説明

撮像装置

【課題】撮像素子の感度が高い時であっても、高精細な動画像を得ることが可能な撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像装置は、撮像素子を用いて動画撮影が可能である。撮像装置は、撮像素子により得られる画像に対し、ハードウエアによって画像処理を実行する第1の画像処理装置と、ソフトウエアによって画像処理を実行する第2の画像処理装置とを備える。撮像装置は、第1の画像処理装置と第2の画像処理装置の一方を選択的に作動させる画像処理切替装置を備える。撮像装置は、撮像素子が受光する光量を検出する光量検出装置と、光量が小さいほど撮像素子の感度を上昇させる感度調節装置とを備える。画像処理切替装置は、感度が所定値より低いとき第1の画像処理装置を作動させ(S11)、感度が所定値より高いとき第2の画像処理装置を作動させる(S13)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動画に対して補正処理を行う撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動画を撮影する撮像装置において、所定のフレームレートを維持しつつ、画像信号を処理する技術の開発が行われている。動画の画像信号を処理するとき、ハードウエアによる画像処理を全て終了した後ソフトウエアによる画像処理を行う方法が知られている。これにより、メモリ展開処理の回数を最低限に抑えることができ、全体の処理時間が短縮されて、フレームレートを落とさずに画像信号を処理することができる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−274504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハードウエアによる画像処理では、欠陥画素は他の画素の置換によって補正される。しかし、補正対象となる欠陥画素の数が増える撮像素子の感度が高い時には、転写の影響すなわち置換による画像の劣化が顕著に表れる。そこで、本発明は、撮像素子の感度が高い時であっても、高精細な動画像を得ることが可能な撮像装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る撮像装置は、撮像素子を用いて動画撮影が可能な撮像装置であって、撮像素子により得られる画像に対し、ハードウエアによって画像処理を実行する第1の画像処理手段と、撮像素子により得られる画像に対し、ソフトウエアによって画像処理を実行する第2の画像処理手段と、第1の画像処理手段と第2の画像処理手段の一方を選択的に作動させる画像処理切替手段と、撮像素子が受光する光量を検出する光量検出手段と、光量が小さいほど撮像素子の感度を上昇させる感度調節手段と、画像処理切替手段は、感度が所定値より低いとき第1の画像処理手段を作動させ、感度が所定値より高いとき第2の画像処理手段を作動させることを特徴とする。
【0006】
また、撮像装置は、感度調節手段によって調節された感度が上限値でかつ動画撮影のフレームレートが通常撮影時より低く設定されて適正露出が得られるとき、画像処理切替手段は第2の画像処理手段を作動させても良い。
【0007】
また、撮像装置は、撮像素子の温度を検出する温度検出手段をさらに備えていることが好ましい。
【0008】
また、撮像装置は、感度調節手段によって調節された感度が上限値でかつ動画撮影のフレームレートが通常撮影時より低く設定されて適正露出が得られ、かつ、温度検出手段によって検出された温度が所定値を超えるとき、画像切替手段は第2の画像処理手段を作動させても良い。
【0009】
また、撮像装置は、温度検出手段によって検出される温度と光量検出手段によって検出される光量とから算出される切替基準値が所定値を超えて、かつ、感度調節手段によってフレームレートが通常撮影時と同一に調整されるとき、画像切替手段は第2の画像処理手段を作動させても良い。
【0010】
また、第1の画像処理手段及び第2の画像処理手段により実行される画像処理が欠陥画素の補正であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、撮像素子の感度が高い時であっても、高精細な動画像を得ることが可能な撮像装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明における実施形態のブロック図である。
【図2】第1の実施形態のフローチャートである。
【図3】第2の実施形態のフローチャートである。
【図4】第3の実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明における第1の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明に係るデジタルカメラの電気的な概略図である。撮像素子10によって生成された画像信号は、電気制御部20において処理され、画像データ33がモニタ(図示せず)に出力される。
【0014】
