制御部140により制御される。
【0057】
図10は、可撓性を有する透過型表示素子を第2状態にした場合の模式図である。図9と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0058】
透過表示部80を第1状態から第2状態に変位させるには、巻取り軸85に回転力を与えるモータの駆動を停止して巻取り軸89を回転させる。巻取り軸89は、図10に示すように、表示領域82を有する部分の透過表示部80を巻取ると共に、巻取り軸85に巻き取られていた開口部83をピント板55とペンタプリズム37の間に引き出して配置させる。変位機構81は、第2状態として、可撓性を有する透過表示部80を巻取り収容状態とする。
【0059】
開口部83がピント板55とペンタプリズム37の間に引き出されて配置されると、巻取り軸85に回転力を与えるモータを駆動させ、巻取り軸89の回転を停止させると共に開口部83に撓みを生じさせなくする。開口部83がピント板55とペンタプリズム37の間に配置されると、被写体光束は透過表示部80を透過することなくペンタプリズム37に入射する。なお、巻取り軸85または巻取り軸89を回転させるモータは、メインミラー32を回動させるモータ、または、シャッタ幕をチャージするモータを兼用しても良い。
【0060】
ここで、図5および図9等を用いて説明したそれぞれの変位機構71、81の意義について説明する。透過表示部70、80は、非表示状態において被写体光束を透過させるといえども、その透過率は100%ではない。すなわち、被写体光束は、透過表示部70、80を透過することにより光量が減少する。したがって、ユーザがピント板55に結像する光学像151のみを観察したい場合は、透過表示部70、80が存在しない方が明るく鮮明な像となるので好ましい。特に、撮影環境が薄暗いような場合には、そもそも光学像151が見づらいので、透過表示部70、80が退避することが望ましい。そこで、透過表示部70、80を光学ファインダの光路に交差させる第1状態と光路から退避させる第2状態に変位させる変位機構71、81の存在が有効となる。
【0061】
次に、近接センサ68の検出信号に応じて透過表示部70を変位させる処理について説明する。図11は、近接センサ68を用いて透過表示部70を変位させるフロー図である。
【0062】
以下に説明する変位処理は、一眼レフカメラ10の電源がONされると開始する。変位処理が開始されると、カメラシステム制御部52は、ステップS101で、近接センサ68から入力される検出信号の有無により、ユーザがファインダ窓67を覗いているか否かを判断する。
【0063】
ユーザがファインダ窓67を覗いていると判断したら、カメラシステム制御部52は、ステップS102へ進み、透過表示部70の状態が第2状態であるか否かを判断する。透過表示部70の状態が第2状態であると判断したら、駆動制御部140は、ステップS103で、変位機構71を駆動して透過表示部70の状態を第2状態から第1状態に変位させる。一方、ステップS102で透過表示部70の状態が第2状態でなく、第1状態であると判断したら、駆動制御部140は、変位機構71を駆動させず透過表示部70の状態を第1状態のままとする。
【0064】
ステップS101でユーザがファインダ窓67を覗いていないと判断したら、カメラシステム制御部52は、ステップS104へ進み、透過表示部70の状態が第2状態であるか否かを判断する。
【0065】
透過表示部70の状態が第2状態であると判断したら、駆動制御部140は、変位機構71を駆動させず透過表示部70の状態を第2状態のままとする。一方、ステップS104で透過表示部70の状態が第2状態でなく、第1状態であると判断したら、駆動制御部140は、ステップS105で、変位機構71を駆動して透過表示部70の状態を第1状態から第2状態に変位させる。
【0066】
ステップS102の判断がNo、ステップS104の判断がYes、またはステップS103もしくはステップS105の処理が終了した場合、カメラシステム制御部52は、ステップS106で、一眼レフカメラ10の電源がOFFにされたか否かを判断する。
【0067】
カメラシステム制御部52は、一眼レフカメラ10の電源がOFFにされていないと判断したら、変位処理をステップS101に戻す。一方、ステップS106で、一眼レフカメラ10の電源がOFFにされたと判断したら、変位処理を終了する。
【0068】
上述した変位処理によれば、ユーザがファインダ窓67を覗くと透過表示部70が自動的に第1状態となるので、別段の変位指示が不要になる。特に、ユーザがファインダ窓67を覗いていない状態においては、透過表示部70が第2状態に変位されているので、透過表示部70は、視認窓66を介した外部表示部として機能する。したがって、ユーザの利用に供される可能性が高く、また、表示部材の削減にも資する。なお、上述した変位処理は、透過表示部70および変位機構71を用いて説明したが、透過表示部80および変位機構81を用いて同様の変位処理を行っても良い。
【0069】