撮像素子10にはサーミスタ11が取りつけられ、これにより撮像素子10の温度が検出される。露出制御部21は、撮像素子10に電気的に接続され、撮像素子10の感度設定等の制御を行う。温度情報取得部23は、サーミスタ11に接続されて撮像素子10の温度を検出する。切替制御部25は、後述するように、露出制御部21及び温度情報取得部23からの情報に基づいてソフトウエア補正部27とハードウエア補正部29の一方を選択的に作動させる(画像処理切替手段)。ソフトウエア補正部27は、切替制御部25の切替制御に従い、撮像素子により得られる画像信号に対し、ソフトウエアによって画像処理を実行する(第2の画像処理手段)。ハードウエア補正部29は、切替制御部25の切替制御に従い、撮像素子により得られる画像信号に対し、ハードウエアによって画像処理を実行する(第1の画像処理手段)。メモリ31は、ソフトウエア補正部27及びハードウエア補正部29に接続されて、補正後の画像を一時的に記録する。画像データ33は、メモリ31に記録された画像信号であり、1フレーム毎に出力される。
【0015】
本実施形態の作用を図1及び図2を参照して説明する。図2は、以下で詳述するように、感度が上限値でかつ動画撮影のフレームレートが通常撮影時、例えば30フレーム/秒、より低く設定されて適正露出が得られるとき、ソフトウエアによる画像処理によって画素欠陥を補正するフローである。
【0016】
ステップS01では、動画撮影が開始される。ステップS03では、温度情報取得部23において、サーミスタ11によって検出された撮像素子10の温度が取得される(温度取得手段)。ステップS05では、露出制御部21において、撮像素子10の光量が検出されて(光量検出手段)感度が算出され、撮像素子10に対する感度の調整が行われる(感度調整手段)。
【0017】
ステップS07では、切替制御部25において設定される感度が上限値まで高められても適正露出が得られるか否かが判断される。感度の上限値は、露出制御部21において、予め記録されているデータに基づいて光量から決定される1つの値として定められる。適正露出が得られないと判断されると、ステップS09に進む。ステップS09では、露出制御部21において、フレームレートが例えば30/秒から15/秒へ落とされることにより適正露出が得られる。次に、ステップS13では、ソフトウエア補正部27において、ソフトウエアによって画像信号の補正が行われて、補正後の画像信号はメモリ31に一時的に保存される。
【0018】
これに対し、ステップS07において、設定可能範囲内の感度で適正露出が得られると判断されると、ステップS11に進む。ステップS11では、ハードウエア補正部29において、ハードウエアによって画像信号の補正が行われて、補正後の画像信号はメモリ31に一時的に保存される。
【0019】
ステップS11、ステップS13の何れかにおいて画像信号の補正が行われると、ステップS15に進む。ステップS15において、1フレーム毎に、メモリ31に蓄積された補正後の画像信号が出力される。ステップS17において、動画撮影を継続すると判断されるとステップS03へ戻り、継続しないと判断されるとステップS19において、動画撮影は終了される。
【0020】
このように、第1の実施形態では、感度を上限値に設定しても適正露出が得られない場合、フレームレートが落とされることによって適正露出が得られる。さらに、フレームレートが落とされることによって、通常撮影時より多くの画像処理時間が得られるため、ソフトウエアによって画像が補正されることが可能となる。したがって、撮像素子の感度が高い時であっても、高精細な画像が得られる。
【0021】
第2の実施形態を図3を参照して説明する。なお、第2の実施形態における電気的構成は図1に示す第1の実施形態と同じである。図3において、第1の実施形態と同一の処理には同一の符号が付されている。第1の実施形態との違いは、第1の実施形態に、ステップS10が加えられることである。以下で詳述するように、感度が上限値でかつ動画撮影のフレームレートが通常撮影時より低く設定されて適正露出が得られ、かつ、温度情報取得部23によって検出された温度が所定値を超えるとき、ソフトウエアによる画像処理によって画素欠陥を補正するフローである。
【0022】
ステップS09においてフレームレートが落とされると、さらに、ステップS10では、切替制御部25において、撮像素子10の温度が所定の値を超えているかが判断される。撮像素子10の温度が所定の値を超えていると判断されると、ステップS13が実行され、撮像素子10の温度が所定の温度を超えていないと判断されると、ステップS11が実行される。
【0023】
撮像素子10の温度が高くなるに従って、欠陥画素は増える傾向にある。つまり、ステップS10において、撮像素子10の温度が所定の温度を超えると判断されるとき、欠陥画素の数は多い状態である。したがって、画像信号がハードウエアで補正されることによる転写の影響は大きくなるため、画像信号はソフトウエアで補正されることが望ましい。そこで、ステップS10において、撮像素子10の温度によって補正の方法を判別し、温度が高い状態すなわち欠陥画素が多い状態では、画像信号がソフトウエアによって補正されることにより、鮮明な画像が得られる。
【0024】