次に、照度センサ69の検出信号に応じて透過表示部70を変位させる処理について説明する。図12は、照度センサ69を用いて透過表示部70を第1の状態から第2の状態に変位させるフロー図である。
【0070】
以下に説明する変位処理は、一眼レフカメラ10の電源がONされると開始する。変位処理が開始されると、カメラシステム制御部52は、ステップS301で、照度センサ69から入力される照度値Cが予め定められた閾値Cより暗い値であるか否かを判断する。
【0071】
照度センサ69から入力された照度値Cが予め定められた閾値Cより暗い値と判断したら、カメラシステム制御部52は、ステップS302へ進み、透過表示部70の状態が第2状態であるか否かを判断する。
【0072】
透過表示部70の状態が第2状態であると判断したら、駆動制御部140は、変位機構71を駆動させず透過表示部70の状態を第1状態のままとする。一方、ステップS302で透過表示部70の状態が第2状態でなく、第1状態であると判断したら、駆動制御部140は、ステップS303へ進み、変位機構71を駆動させて透過表示部70の状態を第1状態から第2状態に変位させる。
【0073】
ステップS301で照度センサ69から入力された照度値Cが予め定められた閾値Cより暗くない値であると判断したら、カメラシステム制御部52は、ステップS304へ進み、透過表示部70の状態が第2状態であるか否かを判断する。
【0074】
透過表示部70の状態が第2状態であると判断したら、駆動制御部140は、ステップS305で、変位機構71を駆動させて透過表示部70の状態を第2状態から第1状態に変位させる。一方、ステップS304で透過表示部70の状態が第2状態でなく、第1状態であると判断したら、駆動制御部140は、変位機構71を駆動させず透過表示部70の状態を第1状態のままとする。
【0075】
ステップS302の判断がYes、ステップS304の判断がNo、またはステップS303もしくはステップS305の処理が終了した場合、カメラシステム制御部52は、ステップS306で、一眼レフカメラ10の電源がOFFにされたか否かを判断する。
【0076】
カメラシステム制御部52は、一眼レフカメラ10の電源がOFFにされていないと判断したら、変位処理をステップS301に戻す。一方、ステップS306で、一眼レフカメラ10の電源がOFFにされたと判断したら、変位処理を終了する。
【0077】
上述した変位処理によれば、一眼レフカメラ10の周囲が暗い場合は、透過表示部70が自動的に第2状態となるので、別段の変位指示が不要になる。なお、上述した変位処理は、透過表示部70および変位機構71を用いて説明したが、透過表示部80および変位機構81を用いて同様の変位処理を行っても良い。
【0078】
図13は、光学像151に画像データの一部を合成する過程を示した図である。一眼レフカメラ10の動作モードが、モード切替部139により合成モードに設定された場合において、ユーザが被写体の光学像151に合成したい画像データを選択すると、表示制御部134は、ユーザが選択した画像データを透過表示部70の表示領域163内に半透過処理して表示する。
【0079】
次に、表示制御部134は、上述したように合成領域を選択する。そして、画像処理部51は、選択された合成領域内の人物像152を抽出する。抽出された人物像152は、十字キー63および決定ボタン62の操作に応じて移動される。
【0080】
その後、レリーズボタンが押し込まれて被写体の光学像151が撮影された場合に、画像処理部51は、撮像された光学像151の画像データに、人物像152を合成した画像データ200を生成する。画像データ200は、外部接続IFを介して外部メモリに記録される。
【0081】
このような合成処理を応用すれば、例えば、撮影した画像データの一端部を合成画像領域の端部に表示させて被写体の光学像151と重畳表示させ、合成撮影を繰り返すことにより、複数枚の画像データが連続するパノラマ画像データを生成することができる。なお、透過表示部70および変位機構71を用いて説明したが、透過表示部80および変位機構81を用いても同様の合成撮影が行える。
【0082】
以上説明した実施形態によれば、一眼レフカメラ10は、変位機構が、透過型表示素子を光学ファインダの光路に交差させる第1状態と光路から退避させる第2状態とに変位させるので、透過型表示素子が第1状態である場合には、撮影した画像データおよびカメラ情報を重畳表示させられる。一方、透過型表示素子が第2状態である場合には、被写体光学像の視認性低下を防止できる。従って、一眼レフカメラ10の使用目的または使用環境に応じて被写体光学像の視認性を選択できる。
【0083】
以上説明した実施形態においては、一眼レフカメラ10を例に説明したが、光学ファインダを備える撮像装置であれば、同様に構成することができる。例えば、ビデオカメラにおいても適用できる。
【0084】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0085】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0086】