第3の実施形態を図4を参照して説明する。なお、第3の実施形態における電気的構成は図1に示す第1の実施形態と同じである。図4において、第1の実施形態と同一の処理には同一の符号が付されている。第1の実施形態との違いは、ステップS06の処理である。以下で詳述するように、温度と光量とから算出される切替基準値が所定値を超えて、かつ、フレームレートが通常撮影時と同一であるとき、ソフトウエアによる画像処理によって画素欠陥を補正するフローである。
【0025】
第3の実施形態では、通常撮影時のフレームレートが維持されつつ、ハードウエア又はソフトウエアによって画像信号が処理される。すなわち、画像を処理する能力が高いプロセッサ(図示せず)が備えられる場合に適用可能な実施形態である。
【0026】
切替基準値は設定感度値の定数(A)倍と撮像素子10の温度の定数(B)倍との和と定義される。ステップS06において、切替基準値が定数Cよりも大きいと判断されるとき、ステップS13が実行され、切替基準値が定数Cよりも小さいと判断されるとき、ステップS11が実行される。
【0027】
撮像素子10の温度及び感度が高くなるに従って、欠陥画素は増える傾向にある。つまり、ステップS06において、切替基準値が定数Cよりも大きいと判断されるとき、欠陥画素の数は多い状態である。したがって、画像信号がハードウエアで補正されることによる転写の影響は大きくなるため、画像信号はソフトウエアで補正されることが望ましい。そこで、ステップS06において、撮像素子10の温度及び感度によって補正の方法が選択されて、温度及び感度が高い状態すなわち欠陥画素が多い状態では、画像信号がソフトウエアによって補正されることにより、鮮明な画像が得られる。
【0028】
なお、フレームレートが落とされたとき、そのフレームレートが一定時間維持されるとともに、露出は感度の調整によって適正化される。このとき、補正の方法の切替えは、この一定時間禁止されても良い。
【符号の説明】
【0029】
10 撮像素子
21 露出制御部(光量検出手段、感度調節手段)
23 温度情報取得部(温度検出手段)
25 切替制御部(画像処理切替手段)
27 ソフトウエア補正部(第2の画像処理手段)
29 ハードウエア補正部(第1の画像処理手段)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子を用いて動画撮影が可能な撮像装置であって、
前記撮像素子により得られる画像に対し、ハードウエアによって画像処理を実行する第1の画像処理手段と、
前記撮像素子により得られる画像に対し、ソフトウエアによって画像処理を実行する第2の画像処理手段と、
前記第1の画像処理手段と前記第2の画像処理手段の一方を選択的に作動させる画像処理切替手段と、
前記撮像素子が受光する光量を検出する光量検出手段と、
前記光量が小さいほど前記撮像素子の感度を上昇させる感度調節手段と、
前記画像処理切替手段は、前記感度が所定値より低いとき前記第1の画像処理手段を作動させ、前記感度が所定値より高いとき前記第2の画像処理手段を作動させることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記感度調節手段によって調節された感度が上限値でかつ動画撮影のフレームレートが通常撮影時より低く設定されて適正露出が得られるとき、前記画像処理切替手段は前記第2の画像処理手段を作動させることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記撮像素子の温度を検出する温度検出手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記感度調節手段によって調節された感度が上限値でかつ動画撮影のフレームレートが通常撮影時より低く設定されて適正露出が得られ、かつ、前記温度検出手段によって検出された温度が所定値を超えるとき、前記画像切替手段は前記第2の画像処理手段を作動させることを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記温度検出手段によって検出される温度と前記光量検出手段によって検出される光量とから算出される切替基準値が所定値を超えて、かつ、前記感度調節手段によってフレームレートが通常撮影時と同一に調整されるとき、前記画像切替手段は前記第2の画像処理手段を作動させることを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記第1の画像処理手段及び前記第2の画像処理手段により実行される画像処理が欠陥画素の補正であることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−55585(P2013−55585A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193796(P2011−193796)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(311015207)ペンタックスリコーイメージング株式会社 (81)
【Fターム(参考)】