10 一眼レフカメラ、11 光軸、20 交換レンズ、21 レンズ群、22 レンズシステム制御部、29 レンズマウント、30 カメラ本体、31 カメラマウント、32 メインミラー、34 メインミラー回転軸、36 撮像素子、37 ペンタプリズム、38 接眼光学系、39 AEセンサ、40 サブミラー、41 AF光学系、42 AFセンサ、43 フォーカルプレーンシャッタ、50 メイン基板、51 画像処理部、52 カメラシステム制御部、54 二次電池、55 ピント板、61 背面表示部、62 決定ボタン、63 十字キー、64 ライブビューボタン、65 スライドレバー、66 視認窓、67 ファインダ窓、68 近接センサ、69 照度センサ、70 透過表示部、71 変位機構、80 透過表示部、81 変位機構、82 表示領域、83 開口部、84 接着領域、85 巻取り軸、86 スパーギヤ、87 ピニオンギヤ、88 モータ軸、89 巻取り軸、90 スパーギヤ、91 ピニオンギヤ、92 モータ軸、121 レンズマウント、131 カメラマウント、132 カメラメモリ、133 ワークメモリ、134 表示制御部、138 操作入力部、139 モード切替部、140 駆動制御部、151 光学像、152 人物像、154 シャッタースピード、155 絞り値、156 露出インジケーター、157 記録可能撮影数、158 残容量アイコン、159 重畳範囲枠、160 抽出外領域、161 保持枠、162 ガイド部、163 表示領域、164 ガイドバー、165 締結部、166 シャフト、167 コイル部、168 貫通孔、171、172 支持部、180 底面部、200 画像データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を観察する光学ファインダと、
透過型表示素子と、
前記透過型表示素子を、前記光学ファインダの光路に交差させる第1状態と、前記光路から退避させる第2状態に変位させる変位機構と
を備える撮像装置。
【請求項2】
前記透過型表示素子は、前記第1状態において、前記光路の一次結像面に配置される請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
筐体に設けられた視認窓を備え、
前記透過型表示素子は、前記第2状態において、前記視認窓を介して視認されるように配置される請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記透過型表示素子は可撓性を有し、前記変位機構は、前記第2状態として、前記透過型表示素子を巻取り収容状態とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記透過型表示素子の表示制御を行う表示制御部を備え、
前記表示制御部は、前記第1状態において、前記被写体の光学像に重畳させて画像データを表示する請求項1から4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記光学像が撮影された場合に、前記画像データの少なくとも一部の領域を合成した撮影データを生成する画像処理部を備える請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記変位機構により前記透過型表示素子を前記第1状態と前記第2状態のいずれかの状態に駆動する駆動制御部を備える請求項1から6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
ユーザが前記光学ファインダに近接したか否かを検出する近接センサを備え、
前記駆動制御部は、前記ユーザが前記光学ファインダに近接したことを前記近接センサが検出した場合に、前記透過型表示素子を前記第2状態から前記第1状態に駆動する請求項7に記載の撮像装置。
【請求項9】
周辺環境の照度を検出する照度センサを備え、
前記駆動制御部は、前記照度センサが予め定められた閾値より暗くなったことを検出した場合に、前記透過型表示素子を前記第1状態から前記第2状態に駆動する請求項7または8に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記透過型表示素子は、前記第1状態において、前記被写体の光学像に重畳する表示領域と、重畳しない表示領域を有する請求項1から9のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記透過型表示素子は、自発光型の表示素子である請求項1から10のいずれか1項に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−90065(P2012−90065A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234921(P2010−234921)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】